整畦体
【課題】段差が土面に形成されることを防止するとともに、畦肩面に対して効果的に整畦を行うことができる畦塗り機の整畦体を提供する。
【解決手段】上面羽根板32が弾性屈曲した状態において、上面羽根板32の延長部位32cは、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bの間で下流側法面羽根板21bの表面の形状に沿って湾曲して滑らかに延びた形状とし、延長部位32cにおける先端部位の外側表面部を上流側法面羽根板21aにおける張出部22aの外側表面部と、下流側法面羽根板21bにおける張出部22bの外側表面部とを結ぶ円弧よりも内側に位置する構成とした。
【解決手段】上面羽根板32が弾性屈曲した状態において、上面羽根板32の延長部位32cは、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bの間で下流側法面羽根板21bの表面の形状に沿って湾曲して滑らかに延びた形状とし、延長部位32cにおける先端部位の外側表面部を上流側法面羽根板21aにおける張出部22aの外側表面部と、下流側法面羽根板21bにおける張出部22bの外側表面部とを結ぶ円弧よりも内側に位置する構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦の法面を整畦する法面整畦部及び畦の上面を整畦する上面整畦部から構成される畦塗り機の整畦体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畦塗り機の整畦体として、畦の法面を整畦する略円錐形状の法面整畦部と、その法面整畦部の頂部に装着されるとともに畦の上面を整畦する略柱形状の上面整畦部とを有する整畦体が知られている。
【0003】
このような整畦体は、法面整畦部については、扇形の複数枚の法面羽根板を周方向に連結した構成とし、上面整畦部については、略矩形状の複数枚の上面羽根板を周方向に並べた構成が知られている。
【0004】
特に、法面整畦部における土への押圧を効果的に行うため、法面羽根板については、法面整畦部の回転方向の下流側に向けて張り出す張出部と、回転方向の上流側に向けて延びる重なり部とを設け、周方向に隣接する法面羽根板は境界部分において上下間隔を置き、法面整畦部における回転方向の下流側に位置する下流側法面羽根板の重なり部を、上流側に位置する上流側法面羽根板の張出部の背面側に連結する構成が知られている。
【0005】
そして、上面整畦部においても、土を効果的に畦の上面に押しつけるため、上面羽根板を樹脂等の可撓性部材とし、その上面羽根板を上面整畦部の回転方向の上流側の端部から下流側の端部に向けて、弾力性を保持しながら徐々に径大として支持部材に装着した構成が知られている(特許文献1)。
【0006】
さらに、畦の上面から法面に亘って滑らかな土表面として整畦するため、上面整畦部の各々の上面羽根板を法面整畦部における法面羽根板の張出部の表面形状に沿って滑らかに延長させることで、上面整畦部から法面整畦部にかけた表面を滑らかな形状とした構成も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−118746号公報
【特許文献2】特開2010−119319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、法面羽根板の張出部の表面に沿って延びた上面整畦部の各々の上面羽根板は、法面羽根板の張出部の表面から突出しているため、その法面羽根板の張出部に比べて余分な押圧力を畦の土面に与えてしまい、整畦後において、この上面整畦部の各々の上面羽根板の押圧力による段差が土面に筋状に残り、畦の土表面への押圧が均一に行われないという問題があった。
【0009】
また、畦の法面に対しては法面整畦部による整畦を行い、畦の上面に対しては上面整畦部により整畦を可能とするものの、畦の法面と上面との間であって、曲線状の土面(以下、「畦肩面」という。)については、その畦肩面に対応する法面整畦部と上面整畦部との間において、法面羽根板や上面羽根板といった羽根板を設けることは困難であり、この畦肩面を効果的に整畦することができないといった問題もあった。
【0010】
そこで本発明は、畦の上面から法面に亘って滑らかな土表面として整畦するため、上面整畦部の各々の上面羽根板について、法面整畦部の法面羽根板の表面形状に沿って滑らかに延長させた構成であっても、段差が土面に形成されることを防止するとともに、畦肩面に対して効果的に整畦を行うことができる畦塗り機の整畦体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、扇形の複数枚の法面羽根板を周方向に連結して略円錐形状として構成され、軸回りの回転により畦の法面を整畦する法面整畦部と、略柱形状であるとともに基端部を前記法面整畦部の頂部に装着され、軸回りの回転により畦の上面を整畦する上面整畦部と、を備える畦塗り機の整畦体であって、前記法面羽根板は、前記法面整畦部の回転方向の下流側に向けて張り出す張出部及び前記回転方向の上流側に向けて延びる重なり部を有し、周方向に隣接する前記法面羽根板は、境界部分において上下間隔を置き、前記回転方向の下流側に位置する下流側法面羽根板の前記重なり部が、上流側に位置する上流側法面羽根板の前記張出部の背面側に連結されており、前記上面整畦部の基端部には、前記法面整畦部に向けて延びる延長部位及び切欠部位が周方向に交互に形成され、前記整畦体による整畦が行われている状態において、前記法面整畦部における前記張出部は前記上面整畦部における前記切欠部位の位置に延在するとともに、前記上面整畦部における前記延長部位は前記上流側法面羽根板の前記張出部と前記下流側法面羽根板の前記張出部との間であって前記下流側法面羽根板の表面に沿って延び、前記整畦体の表面は、前記延長部位と前記張出部とが周方向に交互に突出した領域を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の整畦体であって、前記整畦体による整畦が行われている状態において、前記延長部位の先端である先端部位の外側表面部は、前記上流側法面羽根板における前記張出部の外側表面部と前記下流側法面羽根板における前記張出部の外側表面部とを結ぶ円弧よりも内側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、整畦体の表面形状について、上面羽根板から延びた延長部と法面羽根板の張出部とが周方向に交互に突出した領域を有することとなり、整畦体の回転動作に伴って、この延長部及び張出部により交互かつ均一に畦土面を叩くことが可能となる。
このため、この延長部及び張出部が周方向に交互に突出した整畦体の表面においては、畦の土面に対する押圧の回数が増えることとなり、畦の上面から法面に亘って滑らかな土面の成形が可能であることはもちろん、より効果的に畦表面を固めることが可能となる。
【0014】
また、上流側法面羽根板の張出部及び下流側法面羽根板の張出部の間に延びた上面羽根板の延長部について、その延長部の先端部における外側表面部を、上流側法面羽根板における張出部の外側表面部と下流側法面羽根板における張出部の外側表面部とで結ばれる円弧よりも内側に位置させることで、この延長部の先端部による土面への余分な押圧力の発生を抑制し、畦土面に筋状に段差が残ってしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した畦塗り機の部分平面図を示す。
【図2】本発明を適用した畦塗り機の側面図を示す。
【図3】本発明を適用した畦塗り機の斜視図を示し、同図(a)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図であり、同図(b)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図である。
【図4】本発明を適用した畦塗り機に設けられたオフセットフレームの先端側の部分拡大模式側面図を示す。
【図5】本発明を適用した法面整畦部の斜視図を示す。
【図6】本発明を適用した上面整畦部の分解斜視図を示す。
【図7】本発明を適用した法面整畦部及び支持部材の構成図を示す。
【図8】本発明を適用した上面羽根板の斜視図を示す。
【図9】本発明を適用した整畦体の斜視図、側面図及び前面図を示す。
【図10(a)】本発明を適用した上面整畦部の端面図を示し、畦上面を整畦していない無負荷状態の端面図を示す。
【図10(b)】本発明を適用した上面整畦部の端面図を示し、畦上面を整畦している負荷状態の端面図を示す。
【図11】本発明を適用した整畦体により、畦を整畦している状態の後面図を示す。
【図12】本発明を適用した整畦体により畦を整畦している状態であって、法面羽根板及び上面羽根板の位置関係を示す構成図である。
【図13】本発明を適用した整畦体により畦を整畦している状態であって、法面羽根板の張出部と上面羽根板の延長部との位置関係を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る整畦体の好ましい実施の形態について、説明する。
