説明

散水ノズル

【課題】 供給された水を受け入れるノズル本体と、前記ノズル本体をカバーする把持筒と、供給された水を水形を選択して吐出可能な吐出部とを備えた散水ノズルにおいて、水形切替の基準表示を設ける際のコストを削減するとともに、基準表示の長寿命化を図る。

【解決手段】 カバーとなる把持筒に水形切替の基準表示となる基準孔を、ノズル本体側に前記基準孔に係合する突起部を設け、ノズル本体側の突起部と基準孔の係合を行った際に前記基準孔から前記突起部の表面が露出するようにし、露出した突起部の表面を水形切替の基準表示として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、ホースの先端に取り付けて散水作業を行う散水ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】

従来の散水ノズルでは、図8に示すように、内部の通水路(図示せず)を筒状のグリップ部10によってカバーしている。従来の散水ノズルにおける吐出水形の切替方法は、吐出部11を回転させて、吐出部11の外周に印刷された散水状態を表示する水形表示マーク11aとSEリング12に印刷された切替基準表示13とを合わせることにより、所望の吐出水形を選択できるというものであった(特許文献1)。

また、少なくともノズルヘッドの上半部を被覆するように密圧着したカバー体に表示窓を開設し、カバー体の表示窓部分から前記水形表示マークの表示を行わせるようにしたものもある(特許文献2)。

また、特許文献1におけるSEリング12の形成箇所に本体と一体化したリング状の部材と、特許文献1における切替基準表示13の役割を果たす透孔を設けた突片を突設させることにより切替基準表示を設けたものもある(特許文献3)。
【0003】

【特許文献1】特開平06−277565号公報
【特許文献2】実登3070538号公報
【特許文献3】特開2003−181327号公報
【0004】

〔従来技術の問題点〕

従来の、切替基準表示13を印刷により表示していた場合(特許文献1)では、印刷工程ばかりでなく、印刷の漏れやミスがないか確認する検査工程も必要であり、人件費や材料費でコスト高となるため、製品を市場に安価に提供できないという問題があった。さらに、使用時においては紫外線や物理的磨耗等で印刷面が消滅する問題があった。

また、表示窓を開設したカバー体を密圧着させる構造(特許文献2)では、切替基準表示へのチリやホコリの付着は防げるものの、水形を表示する文字や絵などの軸方向の印刷誤差が許されないなどの問題があった。また、カバー体の内面に砂などの異物がかみこまれてしまうと、文字や絵などが削られてしまう恐れがあった。
さらに、本体と一体化したリング状の部材と突片を突設させる構造(特許文献3)では、リング状部材及び突片が邪魔になってカバーを組み付けることが困難となっていた。また、散水ノズルの表面にリング部や突片が現れることが避けられないため、デザイン上の制約が生じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】

従来では、カバーを組み付ける散水ノズルに関して、カバーの抜け止めと基準表示の形成を同時に行うことのできる散水ノズルは存在しなかった。本発明の課題は、基準表示の長寿命化を果たし、かつ製造コストを削減するとともにデザインの自由度を向上させたノズルの基準表示構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】

前記課題を達成するため具体的に構成した本発明の散水ノズルにおける第1の発明は、供給された水を受け入れるノズル本体と、供給された水を吐出する吐出部と、ノズル本体に組みつけられてノズル本体をカバーする把持筒とを備えた散水ノズルにおいて、該把持筒に基準孔を穿設するとともに該ノズル本体に該基準孔と係合する突起部を設け、該基準孔と該突起部により把持筒とノズル本体を係合させるとともに散水ノズルの吐出状態を識別するための基準表示を形成したことを特徴とする。

また、第2の発明は、第1の発明において、前記吐出部が水形切替および/または止水が可能であり、吐出部側に設けられた表示と前記基準表示とを位置合わせすることで水形切替および/または吐止水を選択することを特徴とする。

また、第3の発明は、前記突起部が、基部と、水平部と、表示部とからなる鉤状突起部であることを特徴とする。

また、第4の発明は、第3の発明において、前記突起部が下垂部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】

以上のように、本発明の散水ノズルにおける第1の発明は、供給された水を受け入れるノズル本体と、供給された水を吐出する吐出部と、ノズル本体に組みつけられてノズル本体をカバーする把持筒とを備えた散水ノズルにおいて、該把持筒に基準孔を穿設するとともに該ノズル本体に該基準孔と係合する突起部を設け、該基準孔と該突起部により把持筒とノズル本体を係合させるとともに散水ノズルの吐出状態を識別するための基準表示を形成したことにより、把持筒の抜け止めと基準表示の形成が同時に行える。また、基準表示以外を表面に現す必要がないため、デザインの自由度が向上する。さらに、単なる基準孔ではなく突起部が入り込むため、基準表示が見やすくなるとともに、前記基準孔からノズル内部への異物の混入などが防がれる。
【0008】

