説明

散薬分配装置および分包機

【課題】分包機の散薬分配装置において、散薬を掻き出す際の散薬の飛散を防止する。
【解決手段】上面に散薬Pの受け部2aを備えるターンテーブル2と、受け部2aに供給された散薬Pを掻き出す掻出装置41を備えた回転体40と、先端側に回転体40が支持され、回転体40が受け部2aに対して接近・離間するように駆動されるアーム20と、ターンテーブル2の周縁部近傍に配置されるホッパー4とを備えた散薬分配装置1Aであって、回転体40の両側および周縁部外方を覆う第1のカバー50と、アーム20に固定され、回転体40が受け部側に移動したときに、第1のカバー50の上端開口部を塞ぐ第2のカバー30を備えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散薬を定量分割する散薬分配装置、およびこの散薬分配装置を備えた分包機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、様々な種類の散薬の中から、適当な散薬を選択し、1処方分の散薬量を計量して採取し、さらに、1処方の散薬を1服用分として分包する一連の分包作業に関して様々な装置が提案されている。
例えば、一般的な分包機は、散薬供給装置から回転するターンテーブル上に連続的に微量の散薬を落下させることで、ターンテーブル上に周方向に均一に散薬を供給し、次いで掻出装置を備えた回転体によって、ターンテーブル上の所定角度幅の散薬をホッパーに掻き落とすことにより、散薬を定量ずつ分割して包装している。掻出装置は、ターンテーブルの上面に接する位置で、ターンテーブルの内周側から外周側へ移動する方向へ回転し、この掻出装置の間欠回転により、ターンテーブル上の散薬を、ターンテーブルの外周側に配したホッパーに掻き落とすようになっている。
【0003】
この種の従来の分包機としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1には、ターンテーブル上に分布された散薬を掻出装置によって定量分割した後、分包する分包機において、ターンテーブルに散薬を定量排出する散薬供給装置の振動が、散薬の種類、形状などの散薬データによって制御されることを特徴とした分包機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3377631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の分包機においては、掻出装置が粉末状の散薬を掻き出す際、散薬の一部が散薬ホッパーに供給されずに、飛散してしまうことがある。散薬が飛散することで、分包機内部に散薬が付着し、さらには、散薬が分割ローターを駆動するためのギヤなどに付着することにより、分包機の騒音および振動の原因となり、ひいては、分包機の寿命にも悪影響を及ぼすといった問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の散薬分配装置は、上面に散薬の受け部を備え、間欠回転駆動されるターンテーブルと、前記受け部に供給された散薬を掻き出す掻出装置を備えた回転体と、基端側が回転自在に支持され、先端側に前記回転体が、前記ターンテーブルの接線方向の軸線を中心として回転駆動されるように支持され、前記回転体が受け部に対して接近・離間するように駆動されるアームと、前記ターンテーブルの周縁部近傍に配置されるホッパーとを備え、前記受け部に供給される散薬を前記掻出装置により定量分割して掻き出して前記ホッパーに分配する散薬分配装置である。この散薬分配装置の特徴は、前記回転体の両側および周縁部外方を覆う第1のカバーと、前記アームに固定され、前記回転体が前記受け部側に移動したときに、前記第1のカバーの上端開口部を塞ぐ第2のカバーを備えてなることである。
【0007】
また、本発明の散薬分配装置は、前記第2のカバーに、該第2のカバーが前記上端開口部を塞いだときに、前記第1のカバーと前記回転体との間の間隙を塞ぐ第3のカバーが設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の散薬分配装置は、前記第2のカバーが、前記上端開放部を塞いだ状態にて、該開口部の上方に吸引用空間部を備え、かつ該吸引空間部内に至った飛散散薬を負圧吸引する吸引装置を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の分包機は、前記のいずれかの散薬分配装置と、前記ホッパーに分配された散薬を包装する包装装置とを、備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、散薬分配装置が、回転体の両側および周縁部外方を覆う第1のカバーと、回転体が受け部側に移動したときに第1のカバーの上端開口部を塞ぐ第2のカバーとを備える構成としたため、散薬が定量分割して掻き出されたる際、散薬の飛散を防止することが可能となり、ひいては散薬が分包機の内部部材に付着することによる騒音や振動を抑制するという効果が得られる。