ここにおいて、先ず、図1(部分平面図)及び図2(側面図)を参照しながら、走行機体に牽引される畦塗り機の全体的な概要を説明し、説明の参考として、畦塗り機の斜視図(図3)も参照する。
【0017】
畦塗り機1は、図1及び図2に示すように、走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結されて、走行機体90の前進及び後進に応じて畦塗り作業を行うものである。この畦塗り機1は、走行機体90に装着されて走行機体90からの動力が入力される入力軸8aを備えた装着部5と、装着部5に設けられ進行方向に対して左右方向に回動可能に支持されたオフセット機構部10と、オフセット機構部10の先端側に旋回自在に配設されて入力軸8aから伝達される動力によって作業を行なう作業部60を有して構成される。
【0018】
装着部5は、機体幅方向に延びるヒッチフレーム6と、ヒッチフレーム6の前方に設けられて走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結される連結フレーム7を有して構成される。ヒッチフレーム6の幅方向の中央下部にはギアボックス8が設けられ、このギアボックス8には前述した入力軸8aが設けられている。
【0019】
オフセット機構部10は、その基端側をヒッチフレーム6に回動自在に連結されて後方側へ延びるオフセットフレーム11と、オフセットフレーム11の幅方向一方側に沿って並設されて基端側がヒッチフレーム6の一方側端に回動自在に連結されたリンク部材13と、オフセットフレーム11の先端側とリンク部材13の先端側との間に回動自在に連結された回動支持アーム15とを有して構成される。
【0020】
オフセットフレーム11は、内部が中空状に形成された箱状部材であり、オフセットフレーム11の先端側とヒッチフレーム6の一方側端部との間に接続された揺動シリンダ17の伸縮により、オフセットフレーム11は進行方向に対して左右方向に揺動可能である。また、オフセットフレーム11の上部には動力伝達機構(図示省略)が設けられ、この動力伝達機構によって、走行機体90から入力軸8aに伝達された動力がオフセットフレーム11の先端側に回転自在に配設された従動軸12に伝達可能に構成されている。
【0021】
リンク部材13の先端部は、オフセットフレーム11の先端部に回動自在に設けられた回動支持アーム15の一方側端に回動自在に取り付けられている。
ここで、図3(a)を参照しながら詳細に説明すると、回動支持アーム15は、進行方向に対して左右方向に延びる平行リンクフレーム部15aと、平行リンクフレーム部15aの基端側端部分から装着部5側へ延びるリンクアーム部15bとを有してなり、リンクアーム部15bの基端側がオフセットフレーム11の先端側下部に回動自在に取り付けられている。
このように構成されたオフセット機構部10は、図1に示す通り、オフセットフレーム11、リンク部材13、ヒッチフレーム6及び回動支持アーム15によって平行リンク機構を形成している。
【0022】
なお、揺動シリンダ17は、電動式油圧シリンダであり、図示しない制御装置からの制御信号に応じて伸縮するようになっている。
【0023】
また、図4(部分拡大模式側面図)に示すように、オフセットフレーム11の先端部に設けられた従動軸12の下部には、動力伝達軸14が従動軸12と同軸上に配置されて下方へ連結されて、動力伝達軸14は従動軸12の回転に伴って回転する。またオフセットフレーム11の先端下部には、動力伝達軸14と同軸上に配置された円筒状の連結部18がオフセットフレーム11に対して回動自在に取り付けられている。この連結部18は動力伝達軸14と非結合状態にあり、動力伝達軸14を回動中心として回動自在である。この連結部18の下部に作業部60の一部である伝動支持ケース61の基端部が接続され、連結部18の上部に作業部60の一部である伝動支持フレーム65が接続されている。このため、作業部60はオフセット機構部10に設けられた動力伝達軸14の中心軸線を回動支点Oとして回動可能である。
【0024】
なお、本実施形態においては、畦塗り機の構成のうち、回動支点Oを回動の中心軸として回動することが可能な部位であって、伝動支持ケース61及び伝動支持フレーム65を含み、その先端部側に配設される天場処理部62、前処理部64、整畦部66の構成を、作業部60として定義し、説明する。
【0025】
伝動支持ケース61には、図1、図3(a)、図3(b)に示すように、その先端側には、圃場の周辺に沿って形成された旧畦の上部を切り崩す天場処理部62と、切り崩した土の土盛りを行なう前処理部64が配設され、伝動支持ケース61の基端側には盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦体66が配設されている。伝動支持ケース61内には不図示の動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構は、従動軸12からの動力を受けて天場処理部62、前処理部64、整畦体66に動力伝達可能に構成されている。
【0026】
天場処理部62は、回転自在な天場処理ロータ62a(図3(b)参照)を備える。天場処理ロータ62aは天場動力伝達ケース63を介して上下方向に回動可能に伝動支持ケース61に連結された前処理部64の先端部に連結されるとともに、伝動支持フレーム65を介して支持されている。天場動力伝達ケース63内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構を介して伝動支持ケース61の動力伝達機構に伝達された動力が天場処理ロータ62aに伝達されるようになっている。
【0027】
前処理部64は、回転自在な耕耘爪64a(図2参照)を備える。耕耘爪64aは伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達され、前処理部64は伝動支持ケース61に連結され伝動支持フレーム65を介して支持されている。
【0028】
整畦体66は、伝動支持ケース61に回転自在に支持された略円錐形状の法面整畦部20と、法面整畦部20の頂部に取り付けられて畦方向に延びる上面整畦部30とを有してなる。整畦体66は伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して回転動力が伝達されるように構成され、伝動支持ケース61に支持されている。このため、作業部60は連結部18を介してオフセット機構部10の先端側に設けられた動力伝達軸14(図4参照)の中心軸線を回動支点Oとして旋回可能である。
【0029】
次に、法面整畦部20及び法面整畦部20を構成する法面羽根板21について、図5を参照しながら説明する。
法面整畦部20は、図5に示す通り、扇形をした複数枚の法面羽根板21を半径方向の直線部分で互いに連結することにより全体として略円錐形状に形成されており、中心位置である頂部には、複数枚の法面羽根板21を連結する際の位置決めの基準になるとともに、上面整畦部30を固定するための固定部24が配置されている。
【0030】
また、各々の法面羽根板21は、法面整畦部20の回転方向(図中矢印V)の下流側に向けて張り出す張出部22と、回転方向の上流側に向けて延びる重なり部23とを有している。
そして、周方向に隣接する複数枚の法面羽根板は、互いの境界部分において上下間隔を置き、法面整畦部20における回転方向の下流側に位置する下流側法面羽根板21bの重なり部23を、上流側に位置する上流側法面羽根板21aの張出部22の背面側に連結されている。
【0031】
具体的に説明すると、互いに隣接する上流側法面羽根板21a及び下流側法面羽根板21bは、上流側法面羽根板21aと下流側法面羽根板21bとの間に固定部24の保持部24aを挟み込むことで支持され、この上流側法面羽根板21a及び下流側法面羽根板21bの間に上下間隔が形成された状態で、互いに溶接等により接合されている。
【0032】
このように、上下間隔を設けておくことで、法面整畦部20が図中矢印Vに向けて回転して、整畦が行われる際には、各法面羽根板21の表面と畦の法面との間の距離は、この回転方向の上流側から下流側へかけて次第に小さくなるため、各法面羽根板21による畦の法面を押圧する力が上流側から下流側へかけて次第に大きくなり、効果的に土表面を締め固めることが可能となっている。
【0033】
なお、固定部24には、上面整畦部30を固定するため、ボルト等を締結可能とするねじ孔24bが設けられており、この点については後述する。
【0034】
次に、法面整畦部20の固定部24に固定される上面整畦部30の構成について、その分解図としての図6を参照しながら説明する。
図6に示す通り、上面整畦部30は、法面整畦部20の固定部24に固定される支持部材34や、支持部材34の周方向において間隔を置いて装着される複数枚の上面羽根板32等から構成されており、複数枚の上面羽根板32は、接合部材4や締結部材5を用いて支持部材34にそれぞれ装着されることとなる。
【0035】
