説明

数個のカチオン基を含むモノマー化合物及びそれに由来する単位を含むポリマー

【課題】カチオンを含むモノマー化合物及び同モノマー化合物に由来のポリマーを提供する。
【解決手段】次式(II′)


〔ここで、R1′は、H又はCH3であり、n′、m′、q、R、s′は、特定されており、そしてR2′、R3′、R4′、R5′、R6′、R7′、R8′、R9′は、メチル基であり、そしてX-は、特定のアニオンである〕を有する、数個のカチオンを含むモノマー化合物及びそのモノマー化合物に由来する反復単位を含むポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数個のカチオン基を含むモノマー化合物に関する。本発明はまた、これらのモノマー化合物を製造する方法に関する。該方法は高度に選択性であり、そして不所望構造に通じる不所望反応を防ぐ。本発明はまた、該モノマー化合物に由来する単位を含むポリマー(コポリマーを含めて)に関する。
【0002】
カチオン性単位を含むポリマー及び特にコポリマーは、様々な用途において有用である。処方物において、たとえばホームケア用処方物、パーソナルケア用処方物又は油田工業において用いられる処方物において、カチオン性単位は、表面、界面活性剤又は活性成分のような他の化合物と相互作用して特定の性質を与え得る。カチオン性単位を含む様々なポリマー及びコポリマーが用いられる。処方物のある性質及び/又は構造は、数個のカチオン性単位を含むコポリマーを用いることにより調整され得る。新規モノマー及びそれ故新規ポリマー又はコポリマーを開発することにより、環境保護改善又は無論新規性質若しくは機能のどちらかを備えた新規処方物を開発することが可能にされる。
【0003】
2個のカチオン基を含む単位(以後、ジカチオン性単位と称される)を含むコポリマー、及びそれらの製造は記載されており、そしてたとえばパーソナルケア用処方物(シャンプーのような)において又は硬質表面洗浄用処方物において用いられる。数個のカチオン基を含む単位(以後、ポリカチオン性単位たとえばジカチオン性単位、トリカチオン性単位又はテトラカチオン性単位と称される)を含むポリマー及びコポリマーに対するニーズがある。従って、数個のカチオン基を含むモノマー(以後、ポリカチオン性モノマーたとえばジカチオン性モノマー、トリカチオン性モノマー又はテトラカチオン性モノマーと称される)、及びそれらを製造するための効率的方法に対するニーズがある。
【0004】
ポリカチオン性モノマー、及びポリカチオン性単位を含むコポリマーは、国際公開第01/05920号パンフレットに記載されている。この文書は、たとえば、次の式
【化1】

〔ここで、
− R1は、水素原子又はメチル若しくはエチル基であり、
− R2、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なりそして線状又は分枝状C1〜C6好ましくはC1〜C4アルキル、ヒドロキシアルキル又はアミノアルキル基であり、
− mは、1から10の整数たとえば1であり、
− nは、1から6好ましくは2から4の整数であり、
− Zは、−C(O)O−若しくは−C(O)NH−基又は酸素原子を表し、
− Aは、(CH2p基を表し、pは1から6好ましくは2から4の整数であり、
− Bは、線状又は分枝状C2〜C12有利にはC3〜C6ポリメチレン鎖を表し、しかもこのポリメチレン鎖は、1個又はそれ以上のヘテロ原子又はヘテロ基特にO又はNHにより随意に中断され及び1個又はそれ以上のヒドロキシル又はアミノ基好ましくはヒドロキシル基により随意に置換され、
− Xは、同一又は異なりそして対イオンを表す〕
を有するポリカチオン性モノマーを記載する。
【0005】
この文書に記載されたポリカチオン性モノマーは、次のスキームによる方法により製造される。
−反応スキームNo.1:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【0006】
該文書に記載された反応スキームは、高度には選択性でない。不所望生成物の存在はポリマー又はコポリマーの性質を変え得、そしてそれ故これらのポリマー又はコポリマーを含む処方物における性質を変え得る。この反応スキームにより得られた生成物の精製工程は、費用がかかるか又は困難であるかのどちらかであり得る。
【0007】
本発明は、より効率的である(純度、選択性及び収率のバランスとして)新規方法を提供する。本発明は、ポリマー又はコポリマーを設計する際に並びに該ポリマー又はコポリマー含む処方物の性質及び/又は構造を調整する際に特に有用である新規ポリカチオン性モノマーを提供する。本発明は、たとえば、該ポリマー若しくはコポリマーと該処方物中に含まれた他の化合物(界面活性剤、他のポリマー、及び活性物質のような)との相互作用、又は該処方物の施用領域(表面、及び該処方物の施用領域に含まれた化合物のような)との相互作用を調整することを可能にする。かかるコポリマーは、ホームケア用処方物(たとえば、洗剤用処方物、硬質表面洗浄用処方物)又はパーソナルケア用処方物(たとえば、シャンプー)において特に有用である。
【0008】
発明の簡単な要約
第1側面において、本発明は、次式(I)
【化6】

〔ここで、
− R1は、水素原子、メチル基又はエチル基であり、
− Aは、同一又は異なりそして式−A1−C(O)−O−A2−のエステル基又は式−A1−C(O)−NR10−A2−のアミド基
(ここで、
− R10は、同一又は異なりそして水素又はアルキル、ヒドロキシアルキル若しくはアミノアルキルC1〜C6線状若しくは分枝状基であり、
− A1は、同一又は異なりそして共有結合又は式−(CH2p1−(ここで、p1は1から6の整数好ましくは1である)の基であり、
− A2は、同一又は異なりそして線状又は分枝状炭化水素基であり、しかもこの炭化水素基は、N、O又はSのヘテロ原子又はヘテロ基を随意に含み、随意に置換され、複素環のような環を随意に形成し又は含み、そしてA2は好ましくは式−(CH2p2−(ここで、p2は1から6の整数である)の基である)
を含む基であり、
− R1、R2、R3、R5及びR6は、同一又は異なりそして水素、アルキル、ヒドロキシアルキル又はアミノアルキルC1〜C6線状又は分枝状基であり、あるいは角括弧内にある場合基A2と複素環を形成し、
− mは、1から10好ましくは1から2の整数であり、
− nは、1から6好ましくは2又は4の整数であり、
− Zは、−O−、−C(O)O−又は−C(O)NH−であり、
− Bは、線状又は分枝状C2〜C12ポリメチレン鎖好ましくはC3〜C6のものであり、しかもこのポリメチレン鎖は、O又はNHのようなヘテロ原子又はヘテロ基を随意に含み及び1個又は数個のヒドロキシ又はアミノ基で随意に置換され、そして
− X-は、同一又は異なりそして対イオンである〕
を有するところの、数個のカチオン基を含むモノマー化合物に関する。
【0009】
第2側面において、本発明は、次式(I′)
【化7】

