整形外科および歯科用途での使用のための生分解性ポリマーネットワーク
【課題】様々な歯科および整形外科用途において有用な生分解性ポリマーネットワークを提供すること。
【解決手段】生分解性ポリマーネットワークの作成方法であって、以下を包含する、方法:a)無水物プレポリマーを提供する工程であって、ここで該無水物プレポリマーがi)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマー、およびii)架橋性基を含むカルボン酸分子、の混合無水物を含み、ここで、該架橋性基は、不飽和部分であり、そしてここで該プレポリマーは、直線状であって各末端に架橋性基を有する、工程;ならびにb)該無水物プレポリマーを架橋して、架橋した生分解性ポリマーネットワークを形成する工程。
【解決手段】生分解性ポリマーネットワークの作成方法であって、以下を包含する、方法:a)無水物プレポリマーを提供する工程であって、ここで該無水物プレポリマーがi)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマー、およびii)架橋性基を含むカルボン酸分子、の混合無水物を含み、ここで、該架橋性基は、不飽和部分であり、そしてここで該プレポリマーは、直線状であって各末端に架橋性基を有する、工程;ならびにb)該無水物プレポリマーを架橋して、架橋した生分解性ポリマーネットワークを形成する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、無水物モノマーまたはオリゴマーを架橋して、整形外科および歯科用途に使用するための生分解性の架橋したポリマーネットワークを形成する方法に関する。
【0002】
本発明は、部分的に、国立衛生研究所から、Kristi S.Ansethへの支給金およびNIH助成金No.AR41972号により後援された。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
様々な、異なる整形外科および歯科インプラントが開発されている。金属製整形外科デバイスが生産されている。しかし、これらのデバイスは、治癒の間、応力を遮蔽し、そして骨萎縮症を導き得る。非特許文献1。ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)は、現在の骨セメント系において広く使用されるポリマーである。材料は、インプラントする前に、重合しながら成型され、そのことは、限られた加工時間の「窓(window)」を可能にする。PMMAの物理的および機械的特性は、荷重負荷用途について適切であるが、この材料は非生分解性であって、治癒を妨害し得る。
【0004】
様々な異なる材料からの吸収可能な整形外科的なデバイスの製造は、例えば、以下に記載されている:ポリグリコリドから作成した縫合糸および外科用品(element)(特許文献1および特許文献2)、ポリラクチドから作成した縫合糸(特許文献3)、グリコリド/ラクチドコポリマーから作成した縫合糸(特許文献4)、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸からの縫合糸および骨接合デバイス(特許文献5)、ポリジオキサノンからの縫合糸および骨接合デバイス(特許文献6)、および、ポリエステルアミドからの外科デバイス(特許文献7)。これらのデバイスは、典型的には、ポリマーを溶融、成型または圧縮して所望の形状にして製造したねじ、円筒状釘、または相当する構造物により骨に固定されるプレートである。典型的には、加水分解されないサンプルの引っ張り強度は、40〜80MPaの間であり、これは、皮質骨の強度(約80〜200MPa)と比較して小さめである。さらに、これらの系の多くは、骨外科用途の多くにおいて使用するには、脆すぎるか、柔軟過ぎるかのいずれかである。従って、ポリマーの加工および物理機械的特性に関する困難性のために整形外科における、再吸収可能なポリマーの現存する用途は、限定されている。
【0005】
ポリ(L−乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびポリ(乳酸−グリコール酸)のような分解性ポリエステルが、食品医薬品局により、ヒト用途に認められており、そして多くの医学用途(例えば、縫合糸)に使用されている。しかし、これらのポリマーには、高度の荷重負荷骨用途における機能を回復するために必要な多くの特性がない。なぜなら、それらは、同種の大量分解(bulk degradation)を受けるが、これは材料の長期間の機械的特性に対して有害であり、そして分解の終了間近に酸生成物の多大な噴出を招くからである。対照的に、表面腐食性ポリマー(例えば、ポリ無水物)は、そのポリマーの分子量を保存することにより、その機械的一体性を維持し、そして緩やかなサイズの減少を示し、骨の成長を可能にする。しかし、現在の直線状ポリ無水物系は、機械的強度が限定されている。
【0006】
光重合可能な系が、歯学における使用のために開発されている。Ansethら、Adv. Polym. Sci、122:177(1995);Engelbrechtの米国特許第4,872,936号;および米国特許第5,367,002号。歯学において、メタクリレートベースの樹脂は、光硬化して、回復性の材料を生成する。しかし、これらの材料は、非分解性でありそして恒久的である。眼科(opthalmology)においては、合成的光重合可能系もまた使用されている(例えば、Grubbsらの米国特許第4,919,151号)。合成的光重合可能系が、白内障形成後の目の水晶体に代替するように開発されており、これは、アクリレート、メタクリレート、またはスチレンで末端キャップされたウレタン結合を有するポリエステルからなる。歯科用途においてのものと同様に、光重合したポリマーは恒久的かつ非分解性の系である。光重合可能な系はまた、接着防止に使用されている(Hill−Westら、Obstet. Gynecol.、83:59(1994))。接着防止において、分解性かつ光重合可能な親水性の乳酸およびアクリレート官能性末端化ポリ(エチレングリコール)オリゴマーが開発されている。これらの系は、分解性ではあるが、機械的強度が限られたヒドロゲルであり、比較的短い期間で分解してしまう。
【0007】
歯科および整形外科用途に使用し得る生分解性ポリマーが必要である。また、機械的強度を提供し、かつまたはインビボで生分解性であるポリマー性インプラントを形成する方法が必要である。さらに、特別な用途のために、インビボで重合し得、そして容易にインプラントおよび成形し得る生分解性ポリマーが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,297,033号明細書
【特許文献2】米国特許第3,739,773号明細書
【特許文献3】米国特許第2,703,316号明細書
【特許文献4】米国特許第3,839,297号明細書
【特許文献5】英国特許第1034123号明細書
【特許文献6】米国特許第4,052,988号明細書
【特許文献7】米国特許第4,343,931号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hanafusaら、Clin. Ortho. Rel. Res.、315:261(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、特にポリマーが分解しながら、最適な機械的特性を有する、整形外科用途の生分解性ポリマーを開発することである。室温において急速に重合して架橋可能であり、様々な異なる形状を有する重合した生分解性インプラントを形成するために使用され得るプレポリマーを開発することが、本発明のさらなる目的である。歯科および整形外科用途で使用するための、インビボで、ポリマーの組成および架橋の程度により決定され得る速度で生分解する生分解性ポリマーを提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
様々な歯科および整形外科用途において有用な生分解性ポリマーネットワークが提供される。生分解性ポリマーネットワークは、1つの実施態様において、架橋性基(例えば、不飽和部分)を含む無水物プレポリマーを重合することにより形成され得る。無水物プレポリマーは、例えば、フリーラジカル開始剤の存在下におけるプレポリマーへの光の照射による光重合反応により架橋され得る。適切な無水物プレポリマーは、ジカルボン酸と、架橋性基を含むカルボン酸分子との二無水物が挙げられる。例えば、二酸(例えば、セバシン酸もしくは1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサン)のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物が使用され得る。1つの実施態様において、無水物プレポリマーは、インビボで、整形外科インプラントが必要とされる部位に適用され得、次いで、例えば、紫外光の照射により架橋され得、生分解性インプラントを形成し得る。インプラントは、有利に、機械的なサポートを提供し、そしてまた緩やかな表面分解が可能であって骨の成長を可能にする。
【0012】
項目1.生分解性ポリマーネットワークの作成方法であって、以下を包含する、方法:
a)無水物プレポリマーを提供する工程であって、ここで該無水物プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマー、および
ii)架橋性基を含むカルボン酸分子、
の混合無水物を含み、
ここで、該架橋性基は、不飽和部分であり、そしてここで該プレポリマーは、直線状であって各末端に架橋性基を有する、工程;ならびに
b)該無水物プレポリマーを架橋して、架橋した生分解性ポリマーネットワークを形成する工程。
項目2.前記架橋性基が、アクリル、メタクリル、ビニルおよびスチリルからなる群から選択される不飽和部分を含む、項目1に記載の方法。
項目3.前記工程b)において、前記無水物プレポリマーが光重合により架橋される、項目2に記載の方法。
項目4.前記光重合が、開始剤の存在下における前記プレポリマーへの光の照射により開始される、項目3に記載の方法。
項目5.前記プレポリマーに紫外光が照射される、項目4に記載の方法。
項目6.前記開始剤が、α−ジケトン、第三級アミン、第三級ホスフィン、有機過酸化物、還元剤と組み合わせた過酸化物、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジル、ベンジルケタール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目4に記載の方法。
項目7.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸と、架橋性基を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目1に記載の方法。
項目8.前記架橋性基が、アクリル、メタクリル、ビニルおよびスチリルからなる群から選択される不飽和基を含む、項目7に記載の方法。
項目9.前記ジカルボン酸が、ジカルボン酸混合物を含む、項目7に記載の方法。
項目10.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目7に記載の方法。
項目11.生分解性インプラントをインビボで形成する方法であって、以下を包含する、方法:
