説明

整流回路モジュール

【課題】ダイオード素子毎の入力経路における寄生インダクタンスの影響を小さくし、出力電力の安定化に寄与できる整流回路モジュールを提供する。
【解決手段】配線構造体21の入力用プレート25,26において、整流回路13の入力端子部25g,26g(入力ノード)から各ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8b毎の入力端子(アノード端子ta又はカソード端子tk)までの電力伝達距離L1〜L4が等しくなるように、即ちダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8b毎の入力経路のインダクタンスが同等となるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオード素子と金属プレート配線とを用いて構成される整流回路モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電力を直流電力に変換する整流回路としては、例えば特許文献1に示されるように、複数のダイオード素子を用いたブリッジ回路にて構成されている。特許文献1の整流回路は、三相交流電力を直流電力に変換するものであり、6個のダイオード素子が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−155782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ダイオード素子と金属プレート配線とで整流回路(ブリッジ回路)をモジュール化するにあたり、ブリッジ回路の各アームに配置されるダイオード素子と、交流電力が入力される入力端子(入力ノード)からの配線距離が不等であると、各アーム毎のダイオード素子までの入力経路で寄生インダクタンス値が異なり、各アーム毎の出力電圧がアンバランスとなる等の問題が生じる。尚、先の整流回路は、50又は60Hzの商用交流電力を直流電力に変換するものであったが、高周波になるほど、インダクタンスの影響が大となることが懸念される。また、このことは三相用の整流回路のみならず、単相用の整流回路であっても同様な問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ダイオード素子毎の入力経路における寄生インダクタンスの影響を小さくし、出力電力の安定化に寄与することができる整流回路モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数のダイオード素子を用いたブリッジ回路にて構成され、各ダイオード素子の整流動作により交流電力を直流電力に変換する整流回路において、前記各ダイオード素子の端子を複数のプレート配線よりなる配線構造体に接続して構成された整流回路モジュールであって、前記ブリッジ回路の入力ノードと、前記ブリッジ回路の上下アームに配置される各ダイオード素子の入力端子との間を接続する前記配線構造体のプレート配線において、前記入力ノードから前記各ダイオード素子毎の入力端子までの電力伝達距離を等しく設定して構成されたことをその要旨とする。
【0007】
この発明では、ブリッジ回路の入力ノードと該回路の各ダイオード素子の入力端子との間を接続する配線構造体のプレート配線において、入力ノードから各ダイオード素子まで電力伝達距離が等しくなるように、整流回路モジュールが構成される。これにより、ダイオード素子毎の入力経路のインダクタンスが同等となるため、各ダイオード素子同士の入力電流・電圧の伝達差が極めて小さく、ブリッジ回路から出力される直流電力が安定したものとなる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の整流回路モジュールにおいて、前記配線構造体のプレート配線としてプラス側及びマイナス側出力用バスバーが用いられ、各出力用バスバーを介して前記ブリッジ回路で変換した前記直流電力を出力するものであり、前記各出力用バスバーは、自身を流れる主たる電流の向きが互いに逆向きとなるように構成されたことをその要旨とする。
【0009】
この発明では、配線構造体のプレート配線として用いられ、ブリッジ回路から直流電力を出力するためのプラス側及びマイナス側出力用バスバーは、自身を流れる主たる電流の向きが互いに逆向きとなるように構成される。これにより、各出力用バスバーで発生する磁界が互いに打ち消すように作用し、放射磁界の低減とともに、出力用バスバーのインダクタンスの低減に貢献できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の整流回路モジュールにおいて、前記プラス側及びマイナス側出力用バスバーには、平面同士で対向して寄生キャパシタンスを形成する平板部が備えられたことをその要旨とする。
【0011】
この発明では、プラス側及びマイナス側出力用バスバーに備えられる平板部にて寄生キャパシタンスが形成されることから、そのキャパシタンス効果で出力用バスバーのインダクタンスの低減に貢献できる。また、平板部にて放熱面積が拡大するため、出力用バスバーにおける放熱効果が向上する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の整流回路モジュールにおいて、前記ブリッジ回路の各アームに配置されるダイオード素子は、それぞれ2つのダイオード素子が並列接続されてなるものであり、アーム毎に対をなす各ダイオード素子の入力端子と前記入力ノードとの間の電力伝達距離を等しく設定して構成されたことをその要旨とする。