〔ここで、
− R1′は、H又はCH3であり、
− n′は、1から6の整数であり、好ましくは3に等しく、
− Yは、同一又は異なりそして式−O−又は−NR10−(ここで、R10は水素又はアルキル、ヒドロキシアルキル若しくはアミノアルキルC1〜C6線状若しくは分枝状基である)の基であり、
− m′は、同一又は異なりそして1から6の整数であり、好ましくは1に等しく、
− Rは、同一又は異なりそして式−(CH2p2−(ここで、p2は1から6の整数であり、好ましくは3に等しい)の基又は式−CH2−CH2−N(CH2−CH2−)(CH2−CH2−)の基であり、
− s′は、1から10の整数であり、
− Bは、線状又は分枝状C2〜C12ポリメチレン鎖好ましくはC3〜C6のものであり、しかもこのポリメチレン鎖は、−O−又は−NH−のようなヘテロ原子又はヘテロ基を随意に含み及び1個又は数個のヒドロキシ又はアミノ基で随意に置換され、好ましくは式
【化8】

(ここで、qは1から4の整数であり、好ましくは1に等しい)の基であり、
− R2′、R3′、R4′、R5′、R6′は、同一又は異なりそしてアルキル基好ましくはメチル又はエチル基であり、
− Tは、アンモニウム基とは異なる末端有機基、すなわち、線状若しくは分枝状炭化水素基であってしかもN、O若しくはSのヘテロ原子若しくはヘテロ基を随意に含み、随意に置換され、環を随意に形成する若しくは含む炭化水素基たとえばアルキル基、又は好ましくは式−N+7′R8′R9′X-(ここで、R7′、R8′、R9′は同一又は異なりそしてアルキル基好ましくはメチル又はエチル基である)のアンモニウム基であり、そして
− X-は、同一又は異なりそして対イオンである〕
を有するところの、数個のカチオン基を含むモノマー化合物に関する。
【0010】
第3側面において、本発明は、次式(I″)
【化9】

〔ここで、
− R1′は、H又はCH3であり、
− n′は、1から6の整数であり、好ましくは3に等しく、
− Yは、同一又は異なりそして式−O−又は−NR10−(ここで、R10は水素又はアルキル、ヒドロキシアルキル若しくはアミノアルキルC1〜C6線状若しくは分枝状基である)の基であり、
− m′は、同一又は異なりそして1から6の整数であり、好ましくは1に等しく、
− Rは、同一又は異なりそして式−(CH2p2−(ここで、p2は1から6の整数であり、好ましくは3に等しい)の基又は式−CH2−CH2−N(CH2−CH2−)(CH2−CH2−)の基であり、
− s″は、2から10の整数であり、好ましくは3に等しく、
− R2′、R3′、R4′、R5′、R6′は、同一又は異なりそしてアルキル基好ましくはメチル又はエチル基であり、
− X-は、同一又は異なりそして対イオンであり、そして
− R7″は、線状又は分枝状炭化水素基であってしかもN、O又はSのヘテロ原子又はヘテロ基を随意に含み、随意に置換され、環を随意に形成する又は含む炭化水素基たとえばアルキル基のような、アンモニウムとは異なる末端有機基である〕
を有するところの、数個のカチオン基を含むモノマー化合物に関する。
【0011】
本発明はまた、第1側面及び第2側面によるモノマー化合物を製造する方法に関する。本発明はまた、該モノマー化合物に由来する反復ポリカチオン性単位を含むポリマーに関する。
【0012】
発明の詳細な説明
モノマー化合物
第1側面
第1側面によるモノマー化合物は、好ましくは、次のとおりである。すなわち、
− Zは、−C(O)NH−であり、
− nは、2又は3に等しく、好ましくは3に等しく、そして
− Bは、次式
【化10】

(ここで、qは1から4の整数であり、好ましくは1に等しい)を有する。
mが1に等しいところの第1側面によるモノマー化合物が、有利な具体的態様である。
【0013】
また、
− A1が、−(CH2p1−(ここで、p1は1から6の整数好ましくは1である)であり、そして
− A2が、式−(CH2p2−(ここで、p2は1から6の整数である)を有する
ことも好ましい。
【0014】
別の具体的態様において、A2は次式
−CH2−CH2−N(CH2−CH2−)(CH2−CH2−)
を有し、しかも基−N(CH2−CH2−)(CH2−CH2−)は、角括弧内のN原子及び角括弧内のR2又はR3基と共に、2個のN原子を含む複素環を形成する。
【0015】
1からR6は、同一又は異なりそして好ましくはメチル又はエチル基である(それらが、上記に該別の具体的態様について挙げられたように基A2と複素環を形成するのでないなら)。
【0016】
-は、同一又は異なりそして好ましくはハロゲン、スルホン酸、硫酸、硫酸水素、リン酸、ホスホン酸、クエン酸、ギ酸又は酢酸アニオン(式Cl-、Br-、I-又はCH3OSO3-のアニオンのような)である。
【0017】
第2側面
本発明の第2側面によるモノマー化合物は、好ましくは次式(II′)を有する。すなわち、
【化11】

ここで、
− R1′は、H又はCH3であり、
− n′は、1から6の整数であり、好ましくは3に等しく、
− m′は、同一又は異なりそして1から6の整数であり、好ましくは1に等しく、
− qは、1から4の整数であり、好ましくは1に等しく、
− Rは、同一又は異なりそして式−(CH2p2(ここで、p2は1から6の整数であり、好ましくは3に等しい)の基であり、
− s′は、1から10の整数であり、好ましくは1に等しく、そして
− R2′、R3′、R4′、R5′、R6′、R7′、R8′、R9′は、メチル基であり、そして
− X-は、同一又は異なりそしてハロゲン、スルホン酸、硫酸、硫酸水素、リン酸、ホスホン酸、クエン酸、ギ酸又は酢酸アニオン(式Cl-、Br-、I-又はCH3OSO3-のアニオンのような)である。
【0018】
本発明の第2側面によるモノマー化合物の好ましい具体的態様において、該モノマー化合物は、次式
【化12】