第2のカバーが第1のカバーの上端開口部を塞いだときに、第1のカバーと回転体との間の間隙を塞ぐ第3のカバーを設ける構成としたため、第1のカバーと回転体との間の間隙から漏れ出る散薬の飛散を防止することができる。
第2のカバーが第1のカバーの上端開口部を塞いだ状態において、上端開口部の上方に吸引用空間部を備え、かつ吸引空間部内に至った飛散散薬を負圧吸引する吸引装置を備える構成にすることによって、第2のカバーの内部に散薬が堆積することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施形態の散薬分配装置の概略側面図であって、(a)は回転体が受け部に対して離間し、(b)は回転体が受け部側に移動した状態を示す図である。
【図2】本発明に係る実施形態の散薬分配装置の平面図である。
【図3】本発明に係る実施形態の散薬分配装置の部分正面図である。
【図4】本発明に係る実施形態の散薬分配装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は、散薬Pを分包機1のターンテーブル2上に供給した状態を、図1(b)は、散薬Pを掻き出し分包している状態をそれぞれ示している。
図1に示すように、この実施形態の分包機1は、図示しない散薬カセットから排出された散薬Pを供給する散薬供給装置3と、散薬供給装置3から落下する散薬Pを受け入れるターンテーブル2と、ターンテーブル2の回転に連動して、ターンテーブル2に供給された散薬Pを外方に定量的に掻き出す回転体40と、この回転体40の回転によって掻き出された散薬Pを導入して包装装置5に散薬Pを案内する散薬ホッパー4とを備えた構成となっている。
【0013】
図1、図2に示すように、ターンテーブル2は、平面視円盤状からなり、上下方向の軸線を中心として回転自在に支持され、その外周部上面に、散薬供給装置3より落下する散薬Pを受け入れる断面円弧状の受け部2aを有する構成とされている。このターンテーブル2は、図示しない駆動機構により回転駆動される。
【0014】
散薬供給装置3は、回転するターンテーブル2の受け部2aに対して散薬Pを落下させるもので、分包機1本体に固定され受け部2aの上部に配置されている。
【0015】
回転体40は、ターンテーブル2の径の内外方向に延在しているアーム20の先端側に、ターンテーブル2の接線方向の軸線を中心に回転駆動されるように取付けられている。アーム20は、基端側において、ターンテーブル2の接線方向の軸線を持つアーム支持軸22によって散薬分配装置1A上に回動自在に支持されている。
回転体40は、掻出装置41を備えて構成されたものである。すなわち、回転体40は、回転体の中心軸44に固定された回転板42、43と、回転体の中心軸44および回転板42、43に固定された掻出爪41aとからなるものであり、掻出爪41aと回転板42、43の一部とは、散薬Pを掻き出す掻出装置41を構成している。掻出爪41aは、シリコンゴムによって形成されている。
回転板42、43は、受け部2a上の散薬Pを一定量ずつ掻き出せるように、掻出装置41の左右両端部を覆うように各々が設けられている。これら回転板42、43の周縁部の曲率は、受け部2aの曲率と対応するようになっている。
【0016】
回転体40を上下動させるための回転体上下動モーター61が、アーム20の側方に配置されている。
アーム20の側部には、カムフォロア63が回転自在に設けられ、このカムフォロア63は、カム62に従動するようになっている。カム62は、モーター61の回転力が減速機64により減速された状態で伝達されるようになっている。
一方、アーム20の後方には回転体駆動モーター70が配設されており、このモーター70の回転力は、ギヤ列71を介してアーム支持軸22に伝達され、更にアーム20内に設けられたプーリー、伝達ベルトなどの駆動力伝達機構を介して回転体の中心軸44に伝達され、この回転駆動力によって、回転体40が回転駆動されるようになっている。
【0017】
散薬ホッパー4は、ターンテーブル2の受け部2aの外縁部近傍であって、回転体40により掻き出された散薬Pを受ける位置において、上側に向けて開口している漏斗状の部材である。ここで受けた散薬Pは、包装装置5に送られる。
【0018】