第2の発明では、第1の発明において、前記吐出部は水形切替および/または止水が可能であり、吐出部側に設けられた表示と前記基準表示とを位置合わせすることで水形切替および/または吐止水を選択するようにしたため、吐出部側を操作することで水形選択または吐止水選択が行える散水ノズルにおいて、把持筒の抜け止めと水形切替の基準表示の形成が同時に行えることとなる。また、基準表示以外を表面に現す必要がないため、デザインの自由度が向上する。さらに、単なる基準孔ではなく突起部が入り込むため、基準表示が見やすくなるとともに、前記基準孔からノズル内部への異物の混入などが防がれる。
【0009】

第3の発明では、前記突起部を、基部と、水平部と、表示部からなる鉤状突起部として形成したので、突起部が弾性を有する鉤形状となる。このため、把持筒をノズル本体に嵌めこむ際に鉤状突起部もしくは把持筒が破損することが防止される。また、ノズル本体と把持筒の係合を、弾性を有する鉤状突起部が元の形状に復元する際の係合音や係合感で確認することができる。
【0010】
第4の発明では、前記突起部を、基部と、水平部と、表示部とから形成すると共に、表示部に下垂部を設けている。このため、把持筒を組付ける前の通水部またはノズル本体を多数保管するなどした際に、通水部の突起部同士が引っかかることがない。このため、組立の際に部品を個別に取り出しやすくなり、作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】

以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。なお、この実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるため具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、特許請求の範囲の記載事項を限定するものではない。
【0012】

〔構成〕

散水ノズル1は、図1、図2に示すように、供給された水の散水状態を、棒状、コーン状、霧状、シャワー状又は止水などに切替える吐出部2と、ホース側から供給される水の受入部となるノズル本体3、図2に見られる弁体収容部9に設けられた弁体(図示せず)を操作する操作レバー4とからなる。なお、水形を切替える際の切替え方法は、特許文献1と同様に、吐出部2を回転させ、表示マーク2aを基準表示に合わせることにより行う。
【0013】

散水ノズル1の全体形状は、図1、図2に示すように、吐出部2とノズル本体3に組み付けられた把持筒8とにより略T字状の形状をなし、把持筒8は、取付けられた操作レバー4と共に握ったときの掌側に形成された形状に似た外形の把持部、いわゆるピストルグリップを形成する。
【0014】

吐出部2は先端部に多数の小孔を穿設した散水口5を有する。ノズル本体3は、図2に示すように、下部には水を供給するホース(図示せず)を接続する接続口6が、操作レバー4の背面には弁体収容部9が、上部の吐出部2との接続部分には通水部7がそれぞれ形成され、このノズル本体3に把持筒8が覆い被さった構造となっている。弁体収容部9の下端に設けられた切欠91は、後述する把持筒下方突起83との係合溝である。
【0015】

図3に示すように、通水部7は、散水ノズル1のピストル形状と略同様のへの字形状となっており、上部に鉤状突起部72を有する。鉤状突起部72は、通水部7の上部から立ち上がる基部72aと、吐出部2側に水平に移行する水平部72bと、把持筒8と係合して天面をノズル表面に表す、水平部72bよりも一段高く盛り上がった表示部72cとの構成によって、図3(b)に示すような上面視二等辺三角形の鉤形状をしており、表示部72cから垂下する壁状の下垂部72dが鉤の先端部を封鎖するような形状となっている。また、図3(b)、(c)に示すように、通水部7の両側面には、通水部側斜面73aを有する突起73を設ける。図3(f)の下部に設けられた溝74は、弁体収容部9との係合用溝である。

通水部7は、上流側が弁体収容部9と接合され、下流側が吐出部2側と接合された後に、把持筒8の組み付けが行われる。
【0016】

把持筒8は、図4に示すように、操作レバー4側の面が開口された、散水ノズル1のピストル形状と略同様のへの字形状となっており、断面が一部開口の略円形状である。また、把持筒8は、天井面前端に前記通水部7の鉤状突起部72に係合可能な基準孔81が穿設された円形部8a、断面略U字状で両側面に飾り溝84が刻設された把持筒グリップ部8b、円形部8aと把持筒グリップ部8bの中間に存在し、前記突起73と当接する位置に側端部85を有する中間部8cから構成される。