(ここで、X-は同一又は異なりそして式Cl-、Br-、I-又はCH3OSO3-のアニオンである)を有する。それは、たとえば、次式
【化13】

(ここで、X-は塩化物アニオンである)を有するN,N,N,N′,N′,N″,N″−ヘプタメチル−N″−3−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)アミノプロピル−9−オキソ−8−アゾ−デカン−1,4,10−トリアンモニウムトリクロライドである。
【0019】
方法
方法の第1側面
本発明の第1側面による上記に定められたモノマー化合物は、次の工程a)からd)を含む方法により製造され得る。
【0020】
工程a)
随意に、次の反応スキームI
2C=CR1−Z−(CH2n−X + HNR23 → H2C=CR1−Z−(CH2n−NR23(中間体I)
〔ここで、Z、R1、R2、R3、X、nは上記に定義されたとおりである〕
を行う。工程a)は、中間体Iが通常商業的に入手できるので随意である。
【0021】
工程b)
次の反応スキームII、次いでIIIを行う。
反応スキームII:
(中間体I) + X−A1−C(O)−O−R4′ → H2C=CR1−Z−(CH2)−N+23−A1−C(O)−O−R4′X-(中間体II)
ここで、X(同一又は異なる)及びA1は上記に定義されたとおりであり、そしてR4′はアルキル基好ましくはエチルである。
【0022】
反応スキームIII:
(中間体II) + HW−A2−NR23(ここで、Wは−O又は−NR10である) → H2C=CR1−Z−(CH2)−N+23−A1−C(O)−W−A2−NR23-(中間体III)
ここで、R2、R3(同一又は異なる)、A2及びR10は上記に定義されたとおりである。
【0023】
工程c)
工程b)において又は前の実行において用いられたものと同一又は異なる反応体を用いて、次の反応スキームIIa、次いでIIIaを(m−1)回実行する。
【0024】
反応スキームIIa:
2C=CR1−Z−(CH2)−N+23[−A1−C(O)−W−A2−N+23m-2−A1−C(O)−W−A2−NR23-m(中間体III又はIIIaである) + X−A1−C(O)−O−R4′ → H2C=CR1−Z−(CH2)−N+23[−A1−C(O)−W−A2−N+23m-1−A1−C(O)−O−R4′X-m+1(中間体IIa)
ここで、X及びA1(同一又は異なる)は上記に定義されたとおりであり、そしてR4′はアルキル基好ましくはエチルである。
【0025】
反応スキームIIIa:
(中間体II又はIIa) + HW−A2−NR23(ここで、Wは−O又は−NR10である) → H2C=CR1−Z−(CH2)−N+23[−A1−C(O)−W−A2−N+23m-1−A1−C(O)−W−A2−NR23-m+1(中間体IIIa)
ここで、A2、R10、R2及びR3(同一又は異なる)は上記に定義されたとおりである。
【0026】
工程d)
次の反応スキームIVを行う。
反応スキームIV:
(中間体III又はIIIa) + X−B−N+456- → 上記のとおりのモノマー化合物
ここで、X、B、R4、R5及びR6(同一又は異なる)は上記に定義されたとおりである。
【0027】
方法の第2側面
本発明の第2側面による上記に定められたモノマー化合物は、次の工程b′)からd′)を含む方法により製造され得る。
【0028】
工程b′)
次の反応スキームII′、次いでIII′を行う。
反応スキームII′:
【化14】

ここで、n′、m′、R1′、R2′、R3′及びXは上記に定義されたとおりであり、そしてR4′はアルキル基好ましくはエチルである。
【0029】
典型的には、カチオン性エステルモノマーを得るために、N−ジアルキルアミノアルキル(メト)アクリルアミドモノマーがクロロカルボキシレートと反応される。
【0030】
反応スキームIII′:
【化15】

ここで、s′=1であり、R7′は式−(CH2p2−NR5′R6′(ここで、p2は1から6の整数であり、好ましくは3に等しく、そしてR5′及びR6′は上記に定義されたとおりである)の基又は式−CH2−CH2−N(CH2−CH2−)(CH2−CH2−)NHの基であり、そしてYは−O−又は−NR10(ここで、R10は上記に定義されたとおりである)である。
【0031】
典型的には、多官能基化カチオン性モノマーを得るために、カチオン性エステルモノマーは、官能基担持有機アミン又はアルコールとの交換反応を受ける。典型的には、反応は、ジアルキルアミノアルキルアミンでもって行われる。
【0032】
工程c′)
工程b′)において又は前の実行において用いられたものと同一又は異なる反応体を用いて、次の反応スキームII′a、次いでIII′aを(s′−1)回実行する。
反応スキームII′a:
【化16】

ここで、s′>1であり、n′、m′、R1′、R2′、R3′及びX(同一又は異なる)は上記に定義されたとおりであり、そしてR4′はアルキル基好ましくはエチルである。
【0033】
反応スキームIII′a:
【化17】

ここで、s′>1であり、R7′は式−(CH2p2−NR5′R6′(ここで、p2は1から6の整数であり、好ましくは3に等しく、そしてR5′及びR6′は上記に定義されたとおりである)の基又は式−CH2−CH2−N(CH2−CH2−)(CH2−CH2−)NHの基であり、そしてYは−O−又は−NR10(ここで、R10は上記に定義されたとおりである)である。
【0034】
工程d′)
次の反応スキームIV′を行う。
反応スキームIV′:
【化18】

ここで、X、B、T(同一又は異なる)は上記に定義されたとおりである。典型的には、反応は、(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド(クァト(Quat)−188)でもって行われる。
【0035】
好ましい具体的態様において、本方法は、下記のとおりである。すなわち、
【化19】