【0013】
この発明では、ブリッジ回路の各アームに配置されるダイオード素子は、それぞれ2つのダイオード素子が並列接続されて構成され、該回路の入力ノードとアーム毎に対をなす各ダイオード素子の入力端子との間の電力伝達距離が等しく設定される。これにより、個々のアーム毎において並列接続されるダイオード素子同士においても入力経路のインダクタンスが同等となるため、各ダイオード素子同士の入力電流・電圧の伝達差が極めて小さく、ブリッジ回路から出力される直流電力の安定化に貢献できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の整流回路モジュールにおいて、前記アーム毎に対をなす各ダイオード素子は、前記配線構造体を挟んだ両側に配置され、互いに対向するように並設されたことをその要旨とする。
【0015】
この発明では、アーム毎に対をなす各ダイオード素子は、配線構造体を挟んだ両側に配置され、互いに対向するように並設されるため、配線構造体のプレート配線を同一形状や対称形状というような単純な形状に形成可能となり、コンパクト化に貢献できる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の整流回路モジュールにおいて、前記配線構造体のプレート配線として前記入力ノードを有する入力用プレートが用いられ、前記上下アームの各ダイオード素子の入力端子が接続されて前記入力ノードから前記交流電力を入力するものであり、前記入力用プレートは、前記上下アーム毎に設けられるものであって、それぞれ同形状に形成されたことをその要旨とする。
【0017】
この発明では、配線構造体のプレート配線として用いられ、入力ノードから交流電力を入力するための入力用プレートは、上下アーム毎に設けられ、それぞれ同形状に形成される。これにより、入力用プレートが1品番となり、部品管理や組立が行い易い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ダイオード素子毎の入力経路における寄生インダクタンスの影響を小さくし、出力電力の安定化に寄与することができる整流回路モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態におけるDC−DCコンバータの回路図である。
【図2】インバータ回路に用いる整流回路モジュールの回路図である。
【図3】整流回路モジュールの構成を説明するための斜視図である。
【図4】整流回路モジュールに用いる配線構造体の構成を説明するための分解斜視図である。
【図5】別例における整流回路モジュールの構成を説明するための斜視図である。
【図6】別例における整流回路モジュールに用いる配線構造体の構成を説明するための分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す本実施形態のDC−DCコンバータ10は、平滑コンデンサCa、インバータ回路11、絶縁トランス12、共振コンデンサCx、整流回路13、及びフィルタ回路14を備えている。
【0021】
絶縁トランス12の一次側には、インバータ回路11が備えられている。インバータ回路11は、IGBT等の半導体スイッチング素子SW1〜SW4を4組用いたフルブリッジ回路にて構成される。各スイッチング素子SW1〜SW4には、逆接ダイオードD1〜D4及びコンデンサC1〜C4を内蔵したものが用いられている。そして、インバータ回路11は、平滑コンデンサCaを介して入力される直流電力を制御回路15の制御に基づく各スイッチング素子SW1〜SW4のスイッチング動作にて高周波交流電力に変換し、変換した高周波交流電力を絶縁トランス12の一次側コイル12aに供給する。絶縁トランス12は、一次側コイル12aに供給された高周波交流電力を二次側コイル12bにて所定電圧に変換する。
【0022】
絶縁トランス12の二次側では、その二次側コイル12bに共振コンデンサCxが直列に接続されており、その後段には整流回路13が備えられている。整流回路13は、4個のダイオードD5〜D8を用いたフルブリッジ回路にて構成される。整流回路13の後段には、フィルタ回路14が備えられている。フィルタ回路14は、平滑リアクトルLb及び平滑コンデンサCbで構成される。フィルタ回路14は、平滑リアクトルLb及び平滑コンデンサCbにて整流回路13を経た直流電力の平滑化を行い、平滑化後の直流電力を負荷側に出力する。
【0023】
次に、本実施形態の整流回路13についての具体的な構成を説明する。
本実施形態の整流回路13は全波整流を行うフルブリッジ回路であり、図2にその具体的構成を示すように、ダイオードD5〜D8の1組毎(各アーム毎)に2個ずつが並列接続された合計8個のダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bにて構成されている。そして、各ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bは、これらの電気的接続を図る配線構造体21とともに、整流回路モジュール20としてモジュール化されて構成されている。
