説明

散薬調剤機

【課題】集塵用管体部が不所望に変形したり損傷したりしないよう改造する。
【解決手段】集塵ヘッド32が引出可能な包装装置台座41に設けられ集塵機本体30が引出部以外の所に設けられた散薬分包機40等の散薬調剤機において、集塵ヘッド32と集塵機本体30とを繋ぐ集塵用管体部50が包装装置台座41の出し入れに随伴して脱着するようにする。また、包装装置台座41の下層部分に管体収納空間42を形成し、そこには柔軟な集塵ホース56を収め、集塵用管体脱着部の外筒管53や内筒管54には硬質のものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、散薬分包機などの散薬調剤機に関し、詳しくは、散薬の飛散を防止する等のために集塵機が付設されている散薬調剤機に関する。
【背景技術】
【0002】
散薬を能率良く分包したり精度良く混合する等のため散薬フィーダや散薬分配分割装置を2台実装した散薬分包機が最近よく用いられており(例えば特許文献1参照)、そのような散薬分包機には包装装置が組み込まれている。包装装置は、分包帯の補充等のため引出可能に装備されており、錠剤分包機にも使用・併用しうるものとなっているが(例えば特許文献2参照)、散薬分包機に組み込まれた包装装置には、大抵、散薬飛散防止のため、集塵機が付設されている。
【0003】
このような従来の散薬分包機10について、図面を引用しながら本発明の説明に役立つ事項を掻い摘んで説明する。図2は、(a)が散薬分包機10の正面模式図、(b),(c)が散薬分包機10の右側面模式図、(d)が散薬分包機10の外観斜視図、(e)が包装装置本体20の斜視図である。
【0004】
散薬分包機10には、それぞれが散薬フィーダ11(散薬供給装置)を実装した2台の散薬分配分割装置12〜14が左右に並んで設置されている。
散薬フィーダ11は、振動することで散薬を等速で少しずつ送出する振動式が一般的であり、送出を待っている散薬を一時貯留しておく散薬収容器と、この散薬収容器から排出された散薬に振動を与えながら一定経路を流下させることで排出量・流量を安定させるトラフ等の散薬送出部と、その振動強度を可変制御しうる振動源とを具えている。
【0005】
散薬分配分割装置12〜14は、必要量だけ秤量された散薬を分包単位で均等に分割するために、上記の散薬フィーダ11に加えて、回転しながらその散薬を溝に受けることで円環状に均す環状テーブル13(R円盤)と、これを回転させるテーブル駆動部14と、環状テーブル13の溝から散薬を所定量ずつ切り出す切り出し装置12とを具えている。
両散薬分配分割装置12〜14の中間位置には、共通ホッパー15が設置されており、これによって、切り出された散薬が包装装置本体20へ導かれるようになっている。
【0006】
包装装置本体20は、散薬分配分割装置12〜14にて分割され共通ホッパー15にて落下案内された散薬を分包帯26(分包紙)にて区分包装するために、分包帯26の送り経路に沿って順に、分包帯26のロールを保持するとともに適度なテンションを付与して先端から順に送り出す包装帯送給部21と、分包帯26に印刷を行うプリンタ22(プリントヘッド)と、縦に延びた発熱体を具有し分包帯26の縦シール部を加熱して融着させる縦シール部材23(ヒートシール)と、上下動して分包内に先端を挿抜する投入ホッパー24と、横に延びた発熱体を具有し分包帯26の横シール部を加熱して融着させる横シール部材25と、分包帯26を引っ張るローラ部と、分包帯26にミシン目を入れたり切断したりするカッターとが設けられている。
【0007】
このような散薬分包機10の筐体内で空いているところには制御装置19(コントローラ)が設置されており、その制御によって、散薬フィーダ11の散薬供給動作や,散薬分配分割装置12〜14の分配分割動作,包装装置本体20の区分包装動作が適切に連動して遂行されるようになっているので、作業者が分包しようとする散薬を必要量だけ秤量して散薬フィーダ11の散薬収容器へ投入して、散薬分包機10を作動させると、後は自動で散薬が分包される。
すなわち、散薬フィーダ11から散薬がほぼ一定流量で送出されるが、そのとき環状テーブル13が定速回転していて、散薬フィーダ11から送出された散薬は、環状テーブル13上へほぼ均一に分配される。
【0008】
そして、分配が済むと、逐次、環状テーブル13を所定角度ずつ回転させながら、切り出し装置12による切り出しが行われ、切り出された散薬は、共通ホッパー15を経て、投入ホッパー24が上下動する度にそこへ投入され、包装装置本体20によって分包帯26のそれぞれの区分内に封じられる。