ここで、RはCH3又はC25であり、そしてクァト−188はCl−CH2−CHOH−CH2−N+(CH33Cl-である。
【0036】
方法の第3側面
本発明の第3側面による上記に定められたモノマー化合物は、次の工程b″)からd″)を含む方法により製造され得る。
工程b″): 工程b′)と同じ工程。
工程c″): 反応スキームII′a、次いでIII′aを(s″−2)回実行する。
工程d″): 反応スキームIII′aを、反応体HY−R7′の代わりに反応体HY−R7″(ここで、Y及びR7″は上記に定義されたとおりの基である)でもって実行する。典型的には、HY−R7″は、アルキルアミノアルキルアルコールである。
【0037】
ポリマー
本発明はまた、上記に定められたようなジカチオン性ポリカチオン性モノマーに好ましくはトリカチオン性モノマーに由来するポリカチオン性単位を含むポリマーに関する。ポリカチオン性単位を含むポリマーは、上記に定められたポリカチオン性単位及び他の単位を含むホモポリマー及びコポリマーを包含する。他の単位は、次のものを包含する。すなわち、
− カチオン性単位(上記に定められたものとは異なるモノカチオン性、ジカチオン性、ポリカチオン性)、
− 中性単位、又は
− アニオン基又は潜在的にアニオンの基を含む単位。
【0038】
コポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー又は星形コポリマーであり得る。ランダムコポリマーが好ましい。
【0039】
コポリマーは、有利には、少なくとも1000有利には少なくとも10,000の分子質量を示す。それは20,000,000まで有利には10,000,000までの範囲であり得る。
【0040】
別段指摘されている場合を除いて、用語分子質量が用いられる場合、それはg/molにて表された重量平均分子質量を指す。後者は、水性ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)又は30℃における1N−NaNO3溶液中の固有粘度の測定により決定され得る。
【0041】
コポリマーは、コポリマーの製造のための公知技法に従って、特に出発エチレン不飽和モノマー(公知化合物であるか又は有機化学の慣用の合成方法を用いて当業者により容易に得られ得る化合物である)のラジカル経路による重合により得られ得る。
【0042】
特に、米国特許第4,387,017号明細書及び欧州特許第156,646号明細書に開示された方法が参照され得る。
【0043】
ラジカル重合は、好ましくは、酸素のない環境において、たとえば不活性ガス(ヘリウム、アルゴン、等)又は窒素の存在下で行われる。反応は、不活性溶媒中で、好ましくはエタノール又はメタノール中でそして一層好ましくは水中で行われる。
【0044】
重合は、重合開始剤の添加により開始される。用いられる開始剤は、当該技術において普通に用いられるフリーラジカル開始剤である。それらの例は、有機過酸エステル(t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシα−エチルヘキサノエート、等);アゾタイプの有機化合物、たとえばアゾビスアミジノプロパン塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、等);無機及び有機過酸化物、たとえば過酸化水素、ベンジルペルオキシド及びブチルペルオキシド、等;レドックス開始系、たとえば過硫酸塩(特に、アンモニウム又はアルカリ金属の過硫酸塩、等)のような酸化剤を含むもの;塩素酸塩及び臭素酸塩(無機又は有機の塩素酸塩及び/又は臭素酸塩を含めて);亜硫酸塩及び重亜硫酸塩(無機及び/又は有機の亜硫酸塩又は重亜硫酸塩を含めて)のような還元剤;シュウ酸及びアスコルビン酸;並びにこれらの化合物の二つ又はそれ以上の混合物を包含する。
【0045】
好ましい開始剤は、水溶性開始剤である。過硫酸ナトリウム及びアゾビスアミジノプロパン塩酸塩が特に好ましい。
【0046】
別の態様において、重合は、紫外線を用いての照射により開始され得る。用いられる開始剤の量は、一般に、重合の開始をもたらし得るのに十分な量である。開始剤は、好ましくはモノマーの総重量に対して0.001からおおよそ10重量%の範囲の量にて存在し、そして好ましくはモノマーの総重量に対して0.5重量%より少ない量にあり、しかして好ましい量はモノマーの総重量に対して0.005から0.5重量%の範囲にある。開始剤は重合混合物に、連続的又は非連続的のどちらかにて添加される。
【0047】
高分子質量のコポリマーを得ることが所望される場合、重合反応中において新たな開始剤を添加することが望ましい。少しずつの又は非連続の添加もまた、より効率的な重合及びより短い反応時間を可能にする。重合は、酸素のない雰囲気下でモノマー(a)、モノマー(b)及び随意にモノマー(c)を重合するのに有効である反応条件下で行われる。反応は、好ましくは、おおよそ30℃からおおよそ100℃好ましくは60℃と90℃の間の範囲の温度にて行われる。酸素のない雰囲気は、たとえば反応中ずっと窒素流を維持することにより、反応期間中ずっと維持される。
【0048】
特に有用なコポリマーは、次のものを含むランダムコポリマーである。すなわち、
− 上記に定められたようなモノマーに由来するポリカチオン性単位C、
− 中性単位N、好ましくはエチレン不飽和モノマーに由来するもの、及び
− 随意に、アニオン基又は潜在的にアニオンの基を含む単位(単位Bと称される)、これらの単位は好ましくはエチレン不飽和モノマーに由来する。
【0049】
単位中の潜在的にアニオンの基は、該コポリマーを含む組成物中で、又は該コポリマーを含む処方物が用いられるところの施用用媒質中でアニオンになり得る基である。アニオン基又は潜在的にアニオンの基を含む単位(単位B)は、次のものを包含する。すなわち、
− 1個又は数個のアニオン基を含む単位、
− 1個又は数個の潜在的にアニオンの基を含む単位、
− 両性基を含む単位、及び
− ツビッターイオン性単位。
【0050】
かかるコポリマーは、次式
−[C]z−[B]y−[N]x
〔ここで、zは0より大きく、yは0より大きいか又は等しく、xは0より大きい〕
を有する。
【0051】
他のカチオン性単位は、次のものから成るカチオン性モノマーの群から選択されたモノマーを包含する。すなわち、
− アミノアルキル(メト)アクリレート、(メト)アミノアルキル(メト)アクリルアミド、
− 少なくとも1個の第2級、第3級若しくは第4級アミン官能基又は窒素原子含有複素環式基を含むモノマー、ビニルアミン又はエチレンイミン、
− ジアリルジアルキルアンモニウム塩、
− それらの混合物、それらの塩、及びそれらに由来するマクロモノマー。
【0052】
他のカチオン性モノマーの例は、次のものを包含する。すなわち、
− ジメチルアミノエチル(メト)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メト)アクリレート、ジ第3級ブチルアミノエチル(メト)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メト)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メト)アクリルアミド、
− エチレンイミン、ビニルアミン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、
− トリメチルアンモニウムエチル(メト)アクリレートクロライド、トリメチルアンモニウムエチル(メト)アクリレートメチルサルフェート、ジメチルアンモニウムエチル(メト)アクリレートベンジルクロライド、4−ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウムエチルアクリレートクロライド、トリメチルアンモニウムエチル(メト)アクリルアミドクロライド、トリメチルアンモニウムプロピル(メト)アクリルアミドクロライド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、及び
− ジアリルジメチルアンモニウムクロライド。
【0053】
好ましい他のカチオン性モノマーは、トリメチルアンモニウムエチル(メト)アクリレートクロライド、トリメチルアンモニウムエチル(メト)アクリレートメチルサルフェート、ジメチルアンモニウムエチル(メト)アクリレートベンジルクロライド、4−ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウムエチルアクリレートクロライド、トリメチルアンモニウムエチル(メト)アクリルアミドクロライド、トリメチルアンモニウムプロピル(メト)アクリルアミドクロライド及びビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドを包含する。
【0054】
以後、単位Bは、モノマーBに由来する単位に関して言及される。以後、中性単位は、モノマーNに由来する単位に関して言及される。
【0055】
好ましいモノマーBは、次のものを包含する。すなわち、
− ホスフェート又はホスホネート基を含むアルファエチレン不飽和モノマー、
− アルファエチレン不飽和モノカルボン酸、
− アルファエチレン不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、
− アルファエチレン不飽和ジカルボン酸のモノアルキルアミド、
− スルホン酸基を含むアルファエチレン不飽和化合物、及びスルホン酸基を含むアルファエチレン不飽和化合物の塩。
【0056】
モノマーBの例は、次のものを包含する。すなわち、
− アクリル酸、メタクリル酸、
− ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩、
− ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸の塩、
− アルファ−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、アルファ−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の塩、
− 2−スルホエチルメタクリレート、2−スルホエチルメタクリレートの塩、
− アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の塩、
− スチレンスルホネート(SS)、
− α−エタクリル酸、β,β−ジメチルアクリル酸、メチレンマロン酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、エチリジン酢酸、プロピリジン酢酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、N−(メタクロイル)アラニン、N−(アクリロイル)ヒドロキシグリシン、スルホプロピルアクリレート、スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、ホスホエチルアクリレート、ホスホノエチルアクリレート、ホスホプロピルアクリレート、ホスホノプロピルアクリレート、ホスホエチルメタクリレート、ホスホノエチルメタクリレート、ホスホプロピルメタクリレート、ホスホノプロピルメタクリレート、並びにそれらのアルカリ金属及びアンモニウム塩。
【0057】
好ましいモノマーNは、アクリルアミド、ビニルアルコール、アクリル酸の及びメタクリル酸のC1〜C4アルキルエステル、アクリル酸の及びメタクリル酸のC1〜C4ヒドロキシアルキルエステル(特に、エチレングリコール及びプロピレングリコールアクリレート及びメタクリレート)、アクリル酸の及びメタクリル酸のポリアルコキシル化エステル(特に、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールエステル)、アクリル酸若しくはメタクリル酸とポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコールC1〜C25モノアルキルエーテルとのエステル、ビニルアセテート、ビニルピロリドン又はメチルビニルエーテルを包含する。モノマーNの例は、次のものを包含する。すなわち、
− ビニルアセテート、
− スチレン、
− アクリルアミド、メタクリルアミド、
− アクリロニトリル、
− メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチル−ヘキシルアクリレート、2−エチル−ヘキシルメタクリレート、及び
− 2−ヒドロキシエチルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート。
【0058】
ある特に有用なコポリマーは全体的に陽性であり、しかしてこれはコポリマー中のカチオン基の数がアニオン基の数より大きいことを意味する。上記のコポリマー式によれば、それはz*(単位C中のカチオン基の数)>y*(単位B中のアニオン基の数)であることを意味する。
【0059】
好ましいコポリマーは、式−[C]z−[N]x
〔ここで、
− C単位は、N,N,N,N′,N′,N″,N″−ヘプタメチル−N″−3−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)アミノプロピル−9−オキソ−8−アゾ−デカン−1,4,10−トリアンモニウムトリクロライドに由来し、
− N単位は、2−ヒドロキシエチルアクリレートに由来し、
− xは、1より大きい整数であり、
− zは、1より大きい整数である〕
のコポリマーである。
【0060】
いくつかの例示的しかし非限定的な例が、本発明のよりよい理解のために以下に与えられる。
【0061】
トリ第4級(メト)アクリレートモノマーは、次のように合成される。
【化20】