なお、本実施形態において支持部材34は、8角柱形状となっており、支持部材34の周面部を複数の平面形状としたことで、上面羽根板32の装着が容易なものとなっている。つまり、支持部材34を角柱形状とすることで、上面羽根板32の装着を容易かつ確実なものとしている。
【0036】
また、図示は省略するものの、支持部材34を円柱とした場合であっても、その支持部材34の周面部の周方向において、接合部材4を介して複数枚の上面羽根板32を装着させた構成としてもよく、この場合には、支持部材34の製造が容易であるという効果を奏する。
【0037】
ここで、法面整畦部20の固定部24に支持部材34が固定される構成について、図7を参照しながら説明する。
図7に示す通り、支持部材34は、ボルト7を貫通させるとともに、そのボルト7の先端を固定部24のねじ孔24bに螺入することによって固定部24に固定されている。
【0038】
より詳細に説明すると、支持部材34の内部には、支持部材34の剛性を確保するため、芯材6を備えており、この芯材6は、支持部材34の軸方向において複数のフランジ部62を備えている。
さらに、これらフランジ部62には、ボルト7を貫通可能とする貫通孔が施されており、支持部材34の側面に設けられた補剛板31と、複数のフランジ部62の貫通孔とにボルト7を貫通させて、当該ボルト7の先端を固定部24のねじ孔24bに螺入することによって、法面整畦部20に対して支持部材34を固定させることとしている。
【0039】
次に、上面羽根板32の形状について、図6及び図8を参照しながら説明する。
上面羽根板32は、支持部材34の長手方向の長さと略同程度の長さを有する平面状の基端部位32aと、基端部位32aから支持部材34の周方向に張り出すとともに湾曲した連続部位32bと、連続部位32b及び基端部位32aから連続して形成されるとともに、連続部位32bの反対側であって法面整畦部20側へ延びる延長部位32cとを有している。
つまり、延長部位32cは、図6に示す通り、上面整畦部30が法面整畦部20の固定部24に固定されることで、法面整畦部20側に向けて延びた状態となる。
【0040】
さらに、図8において点線で示す通り、基端部位32aの法面整畦部20側の端部から、延長部位32cの先端部位32dまでの領域においては、切欠部位32eが施されており、上面羽根板32の回転方向(図中矢印T)において、延長部位32cの先端部位32dと切欠部位32eとが隣り合わせに設けられている。
【0041】
また、本実施形態において、上面羽根板32の回転方向(図中矢印T)における基端部位32aの幅は、接合部材4を介して支持部材34に装着できる幅であればよく、連続部位32bの幅よりも小さい構成となっている。
【0042】
そして、連続部位32bについては、回転方向(図中矢印T)の幅を長くした構成としており、連続部位32bから法面整畦部20側へ向けて延長部位32cを延ばして形成したことで、延長部位32cの領域を大きくさせている。
このため、延長部位32cの法面整畦部20への接触の際に、法面整畦部20から受ける反力を、延長部位32cにおいて効果的に分散させることができ、延長部位32cの曲げ変形を容易に生じさせるようになっている。
【0043】
なお、上面羽根板32は、畦の上面における整畦を効果的に行うため、樹脂等の弾性部材によって一体的に成形されることが望ましい。
【0044】
次に、法面整畦部20及び上面整畦部30が一体化して構成された整畦体66について、多方向から見た外観図である図9(a)〜図9(d)を参照しながら説明する。
ここにおいて、図9(a)及び図9(b)は、整畦体66を斜め上から見た斜視図を示し、図9(c)は整畦体66の側面図を、図9(d)は整畦体66を走行機体90の進行方向前方から進行方向後方に向けて見た図を示している。
【0045】
そして、図9(a)及び図9(b)に示す通り、整畦体66は図中の一点鎖線を中心軸Qとして、図中の矢印の方向Rに回転し、法面整畦部20によって畦の法面を整畦すると同時に、上面整畦部30によって畦の上面を整畦することとなっている。
【0046】
さらに、上面羽根板32の延長部位32cは、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bの間であって、下流側法面羽根板21bの表面の形状に沿って湾曲して、滑らかに延びた状態となっており、この点については後述する。
【0047】
次に、上面整畦部30における畦の上面への整畦について、上面整畦部30の側面から見た図である図10(a)及び図10(b)を参照しながら説明する。
ここにおいて、図10(a)は、整畦体66による畦の整畦が行われていない状態(無負荷状態)を示しており、図10(b)は、畦の整畦を行っている状態(負荷状態)を示している。
【0048】
まず、図10(a)に示す通り、上面整畦部30には、接合部材4によって複数枚の上面羽根板32が支持部材34の周面部に互いに間隔を維持して装着されており、上面羽根板32の連続部位32bが、支持部材34の周面部の方向に沿って凸となる曲面を有して、支持部材34に対して曲げ(弾性)変形可能な状態となっている。
【0049】
そして、無負荷状態において上面羽根板32の連続部位32bは、負荷による変形を伴わない状態であって、図中の円弧Sに沿って、変形する前の状態を維持しており、支持部材34の中心Aから所定の距離(図中J)を維持することとなる。
【0050】
さらに、図10(a)に示す通り、本実施形態においては、上面整畦部30の回転方向(図中矢印F)における上流側に位置する上流側上面羽根板32mの連続部位32bは、その回転方向の下流側に位置する下流側上面羽根板32nの基端部位32aを覆う長さを有することとしている。
【0051】
次に、上面整畦部30により、畦の上面が整畦されている状態について、図10(b)を参照しながら説明する。
ここにおいて、図10(b)に示す通り、畦の上面の整畦は、上面整畦部30が走行機体90の進行方向(図中矢印G)に向けて進行しながら、上面整畦部30が図中矢印Fの方向に向けて回転して行われることとなる。
【0052】
具体的には、上面整畦部30の回転に伴い、始めに、未整畦の畦(図中70)の表面に上面羽根板32の連続部位32bが接触し、連続部位32bの押圧力によって、整畦された畦の表面(図中70a)が形成され、その後、連続部位32bが畦の表面から離れることとなる。
【0053】
この場合、連続部位32bが畦の表面を押圧している際には、その連続部位32bは、支持部材34の中心Aからその支持部材34の周面部までの距離(図中H)を半径とする円弧面を有する円筒に近い形状となるように、変形することとなる。
【0054】
つまり、図10(b)にて示す負荷状態において、支持部材34の中心Aから上面羽根板32における連続部位32bの表面までの距離(図中H)は、無負荷状態における支持部材34の中心Aから上面羽根板32における連続部位32bの表面までの距離J(図10(a)参照)であって図中の円弧Sの半径よりも小さくなり、その小さくなった距離分(図中U)だけ畦の上面を押圧して、畦の上面を整畦することとなる。
【0055】
実際の作業においては、整畦体66による畦の整畦を丁寧かつ確実に行う必要性から、上面整畦部30における図中矢印Gに向けた進行のスピードに比べて、図中矢印Fの方向に向けた回転のスピードを速くし、上面整畦部30は畦の上面に対してスリップ回転しながら畦の上面を圧密し、表面を平滑に仕上げることとなる。
【0056】
さらに、先述した通り、上面羽根板32の連続部位32bは、支持部材34の周面部の方向に沿って凸となる曲面を有して形成されているため、図中矢印Fの方向に向けた高速回転を行いながら、畦の表面から離れた後であっても、連続部位32bに付着した土が跳ね上がってしまうことを抑えるという効果を得ている。
【0057】
次に、法面整畦部20及び上面整畦部30が一体化して構成された整畦体66を用いて、畦を整畦する状態について、図11を参照しながら説明する。
図11に示す通り、整畦作業は、畦上面70bに対して上面整畦部30が押圧し、畦法面70cに対して法面整畦部20が押圧して作用することで行われる。
【0058】
そして、上面羽根板32の連続部位32bが畦上面70bを押圧することにより、畦上面70bからの反作用を受けて、支持部材34の周面部に重なるように湾曲し、その結果、延長部位32cも畦上面70bからの反作用を受け、法面整畦部20の法面羽根板21の表面に沿って曲がることとなる。
【0059】
特に、上面整畦部30においては、図11に示す通り、中心軸Qを回転の中心として回転することで、畦上面70bに接している上面羽根板32から中心軸Qまでの距離(図中H)が、畦上面70bに接していない上面羽根板32から中心軸Qまでの距離(図中J)よりも小さくなり、その小さくなった距離分だけ畦上面70bを押圧して、畦の上面を整畦することとなる。
【0060】
この結果、上面羽根板32における連続部位32bから延長部位32cにかけた部分は、法面羽根板21の表面に倣って湾曲するため、湾曲したその連続部位32bから延長部位32cに亘る部分は、畦上面70bと畦法面70cとを畦全体の内部側へ向けて押圧することとなり、畦上面70bから畦法面70cにかけた畦肩面70dの土部分が、曲面状かつ滑らかに整畦されることとなる。
