整形外科用器具
球窩関節形成処置で使用される患者別の器具、製造方法、および使用方法を説明する。器具は、器具を患者の窩に取り付ける取り付け機構を含み、取り付け機構は、患者の窩の縁に係合できる、少なくとも第1および第2の部品を有する。各部品は、窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形されるか、または適合する形状に変形することができる。本体が、関節形成処置で使用されるべき構成要素を案内する少なくとも1つのガイド形成物を有する。器具は、ロック機構を含み、ロック機構により、本体および取り付け機構が、独自の構成で患者別の器具へと組み立てられることができる。患者別の器具は、事前に計画された単一の位置でのみ患者の窩に取り付け可能である。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本発明は、整形外科用器具に関し、特に、患者の球窩関節(ball and socket type joint)に対して行われる整形外科処置の一部として使用され得る整形外科用器具に関する。
【0002】
整形外科処置は、関節部分を修復または置換するためにプロテーゼインプラントの使用をしばしば伴う。インプラントの構成要素を受容し、またプロテーゼインプラントを設置し植え込むよう関節を準備するため、様々なツールおよび器具を外科処置で使用する。処置の一環として、処置の意図した効果を達成しようとして、インプラントが、意図した位置および向きで設置されることを確実にしようとすることが重要となり得る。したがって、インプラントを正確に設置し方向付けるのに役立つように、様々な器具およびガイドが整形外科処置中にしばしば使用される。
【0003】
インプラント位置を計画し、インプラントの設置をナビゲートするのを助けるため、コンピューター支援手術(CAS)システムを使用することができる。しかしながら、そのようなシステムは、高価で、必ずしも入手可能とは限らない。また、一部の外科医は、様々な理由から、例えば個人的な手術上の好みのため、または外科医がCASシステムの使用方法を学習しなければならないために、CASシステムの使用に抵抗がある。
【0004】
整形外科処置は、膝関節など、身体のいくつかの関節に対してしばしば行われ、膝の処置を行う上では十分に発達した技術がある。股関節および肩関節の損傷も、整形外科処置がしばしば行われる部位である。しかしながら、球窩関節に対して行われる処置にはしばしば、膝の処置中に生じる難点とは異なる、独自の特定の難点がある。
【0005】
例えば、一部の股関節処置では、重要な工程は、患者の骨盤の寛骨臼にプロテーゼ寛骨臼カップ構成要素を正確に設置することであり得る。カップ構成要素の植え込みの深さおよび/または向きは、股関節処置の成功において重要となり得る。寛骨臼の画像から寛骨臼構成要素を正確に設置するのは困難であり得る。これは、股関節部分の一部が、寛骨臼の準備中にしばしば除去される軟組織、例えば唇状物(labrum)および寛骨臼横靱帯であるためである。よって、寛骨臼カップの設置を案内するのに使用され得る、患者の適切な、または容易にアクセス可能な解剖学的標識点がない場合がある。
【0006】
別の例として、肩関節形成術の重要な工程は、全肩関節プロテーゼ構成要素(total shoulder prostheses components)を正確に位置付けること、および関連する骨準備工程である。関節窩構成要素の位置、向きおよびサイズは、処置の結果を決定する上で重要な要因であり、骨準備器具の不正確な位置付けにより、患者の肩関節の術後可動域が減少する場合がある。特に、外科医は、術前の手術計画に対処しようとして元の場所で(in-situ)骨の準備を行う際に、病理学的に変形した関節窩骨構造のための骨準備器具の適切な位置付けを決定するのがしばしば困難である。
【0007】
外科医は、インプラントのサイズおよび場所を定めるため、患者の解剖学的構造の3次元CT画像データに基づいて手術の立案を行うことができる。CT画像データは、必要な骨準備工程を決定するのに役立つ、患者の正確な解剖学的構造モデルを提供するのにも使用されることができる。変形した関節窩骨関節炎の骨(Glenoid osteoarthritis bone)の必要な傾斜角度修正を判断するためには、一般的には、ただ1つの特定の横断CTスライスをこの立案に使用する。
【0008】
関節窩および上腕骨上における、表面リーミングに使用する外科ツールの案内、ペグ穴の向き、およびMetaglene止めねじの軌跡は、適切なインプラント構成要素のための適切な骨ストック(bone stock)を得るためには、達成するのが困難となり得る。典型的には、手術を受けるべき骨構造の限られた露出のみが、介入のため、ならびに患者の解剖学的構造に関して器具の位置および向きを認識するために、外科医にとって利用可能である。
【0009】
手術計画情報を元の位置で伝達するために先に使用された器具およびテンプレートは、同時に3D画像または定位座標系に関して機能を果たすようにデザインされていない。テンプレートは、以前に使用されていたが、関節窩のサイズおよび中心の情報を視覚的にのみ提示するようデザインされている。骨上のテンプレート位置は、準備器具の計画された位置に関して案内もフィードバックも提供しない。
【0010】
他の器具は、kワイヤおよび/または偏心ドリルビットの入口点の位置のみを対象とするようにデザインされており、例えば関節窩および肩甲骨の平面に対する、向きの情報を使用するようにはデザインされていない。
【0011】
したがって、球窩関節に対する関節形成術では、処置中に使用される器具を案内するため向きの位置(orientation position)が提供されるように、計画されたインプラント位置を手術野に伝達することが著しく困難である。
【0012】
よって、球窩関節に対して行われる整形外科処置を改善するのに使用され得る器具を提供することが有益である。
【0013】
本発明の第一の態様によると、患者に対して行われるべき球窩関節形成処置で使用される患者別の器具(patient specific instrument)が提供される。この器具は、器具を患者の窩に取り付ける取り付け機構を含むことができる。取り付け機構は、患者の窩の縁に係合することができる、少なくとも第1および第2の部品を有し得る。各部品は、窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形され得る。器具は、肩関節形成処置で使用されるべき構成要素を案内するための、少なくとも1つのガイド形成物を有する本体も含むことができる。器具は、ロック機構をさらに含んでよく、ロック機構により、本体および取り付け機構が患者別の器具へと組み立てられ得る。組み立てられると、患者別の器具は、事前に計画された単一の位置においてのみ、患者の窩に取り付け可能とすることができる。
【0014】
取り付け機構が患者の骨窩(bony socket)の縁の少なくとも2つの部分の形状に適合するように構成されており、また、取り付け機構が骨窩に正確に位置付けられ据え付けられた場合に器具の構成要素が単に共に組み立てられロックされて器具を形成することができるので、器具は、窩に対して自動的に正確に設置される。そうでない場合、器具は、その部品と、器具の取り付け部品の患者の解剖学的構造に特異的な形状とがインターロックする性質のために、組み立てることができない。さらに、窩自体が組立状態にある器具の構造的安定性に貢献するので、器具は、窩の縁に据え付けられると組み立てられた状態にとどまる。
【0015】
患者の窩または骨窩は、器具が取り付けられ得る1つまたは複数の十分な縁部分を有する、任意の解剖学的陥没部であってよい。例えば、窩は、患者の関節窩または寛骨臼であってよい。
【0016】
ロック機構は、器具の構成要素の部分もしくは部品の形状によって全体的にまたは少なくとも部分的に提供され得る。すなわち、器具の構成要素を共に組み立ててロックするためには、いかなる補助的または別個の付属品も必要ではない。ロック機構は、インターロック機構であってよく、かつ/またはロック機構の部品が、インターロック機構であってもよい。ロックまたはインターロック機構は、器具の1つまたは複数の部品の形状により提供され得る。1つまたは複数のロックまたはインターロック機構は、完全に機械的であってよい。1つまたは複数のロックまたはインターロック機構は、器具が単一の独特の構成のみで組み立てられ得るように構成または配列され得る。器具の構成要素の一部またはすべてが、1つの方法で、構成要素のうちの1つまたは複数の他のものに取り付け可能または接続可能であってよい。
【0017】
本体は、種々の構成要素を案内するため複数のガイド形成物を含むことができる。したがって、器具を再構成または調節する必要なしに、同じ器具を使用して、処置の種々の段階中に使用される構成要素を案内することができる。
【0018】
このガイド形成物または各ガイド形成物は、孔またはチャネルの形態をしていてよい。このガイド形成物または各ガイド形成物は、関節形成処置中に使用される様々な異なる構成要素、ツール、準備器具、付属品もしくは器具を、使用中に受容するように構成され得る。例えば、このガイド形成物または各ガイド形成物は、kワイヤ、ドリルビット、骨準備器具、リーマー、バードリル(burr)、ねじ、ピンまたはプラグを案内するように構成され得る。
【0019】
取り付け機構は、少なくとも3つの部品を含んでよく、各部品は、窩の縁に係合することができ、各部品は、窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形されている。3つの部品は、窩への器具の取り付けを安定させるのに役立つ。また、3つの部品を使用することで、部品が窩の縁の対応する部分に独自に取り付け可能であることを確実にするのに必要とされる部品のサイズを低減することができる。
【0020】
取り付け機構の部品はそれぞれ、窩の縁の周縁部周りの方向、および/または窩の縁の周縁部に概ね横向きの方向において、窩の対応する部分の形状に適合するように成形されることができる。
【0021】
取り付け機構の部品は、別々の部品であってよい。取り付け機構の部品は、クリップの形態であってよい。
【0022】
取り付け機構の部品は、同じ構造の部品であってよい。すなわち、それらはすべて、大きな構造体の一体的部品として形成され得る。
【0023】
本体は複数の部品を含むことができる。本体の複数の部品のうちの1つは、複雑な形状の表面を有してよく、この表面は、本体の複数の部品のうちの別の部品の、適合する形状の表面と噛み合うことができ、本体は、単に、単一の独自構成で組み立てられることができる。本体は、円形、楕円体、丸形、または卵形など、概ね湾曲した形状を有することができる。
【0024】
本体の各部品は、取り付け機構のそれぞれの部分を含み得る。すなわち、取り付け機構の一部は、本体部品の一体的部品として提供され得る。本体の部品の噛み合い形成物(Mating formations)が、ロック機構を提供することができる。噛み合い形成物は、1つまたは複数の突起と、その突起を受容するように成形された1つまたは複数の凹部と、を含むことができる。
【0025】
取り付け機構は、本体または本体の部品に対して完全に別個の1つまたは複数の部品として設けられ得る。
【0026】
ロック機構は、本体および取り付け機構の部品上の噛み合い形成物によって提供され得る。この噛み合い形成物または各噛み合い形成物は、1つまたは複数の突起と、その突起を受容するように成形された1つまたは複数の凹部と、を含み得る。
【0027】
取り付け機構は、部分的または全体的に形状記憶材料であってよい。形状記憶材料は、器具が関節窩に向けられ得る第1の状態と、取り付け機構が事前に計画された単一の位置で器具を関節窩に取り付ける第2の状態との間で移行することができる。形状記憶材料は、それが第2の状態で取り付けられることが意図される関節窩の一部の形状に適合する形状を有し得る。形状記憶材料で作られていない取り付け機構の部品は、それが取り付けられることが意図される関節窩の一部の形状に適合する形状を有し得る。
【0028】
取り付け機構は、少なくとも部分的に形状記憶材料であってよい。形状記憶材料により、取り付け機構の部品のうち1つもしくは複数またはそれぞれが、窩の縁の対応する縁部分の形状に適合する形状へと変形することができる。
【0029】
本体は、フレーム部品を含むことができる。本体は、コアをさらに含み得る。コアは、フレーム内に受容可能であってよい。コアは、少なくとも1つのガイド形成物を含み得る。フレーム内のコアの代わりとなり得る、さらなるコアが設けられてもよい。このさらなるコアは、さらなるガイド形成物を含むことができる。
【0030】
ロック機構は、フレーム、および取り付け機構の部品上の噛み合い形成物により提供され得る。噛み合い形成物は、1つまたは複数の突起と、その突起を受容するように成形された1つまたは複数の凹部と、を含むことができる。
【0031】
患者別の器具は、リミッター、またはキーイング構成要素(keying component)をさらに含んでよく、コアを単一の位置でフレーム内に受容させる。リミッターは、機械的停止部の形態をしていてよい。リミッターは、コアがフレームに対して回転するのを防ぐことができる。リミッターは、コアの位置をフレームに対して変えるように調節可能であってよい。リミッターは、フレームから取り外し可能であってよい。
【0032】
フレームは、全体的に、または少なくとも部分的に、弾性材料から作られていてよい。取り付け機構の部品は、フレームの部品として提供され得る。フレームは、器具が組み立てられて関節窩に取り付けられると取り付け機構の部品を窩の縁の周りに係合させるように作用することができる。
【0033】
器具の部品は、窩に面する表面を含むことができ、窩に面する表面は、器具が事前に計画された単一の位置のみで患者の窩に取り付けられた場合に窩に面する表面が隣接する、患者の窩の一部の形状に適合するよう成形されている。窩の一部は、窩の内部空洞に向かっているか、または窩の内部空洞から離れている、窩の内部空洞の表面の一部または窩の縁に隣接する窩の一部であってよい。器具の部品は、本体の一部または全体、あるいは本体の一部であってよい。器具の部品は、1つの、複数の、またはすべての取り付け部品の一部または全体、あるいは、取り付け部品の一部であってよい。
【0034】
患者別の器具は、元の位置で分解され得る。すなわち、器具は、手術部位へのより良好なアクセスを提供するよう、患者の骨に取り付けられたまま分解されることができる。ロック機構は、器具が分解されるように構成され得る。ロック機構は、少なくとも1つの、または複数のインターロック部品を含んでよく、あるいは、完全にインターロックする部品(entirely interlocking parts)を含むことができる。
【0035】
本発明は、部品のキットも提供し、これは、本発明の先の態様による患者別の器具と、球窩関節形成処置で使用されるべきさらなる構成要素を案内する少なくとも1つのさらなるガイド形成物を有する、さらなる本体と、を含む。さらなる本体は、関節形成処置の異なる工程を実行できるように、器具の本体の代わりとなることができる。したがって、モジュラーシステムが提供され、本体を入れ替えることを可能にし、外科処置の種々の工程中に使用される種々の構成要素、ツール、器具、付属品および他の部品を案内することができる。
【0036】
本発明のさらなる態様によると、患者に対して行われるべき球窩関節形成処置で使用される患者別の器具を製造する方法が提供される。この方法は、患者の少なくとも骨窩の3次元画像を表す画像データを取り込むことを含み得る。球窩関節形成処置で使用されるべき位置および/または向きが、取り込んだ画像データを用いて計画され得る。複数の部品を有する患者別の器具がデザインされ得、それらの部品は、計画された位置および/または向きのほうへ構成要素を案内するガイドを提供するために補助的な付属品を使うことなく、事前に計画された単一の位置のみで患者の窩に取り付けられるように、共に組み立てられロックされることができる。患者別の器具は、そのデザインに従って作られ得る。
【0037】
