説明

散水ノズル

【課題】ノズル本体内のゴミの清掃作業を簡便に行える画期的な散水ノズルを提供する。
【解決手段】ノズル本体1の上部開口部1aに散水路6を形成した環部材2を嵌入し、この環部材2の挿通孔7に弁筒8を挿通し、この弁筒8の螺子部10を前記ノズル本体1の内壁部の螺合部9に螺合することで、環部材2を前記上部開口部1aに押さえ込み状態に嵌着すると共にノズル本体1の通水路4をこの弁筒8を介して上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとに止水状態に分割した構成とし、この弁筒8に弁機構により開閉する弁口11を開弁することで上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとを連通して前記散水路6から散水できるようにし、且つ前記弁筒8を螺動操作して上動させることでこの弁筒8を介した上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとの止水状態が解除され上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとを連通せしめる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば路面に埋設され、この路面上に散水を行う散水ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地面に埋設し消雪を行う散水ノズルとしては、例えば、本出願人の先願である特開2005−199273号公報に開示されているように、ノズル本体の上部開口部に、環部材を嵌入し得る嵌合凹部を設け、この環部材にはノズル本体の通水路と連通して水の噴出方向及び噴出角度を規定する散水路を形成すると共に、弁筒が挿通される挿通孔を形成し、この挿通孔には前記弁筒の頭部が係止する係止段部を設け、この弁筒の下端部周面には前記ノズル本体の内壁部に形成された螺合部と螺合する螺子部を設け、この弁筒を前記環部材の挿通孔に挿通し、前記螺子部を螺合部と螺合することで前記ノズル本体に環部材を押さえ込み状態に止着嵌合した構成とされ、この弁筒に設けた弁機構により開閉する弁口の開閉調整により散水量を調節して環部材の散水路から散水できるように構成したものがある。
【0003】
この散水ノズルは、例えば、地面に埋設された一本の送水管にこの散水ノズルを複数個、並設状態に接続して、夫々の散水量が均一となるように弁機構により散水量を各々調整して使用される。
【0004】
ところで、この種の散水ノズルは、ノズル本体内の通水路に砂や泥などのゴミが残存し易く、このゴミが例えば散水路や弁口などの目詰まりを生じさせ、散水量が減ったり完全に散水が停止してしまうなどの散水不良の原因となる。
【0005】
そこで、従来から、ノズル本体内から環部材と弁筒とを取り外して、このノズル本体内の砂や泥をノズル本体内から流し出すというノズル清掃作業が行われている。具体的には、先ず送水管の送水ポンプの運転を停止し、次いでノズル本体から環部材と弁筒とを脱嵌し、次いで送水ポンプを運転させノズル本体に送水し、このノズル本体内の砂や泥を流し、次いで再び送水ポンプを停止し、ノズル本体内に環部材と弁筒とを螺合止着するという非常に手間のかかる作業が実施される。
【0006】
尚、例えば送水ポンプを運転させたまま(送水状態のまま)ノズル本体内から環部材や弁筒を抜出しようとした場合、螺動操作によってノズル本体の螺合部と弁筒の螺子部との螺合状態が解除された途端に、強力な送水圧によりノズル本体内から環部材や弁筒が勢い良く飛び出し作業者にとって危険な場合があり、しかもこの際、ノズル本体の上部開口部からゴミの混じった汚水が勢い良く上方に噴き上がって作業者にかかってしまう懸念もあり、また、一度ノズル本体内から取り外した環部材や弁筒を、この送水状態のまま、送水圧に抗ってノズル本体内に嵌挿して取り付ける作業も困難といえる。従って、やはりノズル清掃を行うべくノズル本体から環部材や弁筒を取り外したり、取り付けたりする作業を行う場合は、どうしても送水ポンプを一々停止させたり運転させたりしていた。
【0007】
このように、従来、この種の散水ノズルにおいては、ノズル清掃作業を行う際、一々送水ポンプを停止したり運転したりする作業が必須で、この点、作業性が悪く非常に厄介な上に、送水ポンプの運転中、即ち散水を行っている最中に目詰まりしている散水ノズルを発見しても散水中なのでノズル清掃は行えず、どうしてもノズル清掃を行いたい場合には送水ポンプの運転を一時停止させ、その間、この送水ポンプを接続した送水管に接続されている複数個の散水ノズル全ての散水を一時停止させなければ清掃が行えないなど、非常に不便で、実用上の大きな問題点である。