このような包装装置本体20は包装装置台座17上に配設されており、この包装装置台座17が包装装置引出18等の引出機構にて支持されているので、包装装置本体20は、前方へ引き出して例えば分包帯26のロールを補充し、それから後方へ押し込んで分包動作を再開させることができるようになっている。
【0009】
また、包装装置本体20には集塵機が付設されているが、集塵機本体30(負圧吸引源)は一緒に引き出さなくても済むようになっている。具体的には、集塵機本体30は包装装置台座17の下方の筐体内底等に固定して格納設置され、その集塵機本体30から包装装置台座17上へ集塵ホース31(集塵用管体部)が延ばされ、その集塵ホース31の先端の集塵ヘッド32(集塵用吸気部)が吸気口を投入ホッパー24等に向けた状態で包装装置台座17に固定設置されている。集塵ヘッド32が包装装置本体20と共に引き出されて移動することがあるのに対し集塵機本体30は常に固定されているので、両者に繋がる集塵ホース31には、フレキシブルホース等の柔軟な管体が採用されている。
【0010】
【特許文献1】特開2001−97532号公報
【特許文献2】特開2000−185703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来の散薬調剤機では、包装装置本体20を引き出す度に集塵ホース31が引きずられたり曲げ伸ばしされる。このため、集塵ホース31が傷付きやすく、その損傷や変形の状態によっては集塵機の機能や包装装置本体20の引出機能が損なわれてしまうこともある。
そこで、集塵機の負圧吸引源と集塵用吸気部とを繋ぐ集塵用管体部が不所望に変形したり損傷したりしないように集塵用管体部の構造を改めることが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の散薬調剤機は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、集塵用吸気部が引出部に設けられ集塵用負圧吸引源が前記引出部以外の所に設けられた散薬調剤機において、前記集塵用吸気部と前記集塵用負圧吸引源とを繋ぐ集塵用管体部が前記引出部の出し入れに随伴して脱着するようになっていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の散薬調剤機は(解決手段1)、上記解決手段1の散薬調剤機であって、前記引出部の下層部分に管体収納空間が形成されており、前記集塵用管体部のうち前記管体収納空間の中の管体は柔軟なものであり、前記集塵用管体部のうち脱着部の管体は硬質のものである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような本発明の散薬調剤機にあっては(解決手段1)、引出部が引き出されると集塵用管体部が脱着部で分離し、引出部が押し込まれると集塵用管体部の脱着部が連結して集塵用負圧吸引源と集塵用吸気部とが連通し集塵のための吸気が可能になる。
このような管体脱着部を集塵用管体部に設けたことにより、引出部が移動すると脱着部を境にして集塵用管体部の片側は引出部と共に移動し集塵用管体部の残りは引出部以外の部材と共に留まり続けるので、引出部を出し入れしても、集塵用管体部は曲げ伸ばしされることがなく引きずられることもない。
したがって、この発明によれば、集塵機の負圧吸引源と集塵用吸気部とを繋ぐ集塵用管体部が不所望に変形したり損傷したりしない散薬調剤機を実現することができる。
【0015】
また、本発明の散薬調剤機にあっては(解決手段2)、集塵用管体部のうち脱着部の管体が硬質なので脱着部が製造容易かつ丈夫になる。また、脱着部の管体は硬質でも、集塵用管体部のうち集塵用吸気部寄りの部分には柔軟な管体が採用され、それが引出部の下層部分の管体収納空間に収納されているので、集塵用吸気部の位置調整や配置換え等が容易かつ自在に行えることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
このような本発明の散薬調剤機の一実施形態について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、散薬調剤機の典型例である散薬分包機10を改良した散薬分包機40の構造を示し、(a)が外観斜視図、(b),(c)が右側面模式図、(d),(e)が集塵用管体脱着部53〜55の斜視図である。
【0017】