回転体40周辺には、飛散を防止するためのカバーが設けられている。カバーは、回転体40の両側および周縁部外方を覆う第1のカバー50と、アーム20に固定され、回転体40の上部に配置されている第2のカバー30と、第1のカバーより延在する第3のカバー32とにより構成されている。
【0019】
第1のカバー50は、分包機1本体に固定され、散薬ホッパー4の上部に配置されている。第1のカバー50は、回転体40の両側を覆う板部50a、50bと、回転体40の周縁部の外方を覆う板部50cとからなる、コの字形状をなしており、上下方向に延在している。第1のカバー50は、ターンテーブル2の受け部2aの上方において、ターンテーブル2の中心方向に延在するような形状となっている。第1のカバー50の下方には、散薬ホッパー4が設置されている。
【0020】
第2のカバー30は、回転体40の軸方向に長さを有する直方体形状である。第2のカバー30の下面は開放されており、開口部が形成されている。この開口部の上方であって第2のカバー30の内部は、飛散した散薬Pが流入する空間部33となっている。
上述したように、第2のカバー30は、アーム20に取付けられており、回転体40と一定間隔を確保しながら回転体40と共に回動するように構成されている。
第2のカバー30は、回転体40と第2のカバーとが下方向に回動し、受け部2a側に移動したときに、第2のカバー30の下面が、第1のカバー50の上端開口部を塞ぐように構成されている。
第2のカバー30とアーム20とは、L字型の金具や板金によって、各々の相対的な位置を一定に保つように固定されている。
【0021】
また、第2のカバー30には、第2のカバー30が第1のカバー50の上端開口部を塞いだときに、第1のカバー50と回転体40との間の間隙を補助的に塞ぐことができる、第3のカバー32が取付けられている。
第3のカバー32は、第2のカバー30が、第1のカバー50の上端開口部を塞いだ状態において、第2のカバー30から下方に突出するように設けられている。すなわち、この第3のカバー32は、図3に示すように、第2のカバー30に固定された基部32cと、この基部32cから下方へ突出する板部32a、32bとからなるものであり、板部32a、32b間の間隙に回転体40を位置させた状態で、第1のカバー50の板部50aと回転体40との間に板部32aが位置し、第1のカバー50の板部50aと回転体40との間に板部32bが位置し、第1のカバー50のターンテーブル2側の開口部上部を覆う構成とされている。
第3のカバー32は第2のカバーとアーム20とを固定する板金によって取付けられている。また、第3のカバー32は、シリコンゴムにより形成されている。
【0022】
第2のカバー30の側部には、排出口31を備えてなる吸引装置6が設けられている。排出口31には、吸引用ホースが接続されており、この吸引用ホースは、吸引装置6に接続されている。
上記の構成は、散薬Pを散薬ホッパー4に分配するものであり、散薬分配装置1Aを構成している。一方、図1に示すように、散薬ホッパー4に供給された散薬Pは、包装装置5によって分包されるように構成されている。
【0023】
次に、この実施形態の分包機1の作用について説明する。
まず、ターンテーブル2を一定の高速度で回転させながら、散薬供給装置3からターンテーブル2上の受け部2a上に散薬Pを供給し、受け部2a上に散薬Pを周方向に均一分布させておく。このとき、回転体40は、受け部2aに対して離間(上方向に回動)させておき、ターンテーブル2と当接しないようにしておく。受け部2aに散薬Pが周方向均一に分布されたら、図1(b)に示すように、回転体40を下方向に回動させて、回転板42、43を受け部2aと当接させ、ターンテーブル2を間欠回転させるとともに回転体40を間欠回転させることにより、散薬Pの掻き出しを行う。
【0024】
回転体40は、回転体駆動モーター70によって駆動される。回転体駆動モーター70による駆動力は、ギヤ列71を介してアーム支持軸22に伝えられ、アーム20の内部のアーム支持軸22および回転体の中心軸44に装着されたプーリーと、伝動ベルトによって、回転体40に伝達される。
アーム20の受け部2aに対する上下方向の回動は、回転体上下動モーター61の駆動力が減速機64を介してカム62に伝達され、アーム20に設けられたカムフォロア63に作用することによって実現される。
【0025】
掻き出された散薬Pは、散薬ホッパー4に掻き落とされ、包装装置5内に投入され、散薬Pは個々に分包される。
上記の動作において、散薬Pが掻き出される際、第2のカバー30と、第1のカバー50の上端開口部とが閉じ合わされる。同時に第3のカバー32は、回転体40と第1のカバー50との間に間隙に挿入される。
掻き出される際、散薬ホッパー4に掻き落とされず、飛散した散薬Pのうち、第1のカバーに衝突した散薬は、散薬ホッパー4に落下する。