【0024】
図3及び図4に示すように、整流回路モジュール20を構成する配線構造体21として、基板22、2つの出力用バスバー23,24、及び2つの入力用プレート25,26が用いられている。配線構造体21は、基板22の上面にプラス側出力用バスバー23が、その上面にマイナス側出力用バスバー24が順に載置され、マイナス側出力用バスバー24の上面には2つの入力用プレート25,26が並べて載置されてなる。
【0025】
プラス側出力用バスバー23は、略長方形板状の基板22の長手方向長さよりも若干長く該基板22の幅(短手方向長さ)の約1/3程度の細長長方形状をなす直線配線部23aと、該直線配線部23aの側辺から延出され基板22の長手方向長さより若干短く該基板22の幅と同程度の長方形状をなす平板部23bとを有している。直線配線部23aの長手方向一端部には出力端子部23cが、他端部には接続端子部23dが立設されている。出力端子部23c及び接続端子部23dは、雄ネジにて構成されている。
【0026】
平板部23bの一方側の長辺(図4において手前側の辺)からは2つの接続端子23e,23fが該直線配線部23aの延びる方向と直交する方向に延出され、直線配線部23aの他方側の長辺(図4において奥側の辺)からは2つの接続端子23g,23hが該直線配線部23aの延びる方向と直交する方向に延出されている。プラス側出力用バスバー23には、合計4つの接続端子23e〜23hが備えられている。プラス側出力用バスバー23は、直線配線部23aが基板22の一方の長辺側に寄せて配置され、平板部23bが基板22と大部分で重なるように配置されている。接続端子23e〜23hは、基板22から幅方向外側に突出する。
【0027】
マイナス側出力用バスバー24は、後述する自身の接続端子24e〜24h以外、プラス側出力用バスバー23と線対称形状に形成されている。具体的には、マイナス側出力用バスバー24は、基板22の長手方向長さよりも若干長く該基板22の幅の約1/3程度の細長長方形状をなす直線配線部24aと、該直線配線部24aの側辺から延出され基板22の長手方向長さより若干短く該基板22の幅と同程度の長方形状をなす平板部24bとを有している。直線配線部24aの長手方向一端部には出力端子部24cが、他端部には接続端子部24dが立設されている。出力端子部24c及び接続端子部24dは、雄ネジにて構成されている。
【0028】
直線配線部24aの一方側の長辺(図4において手前側の辺)からは2つの接続端子24e,24fが該直線配線部24aの延びる方向と直交する方向に延出され、平板部24bの他方側の長辺(図4において奥側の辺)からは2つの接続端子24g,24hが該直線配線部24aの延びる方向と直交する方向に延出されている。マイナス側出力用バスバー24においても、合計4つの接続端子24e〜24hが備えられている。マイナス側出力用バスバー24は、直線配線部24aが基板22の他方の長辺側に寄せて配置され、平板部24bがプラス側出力用バスバー23の平板部23bと重なるように配置されている。接続端子24e〜24hは基板22から幅方向外側に突出するとともに、プラス側出力用バスバー23の接続端子23e〜23hとは所定間隔を有して配置される。
【0029】
入力用プレート25,26は、自身の接続端子25a〜25d,26a〜26dと接続端子部25e,26eを有する突出部25f,26fとを除いた本体部分が、基板22の幅と同程度で、マイナス側出力用バスバー24の平板部24b(プラス側出力用バスバー23の平板部23b)の半分の面積より若干小さい略正方形状に形成されている。入力用プレート25,26は、接続端子部25e,26eを有する突出部25f,26f以外、同形状をなしている。
【0030】
入力用プレート25,26は、対向する一対の辺において、4つの角部近傍からそれぞれ接続端子25a〜25d,26a〜26dが延出されている。入力用プレート25,26は、マイナス側出力用バスバー24の平板部24b上においてその長手方向端部にそれぞれ寄せて配置され、接続端子25a〜25d,26a〜26dは、基板22から幅方向外側に突出する。接続端子25a〜25d,26a〜26dは、プラス側出力用バスバー23及びマイナス側出力用バスバー24の対応する接続端子23e〜23h,24e〜24hと近接しながらも、所定間隔を有して重ならないように配置される。
【0031】
入力用プレート25,26の中心部には、それぞれ入力端子部25g,26gが立設されている。入力端子部25g,26gは、雄ネジにて構成されている。また、入力用プレート25,26がマイナス側出力用バスバー24に対する配置状態で、各入力用プレート25,26の互いに対向する辺とは反対側の辺の中央から外側に突出する突出部25f,26fが形成されている。各突出部25f,26fには、それぞれ接続端子部25e,26eが立設されている。接続端子部25e,26eは、雄ネジにて構成されている。
【0032】