a)インプラントが必要とされる哺乳類の体内の部位に、インビボで無水物プレポリマーを適用する工程であって、ここで、該無水物プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマー、および
ii)架橋性基を含むカルボン酸分子、
の混合無水物を含み、
ここで、該架橋性基は、不飽和部分であり、そしてここで該プレポリマーは、直線状であって各末端に架橋性基を有する、工程;ならびに
b)該無水物プレポリマーを架橋して、架橋した生分解性ポリマーネットワークを、インプラントの形態で、該部位に形成する工程。
項目12.前記架橋性基が、アクリル、メタクリル、ビニルおよびスチリルからなる群から選択される不飽和部分を含む、項目11に記載の方法。
項目13.前記工程b)において、前記無水物プレポリマーが光重合により架橋される、項目12に記載の方法。
項目14.前記光重合が、開始剤の存在下での前記プレポリマーへの光の照射により開始される、項目13に記載の方法。
項目15.前記開始剤が、前記工程a)において、前記プレポリマーと組み合わせて適用される、項目14に記載の方法。
項目16.前記開始剤が、α−ジケトン、第三級アミン、第三級ホスフィン、有機過酸化物、還元剤と組み合わせた過酸化物、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジル、ベンジルケタール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目15に記載の方法。
項目17.前記プレポリマーに紫外光が照射される、項目14に記載の方法。
項目18.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸と、架橋性基を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目11に記載の方法。
項目19.前記架橋性基が、アクリル、メタクリル、ビニルおよびスチリルからなる群から選択される不飽和基を含む、項目18に記載の方法。
項目20.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目11に記載の方法。
項目21.前記インプラントが、整形外科および歯科インプラントからなる群から選択される、項目11に記載の方法。
項目22.前記インプラントが、ロッド、ピン、スクリュー、およびプレートからなる群から選択される整形外科インプラントを含む、項目11に記載の方法。
項目23.生分解性インプラントを形成する方法であって、無水物プレポリマーを光重合してインプラントの形態の、架橋した生分解性ポリマーネットワークを形成する工程であって、該無水物プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマー、および
ii)架橋性基を含むカルボン酸分子、
の混合無水物を含み、
ここで、該架橋性基は、不飽和部分であり、そしてここで該プレポリマーは、直線状であって各末端に架橋性基を有する、工程を包含する、方法。
項目24.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸と、架橋性不飽和部分を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目23に記載の方法。
項目25.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目23に記載の方法。
項目26.生体適合性で、生分解性のポリマー性インプラントを形成するための組成物であって、無水物プレポリマーを、薬学的に受容可能なキャリアーと組み合わせて含み、ここで、該無水物プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマー、および
ii)架橋性基を含むカルボン酸分子、
の混合無水物を含み、
ここで、該架橋性基は、不飽和部分であり、そしてここで該プレポリマーは、直線状であって各末端に架橋性基を有する、組成物。
項目27.前記架橋性基が、アクリル、メタクリル、ビニルおよびスチリルからなる群から選択される不飽和部分を含む、項目26に記載の組成物。
項目28.前記組成物が、フリーラジカル開始剤およびイオン開始剤からなる群から選択される開始剤をさらに含む、項目27に記載の組成物。
項目29.前記開始剤が、α−ジケトン、第三級アミン、第三級ホスフィン、有機過酸化物、還元剤と組み合わせた過酸化物、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジル、ベンジルケタール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目28に記載の組成物。
項目30.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸モノマーまたはオリゴマーと不飽和部分を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目26に記載の組成物。
項目31.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目30に記載の組成物。
項目32.治療剤または診断剤をさらに含む、項目26に記載の組成物。
項目33.無水物プレポリマーを架橋することにより形成された、架橋した生分解性ポリマーネットワークを含み、ここで、該無水物プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマー、および
ii)架橋性基を含むカルボン酸分子、
の混合無水物を含み、
ここで、架橋性基は、不飽和部分であり、そしてここで該プレポリマーは、直線状であって各末端に架橋性基を有する、生分解性インプラント。
項目34.前記架橋性基が、アクリル、メタクリル、ビニルおよびスチリルからなる群から選択される不飽和部分を含む、項目33に記載の生分解性インプラント。
項目35.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸モノマーまたはオリゴマーと架橋性基を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目33に記載の生分解性インプラント。項目36.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目33に記載の生分解性インプラント。
項目37.前記ジカルボン酸が、セバシン酸、ドデカン二酸、フマル酸、ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、テレフタル酸、イソフタル酸、p−カルボキシフェノキシ酢酸、p−カルボキシフェノキシ吉草酸、p−カルボキシフェノキシオクタン酸、およびクエン酸からなる群から選択される、項目7に記載の方法。
項目38.生分解性ポリマーネットワークの作成方法であって、以下を包含する、方法:a)無水物プレポリマーを提供する工程であって、ここで該無水物プレポリマーが、架橋性基を含む、工程;および
b)該無水物プレポリマーを架橋して、架橋した生分解性ポリマーネットワークを形成する工程。
項目39.前記架橋性基が、不飽和部分を含む、項目38に記載の方法。
項目40.前記工程b)において、前記無水物プレポリマーが光重合により架橋される、項39に記載の方法。
項目41.前記光重合が、開始剤の存在下における前記プレポリマーへの光の照射により開始される、項目40に記載の方法。
項目42.前記プレポリマーに紫外光が照射される、項目41に記載の方法。
項目43.前記開始剤が、α−ジケトン、第三級アミン、第三級ホスフィン、有機過酸化物、還元剤と組み合わせた過酸化物、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジル、ベンジルケタール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目41に記載の方法。
項目44.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸と、架橋性基を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目38に記載の方法。
項目45.前記架橋性基が、不飽和基を含む、項目44に記載の方法。
項目46.前記ジカルボン酸が、ジカルボン酸混合物を含む、項目44に記載の方法。
項目47.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンから成る群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目44に記載の方法。
項目48.生分解性インプラントをインビボで形成する方法であって、以下を包含する、方法:
a)インプラントが必要とされる哺乳類の体内の部位に、インビボで無水物プレポリマーを適用する工程であって、ここで、該無水物プレポリマーが、架橋性基を含む、工程;
b)該無水物プレポリマーを架橋して、架橋した生分解性ポリマーネットワークを、インプラントの形態で、該部位に形成する工程。
項目49.前記架橋性基が、不飽和部分を含む、項目48に記載の方法。
項目50.前記工程b)において、前記無水物プレポリマーが光重合により架橋される、項目49に記載の方法。
項目51.前記光重合が、開始剤の存在下での前記プレポリマーへの光の照射により開始される、項目50に記載の方法。
項目52.前記開始剤が、前記工程a)において、前記プレポリマーと組み合わせて適用される、項目51に記載の方法。
項目53.前記開始剤が、α−ジケトン、第三級アミン、第三級ホスフィン、有機過酸化物、還元剤と組み合わせた過酸化物、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジル、ベンジルケタール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目52に記載の方法。
項目54.前記プレポリマーに紫外光が照射される、項目50に記載の方法。
項目55.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸と、架橋性基を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目48に記載の方法。
項目56.前記架橋性基が、不飽和基を含む、項目55に記載の方法。
項目57.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目47に記載の方法
項目58.前記インプラントが、整形外科および歯科インプラントからなる群から選択される、項目47に記載の方法。
項目59.前記インプラントが、ロッド、ピン、スクリュー、およびプレートからなる群から選択される整形外科インプラントを含む、項目47に記載の方法。
項目60.生分解性インプラントを形成する方法であって、架橋性基を含む無水物プレポリマーを光重合してインプラントの形態の、架橋した生分解性ポリマーネットワークを形成する工程を包含する、方法。
項目61.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸と、架橋性不飽和部分を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目60に記載の方法。
