説明

整髪剤用乳化組成物

【課題】室温で固形の油剤が多量に配合された従来の乳化剤型の整髪剤ではなし得なかった、べたつき感なく整髪することができ、優れた整髪力を付与できるとともに、油剤特有の不自然なギラつきがなく、自然な風合いのふんわりとした軽い仕上がり感が得られ、更には、優れた再整髪性をも十分に発揮させることのできる整髪剤用乳化組成物の提供。
【解決手段】(A)無水ケイ酸および/又は疎水化無水ケイ酸、(B)室温で液状の油剤、(C)非イオン性界面活性剤、並びに(D)粘土鉱物を含有してなる整髪剤用乳化組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整髪剤用乳化組成物に関する。尚、本発明における室温とは、1〜30℃の温度範囲を表す。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘアワックスやヘアクリームなどの代表される乳化された組成物からなる整髪剤には、整髪剤の主機能である優れた整髪力を付与するため、主としてロウなどの室温で固形の油剤が多量に配合されている。これら室温で固形の油剤による整髪特性は、一度整髪した髪を再度整髪できるといった再整髪が容易に行える点にある。
【0003】
しかしながら、主機能を担保するために、室温で固形の油剤を有効量配合すると、優れた整髪力が発揮され、且つ、再整髪を容易に行うことができる反面、油剤特有の油っぽさやべたつき感が際立ち使用感に劣るといった問題がある。また、毛髪にギラつきが生じて自然な風合いに劣るだけでなく、ふんわりとした軽い仕上がり感が得られ難いといった問題もある。
【0004】
そのため、油っぽさやべたつき感を低減させて軽い仕上がり感を得るべく、室温で固形の油剤の替わりに室温で液状の油剤を用いて整髪する試みがなされている。具体的には、例えば、特定の成分に溶解する25℃で液状の油分を含有する整髪剤(例えば、特許文献1を参照)、特定の増粘性高分子、アルカリ性物質、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、室温で液状の油剤を含有する毛髪化粧料(例えば、特許文献2を参照)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、これら試みによってある程度、油っぽさやべたつき感を低減させることはできるものの、室温で液状の油剤を用いた整髪では、室温で固形の油剤の主機能である優れた整髪力と再整髪性を十分に発揮させることができないといった問題がある。
【0006】
また、一方で、室温で固形の油剤特有のべたつき感やギラつきを低減させる手段として、粉体を配合させる試みもなされている。具体的には、例えば、特定の粘度の液体油と、高級アルコール又は高級脂肪酸と、化粧料用水不溶性粉体と、界面活性剤と、水とを特定量で含有する乳化型毛髪化粧料(例えば、特許文献3を参照)、不溶性のシリコーン粉体又は有機粉体と、特定の粘度のシリコーン油と、カルボキシ基を有する増粘性高分子化合物又はその塩と、界面活性剤とを含有する水中油型乳化整髪剤組成物(例えば、特許文献4を参照)などが提案されている。
【0007】
しかしながら、これら試みによって、ある程度、べたつき感やギラつきを低減させることはできるものの、室温で固形の油剤の主機能である優れた再整髪性を十分に発揮させることができないといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−342118号公報
【特許文献2】特開2004−67570号公報
【特許文献3】特開2004−231615号公報
【特許文献4】特開2009−40741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、室温で固形の油剤が多量に配合された従来の乳化剤型の整髪剤ではなし得なかった、べたつき感なく整髪することができ、優れた整髪力を付与できるとともに、油剤特有の不自然なギラつきがなく、自然な風合いのふんわりとした軽い仕上がり感が得られ、更には、優れた再整髪性をも十分に発揮させることのできる整髪剤用乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、優れた整髪剤用乳化組成物を開発すべく鋭意研究を続けたところ、無水ケイ酸又は疎水化無水ケイ酸の優れた整髪機能を見出し、これら成分と、室温で液状の油剤とを含む乳化剤型の整髪剤を頭髪に適用すると、驚くべくことに、べたつき感なく整髪することができ、油剤特有の不自然なギラつきがなく、頭髪全体をふんわりとボリュームアップさせて自然な風合いの軽い仕上がり感が得られるとともに、再整髪性をもできることを発見し、本発明の完成に至った。
【0011】
即ち、本発明は、
〔1〕(A)無水ケイ酸および/又は疎水化無水ケイ酸、(B)室温で液状の油剤、(C)非イオン性界面活性剤、並びに(D)粘土鉱物を含有してなる整髪剤用乳化組成物、
〔2〕前記(A)成分の含有量が、組成物中、0.1〜10質量%である前記〔1〕に記載の整髪剤用乳化組成物、
〔3〕前記(B)成分の油剤が、炭化水素油、脂肪酸エステル油およびシリコーン油の群から選ばれる少なくとも1種である前記〔1〕又は〔2〕に記載の整髪剤用乳化組成物、
〔4〕前記(A)成分と前記(B)成分との質量含有比が、(A):(B)=1:0.1〜1:20の範囲を満たすことを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕の何れかに記載の整髪剤用乳化組成物、
〔5〕前記(D)成分の含有量が、組成物中、0.1〜5質量%である前記〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の整髪剤用乳化組成物、並びに
〔6〕実質的に、室温で固形のロウおよび/又は室温で固形の炭化水素油を含有しないことを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕の何れかに記載の整髪剤用乳化組成物