因みに、本実施形態では、基板22、プラス側出力用バスバー23、マイナス側出力用バスバー24、及び入力用プレート25,26は、積層方向に隣接するもの同士が例えば両面貼着シート(図示略)で固定されて配線構造体21が組み立てられている。また、出力用バスバー23,24、及び入力用プレート25,26は、絶縁性樹脂のコーティングがなされており、積載した際の互いの絶縁性が確保されている。
【0033】
ここで、整流回路モジュール20を構成する8個のダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bを、第1ダイオード素子D5a,D5b、第2ダイオード素子D6a,D6b、第3ダイオード素子D7a,D7b、第4ダイオード素子D8a,D8bとし、インバータ回路11(ブリッジ回路)の上アームには第1ダイオード素子D5a,D5b及び第2ダイオード素子D6a,D6bが、下アームには第3ダイオード素子D7a,D7b及び第4ダイオード素子D8a,D8bが配置されるものとする。この場合、第1ダイオード素子D5a,D5bと第4ダイオード素子D8a,D8bとが対で動作し、第2ダイオード素子D6a,D6bと第3ダイオード素子D7a,D7bとが対で動作する。
【0034】
配線構造体21の長手方向一方側から第1ダイオード素子D5a,D5b、第3ダイオード素子D7a,D7b、第2ダイオード素子D6a,D6b、第4ダイオード素子D8a,D8bの順に配置され、更にこの配線構造体21を挟んだ両側に第1ダイオード素子D5a,D5bが別れて配置され、第3ダイオード素子D7a,D7b、第2ダイオード素子D6a,D6b、第4ダイオード素子D8a,D8bも同様にそれぞれ別れて配置される。そして、第1〜第4ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bに備えられるアノード端子ta及びカソード端子tkは、配線構造体21の対応する接続端子23e〜23h,24e〜24h,25a〜25d,26a〜26dにそれぞれ接続される。
【0035】
尚、第1〜第4ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bは、同一の素子にて構成されている。第1〜第4ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bは、その本体部分が略長方形板状をなし、その一辺においてアノード端子ta、カソード端子tkが並んで備えられている。第1〜第4ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bは、その扁平方向が配線構造体21の基板22等の平面方向に沿って配置される。そして、基板22の幅方向両側に分かれて配置される第1〜第4ダイオード素子D5a〜D8aと第1〜第4ダイオード素子D5b〜D8bとは、端子ta,tk側が対向するように配置され、配線構造体21の対応する接続端子23e〜23h,24e〜24h,25a〜25d,26a〜26dにそれぞれ下方から上方に向けて嵌挿されて半田等にて接合される。
【0036】
具体的な端子の接続態様について、第1ダイオード素子D5aは、アノード端子taが入力用プレート25の接続端子25aに接続され、カソード端子tkがプラス側出力用バスバー23の接続端子23eに接続される。また、第1ダイオード素子D5bは、アノード端子taが入力用プレート25の接続端子25cに接続され、カソード端子tkがプラス側出力用バスバー23の接続端子23gに接続される。
【0037】
第3ダイオード素子D7aは、アノード端子taがマイナス側出力用バスバー24の接続端子24eに接続され、カソード端子tkが入力用プレート25の接続端子25bに接続される。また、第3ダイオード素子D7bは、アノード端子taがマイナス側出力用バスバー24の接続端子24gに接続され、カソード端子tkが入力用プレート25の接続端子25dに接続される。
【0038】
第2ダイオード素子D6aは、アノード端子taが入力用プレート26の接続端子26aに接続され、カソード端子tkがプラス側出力用バスバー23の接続端子23fに接続される。また、第2ダイオード素子D6bは、アノード端子taが入力用プレート26の接続端子26cに接続され、カソード端子tkがプラス側出力用バスバー23の接続端子23hに接続される。
【0039】
第4ダイオード素子D8aは、アノード端子taがマイナス側出力用バスバー24の接続端子24fに接続され、カソード端子tkが入力用プレート26の接続端子26bに接続される。また、第4ダイオード素子D8bは、アノード端子taがマイナス側出力用バスバー24の接続端子24hに接続され、カソード端子tkが入力用プレート26の接続端子26dに接続される。
【0040】
また、プラス側出力用バスバー23の出力端子部23cは、二次側プラス電源線に接続されてフィルタ回路14の平滑リアクトルLbに接続され、マイナス側出力用バスバー24の出力端子部24cは、二次側マイナス電源線に接続される。入力用プレート25の入力端子部25gは、絶縁トランス12の二次側コイル12bの一端に共振コンデンサCxを介して接続され、入力用プレート26の入力端子部26gは、絶縁トランス12の二次側コイル12bの他端に接続される。出力用バスバー23,24の接続端子部23d,24d及び入力用プレート25,26の接続端子部25e,26eについては、オプションとなる素子等との接続に用いられる。