項目62.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目60に記載の方法。
項目63.生体適合性で、生分解性のポリマー性インプラントを形成するための組成物であって、無水物プレポリマーを、薬学的に受容可能なキャリアーと組み合わせて含み、ここで、該無水物プレポリマーが、架橋性基を含む、組成物。
項目64.前記架橋性基が、不飽和部分を含む、項目63に記載の組成物。
項目65.前記組成物が、フリーラジカル開始剤およびイオン開始剤からなる群から選択される開始剤をさらに含む、項目64に記載の組成物。
項目66.前記開始剤が、α−ジケトン、第三級アミン、第三級ホスフィン、有機過酸化物、還元剤と組み合わせた過酸化物、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジル、ベンジルケタール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目65に記載の組成物。
項目67.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸モノマーまたはオリゴマーと不飽和部分を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目63に記載の組成物。
項目68.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目67に記載の組成物。
項目69.治療剤または診断剤をさらに含む、項目63に記載の組成物。
項目70.無水物プレポリマーを架橋することにより形成された、架橋した生分解性ポリマーネットワークを含む、生分解性インプラントであって、ここで、該無水物プレポリマーが、架橋性基を含む、生分解性インプラント。
項目71.前記架橋性基が、不飽和部分を含む、項目70に記載の生分解性インプラント。
項目72.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸モノマーまたはオリゴマーと架橋性基を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目70に記載の生分解性インプラント。項目73.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目70に記載の生分解性インプラント。
【発明の効果】
【0013】
(発明の詳細な説明)
反応して高度に架橋した生分解性ポリ無水物ネットワークを形成し得る架橋可能な無水物モノマーまたはオリゴマーが提供され、これは様々な異なる生物医学用途において有用である。1つの実施態様において、無水物モノマーまたはオリゴマーは、照射誘導された重合(例えば、光重合)により架橋され得る。高度の架橋は、増強された機械的特性を有するポリマーを生成する。架橋されたポリマーは、インビボ下で表面制御分解が可能である。分解の速度は、ポリマーネットワーク組成およびポリマーネットワーク内の架橋密度の選択により制御され得る。1つの実施態様において、架橋したポリマーは、インビボで無水物モノマーまたはオリゴマーの光重合により形成され得、そして必要に応じて様々な異なる整形外科および歯科用途用に、設計され得そして成形され得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(架橋可能な無水物モノマーおよびオリゴマー)
生分解性架橋ポリマーネットワークは、官能性化された無水物モノマーまたはオリゴマーを架橋することにより形成される。有用な官能性化モノマーまたはオリゴマーとしては、二酸と、不飽和部分のような架橋性基を含むカルボン酸分子との混合無水物が挙げられる。例示的な無水物モノマーまたはオリゴマーとしては、二酸(例えばセバシン酸または1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサン(MCPH))、および不飽和部分を含むカルボン酸(例えば、メタクリル酸)の混合無水物が挙げられる。官能性化無水物モノマーおよびオリゴマーは、例えば、二酸を活性化形態の酸(例えば、その無水物)と反応させて混合無水物を形成することにより形成される。
【0015】
他のジカルボン酸、または多官能酸、あるいはそれらの混合物が使用され得る。例えば、ドデカン二酸、フマル酸、ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、テレフタル酸、イソフタル酸、p−カルボキシフェノキシ酢酸、p−カルボキシフェノキシ−吉草酸、p−カルボキシフェノキシ−オクタン酸、またはクエン酸である。これらは、架橋性基を含むカルボン酸との混合無水物を形成することにより、官能性化され得る。官能性化プレポリマー中の、架橋性基を含むカルボン酸分子は、例えば、不飽和部分を含むカルボン酸(例えば、メタクリル酸)、または例えば、アクリル基、メタクリル基、ビニル基および/またはスチリル基を含む他の官能性化カルボン酸であり得る。
【0016】
好ましくは、架橋性基は、光重合性基(例えば、アルケン)である。これらは、開始剤の存在下における光の照射によりフリーラジカル反応において重合し得る。架橋性基は、例えば、アクリレート、ジアクリレート、オリゴアクリレート、メタクリレート、ジメタクリレート、オリゴメタクリレート、または他の生物学的に受容可能な光重合性基が挙げられる。従って、官能性化無水物プレポリマーは、1つの実施態様において、直線状無水物の各末端に架橋性不飽和部分を有する直線状無水物の形態であり得る。
【0017】
架橋性基(例えば、不飽和部分)を含み、官能性化無水物モノマーおよびオリゴマーから構成されて得られるプレポリマーは、例えば、光重合反応中において架橋され得、高度に架橋した生分解性ポリマーネットワークを生成することができる。加水分解性無水物結合は、材料を生分解性にし、そして分解の速度は、ネットワークの組成および架橋密度の変化により容易に制御され得る。
【0018】
本明細書中で用いる用語「生分解性」は、材料が体内で、加水分解または代謝分解のようなプロセスで崩壊することにより分解する性能をいう。
【0019】
(官能性化モノマーの架橋)
混合無水物官能性化モノマーの合成、およびその後の架橋ポリマーネットワークを形成するためのモノマーの架橋の例をスキームIに示す。この実施態様において、セバシン酸(MSA)および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサン(MCPH))の官能性化モノマー(およびオリゴマー)は、合成され、そして重合された。最初に、ジカルボン酸モノマーが、加熱還流によりメタクリル酸無水物を有するその混合無水物に転化された。
【0020】
(スキームI)
【0021】
【化1】
官能性化モノマーまたはオリゴマーのプレポリマーは、減圧蒸留により、または塩化メチレン中への溶解およびジエチルエーテルからの沈殿により、単離されそして精製された。
【0022】
スキームIに示された例示的な実施態様において、光重合は、各モノマー中に溶解された0.1重量%の2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンおよび様々な強度(0.1mW/cm2〜1000mW/cm2)の紫外光により開始された。系中の高濃度の二重結合およびモノマーの多官能性的性質(モノマー1分子あたり2つの二重結合)は、高度に架橋したポリマー系の形成を、開始速度に依存して、数秒の時間内に、もたらす。
【0023】
フーリエ変換赤外分光計(FTIR)および示差走査光熱量計(DPC)が、これらの系における重合挙動、硬化時間、および最大二重結合転化を特徴づけるために使用され得る。整形外科用途のための系において、重合時間および最大転化の両方が、重要な因子であり、望ましい系においては、1分間未満でかつ100%に近いその官能基の転化で重合する。
【0024】
架橋した生分解性ポリマーの架橋密度および親水性は、二酸(例えば、MSAおよびMCPH)を様々な比率で共重合することにより変更され得る。例えば、MSAは、得られるネットワークの親水性を増大させるために使用され得、一方、MCPHは、疎水性を増大させるために使用され得る。ポリマー組成および架橋密度、重合時間、ならびに光強度を含む重合条件は、特定の用途に対して最適化され得る。特に、ポリマーの分解性能および材料強度を最適化するために、モノマーおよび試薬は選択され得る。
【0025】
高度に架橋した材料の機械的特性は、引っ張りモジュラスにおいて、現存する分解性材料と比較して顕著に改善される。架橋性系は、加工における多大な柔軟性だけでなく、得られるポリマーの増強された機械的特性もまた提供する。
【0026】
(架橋剤)
好ましい実施態様では、架橋基は、放射線重合(例えば、光を用いた照射により)により架橋される。1つの実施態様では、架橋基は、約250nm〜700nmの波長における紫外光または可視光を照射することにより架橋され得る。例えば、約365nmの波長における紫外光、または約642nmの波長における赤色可視光、または470nmと490nmとの間の波長における青色可視光が用いられ得る。470nmと490nmとの間の波長における青色光の使用は、歯科適用に有用である。さらに、電子線、X線、γ線、および放射の他の形態が、プレポリマーの重合を開始するのに用いられ得る。
【0027】
生体適合性光開始剤が、短い時間枠(多くて数分、最も好ましくは数秒)内でのプレポリマーのフリーラジカル重合を開始するのに用いられ得る。光開始剤の例には、Irgacure 651TM(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)、エオシン色素のような色素、および2,2−ジメチル−2−フェニルアセトフェノン、2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン、およびカンファーキノンのような開始剤が挙げられる。他のフリーラジカル開始剤には、例えば、α−ジケトン、第3級アミン、第3級ホスフィン、有機過酸化物、還元剤と組み合わせた過酸化物、脂肪族ケトンおよび芳香族ケトン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジル、およびベンジルケタール、またはそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、ベンゾフェノンまたはアセトフェノン(acetophone)が使用され得る。このような開始剤を用いて、プレポリマーは、インサイチュで、例えば長波長紫外光または集束レーザー光(focused laser light)により重合させられ得る。
【0028】
熱重合開始剤系もまた用いられ得る。これは、生理学的温度でフリーラジカル重合を開始し得、例えば、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、および過硫酸アンモニウムが挙げられる。さらに、イオン性開始剤(カチオン性開始剤が挙げられる)が使用され得る。
【0029】
プレポリマーは、インビボで付与され得、次いで、試薬(例えば、光硬化剤)または他の開始系(例えば、熱系および酸化還元系)が付与され得るか、あるいはプレポリマーはインビボでの付与の前に架橋剤または充填剤と合わせられ得る。