【0061】
この場合、畦上面70bと畦法面70cの境界部分における畦肩面70dの土は均等な圧力で均されることとなり、この畦肩面70dの表面を滑らかに整畦することが可能となる。
【0062】
次に、整畦体66を用いて畦を整畦している状態について、整畦体66を走行機体90の進行方向に対して側面から見た図であって、図11における図中矢印Kの方向から見た状態(図11における畦を省略)を示す図12を参照しながら説明する。
【0063】
本実施形態においては、図12に示す通り、上面整畦部30が畦の上面を整畦している際に、上面羽根板32の延長部位32cは、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bの間であって、下流側法面羽根板21bの表面の形状に沿って湾曲し、滑らかに延びた状態となる。
【0064】
このため、先述した通り、畦の上面と法面との境界部分における土は均等な圧力で均されることとなり、その結果、畦の上面と法面との境界(面)が滑らかに整畦されることとなる。
【0065】
さらに、図12に示す通り、上面羽根板32が弾性屈曲した状態においては、上面羽根板32の切欠部位32eの位置に、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bが延在することとなり、整畦体66の表面には、張出部22aと延長部位32cと張出部22bとが周方向(図中の円弧Z及び円弧Y)に順に突出した領域を有することとなる。
つまり、延長部位32cと張出部22(張出部22aや張出部22b)とにより、畦の土面を交互に叩くことが可能となっている。
【0066】
このため、本発明においては、整畦体66の回転動作に伴って、延長部位32c及び張出部22により畦土面、特に、畦肩面を交互に叩くことが可能となり、畦の土面に対する押圧の回数が増え、畦の上面から法面に亘って滑らかな土面の成形が可能であることはもちろん、より効果的に畦表面を固めることが可能となる。
【0067】
なお、上面羽根板32は畦の上面に接触したときに支持部材34の外形に沿って弾性変形し、畦の上面から離脱するにつれて元の形状に復元する弾性を有するポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂や鋼板等の金属材料等から成形されるものが望ましい。
【0068】
また、上面羽根板32の先端部位32dは、法面整畦部20の法面羽根板21に対して、上面整畦部30側から重なっており、三角形状や台形状など、その形状を問うことなく、捲れ(めくれ)等を防止するために角部を落とし、外形を曲線状としてもよい。
【0069】
さらに、本実施形態において、上面羽根板32は、図8において先述した通り曲面部を備えて形成しているものの、畦表面からの反作用により湾曲する性質であれば適用が可能であり、平面状に成形されてあってもよい。
【0070】
次に、法面羽根板21の張出部22と上面羽根板32の延長部位32cとの位置関係について、図12、図13(a)及び図13(b)を参照しながら、説明する。
ここにおいて、図13(a)は上面羽根板32が弾性屈曲した状態を示す図12の図中W−W断面図について、上面羽根板32における延長部位32cと法面羽根板21の張出部22との位置関係を示す断面図である。
そして、図13(b)は同図中X−X断面図について、上面羽根板32における先端部位32dと法面羽根板21の張出部22との位置関係を示す断面図である。
【0071】
ここで、図13(a)に示す通り、延長部位32cは、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bの間であって、下流側法面羽根板21bの表面の形状に沿って滑らかに延びた状態となっており、延長部位32cの外側表面部について、上流側法面羽根板21aにおける張出部22aの外側表面部と、下流側法面羽根板21bにおける張出部22bの外側表面部とを結ぶ円弧(図中の円弧Y)上に位置する構成となっている。
【0072】
このため、整畦体66の表面であって、円弧Yの近辺に沿った周方向においては、畦の土面に対して、延長部位32c及び張出部22により畦土面、特に、畦肩面を交互に叩くことが可能となり、畦の土面に対する押圧の回数が増え、畦の上面から法面に亘って滑らかな土面の成形が可能であることはもちろん、より効果的に畦表面を固めることが可能となる。
【0073】
次に、図12中におけるX−X断面図の構成について、図13(b)を参照しながら説明する。
図13(b)に示す通り、延長部位32cの先端である先端部位32dの外側表面部は、上流側法面羽根板21aにおける張出部22aの外側表面部と、下流側法面羽根板21bにおける張出部22bの外側表面部とを結ぶ円弧(図中の円弧Z)よりも内側に位置する構成となっている。
【0074】
このため、整畦体66の表面であって、延長部位32cの先端部位32dを含む周方向(円弧Zの近辺)においては、畦の土面に対して、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bが交互に叩くこととなり、延長部位32cの先端部位32dについては、畦の土面に対して接触することがほとんどなく、あるいは、先端部位32dが畦の土面に接触した場合でも、土への押圧力が弱いこととなる。
【0075】
以上から、本発明においては、畦肩面に対する整畦の際、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bの間に、上面羽根板32における延長部位32cを延在させた構成とすることで、この延長部位32c、張出部22a及び張出部22bにより畦土面を交互に叩くことが可能となり、畦の土面に対する押圧の回数が増すことにより、より効果的に畦表面を固めることが可能となる。
【0076】
加えて、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bの間に延びた上面羽根板32における延長部位32cの先端部位32dについては、この先端部位32dによる畦の土表面への余分な押圧力の発生を抑制し、畦土面に筋状に段差が残ってしまうことを防ぐことができる。
【0077】
つまり、本発明により、畦肩面の整畦において、畦表面を滑らかに整畦させるとともに効果的に押圧力を畦表面に与えることが可能となり、さらに、畦肩面の土表面への余分な押圧力の発生を抑制し、畦土面に余分な段差等が発生してしまうことを抑制することが可能となる。
【0078】
なお、本実施形態においては、図8を用いて先述した通り、上面羽根板32の延長部位32cについて、予め先端部位32dを湾曲させた構成を採用しており、この場合、上面羽根板32が畦の上面からの反作用を受けることで、より効果的に先端部位32dを法面羽根板21の表面に沿って湾曲させることができる。
【0079】
また、先端部位32dを予め湾曲させた構成としない場合であっても、湾曲可能な弾性部材を用いて上面羽根板32として製造しておいてもよく、この場合には、製造工程が容易となり、コスト面での効果を奏することができる。
【0080】
また、図10を参照して先述した通り、本実施形態においては、予め上面羽根板32の延長部位32cを下流側法面羽根板21bの表面に当接させた構成を採用しているものの、予め下流側法面羽根板23の表面に対して非接触としておいてもよいものである。
【符号の説明】
【0081】
1 畦塗り機
20 法面整畦部
21 法面羽根板
22 張出部
23 重なり部
30 上面整畦部
32 上面羽根板
32c 延長部位
32d 先端部位
32e 切欠部位
90 走行機体
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦の法面を整畦する法面整畦部及び畦の上面を整畦する上面整畦部から構成される畦塗り機の整畦体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畦塗り機の整畦体として、畦の法面を整畦する略円錐形状の法面整畦部と、その法面整畦部の頂部に装着されるとともに畦の上面を整畦する略柱形状の上面整畦部とを有する整畦体が知られている。
【0003】
このような整畦体は、法面整畦部については、扇形の複数枚の法面羽根板を周方向に連結した構成とし、上面整畦部については、略矩形状の複数枚の上面羽根板を周方向に並べた構成が知られている。
【0004】
特に、法面整畦部における土への押圧を効果的に行うため、法面羽根板については、法面整畦部の回転方向の下流側に向けて張り出す張出部と、回転方向の上流側に向けて延びる重なり部とを設け、周方向に隣接する法面羽根板は境界部分において上下間隔を置き、法面整畦部における回転方向の下流側に位置する下流側法面羽根板の重なり部を、上流側に位置する上流側法面羽根板の張出部の背面側に連結する構成が知られている。
【0005】