【0041】
次に、上記構成の整流回路モジュール20を用いる整流回路13の動作を説明する。
整流回路13への高周波交流電力の入力は、入力用プレート25,26の入力端子部25g,26gを通じて行われる。絶縁トランス12の二次側コイル12bから共振コンデンサCxを介して高周波交流電力が入力されると、第1及び第4ダイオード素子D5a,D5b,D8a,D8bと、第2及び第3ダイオード素子D6a,D6b,D7a,D7bとが交互に整流動作し、入力される高周波交流電力が直流電力に変換される。
【0042】
そして、変換された直流電力は、第1及び第2ダイオード素子D5a,D5b,D6a,D6bのカソード端子tkが接続されるプラス側出力用バスバー23と、第3及び第4ダイオード素子D7a,D7b,D8a,D8bのアノード端子taが接続されるマイナス側出力用バスバー24とを通じ、それらの各出力端子部23c,24cから後段の回路に出力されるようになっている。
【0043】
上記したように、入力用プレート25,26においては、図3に示すように、入力端子部25gから各アームにおける並列接続のダイオード素子D5a,D5bのアノード端子taまでの各距離L1は、等しい距離に設定されている。尚、図3では図が煩雑になるのを防止するために距離L1を直線的に示したが、距離L1は2点間の実際の電力伝達経路(入力経路)である。同様に、入力端子部26gからダイオード素子D6a,D6bのアノード端子taまでの各距離L2も等しく、入力端子部25gからダイオード素子D7a,D7bのカソード端子tkまでの各距離L3も等しく、入力端子部26gからダイオード素子D8a,D8bのカソード端子tkまでの各距離L4も等しく設定されている。更に、第1〜第4ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8b間の入力端子部25g,26gまでの距離L1〜L4についても等しく設定されている。つまり、ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bの個々の入力端子から入力用プレート25,26の入力端子部25g,26gまでの間の入力経路のインダクタンスが同等となるように構成されている。
【0044】
そのため、整流回路13の整流動作の際には、各ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8b同士の入力電流・電圧の伝達差が極めて小さくなるため、入力されてくる高周波交流電力の歪みが小さい。結果、整流回路13から出力される直流電力が安定し、ひいてはDC−DCコンバータ10の出力電力の安定化に寄与するものとなる。
【0045】
また、出力用バスバー23,24においては、出力用バスバー23,24の直線配線部23a,24aは互いに平行をなすため、これらに流れる主たる電流の向きが逆向きとなり、出力用バスバー23,24で発生する磁界が互いに打ち消すように作用する。そのため、放射磁界の低減とともに、出力用バスバー23,24のインダクタンスが低減される。
【0046】
また、出力用バスバー23,24の互いの平板部23b,24bが平面同士で所定距離を以て対向することから、寄生キャパシタンスが形成されてキャパシタンス効果が期待でき、出力用バスバー23,24のインダクタンスの更なる低減に貢献する。また、このような平板部23b,24bを設けることで、出力用バスバー23,24の放熱効果が向上する。尚、この場合、平板部23b,24bの平面と直交する方向に主として放熱されることから、平板部23bの平面(下面)と対向する基板22にヒートシンク(図示略)を取り付けることで、効率良く放熱することが可能である。基板22の四隅に形成された貫通孔22aは、そのヒートシンクや他部材との取り付けに用いられる。
【0047】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)配線構造体21の入力用プレート25,26において、整流回路13の入力端子部25g,26g(入力ノード)から各ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8b毎の入力端子(アノード端子ta又はカソード端子tk)までの電力伝達距離L1〜L4が等しくなるように構成されている。これにより、ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8b毎の入力経路のインダクタンスが同等となるため、各ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8b同士の入力電流・電圧の伝達差が極めて小さく、整流回路13(ブリッジ回路)から出力される直流電力を安定したものとでき、DC−DCコンバータ10の出力電力の安定化を図ることができる。
【0048】
(2)プラス側及びマイナス側出力用バスバー23,24は、自身を流れる主たる電流の向きが互いに逆向きとなるように構成されている。これにより、各出力用バスバー23,24で発生する磁界が互いに打ち消すように作用し、放射磁界の低減とともに、出力用バスバー23,24のインダクタンスの低減に貢献することができる。
