説明

散水ノズル

【課題】両端部および中央部の散水距離が同等であり、効率よく散水できる散水ノズルを提供する。
【解決手段】液体供給手段に接続するノズル本体13を備え、このノズル本体13の先端部にカバー体25を設ける。ノズル本体13に二つの放出孔23を並列して形成した放出部材22を設ける。カバー体25に側部から先端部にわたって連続して開口したスリット部26を設ける。さらに、カバー体25の内部に液体が衝突して液体の水流が変化する分散壁部28を設ける。そして、二つの放出孔23からカバー体25の内部へ放出した液体は、分散壁体28にて水流が変化し分散する。この水流が分散した液体がスリット部26から外部へ放出するので、両端部および中央部の散水距離が同等であり、効率よく散水できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば駐車場や道路、公園等にて水等の液体を散水する散水ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば駐車場や道路、公園等にて水等の液体を散水する散水ノズルとしては、図6に示される構造の散水ノズル1が知られている。この散水ノズル1は、ノズル本体2と、このノズル本体2の先端部に取り付けられたカバー体3とを備え、前記ノズル本体2は、放出孔4が形成された放出部材5を有し、前記カバー体3は、このカバー体3先端部の一部が開口されたスリット部6を有するものである。
【0003】
また、特許文献1に示されるように、散水用ノズル本体と、この散水用ノズル本体の上部に散水孔が設けられた散水口部を備え、この散水口部は、前記散水用ノズル本体の上面に形成された口部材嵌着凹部と、この口部材嵌着凹部に嵌着された散水口構成部材とにより構成され、散水口構成部材は、内側リング部と、外側リング部とに分割され、これら内側リング部および外側リング部の分割面にて散水孔形成用凹溝が形成され、円周方向に長い広角拡散型の散水口を形成した散水用ノズルが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−195398号公報(第2−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した図6の散水ノズルでは、カバー体の内部で水流が中央に集中し易いため、中央部の散水距離が両端部の散水距離に比べて長く、散水形状が略半円形状や略半楕円形状等になってしまう。そして、例えば公園や道路、駐車場等の散水の対象となる場所は、矩形状や正方形状の場合が多く、両端部と中央部との散水距離が異なると、散水距離が最も短い両端部を基準にして散水しなければならないので、効率よく散水できない問題が考えられる。
【0005】
また、特許文献1の散水用ノズルは、円周方向に長い広角拡散型の散水口を形成することにより、散水する水の拡散性を向上させ、広い範囲に散水可能であるが、散水形状が略円形状になってしまうので、図6の散水ノズルと同様に効率よく散水できない問題が考えられる。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、両端部および中央部の散水距離が同等であり、効率よく散水できる散水ノズルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された散水ノズルは、液体供給手段に接続されるノズル本体と、このノズル本体の先端部に設けられたカバー体とを備え、前記ノズル本体は、二つの放出孔が並列して形成された放出部材を有し、前記カバー体は、このカバー体の側部から先端部にわたって連続して開口されたスリット部と、前記カバー体の内部に設けられこのカバー体の内部で水流を変化させる分散壁部とを有するものである。
【0008】
請求項2に記載された散水ノズルは、請求項1に記載された散水ノズルにおいて、並列した二つの放出孔は、カバー体のスリット部に対して略平行に配置されたものである。
【0009】
請求項3に記載された散水ノズルは、請求項1に記載された散水ノズルにおいて、並列した二つの放出孔は、カバー体のスリット部に対して略直交状に配置されたものである。
【0010】
請求項4に記載された散水ノズルは、請求項1ないし3のいずれかに記載された散水ノズルにおいて、スリット部は、両端部の開口幅が中央部の開口幅より広く形成されたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、ノズル本体が二つの放出孔が形成された放出部材を有し、カバー体がスリット部と分散壁部とを有することにより、前記二つの放出孔から前記カバー体の内部へ放出された液体は、前記分散壁部に衝突して水流が変化し、この水流の変化した液体が、前記スリット部から散水されるので、水流が中央部に集中せず、両端部および中央部の散水距離が同等になり、効率よく散水できる。
【0012】
