説明

散水装置及び散水方法

【課題】管内に水圧を加えることによる散水装置及び散水方法の提供。
【解決手段】外管2と、外管の内側に配置した内管3と、内管3の開口一端と接続されるように配置された散水管4と、外管2の底面の開口部に設けられた受水口7と、外管2の天井開口部に設けられた送水管8とを備えた散水装置1及び散水方法において、受水口7より送出される水の圧力により散水管4への送水が可能となる内管3の管内に設けられた開閉手段40と、外管に供給された水の圧力により外管2内部を移動する事が可能な大径内管部10と、小径内管部11と、送水路31とを備えたことと、送水管8の上部開口部に導水管と、導水管上部に接続された別の散水装置を備える事を特徴とした散水装置及び散水方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲の敷地に対する散水作業に適した散水装置及び散水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筒の内面と外面とに跨って形成された散水孔を備えた散水ホースを用いた散水方法及び散水装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−250364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記散水装置では水道蛇口からの水を1本の散水ホースにしか供給できない。従って、例えば、大農場のような広範囲の敷地に散水する場合には、1本の散水ホースを移動して散水したり、予め複数本の散水ホースを適当に配置しておいて各散水ホースと水道蛇口とを繋いで散水しなければならないので、広範囲の敷地に散水する作業が大変であるという問題点があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、広範囲の敷地に対する散水作業を容易とできる散水装置及び散水方法を提供する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0004】
本発明の散水装置は、外管と、外管の一端側に設けられた受水口と、外管の他端側に設けられた送水口と、外管の他端に設けられたて外管の管の内径よりも小さい径の開口部と、外管の内側に外管の軸に沿った方向に移動可能なように設けられた内管と、外管の開口部を経由して外管の外部に突出した内管の他端の開口部に連結された散水管と、内管と外管とに連結されて内管を所定の位置に弾性的に支持する弾性手段とを備え、内管が、内管の一端面と他端面とに跨って延長するように設けられた水路と、内管の一端部に設けられて外管の内径に対応した外径寸法を有した大径内管部と、外管の開口部を経由して外管の外部に突出した小径内管部と、大径内管部の外周面と水路の内壁面とに跨って延長するように設けられた送水路と、小径内管部の送水路よりも他端側に設けられて水路を開閉する開閉手段とを備え、受水口を経由して外管内に供給された水が水路を経由して散水管の散水孔から散水されるとともに外管内に供給された水の圧力で内管が弾性手段に抗して外管の他端側に移動されて水が送水口に移動可能なように送水路と送水口とが連通した後に開閉手段が閉じるように構成されたので、複数の散水装置を用い、例えば隣り合う散水装置同士の送水口と受水口とを繋ぎ、1番目の散水装置の受水口に水を供給することによって、複数の散水装置が順番に散水を行うので、広範囲の敷地に対する散水作業を容易とできる。
本発明による散水装置を用いた散水方法は、散水対象地に1番目からn番目までの複数の散水装置を設置し、水道蛇口と水圧を上げるポンプの吸込口とを導水管により連結し、1番目の散水装置の受水口とポンプの吐出口とを導水管により連結し、1番目の散水装置の送水口と2番目の散水装置の受水口とを導水管により連結し、以下同様に、n番目までの散水装置まで隣り合う散水装置同士を導水管で連結した後に、水道蛇口を開栓するとともに給水ポンプを駆動することにより、1番目からn番目までの複数の散水装置に順番に散水させたので、広範囲の敷地に対する散水作業を容易とできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
最良の形態1
図1乃至図2は最良の形態1を示し、図1は散水装置の断面を示し、図2は散水方法を実現するための構成を示す。
【0006】
図1を参照し、最良の形態1の散水装置を説明する。散水装置1は、外管2と、外管2の内側に外管2の軸に沿った方向に移動可能なように設けられた内管3と、散水管4を備える。散水管4は、筒の内面と外面とに跨って形成された散水孔4aを複数備えたホースなどの導水管により形成される。
【0007】
外管2は、一端側が大径外管部5に形成されて他端側が小径外管部6に形成される。大径外管部5の一端側には受水口7を備える。大径外管部5の他端側における管の周面には管の内周面から管の外周面を経由して外部に延長する送水口8を備える。小径外管部6の他端は開口部9に形成される。
【0008】
内管3は、一端側が大径内管部10に形成されて他端側が小径内管部11に形成される。内管3は、大径内管部10が大径外管部5の内側に大径外管部5と同軸に設けられ、小径内管部11が小径外管部6の内側に小径外管部6と同軸に設けられることによって、外管2の内側に外管2の軸に沿った方向に移動可能なように設けられ、小径内管部11の他端部12が小径外管部6の他端の開口部9を経由して外管2の外側に突出する。大径内管部10の一端面の中央には水導入口13を備え、大径内管部10の一端面の水導入口13の周囲の面が水圧受面14となる。内管3は、内管3の一端面と他端面とに跨って延長するように設けられて内管3の一端面の水導入口13と内管3の他端部12の開口部28とを繋ぐ水路30を備える。