【0049】
(3)プラス側及びマイナス側出力用バスバー23,24に備えられる平板部23b,24bにて寄生キャパシタンスが形成されることから、そのキャパシタンス効果で出力用バスバー23,24のインダクタンスの低減に貢献することができる。また、平板部23b,24bにて放熱面積が拡大するため、出力用バスバー23,24における放熱効果を向上することができる。
【0050】
(4)整流回路13(ブリッジ回路)の各アームに配置されるダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bは、それぞれ2つの素子が並列接続されて構成されている。そして、整流回路13の入力端子部25g,26g(入力ノード)と、アーム毎に対をなす各ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bの入力端子(アノード端子ta又はカソード端子tk)との間の電力伝達距離L1同士、L2同士、L3同士、L4同士がそれぞれ等しく設定されている。これにより、個々のアーム毎において並列接続されるダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8b同士においても入力経路のインダクタンスが同等となるため、各ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8b同士の入力電流・電圧の伝達差が極めて小さく、整流回路13(ブリッジ回路)の出力電力の安定化に貢献することができる。
【0051】
(5)アーム毎に対をなす各ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bは、配線構造体21を挟んだ両側に配置され、互いに対向するように並設されるため、配線構造体21の出力用バスバー23,24、入力用プレート25,26といった各種プレート配線を同一形状や対称形状というような単純な形状に形成可能となり、配線構造体21、整流回路モジュール20のコンパクト化に貢献することができる。
【0052】
(6)入力用プレート25,26は、特に入力経路を含む部分がそれぞれ同形状に形成されている。これにより、入力用プレート25,26の相互間での電流バランスの向上に寄与することができる。
【0053】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、配線構造体21の出力用バスバー23,24、入力用プレート25,26の形状、配置、固定手法等を適宜変更してもよい。
【0054】
例えば配置について、基板22側から順に、プラス側出力用バスバー23、マイナス側出力用バスバー24、入力用プレート25,26の順に積層配置したが、積層順はこれに限らず、適宜変更してもよい。
【0055】
また固定手法について、両面貼着シートでこれらを互いに固定したが、例えば接着剤や樹脂モールド等を用いて固定してもよい。
また形状について、出力用バスバー23,24に平板部23b,24bを設けたが、省略してもよい。
【0056】
また、オプション素子の接続に用いられる出力用バスバー23,24の接続端子部23d,24dや入力用プレート25,26の接続端子部25e,26e自身、及びそれに係る部分を省略してもよい。このようにすれば、入力用プレート25,26については同形状にて形成できる。
【0057】
また、端子部23c,23d,24c,24d,25e,26e,25g,26gを雄ネジ形状としたが、端子形状はこれ以外の形状を採用してもよい。
・上記実施形態では、2端子(2ピン)のダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bを用いたが、例えば図5に示すように、3端子(3ピン)のダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bを用いてもよい。
【0058】
具体的に、各ダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bにアノード端子ta1が追加され、カソード端子tkの両側にアノード端子ta,ta1が設けられ、3端子が並んで設けられる。配線構造体21については、図5及び図6に示すように、マイナス側出力用バスバー23に設けられていた接続端子24e〜24hに加え、接続端子24e1〜24h1が新たに設けたアノード端子ta1に対応して並べて設けられる。また、入力用プレート25,26に設けられていた接続端子25a,25c,26a,26cに加え、接続端子25a1,25c1,26a1,26c1が新たに設けたアノード端子ta1に対応して並べて設けられる。尚、入力用プレート25,26においては、入力端子部25g,26gからの距離は、接続端子25a,25c,26a,26c又は接続端子25a1,25c1,26a1,26c1いずれか一方と等距離に設定する。本態様では、接続端子25a,25c,26a,26cが等距離に設定されている。
【0059】
・上記実施形態では、整流回路13(ブリッジ回路)の各アーム毎にダイオード素子D5a,D5b〜D8a,D8bを2個ずつ並列接続して構成したが、各アームのダイオード素子は1個であってもよい。