【0008】
【特許文献1】特開2005−199273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みて完成したものであって、ノズル本体の螺合部に螺合した弁筒を螺動操作するだけで、この弁筒をノズル本体から取り外すことなく、このノズル本体に螺合状態(抜け止め状態)としたままノズル本体内の例えば砂や泥などのゴミを上部開口部から流し出す清掃作業が行え、よって、ノズル清掃作業を行う際、例えばノズル本体内から環部材や弁筒を取り外したり、清掃作業後に再びノズル本体内に環部材や弁筒を嵌挿して取り付けたりといった作業が不要なので、この取り付け・取り外し時に必須だった送水ポンプの停止も不要で、しかもノズル本体の上部開口部から汚水が噴き上がり作業者にかかる心配もないなど、極めて作業性良く簡便にノズル清掃作業を行える画期的な散水ノズルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
ノズル本体1の上部開口部1aに、環部材2を嵌入し得る嵌合凹部3を設け、この嵌合凹部3に嵌入される環部材2にはノズル本体1の通水路4と連通する散水路6と、弁筒8が挿通される挿通孔7とを設け、この挿通孔7には前記弁筒8の頭部8aが係止する係止段部7aを設け、この弁筒8を前記ノズル本体1の内壁部に設けた弁筒挿通部14に配設すると共にこの弁筒8の周面には前記弁筒挿通部14の内面部に形成した螺合部9と螺合する螺子部10を設け、この弁筒8を前記環部材2の挿通孔7に挿通して前記螺子部10と螺合部9とを螺合することで、前記環部材2を前記ノズル本体1の嵌合凹部3に押さえ込み状態に止着嵌合すると共に、この弁筒8が前記弁筒挿通部14に配設されて前記ノズル本体1の通水路4をこの弁筒8を介して上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとに止水状態に分割する構成とし、この上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとの導水路としての弁筒8に、弁機構により開閉する弁口11を設け、この弁口11を開弁することで前記上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとを連通して前記下流側通水路4Bと連通する散水路6から散水を行えるように構成し、且つ、前記弁筒挿入部14を上流側弁筒挿通部14Aと下流側弁筒挿通部14Bとに分割した構成とし、この上流側弁筒挿通部14Aと下流側弁筒挿通部14Bとの間の前記下流側通水路4Bである中央通水空間部15と、前記ノズル本体1の上部開口部1aとを連通する清掃用通水部16を前記下流側弁筒挿通部14Bに設け、前記弁筒8の螺子部10を螺合する前記螺合部9をこの下流側弁筒挿通部14Bの内壁部に形成し、前記弁筒8を螺動操作して、この弁筒8の螺子部10を前記螺合部9に螺合させたまま、この弁筒8を上流側弁筒挿通部14Aから抜出することで、上流側弁筒挿通部14Aが開放して前記上流側通水路4Aの水を下流側通水路4Bである中央通水空間15に通水し前記清掃用通水路16を介してノズル本体1の開放された上部開口部1aから外部に導出させ得るように構成したことを特徴とする散水ノズルに係るものである。
【0012】
また、前記弁筒挿通部14の下流側弁筒挿通部14Bは、前記ノズル本体1の内壁部の一部を内方突出状態に形成すると共に突出端面に前記螺合部9を形成してこのノズル本体1内に設けた構成とし、この下流側弁筒挿通部14Bに切り欠き孔若しくは肉抜き孔を形成して前記清掃用通水路16をこの下流側弁筒挿通部14Bに設けた構成としたことを特徴とする請求項1記載の散水ノズルに係るものである。
【0013】
また、前記弁筒挿通部14の上流側弁筒挿通部14Aは、ノズル本体1の前記下流側弁筒挿通部14Bよりも下方側にして上流側位置の内壁部の一部を内方に突出状態に形成してこのノズル本体1内に設けた構成としたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の散水ノズルに係るものである。
【0014】