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の整髪剤用乳化組成物は、無水ケイ酸又は疎水化無水ケイ酸の優れた整髪特性が発揮されることにより、従来の乳化剤型の整髪剤と比べ、べたつき感なく整髪することができ、優れた整髪力を付与できるとともに、油剤特有の不自然なギラつきがなく、頭髪全体をふんわりとボリュームアップさせて自然な風合いの軽い仕上がり感が得られるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明の整髪剤用乳化組成物は、従来において室温で固形の油剤を有効量配合しなければ十分に発揮させることができなかった再整髪性を、本発明の構成とすることで十分に発揮させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の整髪剤用乳化組成物は、(A)無水ケイ酸および/又は疎水化無水ケイ酸、(B)室温で液状の油剤、(C)非イオン性界面活性剤、並びに(D)粘土鉱物を含有する。
【0015】
(A)成分の無水ケイ酸、疎水化無水ケイ酸は、べたつき感なく整髪することができ、頭髪全体をふんわりとボリュームアップさせて自然な風合いの軽い仕上がり感を付与する成分として組成物中に配合される。そして本発明において疎水化無水ケイ酸とは、下記処理剤によって無水ケイ酸表面に疎水化処理が施された粉体である。
【0016】
疎水化処理に用いられる具体的な処理剤としては、例えば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、トリメチルアルコキシシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、長鎖アルキルトリクロロシラン、エチルトリアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、ヘキシルトリアルコキシシラン、長鎖アルキルトリアルコキシシラン、メタクリルシラン、フルオロアルキルシラン、ペルフルオロアルキルシランなどの有機シリル化合物;ジメチルポリシロキサン(シリコーンオイル)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、アミノ変性シリコーンなどのシリコーン化合物などが挙げられる。疎水化処理方法は、公知の方法を用いて疎水化処理を施すことができれば特に限定されないが、例えば、液相法、気相法、オートクレーブ法などを例示することができる。
【0017】
具体的な疎水化無水ケイ酸としては、例えば、ジメチルシロキシル化無水ケイ酸、トリメチルシロキシル化無水ケイ酸、オクチルシロキシル化無水ケイ酸、シリコーンオイル処理無水ケイ酸、メタクリルシロキシル化無水ケイ酸などを例示することができる。
【0018】
上記した(A)成分の無水ケイ酸および疎水化無水ケイ酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これら(A)成分の中でも、本発明においては、べたつき感なく整髪することができ、再整髪をも可能とする観点から、後述する吸油量(mL/100g)を満たすものを用いることが好ましい。
【0019】
より具体的な吸油量としては、無水ケイ酸又は疎水化無水ケイ酸の100gあたりの吸油量が、100〜1000mL/100gの範囲を満たすことが好ましく、より好ましくは150〜800mL/100gの範囲、さらに好ましくは200〜700mL/100gの範囲である。尚、吸油量は、JIS K5101に記載の方法に準拠し測定された値である。
【0020】
尚、(A)成分の無水ケイ酸および疎水化無水ケイ酸は、市販品をそのまま用いることもできる。具体的には、無水ケイ酸の市販品としては、例えば、AEROSIL 50、90G、130、150、200、300、380、200V、OX50(商品名,いずれも日本アエロジル社製);サンスフェアH−31、H−51、H−121、H−201、H−32、H−52、H−122、H−33、H−53(商品名,いずれもAGCエスアイテック社製)などを例示することができる。
【0021】
ジメチルシロキシル化無水ケイ酸の市販品としては、例えば、AEROSIL R972、R974、R9200(商品名,いずれも日本アエロジル社製)などを例示することができる。
【0022】
トリメチルシロキシル化無水ケイ酸の市販品としては、例えば、AEROSIL RX200、R8200、RX300、R812S(商品名,いずれも日本アエロジル社製)などを例示することができる。
【0023】
オクチルシロキシル化無水ケイ酸の市販品としては、例えば、AEROSIL R805(商品名,日本アエロジル社製)などを例示することができる。
【0024】
シリコーンオイル処理無水ケイ酸の市販品としては、例えば、AEROSIL R202、RY200、RY200S、RY300(商品名,いずれも日本アエロジル社製)などを例示することができる。
【0025】
メタクリルシロキシル化無水ケイ酸の市販品としては、例えば、AEROSIL R711(商品名,日本アエロジル社製)などを例示することができる。
【0026】
(A)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、べたつき感なく整髪することができ、再整髪をも可能とする観点から、組成物中、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上である。また、使用感の観点から、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下である。これらの観点から、(A)成分の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0027】
(B)成分の室温で液状の油剤としては、例えば、室温で液状である、油脂、炭化水素油、脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル油、シリコーン油などが挙げられる。これら(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。本発明においては、上記した(B)成分の中でも、油剤特有の不自然なギラつきがなく、自然な風合いの軽い仕上がり感が得られる観点から、炭化水素油、脂肪酸エステル油、シリコーン油を用いることが好ましい。