【0062】
エチルエステル四級化DMAPMAであるDMEAは、HPLC分析により>99%の純度でもってTHFから得られる。DMEAの構造及び官能基は、1H−及び13C−NMRにより確認される。メタノール中でのDMEAとジメチルアミノプロピルアミンとの引き続く反応は、94%(210nmにおけるUV吸収により)の二官能性生成物を生じる。APに相当するピークもまた検出され、しかしてそれは不純物(6%)の説明となる。DMEA及びDMAPAからの生成物の四級化は、担持された量のAPモノマーと共に、約9:1の比率でもって2種の生成物を生じる。これらの2種の四級化生成物は、トリクァトの異性体であり得る。これが本当であれば、90%より多いトリクァトが得られ得る。
【0063】
ホモポリマーは、水溶液中で20%固形分にて製造される。このバッチの典型的性質は、下記に示される。すなわち、
外観 無色透明な液体
固形分 21.68%
計算活性ポリマー 21.48%
カチオン電荷 4.84meq/g
pH 6.27
残留モノマー <0.2%
B.V.(LV2,60rpm,25℃) 210cp
【0064】
代替的に、DMEAはアミノエチルピペラジンと反応され、そしてただ1種の生成物及び少量のAPモノマー(HPLC分析により)を生じる。この生成物はクァト−188で2種の生成物に四級化され得、そしてこれらの2種の生成物はゲル形成なしに重合され、しかしてアミノリシスが選択的であること及び2種の四級化生成物が異性体であることを指摘する。いかなる理論にも縛られたくないが、提案されるメカニズムが下記に示される。
【化21】

