説明

散気装置

【課題】運転時に送風したとき、ベースプレート10からメンブレン20が剥がれやすい散気装置の提供。
【解決手段】散気装置のベースプレート10は、加圧空気を送るためのオリフィス13と、オリフィス13を包囲して形成された環状突起部15を有している。オリフィス13の開口径は、メンブレン20の発泡面積の0.01〜0.2%の大きさになるように設定されている。オリフィス13から送風されたとき、環状突起15の存在によりベースプレート10からメンブレン20が容易に剥がれて散気される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物処理槽等に設置して曝気するために使用する散気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水処理施設における生物処理槽では、曝気するための散気装置が処理槽内に配置されている。
散気装置としては、例えば特許文献1の図3で示すような平板状の支持体3と、それに固定して使用する平膜(弾性多孔体2)とを有しており、それらが固定部材1で固定されたものが知られている(特許文献1の図4、図6、図7、図10等)。
支持体3の中心部には加圧空気を送るためのオリフィス3−7が形成されており、オリフィス3−7を含む支持体3の表面が平膜(弾性多孔体2)で覆われている。
【0003】
散気装置の運転時にオリフィス3−7から加圧空気が供給されると、圧力を受けた平膜(弾性多孔体2)が半球状に膨張してスリットが開口され、そこから微細気泡が放出される。そして、運転停止時には、オリフィス3−7からの加圧空気の供給が停止され、平膜(弾性多孔体2)は支持体3に密着された状態に戻る。
この運転と停止を繰り返すと、運転停止後に運転を再開したとき、即ちオリフィス3−7から加圧空気を再供給したとき、支持体3の表面から平膜(弾性多孔体2)が剥がれないという現象が生じることがある。この現象が生じる理由は、支持体3の表面と平膜(弾性多孔体2)との間に水が侵入することによるものと考えられる。
【0004】
図1に示すものは、従来の散気装置で使用されている支持体の断面図である。上記した問題を解決するため、支持体10の表面(膜と接触する面)11に複数の突起14を設けて、オリフィス13から加圧空気を供給したとき、支持体11と膜が剥がれやすくなるような対策が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−38198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、支持体のオリフィスから加圧空気を供給したとき、支持体の表面から平膜が剥がれないという現象が生じることがあり、それを完全に防止することは難しかった。
本発明は、支持体とそれを覆う膜との組み合わせを有する散気装置の運転と停止を繰り返したときであっても、支持体から膜が剥がれにくいという問題を解決できる散気装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、課題の解決手段として、
メンブレンと、メンブレンを下方から支持するためのベースプレートを有し、メンブレンがベースプレートに固定されている散気装置であって、
ベースプレートが、
中心部に加圧空気を送ってメンブレンを膨張させるためのオリフィスと、
メンブレンと接触する面上であり、かつオリフィスの近傍にオリフィスを包囲して形成された環状突起部を有しており、
オリフィスの開口径が、メンブレンの発泡面積の0.01〜0.2%の大きさになるように設定されている、散気装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の散気装置は、新規な構造のベースプレートを含んでいるため、散気装置の運転と停止を繰り返したときでも、ベースプレートからメンブレンが剥がれ難くなるという問題が生じることが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来技術の散気装置で使用するベースプレート(メンブレンの支持体)の縦方向断面図。
【図2】本発明の散気装置で使用するベースプレート(メンブレンの支持体)の縦方向断面図。
【図3】図2に示すベースプレートにおいて、オリフィスとそれを包囲する環状突起の位置関係を説明するための平面図。
【図4】図1のベースプレートとメンブレンを組み合わせた状態を示す縦方向断面図。
【図5】図2のベースプレートとメンブレンを組み合わせた状態を示す縦方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の散気装置は、メンブレン(特許文献1の弾性多孔体と同じ)を支持するベースプレート(特許文献1の支持体に相当するもの)の構造が新規なもので、特徴があるものである。
本発明の散気装置は、ベースプレートを除く他の構成要素は公知の散気装置と同じものを使用して同じ構造にすることができるものであり、散気装置の構造は、特許文献1の図4、図6、図7、図10に示す構造にすることができ、その他の公知の散気装置と同じ構造にすることができる。
【0011】
本発明のベースプレートの縦方向断面図を図2に示す。
ベースプレート10は、中心部に加圧空気を送ってメンブレンを膨張させるためのオリフィス13を有している。
オリフィス13は、ベースプレート10と一体に形成された脚部12を経て加圧空気供給源に接続される。脚部12の内部がオリフィス13に加圧空気を送る送風経路15となる。
ベースプレート10は、メンブレンと接触する面11上であり、かつオリフィス13の近傍にオリフィス13を包囲するようにして形成された環状突起部15を有している。
なお、ベースプレート10の材質は公知のものであり、例えば、鋼、ステンレス等の金属、FRP、ABS樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂等の各種樹脂を用いることができる。
【0012】
オリフィス13の開口径は、メンブレンの発泡面積の0.01〜0.2%の大きさに設定されており、好ましくは0.05〜0.15%の大きさに設定されている。