そして、上面整畦部においても、土を効果的に畦の上面に押しつけるため、上面羽根板を樹脂等の可撓性部材とし、その上面羽根板を上面整畦部の回転方向の上流側の端部から下流側の端部に向けて、弾力性を保持しながら徐々に径大として支持部材に装着した構成が知られている(特許文献1)。
【0006】
さらに、畦の上面から法面に亘って滑らかな土表面として整畦するため、上面整畦部の各々の上面羽根板を法面整畦部における法面羽根板の張出部の表面形状に沿って滑らかに延長させることで、上面整畦部から法面整畦部にかけた表面を滑らかな形状とした構成も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−118746号公報
【特許文献2】特開2010−119319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、法面羽根板の張出部の表面に沿って延びた上面整畦部の各々の上面羽根板は、法面羽根板の張出部の表面から突出しているため、その法面羽根板の張出部に比べて余分な押圧力を畦の土面に与えてしまい、整畦後において、この上面整畦部の各々の上面羽根板の押圧力による段差が土面に筋状に残り、畦の土表面への押圧が均一に行われないという問題があった。
【0009】
また、畦の法面に対しては法面整畦部による整畦を行い、畦の上面に対しては上面整畦部により整畦を可能とするものの、畦の法面と上面との間であって、曲線状の土面(以下、「畦肩面」という。)については、その畦肩面に対応する法面整畦部と上面整畦部との間において、法面羽根板や上面羽根板といった羽根板を設けることは困難であり、この畦肩面を効果的に整畦することができないといった問題もあった。
【0010】
そこで本発明は、畦の上面から法面に亘って滑らかな土表面として整畦するため、上面整畦部の各々の上面羽根板について、法面整畦部の法面羽根板の表面形状に沿って滑らかに延長させた構成であっても、段差が土面に形成されることを防止するとともに、畦肩面に対して効果的に整畦を行うことができる畦塗り機の整畦体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、扇形の複数枚の法面羽根板を周方向に連結して略円錐形状として構成され、軸回りの回転により畦の法面を整畦する法面整畦部と、略柱形状であるとともに基端部を前記法面整畦部の頂部に装着され、軸回りの回転により畦の上面を整畦する上面整畦部と、を備える畦塗り機の整畦体であって、前記法面羽根板は、前記法面整畦部の回転方向の下流側に向けて張り出す張出部及び前記回転方向の上流側に向けて延びる重なり部を有し、周方向に隣接する前記法面羽根板は、境界部分において上下間隔を置き、前記回転方向の下流側に位置する下流側法面羽根板の前記重なり部が、上流側に位置する上流側法面羽根板の前記張出部の背面側に連結されており、前記上面整畦部の基端部には、前記法面整畦部に向けて延びる延長部位及び切欠部位が周方向に交互に形成され、前記整畦体による整畦が行われている状態において、前記法面整畦部における前記張出部は前記上面整畦部における前記切欠部位の位置に延在するとともに、前記上面整畦部における前記延長部位は前記上流側法面羽根板の前記張出部と前記下流側法面羽根板の前記張出部との間であって前記下流側法面羽根板の表面に沿って延び、前記整畦体の表面は、前記延長部位と前記張出部とが周方向に交互に突出した領域を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の整畦体であって、前記整畦体による整畦が行われている状態において、前記延長部位の先端である先端部位の外側表面部は、前記上流側法面羽根板における前記張出部の外側表面部と前記下流側法面羽根板における前記張出部の外側表面部とを結ぶ円弧よりも内側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、整畦体の表面形状について、上面羽根板から延びた延長部と法面羽根板の張出部とが周方向に交互に突出した領域を有することとなり、整畦体の回転動作に伴って、この延長部及び張出部により交互かつ均一に畦土面を叩くことが可能となる。
このため、この延長部及び張出部が周方向に交互に突出した整畦体の表面においては、畦の土面に対する押圧の回数が増えることとなり、畦の上面から法面に亘って滑らかな土面の成形が可能であることはもちろん、より効果的に畦表面を固めることが可能となる。
【0014】
また、上流側法面羽根板の張出部及び下流側法面羽根板の張出部の間に延びた上面羽根板の延長部について、その延長部の先端部における外側表面部を、上流側法面羽根板における張出部の外側表面部と下流側法面羽根板における張出部の外側表面部とで結ばれる円弧よりも内側に位置させることで、この延長部の先端部による土面への余分な押圧力の発生を抑制し、畦土面に筋状に段差が残ってしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した畦塗り機の部分平面図を示す。
【図2】本発明を適用した畦塗り機の側面図を示す。
【図3】本発明を適用した畦塗り機の斜視図を示し、同図(a)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図であり、同図(b)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図である。
【図4】本発明を適用した畦塗り機に設けられたオフセットフレームの先端側の部分拡大模式側面図を示す。
【図5】本発明を適用した法面整畦部の斜視図を示す。
【図6】本発明を適用した上面整畦部の分解斜視図を示す。
【図7】本発明を適用した法面整畦部及び支持部材の構成図を示す。
【図8】本発明を適用した上面羽根板の斜視図を示す。
【図9】本発明を適用した整畦体の斜視図、側面図及び前面図を示す。
【図10(a)】本発明を適用した上面整畦部の端面図を示し、畦上面を整畦していない無負荷状態の端面図を示す。
【図10(b)】本発明を適用した上面整畦部の端面図を示し、畦上面を整畦している負荷状態の端面図を示す。
【図11】本発明を適用した整畦体により、畦を整畦している状態の後面図を示す。
【図12】本発明を適用した整畦体により畦を整畦している状態であって、法面羽根板及び上面羽根板の位置関係を示す構成図である。
【図13】本発明を適用した整畦体により畦を整畦している状態であって、法面羽根板の張出部と上面羽根板の延長部との位置関係を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る整畦体の好ましい実施の形態について、説明する。
ここにおいて、先ず、図1(部分平面図)及び図2(側面図)を参照しながら、走行機体に牽引される畦塗り機の全体的な概要を説明し、説明の参考として、畦塗り機の斜視図(図3)も参照する。
【0017】
畦塗り機1は、図1及び図2に示すように、走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結されて、走行機体90の前進及び後進に応じて畦塗り作業を行うものである。この畦塗り機1は、走行機体90に装着されて走行機体90からの動力が入力される入力軸8aを備えた装着部5と、装着部5に設けられ進行方向に対して左右方向に回動可能に支持されたオフセット機構部10と、オフセット機構部10の先端側に旋回自在に配設されて入力軸8aから伝達される動力によって作業を行なう作業部60を有して構成される。
【0018】
装着部5は、機体幅方向に延びるヒッチフレーム6と、ヒッチフレーム6の前方に設けられて走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結される連結フレーム7を有して構成される。ヒッチフレーム6の幅方向の中央下部にはギアボックス8が設けられ、このギアボックス8には前述した入力軸8aが設けられている。
【0019】
オフセット機構部10は、その基端側をヒッチフレーム6に回動自在に連結されて後方側へ延びるオフセットフレーム11と、オフセットフレーム11の幅方向一方側に沿って並設されて基端側がヒッチフレーム6の一方側端に回動自在に連結されたリンク部材13と、オフセットフレーム11の先端側とリンク部材13の先端側との間に回動自在に連結された回動支持アーム15とを有して構成される。
【0020】
オフセットフレーム11は、内部が中空状に形成された箱状部材であり、オフセットフレーム11の先端側とヒッチフレーム6の一方側端部との間に接続された揺動シリンダ17の伸縮により、オフセットフレーム11は進行方向に対して左右方向に揺動可能である。また、オフセットフレーム11の上部には動力伝達機構(図示省略)が設けられ、この動力伝達機構によって、走行機体90から入力軸8aに伝達された動力がオフセットフレーム11の先端側に回転自在に配設された従動軸12に伝達可能に構成されている。
【0021】
リンク部材13の先端部は、オフセットフレーム11の先端部に回動自在に設けられた回動支持アーム15の一方側端に回動自在に取り付けられている。