請求項2に記載された発明によれば、並列した二つの放出孔が、スリット部に対して略平行に配置されたことにより、ノズル本体からカバー体の内部へ放出された液体が分散壁部に衝突し難く液体の水流が変化し難いので、縦方向への散水距離を向上できる。
【0013】
請求項3に記載された発明によれば、並列した二つの放出孔が、スリット部に対して略直交状に配置されたことにより、ノズル本体からカバー体の内部へ放出された液体が分散壁部に衝突し易く液体の水流が変化し易いので、横方向への散水距離を向上できる。
【0014】
請求項4に記載された発明によれば、スリット部は、両端部の開口幅が中央部の開口幅より広く形成されたことにより、液体が前記スリット部を通る際に、前記スリット部の両端部側へ分散し易いので、両端部および中央部の散水距離を同等に維持し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成について図1ないし図4を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1に示されるように、散水ノズル11は、図示しない液体供給手段に接続され、この液体供給手段から供給される例えば水等の液体を散水する。
【0017】
この散水ノズル11は、図示しない液体供給手段に接続体12を介して接続されるノズル本体13を備えている。
【0018】
接続体12は、ノズル本体13の基端部に接続されるもので、内部に流入路15が形成された筒状の形状である。接続体12の基端部には、図示しない液体供給手段に螺着される螺着部14が形成され、この螺着部14を図示しない液体供給手段に螺着することにより、流入路15が液体供給手段に連通する。
【0019】
また、接続体12とノズル本体13とは、固定部材16により接続されており、固定部材16は、ねじ部材17にてノズル本体13を固定する。
【0020】
ノズル本体13は、内部に流入路19が形成された筒状の形状であり、基端部には、球面継手部20が一体的に形成されている。この球面継手部20は、接続体12の先端部に接続され、球面継手部20の接続により、流入路19が、流入路15および図示しない液体供給手段に連通する。また、ノズル本体13の基端部に球面継手部20を設けることにより、接続体12および図示しない液体供給手段に対するノズル本体13の角度を自在に調整でき、散水ノズル11の散水角度を容易に調整できる。なお、球面継手部20は、Oリング21等を介して接続体12に接続することにより、接続体12とノズル本体13との隙間をより確実に密閉できるので好ましい。さらに、ノズル本体13の先端部には、放出部材22が設けられている。
【0021】
図2(a)および(b)に示されるように、放出部材22には、並列した二つの放出孔23が形成され、これら二つの放出孔23は、断面形状が略円形状であり、放出部材22の断面方向の中心部以外の位置に配置されている。また、放出部材22の基端部には、螺着部24が形成され、この螺着部24をノズル本体13の先端部に螺着することにより、二つの放出孔23は流入路19に連通し、液体は、流入路19を通って放出孔23から放出される。
【0022】
図3に示されるように、ノズル本体13の先端部には、先端部を覆うようにカバー体25が設けられている。放出部材22の放出孔23から放出された液体は、カバー体25の内部へ流入する。
【0023】
カバー体25は、内部が空洞になっており、カバー体25の側部から先端部にわたって連続して開口されてスリット部26が形成されている。ノズル本体13からカバー体25の内部へ流入した液体は、スリット部26から外部へ放出されて散水される。
【0024】
また、カバー体25の内部には、付勢壁部27が形成されおり、スリット部26は、付勢壁部27より先端部側に形成されている。カバー体25の内径は、付勢壁部27より先端部側が付勢壁部27より基端部側に比べて小径になっている。放出部材22から放出された液体は、付勢壁部27より先端部側へ流入すると、断面積の縮小により昇圧されて先端部側へ付勢される。
【0025】
さらに、カバー体25の内部の付勢壁部27より先端部側には、カバー体25の内部で液体の水流を変化させる分散壁部28が形成されている。この分散壁部28は、ノズル本体13の放出孔23からの液体放出方向に対して垂直に形成されており、付勢壁部27にて付勢された液体が分散壁部28に衝突して、液体の水流を変化させて分散させる。この分散壁部28は、スリット部26の基端部側の端部よりカバー体25の先端部側に形成されている。
【0026】
そして、カバー体25の分散壁部28にて水流が分散した液体は、水流が中央に集中し難いので、スリット部26から外部へ放出される際に、中央部の散水距離が長くならず、両端部および中央部の散水距離が同等になる。
【0027】
ここで、図4(a)に示されるように、並列した二つの放出孔23は、カバー体25のスリット部26に対して略平行に配置されており、二つの放出孔23の延長線上にスリット部26が位置している。このように二つの放出孔23とスリット部26とを平行して配置することにより、縦方向への散水距離が向上し、散水形状が図4(b)に示すような縦方向へ長い略長方形状になる。