球窩関節は、肩関節または股関節であってよい。例えば、患者の肩関節または股関節のCT画像を取り込むことができる。プランニングソフトウェアを使用して、外科処置中に使用されるべき位置および/または向きを計画することができる。この位置および/または向きは、関節窩プロテーゼ構成要素または寛骨臼カッププロテーゼ構成要素のためのものであってよい。この位置および/または向きは、インプラントを受容するよう関節窩を準備するための器具を案内するために外科処置中に使用されるべきkワイヤのためのものであってよい。患者別の器具は、本発明の第1の態様に関連して前述した特徴のいずれか、または特徴の組み合わせを有してよい。患者別の器具は、ラピッドプロトタイピング技術など、様々な技術を使用して作製または製造され得る。
【0038】
本発明のさらなる態様によると、骨窩を有する患者に対して球窩関節形成処置を行うための方法が提供される。この方法は、分解形態で患者別の器具を提供することを含み得る。この器具は、患者の骨窩に対する計画された位置および/または向きに向けて構成要素を案内する少なくとも1つのガイド形成物を含む、複数の部品を含み得る。器具の複数の部品は、いかなる補助的な付属品も使用することなく、ガイド形成物が計画された位置に向かって、かつ/または計画された向きに沿って構成要素を案内するように位置付けられた状態で、事前に計画された単一の位置のみで器具を患者の窩に取り付けるように、共に組み立てられロックされることができる。ガイド形成物は、計画された位置に向かって、かつ/または計画された向きに沿って球窩関節形成処置中に使用される構成要素を案内するのに使用され得る。
【0039】
本発明の実施形態を、ほんの一例として、添付図面を参照して説明する。
【0040】
種々の図面中の同様のアイテムは、他に指定のない限り、共通の参照符号を有している。
【0041】
本発明の実施形態は、肩関節形成処置および関節窩との関連で以下に論じられるが、本発明は、寛骨臼上での股関節形成処置にも使用され得ることが認識されるであろう。一部の股関節形成処置は、患者の寛骨臼に寛骨臼カップ構成要素を設置することを伴う。カップを正確に角度を付けて位置付けることは、その傾斜/前傾、および勾配の観点から、股関節処置の成功における重要な要因となり得る。したがって、本発明の患者別の器具は、寛骨臼の準備中、および/または患者の骨盤に対する計画された角度のある向きでの寛骨臼カップの設置中に使用されるツールまたは器具を案内するために、寛骨臼上で使用されることができる。
【0042】
本発明の器具は、その器具が使用される患者に合わせてカスタマイズされる。例えばインプラントを受容する手術部位で骨を準備するために、関節形成処置中に使用する器具を正確に設置することによって、事前に計画したインプラント位置を正確に「伝達(transfer)」しようと試みる上で外科医が経験する問題に対処するため、器具は、患者の解剖学的構造、そして患者別の手術計画に基づいてカスタマイズされる。
【0043】
提供される器具は、個々の患者の解剖学的構造、およびその患者用の特定の手術計画に合わせてカスタマイズされ、1つまたは複数のテンプレートの形態をしており、このテンプレートは、固定ピンもしくはねじなどの補助的な付属品を使用せずに、例えば縁にクリップ留めすることによって、骨窩、例えば関節窩または寛骨臼、に手術中に取り付けられることができる。器具は、特別に形成された複数の部品として提供され、その部品は、共に組み立てられロックされることができ、器具は、単一の独自の位置でのみ関節窩または寛骨臼に取り付けられることができ、器具が正確に位置付けられて、手術計画が実行される。器具は、器具を意図した位置以外の位置で取り付けようとした場合には組み立てることができず、かつ/または組み立てられた状態にとどまらないので、器具は、術前計画に対して元の位置で不正確に位置付けられているという表示を自動的に提供することができる。
【0044】
器具、またはテンプレート部分(templating portion)は、関節窩表面縁の損傷で生じる関節窩骨関節炎に必要な傾斜角度修正を考慮に入れるように構成され得る。
【0045】
図1を参照すると、関節窩(2)を有する肩甲骨(1)の平面図が示されており、本発明の第1の実施形態による器具(100)は、使用中に関節窩(2)に取り付けられる。図2は、kワイヤ(9)を案内するのに使用されている器具(100)の側面図を示し、図3は、線AA’に沿って器具(100)を貫通した断面図を示す。器具(100)は、第1の部品(16)および第2の部品(17)で形成された主要本体を有する。本体の第2の部品は、図2に示すようにkワイヤ(9)を受容するようにサイズ決めされた孔(8)を含む。図3に示すように、孔(8)は、関節窩に対する位置を有し、関節窩に対する向き、すなわち角度方向、も有する。器具は、関節窩に対する孔(8)の位置および関節窩に対する孔(8)の向きが、関節窩インプラント構成要素の植え込み中に後で使用される器具を案内するためにkワイヤが関節窩に挿入されるべき、計画された位置および向きに対応するように、器具が患者の関節窩に単一の方法で取り付けられ得ることを確実にするため、製造中にカスタマイズおよび事前構成されている。
【0046】
図1に示すように、本体の第1の部品(16)および第2の部品(17)は、対応する形状の凹部と係合できるタブもしくは突起の形態をしたインターロック形成物(14、14c)によって取り付けられる。突起および凹部は、ジグソーパズルで使用されるものに類似している。さらに、突起および凹部は、器具本体のこれら2つの部品が解放可能に共にしっかりと留められロックされるように、締まりばめをもたらす。
【0047】
器具(100)はまた、図3で最もよく分かるように、概ね対向した一対のクリップ(102、104)の形態をした取り付け機構を含む。クリップ部分は、主要本体の部品それぞれの下方部分から延びている。取り付け機構の各部分、すなわちクリップ(102、104)は、クリップを取り付けることが意図された関節窩(3)の縁部分にわたり、関節窩の表面の縁(3)の形状に適合する形状を有する。クリップの形状は、図3に示す概ね横向きの方向と、図3に示すような関節窩の縁(3)の周囲の一部に沿って延びる側方向(lateral direction)との双方で、関節窩の縁の形状に適合する。すなわち、クリップは、図1に示す平面で湾曲し、関節窩の縁部分の周辺形状に適合する。クリップはまた、図3に示す平面において縁の横方向形状に適合するように湾曲している。クリップの形状は、かなりの部分にわたり、図3に示す横方向において縁の形状に適合している。他の実施形態では、クリップの形状は、関節窩の空洞内へとさらに延びてよく、あるいは、実際、器具の主要本体の部分は、関節窩の内側表面の形状にも適合して、関節窩の適切な部分との、器具の自由な部品(free parts)の位置合わせをさらに改善することができる。
【0048】
使用中、外科医は、器具の第1の部品(16)を取り、そのクリップ部分を、ぴったり嵌まるまで関節窩の縁の周りに設置する。クリップの形状は、感触だけで関節窩の縁の形状に適合するので、外科医は、いつ第1の部品が適切に設置されたのかを判断できなければならない。次に、外科医は、器具の第2の部品(17)のクリップを、関節窩の縁に向け、関節窩の縁に対してそのクリップがぴったり嵌まる場所はやはり1つである。外科医は次に、器具の第1および第2の部品を操作して、タブ(14、14c)を、それら部品のうち他方の適合する凹部に係合させ、器具が関節窩に取り付けられる際に器具を組み立ててインターロックすることができる。第1または第2の構成要素が関節窩に取り付けられ得る場所が複数ある場合、不正確に位置付けられた第1のピースのために、2つの構成要素のうちの他方が、関節窩の縁の局所形状に適合しない可能性があり、ゆえに、器具を組み立てることができない。したがって、器具の形状をカスタマイズし、独自に定められた単一の位置に置かれている場合に限られるが器具の別々の部品を組み立てることができる、インターロック機構を提供することによって、関節窩上への器具の位置付けは、単にその形状によって自動的に決定される。また、インターロック機構およびクリップは、器具を関節窩に固定するためにさらなる器具が必要でないことを意味している。すなわち、固定ピンまたはねじなどの、器具とは別個の補助的な付属品は必要ない。
【0049】
孔(8)は、ガイド形成物を提供し、ガイド形成物によって、外科処置で使用するさらなる構成要素または器具が、その意図した位置および向きへと案内され得る。ガイド形成物(8)は、器具の本体に対して動くことができないので、いったん器具が事前に計画された独自の位置で組み立てられると、孔(8)の位置および向きも独自に定められる。したがって、図2に示すように、kワイヤ(9)は、ガイド形成物孔(8)を通って、関節窩の後ろの骨ストック(10a)に挿入され得る。次に、器具の部品は、分解され、関節窩から取り外されてよく、kワイヤが所定の場所に残る。kワイヤは、次に、カニューレ状リーマーなどの他の器具、または肩関節形成処置で使用される他の構成要素を案内するのに使用され得る。
【0050】
kワイヤの向きは、関節窩表面縁(3)上の少なくとも最も前方、後方および/または上方、下方の部位によって画定された関節窩平面を考慮に入れるよう、外科医が事前に計画する。ガイド孔(8)の傾斜角度は、肩甲骨の横軸と中央関節窩空洞平面(mid-glenoid cavity level)の前後面との間の角度により定められる、関節窩表面の軸方向勾配として定められる。ガイド孔(8)の傾きは、肩甲骨の横軸と関節窩の上下面との間の角度により定められる、関節窩の垂直な向きとして定められる。したがって、kワイヤ(9)がガイド孔(8)を通って肩甲骨上に設置されると、その位置は、事前に計画した入口点、ならびに事前に計画した傾きおよび傾斜角度の向きに従ったものとなる。次に、カニューレ状リーマー、または他の骨準備器具は、器具(100)が分解された後で、kワイヤ上に設置され得る。したがって、kワイヤの設置を案内することにより、その後の器具および構成要素がより正確に位置付けられ、かつ、計画された傾斜および傾きがより正確に再現されることができる。
【0051】
図4は、図1、図2、および図3に示した器具(100)のバリエーション(110)を示す。器具(110)は、2つのインターロック部品(16a、17a)を含む主要本体と、関節窩の縁形状に適合する2つのクリップの形態をした取り付け機構とを含む点で、器具(100)に類似している。本体の2つの部品(16a、17a)は、複数対の噛み合う突起および凹部(14、14c)によって同様にインターロック可能であり、器具の本体は、3つの孔(112、114、116)の形態のガイド形成物を有する。この3つの孔(112、114、116)は、アンカーペグを関節窩に突き通す(drilled into)ために、ドリルビットを案内するガイド形成物を提供する。したがって、この器具は、図1、図2、および図3に示す器具と同様に動作するが、肩関節形成処置で使用される異なる構成要素が、第1の器具(100)により案内されるように案内されることを可能にする。器具(110)は、偏心アンカーペグの正確な位置付けを可能にする、専用のテンプレートである。これにより、外科医は、処置中に、より信頼性のある骨穿孔工程(more reliable bone drilled step)を形成することができる。ドリルガイド形成物(112、114、116)は、利用可能な骨ストックを、より良好に使用するために、事前に計画されたインプラントのサイズ、向き、および位置に対応する。
【0052】
肩関節形成処置に使用される器具(120)の第2の実施形態が、図5、図6、図7、および図8に示されている。この器具は、第1の器具と概ね同様に動作する。しかしながら、本発明の器具の第2の実施形態(120)は、孔(8)の形態をしたガイド形成物を有する単一本体部品(15)を有する。器具(20)は、第1の部品(4a)および第2の部品(5a)を含む取り付け機構を含む。取り付け機構の部品(4a、5a)は、突起(14a、14b)を含み、突起(14a、14b)は、本体(15)の、対応する形状の凹部に受容されるので、器具の部品は、使用中、互いにインターロックされて器具を組み立てることができる。図7および図8に最もよく示されているように、取り付け機構の第1の部品(4a)および第2の部品(5a)はそれぞれ、2つの部品構造を有する。第1の部品(4a、5a)は、突起(14a、14b)を有し、この突起により、取り付け機構は、本体(15)とインターロックされる。図7で見ることができるように、取り付け機構の主要部分(4a、5a)は、関節窩に面する表面(4c、5c)の少なくとも一部を含み、これは、関節窩の縁(3)の一部の局所形状に適合するように成形される。主要部分(5a、4a)それぞれの外側端部から延びているのは、形状記憶材料から作られたクリップ部分(4b、5b)である。クリップ部品(4b、5b)は、様々な合金または形状記憶プラスチックなど、任意の適切な形状記憶材料から作られてよい。例えば、Nitinolという名前で提供されている合金を使用することができる。形状記憶材料のクリップ(4b、5b)は、図7および図8を参照してさらに詳細に説明するように、関節窩の縁の局所部分の元の形状を取り戻すことにより、関節窩の縁(3)上への器具の取り付けを確立するのに使用される。
【0053】
図7および図8で見ることができるように、内側表面縁部位の特定の場所に係合する取り付け機構の主要部品(4a、5a)は、その表面縁部位の局所形状に適合するように成形された表面(4c、5c)を有する。図7は、器具が関節窩に対して向けられる第1の状態にある、器具(120)を示す。形状記憶材料のクリップ(4b、5b)は、その形状を取り戻していない。この状態で、器具の位置付けのいくらかの微調整が可能である。しかしながら、取り付け機構の主要部分(4a、5a)の形状、ならびに、取り付け機構および本体(15)のインターロックされた組立体は、器具が一般に、関節窩に対して正確な位置に自動的に位置することを意味する。
【0054】
器具が最終的に位置付けられた状態で、形状記憶材料のクリップの温度を変化させることにより、クリップは、元の形状を取り戻して、図8に示されるように、関節窩の縁の周りでクランプし、器具(120)を事前に計画された位置にしっかりと取り付ける。形状記憶材料のクリップ(4b、5b)は、取り戻した形状が、図8に示す横方向、また、図5に示すような長さ方向において関節窩の縁の周囲の周りで、関節窩の縁の形状に適合するように、事前に設計されている(pre-engineered)。したがって、いったん形状記憶クリップが元の形状を取り戻そうとすると、器具の誤った位置付けが明らかになり、器具の緩みまたは不正確なクランプを結果として生じる。その後、器具は、単に形状記憶材料のクリップの温度を再び変化させることによって、再び位置付けられることができる。正確に位置付けられていると仮定して、図8は、事前に計画された位置で関節窩表面の縁(3)上にぴったり接続された(form fit connected)器具(120)を示し、ガイド形成物(8)の位置および向きも計画通りである(as planned)。したがって、前述したものと同様に、kワイヤ(9)は、事前に計画された位置および向きでガイド孔(8)内に導入されて、肩関節形成処置で後に使用される器具およびインプラントをより正確に位置付けることができる。
【0055】
図9は、本発明の第2の実施形態のモジュール式態様を示す。このバリエーションでは、器具(130)は、取り付け機構が同一である点で図5に示す器具(120)と類似しているが、器具(120)の本体(15)は、異なるガイド形成物を有する異なる本体(15a)と置き換えられている。図9に示すように、本体(15a)は、ドリルガイドとして作用する3つの孔を有しており、これらによって、アンカーペグを位置させるよう穿孔工程を達成することができる。よって、本発明のこの実施形態は、よりモジュール式のシステムを提供し、このシステムでは、同じ取り付け機構を使用するが、取り付け機構の内外で種々の本体を取り換えて、処置中の種々の工程を案内するための種々のテンプレートを提供することができる。
【0056】