【0060】
・上記実施形態では、整流回路13を単相用の整流回路としたが、三相用の整流回路であってもよい。この場合、例えば配線構造体21においては、出力用バスバー23,24を長手方向に延長し、入力用プレートを1つ、ダイオード素子を2組(4個)追加すれば、三相用の整流回路についても同様に構成可能である。
【0061】
・上記実施形態では、絶縁型DC−DCコンバータ10の整流回路13に適用したが、その他の装置に用いる整流回路13に適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0062】
(イ) 複数のダイオード素子を用いたブリッジ回路にて構成され、各ダイオード素子の整流動作により交流電力を直流電力に変換する整流回路において、前記各ダイオード素子の端子を複数のプレート配線よりなる配線構造体に接続して構成された整流回路モジュールに用いるその配線構造体であって、
前記ブリッジ回路の入力ノードと、前記ブリッジ回路の上下アームに配置される各ダイオード素子の入力端子との間を接続する前記プレート配線において、前記入力ノードから前記各ダイオード素子毎の入力端子までの電力伝達距離を等しく設定して構成されたことを特徴とする整流回路モジュールに用いる配線構造体。
【0063】
このような配線構造体に対し、ダイオード素子を接続して整流回路モジュールを構成することで、ダイオード素子毎の入力経路における寄生インダクタンスの影響が小さく、出力電力の安定化に寄与できる。
【符号の説明】
【0064】
13 整流回路(ブリッジ回路)
20 整流回路モジュール
21 配線構造体
23 プラス側出力用バスバー(プレート配線)
24 マイナス側出力用バスバー(プレート配線)
23b,24b 平板部
25,26 入力用プレート(プレート配線)
25g,26g 入力端子部(入力ノード)
D5a,D5b〜D8a,D8b ダイオード素子
ta アノード端子(入力端子)
tk カソード端子(入力端子)
L1〜L4 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のダイオード素子を用いたブリッジ回路にて構成され、各ダイオード素子の整流動作により交流電力を直流電力に変換する整流回路において、前記各ダイオード素子の端子を複数のプレート配線よりなる配線構造体に接続して構成された整流回路モジュールであって、
前記ブリッジ回路の入力ノードと、前記ブリッジ回路の上下アームに配置される各ダイオード素子の入力端子との間を接続する前記配線構造体のプレート配線において、前記入力ノードから前記各ダイオード素子毎の入力端子までの電力伝達距離を等しく設定して構成されたことを特徴とする整流回路モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の整流回路モジュールにおいて、
前記配線構造体のプレート配線としてプラス側及びマイナス側出力用バスバーが用いられ、各出力用バスバーを介して前記ブリッジ回路で変換した前記直流電力を出力するものであり、
前記各出力用バスバーは、自身を流れる主たる電流の向きが互いに逆向きとなるように構成されたことを特徴とする整流回路モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の整流回路モジュールにおいて、
前記プラス側及びマイナス側出力用バスバーには、平面同士で対向して寄生キャパシタンスを形成する平板部が備えられたことを特徴とする整流回路モジュール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の整流回路モジュールにおいて、
前記ブリッジ回路の各アームに配置されるダイオード素子は、それぞれ2つのダイオード素子が並列接続されてなるものであり、アーム毎に対をなす各ダイオード素子の入力端子と前記入力ノードとの間の電力伝達距離を等しく設定して構成されたことを特徴とする整流回路モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の整流回路モジュールにおいて、
前記アーム毎に対をなす各ダイオード素子は、前記配線構造体を挟んだ両側に配置され、互いに対向するように並設されたことを特徴とする整流回路モジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の整流回路モジュールにおいて、
前記配線構造体のプレート配線として前記入力ノードを有する入力用プレートが用いられ、前記上下アームの各ダイオード素子の入力端子が接続されて前記入力ノードから前記交流電力を入力するものであり、
前記入力用プレートは、前記上下アーム毎に設けられるものであって、それぞれ同形状に形成されたことを特徴とする整流回路モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−55783(P2013−55783A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191886(P2011−191886)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】