円形部8aと中間部8cの境界部分の内面には段差部82が形成され、さらに、図4の(e)、(f)に示すように、側端部85から段差部82にかけて徐々に形状を曲面から段差へと移行させていく把持筒側斜面82aが形成されている。また、把持筒グリップ部8bの下端には、図2に示された前記弁体収容部9の切欠91に係合可能な把持筒下方突起83が設けられている。
【0017】

把持筒8をノズル本体3に組付ける際の手順は、図2に示す矢印の方向で、把持筒8をノズル本体3の上方からノズル本体3に接近させる。するとまず、中間部8cの側端部85が通水部7の通水部側斜面73aに接触する。さらに押圧すると、通水部側斜面73aと、把持筒側斜面82aとが接触し、把持筒8は突起73を乗り越えるために弾性変形して拡開する。
【0018】

その後、図7(a)に示すように、円形部8aの天井面が前記通水部7の鉤状突起部72の表示部72cに接触し、表示部72cが円形部8aの天井面によって押圧されることで、図7(b)に示すように、鉤状突起部72の水平部72bが下方に弾性変形し、鉤状突起部72全体が下方に撓んだ状態となる。
【0019】

さらに押圧を続けると、鉤状突起部72の表示部72cが、把持筒8の基準孔81と係合することにより、図7(b)のように下方に撓んでいた鉤状突起部72が図7(c)に示すように上方に復元し、把持筒8の基準孔81から鉤状突起部72の表示部72cの表面が現れることとなる。同時に、拡開していた中間部8cが通水部7の突起73を乗り越え復元する。この際、図7(d)に示すように、通水部7の突起73が把持筒8の段差部82に乗り上げて係合した状態となる。同時に、図7(e)に示すように、把持筒グリップ部8bの把持筒下方突起83が弁体収容部下端の切欠91に滑り込んで係合する。
【0020】

以上のように、把持筒8の組付けが完了した時点では、図1に示すように、基準孔81から表示部72cを覗かせることによって水形切替の基準表示が設けられた状態となる。なお、本実施例においては、通水部7と把持筒8とを異なる色で成形し、基準孔81から色の異なる表示部72cを覗かせることで、基準表示の位置をより明確にすることが望ましい。
【0021】

また、把持筒8は、図7の(c)、(d)、(e)に示すように、通水部7の上面、左側面、右側面、弁体収容部9下端の右側面、左側面の5点で係合された状態となり、鉤状突起部72と基準孔81との係合によって水平方向の動きが規制され、突起73と段差部82との係合によって垂直方向の動きが規制される。また、把持筒下方突起83と切欠91との係合によって、把持筒グリップ部8b側の動きも規制される。
【0022】

また、把持筒8が組み付けられる前の散水ノズル1の仕掛品を多数保管する際には、通水部7の鉤状突起部72が他の通水部7の空間75に入ってしまうことで、鉤状突起部72同士が引っかかりあい、仕掛品が取り出しにくかったり、鉤状突起部72が破損したりするおそれがあるが、下垂部72dが表示部72cから垂下していることにより、鉤状突起部72の先端が空間75に入り込むことが防止される。
【0023】

〔別態様〕

本願発明における係合による基準表示構造は、本願発明における把持筒のごときカバー部を有する流体吐出機器に応用可能である。また、本願実施例では、基準孔81を、複数の水形を切替える際の基準表示として利用したが、例えば、単純な吐水・止水切替の基準表示として用いたり、じょうろ等のように、吐出口を切替えることはできないが吐出ヘッドの首振り等によって吐出状態を変化させることの可能な散水具において、吐出ヘッドの表示と上流側の表示とを位置合わせすることで吐出ヘッドの正位置を表示する基準表示として用いても問題無い。

また、本願実施例のノズルは吐出部を回転させることで複数の散水状態で水を噴射させるが、その他の水形切替構造を有する流体吐出機器に応用しても何ら問題ない。また、基準表示の位置や形状は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、請求項1に関しては、基準孔81の形状は三角形でなく、丸型・星型などに変更可能である。

また、本願では、散水ノズルの天面に基準表示を設けたが、基準表示の位置は、表示マークとの位置あわせを行える位置であれば、散水ノズルの側面やその他の場所であっても問題無い。
【図面の簡単な説明】
【0024】