【0028】
具体的な炭化水素油としては、例えば、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワラン、流動イソパラフィン、流動パラフィンなどを例示することができる。
【0029】
具体的な脂肪酸エステル油としては、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシルなどを例示することができる。
【0030】
具体的なシリコーン油としては、例えば、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどのストレートシリコーン油;オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサンなどの環状シリコーン油;アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンなどの変性シリコーン油などを例示することができる。
【0031】
(B)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、仕上がり感の観点から、組成物中、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上である。また、整髪力、べたつき感やギラつきの観点から、20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。これらの観点から、(B)成分の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0032】
尚、本発明においては、(A)成分の整髪特性を十分に発揮させる観点、並びに、ギラつきのない自然な風合いのふんわりとした軽い仕上がり感を得る観点から、上記した(A)成分と、(B)成分の含有量は、質量含有比で(A):(B)=1:0.1〜1:20の範囲を満たし調製されることが好ましく、より好ましくは、(A):(B)=1:0.5〜1:10である。
【0033】
(C)成分の非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンなどが挙げられる。
【0034】
具体的には、例えば、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジアラキン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル;モノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、モノカプリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ポリ(4〜10)グリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、セスキオレイン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、ジステアリン酸ポリ(6〜10)グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ポリ(10)グリセリルなどの上記したグリセリン脂肪酸エステルの重合度2〜10のポリグリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物;モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;モノステアリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコールなどのプロピレングリコール脂肪酸エステル;モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンイソセチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどを例示することができる。これら(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0035】
(C)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、乳化組成物とする観点から、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.3質量%以上である。また、使用感の観点から、30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。これらの観点から、(C)成分の含有量は、0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.3〜20質量%である。
【0036】
(D)成分の粘土鉱物としては、天然物、天然物からの精製物又は合成の何れのものであっても特に限定されないが、例えば、カオリン、ナクライト、ディッカイト、ハロサイトなどのカオリン族粘土鉱物;アンティゴライト、アメサイト、クロンステダイトなどのアンティゴライト族粘土鉱物;パイロフィライト、タルク(滑石)などのパイロフィライト族粘土鉱物;イライト、海緑石、セラドナイト、セリサイト、マイカ(雲母)、白雲母、クロム白雲母、黒雲母などの雲母族粘土鉱物;ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、バイデライト、ノントナイト、サポナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト族粘土鉱物;バーミキュライトなどのバーミキュライト族粘土鉱物;緑泥石(クロライト)などの緑泥石族粘土鉱物;スメクタイト族やバーミキュライト族の粘土鉱物を塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムなどの第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理した有機変性粘土鉱物などを例示することができる。これら(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0037】