また、前記弁筒8を螺動操作して、この弁筒8の螺子部10を前記螺合部9に螺合させたまま、この弁筒8を上流側弁筒挿通部14Aから抜出することで、上流側弁筒挿通部14Aが開放して前記上流側通水路4Aの水を下流側通水路4Bである中央通水空間15に通水し前記清掃用通水路16を介してノズル本体1の開放された上部開口部1aから外部に少なくとも散水時よりも増大な流量でノズル本体1内から外方に水を導出させ得るように、前記弁筒8の螺子部10及びノズル本体1の螺合部9の形成ストロークを長く設定して、この弁筒8の螺子部10を前記螺合部9に螺合させたままこの弁筒8を上下に螺動できるストローク範囲を長く設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の散水ノズルに係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、例えば路面などに埋設し、弁筒に設けた弁機構により弁口を開口して散水路から散水を行えることは勿論、弁筒を螺動操作することで、この弁筒の螺子部をノズル本体の内壁部(下流側弁筒挿通部の内壁部)の螺合部と螺合した状態のまま、弁筒を挿通していた上流側弁筒挿通部から弁筒を抜出してこの上流側弁筒挿通部を開放し、この上流側弁筒挿通部の開放により、前記弁筒を介して止水状態に分割されたノズル本体の上流側通水路と下流側通水路とを、この弁筒の弁口を介さずとも連通した状態にできる。また、この弁筒の螺動操作に伴って、ノズル本体の上部開口部の嵌合凹部に押さえ込み状態に止着嵌合していた環部材の押さえ込みも解除され、環部材と嵌合凹部との間に間隙を生じさせノズル本体の上部開口部を開口状態にできる。
【0016】
即ち、散水時の通水経路は、上流側通水路と下流側通水路とが導水路としての弁筒の弁口を介してのみしか通水しておらず、散水には十分でも、ノズル本体内の砂や泥を流し出すには不十分な流量しか得られない。これに対し、上記の通り弁筒を螺動操作した場合は、上流側通水路と下流側通水路とを弁筒を介さずに直接的に連通させ、且つノズル本体の上部開口部も開放した状態(以下、清掃用開放状態)とすることができ、それだけ散水時に比して増大な流量が得られ、このノズル本体内の例えば砂や泥などのゴミを上部開口部から外部に流し出すことも可能である。
【0017】
その上、弁筒を螺動操作して上記の清掃用開放状態とした場合にも、弁筒はノズル本体に対して螺合状態(抜け止め状態)であり、例えば従来例のように、ノズル清掃作業を行う際に一々弁筒の螺子部をノズル本体の螺合部から螺脱し、このノズル本体内から弁筒や環部材を取り出す必要はない(即ち、従来の散水ノズルは、図4に図示したように、弁筒を介して止水状態に分割した上流側通水路と下流側通水路とを、弁筒を介さずに直接連通させるためには、構造上、弁筒の下端部周面に形成した裸子部をノズル本体内の弁筒挿通部の内壁部に形成した螺合部から螺脱し、この弁筒挿通部から弁筒を抜出しなければならない。)。
【0018】
よって、これまではノズル清掃作業を行う場合、ノズル本体内から弁筒や環部材を取り出すために送水ポンプの運転を一々停止させなければならなかったところ、本発明においては、ノズル本体から環部材や弁筒を取り出さず、螺合状態(抜け止め状態)のままノズル本体内からゴミを流し出すことができ、しかもこの際、ノズル本体の開放された上部開口部の少し離れた上方位置に環部材が位置されているので、ノズル本体の上部開口部から汚水が真上に勢い良く噴き上がって作業者にかかる心配も無いなど、厄介なノズル清掃作業を簡便に実施でき、例えば一本の送水管に接続された複数個の散水ノズルのうちの一つが目詰まりしていた場合に、これまでのように送水ポンプの運転を停止し送水管に接続された全ての散水ノズルからの散水を停止させる必要は無く、送水状態のまま目詰まりした散水ノズルだけを良好に清掃できるなど、極めて実用性に秀れた画期的な散水ノズルとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0020】
ノズル本体1を例えば路面や地面などに埋設する。
【0021】
このノズル本体1の通水路4は弁筒8を介して上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとに止水状態に分割されており、この弁筒8の弁機構よりこの弁筒8の弁口11を開口することで、前記上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとが連通し、この下流側通水路4Bと連通する散水路6から散水が行えることとなる。
【0022】