【0030】
(インビボでの付与)
生分解性架橋ポリマーは、種々の生医学的適用(筋骨格および歯科への適用が挙げられる)において用いられ得る。生分解性ポリマーは、生体適合性であり、強固であり、容易に成型(fashion)され、かつ分解性であり、そしてインビボで重合して設置および製造を容易にすることができる。このポリマーは、回収を必要とすることなく、ポリマーの組成および架橋に依存して、制御された速度で分解する。
【0031】
歯科矯正学的適用において、インサイチュ重合は、インプラントを刃物、バー(burr)を用いて形成する必要性、および器具を温める必要性をなくす。さらに、この方法は、複雑な形状を作製するためのより速くかつより良好な機構を提供し、そして、ポリマーインプラントの骨への接着性を改善する。光開始重合は、重合の空間的制御を可能にし、その結果、所望の形状を作るためのレーザーを用いて複雑な型が作製され得る。さらに、この材料は射出成型され得、そして熱硬化性材料として反応して、エクソビボにおいて型から所望の形状を生じる。この材料は、荷重性能および制御された分解を必要とする多くの適用において用いられ得る。好ましい実施態様では、ポリマーの圧縮率は、おおよそ約100MPa〜約20,000MPaである。
【0032】
この生分解性網目は、固定により骨折を処置することを可能にする。なぜなら、この架橋ポリマーは、固定し得るのに十分な強度、良好な組織/材料適合性を可能にし、かつ、容易な設置のための成型(潜在的に複雑な形状への成型)を容易にするからである。さらに、制御されたポリマーの分解は、治癒の際の最適な骨の性能を可能にする。この材料は、骨の機械的無傷性(mechanical integrity)を再確立し、続いて分解して、負荷および再形成(remodel)に耐えるための新しい骨形成を可能にする。これらの特性は、金属製歯科矯正学的デバイス(これは、治癒の間に応力を遮蔽し、そして骨萎縮をもたらし得る)に対する分解性ポリマー材料の主要な利点である。本明細書中で開示される生分解性ポリマーは、対照的に、表面浸食性ポリマーであり(疎水性および/または架橋密度により制御される)、これは、ポリマーの機械的無傷性を維持し、そして大きさの漸進的な損失(これは骨の内成長(ingrowth)を可能にする)を受ける。
【0033】
光重合性官能基化モノマー無水物またはオリゴマー無水物が用いられる場合の実施態様では、プレポリマーを架橋するための光重合の使用は、歯科矯正学的ポリマーインプラントの臨床的挿入により非常に単純化される。例えば、ピンへの適用において、粘稠な液体モノマーをピンホールに導入し、そして系をインサイチュで光重合させて、必要な寸法を有する硬化ポリマーを得ることができる。光重合性系は、多くの理由(室温における速い硬化速度、重合の空間的制御、およびインプランテーションの間の成型および可撓性が完全に容易であることが挙げられる)により有益である。光重合性歯科矯正学的インプラントの使用は、特定の外科手術的適用のために設計され得る、広範な系を提供する。分解可能なポリマーインプラントもまた、インプラントの回収の必要性をなくし、そして治療的薬物を送達するために同時に用いられ得る。
【0034】
無水物プレポリマーは、インプラントを必要とする動物の身体の部位に付与されて、次いで重合され得るか、あるいはインビボでの付与の前に重合されて、体内で、形成されたインプラント(これは、機械的機能として作用し、ロッド、ピン、スクリュー、およびプレートを包含するが、これらに限定されない)を提供し得る。プレポリマーおよび/または開始剤は、インプランテーションのための薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて提供され得る。
【0035】
プレポリマーは、充填剤、補強材料、放射線画像化材料、賦形剤、または特定のインプラントへの適用に必要とされる他の材料と組み合わせられ得る。充填剤の例には、カルシウム−ナトリウム−メタホスフェートが挙げられ、これは、米国特許第5,108,755号(この開示は、本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0036】
(薬物送達)
重合性官能基化無水モノマーおよび/またはオリゴマーは、必要に応じて、重合の前または重合後のいずれかに、他の分解性または非分解性のポリマー、充填剤、および/または薬剤と組み合わせて提供され得る。
【0037】
架橋された生分解性ポリマーは、インビボで治療用薬剤または診断用薬剤を送達するのに使用され得る。プレポリマーに、および得られた架橋ポリマー中に組み込まれ得る薬物の例には、タンパク質、炭化水素、核酸、ならびに無機および有機の生物学的に活性な分子が挙げられる。特定の例には、酵素、抗生物質、抗悪性腫瘍性剤、局所麻酔剤、ホルモン、抗血管形成剤、抗体、神経伝達物質、向精神剤、再生器官に作用する薬剤、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチドが挙げられる。歯科矯正学的適用において、骨再生分子(bone regenerating molecule)、播種細胞(seeding cells)、および/または組織が、重合の前または重合後のプレポリマーに組み込まれ得るか、あるいは、インプランテーションの部位においてインプラントを形成する前または形成した後に付与され得る。例えば、米国特許第5,011,691号(その開示は、本明細書中で参考として援用される)に記載されたような骨形態形成タンパク質が、これらの適用において用いられ得る。
【0038】
本発明は、以下の非制限的な実施例を参照することによりさらに理解される。この実施例において、以下の材料および方法が用いられた。
【0039】
(材料)
Aldrichから入手したセバシン酸(SA)および無水メタクリル酸(MA)を用いた。そして、1,6−ビス(カルボキシフェノキシ)ヘキサン(CPH)を、Conix,Macromol.Synth.,2:95(1966)に記載の通りに合成した。光重合は、0.1重量% Irgacure(登録商標)651(I651,Ciba Geigy)を用いて開始した。
【0040】
(方法)
赤外線分光光度計(Nicolet Magna 550 FTIR)、1H NMR(Nicolet 360 MHz)、およびゲル濾過クロマトグラフィー(Perkin−Elmer,アイソクラチックLCポンプ250、オーブン101、およびLC−30 RI検出器(254nm))を用いて、二酸モノマーの官能基化の間における反応生成物をキャラクタライズした。示差走査光熱量計(Perkin−Elmer DSC7)および赤外線分光光度計を用いて、官能基化したモノマーの硬化挙動をモニターした。サンプルを、種々の光強度において、紫外光−可視光硬化系(EFOS、Ultracure(1OOSS))を用いて重合した。得られたポリマーの機械的特性を、動態力学分析器(dynamic mechanical analyzer)(Perkin−Elmer,DMA7)を用いて測定し、そして、分解速度は、損失質量により特徴付けられた。
【実施例】
【0041】
(実施例1:モノマーの調製および光重合)
セバシン酸の官能基化モノマー(およびオリゴマー)(MSA)および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサン(MCPH)を合成し、そして続いてスキームIに例示するように重合させた。まず、ジカルボン酸モノマーを還流下で加熱することにより、その無水メタクリル酸との混合無水物に転化させた。官能基化したモノマーを単離し、そして真空蒸留により精製するか、あるいは塩化メチレンに溶解させてジエチルエーテルから沈澱させることにより精製した。光重合を、それぞれのモノマーに溶解させた0.1%のI651および種々の強度の紫外光(0.1mW/cm2〜1000mW/cm2)を用いて開始した。この系中の二重結合の濃度が高いことおよびモノマーの多官能性(1個のモノマー分子あたり2個の二重結合を有する)により、開始速度に依存して、2〜3秒の期間中に、高度に架橋したポリマー系の形成がもたらされた。
【0042】
フーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)および示差走査光熱量計(DPC)の両方を用いて、重合挙動、硬化時間、およびこれらの系における最大二重結合転化率が特徴付けられた。0.1重量%のI651を有するMSAの重合(約50mW/cm2のUV光)についてのFTIRスペクトルにおいて、メタクリル酸の二重結合は、1640cm−1近傍で鋭くかつ明確な吸収を示した(これらから、総二重結合転化率を計算することができた)。曝露の10秒後、この系では、官能基の転化率が45%近くまで達した。連続的な照射を用いて、最大二重結合転化率が94%に達するまで、二重結合の吸収をさらに低減させた。高度に架橋したポリマーにおける最大二重結合転化率への到達は、以前に報告されており(RuyterおよびOysaed、CRC Crit. Rev. Biocomp,4:247(1988))、これらは反応性種の可動性の厳重な制限からもたらされるものである。従って、これらの系は、重合時間および最大転化率の両方が重要な因子である歯科矯正学的適用において有用であり、ここで、所望の系が1分未満で重合し、そしてそれらの官能基の転化率は100%に近づいている。
【0043】
さらに、架橋密度およびポリマーの親水性は、MSAとMCPHとを種々の割合で共重合させることにより改変された。MSAを用いて得られる網目の親水性を増加させたのに対し、MCPHは疎水性を増加させた。重合方法(コポリマーの組成および架橋密度、重合時間、および光強度が挙げられる)は、特定の適用のために容易に最適化されて、ポリマーの分解特性および材料の強度を最適化し得る。
【0044】
(実施例2:架橋した生分解性ポリマーの機械的特性の評価)
実施例1に記載の通りに作製した、高度に架橋した材料は、現存する分解性材料と比較して、引張強度が顕著に改善された。表1は、骨の機械的特性(Yaszemski, 博士論文, Massachusetts Institute of Technology, 1995)と、架橋ポリ無水物の機械的特性との比較を提供する。
【0045】
表1:機械的特性の比較
【0046】
【表1】
*0.1〜1.0g/cm3で変動する密度に大きく依存する。
【0047】
線状CPH(1.3MPa)と比較すると、官能基化および架橋したポリ(MCPH)では、弾性率が顕著に増加した(500MPa)。Leongら、J. Biomed.Mater.Res.,19:941(1985)。線状ポリ無水物の機械的強度を増加させるための別のアプローチとしては、イミド基をポリマー骨格に組み込むことに焦点が当てられてきた。このクラスの最も見込みのある材料は、36〜56MPa(Uhrichら、Macromolecules 28:2184(1995))の圧縮弾性率を示しているが、架橋材料で観察される強度には近づかない。最後に、ポリ(乳酸)の再吸収性縫合糸は、50〜60MPaの初期圧縮降伏応力を有するが、多くの歯科矯正学的適用における効能は、ポリ無水物と比較して比較的短時間の間隔で起こるバルク分解(bulk degradation)により、さらに制限される。PulapuraおよびKohn、J.Biomater.Appl.,6:216(1992)。従って、光重合性および架橋性の系は、プロセス中における大きな可撓性を提供するだけでなく、得られるポリマーの機械的特性の増強もまた提供する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、無水物モノマーまたはオリゴマーを架橋して、整形外科および歯科用途に使用するための生分解性の架橋したポリマーネットワークを形成する方法に関する。