【0028】
また、図4(a)に示されるように、スリット部26は、長手方向の両端部の開口幅r1が、中央部の開口幅r2より広く形成されている。このような形状にスリット部26を形成することにより、液体の水流がより中央に集中し難く、両端部および中央部の散水距離を同等に維持し易い。
【0029】
なお、この第1の実施の形態では、ノズル本体13が接続体12を介して図示しない液体供給手段に接続された構成としたが、このような構成には限定されず、例えば、ノズル本体13に接続部を形成し、ノズル本体13を図示しない液体供給手段に直接接続する構成等でもよい。
【0030】
また、ノズル本体13は、基端部に球面継手部20が一体的に形成された構成としたが、このような構成には限定されず、例えば、基端部に球面継手部20を設けず、他の継手部材を設ける構成等でもよい。
【0031】
さらに、ノズル本体13の先端部に、ノズル本体13とは別体の放出部材22を螺着する構成としたが、このような構成には限定されず、ノズル本体13の先端部に放出部材22を一体的に形成する構成等でもよい。
【0032】
また、ノズル本体13の先端部に、ノズル本体13とは別体のカバー体25を設ける構成としたが、このような構成には、限定されず、カバー体25をノズル本体13の先端部に一体的に形成する構成等でもよい。
【0033】
さらに、カバー体25の内部の分散壁部28は、ノズル本体13の液体放出方向とは垂直に形成された構成としたが、このような構成には限定されず、ノズル本体13からの液体放出方向に対する分散壁部28の角度は適宜設定できる。
【0034】
また、分散壁部28がスリット部26の基端部側の端部よりカバー体25の先端部側に形成された構成としたが、このような構成には限定されず、分散壁部28は、カバー体25の内部で付勢壁部27より先端部側に形成されていればよい。
【0035】
さらに、並列した二つの放出孔23がカバー体25のスリット部26に対して略平行に配置された構成としたが、このような構成には限定されず、並列した二つの放出孔23とスリット部26との位置関係は適宜設定できる。
【0036】
また、放出部材22には、二つの放出孔23が設けられた構成としたが、このような構成には限定されず、ノズル本体13からカバー体25の内部へ放出される液体の水流が中央に集中し難ければ、放出孔23の数は適宜設定できる。
【0037】
さらに、放出孔23の断面形状は略円形状としたが、放出孔23の形状は、略円形状に限定されず、適宜設定できる。
【0038】
また、カバー体25のスリット部26は、両端部の開口幅r1が、中央部の開口幅r2より広い形状としたが、このような形状には限定されず、例えばスリット部26の両端部の開口幅r1および中央部の開口幅r2が等しい形状等でもよい。さらに、スリット部26の開口幅r1,r2の長さは適宜設定できる。
【0039】
また、カバー体25の内部に付勢壁部27を形成する構成としたが、このような構成には限定されず、付勢壁部27を形成しない構成としてもよい。
【0040】
さらに、散水の際にカバー体25の内部は、液体の水流により負圧状態となるので、例えば、カバー体25にスリット部26とは異なる空気穴等を設けることにより、負圧が解消されて、より液体を強く放出でき、散水距離が向上するので好ましい。
【0041】
次に、上記第1の実施の形態の作用および効果を説明する。
【0042】
図示しない液体供給手段に、接続体12の螺着部14を螺着し、散水ノズル11を設置する。
【0043】
接続体12の接続によりノズル本体13の流入路19と液体供給手段とが連通し、液体供給手段から供給された液体は、接続体12の流入路15を通って、ノズル本体13の流入路19に流入する。
【0044】
ノズル本体13に流入した液体は、ノズル本体13の先端に設けられた放出部材22の二つの放出孔23それぞれからカバー体25の内部へ放出される。ここで、液体がノズル本体13からカバー体25の内部へ放出される際には、二つの放出孔23から液体が放出されることにより、二つの放出孔23それぞれから放出された液体の水流が反発し合うので、放出孔23が一つの場合に比べて水流が中央に集中し難い。
【0045】
カバー体25へ流入した液体は、付勢壁部27により先端部側へ水流が付勢され、分散壁部28に衝突する。この衝突により、液体の水流はノズル本体13の液体放出方向と外側方向とに分散する。
【0046】
そして、分散壁部28により水流が分散された液体は、カバー体25の側面部から先端部にわたって連続して開口されたスリット部26から外部へ放出される。
【0047】
したがって、ノズル本体13は、二つの放出孔23が設けられた放出部材22を有し、カバー体25は、スリット部26と分散壁部28とを有することにより、二つの放出孔23から放出された液体は、カバー体25の分散壁部28にて水流が変化して分散し、水流が分散した状態でスリット部26から放出されるので、水流が中央部に集中せず、両端部および中央部の散水距離が同等になり、効率よく散水できる。