また、弁筒8は、ノズル本体1の上部開口部1aに設けた嵌合凹部3に嵌入される環部材2に設けた嵌挿孔7にこの弁筒8を嵌挿し、この弁筒8を前記ノズル本体1の内壁部に設けた弁筒挿通部14に配設し、この弁筒挿通部14に形成した螺合部9と、弁筒8の周面に設けた螺子部10とを螺合してこのノズル本体1に設けている。この弁筒8の頭部8aは前記環部材2の挿通孔7の係止段部7aに係止しており、この弁筒8をノズル本体1に締め付け螺合することで前記環部材2は嵌合凹部3に押さえ込み状態に止着嵌合されている。
【0023】
従って、弁筒8をノズル本体1から取り出す方向(上方向)に螺動操作すると、環部材2も嵌合凹部3に対して押さえ込み止着が解除され、ノズル本体1の上部開口部1aに対して離間上動し、この上部開口部1aが開放状態となる。
【0024】
また、弁筒8は、螺子部10を弁筒挿通部14の下流側弁筒挿通部14Bに形成した螺合部9に螺合しており、この螺合部9と前記螺子部10とを螺合状態としたまま、この弁筒8を螺動操作して、この弁筒8を上流側弁筒挿通部14Aから抜出することで上流側弁筒挿通部14Aが開放し、前記上流側通水路4Aの水が下流側通水路4Bである中央通水空間15に通水し、この中央通水空間15とノズル本体1の上部開口部1aとを連通する清掃用通水路16を介して、ノズル本体1の開放された上部開口部1aから外部に導出させ得るようになる。
【0025】
その上、この弁筒8は、周面に設けた裸子部10を、上流側と下流側とに分割された弁筒挿通部14の下流側弁筒挿通部14Bに形成された螺合部9と螺合しているので、たとえ上述のように弁筒8を螺動操作して上流側弁筒挿通部14Aから抜出してこの上流側弁筒挿通部14Aを開放しても(上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとを弁筒8を介さずに連通した状態としても)弁筒8とノズル本体1との螺合状態(抜け止め状態)は保持されたままである。
【0026】
よって、本発明は、ノズル本体1から弁筒8を螺脱してこの弁筒8や環部材2をノズル本体1内から取り出す必要がなく、弁筒8をノズル本体1に螺合状態(抜け止め状態)としたまま、ノズル本体内に勢い良く水を流通させ上部開口部から砂や泥などのゴミを流し出すことができることとなる。また、環部材2がノズル本体1の上部開口部1aから退避上動してこの上部開口部1aからやや離れた上方に位置しているので、ノズル本体1の上部開口部1aから汚水が真上に勢い良く噴き上がって作業者にかかる心配も無いなど、厄介なノズル清掃作業を簡便に実施できることとなる。
【0027】
また、特に、例えば前記弁筒8の螺子部10及びノズル本体1の螺合部9の形成ストロークを長く設定し、これにより、この弁筒8の螺子部10を前記螺合部9に螺合させたままの状態で上下に螺動できるストローク範囲をそれだけ長く設定した構成とすれば、上述したように、前記弁筒8を螺動操作して、この弁筒8の螺子部10を前記螺合部9に螺合させたまま、この弁筒8を上流側弁筒挿通部14Aから抜出することで、上流側弁筒挿通部14Aが開放して前記上流側通水路4Aの水を下流側通水路4Bである中央通水空間15に通水し前記清掃用通水路16を介してノズル本体1の開放された上部開口部1aから外部に水を導出させる場合に、それだけ弁筒8を上方に大きく螺動させ上流側弁筒挿通部14Aを大きく開放でき、更に環部材2もノズル本体1の上部開口部1aから大きく退避上動させそれだけこの上部開口部1aも大きく開放でき、よって、一層ノズル本体1内に増大な流量で水を通水させ得ることとなり、ひいては、少なくとも散水時よりも増大な、例えばノズル本体1内の砂や泥などのゴミを上部開口部1aから確実に流し出せるような良好な流量でノズル本体1内に水を通水させることを一層確実に達成できることとなる。
【0028】
また、例えば、前記弁筒挿通部14の下流側弁筒挿通部14Bは、前記ノズル本体1の内壁部の一部を内方突出状態に形成すると共に突出端面に前記螺合部9を形成してこのノズル本体1内に設けた構成とし、この下流側弁筒挿通部14Bに切り欠き孔若しくは肉抜き孔を形成して前記清掃用通水路16をこの下流側弁筒挿通部14Bに設けた構成とすれば、ノズル本体1の内壁部の形状を適宜な突出形状とするだけで簡易にこのノズル本体1内に下流側弁筒挿通部14Bを設けることができ、更にこの突出状態の内壁部に切り欠き孔若しくは肉抜き孔を形成してこれを前記清掃用通水路16とすることで、前記下流側通水路4Aである中央通水空間部15とノズル本体1の上部開口部1aとを良好に通水状態とできる清掃用通水路16をノズル本体1内に簡易に形成できるなど、簡易に設計実現可能な一層実用性に秀れた構成となる。
【0029】