【0009】
小径外管部6の開口部9を経由して外管2の外側に突出する小径内管部11の他端部12の外周面15と小径外管部6の外周面16とが弾性手段としてのコイルばね17により互いに連結される。外周面15と外周面16とがコイルばね17により互いに連結されたことにより、内管3が所定の位置に弾性的に支持される。コイルばね17は、コイルばね17の中空孔に外周面15と外周面16とが挿入された状態で外周面15と外周面16とに連結される。通常においては、コイルばね17が、大径内管部10の水圧受面14と受水口7との間に流体圧力室25を形成するように、また、大径内管部10の他端面18と大径外管部5の他端内面19との間に大径内管部10の走行空間26を形成するように、また、後述する送水路31と送水口8とが連通しない状態に、内管2の位置を維持する。
【0010】
小径内管部11の他端部12の開口部28と散水管4の一端の開口部20とが繋がれることによって、受水口7、流体圧力室25、水路30、散水管4内の水路30Aを経由する散水孔4aまでの導水路が形成される。
【0011】
大径内管部10の一端側には水路30と送水口8とを繋ぐための送水路31を備える。送水路31は、大径内管部10の一端側の外周面32と水路30の内壁面33とに跨って貫通する貫通孔により形成される。送水口8及び送水路31は、大径内管部10の他端面18と大径外管部5の他端内面19とが接触した場合に送水口8の水路中心と送水路31の水路中心とが一致するように形成される。
【0012】
水路30の送水路31よりも他端側の内壁面33には、水路30を開閉する開閉手段40を備える。開閉手段40は、外周面が水路30の内壁面33に取り付けられたリング状の規制体41と、規制体41の他端面側に規制体41のリング孔43を開閉可能に設けられた開閉板45と、水路30の内壁面33に取り付けられたばね取付部46と、ばね取付部46と開閉板42の一端面とに繋がれて開閉板45を規制体41の他端面42側に引っ張るばね48とを備える。
【0013】
散水装置1の外管2と内管3とが、丁度、水圧シリンダのように構成される。つまり、外管2がピストンシリンダに相当し、内管3の大径内管部10がピストンに相当し、内管3の小径内管部11がピストンロッドに相当する。そして、大径内管部10の外周面32にはピストンリング35が設けられる。ピストンリング35が流体圧力室25の水の送水口8側への漏れを防止する。また、大径外管部5の他端内面19には、外部に開通する空気排出口36が形成され、大径内管部10が他端内面19側に移動した場合に、走行空間26の空気が空気排出口36を経由して速やかに外部に排出される。
【0014】
図2に示すように、以上のように構成された散水装置1が、広範囲の散水対象地Aに適当な間隔を隔てて複数設置される。水道蛇口50と水圧を上げるポンプ51の吸込口52とがホースなどの導水管53により連結され、1番目の散水装置1の外管2の受水口7とポンプ51の吐出口54とがホースなどの導水管55により連結される。1番目の散水装置1の送水口8と2番目の散水装置1の受水口7とがホースなどの導水管56により連結される。以下同様に、n番目の散水装置1とn+1番目の散水装置1の受水口7とがホースなどの導水管により連結される。
【0015】
次に作用を説明する。水道蛇口59が開栓され給水ポンプ51が駆動することにより、水が1個目の散水装置1の外管2内に供給される。水が内管3の水路30に供給されてその水圧が所定値を超えるとばね48のばね力に打ち勝って開閉板42を開く。これにより、水が規制体41のリング孔43を経由して散水管4に送られて散水管4の散水孔を経由して外部に散水されるとともに、大径内管部10の水圧受面14が水圧を受けて、大径内管部10が外管2の他端の方向に移動する。大径内管部10が外管2の他端の方向に移動することによって、大径内管部10の送水路31と大径外管部5の送水口8とが連通し、大径内管部10の他端面18と大径外管部5の内側他端面19とが接触する。これにより、水が送水口8を経由して2番目の散水装置1の外管2内に供給されるとともに、水路30の開閉板45に加わる水圧が弱くなり、ばね48のばね力が水圧に打ち勝って開閉板45がばね48に引っ張られて規制板41の他端面42と接触してリング孔43を閉じる。これにより、1番目の散水装置1による散水が終了する。同様の経過を経て、水が、2番目の散水装置1から3番目の散水装置1に供給され、3番目の散水装置1から4番目の散水装置1に供給されるというように、水が、順番に後段の散水装置1に送られる。この場合、後段の散水装置1での散水水圧の低下も少なくできる。つまり、前段の散水装置1の送水口8と後段の散水装置1の受水口7とを連結するホースなどの導水管の長さを短くすることによって、後段の散水装置1での散水水圧の低下を抑制できる。
【0016】
最終段の散水装置1による散水が終了したら、ポンプ51の吐出口54を開閉する図外の開閉バルブを手動にて閉じることにより、散水作業を終了できる。尚、図示しないが、散水自動停止装置を用いれば、散水自動停止を実現でできる。散水自動停止装置の構成としては、例えば、ポンプ51の吐出口54を開閉する開閉バルブの回転軸に連結された水車を封入した水車室を設け、この水車室と最終段の散水装置1の送水口8とを導水管で繋ぎ、最終段の散水装置1の送水口8から水車室に供給される水の水圧で開閉バルブを閉じる方向に水車を回転させることによって、最終段の散水装置1による散水が終了した後、所定時間経過後にポンプ51の吐出口54が閉じられる構成とすればよい。