【0002】
本発明は、部分的に、国立衛生研究所から、Kristi S.Ansethへの支給金およびNIH助成金No.AR41972号により後援された。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
様々な、異なる整形外科および歯科インプラントが開発されている。金属製整形外科デバイスが生産されている。しかし、これらのデバイスは、治癒の間、応力を遮蔽し、そして骨萎縮症を導き得る。非特許文献1。ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)は、現在の骨セメント系において広く使用されるポリマーである。材料は、インプラントする前に、重合しながら成型され、そのことは、限られた加工時間の「窓(window)」を可能にする。PMMAの物理的および機械的特性は、荷重負荷用途について適切であるが、この材料は非生分解性であって、治癒を妨害し得る。
【0004】
様々な異なる材料からの吸収可能な整形外科的なデバイスの製造は、例えば、以下に記載されている:ポリグリコリドから作成した縫合糸および外科用品(element)(特許文献1および特許文献2)、ポリラクチドから作成した縫合糸(特許文献3)、グリコリド/ラクチドコポリマーから作成した縫合糸(特許文献4)、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸からの縫合糸および骨接合デバイス(特許文献5)、ポリジオキサノンからの縫合糸および骨接合デバイス(特許文献6)、および、ポリエステルアミドからの外科デバイス(特許文献7)。これらのデバイスは、典型的には、ポリマーを溶融、成型または圧縮して所望の形状にして製造したねじ、円筒状釘、または相当する構造物により骨に固定されるプレートである。典型的には、加水分解されないサンプルの引っ張り強度は、40〜80MPaの間であり、これは、皮質骨の強度(約80〜200MPa)と比較して小さめである。さらに、これらの系の多くは、骨外科用途の多くにおいて使用するには、脆すぎるか、柔軟過ぎるかのいずれかである。従って、ポリマーの加工および物理機械的特性に関する困難性のために整形外科における、再吸収可能なポリマーの現存する用途は、限定されている。
【0005】
ポリ(L−乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびポリ(乳酸−グリコール酸)のような分解性ポリエステルが、食品医薬品局により、ヒト用途に認められており、そして多くの医学用途(例えば、縫合糸)に使用されている。しかし、これらのポリマーには、高度の荷重負荷骨用途における機能を回復するために必要な多くの特性がない。なぜなら、それらは、同種の大量分解(bulk degradation)を受けるが、これは材料の長期間の機械的特性に対して有害であり、そして分解の終了間近に酸生成物の多大な噴出を招くからである。対照的に、表面腐食性ポリマー(例えば、ポリ無水物)は、そのポリマーの分子量を保存することにより、その機械的一体性を維持し、そして緩やかなサイズの減少を示し、骨の成長を可能にする。しかし、現在の直線状ポリ無水物系は、機械的強度が限定されている。
【0006】
光重合可能な系が、歯学における使用のために開発されている。Ansethら、Adv. Polym. Sci、122:177(1995);Engelbrechtの米国特許第4,872,936号;および米国特許第5,367,002号。歯学において、メタクリレートベースの樹脂は、光硬化して、回復性の材料を生成する。しかし、これらの材料は、非分解性でありそして恒久的である。眼科(opthalmology)においては、合成的光重合可能系もまた使用されている(例えば、Grubbsらの米国特許第4,919,151号)。合成的光重合可能系が、白内障形成後の目の水晶体に代替するように開発されており、これは、アクリレート、メタクリレート、またはスチレンで末端キャップされたウレタン結合を有するポリエステルからなる。歯科用途においてのものと同様に、光重合したポリマーは恒久的かつ非分解性の系である。光重合可能な系はまた、接着防止に使用されている(Hill−Westら、Obstet. Gynecol.、83:59(1994))。接着防止において、分解性かつ光重合可能な親水性の乳酸およびアクリレート官能性末端化ポリ(エチレングリコール)オリゴマーが開発されている。これらの系は、分解性ではあるが、機械的強度が限られたヒドロゲルであり、比較的短い期間で分解してしまう。
【0007】
歯科および整形外科用途に使用し得る生分解性ポリマーが必要である。また、機械的強度を提供し、かつまたはインビボで生分解性であるポリマー性インプラントを形成する方法が必要である。さらに、特別な用途のために、インビボで重合し得、そして容易にインプラントおよび成形し得る生分解性ポリマーが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,297,033号明細書
【特許文献2】米国特許第3,739,773号明細書
【特許文献3】米国特許第2,703,316号明細書
【特許文献4】米国特許第3,839,297号明細書
【特許文献5】英国特許第1034123号明細書
【特許文献6】米国特許第4,052,988号明細書
【特許文献7】米国特許第4,343,931号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hanafusaら、Clin. Ortho. Rel. Res.、315:261(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、特にポリマーが分解しながら、最適な機械的特性を有する、整形外科用途の生分解性ポリマーを開発することである。室温において急速に重合して架橋可能であり、様々な異なる形状を有する重合した生分解性インプラントを形成するために使用され得るプレポリマーを開発することが、本発明のさらなる目的である。歯科および整形外科用途で使用するための、インビボで、ポリマーの組成および架橋の程度により決定され得る速度で生分解する生分解性ポリマーを提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
様々な歯科および整形外科用途において有用な生分解性ポリマーネットワークが提供される。生分解性ポリマーネットワークは、1つの実施態様において、架橋性基(例えば、不飽和部分)を含む無水物プレポリマーを重合することにより形成され得る。無水物プレポリマーは、例えば、フリーラジカル開始剤の存在下におけるプレポリマーへの光の照射による光重合反応により架橋され得る。適切な無水物プレポリマーは、ジカルボン酸と、架橋性基を含むカルボン酸分子との二無水物が挙げられる。例えば、二酸(例えば、セバシン酸もしくは1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサン)のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物が使用され得る。1つの実施態様において、無水物プレポリマーは、インビボで、整形外科インプラントが必要とされる部位に適用され得、次いで、例えば、紫外光の照射により架橋され得、生分解性インプラントを形成し得る。インプラントは、有利に、機械的なサポートを提供し、そしてまた緩やかな表面分解が可能であって骨の成長を可能にする。
【0012】
項目1.生分解性ポリマーネットワークの作成方法であって、以下を包含する、方法:
a)無水物プレポリマーを提供する工程であって、ここで該無水物プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマー、および
ii)架橋性基を含むカルボン酸分子、
の混合無水物を含み、
ここで、該架橋性基は、不飽和部分であり、そしてここで該プレポリマーは、直線状であって各末端に架橋性基を有する、工程;ならびに
b)該無水物プレポリマーを架橋して、架橋した生分解性ポリマーネットワークを形成する工程。
項目2.前記架橋性基が、アクリル、メタクリル、ビニルおよびスチリルからなる群から選択される不飽和部分を含む、項目1に記載の方法。
項目3.前記工程b)において、前記無水物プレポリマーが光重合により架橋される、項目2に記載の方法。
項目4.前記光重合が、開始剤の存在下における前記プレポリマーへの光の照射により開始される、項目3に記載の方法。
項目5.前記プレポリマーに紫外光が照射される、項目4に記載の方法。
項目6.前記開始剤が、α−ジケトン、第三級アミン、第三級ホスフィン、有機過酸化物、還元剤と組み合わせた過酸化物、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジル、ベンジルケタール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目4に記載の方法。
項目7.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸と、架橋性基を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目1に記載の方法。
項目8.前記架橋性基が、アクリル、メタクリル、ビニルおよびスチリルからなる群から選択される不飽和基を含む、項目7に記載の方法。
項目9.前記ジカルボン酸が、ジカルボン酸混合物を含む、項目7に記載の方法。
項目10.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目7に記載の方法。
項目11.生分解性インプラントをインビボで形成する方法であって、以下を包含する、方法:
a)インプラントが必要とされる哺乳類の体内の部位に、インビボで無水物プレポリマーを適用する工程であって、ここで、該無水物プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマー、および
ii)架橋性基を含むカルボン酸分子、
の混合無水物を含み、
ここで、該架橋性基は、不飽和部分であり、そしてここで該プレポリマーは、直線状であって各末端に架橋性基を有する、工程;ならびに
b)該無水物プレポリマーを架橋して、架橋した生分解性ポリマーネットワークを、インプラントの形態で、該部位に形成する工程。
項目12.前記架橋性基が、アクリル、メタクリル、ビニルおよびスチリルからなる群から選択される不飽和部分を含む、項目11に記載の方法。
項目13.前記工程b)において、前記無水物プレポリマーが光重合により架橋される、項目12に記載の方法。
項目14.前記光重合が、開始剤の存在下での前記プレポリマーへの光の照射により開始される、項目13に記載の方法。
項目15.前記開始剤が、前記工程a)において、前記プレポリマーと組み合わせて適用される、項目14に記載の方法。