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具,ヒンジ等の連結具,電動モータ等の駆動源,タイミングベルト等の伝動部材,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路の詳細などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。また、何ら変更無く引き継がれている包装装置本体20も、他の改造部分の明確化等のため、全部の図示は割愛して、投入ホッパー24だけを図示した。さらに、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【0018】
この散薬分包機40が従来の散薬分包機10と相違するのは、集塵ヘッド32と集塵機本体30とを繋いでいたフレキシブルな集塵ホース31が管体脱着部組み込みの集塵用管体部50になった点と、包装装置引出18で引出可能に支持されていた包装装置台座17が管体収納空間42付きの包装装置台座41(引出部)になった点である。
包装装置台座41は、包装装置本体20を載置する座板の下方にもう一枚の底板が追加されて、その間に即ち引出部の下層部分に管体収納空間42が確保されるとともに、管体収納空間42の周囲が側板で囲われて、平たい箱状になっており、それが包装装置引出18にて引き出し可能に支持されている。
【0019】
集塵用管体部50は、筐体内に固定設置された部材51〜53と、包装装置台座41に設置されて包装装置台座41の引出に随伴して移動する部材54〜56とからなる。
そのうち固定設置部材51〜53には、フレキシブルホース等の柔軟な管体からなり集塵機本体30から後方へ延びている集塵ホース51と、それより後方で筐体内に立設され下端部に集塵ホース51を連通接続された固定縦管部52と、この固定縦管部52の上端部に前向きで植設された硬質の外筒管53とが含まれている。この外筒管53と集塵機本体30は固定縦管部52と集塵ホース51とを介して連通している。
【0020】
一方、随伴移動部材54〜56には、包装装置台座41の下層部分の後端面に後向きで植設された硬質の内筒管54と、内筒管54に外嵌された柔軟なゴム鍔55と、フレキシブルホース等の柔軟な管体からなり管体収納空間42に納められた集塵ホース56とが含まれている。内筒管54は集塵ホース56を介して集塵ヘッド32と連通している。また、内筒管54は、包装装置台座41を引き出すと外筒管53から離れ、包装装置台座41を押し込むと先端が外筒管53の中空に入り込んで連通するようになっている。
【0021】
しかも、内筒管54先端が外筒管53に差し込まれた状態では、外筒管53の先端がゴム鍔55の端面に当接して、そこが密封され、外筒管53と内筒管54との連通路が外部・外気から遮断されるようになっている。
このような外筒管53と内筒管54とゴム鍔55は、包装装置台座41の出し入れに随伴して脱着する管体脱着部(脱着部)となっている。
【0022】
このような散薬分包機40の使用態様及び動作を説明するが、集塵に関すること以外は従来例について既述したのと同様なので繰り返しとなる再度の説明は割愛し、以下、集塵機の動作等について詳述する。
【0023】
包装装置台座41ひいては包装装置本体20を筐体内に押し込んだ状態では、集塵用管体部50の管体脱着部53〜55が連結していて、集塵機本体30から集塵ホース51と固定縦管部52と外筒管53と内筒管54と集塵ホース56とを経て集塵ヘッド32に至る連通路が繋がるとともに外部・外気から遮断されるので、包装装置本体20の投入ホッパー24等から舞い上がろうとした散薬は、集塵機本体30を作動させれば集塵ヘッド32から吸い込まれるため、舞い散ることなく集塵されて除去される。
【0024】
また、分包帯ロール補充等のため、包装装置台座41を筐体から前方へ引き出すと、包装装置本体20と一緒に集塵ヘッド32ばかりか集塵用管体部50のうちの随伴移動部材54〜56も前方へ移動する。そして、後方に固定されて残っている外筒管53から、ゴム鍔55が離れ、内筒管54も抜け出て離れる。この状態では、集塵機本体30と集塵ヘッド32との連通が管体脱着部53〜55のところで断たれるので、散薬を集塵することはできないが、包装装置本体20が引き出された状態では散薬の分包処理も止まっているので、不都合はない。その後、分包帯ロール補充等が済んで、包装装置台座41を筐体内に押し戻せば、集塵機本体30と集塵ヘッド32とが再び連通路で繋がるので、散薬分包処理を再開することができる。
【0025】
