説明

散水車

【課題】養生中のコンクリート表面を損傷することなく散水できる散水車を提供すること。
【解決手段】本発明の散水車は、車輌に搭載された貯水タンクと、車輌の駆動機構により駆動される吸水ポンプと、前記吸水ポンプに接続された吸水ホースと、前記貯水タンクに接続されるとともに、複数の散水孔を有した散水パイプとを備え、前記散水パイプは、車輌本体の側面に基端部を回動可能に支承され、他端を支持部材により水平状態を保持するように張架されたので、養生中のコンクリート上に車輌を乗り入れることなく散水することができ、コンクリート表面を傷める虞れがない。また、養生中のコンクリート表面に均一に散水することが出来るとともに、散水車と作業者との接触事故を未然に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート舗装工事に際し、コンクリート打設後の水養生時にコンクリート舗装の上に敷設した養生マットの上から散水するための散水車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート舗装工事において、粗面仕上げ作業を行った後に十分な湿潤状態で初期養生を行い、その後コンクリートの硬化を十分に引き出すために後期養生作業を行う。この後期養生作業は、水分の蒸発、急激な温度変化を防ぐ目的でコンクリート舗装の上に養生マット、スポンジ、むしろ等を隙間なく敷き詰め、完全な湿潤状態となるように、その上から散水するものである。しかし、コンクリート舗装、養生マットの上から散水する場合、例えば、散水ホースをその場所に置いただけの場合では、舗装面の勾配によって、水を均一に拡散させることが困難であった。
また、人が散水ホースを持って所定の高さから散水すると、水が着水した箇所に集中するとともに、落差による圧力が作用してコンクリート表面を傷める虞れが存在した。
更に、散水面積を広げようとして散水ホースの出口を指で潰すと、散布量が不均一となり、外側に多くの水が偏る結果となる。同様に、落差による圧力が作用してコンクリート表面を傷める虞れが存在した。
更に遠くまで散水しようとして、散水ホースの出口を更に狭め、吐出速度を増すと、散水面が2分割されたりして偏るとともに、水の落下速度に水平速度が加わり、コンクリート表面への打撃力が増し、損傷させる虞れが存在した。
【0003】
また、図7、8に示すように、散水車1の前部及び後部に設置された散水ノズル2、3により散水する散水車が提案されていた。これは、散水車1に搭載された貯水タンク4から、パイプ配管により車輌の前後の散水ノズル2、3に導き、略車輌幅と等しい範囲に散水するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の散水車を使用する場合においては、車輌の前後の散水ノズルから散水する方式のため、養生中のコンクリート舗装の上に乗り入れなければならず、未だ充分な強度の得られないコンクリート表面を傷める虞れが存在した。また、コンクリートの側面から散水しようとすると、遠くまで水を飛ばさなくてはならず、高圧力で噴射する必要が生じ、水圧及び流速によりコンクリート表面を破損することがあった。
更に、散水車と作業者とが接触事故を起こす虞れもあった。
【0005】
この発明は上記に鑑み提案されたもので、散水車の側方向に長く伸長できる散水パイプを設け、養生中のコンクリートの表面に自然落下により散水することのできる散水車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車輌に搭載された貯水タンクと、車輌の駆動機構により駆動される吸水ポンプと、前記吸水ポンプに接続された吸水ホースと、前記貯水タンクに接続されるとともに、複数の散水孔を有した散水パイプとを備えた散水車であって、前記散水パイプは、車輌本体の側面に基端部を回動可能に支承され、他端を支持部材により水平状態を保持するように張架されたことを特徴としている。
【0007】
また、請求項2に記載の発明において、前記散水パイプは、伸縮可能に構成されたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明において、前記散水パイプは、貯水タンクの底面より下位に設置され、貯水タンク内の水が自重により散水されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明は上記した構成からなるので、以下に説明するような効果を奏することができる。
【0010】
本発明では、車輌に搭載された貯水タンクと、車輌の駆動機構により駆動される吸水ポンプと、前記吸水ポンプに接続された吸水ホースと、前記貯水タンクに接続されるとともに、複数の散水孔を有した散水パイプとを備えた散水車であって、前記散水パイプは、車輌本体の側面に基端部を回動可能に支承され、他端を支持部材により水平状態を保持するように張架されたので、養生中のコンクリート上に車輌を乗り入れることなく散水することができ、コンクリート表面を傷める虞れがない。また、散水車と作業者との接触事故を未然に防止できる。
【0011】
また、本発明では、散水パイプは、伸縮可能に構成されたので、養生コンクリートの範囲に応じて、自在に散水することができる。また、収納も容易で作業性に優れている。
【0012】
また、本発明では、前記散水パイプは、貯水タンクの底面より下位に設置され、貯水タンク内の水が自重により散水されるので、貯水タンク中の水を残すことなく有効に散水することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の散水車は、散水パイプが車輌本体の側面に基端部を回動可能に支承され、他端を支持部材により水平状態を保持するように張架されたので、養生中のコンクリート上に車輌を乗り入れることなく散水することができ、コンクリート表面を傷める虞れがない。
【実施例】
【0014】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明に係る散水車における散水パイプを伸張した状態を示す背面図、図2は本発明の散水車における散水パイプを側方に展開した状態を示す平面図、図3は本発明の散水車における散水パイプを収納した状態を示す側面図である。ここで、散水車10は、車輌に搭載された貯水タンク11と、車輌の駆動機構により駆動される吸水ポンプ12と、前記吸水ポンプ12に接続された吸水ホースと、前記貯水タンク11に接続されるとともに、複数の散水孔13を有した散水パイプ14とを備え、前記散水パイプ14は、車輌本体の側面に基端部14aを回動可能に支承され、他端を支持部材15により水平状態を保持するように張架されている。