ここで、図3(a)を参照しながら詳細に説明すると、回動支持アーム15は、進行方向に対して左右方向に延びる平行リンクフレーム部15aと、平行リンクフレーム部15aの基端側端部分から装着部5側へ延びるリンクアーム部15bとを有してなり、リンクアーム部15bの基端側がオフセットフレーム11の先端側下部に回動自在に取り付けられている。
このように構成されたオフセット機構部10は、図1に示す通り、オフセットフレーム11、リンク部材13、ヒッチフレーム6及び回動支持アーム15によって平行リンク機構を形成している。
【0022】
なお、揺動シリンダ17は、電動式油圧シリンダであり、図示しない制御装置からの制御信号に応じて伸縮するようになっている。
【0023】
また、図4(部分拡大模式側面図)に示すように、オフセットフレーム11の先端部に設けられた従動軸12の下部には、動力伝達軸14が従動軸12と同軸上に配置されて下方へ連結されて、動力伝達軸14は従動軸12の回転に伴って回転する。またオフセットフレーム11の先端下部には、動力伝達軸14と同軸上に配置された円筒状の連結部18がオフセットフレーム11に対して回動自在に取り付けられている。この連結部18は動力伝達軸14と非結合状態にあり、動力伝達軸14を回動中心として回動自在である。この連結部18の下部に作業部60の一部である伝動支持ケース61の基端部が接続され、連結部18の上部に作業部60の一部である伝動支持フレーム65が接続されている。このため、作業部60はオフセット機構部10に設けられた動力伝達軸14の中心軸線を回動支点Oとして回動可能である。
【0024】
なお、本実施形態においては、畦塗り機の構成のうち、回動支点Oを回動の中心軸として回動することが可能な部位であって、伝動支持ケース61及び伝動支持フレーム65を含み、その先端部側に配設される天場処理部62、前処理部64、整畦部66の構成を、作業部60として定義し、説明する。
【0025】
伝動支持ケース61には、図1、図3(a)、図3(b)に示すように、その先端側には、圃場の周辺に沿って形成された旧畦の上部を切り崩す天場処理部62と、切り崩した土の土盛りを行なう前処理部64が配設され、伝動支持ケース61の基端側には盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦体66が配設されている。伝動支持ケース61内には不図示の動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構は、従動軸12からの動力を受けて天場処理部62、前処理部64、整畦体66に動力伝達可能に構成されている。
【0026】
天場処理部62は、回転自在な天場処理ロータ62a(図3(b)参照)を備える。天場処理ロータ62aは天場動力伝達ケース63を介して上下方向に回動可能に伝動支持ケース61に連結された前処理部64の先端部に連結されるとともに、伝動支持フレーム65を介して支持されている。天場動力伝達ケース63内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構を介して伝動支持ケース61の動力伝達機構に伝達された動力が天場処理ロータ62aに伝達されるようになっている。
【0027】
前処理部64は、回転自在な耕耘爪64a(図2参照)を備える。耕耘爪64aは伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達され、前処理部64は伝動支持ケース61に連結され伝動支持フレーム65を介して支持されている。
【0028】
整畦体66は、伝動支持ケース61に回転自在に支持された略円錐形状の法面整畦部20と、法面整畦部20の頂部に取り付けられて畦方向に延びる上面整畦部30とを有してなる。整畦体66は伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して回転動力が伝達されるように構成され、伝動支持ケース61に支持されている。このため、作業部60は連結部18を介してオフセット機構部10の先端側に設けられた動力伝達軸14(図4参照)の中心軸線を回動支点Oとして旋回可能である。
【0029】
次に、法面整畦部20及び法面整畦部20を構成する法面羽根板21について、図5を参照しながら説明する。
法面整畦部20は、図5に示す通り、扇形をした複数枚の法面羽根板21を半径方向の直線部分で互いに連結することにより全体として略円錐形状に形成されており、中心位置である頂部には、複数枚の法面羽根板21を連結する際の位置決めの基準になるとともに、上面整畦部30を固定するための固定部24が配置されている。
【0030】
また、各々の法面羽根板21は、法面整畦部20の回転方向(図中矢印V)の下流側に向けて張り出す張出部22と、回転方向の上流側に向けて延びる重なり部23とを有している。
そして、周方向に隣接する複数枚の法面羽根板は、互いの境界部分において上下間隔を置き、法面整畦部20における回転方向の下流側に位置する下流側法面羽根板21bの重なり部23を、上流側に位置する上流側法面羽根板21aの張出部22の背面側に連結されている。
【0031】
具体的に説明すると、互いに隣接する上流側法面羽根板21a及び下流側法面羽根板21bは、上流側法面羽根板21aと下流側法面羽根板21bとの間に固定部24の保持部24aを挟み込むことで支持され、この上流側法面羽根板21a及び下流側法面羽根板21bの間に上下間隔が形成された状態で、互いに溶接等により接合されている。
【0032】
このように、上下間隔を設けておくことで、法面整畦部20が図中矢印Vに向けて回転して、整畦が行われる際には、各法面羽根板21の表面と畦の法面との間の距離は、この回転方向の上流側から下流側へかけて次第に小さくなるため、各法面羽根板21による畦の法面を押圧する力が上流側から下流側へかけて次第に大きくなり、効果的に土表面を締め固めることが可能となっている。
【0033】
なお、固定部24には、上面整畦部30を固定するため、ボルト等を締結可能とするねじ孔24bが設けられており、この点については後述する。
【0034】
次に、法面整畦部20の固定部24に固定される上面整畦部30の構成について、その分解図としての図6を参照しながら説明する。
図6に示す通り、上面整畦部30は、法面整畦部20の固定部24に固定される支持部材34や、支持部材34の周方向において間隔を置いて装着される複数枚の上面羽根板32等から構成されており、複数枚の上面羽根板32は、接合部材4や締結部材5を用いて支持部材34にそれぞれ装着されることとなる。
【0035】
なお、本実施形態において支持部材34は、8角柱形状となっており、支持部材34の周面部を複数の平面形状としたことで、上面羽根板32の装着が容易なものとなっている。つまり、支持部材34を角柱形状とすることで、上面羽根板32の装着を容易かつ確実なものとしている。
【0036】
また、図示は省略するものの、支持部材34を円柱とした場合であっても、その支持部材34の周面部の周方向において、接合部材4を介して複数枚の上面羽根板32を装着させた構成としてもよく、この場合には、支持部材34の製造が容易であるという効果を奏する。
【0037】
ここで、法面整畦部20の固定部24に支持部材34が固定される構成について、図7を参照しながら説明する。
図7に示す通り、支持部材34は、ボルト7を貫通させるとともに、そのボルト7の先端を固定部24のねじ孔24bに螺入することによって固定部24に固定されている。
【0038】
より詳細に説明すると、支持部材34の内部には、支持部材34の剛性を確保するため、芯材6を備えており、この芯材6は、支持部材34の軸方向において複数のフランジ部62を備えている。
さらに、これらフランジ部62には、ボルト7を貫通可能とする貫通孔が施されており、支持部材34の側面に設けられた補剛板31と、複数のフランジ部62の貫通孔とにボルト7を貫通させて、当該ボルト7の先端を固定部24のねじ孔24bに螺入することによって、法面整畦部20に対して支持部材34を固定させることとしている。
【0039】
次に、上面羽根板32の形状について、図6及び図8を参照しながら説明する。
上面羽根板32は、支持部材34の長手方向の長さと略同程度の長さを有する平面状の基端部位32aと、基端部位32aから支持部材34の周方向に張り出すとともに湾曲した連続部位32bと、連続部位32b及び基端部位32aから連続して形成されるとともに、連続部位32bの反対側であって法面整畦部20側へ延びる延長部位32cとを有している。
つまり、延長部位32cは、図6に示す通り、上面整畦部30が法面整畦部20の固定部24に固定されることで、法面整畦部20側に向けて延びた状態となる。
【0040】
さらに、図8において点線で示す通り、基端部位32aの法面整畦部20側の端部から、延長部位32cの先端部位32dまでの領域においては、切欠部位32eが施されており、上面羽根板32の回転方向(図中矢印T)において、延長部位32cの先端部位32dと切欠部位32eとが隣り合わせに設けられている。
【0041】