前述したように、取り付け機構の一部のみが形状記憶材料から作られるが、他の実施形態では、取り付け機構の他の部分または全体が、形状記憶材料から作られてよく、取り付け機構の関節窩表面形状適合部分の一部またはすべてが、第1の状態と、取り付け部分が取り付けられる予定の関節窩の縁の形状に適合する形状を取り付け機構の関節窩係合部分が有する第2の状態と、の間で移行し得ることが、認識されるであろう。
【0057】
器具(120、130)の第2の実施形態は、制限された側方露出により関節窩の準備が行われる標準的な(三角筋胸部(delto-pectoral))前方アプローチの範囲内で、より組み立てやすい。器具の組み立て中、一対の取り付け機構クリップ(4a、5a)は、最初に、関節窩縁部位上に置かれ、次に、主要本体(15、15a)が、側方向から導入され、突起と孔とを係合させるように操作されて、器具の部品が互いにインターロックされ、器具が、関節窩に対して、事前に計画された単一の位置で取り付けられる。突起(14a、14b)、および主要本体(15)の適合する孔の形状は、取り付け機構の2つの部分で異なるので、器具を、図5に示す方法以外の任意の他の方法で組み立てることができず、例えば、主要本体が図5に示す向きに対して約180°回転された状態で、器具を組み立てることはできない。したがって、インターロック機構の形態は、器具が組み立てられ得る方法を独自に定めることにも貢献する。
【0058】
図10〜図15を参照すると、本発明による器具(140)の第3の実施形態が示されている。器具(140)は、取り付け機構と、ガイド形成物を有する本体と、を含み、器具の部品がインターロックされて、器具を患者の関節窩上の単一の位置に独自に取り付けることができる点で、本発明の先に述べた実施形態に類似している。
【0059】
図10および図11に示すように、取り付け機構は、一対のクリップ(4、5)を含む。各クリップ(4、5)は、表面部分を有し、この表面部分の形状は、関節窩縁部分にわたり、関節窩縁表面の形状に適合する。クリップの形状は、図11に示す横方向、および図10に示す縁周縁部の周りに延びる長さ方向のどちらでも、関節窩の形状に適合する。各クリップ(4、5)は、組み立ての一環として突起を受容し、また、器具の部品をインターロックする、凹部を含む。図12および図13に示すように、器具の本体は、フレーム(6)を含み、このフレームは、中央孔と、フレーム(6)のほぼ対向する外側表面部分から延びる突起(14d、14e)とを有する円形リングの形をしている。突起(14d、14e)は、取り付け機構のクリップ部分(4、5)の、対応する形状の凹部に受容されるように成形される。図12は、事前に計画された単一の独自の位置で器具を関節窩に取り付けるように、取り付け形成物に取り付けられ、取り付け形成物とインターロックする、フレーム(6)を示す。図14に示すように、器具の本体は、フレーム(6)の中央孔内部に据え付けられ得る中央コア(7)も含む。本体のコア(7)は、図15に示すようにkワイヤ(9)を受容し、かつその位置付けを案内する孔(8)の形態をした、ガイド形成物を含む。
【0060】
器具(140)は、フレーム(6)内部でコア(7)の回転を制限するのに使用され得るリミッター装置(11)も含む。図14に示すように、リミッター装置は、フレーム(6)の内壁内部の凹部に受容され得る、ほぼ円形断面のペグ部材を含む。同様に成形された凹部が、コア(7)の外壁に設けられ、コア(7)は、単一の向きでフレーム(6)内に位置することができる。したがって、これにより、コア(7)がフレーム(6)内で回転するのが妨げられる。しかしながら、状況によっては、コア部品(7)の回転による微調整(rotational fine adjustment)が望ましい場合もある。そのような場合には、ペグ(11)を、フレーム(6)とコア(7)との間から取り外し、コア(7)をフレーム(8)内部で回転させて、ガイド形成物(8)の位置をわずかに調節することができる。
【0061】
使用中、まずクリップ(4、5)を、関節窩の縁上に位置付ける。クリップの、関節窩縁表面に適合する形状は、クリップが、事前に定められた単一の位置で関節窩の縁上にぴったり設置され得ることを意味している。次に、図13に示すように、フレーム(16)は、クリップの対応する凹部に受容される突起(14dおよび14e)によってクリップ(4、5)に取り付けられて、器具の部品をインターロックし、定め直された単一の位置で器具を関節窩に取り付ける。突起(14d、14e)は、異なる形状を有し、これにより、図12に示すものと異なる向きでフレーム(6)が取り付けられることが妨げられる。したがって、やはり、器具は、関節窩上の、予め定められた単一の位置で正確に設置されたときに組み立てられ得るにすぎないので、器具の部品の幾何学的形状により、不正確な方法で器具が偶発的に組み立てられることが妨げられる。次に、器具の本体のコア部品(7)を、フレーム(6)に挿入してガイド孔(8)を位置付けることができ、孔(8)は、kワイヤ(9)を、関節窩に対して予め計画された入口点および予め計画された向きにするのに使用され得る。
【0062】
第2の実施形態と同様に、器具の種々のコア部分(7)は、肩関節形成処置の他の工程中に後で使用される種々の部品および構成要素の位置付けを案内する異なるガイド形成物を有して、設けられ得る。
【0063】
第3の実施形態の特定の利点は、制限された側方露出を用いて関節窩の準備を行わなければならない三角筋胸部前方アプローチ内で、取り付け機構の小さいクリップ部分(4、5)が容易に設置され得ることである。クリップ部品(4)は、関節窩の縁の後方表面に酷似するように成形され、クリップ部品(5)は、縁表面の少なくとも前方部分に適合するように成形される。クリップ要素(4、5)はそれぞれ、単一のユニット位置(single unit position)で関節窩の縁上にぴったり位置することができる。
【0064】
図17aおよび図17bは、本発明による器具(150)の第4の実施形態を示す。器具(150)は、本発明の第1〜第3の実施形態と概ね類似している。器具(150)は、3つのクリップ(152、154、156)を含む取り付け機構を含み、クリップはそれぞれ、関節窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形される。クリップ(152、154、156)は、第1の部品(158)および第2の部品(160)を含む、ほぼ楕円の形状の(generally overall shaped)フレーム上に据え付けられる。フレームの第1および第2の部品(158、156)は、器具の主要本体(162)を受容できる中央孔を備えたほぼ楕円の形状を形成するように取り付け可能である。器具の本体は、第1の部分(164)および第2の部分(166)を含む。本体のこれらの部分のそれぞれの係合面は、図17aの線(168)で示される複雑な形状に対応する、互いに適合する形状を有している。本体の2つの部分を互いに組み立てて概ね楕円の形状にし得る、表面形状の複雑な性質は、本体の2つの部品が、器具のフレーム内部に嵌まるために互いに組み立てられ得る方法がただ一つであることを意味している。
【0065】
器具の本体は、使用中にkワイヤを受容する、円形孔の形態をした第1のガイド形成物(170)を有する。本体は、ほぼ三角形の構成に配列された3つの円形孔(172、174、176)の形態をした、第2のガイド形成物も有する。第2のガイド形成物は、第1のガイド形成物(170)を使用する工程とは異なる、肩関節形成処置の工程中に、ペグまたは他のインプラント付属品設置のためドリルを案内するのに使用され得る。したがって、器具(150)は、器具の部品を再組み立てまたは交換する必要なしに、種々の器具の設置を案内するのに使用され得る。
【0066】
器具(150)はまた、種々のガイド形成物を有する、取り換え可能な種々の本体部品と共に使用されてよく、種々の本体は、使用中に依然として関節窩に取り付けられた状態で、フレームの内外で取り換えられ得る。
【0067】
図17bに最もよく示されているように、器具の他の部品は、器具を確実に位置付けるために関節窩の形状に適合するようカスタマイズされている。図17bに具体的に示されるように、器具の本体の関節窩に面する後部の表面(180)も、関節窩空洞部位の少なくとも一部にわたり関節窩空洞の表面形状に概ね適合する表面形状を呈するように、カスタマイズされている。したがって、クリップ(152、154、156)によって取り付けられている際に器具のフレームが誤って位置付けられていたとしても、器具の本体は、その位置での関節窩の表面形状と本体の表面形状との不適合により、フレーム内部に適切に受容されることができない。さらに、本体の2つの部分間の複雑な境界面により、本体のこれら部分の相対的なスライドが妨げられて、本体の部品の相対的な位置付けをいくらか安定(settling)または再調節することができる。したがって、やはり、器具の幾何学的形状により、器具が事前に計画された単一の位置以外の任意の位置で関節窩に取り付けられる際に、器具が正確に組み立てられることおよび器具の部品がインターロックすることが妨げられる。
【0068】
図18、図19および図20は、本発明による器具の第5の実施形態を示す。この第5の実施形態は、先に論じた実施形態とほぼ類似している。器具(190)の第5の実施形態は、ほぼ楕円のフレームの形態をした取り付け機構を含み、フレームは、上部、下部、左側および右側の位置でフレームから延びる4つのクリップを有する。上部、下部、および右側のクリップ(192、194、196)の部品は、図19で見ることができる。4つのクリップは、器具が事前に計画された位置で関節窩上に設置される際に、関節窩の縁の対応する部分の表面形状に適合するように成形される。取り付け機構のフレーム部分(200)は弾性材料で作られ、クリップ部分は、使用中に器具を関節窩にしっかり取り付けるよう、関節窩の縁に向けて付勢される。器具(190)は、第1の部品(204)および第2の部品(206)を有する本体(202)を含む。本体(202)は、肩関節形成処置中、kワイヤまたはドリルビットなどの構成要素を案内するため、円形孔(208)の形態をしたガイド形成物を含む。本体(202)は、ほぼ楕円の形状を有し、2つの部品(204、206)は、適合する複雑な形状(210)の面を有する。このように、部品(204、206)は、正確に整列された場合に、ほぼ楕円の形状へと互いに組み立てられ得るに過ぎない。その後、主要本体(202)は、器具のインターロック部品を共に引っ張るフレーム(190)内部における摩擦嵌めまたは締まり嵌めによって受容および保持され得る。
【0069】
図19は、使用中に関節窩上に組み立てられ、ガイド孔(208)を通り抜けるドリルビット(210)を用いた穿孔を案内する、器具(190)の側面図を示す。
【0070】
図20は、ねじ(220)の設置を案内するのに使用されている器具(190)の側面図を示す。この変形において、器具の本体(202)は、第2の本体(230)で置き換えられており、第2の本体(230)は、同様の一般的形状を有するが、ねじ(220)を受容し、そのねじの設置および向きを案内するのに適した、異なるガイド形成物(234)を備える。
【0071】
図21は、本発明の様々な方法態様を例示するフローチャートを示す。図21に示す方法の様々な工程は、先に説明したように、カスタマイズされた患者別のインプラントの製造および使用の双方をカバーしている。最初の工程(300)では、患者を撮像して、少なくとも患者の肩関節、特に関節窩の3D画像を含む3D画像データを取り込む。様々な撮像モダリティーを使用することができる。特定の実施形態では、患者の肩関節の3DのCT画像を取り込み、患者の肩関節の3D画像を表すデータを格納する。
【0072】
次に工程302で、外科医は、プランニングソフトウェアを使用して、肩関節形成処置を計画する。これは、インプラント構成要素のサイズ、患者の骨に対するそれらの位置および向きを計画することを含み得る。具体的には、全肩関節形成術の関節窩構成要素のサイズ、位置および向きを計画することができる。ソフトウェアは、患者の肩関節の3D画像を使用し、外科医は、適切なサイズの関節窩構成要素を選択し、その意図された植え込み位置および向きを決定して、外科医の目的を達成することができる。関節窩構成要素の意図された位置および向きを計画することにより、ソフトウェアは、外科処置中に使用される器具類を設置するための理想的な位置および向きを決定する情報を入手できる。よって、ソフトウェアは、処置中に使用される他の器具類の位置付けおよび向きを案内するために、kワイヤを関節窩内に導入するべき、最適な位置および向きを決定することができる。
【0073】
次に工程304では、工程302でプランニングソフトウェアから得た計画情報と、患者の関節窩の形状を定める患者の画像からの情報とを使用して、患者別の器具がデザインされる。したがって、ソフトウェアアプリケーションが、器具の取り付け形成物部品、および、器具が事前に計画された単一の位置で取り付けられる関節窩部分の局所形状に適合するよう患者別となるように形状がデザインされた、器具のその他の部品の任意のものの適切な形状を決定することができる。次に、器具の計画された単一の取り付け位置では、関節窩に対する器具の意図した位置が固定されており、また、関節窩に対するkワイヤの位置および向きが先に計画されているので、器具のガイド形成物の位置および向きが決定され得る。したがって、工程304で、器具のデザインを作成することができる。
【0074】
次に、器具のデザインを使用して、そのデザインに従って器具を製造し、患者の特定の解剖学的形状、および患者の特定の計画された外科処置に合わせて、カスタマイズする。様々な技術を使用して、器具を製造することができる。例えば、ラピッドプロトタイピング型の技術を使用することができる。器具自体は、金属、合金、プラスチック、ポリマーまたは同様のものなど、いくつかの適切な生体適合性材料から作られてよい。
【0075】
工程306で器具がデザインに合わせて作られたら、工程308で、概ね前述したように、器具を肩関節形成処置中に使用することができる。先の説明から理解されるように、器具は、単一の独自の位置で患者の関節窩に取り付け可能となるようにカスタマイズされている。また、ガイド形成物は、器具の中に設置され方向付けられているので、いったん器具がその単一の位置で患者の関節窩に取り付けられると、ガイド形成物は、先に計画されたように、意図する入口点、および関節窩に対する角度または向きと自動的に位置合わせされる。したがって、事前に計画されたインプラントの位置付けのその後の信頼性が改善される。
【0076】
器具が外科処置中にその1つまたは複数の目的に役立った後、補助的な付属品またはファスナーを外す必要なしに、単にインターロック部品を外すか、または形状記憶材料の実施形態ではその温度を変化さ、容易に取り外せるようにして、手術部位へのより良好なアクセスを提供することによって、器具は元の場所で容易に分解され得る。したがって、器具の使いやすさおよび使用速度が向上する。
【0077】
さらに、前述のとおり、器具を関節窩に取り付けるのに、さらなる補助的な構成要素は必要ない。むしろ、器具の別個の部品がインターロックする性質により、器具の、インターロック部品を単に組み立てることにより、意図した位置において器具が関節窩へ取り付けられる。また、補助的な付属品またはファスナーを使用する必要がないので、手術部位に対する外傷または損傷が減少する。
【0078】
前記の考察から明らかであるように、本発明の器具に対して可能な、多数のバリエーションおよび改変がある。本発明は、前述した特定の実施形態に制限されない。むしろ、様々な改変および変更が予測される。前述のとおり、本発明は、寛骨臼上で使用される患者別の器具を提供するのにも使用され得る。1つの実施形態に関して説明した本発明の様々な特徴は、本発明の説明した他の実施形態と取り換えたり、混合したり、加えられたり、除去されたりしてよい。したがって、種々の実施形態に関して説明した特定の特徴の様々な組み合わせも予測される。
【0079】
〔実施の態様〕
(1) 患者に対して実行されるべき球窩関節形成処置で使用される患者別の器具において、
前記器具を前記患者の前記窩に取り付ける取り付け機構であって、前記取り付け機構は、前記患者の前記窩の縁に係合することができる、少なくとも第1および第2の部品を有し、各前記部品は、前記窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形されるか、または適合する形状に変形することができる、取り付け機構と、