項目16.前記開始剤が、α−ジケトン、第三級アミン、第三級ホスフィン、有機過酸化物、還元剤と組み合わせた過酸化物、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジル、ベンジルケタール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目15に記載の方法。
項目17.前記プレポリマーに紫外光が照射される、項目14に記載の方法。
項目18.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸と、架橋性基を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目11に記載の方法。
項目19.前記架橋性基が、アクリル、メタクリル、ビニルおよびスチリルからなる群から選択される不飽和基を含む、項目18に記載の方法。
項目20.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目11に記載の方法。
項目21.前記インプラントが、整形外科および歯科インプラントからなる群から選択される、項目11に記載の方法。
項目22.前記インプラントが、ロッド、ピン、スクリュー、およびプレートからなる群から選択される整形外科インプラントを含む、項目11に記載の方法。
項目23.生分解性インプラントを形成する方法であって、無水物プレポリマーを光重合してインプラントの形態の、架橋した生分解性ポリマーネットワークを形成する工程であって、該無水物プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマー、および
ii)架橋性基を含むカルボン酸分子、
の混合無水物を含み、
ここで、該架橋性基は、不飽和部分であり、そしてここで該プレポリマーは、直線状であって各末端に架橋性基を有する、工程を包含する、方法。
項目24.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸と、架橋性不飽和部分を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目23に記載の方法。
項目25.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目23に記載の方法。
項目26.生体適合性で、生分解性のポリマー性インプラントを形成するための組成物であって、無水物プレポリマーを、薬学的に受容可能なキャリアーと組み合わせて含み、ここで、該無水物プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマー、および
ii)架橋性基を含むカルボン酸分子、
の混合無水物を含み、
ここで、該架橋性基は、不飽和部分であり、そしてここで該プレポリマーは、直線状であって各末端に架橋性基を有する、組成物。
項目27.前記架橋性基が、アクリル、メタクリル、ビニルおよびスチリルからなる群から選択される不飽和部分を含む、項目26に記載の組成物。
項目28.前記組成物が、フリーラジカル開始剤およびイオン開始剤からなる群から選択される開始剤をさらに含む、項目27に記載の組成物。
項目29.前記開始剤が、α−ジケトン、第三級アミン、第三級ホスフィン、有機過酸化物、還元剤と組み合わせた過酸化物、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジル、ベンジルケタール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目28に記載の組成物。
項目30.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸モノマーまたはオリゴマーと不飽和部分を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目26に記載の組成物。
項目31.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目30に記載の組成物。
項目32.治療剤または診断剤をさらに含む、項目26に記載の組成物。
項目33.無水物プレポリマーを架橋することにより形成された、架橋した生分解性ポリマーネットワークを含み、ここで、該無水物プレポリマーが、
i)二酸または多官能性酸のモノマーまたはオリゴマー、および
ii)架橋性基を含むカルボン酸分子、
の混合無水物を含み、
ここで、架橋性基は、不飽和部分であり、そしてここで該プレポリマーは、直線状であって各末端に架橋性基を有する、生分解性インプラント。
項目34.前記架橋性基が、アクリル、メタクリル、ビニルおよびスチリルからなる群から選択される不飽和部分を含む、項目33に記載の生分解性インプラント。
項目35.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸モノマーまたはオリゴマーと架橋性基を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目33に記載の生分解性インプラント。項目36.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目33に記載の生分解性インプラント。
項目37.前記ジカルボン酸が、セバシン酸、ドデカン二酸、フマル酸、ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、テレフタル酸、イソフタル酸、p−カルボキシフェノキシ酢酸、p−カルボキシフェノキシ吉草酸、p−カルボキシフェノキシオクタン酸、およびクエン酸からなる群から選択される、項目7に記載の方法。
項目38.生分解性ポリマーネットワークの作成方法であって、以下を包含する、方法:a)無水物プレポリマーを提供する工程であって、ここで該無水物プレポリマーが、架橋性基を含む、工程;および
b)該無水物プレポリマーを架橋して、架橋した生分解性ポリマーネットワークを形成する工程。
項目39.前記架橋性基が、不飽和部分を含む、項目38に記載の方法。
項目40.前記工程b)において、前記無水物プレポリマーが光重合により架橋される、項39に記載の方法。
項目41.前記光重合が、開始剤の存在下における前記プレポリマーへの光の照射により開始される、項目40に記載の方法。
項目42.前記プレポリマーに紫外光が照射される、項目41に記載の方法。
項目43.前記開始剤が、α−ジケトン、第三級アミン、第三級ホスフィン、有機過酸化物、還元剤と組み合わせた過酸化物、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジル、ベンジルケタール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目41に記載の方法。
項目44.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸と、架橋性基を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目38に記載の方法。
項目45.前記架橋性基が、不飽和基を含む、項目44に記載の方法。
項目46.前記ジカルボン酸が、ジカルボン酸混合物を含む、項目44に記載の方法。
項目47.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンから成る群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目44に記載の方法。
項目48.生分解性インプラントをインビボで形成する方法であって、以下を包含する、方法:
a)インプラントが必要とされる哺乳類の体内の部位に、インビボで無水物プレポリマーを適用する工程であって、ここで、該無水物プレポリマーが、架橋性基を含む、工程;
b)該無水物プレポリマーを架橋して、架橋した生分解性ポリマーネットワークを、インプラントの形態で、該部位に形成する工程。
項目49.前記架橋性基が、不飽和部分を含む、項目48に記載の方法。
項目50.前記工程b)において、前記無水物プレポリマーが光重合により架橋される、項目49に記載の方法。
項目51.前記光重合が、開始剤の存在下での前記プレポリマーへの光の照射により開始される、項目50に記載の方法。
項目52.前記開始剤が、前記工程a)において、前記プレポリマーと組み合わせて適用される、項目51に記載の方法。
項目53.前記開始剤が、α−ジケトン、第三級アミン、第三級ホスフィン、有機過酸化物、還元剤と組み合わせた過酸化物、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジル、ベンジルケタール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目52に記載の方法。
項目54.前記プレポリマーに紫外光が照射される、項目50に記載の方法。
項目55.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸と、架橋性基を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目48に記載の方法。
項目56.前記架橋性基が、不飽和基を含む、項目55に記載の方法。
項目57.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目47に記載の方法
項目58.前記インプラントが、整形外科および歯科インプラントからなる群から選択される、項目47に記載の方法。
項目59.前記インプラントが、ロッド、ピン、スクリュー、およびプレートからなる群から選択される整形外科インプラントを含む、項目47に記載の方法。
項目60.生分解性インプラントを形成する方法であって、架橋性基を含む無水物プレポリマーを光重合してインプラントの形態の、架橋した生分解性ポリマーネットワークを形成する工程を包含する、方法。
項目61.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸と、架橋性不飽和部分を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目60に記載の方法。
項目62.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目60に記載の方法。
項目63.生体適合性で、生分解性のポリマー性インプラントを形成するための組成物であって、無水物プレポリマーを、薬学的に受容可能なキャリアーと組み合わせて含み、ここで、該無水物プレポリマーが、架橋性基を含む、組成物。
項目64.前記架橋性基が、不飽和部分を含む、項目63に記載の組成物。
項目65.前記組成物が、フリーラジカル開始剤およびイオン開始剤からなる群から選択される開始剤をさらに含む、項目64に記載の組成物。
項目66.前記開始剤が、α−ジケトン、第三級アミン、第三級ホスフィン、有機過酸化物、還元剤と組み合わせた過酸化物、脂肪族ケトン、芳香族ケトン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジル、ベンジルケタール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目65に記載の組成物。