【0065】
実施例
実施例#1〜3は、モノマーの製造を実例で示す。
実施例#1
この例は、精製なしにトリクァトを製造するためのワンポット法を示す。これは、機械撹拌機、ガス導入口、凝縮器及び温度計を備えたジャケット付き反応フラスコ中で三工程反応を行うことにより達成された。機械式撹拌及び空気パージを、反応中ずっと維持した。かくして、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)340.52g、メチルクロロアセテート238.75g、MEHQ(メタクリル酸2−エチルヘキシル)0.34g及びメタノール425gを反応器中に秤量し、そして65〜70℃にておおよそ5時間加熱して、(メタクリルアミドプロピル)(メトキシカルボニルメチル)ジメチルアンモニウムクロライド(MMDMAC)が得られた。100%転化を確実にするために、サンプルを2時間ごとに採取し、そしてHPLC分析により分析し、またCl-をAgNO3で滴定した(第1工程)。第2工程において、MMDMAC溶液にそれが室温に冷却された後、MEHQ0.365g及びジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)224.5gをゆっくり添加した。発熱反応が観察され、そして混合物は薄黄色に変わった。加熱を65〜70℃にて2時間続行し、そして次いでメタノールを真空下で蒸留除去した。第2工程においてすべてのエステルがアミドに転化されたことをHPLCにより確認した後、次いで65%(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド(クァト−188)637gを添加して第3工程に進めた。温度を、65〜70℃に2時間保った。この期間中、残留量のメタノールをストリッピング除去し、そして水を添加して約55%の固形分含有率にした。反応を水中で更に1時間続行して、トリクァトモノマーが得られた(第3工程)。この生成物はわずかに粘稠であり、また淡黄色及び7.8のpHを有していた。代替的に、メタノールをエタノールで置き換えることにより又はメチルクロロアセテートをエチルクロロアセテートで置き換えることにより、トリクァトモノマーを製造した。各工程からの反応生成物の構造を、C−13NMR測定により確認した。そのように合成されたトリクァトは、クロロアセテート及びDMAPAのわずかに過剰の使用に因り、少量のマルチプルクァトを不純物として含有すると予期された。これらのマルチプルクァトは、重合にとって及びトリクァトの使用にとって懸念事項でなかった。高純度のトリクァト又はマルチプルクァトが要求されるならば、反応の次工程に進む前に、過剰量のクロロアセテート及びDMAPAは真空下で除去され得る。工程1及び2を工程3と共に又は工程3なしに繰り返すと、より高次のクァトがもたらされることになる。
【0066】
実施例#2
この例は、更なる官能基化のための中間体である純粋な(メタクリルアミドプロピル)(エトキシカルボニルメチル)ジメチルアンモニウムクロライド(MEDMAC)又はMMDMACを製造する仕方を実例で示した。MEHQ0.034g、DMAPMA34.05g、テトラヒドロフラン40.0g及びエチルクロロアセテート36.9gを、還流及び空気パージ下で65〜67℃にて加熱した。相分離が10分後に観察され、そして結晶化が反応の約1時間後に観察された。テトラヒドロフラン40gを添加し、反応を更に2時間続行し、しかしてHPLC分析により99.4%のDMAPMAが転化されたことが示された。固体を濾別しそしてTHFで3回洗浄し、そして次いで真空中で一晩乾燥して、MMDMAC58.5g(HPLCによる>99%の純度でもって100%収率)が得られた。MEDMACは、メタノール中で室温にて一晩でほぼ定量的にDMAPMと反応することが分かった。代替的に、純粋なMMDMACをメチルクロロアセテートから、等モルの該クロロアセテートでもって同じ手順に従うことにより製造した。
【0067】
実施例#3
この例は、ワンポット法におけるモルフィン複素環官能基を有するモノマーの製造を実例で示す。DMAPMA17.03g、メチルクロロアセテート10.85g、エタノール27.8gを、すべてのDMAPMAが転化されるまで、空気パージ下で65℃にて5時間加熱した。次いで、アミノプロピルモルフィン14.42g及びMEHQ0.050gを添加し、そして加熱及びパージを3時間続行した。次いで、メタノールをストリッピング除去しそして水を添加して、生成物の水溶液がもたらされた。代替的に、等モル量のアミノエチルピペラジンをアミノプロピルモルフィンの代わりに用いて、ピペラジン官能基化モノマーが得られた。ただ一つのピークがHPLC分析から観察され、しかして6員環上の第2級アミンよりむしろ第1級アミンが反応されたことが指摘された。クァト−188での更なる四級化及び中和により、テトラクァトがもたらされた。
【0068】
実施例#4〜5は、トリクァトのホモポリマーを製造する仕方を実例で示す。
【0069】
実施例#4
機械撹拌機、凝縮器、ガス導入口及び温度計を備えた反応器に、実施例#1において製造されたような水中50%活性物質におけるトリクァトモノマー200g及び脱イオン水300gを添加した。この内容物を、窒素パージ下で70℃に加熱した。撹拌及びパージを、反応中ずっと維持した。温度が70℃に達しそして1時間渦動した後、ワコ(Wako)V−50を0.05g添加した。粘度が、30分後に上昇し始めた。2時間後、ワコ(Wako)V−50の更なる分量0.05gを添加し、このバッチを70℃に更に1時間保った。重合を70℃にて更に3時間続行し、しかも1時間ごとに、脱イオン水1ml中の過硫酸ナトリウム0.10g及び脱イオン水1ml中のメタ重亜硫酸ナトリウム0.20gを添加した。そのようにして得られた生成物は、25℃における1070cpのブルックフィールド粘度、21.2%の固形分、6.01のpH及び500ppm未満の残留トリクァトを有していた。PVSKで滴定して4.8meq/gのカチオン電荷密度。
【0070】
実施例#5
実施例#4についてと同じ装填及び手順に従ったが、但し反応を75℃にて行い、そして開始剤の1回目及び2回目の注入がそれぞれ脱イオン水1ml中の過硫酸ナトリウム0.10g及び脱イオン水1ml中のメタ重亜硫酸ナトリウム0.20gであった。生成物は、21.7%の固形分含有率、6.21のpH、210cpの粘度及び4.84meq/gの電荷密度を有していた。
【0071】
実施例#6
機械撹拌機、凝縮器、ガス導入口及び温度計を備えた反応器に、水中54.8%活性物質におけるトリクァトモノマー269.76g、50%アクリルアミド(AM)4.35g、脱イオン水225.9gを添加した。この内容物を、窒素パージ下で75℃に加熱した。パージ及び混合を、反応中ずっと維持した。1時間パージしそして温度が75℃に達した後、水2ml中の過硫酸ナトリウム0.11gを添加した。この内容物を75℃に2時間保持し、そして1時間ごとの終わりに水2ml中の過硫酸ナトリウム0.10gを反応物に添加して更に2時間続行した。温度は過硫酸塩の3回目の添加後に85〜90℃に増加し、そしてこの温度に2時間保った。この内容物を65℃に冷却した後、水2ml中のメタ重亜硫酸ナトリウム0.2gを添加した。この反応物を、65℃に1時間保った。次いで、アクリルアミド及びトリクァトの残留モノマーを、HPLC分析により検査した。最後の工程を、残留モノマーが受容レベルに達するまで繰り返した。そのようにして得られたポリマーは、透明であり、1260cpの粘度、30.2%の固形分、5.48のpH、76ppmのアクリルアミド及び検出され得ないトリクァトを有していた。
【0072】
実施例#7〜14
これらの例において、トリクァト及びアクリルアミドの量を、表1に示されたように変動した。実施例6に記載された手順に従って反応を行ったが、但し表1に示された開始剤の1回目の注入及び/又は温度を用いた。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例14及び15からのポリマーは、特性決定することなく捨てられた。生成物のその他のものの性質は、表2に要約されている。
【0075】
【表2】