また、例えば、前記弁筒挿通部14の上流側弁筒挿通部14Aは、ノズル本体1の前記下流側弁筒挿通部14Bよりも下方側にして上流側位置の内壁部の一部を内方に突出状態に形成してこのノズル本体1内に設けた構成とした場合には、ノズル本体1の内壁部の形状を適宜な突出形状とするだけで簡易にこのノズル本体1内に上流側弁筒挿通部14Aを設けることができ、簡易に設計実現可能な一層実用性に秀れた構成となる。
【実施例】
【0030】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0031】
本実施例は、ノズル本体1の上部開口部1aに、環部材2を嵌入し得る嵌合凹部3を設け、この嵌合凹部3に嵌入される環部材2にはノズル本体1の通水路4と連通する散水路6と、弁筒8が挿通される挿通孔7とを設け、この挿通孔7には前記弁筒8の頭部8aが係止する係止段部7aを設け、この弁筒8を前記ノズル本体1の内壁部に設けた弁筒挿通部14に配設すると共にこの弁筒8の周面には前記弁筒挿通部14の内面部に形成した螺合部9と螺合する螺子部10を設け、この弁筒8を前記環部材2の挿通孔7に挿通して前記螺子部10と螺合部9とを螺合することで、前記環部材2を前記ノズル本体1の嵌合凹部3に押さえ込み状態に止着嵌合すると共に、この弁筒8が前記弁筒挿通部14に配設されて前記ノズル本体1の通水路4をこの弁筒8を介して上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとに止水状態に分割する構成とし、この上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとの導水路としての弁筒8に、弁機構により開閉する弁口11を設け、この弁口11を開弁することで前記上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとを連通して前記下流側通水路4Bと連通する散水路6から散水を行えるように構成した散水ノズルである。
【0032】
図1〜3に図示したように、弁筒挿入部14は、上流側弁筒挿通部14Aと下流側弁筒挿通部14Bとに分割した構成である。
【0033】
また、この弁筒挿通部14の下流側弁筒挿通部14Bは、図1〜3に図示したように、前記ノズル本体1の内壁部の一部を内方突出状態に形成して中央部に下流側弁筒挿通孔14bを形成すると共に、この下流側弁筒挿通部14Bの突出端面にして下流側弁筒挿通孔14bの内面である部位に前記螺合部9を形成した構成である。
【0034】
また、前記下流側通水路4Bにして、上流側弁筒挿通部14Aと下流側弁筒挿通部14Bとの間の空間を中央通水空間部15とすると、この中央通水空間部15と前記ノズル本体1の上部開口部1aとが連通するように清掃用通水部16をこの下流側弁筒挿通部14Bに設けている。具体的には、図3に図示したように、この下流側弁筒挿通部14Bに、切り欠き孔若しくは肉抜き孔を形成して(本実施例においては、図3のようにノズル本体1の下流側弁筒挿通部14Bを形成する突出状の内壁部に肉抜き孔を周方向に所定間隔を置いて複数形成して)、これを前記清掃用通水路16とする。
【0035】
また、この弁筒挿通部14の上流側弁筒挿通部14Aは、図1〜3に図示したように、ノズル本体1の前記下流側弁筒挿通部14Bよりも下方側にして上流側位置の内壁部の一部を内方に突出状態に形成して中央部に弁筒8が略合致する孔形状を有する上流側弁筒挿通孔14aを形成してこのノズル本体1内に設けた構成である。
【0036】
また、このノズル本体1は、ノズル本体1の下部にして上流側通水路4Aを、送水管の枝管(送水管から各散水ノズルを接続するために立設される管)に被嵌するための枝管被嵌部とし、この枝管被嵌部26の天部を前記上流側弁筒挿通部14Aとしている。
【0037】
従って、ノズル本体1の上流側通水路4である枝管被嵌部26を送水管に立設される枝管に被嵌してこのノズル本体1を送水管に接続する。
【0038】
尚、図中、符号25は、ノズル本体1の前記枝管被嵌部26を送水管の枝管に被嵌した際に、止水状態に密着嵌合し得るようにこのノズル本体1の上流側通水路4A内壁部にして枝管被嵌部26内面部に付設した弾性材25である。
【0039】
本実施例は、前記弁筒8の螺子部10を螺合する前記螺合部9をこの下流側弁筒挿通部14Bの内壁部に形成し、図2に図示したように、前記弁筒8を螺動操作(ノズル本体1から弁筒8を取り出す方向、即ち弁筒8が上動するように螺動操作)して、この弁筒8の螺子部10を前記螺合部9に螺合させたまま、この弁筒8を上流側弁筒挿通部14Aから抜出することで、上流側弁筒挿通部14Aが開放して前記上流側通水路4Aの水を下流側通水路4Bである中央通水空間15に通水し前記清掃用通水路16を介してノズル本体1の開放された上部開口部1aから外部に導出させ得るように構成している。