前記球窩関節形成処置で使用されるべき構成要素を案内する少なくとも1つのガイド形成物を有する本体と、
ロック機構であって、前記ロック機構により、前記本体および取り付け機構は、独自の構成で前記患者別の器具へと組み立てられることができる、ロック機構と、
を含み、
前記患者別の器具は、事前に計画された単一の位置でのみ前記患者の前記窩に取り付け可能である、患者別の器具。
(2) 実施態様1に記載の患者別の器具において、
前記本体は、種々の構成要素を案内する複数のガイド形成物を含む、患者別の器具。
(3) 実施態様1または2に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構は、少なくとも3つの部品を含み、各前記部品は、前記窩の縁に係合することができ、各前記部品は、前記窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形されるか、または適合する形状に変形することができる、患者別の器具。
(4) 実施態様1〜3のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構の前記部品は、別々の部品である、患者別の器具。
(5) 実施態様4に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構の前記部品は、クリップである、患者別の器具。
【0080】
(6) 実施態様1〜3のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構の前記部品は、同じ構造の部品である、患者別の器具。
(7) 実施態様1〜6のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記本体は、複数の部品を含む、患者別の器具。
(8) 実施態様7に記載の患者別の器具において、
前記本体の各部品は、前記取り付け機構の対応する部分を含み、
前記本体の前記部品の噛み合い形成物が、前記ロック機構をもたらす、患者別の器具。
(9) 実施態様1〜5のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記ロック機構は、前記本体、および前記取り付け機構の前記部品上の噛み合い形成物によりもたらされる、患者別の器具。
(10) 実施態様1〜9のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構は、部分的または全体的に形状記憶材料であり、前記形状記憶材料は、前記器具が前記窩に対して向けられ得る第1の状態と、前記取り付け機構が前記事前に計画された単一の位置でのみ前記器具を前記窩に取り付ける第2の状態との間で移行することができる、患者別の器具。
【0081】
(11) 実施態様1〜10のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構は、少なくとも部分的に形状記憶材料であり、前記形状記憶材料により、前記第1および第2の部品はそれぞれ、前記窩の縁の対応する縁部分の形状に適合する形状へと変形する、患者別の器具。
(12) 実施態様1〜4のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記本体は、フレーム、および前記フレーム内に受容され得るコアを含み、
前記コアは、前記少なくとも1つのガイド形成物を含む、患者別の器具。
(13) 実施態様12に記載の患者別の器具において、
前記ロック機構は、前記フレーム、および前記取り付け機構の前記部品上の噛み合い形成物によりもたらされる、患者別の器具。
(14) 実施態様13に記載の患者別の器具において、
前記コアを単一の位置で前記フレーム内に受容させるリミッター、
をさらに含む、患者別の器具。
(15) 実施態様14に記載の患者別の器具において、
前記リミッターは、前記コアの位置を前記フレームに対して変えるように調節され得る、患者別の器具。
【0082】
(16) 実施態様12に記載の患者別の器具において、
前記フレームは、全体的または少なくとも部分的に弾性材料から作られる、患者別の器具。
(17) 実施態様1〜16のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記器具の部品が、窩に面する表面を含み、前記窩に面する表面は、前記器具が前記事前に計画された単一の位置でのみ前記患者の前記窩に取り付けられる際に前記窩に面する表面が隣接する、前記患者の前記窩の一部の形状に適合するように成形される、患者別の器具。
(18) 実施態様17に記載の患者別の器具において、
前記器具の前記部品は、前記本体および/または前記取り付け部品である、患者別の器具。
(19) 実施態様1〜18のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記患者別の器具は、前記窩へのより良いアクセスを与えるように、前記患者に取り付けられたままで分解され得る、患者別の器具。
(20) 部品のキットにおいて、
実施態様1〜19のいずれかに記載の患者別の器具と、
前記球窩関節形成処置で使用されるべきさらなる構成要素を案内する少なくとも1つのさらなるガイド形成物を有する、さらなる本体と、
を含み、
前記さらなる本体は、前記球窩関節形成処置の異なる工程を実行することができるように、前記器具の前記本体と取り換えられ得る、キット。
【0083】
(21) 患者に対して実行されるべき球窩関節形成処置で使用される患者別の器具を製造する方法において、
前記患者の少なくとも前記窩の3次元画像を表す画像データを取り込むことと、
取り込まれた前記画像データを使用して、前記球窩関節形成処置で使用されるべき位置および/または向きを計画することと、
計画された前記位置および/または向きに向けて構成要素を案内するガイドを提供するために補助的な付属品を使用せずに、互いに組み立てられロックされて事前に計画された単一の位置でのみ前記患者の前記窩に取り付けられることができる複数の部品を有する、患者別の器具をデザインすることと、
前記デザインに従って患者別の器具を作製することと、
を含む、方法。
(22) 骨窩を有する患者に対して球窩関節形成処置を実行する方法において、
前記患者の前記骨窩に対する、計画された位置および/または向きに向けて構成要素を案内する少なくとも1つのガイド形成物を含む、複数の部品を含む患者別の器具を、分解された形態で提供することと、
補助的な付属品を使用せずに、前記ガイド形成物が前記計画された位置に向けて、かつ/または前記計画された向きに沿って構成要素を案内するように位置付けられた状態で、計画された単一の位置でのみ前記器具を前記患者の前記骨窩に取り付けるため、前記器具の前記複数の部品を共に組み立てロックすることと、
前記計画された位置に向けて、かつ/または前記計画された向きに沿って、前記球窩関節形成処置中に使用される構成要素を案内するために前記ガイド形成物を使用することと、
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施形態による器具の平面図を示す。
【図2】図1に示す器具の側面図を示す。
【図3】図1および図2に示した器具の、線AA’に沿った断面図を示す。
【図4】図1に示した本発明の第1の実施形態の変形体の平面図を示す。
【図5】本発明の第2の実施形態による器具の平面図を示す。
【図6】図5に示した器具の側面図を示す。
【図7】関節窩に提示されている第1の状態にある、図5および図6に示した器具の、線BB’に沿った断面図を示す。
【図8】関節窩に取り付けられた第2の状態にある、図5および図6に示した器具の、線BB’に沿った断面図を示す。
【図9】図5に示した本発明の第2の実施形態の変形体の平面図を示す。
【図10】本発明の第3の実施形態による器具の部品の平面図を示す。
【図11】図10に示した器具の部品の側面図を示す。
【図12】図10に示した器具のさらなる部品の平面図を示す。
【図13】図12に示した器具の部品の側面図を示す。
【図14】本発明の第3の実施形態による完全な器具の平面図を示す。
【図15】使用中の、図14に示した器具の側面図を示す。
【図16】図14および図15に示した器具の、線CC’に沿った断面図を示す。
【図17A】本発明の第4の実施形態による器具の平面図を示す。
【図17B】図17Aに示した器具の、線DD’に沿った断面図を示す。
【図18】本発明の第5の実施形態による器具の平面図を示す。
【図19】ドリルを案内するのに使用されている、図18の器具の側面図を示す。
【図20】ねじを案内するのに使用されている、図18の器具の側面図を示す。
【図21】本発明の様々な方法の態様を例示するフローチャートを示す。
【開示の内容】
【0001】
本発明は、整形外科用器具に関し、特に、患者の球窩関節(ball and socket type joint)に対して行われる整形外科処置の一部として使用され得る整形外科用器具に関する。
【0002】
整形外科処置は、関節部分を修復または置換するためにプロテーゼインプラントの使用をしばしば伴う。インプラントの構成要素を受容し、またプロテーゼインプラントを設置し植え込むよう関節を準備するため、様々なツールおよび器具を外科処置で使用する。処置の一環として、処置の意図した効果を達成しようとして、インプラントが、意図した位置および向きで設置されることを確実にしようとすることが重要となり得る。したがって、インプラントを正確に設置し方向付けるのに役立つように、様々な器具およびガイドが整形外科処置中にしばしば使用される。
【0003】
インプラント位置を計画し、インプラントの設置をナビゲートするのを助けるため、コンピューター支援手術(CAS)システムを使用することができる。しかしながら、そのようなシステムは、高価で、必ずしも入手可能とは限らない。また、一部の外科医は、様々な理由から、例えば個人的な手術上の好みのため、または外科医がCASシステムの使用方法を学習しなければならないために、CASシステムの使用に抵抗がある。
【0004】
整形外科処置は、膝関節など、身体のいくつかの関節に対してしばしば行われ、膝の処置を行う上では十分に発達した技術がある。股関節および肩関節の損傷も、整形外科処置がしばしば行われる部位である。しかしながら、球窩関節に対して行われる処置にはしばしば、膝の処置中に生じる難点とは異なる、独自の特定の難点がある。
【0005】
例えば、一部の股関節処置では、重要な工程は、患者の骨盤の寛骨臼にプロテーゼ寛骨臼カップ構成要素を正確に設置することであり得る。カップ構成要素の植え込みの深さおよび/または向きは、股関節処置の成功において重要となり得る。寛骨臼の画像から寛骨臼構成要素を正確に設置するのは困難であり得る。これは、股関節部分の一部が、寛骨臼の準備中にしばしば除去される軟組織、例えば唇状物(labrum)および寛骨臼横靱帯であるためである。よって、寛骨臼カップの設置を案内するのに使用され得る、患者の適切な、または容易にアクセス可能な解剖学的標識点がない場合がある。
【0006】
別の例として、肩関節形成術の重要な工程は、全肩関節プロテーゼ構成要素(total shoulder prostheses components)を正確に位置付けること、および関連する骨準備工程である。関節窩構成要素の位置、向きおよびサイズは、処置の結果を決定する上で重要な要因であり、骨準備器具の不正確な位置付けにより、患者の肩関節の術後可動域が減少する場合がある。特に、外科医は、術前の手術計画に対処しようとして元の場所で(in-situ)骨の準備を行う際に、病理学的に変形した関節窩骨構造のための骨準備器具の適切な位置付けを決定するのがしばしば困難である。
【0007】
外科医は、インプラントのサイズおよび場所を定めるため、患者の解剖学的構造の3次元CT画像データに基づいて手術の立案を行うことができる。CT画像データは、必要な骨準備工程を決定するのに役立つ、患者の正確な解剖学的構造モデルを提供するのにも使用されることができる。変形した関節窩骨関節炎の骨(Glenoid osteoarthritis bone)の必要な傾斜角度修正を判断するためには、一般的には、ただ1つの特定の横断CTスライスをこの立案に使用する。
【0008】
関節窩および上腕骨上における、表面リーミングに使用する外科ツールの案内、ペグ穴の向き、およびMetaglene止めねじの軌跡は、適切なインプラント構成要素のための適切な骨ストック(bone stock)を得るためには、達成するのが困難となり得る。典型的には、手術を受けるべき骨構造の限られた露出のみが、介入のため、ならびに患者の解剖学的構造に関して器具の位置および向きを認識するために、外科医にとって利用可能である。
【0009】
手術計画情報を元の位置で伝達するために先に使用された器具およびテンプレートは、同時に3D画像または定位座標系に関して機能を果たすようにデザインされていない。テンプレートは、以前に使用されていたが、関節窩のサイズおよび中心の情報を視覚的にのみ提示するようデザインされている。骨上のテンプレート位置は、準備器具の計画された位置に関して案内もフィードバックも提供しない。
【0010】
他の器具は、kワイヤおよび/または偏心ドリルビットの入口点の位置のみを対象とするようにデザインされており、例えば関節窩および肩甲骨の平面に対する、向きの情報を使用するようにはデザインされていない。
【0011】
したがって、球窩関節に対する関節形成術では、処置中に使用される器具を案内するため向きの位置(orientation position)が提供されるように、計画されたインプラント位置を手術野に伝達することが著しく困難である。
【0012】
よって、球窩関節に対して行われる整形外科処置を改善するのに使用され得る器具を提供することが有益である。
【0013】
本発明の第一の態様によると、患者に対して行われるべき球窩関節形成処置で使用される患者別の器具(patient specific instrument)が提供される。この器具は、器具を患者の窩に取り付ける取り付け機構を含むことができる。取り付け機構は、患者の窩の縁に係合することができる、少なくとも第1および第2の部品を有し得る。各部品は、窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形され得る。器具は、肩関節形成処置で使用されるべき構成要素を案内するための、少なくとも1つのガイド形成物を有する本体も含むことができる。器具は、ロック機構をさらに含んでよく、ロック機構により、本体および取り付け機構が患者別の器具へと組み立てられ得る。組み立てられると、患者別の器具は、事前に計画された単一の位置においてのみ、患者の窩に取り付け可能とすることができる。
【0014】
取り付け機構が患者の骨窩(bony socket)の縁の少なくとも2つの部分の形状に適合するように構成されており、また、取り付け機構が骨窩に正確に位置付けられ据え付けられた場合に器具の構成要素が単に共に組み立てられロックされて器具を形成することができるので、器具は、窩に対して自動的に正確に設置される。そうでない場合、器具は、その部品と、器具の取り付け部品の患者の解剖学的構造に特異的な形状とがインターロックする性質のために、組み立てることができない。さらに、窩自体が組立状態にある器具の構造的安定性に貢献するので、器具は、窩の縁に据え付けられると組み立てられた状態にとどまる。
【0015】
患者の窩または骨窩は、器具が取り付けられ得る1つまたは複数の十分な縁部分を有する、任意の解剖学的陥没部であってよい。例えば、窩は、患者の関節窩または寛骨臼であってよい。
【0016】
ロック機構は、器具の構成要素の部分もしくは部品の形状によって全体的にまたは少なくとも部分的に提供され得る。すなわち、器具の構成要素を共に組み立ててロックするためには、いかなる補助的または別個の付属品も必要ではない。ロック機構は、インターロック機構であってよく、かつ/またはロック機構の部品が、インターロック機構であってもよい。ロックまたはインターロック機構は、器具の1つまたは複数の部品の形状により提供され得る。1つまたは複数のロックまたはインターロック機構は、完全に機械的であってよい。1つまたは複数のロックまたはインターロック機構は、器具が単一の独特の構成のみで組み立てられ得るように構成または配列され得る。器具の構成要素の一部またはすべてが、1つの方法で、構成要素のうちの1つまたは複数の他のものに取り付け可能または接続可能であってよい。