本願発明に関連する発明の実施形態について列挙する。
[実施形態1]
次式
【化22】

〔ここで、
− R1は、水素原子、メチル基又はエチル基であり、
− Aは、同一又は異なりそして式−A1−C(O)−O−A2−のエステル基又は式−A1−C(O)−NR10−A2−のアミド基
(ここで、
− R10は、同一又は異なりそして水素又はアルキル、ヒドロキシアルキル若しくはアミノアルキルC1〜C6線状若しくは分枝状基であり、
− A1は、同一又は異なりそして共有結合又は式−(CH2p1−(ここで、p1は1から6の整数好ましくは1である)の基であり、
− A2は、同一又は異なりそして線状又は分枝状炭化水素基であり、しかもこの炭化水素基は、N、O又はSのヘテロ原子又はヘテロ基を随意に含み、随意に置換され、複素環のような環を随意に形成し又は含み、そしてA2は好ましくは式−(CH2p2−(ここで、p2は1から6の整数である)の基である)
を含む基であり、
− R1、R2、R3、R5及びR6は、同一又は異なりそして水素、アルキル、ヒドロキシアルキル又はアミノアルキルC1〜C6線状又は分枝状基であり、あるいは角括弧内にある場合基A2と複素環を形成し、
− mは、1から10好ましくは1から2の整数であり、
− nは、1から6好ましくは2又は4の整数であり、
− Zは、−O−、−C(O)O−又は−C(O)NH−であり、
− Bは、線状又は分枝状C2〜C12ポリメチレン鎖好ましくはC3〜C6のものであり、しかもこのポリメチレン鎖は、O又はNHのようなヘテロ原子又はヘテロ基を随意に含み及び1個又は数個のヒドロキシ又はアミノ基で随意に置換され、そして
− X-は、同一又は異なりそして対イオンである〕
を有するところの、数個のカチオン基を含むモノマー化合物。
[実施形態2]
次式(I′)
【化23】

〔ここで、
− R1′は、H又はCH3であり、
− n′は、1から6の整数であり、好ましくは3に等しく、
− Yは、同一又は異なりそして式−O−又は−NR10−(ここで、R10は水素又はアルキル、ヒドロキシアルキル若しくはアミノアルキルC1〜C6線状若しくは分枝状基である)の基であり、
− m′は、同一又は異なりそして1から6の整数であり、好ましくは1に等しく、
− Rは、同一又は異なりそして式−(CH2p2−(ここで、p2は1から6の整数であり、好ましくは3に等しい)の基又は式−CH2−CH2−N(CH2−CH2−)(CH2−CH2−)の基であり、
− s′は、1から10の整数であり、
− Bは、線状又は分枝状C2〜C12ポリメチレン鎖好ましくはC3〜C6のものであり、しかもこのポリメチレン鎖は、−O−又は−NH−のようなヘテロ原子又はヘテロ基を随意に含み及び1個又は数個のヒドロキシ又はアミノ基で随意に置換され、好ましくは式
【化24】

(ここで、qは1から4の整数であり、好ましくは1に等しい)の基であり、
− R2′、R3′、R4′、R5′、R6′は、同一又は異なりそしてアルキル基好ましくはメチル又はエチル基であり、
− Tは、線状若しくは分枝状炭化水素基であってしかもN、O若しくはSのヘテロ原子若しくはヘテロ基を随意に含み、随意に置換され、環を随意に形成する若しくは含む炭化水素基たとえばアルキル基のような、アンモニウム基とは異なる末端有機基、又は好ましくは式−N+7′R8′R9′X-(ここで、R7′、R8′、R9′は同一又は異なりそしてアルキル基好ましくはメチル又はエチル基である)のアンモニウム基であり、そして
− X-は、同一又は異なりそして対イオンである〕
を有するところの、数個のカチオン基を含むモノマー化合物。
[実施形態3]
次式(II′)
【化25】

〔ここで、
− R1′は、H又はCH3であり、
− n′は、1から6の整数であり、好ましくは3に等しく、
− m′は、同一又は異なりそして1から6の整数であり、好ましくは1に等しく、
− qは、1から4の整数であり、好ましくは1に等しく、
− Rは、同一又は異なりそして式−(CH2p2(ここで、p2は1から6の整数であり、好ましくは3に等しい)の基であり、
− s′は、1から10の整数であり、好ましくは1に等しく、そして
− R2′、R3′、R4′、R5′、R6′、R7′、R8′、R9′は、メチル基であり、そして
− X-は、同一又は異なりそしてハロゲン、又は、スルホン酸、硫酸、硫酸水素、リン酸、ホスホン酸、クエン酸、ギ酸若しくは酢酸アニオン(式Cl-、Br-、I-又はCH3OSO3-のアニオンのような)である〕
を有する、実施形態2に記載のモノマー化合物。
[実施形態4]
次式
【化26】

〔ここで、X-は同一又は異なりそして式Cl-、Br-、I-又はCH3OSO3-のアニオンである〕
を有するところの、数個のカチオン性単位を含むモノマー化合物。
[実施形態5]
次式(I″)
【化27】