【0040】
また、本実施例の弁筒8は、具体的には、図3に図示したように、周面に弁用孔17aを設けた外筒体17に、周面に弁用孔18aを設けた内筒体18を嵌入し、この内筒体18の上方周面に周設した凹条18bに、前記外筒体17の周面に設けたピン挿通孔19を介して挿通した止着ピン20の先端を差し込み配設してこの外筒体17内に内筒体18を相対回動自在に抜け止め嵌挿した構成とする。この弁筒8の弁口11は、前記外筒体17の弁用孔17aと内筒体18の弁用孔18aとから成り、この弁筒8の弁機構は、前記外筒体17に対して内筒体18を相対回動させて外筒体17の弁用孔17aと内筒体の弁用孔18aとを位置重合せしめることで弁口11を開口し、この弁口11を構成する弁用孔17aと弁用孔18aとの位置重合度合いを可変調整することでこの弁口11の開口量を調整するように構成する。
【0041】
尚、この弁筒8の前記外筒体17の天部を径大に形成して、環部材2の挿通孔7の係止段部7aと係止する頭部8aを設けた構成とする。また、図中、18cは、ドライバなどの回動工具を差し込んで、外筒体17に対して内筒体18を相対回動させるための差し込み孔18cであり、図中21は、外筒体17と内筒体18との間隙から水漏れが生ずることを阻止すべくこの内筒体18の前記凹条18bの上下位置に被嵌した弾性を有するOリング21である。
【0042】
また、この弁筒8の外筒体17の下部(下端部)周面には弾性を有するOリング22を被嵌して、図1に図示したように、この弁筒8の下端部を、上流側弁筒挿通部14Aに挿通配設した際に、この弁筒8の下端部にして前記外筒体17の周面に被嵌したOリング22がこの上流側弁筒挿通部14A内面と弾圧当接して、完全に止水状態に密着当接するように構成している。
【0043】
また、本実施例では、弁筒8の螺子部10及びノズル本体1の螺合部9の形成ストロークを長く設定し、この弁筒8の螺子部10を前記螺合部9に螺合させたまま、この弁筒8が上下方向に螺動可能なストローク範囲が長くなるように設定している。
【0044】
従って弁筒8には下端側から上端側までできるだけ長い形成ストロークに前記螺子部10を形成している。具体的には、弁筒8の外筒体17の下端側にして前記Oリング22を設けた部位の直上部位から上端側まで至る長い形成ストロークに設定している。尚、本実施例では、図3に図示したように、この弁筒8の外筒体17の垂下途中位置の一部に、螺子部10を形成しない螺子非形成部23を設けて、これを前記弁口11(を構成する外筒体17の弁用孔17a)を形成するための弁口形成スペースとしている。
【0045】
また、この螺子非形成部23の上下ストロークは、前記ノズル本体1の下流側弁筒挿通部14Bに形成した螺合部9の形成ストロークよりも短く設定している。
【0046】
従って、図2に図示したように、この弁筒8の周面の前記螺子非形成部23がノズル本体1の螺合部9と対面する位置にきても、この弁筒8の螺子部10の前記螺子非形成部23を介して上側の螺子部10か、下側の螺子部10の何れか一方若しくは双方が確実に螺合部9と螺合状態となるように構成している。
【0047】
尚、この螺子非形成部23を設けず、弁筒8の外筒体17の下端側から上端側まで連続して螺子部10を形成し、この螺子部10の一部に弁口11(を構成する弁用孔17a)を穿設する構成としても良いが、この場合は、弁用孔17aを穿設する際に周囲の螺子部10の螺子山形状を変形させてしまう懸念などがあり弁用孔17aの形成が面倒であるが、この点、本実施例は弁口形成スペースとしての螺子非形成部23を設けているので、弁用孔17aを簡易に形成できる。しかも上記の通り、螺子非係止部23のストロークを螺合部9の形成ストロークより短く設定すれば、この螺子非形成部23によって螺合状態が阻害されることも無い。
【0048】
従って本実施例は、弁筒8の上下に長い形成ストロークにわたって螺子部10を形成しているので、この弁筒8を螺動操作し、この弁筒8の螺子部10を前記螺合部9に確実に螺合させた状態を保持したまま、この弁筒8を大きく上方に螺動させることができ、それに伴って環部材2もノズル本体1の上部開口部1aからそれだけ大きく退避上動させることができる。即ち、弁筒8とノズル本体1とを螺脱させることなく、上流側弁筒挿通部14Aを大きく開放でき、且つノズル本体1の上部開口部1aを大きく開口できる。
【0049】