項目67.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸モノマーまたはオリゴマーと不飽和部分を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目63に記載の組成物。
項目68.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目67に記載の組成物。
項目69.治療剤または診断剤をさらに含む、項目63に記載の組成物。
項目70.無水物プレポリマーを架橋することにより形成された、架橋した生分解性ポリマーネットワークを含む、生分解性インプラントであって、ここで、該無水物プレポリマーが、架橋性基を含む、生分解性インプラント。
項目71.前記架橋性基が、不飽和部分を含む、項目70に記載の生分解性インプラント。
項目72.前記無水物プレポリマーが、ジカルボン酸モノマーまたはオリゴマーと架橋性基を含むカルボン酸分子との二無水物を含む、項目70に記載の生分解性インプラント。項目73.前記無水物プレポリマーが、セバシン酸および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサンからなる群から選択される二酸のモノマーまたはオリゴマーのメタクリル酸二無水物を含む、項目70に記載の生分解性インプラント。
【発明の効果】
【0013】
(発明の詳細な説明)
反応して高度に架橋した生分解性ポリ無水物ネットワークを形成し得る架橋可能な無水物モノマーまたはオリゴマーが提供され、これは様々な異なる生物医学用途において有用である。1つの実施態様において、無水物モノマーまたはオリゴマーは、照射誘導された重合(例えば、光重合)により架橋され得る。高度の架橋は、増強された機械的特性を有するポリマーを生成する。架橋されたポリマーは、インビボ下で表面制御分解が可能である。分解の速度は、ポリマーネットワーク組成およびポリマーネットワーク内の架橋密度の選択により制御され得る。1つの実施態様において、架橋したポリマーは、インビボで無水物モノマーまたはオリゴマーの光重合により形成され得、そして必要に応じて様々な異なる整形外科および歯科用途用に、設計され得そして成形され得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(架橋可能な無水物モノマーおよびオリゴマー)
生分解性架橋ポリマーネットワークは、官能性化された無水物モノマーまたはオリゴマーを架橋することにより形成される。有用な官能性化モノマーまたはオリゴマーとしては、二酸と、不飽和部分のような架橋性基を含むカルボン酸分子との混合無水物が挙げられる。例示的な無水物モノマーまたはオリゴマーとしては、二酸(例えばセバシン酸または1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサン(MCPH))、および不飽和部分を含むカルボン酸(例えば、メタクリル酸)の混合無水物が挙げられる。官能性化無水物モノマーおよびオリゴマーは、例えば、二酸を活性化形態の酸(例えば、その無水物)と反応させて混合無水物を形成することにより形成される。
【0015】
他のジカルボン酸、または多官能酸、あるいはそれらの混合物が使用され得る。例えば、ドデカン二酸、フマル酸、ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン、1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、テレフタル酸、イソフタル酸、p−カルボキシフェノキシ酢酸、p−カルボキシフェノキシ−吉草酸、p−カルボキシフェノキシ−オクタン酸、またはクエン酸である。これらは、架橋性基を含むカルボン酸との混合無水物を形成することにより、官能性化され得る。官能性化プレポリマー中の、架橋性基を含むカルボン酸分子は、例えば、不飽和部分を含むカルボン酸(例えば、メタクリル酸)、または例えば、アクリル基、メタクリル基、ビニル基および/またはスチリル基を含む他の官能性化カルボン酸であり得る。
【0016】
好ましくは、架橋性基は、光重合性基(例えば、アルケン)である。これらは、開始剤の存在下における光の照射によりフリーラジカル反応において重合し得る。架橋性基は、例えば、アクリレート、ジアクリレート、オリゴアクリレート、メタクリレート、ジメタクリレート、オリゴメタクリレート、または他の生物学的に受容可能な光重合性基が挙げられる。従って、官能性化無水物プレポリマーは、1つの実施態様において、直線状無水物の各末端に架橋性不飽和部分を有する直線状無水物の形態であり得る。
【0017】
架橋性基(例えば、不飽和部分)を含み、官能性化無水物モノマーおよびオリゴマーから構成されて得られるプレポリマーは、例えば、光重合反応中において架橋され得、高度に架橋した生分解性ポリマーネットワークを生成することができる。加水分解性無水物結合は、材料を生分解性にし、そして分解の速度は、ネットワークの組成および架橋密度の変化により容易に制御され得る。
【0018】
本明細書中で用いる用語「生分解性」は、材料が体内で、加水分解または代謝分解のようなプロセスで崩壊することにより分解する性能をいう。
【0019】
(官能性化モノマーの架橋)
混合無水物官能性化モノマーの合成、およびその後の架橋ポリマーネットワークを形成するためのモノマーの架橋の例をスキームIに示す。この実施態様において、セバシン酸(MSA)および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサン(MCPH))の官能性化モノマー(およびオリゴマー)は、合成され、そして重合された。最初に、ジカルボン酸モノマーが、加熱還流によりメタクリル酸無水物を有するその混合無水物に転化された。
【0020】
(スキームI)
【0021】
【化1】
官能性化モノマーまたはオリゴマーのプレポリマーは、減圧蒸留により、または塩化メチレン中への溶解およびジエチルエーテルからの沈殿により、単離されそして精製された。
【0022】
スキームIに示された例示的な実施態様において、光重合は、各モノマー中に溶解された0.1重量%の2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンおよび様々な強度(0.1mW/cm2〜1000mW/cm2)の紫外光により開始された。系中の高濃度の二重結合およびモノマーの多官能性的性質(モノマー1分子あたり2つの二重結合)は、高度に架橋したポリマー系の形成を、開始速度に依存して、数秒の時間内に、もたらす。
【0023】
フーリエ変換赤外分光計(FTIR)および示差走査光熱量計(DPC)が、これらの系における重合挙動、硬化時間、および最大二重結合転化を特徴づけるために使用され得る。整形外科用途のための系において、重合時間および最大転化の両方が、重要な因子であり、望ましい系においては、1分間未満でかつ100%に近いその官能基の転化で重合する。
【0024】
架橋した生分解性ポリマーの架橋密度および親水性は、二酸(例えば、MSAおよびMCPH)を様々な比率で共重合することにより変更され得る。例えば、MSAは、得られるネットワークの親水性を増大させるために使用され得、一方、MCPHは、疎水性を増大させるために使用され得る。ポリマー組成および架橋密度、重合時間、ならびに光強度を含む重合条件は、特定の用途に対して最適化され得る。特に、ポリマーの分解性能および材料強度を最適化するために、モノマーおよび試薬は選択され得る。
【0025】
高度に架橋した材料の機械的特性は、引っ張りモジュラスにおいて、現存する分解性材料と比較して顕著に改善される。架橋性系は、加工における多大な柔軟性だけでなく、得られるポリマーの増強された機械的特性もまた提供する。
【0026】
(架橋剤)
好ましい実施態様では、架橋基は、放射線重合(例えば、光を用いた照射により)により架橋される。1つの実施態様では、架橋基は、約250nm〜700nmの波長における紫外光または可視光を照射することにより架橋され得る。例えば、約365nmの波長における紫外光、または約642nmの波長における赤色可視光、または470nmと490nmとの間の波長における青色可視光が用いられ得る。470nmと490nmとの間の波長における青色光の使用は、歯科適用に有用である。さらに、電子線、X線、γ線、および放射の他の形態が、プレポリマーの重合を開始するのに用いられ得る。
【0027】
生体適合性光開始剤が、短い時間枠(多くて数分、最も好ましくは数秒)内でのプレポリマーのフリーラジカル重合を開始するのに用いられ得る。光開始剤の例には、Irgacure 651TM(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)、エオシン色素のような色素、および2,2−ジメチル−2−フェニルアセトフェノン、2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン、およびカンファーキノンのような開始剤が挙げられる。他のフリーラジカル開始剤には、例えば、α−ジケトン、第3級アミン、第3級ホスフィン、有機過酸化物、還元剤と組み合わせた過酸化物、脂肪族ケトンおよび芳香族ケトン、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンジル、およびベンジルケタール、またはそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、ベンゾフェノンまたはアセトフェノン(acetophone)が使用され得る。このような開始剤を用いて、プレポリマーは、インサイチュで、例えば長波長紫外光または集束レーザー光(focused laser light)により重合させられ得る。
【0028】
熱重合開始剤系もまた用いられ得る。これは、生理学的温度でフリーラジカル重合を開始し得、例えば、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、および過硫酸アンモニウムが挙げられる。さらに、イオン性開始剤(カチオン性開始剤が挙げられる)が使用され得る。
【0029】
プレポリマーは、インビボで付与され得、次いで、試薬(例えば、光硬化剤)または他の開始系(例えば、熱系および酸化還元系)が付与され得るか、あるいはプレポリマーはインビボでの付与の前に架橋剤または充填剤と合わせられ得る。
【0030】
(インビボでの付与)
生分解性架橋ポリマーは、種々の生医学的適用(筋骨格および歯科への適用が挙げられる)において用いられ得る。生分解性ポリマーは、生体適合性であり、強固であり、容易に成型(fashion)され、かつ分解性であり、そしてインビボで重合して設置および製造を容易にすることができる。このポリマーは、回収を必要とすることなく、ポリマーの組成および架橋に依存して、制御された速度で分解する。
【0031】
歯科矯正学的適用において、インサイチュ重合は、インプラントを刃物、バー(burr)を用いて形成する必要性、および器具を温める必要性をなくす。さらに、この方法は、複雑な形状を作製するためのより速くかつより良好な機構を提供し、そして、ポリマーインプラントの骨への接着性を改善する。光開始重合は、重合の空間的制御を可能にし、その結果、所望の形状を作るためのレーザーを用いて複雑な型が作製され得る。さらに、この材料は射出成型され得、そして熱硬化性材料として反応して、エクソビボにおいて型から所望の形状を生じる。この材料は、荷重性能および制御された分解を必要とする多くの適用において用いられ得る。好ましい実施態様では、ポリマーの圧縮率は、おおよそ約100MPa〜約20,000MPaである。