【0015】
貯水タンク11は、車輌に搭載されるとともに、吸水ポンプ12によって外部からの水を貯水することができる。また、頂部に設けたハッチ16から水を貯水することもできる。
【0016】
散水パイプ14は、下端側に複数の散水孔17が形成されており、導入された水が自重によって落下する。また、散水パイプ14の基端部14aは、図6に示すように略90度に折れ曲がっており、貯水タンク11から延設された排出パイプ25に回動自在に接続されている。更に、散水パイプ14には、入れ子式の第2の散水パイプ18及び第3の散水パイプ19が配設されており、それぞれ下端側に複数の散水孔18a、19aが形成されている。また、散水パイプ14の先端近傍には、吊りフック22が取り付けられており、支持部材15により水平状態を保持するように張架されている。支持部材15は、基端が車輌本体の所定の高さ部位にフック部15aで係止されるとともに、先端が散水パイプ14の吊りフック22に係止されている。更に、散水パイプ14は、一端が車輌本体に固定された振れ止め部材23によって車輌本体の側方に略垂直に維持されるように固定される。
【0017】
散水パイプ14の先端には、係止金具20が配設されており、係止金具のレバー20aを緩めることにより第2の散水パイプ18を引き出すことが出来る。また、第2の散水パイプ18を所定の長さまで引き出したらレバーを締めることでその位置で固定できる。同様に第2の散水パイプ18の先端にも係止金具21が配設されており、レバー21aを緩めることにより第3の散水パイプ19を所定の長さまで引き出すことが出来る。所定の長さまで引き出した第3の散水パイプ19は、レバー21aを締めることにより固定することが出来る。
【0018】
また、散水パイプ14の先端には、夜間における周囲の者への注意を喚起するために警告灯26が設置されている。更に、第2の散水パイプ18の先端に警告灯26aを、第3の散水パイプ19の先端に警告灯26bを設けてもよい。
このように構成することにより、夜間作業時に運転者から認識し難い横に張り出した散水部における安全性を向上することができる。
【0019】
以上のようにして構成された散水車10は、非散水時においては散水パイプ14は、図2に想像線で示すように車輌本体の側面に収納されている。
【0020】
散水時には、散水パイプ14を旋回して図1、2に実線で示すように車輌本体に対して略直角に展開する。散水パイプ14は、基端部14aを旋回中心として回動する。また、散水パイプ14は支持部材15によって上端で張架されているので、水平状態を保持したまま側方に展開することができる。散水パイプ14を展開した後、散水コック24を開くと貯水タンク11から水が供給され、散水孔13から自重により散水される。このように散水孔13から自重で落下するため、コンクリート舗装表面を傷める虞れがない。また、散水車の運転手が一人で散水作業を行うことができる。したがって、散水車と散水人との接触事故を未然に防止することができる。
【0021】
散水範囲を更に広げる場合には、散水パイプ14の先端に配設された係止金具20のレバー20aを操作して第2の散水パイプ18を引き出し、延長することができる。また、第2の散水パイプ18の先端に設置された係止金具21のレバーを操作することにより第3の散水パイプ19を更に延長することができる。
【0022】
このように第2の散水パイプ18、第3の散水パイプ19を延長することにより、散水孔18a、19aから散水することができ、更に広い範囲に散水できコンクリート舗装の水養生を安全かつ、効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明に係る散水車における散水パイプを伸張した状態を示す背面図である。
【図2】図2は、同散水車における散水パイプを側方に展開した状態を示す平面図である。
【図3】図3は、同散水車における散水パイプを収納した状態を示す側面図である。
【図4】図4は、同散水車における散水パイプ、支持部材、車輌との関係を示す要部拡大図である。
【図5】図5は、同散水車に使用する散水パイプの要部拡大図である。
【図6】図6は、同散水車に使用する散水ノズルの基端部を示す説明図である。
【図7】図7は、従来の散水車の前部散水ノズルを示す説明図である。
【図8】図8は、従来の散水車の後部散水ノズルを示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
10 散水車
11 貯水タンク
12 吸水ポンプ
13 散水孔
14 散水パイプ
14a 基端部
15 支持部材
16 ハッチ
17 散水孔
18 第2の散水パイプ
18a 散水孔
19 第3の散水パイプ
19a 散水孔
20 係止金具
20a レバー
21 係止金具
22 吊りフック
23 振れ止め部材
24 散水コック
25 排出パイプ
26、26a、26b 警告灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌に搭載された貯水タンクと、車輌の駆動機構により駆動される吸水ポンプと、前記吸水ポンプに接続された吸水ホースと、前記貯水タンクに接続されるとともに、複数の散水孔を有した散水パイプとを備えた散水車であって、
前記散水パイプは、車輌本体の側面に基端部を回動可能に支承され、他端を支持部材により水平状態を保持するように張架されたことを特徴とする散水車。
【請求項2】
前記散水パイプは、伸縮可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載の散水車。
【請求項3】
前記散水パイプは、貯水タンクの底面より下位に設置され、貯水タンク内の水が自重により散水されることを特徴とする請求項1または2に記載の散水車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−116673(P2010−116673A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288572(P2008−288572)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000201515)前田道路株式会社 (61)
【Fターム(参考)】