また、本実施形態において、上面羽根板32の回転方向(図中矢印T)における基端部位32aの幅は、接合部材4を介して支持部材34に装着できる幅であればよく、連続部位32bの幅よりも小さい構成となっている。
【0042】
そして、連続部位32bについては、回転方向(図中矢印T)の幅を長くした構成としており、連続部位32bから法面整畦部20側へ向けて延長部位32cを延ばして形成したことで、延長部位32cの領域を大きくさせている。
このため、延長部位32cの法面整畦部20への接触の際に、法面整畦部20から受ける反力を、延長部位32cにおいて効果的に分散させることができ、延長部位32cの曲げ変形を容易に生じさせるようになっている。
【0043】
なお、上面羽根板32は、畦の上面における整畦を効果的に行うため、樹脂等の弾性部材によって一体的に成形されることが望ましい。
【0044】
次に、法面整畦部20及び上面整畦部30が一体化して構成された整畦体66について、多方向から見た外観図である図9(a)〜図9(d)を参照しながら説明する。
ここにおいて、図9(a)及び図9(b)は、整畦体66を斜め上から見た斜視図を示し、図9(c)は整畦体66の側面図を、図9(d)は整畦体66を走行機体90の進行方向前方から進行方向後方に向けて見た図を示している。
【0045】
そして、図9(a)及び図9(b)に示す通り、整畦体66は図中の一点鎖線を中心軸Qとして、図中の矢印の方向Rに回転し、法面整畦部20によって畦の法面を整畦すると同時に、上面整畦部30によって畦の上面を整畦することとなっている。
【0046】
さらに、上面羽根板32の延長部位32cは、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bの間であって、下流側法面羽根板21bの表面の形状に沿って湾曲して、滑らかに延びた状態となっており、この点については後述する。
【0047】
次に、上面整畦部30における畦の上面への整畦について、上面整畦部30の側面から見た図である図10(a)及び図10(b)を参照しながら説明する。
ここにおいて、図10(a)は、整畦体66による畦の整畦が行われていない状態(無負荷状態)を示しており、図10(b)は、畦の整畦を行っている状態(負荷状態)を示している。
【0048】
まず、図10(a)に示す通り、上面整畦部30には、接合部材4によって複数枚の上面羽根板32が支持部材34の周面部に互いに間隔を維持して装着されており、上面羽根板32の連続部位32bが、支持部材34の周面部の方向に沿って凸となる曲面を有して、支持部材34に対して曲げ(弾性)変形可能な状態となっている。
【0049】
そして、無負荷状態において上面羽根板32の連続部位32bは、負荷による変形を伴わない状態であって、図中の円弧Sに沿って、変形する前の状態を維持しており、支持部材34の中心Aから所定の距離(図中J)を維持することとなる。
【0050】
さらに、図10(a)に示す通り、本実施形態においては、上面整畦部30の回転方向(図中矢印F)における上流側に位置する上流側上面羽根板32mの連続部位32bは、その回転方向の下流側に位置する下流側上面羽根板32nの基端部位32aを覆う長さを有することとしている。
【0051】
次に、上面整畦部30により、畦の上面が整畦されている状態について、図10(b)を参照しながら説明する。
ここにおいて、図10(b)に示す通り、畦の上面の整畦は、上面整畦部30が走行機体90の進行方向(図中矢印G)に向けて進行しながら、上面整畦部30が図中矢印Fの方向に向けて回転して行われることとなる。
【0052】
具体的には、上面整畦部30の回転に伴い、始めに、未整畦の畦(図中70)の表面に上面羽根板32の連続部位32bが接触し、連続部位32bの押圧力によって、整畦された畦の表面(図中70a)が形成され、その後、連続部位32bが畦の表面から離れることとなる。
【0053】
この場合、連続部位32bが畦の表面を押圧している際には、その連続部位32bは、支持部材34の中心Aからその支持部材34の周面部までの距離(図中H)を半径とする円弧面を有する円筒に近い形状となるように、変形することとなる。
【0054】
つまり、図10(b)にて示す負荷状態において、支持部材34の中心Aから上面羽根板32における連続部位32bの表面までの距離(図中H)は、無負荷状態における支持部材34の中心Aから上面羽根板32における連続部位32bの表面までの距離J(図10(a)参照)であって図中の円弧Sの半径よりも小さくなり、その小さくなった距離分(図中U)だけ畦の上面を押圧して、畦の上面を整畦することとなる。
【0055】
実際の作業においては、整畦体66による畦の整畦を丁寧かつ確実に行う必要性から、上面整畦部30における図中矢印Gに向けた進行のスピードに比べて、図中矢印Fの方向に向けた回転のスピードを速くし、上面整畦部30は畦の上面に対してスリップ回転しながら畦の上面を圧密し、表面を平滑に仕上げることとなる。
【0056】
さらに、先述した通り、上面羽根板32の連続部位32bは、支持部材34の周面部の方向に沿って凸となる曲面を有して形成されているため、図中矢印Fの方向に向けた高速回転を行いながら、畦の表面から離れた後であっても、連続部位32bに付着した土が跳ね上がってしまうことを抑えるという効果を得ている。
【0057】
次に、法面整畦部20及び上面整畦部30が一体化して構成された整畦体66を用いて、畦を整畦する状態について、図11を参照しながら説明する。
図11に示す通り、整畦作業は、畦上面70bに対して上面整畦部30が押圧し、畦法面70cに対して法面整畦部20が押圧して作用することで行われる。
【0058】
そして、上面羽根板32の連続部位32bが畦上面70bを押圧することにより、畦上面70bからの反作用を受けて、支持部材34の周面部に重なるように湾曲し、その結果、延長部位32cも畦上面70bからの反作用を受け、法面整畦部20の法面羽根板21の表面に沿って曲がることとなる。
【0059】
特に、上面整畦部30においては、図11に示す通り、中心軸Qを回転の中心として回転することで、畦上面70bに接している上面羽根板32から中心軸Qまでの距離(図中H)が、畦上面70bに接していない上面羽根板32から中心軸Qまでの距離(図中J)よりも小さくなり、その小さくなった距離分だけ畦上面70bを押圧して、畦の上面を整畦することとなる。
【0060】
この結果、上面羽根板32における連続部位32bから延長部位32cにかけた部分は、法面羽根板21の表面に倣って湾曲するため、湾曲したその連続部位32bから延長部位32cに亘る部分は、畦上面70bと畦法面70cとを畦全体の内部側へ向けて押圧することとなり、畦上面70bから畦法面70cにかけた畦肩面70dの土部分が、曲面状かつ滑らかに整畦されることとなる。
【0061】
この場合、畦上面70bと畦法面70cの境界部分における畦肩面70dの土は均等な圧力で均されることとなり、この畦肩面70dの表面を滑らかに整畦することが可能となる。
【0062】
次に、整畦体66を用いて畦を整畦している状態について、整畦体66を走行機体90の進行方向に対して側面から見た図であって、図11における図中矢印Kの方向から見た状態(図11における畦を省略)を示す図12を参照しながら説明する。
【0063】
本実施形態においては、図12に示す通り、上面整畦部30が畦の上面を整畦している際に、上面羽根板32の延長部位32cは、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bの間であって、下流側法面羽根板21bの表面の形状に沿って湾曲し、滑らかに延びた状態となる。
【0064】
このため、先述した通り、畦の上面と法面との境界部分における土は均等な圧力で均されることとなり、その結果、畦の上面と法面との境界(面)が滑らかに整畦されることとなる。
【0065】
さらに、図12に示す通り、上面羽根板32が弾性屈曲した状態においては、上面羽根板32の切欠部位32eの位置に、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bが延在することとなり、整畦体66の表面には、張出部22aと延長部位32cと張出部22bとが周方向(図中の円弧Z及び円弧Y)に順に突出した領域を有することとなる。
つまり、延長部位32cと張出部22(張出部22aや張出部22b)とにより、畦の土面を交互に叩くことが可能となっている。
【0066】
このため、本発明においては、整畦体66の回転動作に伴って、延長部位32c及び張出部22により畦土面、特に、畦肩面を交互に叩くことが可能となり、畦の土面に対する押圧の回数が増え、畦の上面から法面に亘って滑らかな土面の成形が可能であることはもちろん、より効果的に畦表面を固めることが可能となる。
【0067】
なお、上面羽根板32は畦の上面に接触したときに支持部材34の外形に沿って弾性変形し、畦の上面から離脱するにつれて元の形状に復元する弾性を有するポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂や鋼板等の金属材料等から成形されるものが望ましい。
【0068】