以上の説明から明らかなように、この散薬分包機40にあっては、集塵用管体部50に管体脱着部53〜55が設けられているので、包装装置本体20を筐体から出し入れするため包装装置台座41を移動させると、管体脱着部53〜55を境にして集塵用管体部50のうち随伴移動部材54〜56は包装装置台座41と共に移動し集塵用管体部50のうち固定設置部材51〜53は集塵機本体30等と共に筐体内に留まり続けるので、包装装置本体20を筐体から出し入れしても、集塵用管体部50は、どの部分についても、曲げ伸ばしされることがなく、引きずられることもない。
【0026】
また、集塵ホース56には柔軟なものが採用されているが、集塵ホース56は、管体収納空間42の中に収まっているので、潰れるおそれがない。集塵ホース56がフレキシブルなうえ、管体収納空間42が包装装置台座41の下層に確保されていることから、集塵ホース56の可動範囲が広いので、集塵ヘッド32の位置を微調整するのはもちろん配置を大きく変更するのも容易かつ自在に行うことができる。
【0027】
[その他]
上記実施形態では、集塵ヘッドが包装装置本体にだけ装備されていたが、集塵ヘッドは散薬フィーダや切り出し装置の近傍にも設置すると良い。また、手持ち式の集塵ヘッドを筐体外面に掛止等しても良い。さらに、集塵ヘッドを複数設置したとき、集塵機本体は、個別に設けて複数化しても良く、共用化して少数か単数だけ設けても良い。
包装装置引出18には、不用意な引出を防止する等のため、ロック機構を付設して、例えばハンドルやスイッチの操作にてロックの設定や解除が行えるようにすると良い。そのロック解除に応じて集塵機本体30の負圧吸引作動が停止するようにすると更に良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、散薬分配分割装置を2台装備した散薬分包機に限らず、散薬分配分割装置を1台だけ装備した散薬分包機や、散薬分配分割装置を多数装備した散薬分包機、さらには散薬フィーダに加えて錠剤フィーダも装備していて混合分包まで行える散薬調剤機などにも、適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の散薬調剤機の実施例1について、散薬分包機の構造を示し、(a)が外観斜視図、(b),(c)が右側面模式図、(d),(e)が集塵用管体脱着部の斜視図である。
【図2】従来の散薬分包機を示し、(a)が正面模式図、(b),(c)が右側面模式図、(d)が外観斜視図、(e)が包装装置本体の斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
10…散薬分包機(散薬調剤機)、
11…散薬フィーダ(散薬供給装置)、12…切り出し装置、
13…環状テーブル、14…テーブル駆動部、
15…共通ホッパー、17…包装装置台座(引出部)、
18…包装装置引出(引出機構)、19…制御装置(コントローラ)、
20…包装装置本体、
21…包装帯送給部、22…プリンタ、23…縦シール部、
24…投入ホッパー、25…横シール部、26…分包帯(分包紙)、
30…集塵機本体(集塵用負圧吸引源)、
31…集塵ホース(集塵用管体部)、32…集塵ヘッド(集塵用吸気部)、
40…散薬分包機(散薬調剤機)、
41…包装装置台座(引出部)、42…管体収納空間、
50…集塵用管体部、51…集塵ホース、52…固定縦管部、
53…外筒管、54…内筒管、55…ゴム鍔、56…集塵ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集塵用吸気部が引出部に設けられ集塵用負圧吸引源が前記引出部以外の所に設けられた散薬調剤機において、前記集塵用吸気部と前記集塵用負圧吸引源とを繋ぐ集塵用管体部が前記引出部の出し入れに随伴して脱着するものであることを特徴とする散薬調剤機。
【請求項2】
前記引出部の下層部分に管体収納空間が形成されており、前記集塵用管体部のうち前記管体収納空間の中の管体は柔軟なものであり、前記集塵用管体部のうち脱着部の管体は硬質のものである、ことを特徴とする請求項1記載の散薬調剤機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−142205(P2008−142205A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331229(P2006−331229)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000151472)株式会社トーショー (156)
【Fターム(参考)】