【0017】
本体は、種々の構成要素を案内するため複数のガイド形成物を含むことができる。したがって、器具を再構成または調節する必要なしに、同じ器具を使用して、処置の種々の段階中に使用される構成要素を案内することができる。
【0018】
このガイド形成物または各ガイド形成物は、孔またはチャネルの形態をしていてよい。このガイド形成物または各ガイド形成物は、関節形成処置中に使用される様々な異なる構成要素、ツール、準備器具、付属品もしくは器具を、使用中に受容するように構成され得る。例えば、このガイド形成物または各ガイド形成物は、kワイヤ、ドリルビット、骨準備器具、リーマー、バードリル(burr)、ねじ、ピンまたはプラグを案内するように構成され得る。
【0019】
取り付け機構は、少なくとも3つの部品を含んでよく、各部品は、窩の縁に係合することができ、各部品は、窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形されている。3つの部品は、窩への器具の取り付けを安定させるのに役立つ。また、3つの部品を使用することで、部品が窩の縁の対応する部分に独自に取り付け可能であることを確実にするのに必要とされる部品のサイズを低減することができる。
【0020】
取り付け機構の部品はそれぞれ、窩の縁の周縁部周りの方向、および/または窩の縁の周縁部に概ね横向きの方向において、窩の対応する部分の形状に適合するように成形されることができる。
【0021】
取り付け機構の部品は、別々の部品であってよい。取り付け機構の部品は、クリップの形態であってよい。
【0022】
取り付け機構の部品は、同じ構造の部品であってよい。すなわち、それらはすべて、大きな構造体の一体的部品として形成され得る。
【0023】
本体は複数の部品を含むことができる。本体の複数の部品のうちの1つは、複雑な形状の表面を有してよく、この表面は、本体の複数の部品のうちの別の部品の、適合する形状の表面と噛み合うことができ、本体は、単に、単一の独自構成で組み立てられることができる。本体は、円形、楕円体、丸形、または卵形など、概ね湾曲した形状を有することができる。
【0024】
本体の各部品は、取り付け機構のそれぞれの部分を含み得る。すなわち、取り付け機構の一部は、本体部品の一体的部品として提供され得る。本体の部品の噛み合い形成物(Mating formations)が、ロック機構を提供することができる。噛み合い形成物は、1つまたは複数の突起と、その突起を受容するように成形された1つまたは複数の凹部と、を含むことができる。
【0025】
取り付け機構は、本体または本体の部品に対して完全に別個の1つまたは複数の部品として設けられ得る。
【0026】
ロック機構は、本体および取り付け機構の部品上の噛み合い形成物によって提供され得る。この噛み合い形成物または各噛み合い形成物は、1つまたは複数の突起と、その突起を受容するように成形された1つまたは複数の凹部と、を含み得る。
【0027】
取り付け機構は、部分的または全体的に形状記憶材料であってよい。形状記憶材料は、器具が関節窩に向けられ得る第1の状態と、取り付け機構が事前に計画された単一の位置で器具を関節窩に取り付ける第2の状態との間で移行することができる。形状記憶材料は、それが第2の状態で取り付けられることが意図される関節窩の一部の形状に適合する形状を有し得る。形状記憶材料で作られていない取り付け機構の部品は、それが取り付けられることが意図される関節窩の一部の形状に適合する形状を有し得る。
【0028】
取り付け機構は、少なくとも部分的に形状記憶材料であってよい。形状記憶材料により、取り付け機構の部品のうち1つもしくは複数またはそれぞれが、窩の縁の対応する縁部分の形状に適合する形状へと変形することができる。
【0029】
本体は、フレーム部品を含むことができる。本体は、コアをさらに含み得る。コアは、フレーム内に受容可能であってよい。コアは、少なくとも1つのガイド形成物を含み得る。フレーム内のコアの代わりとなり得る、さらなるコアが設けられてもよい。このさらなるコアは、さらなるガイド形成物を含むことができる。
【0030】
ロック機構は、フレーム、および取り付け機構の部品上の噛み合い形成物により提供され得る。噛み合い形成物は、1つまたは複数の突起と、その突起を受容するように成形された1つまたは複数の凹部と、を含むことができる。
【0031】
患者別の器具は、リミッター、またはキーイング構成要素(keying component)をさらに含んでよく、コアを単一の位置でフレーム内に受容させる。リミッターは、機械的停止部の形態をしていてよい。リミッターは、コアがフレームに対して回転するのを防ぐことができる。リミッターは、コアの位置をフレームに対して変えるように調節可能であってよい。リミッターは、フレームから取り外し可能であってよい。
【0032】
フレームは、全体的に、または少なくとも部分的に、弾性材料から作られていてよい。取り付け機構の部品は、フレームの部品として提供され得る。フレームは、器具が組み立てられて関節窩に取り付けられると取り付け機構の部品を窩の縁の周りに係合させるように作用することができる。
【0033】
器具の部品は、窩に面する表面を含むことができ、窩に面する表面は、器具が事前に計画された単一の位置のみで患者の窩に取り付けられた場合に窩に面する表面が隣接する、患者の窩の一部の形状に適合するよう成形されている。窩の一部は、窩の内部空洞に向かっているか、または窩の内部空洞から離れている、窩の内部空洞の表面の一部または窩の縁に隣接する窩の一部であってよい。器具の部品は、本体の一部または全体、あるいは本体の一部であってよい。器具の部品は、1つの、複数の、またはすべての取り付け部品の一部または全体、あるいは、取り付け部品の一部であってよい。
【0034】
患者別の器具は、元の位置で分解され得る。すなわち、器具は、手術部位へのより良好なアクセスを提供するよう、患者の骨に取り付けられたまま分解されることができる。ロック機構は、器具が分解されるように構成され得る。ロック機構は、少なくとも1つの、または複数のインターロック部品を含んでよく、あるいは、完全にインターロックする部品(entirely interlocking parts)を含むことができる。
【0035】
本発明は、部品のキットも提供し、これは、本発明の先の態様による患者別の器具と、球窩関節形成処置で使用されるべきさらなる構成要素を案内する少なくとも1つのさらなるガイド形成物を有する、さらなる本体と、を含む。さらなる本体は、関節形成処置の異なる工程を実行できるように、器具の本体の代わりとなることができる。したがって、モジュラーシステムが提供され、本体を入れ替えることを可能にし、外科処置の種々の工程中に使用される種々の構成要素、ツール、器具、付属品および他の部品を案内することができる。
【0036】
本発明のさらなる態様によると、患者に対して行われるべき球窩関節形成処置で使用される患者別の器具を製造する方法が提供される。この方法は、患者の少なくとも骨窩の3次元画像を表す画像データを取り込むことを含み得る。球窩関節形成処置で使用されるべき位置および/または向きが、取り込んだ画像データを用いて計画され得る。複数の部品を有する患者別の器具がデザインされ得、それらの部品は、計画された位置および/または向きのほうへ構成要素を案内するガイドを提供するために補助的な付属品を使うことなく、事前に計画された単一の位置のみで患者の窩に取り付けられるように、共に組み立てられロックされることができる。患者別の器具は、そのデザインに従って作られ得る。
【0037】
球窩関節は、肩関節または股関節であってよい。例えば、患者の肩関節または股関節のCT画像を取り込むことができる。プランニングソフトウェアを使用して、外科処置中に使用されるべき位置および/または向きを計画することができる。この位置および/または向きは、関節窩プロテーゼ構成要素または寛骨臼カッププロテーゼ構成要素のためのものであってよい。この位置および/または向きは、インプラントを受容するよう関節窩を準備するための器具を案内するために外科処置中に使用されるべきkワイヤのためのものであってよい。患者別の器具は、本発明の第1の態様に関連して前述した特徴のいずれか、または特徴の組み合わせを有してよい。患者別の器具は、ラピッドプロトタイピング技術など、様々な技術を使用して作製または製造され得る。
【0038】
本発明のさらなる態様によると、骨窩を有する患者に対して球窩関節形成処置を行うための方法が提供される。この方法は、分解形態で患者別の器具を提供することを含み得る。この器具は、患者の骨窩に対する計画された位置および/または向きに向けて構成要素を案内する少なくとも1つのガイド形成物を含む、複数の部品を含み得る。器具の複数の部品は、いかなる補助的な付属品も使用することなく、ガイド形成物が計画された位置に向かって、かつ/または計画された向きに沿って構成要素を案内するように位置付けられた状態で、事前に計画された単一の位置のみで器具を患者の窩に取り付けるように、共に組み立てられロックされることができる。ガイド形成物は、計画された位置に向かって、かつ/または計画された向きに沿って球窩関節形成処置中に使用される構成要素を案内するのに使用され得る。
【0039】
本発明の実施形態を、ほんの一例として、添付図面を参照して説明する。
【0040】
種々の図面中の同様のアイテムは、他に指定のない限り、共通の参照符号を有している。
【0041】
本発明の実施形態は、肩関節形成処置および関節窩との関連で以下に論じられるが、本発明は、寛骨臼上での股関節形成処置にも使用され得ることが認識されるであろう。一部の股関節形成処置は、患者の寛骨臼に寛骨臼カップ構成要素を設置することを伴う。カップを正確に角度を付けて位置付けることは、その傾斜/前傾、および勾配の観点から、股関節処置の成功における重要な要因となり得る。したがって、本発明の患者別の器具は、寛骨臼の準備中、および/または患者の骨盤に対する計画された角度のある向きでの寛骨臼カップの設置中に使用されるツールまたは器具を案内するために、寛骨臼上で使用されることができる。
【0042】
本発明の器具は、その器具が使用される患者に合わせてカスタマイズされる。例えばインプラントを受容する手術部位で骨を準備するために、関節形成処置中に使用する器具を正確に設置することによって、事前に計画したインプラント位置を正確に「伝達(transfer)」しようと試みる上で外科医が経験する問題に対処するため、器具は、患者の解剖学的構造、そして患者別の手術計画に基づいてカスタマイズされる。
【0043】
提供される器具は、個々の患者の解剖学的構造、およびその患者用の特定の手術計画に合わせてカスタマイズされ、1つまたは複数のテンプレートの形態をしており、このテンプレートは、固定ピンもしくはねじなどの補助的な付属品を使用せずに、例えば縁にクリップ留めすることによって、骨窩、例えば関節窩または寛骨臼、に手術中に取り付けられることができる。器具は、特別に形成された複数の部品として提供され、その部品は、共に組み立てられロックされることができ、器具は、単一の独自の位置でのみ関節窩または寛骨臼に取り付けられることができ、器具が正確に位置付けられて、手術計画が実行される。器具は、器具を意図した位置以外の位置で取り付けようとした場合には組み立てることができず、かつ/または組み立てられた状態にとどまらないので、器具は、術前計画に対して元の位置で不正確に位置付けられているという表示を自動的に提供することができる。
【0044】
器具、またはテンプレート部分(templating portion)は、関節窩表面縁の損傷で生じる関節窩骨関節炎に必要な傾斜角度修正を考慮に入れるように構成され得る。
【0045】
図1を参照すると、関節窩(2)を有する肩甲骨(1)の平面図が示されており、本発明の第1の実施形態による器具(100)は、使用中に関節窩(2)に取り付けられる。図2は、kワイヤ(9)を案内するのに使用されている器具(100)の側面図を示し、図3は、線AA’に沿って器具(100)を貫通した断面図を示す。器具(100)は、第1の部品(16)および第2の部品(17)で形成された主要本体を有する。本体の第2の部品は、図2に示すようにkワイヤ(9)を受容するようにサイズ決めされた孔(8)を含む。図3に示すように、孔(8)は、関節窩に対する位置を有し、関節窩に対する向き、すなわち角度方向、も有する。器具は、関節窩に対する孔(8)の位置および関節窩に対する孔(8)の向きが、関節窩インプラント構成要素の植え込み中に後で使用される器具を案内するためにkワイヤが関節窩に挿入されるべき、計画された位置および向きに対応するように、器具が患者の関節窩に単一の方法で取り付けられ得ることを確実にするため、製造中にカスタマイズおよび事前構成されている。
【0046】
図1に示すように、本体の第1の部品(16)および第2の部品(17)は、対応する形状の凹部と係合できるタブもしくは突起の形態をしたインターロック形成物(14、14c)によって取り付けられる。突起および凹部は、ジグソーパズルで使用されるものに類似している。さらに、突起および凹部は、器具本体のこれら2つの部品が解放可能に共にしっかりと留められロックされるように、締まりばめをもたらす。
【0047】
器具(100)はまた、図3で最もよく分かるように、概ね対向した一対のクリップ(102、104)の形態をした取り付け機構を含む。クリップ部分は、主要本体の部品それぞれの下方部分から延びている。取り付け機構の各部分、すなわちクリップ(102、104)は、クリップを取り付けることが意図された関節窩(3)の縁部分にわたり、関節窩の表面の縁(3)の形状に適合する形状を有する。クリップの形状は、図3に示す概ね横向きの方向と、図3に示すような関節窩の縁(3)の周囲の一部に沿って延びる側方向(lateral direction)との双方で、関節窩の縁の形状に適合する。すなわち、クリップは、図1に示す平面で湾曲し、関節窩の縁部分の周辺形状に適合する。クリップはまた、図3に示す平面において縁の横方向形状に適合するように湾曲している。クリップの形状は、かなりの部分にわたり、図3に示す横方向において縁の形状に適合している。他の実施形態では、クリップの形状は、関節窩の空洞内へとさらに延びてよく、あるいは、実際、器具の主要本体の部分は、関節窩の内側表面の形状にも適合して、関節窩の適切な部分との、器具の自由な部品(free parts)の位置合わせをさらに改善することができる。
【0048】
使用中、外科医は、器具の第1の部品(16)を取り、そのクリップ部分を、ぴったり嵌まるまで関節窩の縁の周りに設置する。クリップの形状は、感触だけで関節窩の縁の形状に適合するので、外科医は、いつ第1の部品が適切に設置されたのかを判断できなければならない。次に、外科医は、器具の第2の部品(17)のクリップを、関節窩の縁に向け、関節窩の縁に対してそのクリップがぴったり嵌まる場所はやはり1つである。外科医は次に、器具の第1および第2の部品を操作して、タブ(14、14c)を、それら部品のうち他方の適合する凹部に係合させ、器具が関節窩に取り付けられる際に器具を組み立ててインターロックすることができる。第1または第2の構成要素が関節窩に取り付けられ得る場所が複数ある場合、不正確に位置付けられた第1のピースのために、2つの構成要素のうちの他方が、関節窩の縁の局所形状に適合しない可能性があり、ゆえに、器具を組み立てることができない。したがって、器具の形状をカスタマイズし、独自に定められた単一の位置に置かれている場合に限られるが器具の別々の部品を組み立てることができる、インターロック機構を提供することによって、関節窩上への器具の位置付けは、単にその形状によって自動的に決定される。また、インターロック機構およびクリップは、器具を関節窩に固定するためにさらなる器具が必要でないことを意味している。すなわち、固定ピンまたはねじなどの、器具とは別個の補助的な付属品は必要ない。
【0049】