また、上面羽根板32の先端部位32dは、法面整畦部20の法面羽根板21に対して、上面整畦部30側から重なっており、三角形状や台形状など、その形状を問うことなく、捲れ(めくれ)等を防止するために角部を落とし、外形を曲線状としてもよい。
【0069】
さらに、本実施形態において、上面羽根板32は、図8において先述した通り曲面部を備えて形成しているものの、畦表面からの反作用により湾曲する性質であれば適用が可能であり、平面状に成形されてあってもよい。
【0070】
次に、法面羽根板21の張出部22と上面羽根板32の延長部位32cとの位置関係について、図12、図13(a)及び図13(b)を参照しながら、説明する。
ここにおいて、図13(a)は上面羽根板32が弾性屈曲した状態を示す図12の図中W−W断面図について、上面羽根板32における延長部位32cと法面羽根板21の張出部22との位置関係を示す断面図である。
そして、図13(b)は同図中X−X断面図について、上面羽根板32における先端部位32dと法面羽根板21の張出部22との位置関係を示す断面図である。
【0071】
ここで、図13(a)に示す通り、延長部位32cは、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bの間であって、下流側法面羽根板21bの表面の形状に沿って滑らかに延びた状態となっており、延長部位32cの外側表面部について、上流側法面羽根板21aにおける張出部22aの外側表面部と、下流側法面羽根板21bにおける張出部22bの外側表面部とを結ぶ円弧(図中の円弧Y)上に位置する構成となっている。
【0072】
このため、整畦体66の表面であって、円弧Yの近辺に沿った周方向においては、畦の土面に対して、延長部位32c及び張出部22により畦土面、特に、畦肩面を交互に叩くことが可能となり、畦の土面に対する押圧の回数が増え、畦の上面から法面に亘って滑らかな土面の成形が可能であることはもちろん、より効果的に畦表面を固めることが可能となる。
【0073】
次に、図12中におけるX−X断面図の構成について、図13(b)を参照しながら説明する。
図13(b)に示す通り、延長部位32cの先端である先端部位32dの外側表面部は、上流側法面羽根板21aにおける張出部22aの外側表面部と、下流側法面羽根板21bにおける張出部22bの外側表面部とを結ぶ円弧(図中の円弧Z)よりも内側に位置する構成となっている。
【0074】
このため、整畦体66の表面であって、延長部位32cの先端部位32dを含む周方向(円弧Zの近辺)においては、畦の土面に対して、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bが交互に叩くこととなり、延長部位32cの先端部位32dについては、畦の土面に対して接触することがほとんどなく、あるいは、先端部位32dが畦の土面に接触した場合でも、土への押圧力が弱いこととなる。
【0075】
以上から、本発明においては、畦肩面に対する整畦の際、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bの間に、上面羽根板32における延長部位32cを延在させた構成とすることで、この延長部位32c、張出部22a及び張出部22bにより畦土面を交互に叩くことが可能となり、畦の土面に対する押圧の回数が増すことにより、より効果的に畦表面を固めることが可能となる。
【0076】
加えて、上流側法面羽根板21aの張出部22a及び下流側法面羽根板21bの張出部22bの間に延びた上面羽根板32における延長部位32cの先端部位32dについては、この先端部位32dによる畦の土表面への余分な押圧力の発生を抑制し、畦土面に筋状に段差が残ってしまうことを防ぐことができる。
【0077】
つまり、本発明により、畦肩面の整畦において、畦表面を滑らかに整畦させるとともに効果的に押圧力を畦表面に与えることが可能となり、さらに、畦肩面の土表面への余分な押圧力の発生を抑制し、畦土面に余分な段差等が発生してしまうことを抑制することが可能となる。
【0078】
なお、本実施形態においては、図8を用いて先述した通り、上面羽根板32の延長部位32cについて、予め先端部位32dを湾曲させた構成を採用しており、この場合、上面羽根板32が畦の上面からの反作用を受けることで、より効果的に先端部位32dを法面羽根板21の表面に沿って湾曲させることができる。
【0079】
また、先端部位32dを予め湾曲させた構成としない場合であっても、湾曲可能な弾性部材を用いて上面羽根板32として製造しておいてもよく、この場合には、製造工程が容易となり、コスト面での効果を奏することができる。
【0080】
また、図10を参照して先述した通り、本実施形態においては、予め上面羽根板32の延長部位32cを下流側法面羽根板21bの表面に当接させた構成を採用しているものの、予め下流側法面羽根板23の表面に対して非接触としておいてもよいものである。
【符号の説明】
【0081】
1 畦塗り機
20 法面整畦部
21 法面羽根板
22 張出部
23 重なり部
30 上面整畦部
32 上面羽根板
32c 延長部位
32d 先端部位
32e 切欠部位
90 走行機体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扇形の複数枚の法面羽根板を周方向に連結して略円錐形状として構成され、軸回りの回転により畦の法面を整畦する法面整畦部と、
略柱形状であるとともに基端部を前記法面整畦部の頂部に装着され、軸回りの回転により畦の上面を整畦する上面整畦部と、を備える畦塗り機の整畦体であって、
前記法面羽根板は、前記法面整畦部の回転方向の下流側に向けて張り出す張出部及び前記回転方向の上流側に向けて延びる重なり部を有し、
周方向に隣接する前記法面羽根板は、境界部分において上下間隔を置き、前記回転方向の下流側に位置する下流側法面羽根板の前記重なり部が、上流側に位置する上流側法面羽根板の前記張出部の背面側に連結されており、
前記上面整畦部の基端部には、前記法面整畦部に向けて延びる延長部位及び切欠部位が周方向に交互に形成され、
前記整畦体による整畦が行われている状態において、前記法面整畦部における前記張出部は前記上面整畦部における前記切欠部位の位置に延在するとともに、前記上面整畦部における前記延長部位は前記上流側法面羽根板の前記張出部と前記下流側法面羽根板の前記張出部との間であって前記下流側法面羽根板の表面に沿って延び、
前記整畦体の表面は、前記延長部位と前記張出部とが周方向に交互に突出した領域を有することを特徴とする畦塗り機の整畦体。
【請求項2】
前記整畦体による整畦が行われている状態において、前記延長部位の先端である先端部位の外側表面部は、前記上流側法面羽根板における前記張出部の外側表面部と前記下流側法面羽根板における前記張出部の外側表面部とを結ぶ円弧よりも内側に位置することを特徴とする請求項1に記載の整畦体。
【請求項1】
扇形の複数枚の法面羽根板を周方向に連結して略円錐形状として構成され、軸回りの回転により畦の法面を整畦する法面整畦部と、
略柱形状であるとともに基端部を前記法面整畦部の頂部に装着され、軸回りの回転により畦の上面を整畦する上面整畦部と、を備える畦塗り機の整畦体であって、
前記法面羽根板は、前記法面整畦部の回転方向の下流側に向けて張り出す張出部及び前記回転方向の上流側に向けて延びる重なり部を有し、
周方向に隣接する前記法面羽根板は、境界部分において上下間隔を置き、前記回転方向の下流側に位置する下流側法面羽根板の前記重なり部が、上流側に位置する上流側法面羽根板の前記張出部の背面側に連結されており、
前記上面整畦部の基端部には、前記法面整畦部に向けて延びる延長部位及び切欠部位が周方向に交互に形成され、
前記整畦体による整畦が行われている状態において、前記法面整畦部における前記張出部は前記上面整畦部における前記切欠部位の位置に延在するとともに、前記上面整畦部における前記延長部位は前記上流側法面羽根板の前記張出部と前記下流側法面羽根板の前記張出部との間であって前記下流側法面羽根板の表面に沿って延び、
前記整畦体の表面は、前記延長部位と前記張出部とが周方向に交互に突出した領域を有することを特徴とする畦塗り機の整畦体。
【請求項2】
前記整畦体による整畦が行われている状態において、前記延長部位の先端である先端部位の外側表面部は、前記上流側法面羽根板における前記張出部の外側表面部と前記下流側法面羽根板における前記張出部の外側表面部とを結ぶ円弧よりも内側に位置することを特徴とする請求項1に記載の整畦体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−83(P2013−83A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136272(P2011−136272)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
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