よって、この弁筒8を大きく上方に螺動操作した際に、それだけ通水経路の通水抵抗が少なく、散水時に比して増大な流量でこのノズル本体1内に通水が行える。
【0050】
また、図3及び図4は、本実施例の散水ノズルを分解した状態を図示したものであって、図3に図示したように、外筒体17に内筒体18を嵌入止着してなる弁筒8を、環部材2の挿通孔7に挿通して、この挿通孔7の内面の係止段部7aと弁筒8の頭部8aとを当接係止させ、更にこの挿通孔7内にCリング13Aを加締めた状態で嵌入し、加締め状態を解除することでこのCリング13Aを挿通孔7の内壁面に周設した凹条13Bに嵌め込み配設し、図1に図示したように、この凹条13Bから突出するCリング13Aにより挿通孔7内の前記弁筒8の頭部8aを抜け止め状態に当接係止した構成とする。更に、この環部材2を抜け止状態に設けた弁筒8を、図4に図示したようにノズル本体1の上部開口部1aからノズル本体1内に嵌挿して前記螺子部10をノズル本体1の螺合部9に螺合してこのノズル本体1に弁筒8及び環部材2を螺合止着する構成である。
【0051】
また、環部材2に設けた散水路6は、図3に図示したように、環部材2の周面に凹溝を形成してこの環部材2の周面に設けた構成とし、散水時には、前記天部材1の上部開口部1aの嵌合凹部3と、この凹溝状の散水路6との間隙を通水する。尚、この環部材2の下部には、前記ノズル本体1内の下流側弁筒挿通部14Bの清掃用通水部16内に嵌挿してこの環部材2をノズル本体1に対して周り止めする周り止め突部2aを突設している。
【0052】
尚、図中24は弁筒8の内筒体18の差し込み孔18cを被覆するように環部材2の挿通孔7に嵌合配設する弾性カバー体24である。
【0053】
本実施例は、以上のように構成したから、ノズル本体1内に弁筒8及び環部材2を螺合止着すると、図1に図示したように、ノズル本体1の上流側通水路4Aの上側にして下流側の開口部である上流側弁筒挿通部14Aの上流側弁筒挿通部14aに弁筒8の下端部が密着当接状態に嵌挿配設され、ノズル本体1の通水路4が、この弁筒8を介して上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとに止水状態に分割される。
【0054】
ノズル本体1に上流側から送水が合った場合、この弁筒8の弁口11を開弁すると、上流側通水路4Aの水は前記弁筒8内方を通水して、この弁筒8の弁口11を介し、この弁筒8の外方にしてこの弁筒8とノズル本体1の内壁部との空隙スペースに設けられた下流側通水路4Bに導水され、この下流側通水路4Bで整流されて上部の散水路6から散水される。
【0055】
よって、本実施例は、ノズル本体1を例えば路面や地面などに埋設し、弁筒8の弁機構によって散水量を調整して散水路6から路面や地面などに散水を行える。
【0056】
また、弁筒8を、ノズル本体1から取り出す方向(上方向)に螺動操作することで、図2に図示したように、ノズル本体1の上部開口部1aに対して離間上動し、この上部開口部1aが開放状態となると共に、弁筒8の下端部が上流側弁筒挿通部14Aから抜出して上流側弁筒挿通部14Aが開放し、上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとが前記弁筒8を介さずとも直接連通された状態となる。
【0057】
この際、この弁筒8は、周面に設けた裸子部10を、上流側と下流側とに分割された弁筒挿通部14の下流側弁筒挿通部14Bに形成された螺合部9と螺合しているので、たとえ上述のように弁筒8を螺動操作して上流側弁筒挿通部14Aから抜出してこの上流側弁筒挿通部14Aを開放しても(上流側通水路4Aと下流側通水路4Bとを弁筒8を介さずに連通した状態としても)弁筒8とノズル本体1との螺合状態(抜け止め状態)は保持されたままである。
【0058】
よって、本実施例は、ノズル本体1から弁筒8を螺脱してこの弁筒8や環部材2をノズル本体1内から取り出す必要がなく、弁筒8をノズル本体1に螺合状態(抜け止め状態)としたまま、ノズル本体内に勢い良く水を流通させ上部開口部から砂や泥などのゴミを流し出すことができることとなる。また、環部材2がノズル本体1の上部開口部1aから退避上動してこの上部開口部1aからやや離れた上方に位置しているので、ノズル本体1の上部開口部1aから汚水が真上に勢い良く噴き上がって作業者にかかる心配も無いなど、厄介なノズル清掃作業を簡便に実施できる極めて実用性に秀れた画期的な散水ノズルである。
【0059】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施例に係る散水ノズルの説明正断面図である。