【0017】
最良の形態1によれば、複数の散水装置1を用い、例えば隣り合う散水装置1同士の送水口8と受水口7とを繋ぎ、1番目の散水装置1の受水口7に水を供給することによって、複数の散水装置1が順番に散水を行うので、広範囲の敷地に対する散水作業を容易とできる。よって、例えば、大農場や砂漠のような広範囲の敷地に散水する場合に、1本の散水ホースを移動して散水したり、予め複数本の散水ホースを適当に配置しておいて各散水ホースと水道蛇口とを繋ぐというような繁雑な作業を不用とでき、広範囲の敷地に対する作業を容易とできる。
【0018】
尚、散水装置1による散水時間は、通常時における大径内管部10の他端面18と大径外管部5の他端内面19との間の距離や、水圧受面14の面積などの要因によって設定できる。
【0019】
最良の形態2
図3に示すような開閉手段40を備えた散水装置1でもよい。即ち、散水管4の管路を開閉可能なように散水管4の一端部に設けられた開閉板60と、散水管4の管路の開閉のために開閉板60を進退せる駆動源61と、大径外管部5の内側他端面19に設けられた接触検知センサ62と、接触検知センサ62と駆動源61とを繋ぐ信号線63と、開閉板60及び駆動源61を収納するとともに開閉板60及び駆動源61を散水管4の一端部の外周面に取り付けるためのケーシング65と、駆動源61や接触検知センサ62の図外の電源とを備え、大径内管部10の他端面18が接触検知センサ61に接触した場合に、散水管4の管路を塞ぐように開閉板60を作動させる信号を接触検知センサ62から駆動源61に出力する構成とすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
小径外管部6は設けなくともよい。この場合、大径外管部5の他端面に大径外管部5の内径よりも小さい径の開口部9を大径外管部5と同軸に設け、走行空間26を形成する。
本発明は、大農場や砂漠のような広範囲の敷地に散水する場合の散水作業を容易にでき、広範囲の敷地に対する効率的な散水作業の実現に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】散水装置の断面図(最良の形態1)。
【図2】散水方法を実現するための構成図(最良の形態1)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管と、外管の一端側に設けられた受水口と、外管の他端側に設けられた送水口と、外管の他端に設けられたて外管の管の内径よりも小さい径の開口部と、外管の内側に外管の軸に沿った方向に移動可能なように設けられた内管と、外管の開口部を経由して外管の外部に突出した内管の他端の開口部に連結された散水管と、内管と外管とに連結されて内管を所定の位置に弾性的に支持する弾性手段とを備え、内管が、内管の一端面と他端面とに跨って延長するように設けられた水路と、内管の一端部に設けられて外管の内径に対応した外径寸法を有した大径内管部と、外管の開口部を経由して外管の外部に突出した小径内管部と、大径内管部の外周面と水路の内壁面とに跨って延長するように設けられた送水路と、小径内管部の送水路よりも他端側に設けられて水路を開閉する開閉手段とを備え、受水口を経由して外管内に供給された水が水路を経由して散水管の散水孔から散水されるとともに外管内に供給された水の圧力で内管が弾性手段に抗して外管の他端側に移動されて水が送水口に移動可能なように送水路と送水口とが連通した後に開閉手段が閉じるように構成されたことを特徴とする散水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の散水装置を用いた散水方法であって、散水対象地に1番目からn番目までの複数の散水装置を設置し、水道蛇口と水圧を上げるポンプの吸込口とを導水管により連結し、1番目の散水装置の受水口とポンプの吐出口とを導水管により連結し、1番目の散水装置の送水口と2番目の散水装置の受水口とを導水管により連結し、以下同様に、n番目までの散水装置まで隣り合う散水装置同士を導水管で連結した後に、水道蛇口を開栓するとともに給水ポンプを駆動することにより、1番目からn番目までの複数の散水装置に順番に散水させたことを特徴とする散水方法。

【図1】散水装置の断面図(最良の形態2)。
【符号説明】
【0022】
1 散水装置、2 外管、3 内管と、4 散水管、4a 散水孔、7 受水口、8 送水口、9;28 開口部、10 大径内管部、11 小径内管部、17 ばね(弾性手段)、30 水路、31 送水路、32 外周面、33 内壁面、40 開閉手段、50 水道蛇口、51 ポンプ、52 吸込口、53;55;56 導水管、54 吐出口。
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−42391(P2010−42391A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234008(P2008−234008)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【出願人】(595130252)
【出願人】(508186048)
【出願人】(508186107)
【Fターム(参考)】