〔ここで、
− R1′は、H又はCH3であり、
− n′は、1から6の整数であり、好ましくは3に等しく、
− Yは、同一又は異なりそして式−O−又は−NR10−(ここで、R10は水素又はアルキル、ヒドロキシアルキル若しくはアミノアルキルC1〜C6線状若しくは分枝状基である)の基であり、
− m′は、同一又は異なりそして1から6の整数であり、好ましくは1に等しく、
− Rは、同一又は異なりそして式−(CH2p2−(ここで、p2は1から6の整数であり、好ましくは3に等しい)の基又は式−CH2−CH2−N(CH2−CH2−)(CH2−CH2−)の基であり、
− s′は、1から10の整数であり、好ましくは3に等しく、
− R2′、R3′、R4′、R5′、R6′は、同一又は異なりそしてアルキル基好ましくはメチル又はエチル基であり、
− X-は、同一又は異なりそして対イオンであり、そして
− R7″は、線状又は分枝状炭化水素基であってしかもN、O又はSのヘテロ原子又はヘテロ基を随意に含み、随意に置換され、環を随意に形成する又は含む炭化水素基たとえばアルキル基のような、アンモニウムとは異なる末端有機基である〕
を有するところの、数個のカチオン基を含むモノマー化合物。
[実施形態6]
実施形態1に記載のモノマー化合物に由来する反復単位を含むポリマー。
[実施形態7]
ランダム、ブロック、星形又はグラフトコポリマーである、実施形態6に記載のポリマー。
[実施形態8]
ポリマーが、
− 実施形態1から4のいずれか一項に記載のモノマーに由来するポリカチオン性単位C、
− 中性単位N、好ましくはエチレン不飽和モノマーに由来するもの、及び
− 随意に、アニオン基又は潜在的にアニオンの基を含む単位(単位Bと称される)、これらの単位は好ましくはエチレン不飽和モノマーに由来する
を含むランダムコポリマーである、実施形態6に記載のポリマー。
[実施形態9]
ポリカチオン性単位が、2、3又は4個のアンモニウム基を含む、実施形態7に記載のポリマー。
[実施形態10]
次式
−[C]z−[N]x
〔ここで、
− C単位は、N,N,N,N′,N′,N″,N″−ヘプタメチル−N″−3−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)アミノプロピル−9−オキソ−8−アゾ−デカン−1,4,10−トリアンモニウムトリクロライドに由来し、
− N単位は、2−ヒドロキシエチルアクリレートに由来し、
− xは、1より大きい整数であり、そして
− zは、1より大きい整数である〕
を有する、実施形態8に記載のポリマー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(II′)
【化1】

〔ここで、
− R1′は、H又はCH3であり、
− n′は、1から6の整数であり、
− m′は、同一又は異なりそして1から6の整数であり、
− qは、1から4の整数であり、
− Rは、同一又は異なりそして式−(CH2p2(ここで、p2は1から6の整数である)の基であり、
− s′は、1から10の整数であり、そして
− R2′、R3′、R4′、R5′、R6′、R7′、R8′、R9′は、メチル基であり、そして
− X-は、同一又は異なりそしてハロゲン、又は、スルホン酸、硫酸、硫酸水素、リン酸、ホスホン酸、クエン酸、ギ酸若しくは酢酸アニオンである〕
を有する、数個のカチオンを含むモノマー化合物。
【請求項2】
請求項1に記載のモノマー化合物に由来する反復単位を含むポリマー。
【請求項3】
ランダム、ブロック、星形又はグラフトコポリマーである、請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
ポリマーが、
− 式(II‘)のモノマーに由来するポリカチオン性単位C、及び
− アクリルアミド、ビニルアルコール、アクリル酸の及びメタクリル酸のC1〜C4アルキルエステル、アクリル酸の及びメタクリル酸のC1〜C4ヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸の及びメタクリル酸のポリアルコキシル化エステル、アクリル酸若しくはメタクリル酸とポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコールとのエステル、C1〜C25モノアルキルエーテル、ビニルアセテート、ビニルピロリドン及びメチルビニルエーテルからなる群から選択されたモノマーに由来する中性単位Nを含む、
ランダムコポリマーである、請求項2に記載のポリマー。
【請求項5】
m‘が1又は2である、請求項3に記載のポリマー。
【請求項6】
次式
−[C]z−[N]x
〔ここで、
− C単位は、次式で示される化学構造を有するモノマー化合物に由来するポリカチオン単位であり、
【化2】

− N単位は、2−ヒドロキシエチルアクリレートに由来する中性単位であり、
− xは、1より大きい整数であり、そして
− zは、1より大きい整数である〕
を有する、請求項4に記載のポリマー。
【請求項7】
前記中性単位Nが、ビニルアセテート、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチル−ヘキシルアクリレート、2−エチル−ヘキシルメタクリレート、及び2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択されたモノマーに由来する、請求項4に記載のポリマー。
【請求項8】
さらにアニオン単位が、ホスフェート又はホスホネート基を含むアルファエチレン不飽和モノマー、アルファエチレン不飽和モノカルボン酸、アルファエチレン不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、アルファエチレン不飽和ジカルボン酸のモノアルキルアミド、スルホン酸基を含むアルファエチレン不飽和化合物、及びスルホン酸基を含むアルファエチレン不飽和化合物の塩及びそれらの混合物からなる群から選択されたモノマーに由来する、請求項4に記載のポリマー。
【請求項9】
さらにアニオン単位が、
− アクリル酸、メタクリル酸、
− ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩、
− ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸の塩、
− アルファ−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、アルファ−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の塩、
− 2−スルホエチルメタクリレート、2−スルホエチルメタクリレートの塩、
− アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の塩、
− スチレンスルホネート(SS)、
− α−エタクリル酸、β,β−ジメチルアクリル酸、メチレンマロン酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、エチリジン酢酸、プロピリジン酢酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、N−(メタクロイル)アラニン、N−(アクリロイル)ヒドロキシグリシン、スルホプロピルアクリレート、スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、ホスホエチルアクリレート、ホスホノエチルアクリレート、ホスホプロピルアクリレート、ホスホノプロピルアクリレート、ホスホエチルメタクリレート、ホスホノエチルメタクリレート、ホスホプロピルメタクリレート、ホスホノプロピルメタクリレート、並びにそれらのアルカリ金属及びアンモニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択されたモノマーに由来する、請求項4に記載のポリマー。

【公開番号】特開2011−6688(P2011−6688A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171747(P2010−171747)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【分割の表示】特願2004−509629(P2004−509629)の分割
【原出願日】平成15年6月3日(2003.6.3)
【出願人】(598109291)ローディア インコーポレイティド (41)
【Fターム(参考)】