【図2】本実施例に係る散水ノズルの説明正断面図である。
【図3】本実施例に係る散水ノズルの説明分解斜視図である。
【図4】本実施例に係る散水ノズルの説明分解斜視図である。
【図5】従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 ノズル本体
1a 上部開口部
2 環部材
3 嵌合凹部
4 通水路
4A 上流側通水路
4B 下流側通水路
6 散水路
7 挿通孔
7a 係止段部
8 弁筒
8a 頭部
9 螺合部
10 螺子部
11 弁口
14 弁筒挿通部
14A 上流側弁筒挿通部
14B 下流側弁筒挿通部
15 中央通水空間部
16 清掃用通水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体の上部開口部に、環部材を嵌入し得る嵌合凹部を設け、この嵌合凹部に嵌入される環部材にはノズル本体の通水路と連通する散水路と、弁筒が挿通される挿通孔とを設け、この挿通孔には前記弁筒の頭部が係止する係止段部を設け、この弁筒を前記ノズル本体の内壁部に設けた弁筒挿通部に配設すると共にこの弁筒の周面には前記弁筒挿通部の内面部に形成した螺合部と螺合する螺子部を設け、この弁筒を前記環部材の挿通孔に挿通して前記螺子部と螺合部とを螺合することで、前記環部材を前記ノズル本体の嵌合凹部に押さえ込み状態に止着嵌合すると共に、この弁筒が前記弁筒挿通部に配設されて前記ノズル本体の通水路をこの弁筒を介して上流側通水路と下流側通水路とに止水状態に分割する構成とし、この上流側通水路と下流側通水路との導水路としての弁筒に、弁機構により開閉する弁口を設け、この弁口を開弁することで前記上流側通水路と下流側通水路とを連通して前記下流側通水路と連通する散水路から散水を行えるように構成し、且つ、前記弁筒挿入部を上流側弁筒挿通部と下流側弁筒挿通部とに分割した構成とし、この上流側弁筒挿通部と下流側弁筒挿通部との間の前記下流側通水路である中央通水空間部と、前記ノズル本体の上部開口部とを連通する清掃用通水部を前記下流側弁筒挿通部に設け、前記弁筒の螺子部を螺合する前記螺合部をこの下流側弁筒挿通部の内壁部に形成し、前記弁筒を螺動操作して、この弁筒の螺子部を前記螺合部に螺合させたまま、この弁筒を上流側弁筒挿通部から抜出することで、上流側弁筒挿通部が開放して前記上流側通水路の水を下流側通水路である中央通水空間に通水し前記清掃用通水路を介してノズル本体の開放された上部開口部から外部に導出させ得るように構成したことを特徴とする散水ノズル。
【請求項2】
前記弁筒挿通部の下流側弁筒挿通部は、前記ノズル本体の内壁部の一部を内方突出状態に形成すると共に突出端面に前記螺合部を形成してこのノズル本体内に設けた構成とし、この下流側弁筒挿通部に切り欠き孔若しくは肉抜き孔を形成して前記清掃用通水路をこの下流側弁筒挿通部に設けた構成としたことを特徴とする請求項1記載の散水ノズル。
【請求項3】
前記弁筒挿通部の上流側弁筒挿通部は、ノズル本体の前記下流側弁筒挿通部よりも下方側にして上流側位置の内壁部の一部を内方に突出状態に形成してこのノズル本体内に設けた構成としたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の散水ノズル。
【請求項4】
前記弁筒を螺動操作して、この弁筒の螺子部を前記螺合部に螺合させたまま、この弁筒を上流側弁筒挿通部から抜出することで、上流側弁筒挿通部が開放して前記上流側通水路の水を下流側通水路である中央通水空間に通水し前記清掃用通水路を介してノズル本体の開放された上部開口部から外部に少なくとも散水時よりも増大な流量でノズル本体内から外方に水を導出させ得るように、前記弁筒の螺子部及びノズル本体の螺合部の形成ストロークを長く設定して、この弁筒の螺子部を前記螺合部に螺合させたままこの弁筒を上下に螺動できるストローク範囲を長く設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の散水ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−289843(P2007−289843A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119658(P2006−119658)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(503231055)株式会社アサノトレード (8)
【Fターム(参考)】