【0032】
この生分解性網目は、固定により骨折を処置することを可能にする。なぜなら、この架橋ポリマーは、固定し得るのに十分な強度、良好な組織/材料適合性を可能にし、かつ、容易な設置のための成型(潜在的に複雑な形状への成型)を容易にするからである。さらに、制御されたポリマーの分解は、治癒の際の最適な骨の性能を可能にする。この材料は、骨の機械的無傷性(mechanical integrity)を再確立し、続いて分解して、負荷および再形成(remodel)に耐えるための新しい骨形成を可能にする。これらの特性は、金属製歯科矯正学的デバイス(これは、治癒の間に応力を遮蔽し、そして骨萎縮をもたらし得る)に対する分解性ポリマー材料の主要な利点である。本明細書中で開示される生分解性ポリマーは、対照的に、表面浸食性ポリマーであり(疎水性および/または架橋密度により制御される)、これは、ポリマーの機械的無傷性を維持し、そして大きさの漸進的な損失(これは骨の内成長(ingrowth)を可能にする)を受ける。
【0033】
光重合性官能基化モノマー無水物またはオリゴマー無水物が用いられる場合の実施態様では、プレポリマーを架橋するための光重合の使用は、歯科矯正学的ポリマーインプラントの臨床的挿入により非常に単純化される。例えば、ピンへの適用において、粘稠な液体モノマーをピンホールに導入し、そして系をインサイチュで光重合させて、必要な寸法を有する硬化ポリマーを得ることができる。光重合性系は、多くの理由(室温における速い硬化速度、重合の空間的制御、およびインプランテーションの間の成型および可撓性が完全に容易であることが挙げられる)により有益である。光重合性歯科矯正学的インプラントの使用は、特定の外科手術的適用のために設計され得る、広範な系を提供する。分解可能なポリマーインプラントもまた、インプラントの回収の必要性をなくし、そして治療的薬物を送達するために同時に用いられ得る。
【0034】
無水物プレポリマーは、インプラントを必要とする動物の身体の部位に付与されて、次いで重合され得るか、あるいはインビボでの付与の前に重合されて、体内で、形成されたインプラント(これは、機械的機能として作用し、ロッド、ピン、スクリュー、およびプレートを包含するが、これらに限定されない)を提供し得る。プレポリマーおよび/または開始剤は、インプランテーションのための薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて提供され得る。
【0035】
プレポリマーは、充填剤、補強材料、放射線画像化材料、賦形剤、または特定のインプラントへの適用に必要とされる他の材料と組み合わせられ得る。充填剤の例には、カルシウム−ナトリウム−メタホスフェートが挙げられ、これは、米国特許第5,108,755号(この開示は、本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0036】
(薬物送達)
重合性官能基化無水モノマーおよび/またはオリゴマーは、必要に応じて、重合の前または重合後のいずれかに、他の分解性または非分解性のポリマー、充填剤、および/または薬剤と組み合わせて提供され得る。
【0037】
架橋された生分解性ポリマーは、インビボで治療用薬剤または診断用薬剤を送達するのに使用され得る。プレポリマーに、および得られた架橋ポリマー中に組み込まれ得る薬物の例には、タンパク質、炭化水素、核酸、ならびに無機および有機の生物学的に活性な分子が挙げられる。特定の例には、酵素、抗生物質、抗悪性腫瘍性剤、局所麻酔剤、ホルモン、抗血管形成剤、抗体、神経伝達物質、向精神剤、再生器官に作用する薬剤、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチドが挙げられる。歯科矯正学的適用において、骨再生分子(bone regenerating molecule)、播種細胞(seeding cells)、および/または組織が、重合の前または重合後のプレポリマーに組み込まれ得るか、あるいは、インプランテーションの部位においてインプラントを形成する前または形成した後に付与され得る。例えば、米国特許第5,011,691号(その開示は、本明細書中で参考として援用される)に記載されたような骨形態形成タンパク質が、これらの適用において用いられ得る。
【0038】
本発明は、以下の非制限的な実施例を参照することによりさらに理解される。この実施例において、以下の材料および方法が用いられた。
【0039】
(材料)
Aldrichから入手したセバシン酸(SA)および無水メタクリル酸(MA)を用いた。そして、1,6−ビス(カルボキシフェノキシ)ヘキサン(CPH)を、Conix,Macromol.Synth.,2:95(1966)に記載の通りに合成した。光重合は、0.1重量% Irgacure(登録商標)651(I651,Ciba Geigy)を用いて開始した。
【0040】
(方法)
赤外線分光光度計(Nicolet Magna 550 FTIR)、1H NMR(Nicolet 360 MHz)、およびゲル濾過クロマトグラフィー(Perkin−Elmer,アイソクラチックLCポンプ250、オーブン101、およびLC−30 RI検出器(254nm))を用いて、二酸モノマーの官能基化の間における反応生成物をキャラクタライズした。示差走査光熱量計(Perkin−Elmer DSC7)および赤外線分光光度計を用いて、官能基化したモノマーの硬化挙動をモニターした。サンプルを、種々の光強度において、紫外光−可視光硬化系(EFOS、Ultracure(1OOSS))を用いて重合した。得られたポリマーの機械的特性を、動態力学分析器(dynamic mechanical analyzer)(Perkin−Elmer,DMA7)を用いて測定し、そして、分解速度は、損失質量により特徴付けられた。
【実施例】
【0041】
(実施例1:モノマーの調製および光重合)
セバシン酸の官能基化モノマー(およびオリゴマー)(MSA)および1,6−ビス(p−カルボキシフェノキシ)−ヘキサン(MCPH)を合成し、そして続いてスキームIに例示するように重合させた。まず、ジカルボン酸モノマーを還流下で加熱することにより、その無水メタクリル酸との混合無水物に転化させた。官能基化したモノマーを単離し、そして真空蒸留により精製するか、あるいは塩化メチレンに溶解させてジエチルエーテルから沈澱させることにより精製した。光重合を、それぞれのモノマーに溶解させた0.1%のI651および種々の強度の紫外光(0.1mW/cm2〜1000mW/cm2)を用いて開始した。この系中の二重結合の濃度が高いことおよびモノマーの多官能性(1個のモノマー分子あたり2個の二重結合を有する)により、開始速度に依存して、2〜3秒の期間中に、高度に架橋したポリマー系の形成がもたらされた。
【0042】
フーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)および示差走査光熱量計(DPC)の両方を用いて、重合挙動、硬化時間、およびこれらの系における最大二重結合転化率が特徴付けられた。0.1重量%のI651を有するMSAの重合(約50mW/cm2のUV光)についてのFTIRスペクトルにおいて、メタクリル酸の二重結合は、1640cm−1近傍で鋭くかつ明確な吸収を示した(これらから、総二重結合転化率を計算することができた)。曝露の10秒後、この系では、官能基の転化率が45%近くまで達した。連続的な照射を用いて、最大二重結合転化率が94%に達するまで、二重結合の吸収をさらに低減させた。高度に架橋したポリマーにおける最大二重結合転化率への到達は、以前に報告されており(RuyterおよびOysaed、CRC Crit. Rev. Biocomp,4:247(1988))、これらは反応性種の可動性の厳重な制限からもたらされるものである。従って、これらの系は、重合時間および最大転化率の両方が重要な因子である歯科矯正学的適用において有用であり、ここで、所望の系が1分未満で重合し、そしてそれらの官能基の転化率は100%に近づいている。
【0043】
さらに、架橋密度およびポリマーの親水性は、MSAとMCPHとを種々の割合で共重合させることにより改変された。MSAを用いて得られる網目の親水性を増加させたのに対し、MCPHは疎水性を増加させた。重合方法(コポリマーの組成および架橋密度、重合時間、および光強度が挙げられる)は、特定の適用のために容易に最適化されて、ポリマーの分解特性および材料の強度を最適化し得る。
【0044】
(実施例2:架橋した生分解性ポリマーの機械的特性の評価)
実施例1に記載の通りに作製した、高度に架橋した材料は、現存する分解性材料と比較して、引張強度が顕著に改善された。表1は、骨の機械的特性(Yaszemski, 博士論文, Massachusetts Institute of Technology, 1995)と、架橋ポリ無水物の機械的特性との比較を提供する。
【0045】
表1:機械的特性の比較
【0046】
【表1】
*0.1〜1.0g/cm3で変動する密度に大きく依存する。
【0047】
線状CPH(1.3MPa)と比較すると、官能基化および架橋したポリ(MCPH)では、弾性率が顕著に増加した(500MPa)。Leongら、J. Biomed.Mater.Res.,19:941(1985)。線状ポリ無水物の機械的強度を増加させるための別のアプローチとしては、イミド基をポリマー骨格に組み込むことに焦点が当てられてきた。このクラスの最も見込みのある材料は、36〜56MPa(Uhrichら、Macromolecules 28:2184(1995))の圧縮弾性率を示しているが、架橋材料で観察される強度には近づかない。最後に、ポリ(乳酸)の再吸収性縫合糸は、50〜60MPaの初期圧縮降伏応力を有するが、多くの歯科矯正学的適用における効能は、ポリ無水物と比較して比較的短時間の間隔で起こるバルク分解(bulk degradation)により、さらに制限される。PulapuraおよびKohn、J.Biomater.Appl.,6:216(1992)。従って、光重合性および架橋性の系は、プロセス中における大きな可撓性を提供するだけでなく、得られるポリマーの機械的特性の増強もまた提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される組成物および方法。
【請求項1】
本明細書に記載される組成物および方法。
【公開番号】特開2009−119287(P2009−119287A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51385(P2009−51385)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【分割の表示】特願2004−123570(P2004−123570)の分割
【原出願日】平成9年2月19日(1997.2.19)
【出願人】(303050540)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【分割の表示】特願2004−123570(P2004−123570)の分割
【原出願日】平成9年2月19日(1997.2.19)
【出願人】(303050540)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]