孔(8)は、ガイド形成物を提供し、ガイド形成物によって、外科処置で使用するさらなる構成要素または器具が、その意図した位置および向きへと案内され得る。ガイド形成物(8)は、器具の本体に対して動くことができないので、いったん器具が事前に計画された独自の位置で組み立てられると、孔(8)の位置および向きも独自に定められる。したがって、図2に示すように、kワイヤ(9)は、ガイド形成物孔(8)を通って、関節窩の後ろの骨ストック(10a)に挿入され得る。次に、器具の部品は、分解され、関節窩から取り外されてよく、kワイヤが所定の場所に残る。kワイヤは、次に、カニューレ状リーマーなどの他の器具、または肩関節形成処置で使用される他の構成要素を案内するのに使用され得る。
【0050】
kワイヤの向きは、関節窩表面縁(3)上の少なくとも最も前方、後方および/または上方、下方の部位によって画定された関節窩平面を考慮に入れるよう、外科医が事前に計画する。ガイド孔(8)の傾斜角度は、肩甲骨の横軸と中央関節窩空洞平面(mid-glenoid cavity level)の前後面との間の角度により定められる、関節窩表面の軸方向勾配として定められる。ガイド孔(8)の傾きは、肩甲骨の横軸と関節窩の上下面との間の角度により定められる、関節窩の垂直な向きとして定められる。したがって、kワイヤ(9)がガイド孔(8)を通って肩甲骨上に設置されると、その位置は、事前に計画した入口点、ならびに事前に計画した傾きおよび傾斜角度の向きに従ったものとなる。次に、カニューレ状リーマー、または他の骨準備器具は、器具(100)が分解された後で、kワイヤ上に設置され得る。したがって、kワイヤの設置を案内することにより、その後の器具および構成要素がより正確に位置付けられ、かつ、計画された傾斜および傾きがより正確に再現されることができる。
【0051】
図4は、図1、図2、および図3に示した器具(100)のバリエーション(110)を示す。器具(110)は、2つのインターロック部品(16a、17a)を含む主要本体と、関節窩の縁形状に適合する2つのクリップの形態をした取り付け機構とを含む点で、器具(100)に類似している。本体の2つの部品(16a、17a)は、複数対の噛み合う突起および凹部(14、14c)によって同様にインターロック可能であり、器具の本体は、3つの孔(112、114、116)の形態のガイド形成物を有する。この3つの孔(112、114、116)は、アンカーペグを関節窩に突き通す(drilled into)ために、ドリルビットを案内するガイド形成物を提供する。したがって、この器具は、図1、図2、および図3に示す器具と同様に動作するが、肩関節形成処置で使用される異なる構成要素が、第1の器具(100)により案内されるように案内されることを可能にする。器具(110)は、偏心アンカーペグの正確な位置付けを可能にする、専用のテンプレートである。これにより、外科医は、処置中に、より信頼性のある骨穿孔工程(more reliable bone drilled step)を形成することができる。ドリルガイド形成物(112、114、116)は、利用可能な骨ストックを、より良好に使用するために、事前に計画されたインプラントのサイズ、向き、および位置に対応する。
【0052】
肩関節形成処置に使用される器具(120)の第2の実施形態が、図5、図6、図7、および図8に示されている。この器具は、第1の器具と概ね同様に動作する。しかしながら、本発明の器具の第2の実施形態(120)は、孔(8)の形態をしたガイド形成物を有する単一本体部品(15)を有する。器具(20)は、第1の部品(4a)および第2の部品(5a)を含む取り付け機構を含む。取り付け機構の部品(4a、5a)は、突起(14a、14b)を含み、突起(14a、14b)は、本体(15)の、対応する形状の凹部に受容されるので、器具の部品は、使用中、互いにインターロックされて器具を組み立てることができる。図7および図8に最もよく示されているように、取り付け機構の第1の部品(4a)および第2の部品(5a)はそれぞれ、2つの部品構造を有する。第1の部品(4a、5a)は、突起(14a、14b)を有し、この突起により、取り付け機構は、本体(15)とインターロックされる。図7で見ることができるように、取り付け機構の主要部分(4a、5a)は、関節窩に面する表面(4c、5c)の少なくとも一部を含み、これは、関節窩の縁(3)の一部の局所形状に適合するように成形される。主要部分(5a、4a)それぞれの外側端部から延びているのは、形状記憶材料から作られたクリップ部分(4b、5b)である。クリップ部品(4b、5b)は、様々な合金または形状記憶プラスチックなど、任意の適切な形状記憶材料から作られてよい。例えば、Nitinolという名前で提供されている合金を使用することができる。形状記憶材料のクリップ(4b、5b)は、図7および図8を参照してさらに詳細に説明するように、関節窩の縁の局所部分の元の形状を取り戻すことにより、関節窩の縁(3)上への器具の取り付けを確立するのに使用される。
【0053】
図7および図8で見ることができるように、内側表面縁部位の特定の場所に係合する取り付け機構の主要部品(4a、5a)は、その表面縁部位の局所形状に適合するように成形された表面(4c、5c)を有する。図7は、器具が関節窩に対して向けられる第1の状態にある、器具(120)を示す。形状記憶材料のクリップ(4b、5b)は、その形状を取り戻していない。この状態で、器具の位置付けのいくらかの微調整が可能である。しかしながら、取り付け機構の主要部分(4a、5a)の形状、ならびに、取り付け機構および本体(15)のインターロックされた組立体は、器具が一般に、関節窩に対して正確な位置に自動的に位置することを意味する。
【0054】
器具が最終的に位置付けられた状態で、形状記憶材料のクリップの温度を変化させることにより、クリップは、元の形状を取り戻して、図8に示されるように、関節窩の縁の周りでクランプし、器具(120)を事前に計画された位置にしっかりと取り付ける。形状記憶材料のクリップ(4b、5b)は、取り戻した形状が、図8に示す横方向、また、図5に示すような長さ方向において関節窩の縁の周囲の周りで、関節窩の縁の形状に適合するように、事前に設計されている(pre-engineered)。したがって、いったん形状記憶クリップが元の形状を取り戻そうとすると、器具の誤った位置付けが明らかになり、器具の緩みまたは不正確なクランプを結果として生じる。その後、器具は、単に形状記憶材料のクリップの温度を再び変化させることによって、再び位置付けられることができる。正確に位置付けられていると仮定して、図8は、事前に計画された位置で関節窩表面の縁(3)上にぴったり接続された(form fit connected)器具(120)を示し、ガイド形成物(8)の位置および向きも計画通りである(as planned)。したがって、前述したものと同様に、kワイヤ(9)は、事前に計画された位置および向きでガイド孔(8)内に導入されて、肩関節形成処置で後に使用される器具およびインプラントをより正確に位置付けることができる。
【0055】
図9は、本発明の第2の実施形態のモジュール式態様を示す。このバリエーションでは、器具(130)は、取り付け機構が同一である点で図5に示す器具(120)と類似しているが、器具(120)の本体(15)は、異なるガイド形成物を有する異なる本体(15a)と置き換えられている。図9に示すように、本体(15a)は、ドリルガイドとして作用する3つの孔を有しており、これらによって、アンカーペグを位置させるよう穿孔工程を達成することができる。よって、本発明のこの実施形態は、よりモジュール式のシステムを提供し、このシステムでは、同じ取り付け機構を使用するが、取り付け機構の内外で種々の本体を取り換えて、処置中の種々の工程を案内するための種々のテンプレートを提供することができる。
【0056】
前述したように、取り付け機構の一部のみが形状記憶材料から作られるが、他の実施形態では、取り付け機構の他の部分または全体が、形状記憶材料から作られてよく、取り付け機構の関節窩表面形状適合部分の一部またはすべてが、第1の状態と、取り付け部分が取り付けられる予定の関節窩の縁の形状に適合する形状を取り付け機構の関節窩係合部分が有する第2の状態と、の間で移行し得ることが、認識されるであろう。
【0057】
器具(120、130)の第2の実施形態は、制限された側方露出により関節窩の準備が行われる標準的な(三角筋胸部(delto-pectoral))前方アプローチの範囲内で、より組み立てやすい。器具の組み立て中、一対の取り付け機構クリップ(4a、5a)は、最初に、関節窩縁部位上に置かれ、次に、主要本体(15、15a)が、側方向から導入され、突起と孔とを係合させるように操作されて、器具の部品が互いにインターロックされ、器具が、関節窩に対して、事前に計画された単一の位置で取り付けられる。突起(14a、14b)、および主要本体(15)の適合する孔の形状は、取り付け機構の2つの部分で異なるので、器具を、図5に示す方法以外の任意の他の方法で組み立てることができず、例えば、主要本体が図5に示す向きに対して約180°回転された状態で、器具を組み立てることはできない。したがって、インターロック機構の形態は、器具が組み立てられ得る方法を独自に定めることにも貢献する。
【0058】
図10〜図15を参照すると、本発明による器具(140)の第3の実施形態が示されている。器具(140)は、取り付け機構と、ガイド形成物を有する本体と、を含み、器具の部品がインターロックされて、器具を患者の関節窩上の単一の位置に独自に取り付けることができる点で、本発明の先に述べた実施形態に類似している。
【0059】
図10および図11に示すように、取り付け機構は、一対のクリップ(4、5)を含む。各クリップ(4、5)は、表面部分を有し、この表面部分の形状は、関節窩縁部分にわたり、関節窩縁表面の形状に適合する。クリップの形状は、図11に示す横方向、および図10に示す縁周縁部の周りに延びる長さ方向のどちらでも、関節窩の形状に適合する。各クリップ(4、5)は、組み立ての一環として突起を受容し、また、器具の部品をインターロックする、凹部を含む。図12および図13に示すように、器具の本体は、フレーム(6)を含み、このフレームは、中央孔と、フレーム(6)のほぼ対向する外側表面部分から延びる突起(14d、14e)とを有する円形リングの形をしている。突起(14d、14e)は、取り付け機構のクリップ部分(4、5)の、対応する形状の凹部に受容されるように成形される。図12は、事前に計画された単一の独自の位置で器具を関節窩に取り付けるように、取り付け形成物に取り付けられ、取り付け形成物とインターロックする、フレーム(6)を示す。図14に示すように、器具の本体は、フレーム(6)の中央孔内部に据え付けられ得る中央コア(7)も含む。本体のコア(7)は、図15に示すようにkワイヤ(9)を受容し、かつその位置付けを案内する孔(8)の形態をした、ガイド形成物を含む。
【0060】
器具(140)は、フレーム(6)内部でコア(7)の回転を制限するのに使用され得るリミッター装置(11)も含む。図14に示すように、リミッター装置は、フレーム(6)の内壁内部の凹部に受容され得る、ほぼ円形断面のペグ部材を含む。同様に成形された凹部が、コア(7)の外壁に設けられ、コア(7)は、単一の向きでフレーム(6)内に位置することができる。したがって、これにより、コア(7)がフレーム(6)内で回転するのが妨げられる。しかしながら、状況によっては、コア部品(7)の回転による微調整(rotational fine adjustment)が望ましい場合もある。そのような場合には、ペグ(11)を、フレーム(6)とコア(7)との間から取り外し、コア(7)をフレーム(8)内部で回転させて、ガイド形成物(8)の位置をわずかに調節することができる。
【0061】
使用中、まずクリップ(4、5)を、関節窩の縁上に位置付ける。クリップの、関節窩縁表面に適合する形状は、クリップが、事前に定められた単一の位置で関節窩の縁上にぴったり設置され得ることを意味している。次に、図13に示すように、フレーム(16)は、クリップの対応する凹部に受容される突起(14dおよび14e)によってクリップ(4、5)に取り付けられて、器具の部品をインターロックし、定め直された単一の位置で器具を関節窩に取り付ける。突起(14d、14e)は、異なる形状を有し、これにより、図12に示すものと異なる向きでフレーム(6)が取り付けられることが妨げられる。したがって、やはり、器具は、関節窩上の、予め定められた単一の位置で正確に設置されたときに組み立てられ得るにすぎないので、器具の部品の幾何学的形状により、不正確な方法で器具が偶発的に組み立てられることが妨げられる。次に、器具の本体のコア部品(7)を、フレーム(6)に挿入してガイド孔(8)を位置付けることができ、孔(8)は、kワイヤ(9)を、関節窩に対して予め計画された入口点および予め計画された向きにするのに使用され得る。
【0062】
第2の実施形態と同様に、器具の種々のコア部分(7)は、肩関節形成処置の他の工程中に後で使用される種々の部品および構成要素の位置付けを案内する異なるガイド形成物を有して、設けられ得る。
【0063】
第3の実施形態の特定の利点は、制限された側方露出を用いて関節窩の準備を行わなければならない三角筋胸部前方アプローチ内で、取り付け機構の小さいクリップ部分(4、5)が容易に設置され得ることである。クリップ部品(4)は、関節窩の縁の後方表面に酷似するように成形され、クリップ部品(5)は、縁表面の少なくとも前方部分に適合するように成形される。クリップ要素(4、5)はそれぞれ、単一のユニット位置(single unit position)で関節窩の縁上にぴったり位置することができる。
【0064】
図17aおよび図17bは、本発明による器具(150)の第4の実施形態を示す。器具(150)は、本発明の第1〜第3の実施形態と概ね類似している。器具(150)は、3つのクリップ(152、154、156)を含む取り付け機構を含み、クリップはそれぞれ、関節窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形される。クリップ(152、154、156)は、第1の部品(158)および第2の部品(160)を含む、ほぼ楕円の形状の(generally overall shaped)フレーム上に据え付けられる。フレームの第1および第2の部品(158、156)は、器具の主要本体(162)を受容できる中央孔を備えたほぼ楕円の形状を形成するように取り付け可能である。器具の本体は、第1の部分(164)および第2の部分(166)を含む。本体のこれらの部分のそれぞれの係合面は、図17aの線(168)で示される複雑な形状に対応する、互いに適合する形状を有している。本体の2つの部分を互いに組み立てて概ね楕円の形状にし得る、表面形状の複雑な性質は、本体の2つの部品が、器具のフレーム内部に嵌まるために互いに組み立てられ得る方法がただ一つであることを意味している。
【0065】
器具の本体は、使用中にkワイヤを受容する、円形孔の形態をした第1のガイド形成物(170)を有する。本体は、ほぼ三角形の構成に配列された3つの円形孔(172、174、176)の形態をした、第2のガイド形成物も有する。第2のガイド形成物は、第1のガイド形成物(170)を使用する工程とは異なる、肩関節形成処置の工程中に、ペグまたは他のインプラント付属品設置のためドリルを案内するのに使用され得る。したがって、器具(150)は、器具の部品を再組み立てまたは交換する必要なしに、種々の器具の設置を案内するのに使用され得る。
【0066】
器具(150)はまた、種々のガイド形成物を有する、取り換え可能な種々の本体部品と共に使用されてよく、種々の本体は、使用中に依然として関節窩に取り付けられた状態で、フレームの内外で取り換えられ得る。
【0067】