また、回転体40が回転することによる遠心力によって、第1のカバー50の更に上方に飛散した散薬Pは、第2のカバー30の吸引用空間部33内に流入する。この飛散した散薬Pのうち、一部は落下して散薬ホッパー4内に納められるが、一部は浮遊状態におかれる。この浮遊状態におかれた散薬Pは、吸引装置6によって、負圧吸引される。
【0026】
本実施形態に係る散薬分配装置1Aにおいては、回転体40の両側および周縁部外方を覆うコの字状の第1のカバーと、この第1のカバーの上を覆うような直方体形状の第2のカバーとによって、飛散する散薬Pを効率的にブロックすることができる。これにより、散薬Pが、分包機1の内部部材に付着し、それによる騒音や振動を抑制することができる。
第2のカバー30は、アーム20に直接取付けられているため、より回転体40の動きを追従することができ、回転体40と接触のおそれがない。
第2のカバー30に排出口31を設け、この排出口31に吸引装置6を接続することによって、第2のカバー30内に堆積した散薬を効率的に取り除くことができる。
第3のカバー50はシリコンゴムによって形成されているため、回転体40および第1のカバーを傷付けることなく、回転体40と第1のカバーとの間の間隙を塞ぐことができる。
【0027】
なお、本発明は、散薬を分包するための分包機に関するものであるが、顆粒状のものも含むものとする。また、アーム2の上下動はカムによるものとしたが、アクチュエータによる駆動などであってもよい。
また、第3のカバー32および掻出装置41の先端部に使用したシリコンゴムは、飛散防止効果や接触する部材に対する緩衝性による観点から採用したもので、同様の効果が期待できる材料であれば、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0028】
1…分包機、1A…散薬分配装置、2…ターンテーブル、2a…受け部、3…散薬供給装置、4…散薬ホッパー、5…包装装置、吸引装置…6、20…アーム、22…アーム支持軸、30…第2のカバー、31…排出口、32…第3のカバー、33…吸引用空間部、40…回転体、41…掻出装置、41a…掻出爪、42…回転板、43…回転板、44…中心軸、50…第1のカバー、61…回転体上下動モーター、62…カム、63…カムフォロア、64…減速機、70…回転体駆動モーター、71…ギヤ列、P…散薬。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に散薬の受け部を備え、間欠回転駆動されるターンテーブルと、
前記受け部に供給された散薬を掻き出す掻出装置を備えた回転体と、
基端側が回転自在に支持され、先端側に前記回転体が前記ターンテーブルの接線方向の軸線を中心として回転駆動されるように支持され、前記回転体が受け部に対して接近・離間するように駆動されるアームと、
前記ターンテーブルの周縁部近傍に配置されるホッパーとを備え、
前記受け部に供給される散薬を前記掻出装置により定量分割して掻き出して前記ホッパーに分配する散薬分配装置であって、
前記回転体の両側および周縁部外方を覆う第1のカバーと、
前記アームに固定され、前記回転体が前記受け部側に移動したときに、
前記第1のカバーの上端開口部を塞ぐ第2のカバーを備えてなることを特徴とする散薬分配装置。
【請求項2】
前記第2のカバーには、該第2のカバーが前記上端開口部を塞いだときに、前記第1のカバーと前記回転体との間の間隙を塞ぐ第3のカバーが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の散薬分配装置。
【請求項3】
前記第2のカバーは、前記上端開口部を塞いだ状態にて、該開口部の上方に吸引用空間部を備え、かつ該吸引用空間部内に至った飛散散薬を負圧吸引する吸引装置を備えてなることを特徴とする請求項1または2に記載の散薬分配装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の散薬分配装置と、前記ホッパーに分配された散薬を包装する包装装置とを、備えてなることを特徴とする分包機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−184743(P2010−184743A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31536(P2009−31536)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(390010582)株式会社エルクエスト (33)
【出願人】(392022064)株式会社エルクコーポレーション (25)
【Fターム(参考)】