ここでメンブレンの発泡面積は、ベースプレート面11と接触しているメンブレンの面積が基本であるが、例えばベースプレート10が正方形であるとき、その四辺において、ベースプレート10とメンブレンが固定手段(例えば、特許文献1の図1、図5で示されているような固定部材1、図7(a)で示されているような固定部材31〜34、固定部材35〜38、図7(b)で示されているような固定部材11〜14、図7(c)で示されているような固定部材21〜24)で固定されているときは、ベースプレート10と接触し、かつ固定手段で固定されていないメンブレン部分が発泡部分となり、その範囲が発泡面積となる。
オリフィス13の開口径を上記範囲に設定することで、運転時にオリフィス13からメンブレンに空気を送ったとき、ベースプレート面11からメンブレンが剥がれやすくなる。
オリフィス13の開口部径は、従来技術(例えば、ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社から2010年1月まで販売されていた散気装置(商品名PMD-P300,発泡面積86,400mm2,オリフィスの開口面積50mm2〔開口径8mm〕)の開口径(開口面積)よりも大きくなるように設定されている。
【0013】
環状突起部15は、ベースプレート面11からの高さが1〜5mmであることが好ましい。
環状突起部15の幅W1(図3参照)は、5〜10mmが好ましい。
環状突起部15の高さと幅を上記範囲内にすることによって、ベースプレート面11とメンブレンの密着性を維持したまま、運転時にオリフィス13から空気を送ったとき、ベースプレート面11からメンブレンが剥がれやすくなるので好ましい。
【0014】
オリフィス13の開口部と環状突起部15の配置状態は、オリフィス13の開口部周縁13aから少し離れた位置に環状突起部15が形成されるようにすることが好ましい。
オリフィス13の開口部と環状突起部15の配置状態は、オリフィス13の開口部径(D1)を1とするとき、環状突起の内径の大きさ(D2)が2〜2.5になるようにすることが好ましい。
このように前記比率(D2/D1)を所定範囲にすることによって、運転時にオリフィス13から空気を送ったとき、ベースプレート面11からメンブレンが剥がれやすくなるので好ましい。
【0015】
ベースプレート10は、メンブレンと接触する面11上であり、オリフィス13が形成されていない面上において、環状突起15と同じ高さの複数の突起14が均等間隔で配置されていることが好ましい。
この複数の突起は従来技術にも含まれているものであり、運転時にオリフィス13から空気を送ったとき、環状突起15による作用を補助して、ベースプレート面11からメンブレンが剥がれやすくするため好ましい。
【0016】
次に、図4及び図5により従来技術の散気装置と本発明の散気装置を運転したときの動作を説明する。
図4は、従来技術の散気装置の動作を説明するためのものであり、図1のベースプレート10上をメンブレン20が密着して覆った状態を示している。
図5は、従来技術の散気装置の動作を説明するためのものであり、図2のベースプレート10上をメンブレン20が密着して覆った状態を示している。
なお、メンブレン20は公知のものであり、例えば、特許文献1の段落番号0019〜0023に記載されたものである。
【0017】
図4の散気装置の運転と停止を繰り返し、ベースプレート面11とメンブレン20との間に水が侵入するなどした状態で散気装置の運転を再開したとき、オリフィス13からの送風でオリフィス13に正対する部分のメンブレン20が圧力を受けて膨張する。しかし、その膨張は、オリフィス13に正対する部分とその近傍のメンブレン20のみに留まり、全体にまでは展開し難い場合があった。
一方、図5の散気装置では、同様の状態で散気装置の運転を再開したとき、オリフィス13からの送風でオリフィス13に正対する部分のメンブレン20が圧力を受けて膨張すると、その膨張はオリフィス13に近接して形成されている環状突起15を覆う部分にまで速やかに広がる。そうすると、環状突起部15の外側においては、環状突起部15の存在によって、メンブレン20とベースプレート面11の間に隙間が形成されることになり、その隙間に加圧空気が供給されることから、残りのメンブレン20も連鎖的にベースプレート面11から剥がれて速やかに膨張する。
また、オリフィス13の開口径を所定範囲の大きさにして、オリフィス13からの送風圧力を高めるようにすることで、より前記動作が円滑になれることになる。
【符号の説明】
【0018】
10 ベースプレート
11 ベースプレート面
12 脚部
13 オリフィス
14 突起
15 環状突起
20 メンブレン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンブレンと、メンブレンを下方から支持するためのベースプレートを有し、メンブレンがベースプレートに固定されている散気装置であって、
ベースプレートが、
中心部に加圧空気を送ってメンブレンを膨張させるためのオリフィスと、
メンブレンと接触する面上であり、かつオリフィスの近傍にオリフィスを包囲して形成された環状突起部を有しており、
オリフィスの開口径が、メンブレンの発泡面積の0.01〜0.2%の大きさになるように設定されている、散気装置。
【請求項2】
環状突起部のベースプレート面からの高さが1〜5mmである、請求項1記載の散気装置。
【請求項3】
オリフィスの開口径を1とするとき、環状突起の内径の大きさが2〜2.5mmである、請求項1又は2記載の散気装置。
【請求項4】
ベースプレートがメンブレンと接触する面上であり、オリフィスが形成されていない面上において、前記環状突起と同じ高さの複数の突起が均等間隔で配置されている、請求項1〜3のいずれか1項記載の散気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−94767(P2013−94767A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243202(P2011−243202)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】