図17bに最もよく示されているように、器具の他の部品は、器具を確実に位置付けるために関節窩の形状に適合するようカスタマイズされている。図17bに具体的に示されるように、器具の本体の関節窩に面する後部の表面(180)も、関節窩空洞部位の少なくとも一部にわたり関節窩空洞の表面形状に概ね適合する表面形状を呈するように、カスタマイズされている。したがって、クリップ(152、154、156)によって取り付けられている際に器具のフレームが誤って位置付けられていたとしても、器具の本体は、その位置での関節窩の表面形状と本体の表面形状との不適合により、フレーム内部に適切に受容されることができない。さらに、本体の2つの部分間の複雑な境界面により、本体のこれら部分の相対的なスライドが妨げられて、本体の部品の相対的な位置付けをいくらか安定(settling)または再調節することができる。したがって、やはり、器具の幾何学的形状により、器具が事前に計画された単一の位置以外の任意の位置で関節窩に取り付けられる際に、器具が正確に組み立てられることおよび器具の部品がインターロックすることが妨げられる。
【0068】
図18、図19および図20は、本発明による器具の第5の実施形態を示す。この第5の実施形態は、先に論じた実施形態とほぼ類似している。器具(190)の第5の実施形態は、ほぼ楕円のフレームの形態をした取り付け機構を含み、フレームは、上部、下部、左側および右側の位置でフレームから延びる4つのクリップを有する。上部、下部、および右側のクリップ(192、194、196)の部品は、図19で見ることができる。4つのクリップは、器具が事前に計画された位置で関節窩上に設置される際に、関節窩の縁の対応する部分の表面形状に適合するように成形される。取り付け機構のフレーム部分(200)は弾性材料で作られ、クリップ部分は、使用中に器具を関節窩にしっかり取り付けるよう、関節窩の縁に向けて付勢される。器具(190)は、第1の部品(204)および第2の部品(206)を有する本体(202)を含む。本体(202)は、肩関節形成処置中、kワイヤまたはドリルビットなどの構成要素を案内するため、円形孔(208)の形態をしたガイド形成物を含む。本体(202)は、ほぼ楕円の形状を有し、2つの部品(204、206)は、適合する複雑な形状(210)の面を有する。このように、部品(204、206)は、正確に整列された場合に、ほぼ楕円の形状へと互いに組み立てられ得るに過ぎない。その後、主要本体(202)は、器具のインターロック部品を共に引っ張るフレーム(190)内部における摩擦嵌めまたは締まり嵌めによって受容および保持され得る。
【0069】
図19は、使用中に関節窩上に組み立てられ、ガイド孔(208)を通り抜けるドリルビット(210)を用いた穿孔を案内する、器具(190)の側面図を示す。
【0070】
図20は、ねじ(220)の設置を案内するのに使用されている器具(190)の側面図を示す。この変形において、器具の本体(202)は、第2の本体(230)で置き換えられており、第2の本体(230)は、同様の一般的形状を有するが、ねじ(220)を受容し、そのねじの設置および向きを案内するのに適した、異なるガイド形成物(234)を備える。
【0071】
図21は、本発明の様々な方法態様を例示するフローチャートを示す。図21に示す方法の様々な工程は、先に説明したように、カスタマイズされた患者別のインプラントの製造および使用の双方をカバーしている。最初の工程(300)では、患者を撮像して、少なくとも患者の肩関節、特に関節窩の3D画像を含む3D画像データを取り込む。様々な撮像モダリティーを使用することができる。特定の実施形態では、患者の肩関節の3DのCT画像を取り込み、患者の肩関節の3D画像を表すデータを格納する。
【0072】
次に工程302で、外科医は、プランニングソフトウェアを使用して、肩関節形成処置を計画する。これは、インプラント構成要素のサイズ、患者の骨に対するそれらの位置および向きを計画することを含み得る。具体的には、全肩関節形成術の関節窩構成要素のサイズ、位置および向きを計画することができる。ソフトウェアは、患者の肩関節の3D画像を使用し、外科医は、適切なサイズの関節窩構成要素を選択し、その意図された植え込み位置および向きを決定して、外科医の目的を達成することができる。関節窩構成要素の意図された位置および向きを計画することにより、ソフトウェアは、外科処置中に使用される器具類を設置するための理想的な位置および向きを決定する情報を入手できる。よって、ソフトウェアは、処置中に使用される他の器具類の位置付けおよび向きを案内するために、kワイヤを関節窩内に導入するべき、最適な位置および向きを決定することができる。
【0073】
次に工程304では、工程302でプランニングソフトウェアから得た計画情報と、患者の関節窩の形状を定める患者の画像からの情報とを使用して、患者別の器具がデザインされる。したがって、ソフトウェアアプリケーションが、器具の取り付け形成物部品、および、器具が事前に計画された単一の位置で取り付けられる関節窩部分の局所形状に適合するよう患者別となるように形状がデザインされた、器具のその他の部品の任意のものの適切な形状を決定することができる。次に、器具の計画された単一の取り付け位置では、関節窩に対する器具の意図した位置が固定されており、また、関節窩に対するkワイヤの位置および向きが先に計画されているので、器具のガイド形成物の位置および向きが決定され得る。したがって、工程304で、器具のデザインを作成することができる。
【0074】
次に、器具のデザインを使用して、そのデザインに従って器具を製造し、患者の特定の解剖学的形状、および患者の特定の計画された外科処置に合わせて、カスタマイズする。様々な技術を使用して、器具を製造することができる。例えば、ラピッドプロトタイピング型の技術を使用することができる。器具自体は、金属、合金、プラスチック、ポリマーまたは同様のものなど、いくつかの適切な生体適合性材料から作られてよい。
【0075】
工程306で器具がデザインに合わせて作られたら、工程308で、概ね前述したように、器具を肩関節形成処置中に使用することができる。先の説明から理解されるように、器具は、単一の独自の位置で患者の関節窩に取り付け可能となるようにカスタマイズされている。また、ガイド形成物は、器具の中に設置され方向付けられているので、いったん器具がその単一の位置で患者の関節窩に取り付けられると、ガイド形成物は、先に計画されたように、意図する入口点、および関節窩に対する角度または向きと自動的に位置合わせされる。したがって、事前に計画されたインプラントの位置付けのその後の信頼性が改善される。
【0076】
器具が外科処置中にその1つまたは複数の目的に役立った後、補助的な付属品またはファスナーを外す必要なしに、単にインターロック部品を外すか、または形状記憶材料の実施形態ではその温度を変化さ、容易に取り外せるようにして、手術部位へのより良好なアクセスを提供することによって、器具は元の場所で容易に分解され得る。したがって、器具の使いやすさおよび使用速度が向上する。
【0077】
さらに、前述のとおり、器具を関節窩に取り付けるのに、さらなる補助的な構成要素は必要ない。むしろ、器具の別個の部品がインターロックする性質により、器具の、インターロック部品を単に組み立てることにより、意図した位置において器具が関節窩へ取り付けられる。また、補助的な付属品またはファスナーを使用する必要がないので、手術部位に対する外傷または損傷が減少する。
【0078】
前記の考察から明らかであるように、本発明の器具に対して可能な、多数のバリエーションおよび改変がある。本発明は、前述した特定の実施形態に制限されない。むしろ、様々な改変および変更が予測される。前述のとおり、本発明は、寛骨臼上で使用される患者別の器具を提供するのにも使用され得る。1つの実施形態に関して説明した本発明の様々な特徴は、本発明の説明した他の実施形態と取り換えたり、混合したり、加えられたり、除去されたりしてよい。したがって、種々の実施形態に関して説明した特定の特徴の様々な組み合わせも予測される。
【0079】
〔実施の態様〕
(1) 患者に対して実行されるべき球窩関節形成処置で使用される患者別の器具において、
前記器具を前記患者の前記窩に取り付ける取り付け機構であって、前記取り付け機構は、前記患者の前記窩の縁に係合することができる、少なくとも第1および第2の部品を有し、各前記部品は、前記窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形されるか、または適合する形状に変形することができる、取り付け機構と、
前記球窩関節形成処置で使用されるべき構成要素を案内する少なくとも1つのガイド形成物を有する本体と、
ロック機構であって、前記ロック機構により、前記本体および取り付け機構は、独自の構成で前記患者別の器具へと組み立てられることができる、ロック機構と、
を含み、
前記患者別の器具は、事前に計画された単一の位置でのみ前記患者の前記窩に取り付け可能である、患者別の器具。
(2) 実施態様1に記載の患者別の器具において、
前記本体は、種々の構成要素を案内する複数のガイド形成物を含む、患者別の器具。
(3) 実施態様1または2に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構は、少なくとも3つの部品を含み、各前記部品は、前記窩の縁に係合することができ、各前記部品は、前記窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形されるか、または適合する形状に変形することができる、患者別の器具。
(4) 実施態様1〜3のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構の前記部品は、別々の部品である、患者別の器具。
(5) 実施態様4に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構の前記部品は、クリップである、患者別の器具。
【0080】
(6) 実施態様1〜3のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構の前記部品は、同じ構造の部品である、患者別の器具。
(7) 実施態様1〜6のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記本体は、複数の部品を含む、患者別の器具。
(8) 実施態様7に記載の患者別の器具において、
前記本体の各部品は、前記取り付け機構の対応する部分を含み、
前記本体の前記部品の噛み合い形成物が、前記ロック機構をもたらす、患者別の器具。
(9) 実施態様1〜5のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記ロック機構は、前記本体、および前記取り付け機構の前記部品上の噛み合い形成物によりもたらされる、患者別の器具。
(10) 実施態様1〜9のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構は、部分的または全体的に形状記憶材料であり、前記形状記憶材料は、前記器具が前記窩に対して向けられ得る第1の状態と、前記取り付け機構が前記事前に計画された単一の位置でのみ前記器具を前記窩に取り付ける第2の状態との間で移行することができる、患者別の器具。
【0081】
(11) 実施態様1〜10のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構は、少なくとも部分的に形状記憶材料であり、前記形状記憶材料により、前記第1および第2の部品はそれぞれ、前記窩の縁の対応する縁部分の形状に適合する形状へと変形する、患者別の器具。
(12) 実施態様1〜4のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記本体は、フレーム、および前記フレーム内に受容され得るコアを含み、
前記コアは、前記少なくとも1つのガイド形成物を含む、患者別の器具。
(13) 実施態様12に記載の患者別の器具において、
前記ロック機構は、前記フレーム、および前記取り付け機構の前記部品上の噛み合い形成物によりもたらされる、患者別の器具。
(14) 実施態様13に記載の患者別の器具において、
前記コアを単一の位置で前記フレーム内に受容させるリミッター、
をさらに含む、患者別の器具。
(15) 実施態様14に記載の患者別の器具において、
前記リミッターは、前記コアの位置を前記フレームに対して変えるように調節され得る、患者別の器具。
【0082】
(16) 実施態様12に記載の患者別の器具において、
前記フレームは、全体的または少なくとも部分的に弾性材料から作られる、患者別の器具。
(17) 実施態様1〜16のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記器具の部品が、窩に面する表面を含み、前記窩に面する表面は、前記器具が前記事前に計画された単一の位置でのみ前記患者の前記窩に取り付けられる際に前記窩に面する表面が隣接する、前記患者の前記窩の一部の形状に適合するように成形される、患者別の器具。
(18) 実施態様17に記載の患者別の器具において、
前記器具の前記部品は、前記本体および/または前記取り付け部品である、患者別の器具。
(19) 実施態様1〜18のいずれかに記載の患者別の器具において、
前記患者別の器具は、前記窩へのより良いアクセスを与えるように、前記患者に取り付けられたままで分解され得る、患者別の器具。
(20) 部品のキットにおいて、
実施態様1〜19のいずれかに記載の患者別の器具と、
前記球窩関節形成処置で使用されるべきさらなる構成要素を案内する少なくとも1つのさらなるガイド形成物を有する、さらなる本体と、
を含み、
前記さらなる本体は、前記球窩関節形成処置の異なる工程を実行することができるように、前記器具の前記本体と取り換えられ得る、キット。
【0083】
(21) 患者に対して実行されるべき球窩関節形成処置で使用される患者別の器具を製造する方法において、
前記患者の少なくとも前記窩の3次元画像を表す画像データを取り込むことと、
取り込まれた前記画像データを使用して、前記球窩関節形成処置で使用されるべき位置および/または向きを計画することと、
計画された前記位置および/または向きに向けて構成要素を案内するガイドを提供するために補助的な付属品を使用せずに、互いに組み立てられロックされて事前に計画された単一の位置でのみ前記患者の前記窩に取り付けられることができる複数の部品を有する、患者別の器具をデザインすることと、
前記デザインに従って患者別の器具を作製することと、
を含む、方法。
(22) 骨窩を有する患者に対して球窩関節形成処置を実行する方法において、
前記患者の前記骨窩に対する、計画された位置および/または向きに向けて構成要素を案内する少なくとも1つのガイド形成物を含む、複数の部品を含む患者別の器具を、分解された形態で提供することと、
補助的な付属品を使用せずに、前記ガイド形成物が前記計画された位置に向けて、かつ/または前記計画された向きに沿って構成要素を案内するように位置付けられた状態で、計画された単一の位置でのみ前記器具を前記患者の前記骨窩に取り付けるため、前記器具の前記複数の部品を共に組み立てロックすることと、
前記計画された位置に向けて、かつ/または前記計画された向きに沿って、前記球窩関節形成処置中に使用される構成要素を案内するために前記ガイド形成物を使用することと、
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施形態による器具の平面図を示す。
【図2】図1に示す器具の側面図を示す。
【図3】図1および図2に示した器具の、線AA’に沿った断面図を示す。
【図4】図1に示した本発明の第1の実施形態の変形体の平面図を示す。
【図5】本発明の第2の実施形態による器具の平面図を示す。
【図6】図5に示した器具の側面図を示す。
【図7】関節窩に提示されている第1の状態にある、図5および図6に示した器具の、線BB’に沿った断面図を示す。
【図8】関節窩に取り付けられた第2の状態にある、図5および図6に示した器具の、線BB’に沿った断面図を示す。
【図9】図5に示した本発明の第2の実施形態の変形体の平面図を示す。
【図10】本発明の第3の実施形態による器具の部品の平面図を示す。
【図11】図10に示した器具の部品の側面図を示す。
【図12】図10に示した器具のさらなる部品の平面図を示す。
【図13】図12に示した器具の部品の側面図を示す。
【図14】本発明の第3の実施形態による完全な器具の平面図を示す。
【図15】使用中の、図14に示した器具の側面図を示す。
【図16】図14および図15に示した器具の、線CC’に沿った断面図を示す。