【図1】本発明の実施態様による散水ノズル1の斜視図である。
【図2】同上実施態様における散水ノズル1の、ノズル本体と把持筒との係合構造を示す分解図である。
【図3(a)】同上実施態様における通水部7の構成を示す斜視図である。
【図3(b)】同上実施態様における通水部7の構成を示す平面図である。
【図3(c)】同上実施態様における通水部7の構成を示す正面図である。
【図3(d)】同上実施態様における通水部7の構成を示す側面図である。
【図3(e)】同上実施態様における通水部7の構成を示す、図3(b)におけるA―A線に沿う断面図である。
【図3(f)】同上実施態様における通水部7の構成を示す、図3(c)におけるB―B線に沿う断面図である。
【図4(a)】同上実施態様における把持筒の構成を示す斜視図である。
【図4(b)】同上実施態様における把持筒の構成を示す平面図である。
【図4(c)】同上実施態様における把持筒の構成を示す正面図である。
【図4(d)】同上実施態様における把持筒の構成を示す側面図である。
【図4(e)】同上実施態様における把持筒の構成を示す中央断面図である。
【図4(f)】同上実施態様における把持筒の構成を示す、図4(e)におけるA―A線に沿う断面図である。
【図5】本発明の実施態様における散水ノズル1の側面図である。
【図6】同上実施態様における散水ノズル1の一部中央断面図である。
【図7(a)】図6の断面部分を拡大した図であり、把持筒組みつけの際の鉤状突起部72と基準孔81の位置関係を示している。
【図7(b)】図6の断面部分を拡大した図であり、把持筒組みつけの際の鉤状突起部72と基準孔81の位置関係を示している。
【図7(c)】図6の断面部分を拡大した図であり、把持筒組みつけの際の鉤状突起部72と基準孔81の位置関係を示している。
【図7(d)】図5におけるZ―Z線に沿う断面部分を拡大した図であり、突起73と段差部82との係合状態を示している。
【図7(e)】図5におけるY―Y線に沿う断面部分を拡大した図であり、把持筒下方突起83と切欠91との係合状態を示している。
【図8】特許文献1における散水ノズルの斜視図である。なお、説明の都合上、水形表示マーク11aを展開して示している。
【符号の説明】
【0025】

1 散水ノズル

2 吐出部

2a 表示マーク

3 ノズル本体

4 操作レバー

5 散水口

6 接続口

7 通水部

71 リブ

72 鉤状突起部

72a 基部

72b 水平部

72c 表示部

72d 下垂部

73 突起

73a 通水部側斜面

74 溝

75 空間

8 把持筒

8a 円形部

8b 把持筒グリップ部

8c 中間部

81 基準孔

82 段差部

82a 把持筒側斜面

83 把持筒下方突起

84 飾り溝

85 側端部

9 弁体収容部

91 切欠

10 グリップ部

11 吐出部

11a 水形表示マーク 12 SEリング

13 切替基準表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】

供給された水を受け入れるノズル本体と、供給された水を吐出する吐出部と、ノズル本体に組みつけられてノズル本体をカバーする把持筒とを備えた散水ノズルにおいて、該把持筒に基準孔を穿設するとともに該ノズル本体に該基準孔と係合する突起部を設け、該基準孔と該突起部により把持筒とノズル本体を係合させるとともに散水ノズルの吐出状態を識別するための基準表示を形成した散水ノズルの係合・表示構造。
【請求項2】

前記吐出部は水形切替および/または止水が可能であり、吐出部側に設けられた表示と前記基準表示とを位置合わせすることで水形切替および/または吐止水を選択することを特徴とする請求項1記載の散水ノズル。
【請求項3】

前記突起部が、基部と、水平部と、表示部とからなる鉤状突起部

であることを特徴とする、請求項1または2記載の散水ノズル。
【請求項4】

前記突起部が、下垂部を有する

ことを特徴とする、請求項3記載の散水ノズル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3(a)】
image rotate

【図3(b)】
image rotate

【図3(c)】
image rotate

【図3(d)】
image rotate

【図3(e)】
image rotate

【図3(f)】
image rotate

【図4(a)】
image rotate

【図4(b)】
image rotate

【図4(c)】
image rotate

【図4(d)】
image rotate

【図4(e)】
image rotate

【図4(f)】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7(a)】
image rotate

【図7(b)】
image rotate

【図7(c)】
image rotate

【図7(d)】
image rotate

【図7(e)】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−43583(P2006−43583A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228104(P2004−228104)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(592243553)株式会社タカギ (31)
【Fターム(参考)】