【0048】
また、二つの放出孔23が、放出部材22の断面方向の中心部以外の位置に形成されることにより、放出孔23からカバー体25の内部へ放出される液体の水流が、中央部に集中し難くできる。
【0049】
さらに、分散壁部28がノズル本体13の液体放出方向に対して垂直に形成されることにより、分散壁部28に衝突した液体が、ノズル本体13の液体放出方向とは直交する方向へ分散し易いので、水流を外側へ分散し易くできる。
【0050】
また、分散壁部28がスリット部26の基端部側の端部より先端部側に形成されることにより、分散壁部28にて分散した液体が、分散した勢いでスリット部26から放出するので、中央部の散水距離が長くなることを防止できる。
【0051】
並列した二つの放出孔23が、スリット部26に対して略平行に配置されたことにより、二つの放出孔23それぞれの延長線上にスリット部26が位置し、放出孔23から放出される液体が分散壁部28に衝突し難く液体の水流が変化し難くなるので、ノズル本体13の液体放出方向の水流が強くなり、縦方向への散水距離を向上でき、散水形状を縦方向に長い略長方形状にできる。
【0052】
さらに、スリット部26の両端部の開口幅r1が中央部の開口幅r2より広く形成されることにより、液体がスリット部26を通る際に、スリット部26の両端部の抵抗が中央部の抵抗より小さくなるので、スリット部26の両端部へ水流が分散し易く、両端部および中央部の散水距離を同等に維持し易い。
【0053】
次に、第2の実施の形態について図5を参照して説明する。なお、上記の実施の形態と同一の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図5(a)に示されるように、並列した二つの放出孔23は、カバー体25のスリット部26に対して略直交状に配置されている。このように、並列した二つの放出孔23とスリット部26とが略直交状な構成とすることにより、二つの放出孔23のそれぞれの延長線上には、分散壁部28が位置し、放出孔23からカバー体25の内部へ流出する液体が分散壁部28に衝突し易く液体の水流が変化し易くなる。したがって、図5(b)に示されるように、外側へ分散する水流が強くなり、横方向の散水距離が向上して、散水形状が横方向へ長い略長方形状にできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施の形態の散水ノズルを示す断面図である。
【図2】(a)は同上散水ノズルの放出部材を示す平面図であり、(b)は放出部材の断面図である。
【図3】同上散水ノズルの先端部を示す側面図である。
【図4】(a)は同上散水ノズルの放出孔とスリット部との位置関係を示す平面図であり、(b)は散水ノズルの散水形状を示す断面図である。
【図5】(a)は本発明の第2の実施の形態の散水ノズルの放出孔とスリット部との位置関係を示す平面図であり、(b)は散水ノズルの散水形状を示す断面図である。
【図6】従来の散水ノズルの散水形状を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
11 散水ノズル
13 ノズル本体
22 放出部材
23 放出孔
25 カバー体
26 スリット部
28 分散壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給手段に接続されるノズル本体と、
このノズル本体の先端部に設けられたカバー体とを備え、
前記ノズル本体は、二つの放出孔が並列して形成された放出部材を有し、
前記カバー体は、このカバー体の側部から先端部にわたって連続して開口されたスリット部と、前記カバー体の内部に設けられこのカバー体の内部で水流を変化させる分散壁部とを有する
ことを特徴とした散水ノズル。
【請求項2】
並列した二つの放出孔は、カバー体のスリット部に対して略平行に配置された
ことを特徴とした請求項1記載の散水ノズル。
【請求項3】
並列した二つの放出孔は、カバー体のスリット部に対して略直交状に配置された
ことを特徴とした請求項1記載の散水ノズル。
【請求項4】
スリット部は、両端部の開口幅が中央部の開口幅より広く形成された
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の散水ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−165943(P2009−165943A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5829(P2008−5829)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(391035669)株式会社イーエス・ウォーターネット (7)
【Fターム(参考)】