【図17A】本発明の第4の実施形態による器具の平面図を示す。
【図17B】図17Aに示した器具の、線DD’に沿った断面図を示す。
【図18】本発明の第5の実施形態による器具の平面図を示す。
【図19】ドリルを案内するのに使用されている、図18の器具の側面図を示す。
【図20】ねじを案内するのに使用されている、図18の器具の側面図を示す。
【図21】本発明の様々な方法の態様を例示するフローチャートを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対して実行されるべき球窩関節形成処置で使用される患者別の器具において、
前記器具を前記患者の前記窩に取り付ける取り付け機構であって、前記取り付け機構は、前記患者の前記窩の縁に係合することができる、少なくとも第1および第2の部品を有し、各前記部品は、前記窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形されるか、または適合する形状に変形することができる、取り付け機構と、
前記球窩関節形成処置で使用されるべき構成要素を案内する少なくとも1つのガイド形成物を有する本体と、
ロック機構であって、前記ロック機構により、前記本体および取り付け機構は、独自の構成で前記患者別の器具へと組み立てられることができる、ロック機構と、
を含み、
前記患者別の器具は、事前に計画された単一の位置でのみ前記患者の前記窩に取り付け可能である、患者別の器具。
【請求項2】
請求項1に記載の患者別の器具において、
前記本体は、種々の構成要素を案内する複数のガイド形成物を含む、患者別の器具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構は、少なくとも3つの部品を含み、各前記部品は、前記窩の縁に係合することができ、各前記部品は、前記窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形されるか、または適合する形状に変形することができる、患者別の器具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構の前記部品は、別々の部品である、患者別の器具。
【請求項5】
請求項4に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構の前記部品は、クリップである、患者別の器具。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構の前記部品は、同じ構造の部品である、患者別の器具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記本体は、複数の部品を含む、患者別の器具。
【請求項8】
請求項7に記載の患者別の器具において、
前記本体の各部品は、前記取り付け機構の対応する部分を含み、
前記本体の前記部品の噛み合い形成物が、前記ロック機構をもたらす、患者別の器具。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記ロック機構は、前記本体、および前記取り付け機構の前記部品上の噛み合い形成物によりもたらされる、患者別の器具。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構は、部分的または全体的に形状記憶材料であり、前記形状記憶材料は、前記器具が前記窩に対して向けられ得る第1の状態と、前記取り付け機構が前記事前に計画された単一の位置でのみ前記器具を前記窩に取り付ける第2の状態との間で移行することができる、患者別の器具。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構は、少なくとも部分的に形状記憶材料であり、前記形状記憶材料により、前記第1および第2の部品はそれぞれ、前記窩の縁の対応する縁部分の形状に適合する形状へと変形する、患者別の器具。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記本体は、フレーム、および前記フレーム内に受容され得るコアを含み、
前記コアは、前記少なくとも1つのガイド形成物を含む、患者別の器具。
【請求項13】
請求項12に記載の患者別の器具において、
前記ロック機構は、前記フレーム、および前記取り付け機構の前記部品上の噛み合い形成物によりもたらされる、患者別の器具。
【請求項14】
請求項13に記載の患者別の器具において、
前記コアを単一の位置で前記フレーム内に受容させるリミッター、
をさらに含む、患者別の器具。
【請求項15】
請求項14に記載の患者別の器具において、
前記リミッターは、前記コアの位置を前記フレームに対して変えるように調節され得る、患者別の器具。
【請求項16】
請求項12に記載の患者別の器具において、
前記フレームは、全体的または少なくとも部分的に弾性材料から作られる、患者別の器具。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記器具の部品が、窩に面する表面を含み、前記窩に面する表面は、前記器具が前記事前に計画された単一の位置でのみ前記患者の前記窩に取り付けられる際に前記窩に面する表面が隣接する、前記患者の前記窩の一部の形状に適合するように成形される、患者別の器具。
【請求項18】
請求項17に記載の患者別の器具において、
前記器具の前記部品は、前記本体および/または前記取り付け部品である、患者別の器具。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記患者別の器具は、前記窩へのより良いアクセスを与えるように、前記患者に取り付けられたままで分解され得る、患者別の器具。
【請求項20】
部品のキットにおいて、
請求項1〜19のいずれか1項に記載の患者別の器具と、
前記球窩関節形成処置で使用されるべきさらなる構成要素を案内する少なくとも1つのさらなるガイド形成物を有する、さらなる本体と、
を含み、
前記さらなる本体は、前記球窩関節形成処置の異なる工程を実行することができるように、前記器具の前記本体と取り換えられ得る、キット。
【請求項21】
患者に対して実行されるべき球窩関節形成処置で使用される患者別の器具を製造する方法において、
前記患者の少なくとも前記窩の3次元画像を表す画像データを取り込むことと、
取り込まれた前記画像データを使用して、前記球窩関節形成処置で使用されるべき位置および/または向きを計画することと、
計画された前記位置および/または向きに向けて構成要素を案内するガイドを提供するために補助的な付属品を使用せずに、互いに組み立てられロックされて事前に計画された単一の位置でのみ前記患者の前記窩に取り付けられることができる複数の部品を有する、患者別の器具をデザインすることと、
前記デザインに従って患者別の器具を作製することと、
を含む、方法。
【請求項22】
骨窩を有する患者に対して球窩関節形成処置を実行する方法において、
前記患者の前記骨窩に対する、計画された位置および/または向きに向けて構成要素を案内する少なくとも1つのガイド形成物を含む、複数の部品を含む患者別の器具を、分解された形態で提供することと、
補助的な付属品を使用せずに、前記ガイド形成物が前記計画された位置に向けて、かつ/または前記計画された向きに沿って構成要素を案内するように位置付けられた状態で、計画された単一の位置でのみ前記器具を前記患者の前記骨窩に取り付けるため、前記器具の前記複数の部品を共に組み立てロックすることと、
前記計画された位置に向けて、かつ/または前記計画された向きに沿って、前記球窩関節形成処置中に使用される構成要素を案内するために前記ガイド形成物を使用することと、
を含む、方法。
【請求項1】
患者に対して実行されるべき球窩関節形成処置で使用される患者別の器具において、
前記器具を前記患者の前記窩に取り付ける取り付け機構であって、前記取り付け機構は、前記患者の前記窩の縁に係合することができる、少なくとも第1および第2の部品を有し、各前記部品は、前記窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形されるか、または適合する形状に変形することができる、取り付け機構と、
前記球窩関節形成処置で使用されるべき構成要素を案内する少なくとも1つのガイド形成物を有する本体と、
ロック機構であって、前記ロック機構により、前記本体および取り付け機構は、独自の構成で前記患者別の器具へと組み立てられることができる、ロック機構と、
を含み、
前記患者別の器具は、事前に計画された単一の位置でのみ前記患者の前記窩に取り付け可能である、患者別の器具。
【請求項2】
請求項1に記載の患者別の器具において、
前記本体は、種々の構成要素を案内する複数のガイド形成物を含む、患者別の器具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構は、少なくとも3つの部品を含み、各前記部品は、前記窩の縁に係合することができ、各前記部品は、前記窩の縁の対応する部分の形状に適合するように成形されるか、または適合する形状に変形することができる、患者別の器具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構の前記部品は、別々の部品である、患者別の器具。
【請求項5】
請求項4に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構の前記部品は、クリップである、患者別の器具。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構の前記部品は、同じ構造の部品である、患者別の器具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記本体は、複数の部品を含む、患者別の器具。
【請求項8】
請求項7に記載の患者別の器具において、
前記本体の各部品は、前記取り付け機構の対応する部分を含み、
前記本体の前記部品の噛み合い形成物が、前記ロック機構をもたらす、患者別の器具。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記ロック機構は、前記本体、および前記取り付け機構の前記部品上の噛み合い形成物によりもたらされる、患者別の器具。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構は、部分的または全体的に形状記憶材料であり、前記形状記憶材料は、前記器具が前記窩に対して向けられ得る第1の状態と、前記取り付け機構が前記事前に計画された単一の位置でのみ前記器具を前記窩に取り付ける第2の状態との間で移行することができる、患者別の器具。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記取り付け機構は、少なくとも部分的に形状記憶材料であり、前記形状記憶材料により、前記第1および第2の部品はそれぞれ、前記窩の縁の対応する縁部分の形状に適合する形状へと変形する、患者別の器具。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記本体は、フレーム、および前記フレーム内に受容され得るコアを含み、
前記コアは、前記少なくとも1つのガイド形成物を含む、患者別の器具。
【請求項13】
請求項12に記載の患者別の器具において、
前記ロック機構は、前記フレーム、および前記取り付け機構の前記部品上の噛み合い形成物によりもたらされる、患者別の器具。
【請求項14】
請求項13に記載の患者別の器具において、
前記コアを単一の位置で前記フレーム内に受容させるリミッター、
をさらに含む、患者別の器具。
【請求項15】
請求項14に記載の患者別の器具において、
前記リミッターは、前記コアの位置を前記フレームに対して変えるように調節され得る、患者別の器具。
【請求項16】
請求項12に記載の患者別の器具において、
前記フレームは、全体的または少なくとも部分的に弾性材料から作られる、患者別の器具。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記器具の部品が、窩に面する表面を含み、前記窩に面する表面は、前記器具が前記事前に計画された単一の位置でのみ前記患者の前記窩に取り付けられる際に前記窩に面する表面が隣接する、前記患者の前記窩の一部の形状に適合するように成形される、患者別の器具。
【請求項18】
請求項17に記載の患者別の器具において、
前記器具の前記部品は、前記本体および/または前記取り付け部品である、患者別の器具。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の患者別の器具において、
前記患者別の器具は、前記窩へのより良いアクセスを与えるように、前記患者に取り付けられたままで分解され得る、患者別の器具。
【請求項20】
部品のキットにおいて、
請求項1〜19のいずれか1項に記載の患者別の器具と、
前記球窩関節形成処置で使用されるべきさらなる構成要素を案内する少なくとも1つのさらなるガイド形成物を有する、さらなる本体と、
を含み、
前記さらなる本体は、前記球窩関節形成処置の異なる工程を実行することができるように、前記器具の前記本体と取り換えられ得る、キット。
【請求項21】
患者に対して実行されるべき球窩関節形成処置で使用される患者別の器具を製造する方法において、
前記患者の少なくとも前記窩の3次元画像を表す画像データを取り込むことと、
取り込まれた前記画像データを使用して、前記球窩関節形成処置で使用されるべき位置および/または向きを計画することと、
計画された前記位置および/または向きに向けて構成要素を案内するガイドを提供するために補助的な付属品を使用せずに、互いに組み立てられロックされて事前に計画された単一の位置でのみ前記患者の前記窩に取り付けられることができる複数の部品を有する、患者別の器具をデザインすることと、
前記デザインに従って患者別の器具を作製することと、
を含む、方法。
【請求項22】
骨窩を有する患者に対して球窩関節形成処置を実行する方法において、
前記患者の前記骨窩に対する、計画された位置および/または向きに向けて構成要素を案内する少なくとも1つのガイド形成物を含む、複数の部品を含む患者別の器具を、分解された形態で提供することと、
補助的な付属品を使用せずに、前記ガイド形成物が前記計画された位置に向けて、かつ/または前記計画された向きに沿って構成要素を案内するように位置付けられた状態で、計画された単一の位置でのみ前記器具を前記患者の前記骨窩に取り付けるため、前記器具の前記複数の部品を共に組み立てロックすることと、
前記計画された位置に向けて、かつ/または前記計画された向きに沿って、前記球窩関節形成処置中に使用される構成要素を案内するために前記ガイド形成物を使用することと、
を含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2013−521081(P2013−521081A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556421(P2012−556421)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050862
【国際公開番号】WO2011/110374
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(506300914)デピュイ・オーソぺディー・ゲーエムベーハー (6)
【氏名又は名称原語表記】DEPUY ORTHOPADIE GMBH
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050862
【国際公開番号】WO2011/110374
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(506300914)デピュイ・オーソぺディー・ゲーエムベーハー (6)
【氏名又は名称原語表記】DEPUY ORTHOPADIE GMBH
【Fターム(参考)】
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