本発明においては、上記した(D)成分の中でも、組成物中における(A)成分の分散性を高めて(A)成分特有の整髪特性を十分に発揮させる観点から、スメクタイト族粘土鉱物を用いることが好ましく、中でも、モンモリロナイト、スメクタイト、サポナイト、ヘクトライトを用いることが最も好ましい。
【0038】
尚、(D)成分の粘土鉱物は、市販品をそのまま用いることもできる。具体的には、モンモリロナイトの市販品としては、例えば、クニピアF(商品名,クニミネ工業社製)などを例示することができる。スメクタイトの市販品としては、例えば、ルーセンタイトSWN、ルーセンタイトSWF(商品名,何れもコープケミカル社製)などを例示することができる。サポナイトの市販品としては、例えば、スメクトンSA(商品名,クニミネ工業社製)などを例示することができる。ヘクトライトの市販品としては、例えば、ラポナイトXLG、ラポナイトXLS、ラポナイトXL21(商品名,何れもRock wood社製)などを例示することができる。
【0039】
(D)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、(A)成分の分散性を高めて整髪特性を十分に発揮させる観点から、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.3質量%以上である。また、延展性の観点から、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下である。これらの観点から、(C)成分の含有量は、0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.3〜3質量%である。
【0040】
本発明においては、上記した(A)〜(D)成分を充足させた整髪剤用乳化組成物とすることで、べたつき感なく整髪することができ、油剤特有の不自然なギラつきがなく、頭髪全体をふんわりとボリュームアップさせて自然な風合いの軽い仕上がり感が得られるとともに、再整髪性をもできるという効果を発揮させることが可能となることから、実質的に室温で固形のロウ、室温で固形の炭化水素油を含有させないことが好ましい。
【0041】
尚、本発明における「実質的に含有しない」とは、「別途、室温で固形のロウおよび/又は室温で固形の炭化水素油を含有させることはしない」という意味であり、各配合成分中に含まれる微量の室温で固形のロウや室温で固形の炭化水素油までを除外するものではない。
【0042】
また、本発明の整髪剤用乳化組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常化粧品に用いられる成分、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどの多価アルコール;ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミド/ビニルイミダゾール共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、アクリル樹脂アルカノールアミン、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、N−メタクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、N,Nジメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)アミン=N−オキシド・メタクリル酸アルキルエステル共重合体などの皮膜形成剤;カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガムなどの水溶性増粘剤;ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール;ヒアルロン酸、コラーゲン、パントテニルアルコールなどの保湿剤;メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、安息香酸塩などの防腐剤;エタノールなどの低級アルコール;リン酸およびその塩類、クエン酸およびその塩類、乳酸およびその塩類、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミンなどのpH調整剤、香料、紫外線吸収剤、色素などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0043】
本発明の整髪剤用乳化組成物は、例えば、ワックス状、クリーム状、乳液状などの剤型に適用することができ、製造方法としては、前記各構成成分を混合し、公知の方法、例えばホモミキサーを用いた転相乳化法などにより乳化することにより製造することができる。また、混合と乳化は別々に行っても同時に行ってもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。また、括弧内の数値は、ポリオキシエチレンの付加モル数を表す。
【0045】
(試料の調製1)
表1〜3に記した組成に従い、実施例1〜10および比較例1〜5の各整髪剤用乳化組成物を調製し、下記評価に供した。結果を表1〜3に併記する。尚、評価はすべて、23℃、湿度60%の恒温恒湿の一定条件下で実施した。
【0046】
(試験例1:整髪時の評価)
官能評価パネル20名により、ウィッグ(レッスンマネキン:ユーカリジャパン社製)を用いて、実施例および比較例で得られた各試料を手に取り、毛髪にすり合せるようにして整髪を施してもらい、整髪時の「べたつき感」および「整髪力」について、下記評価基準に従って官能評価した。
【0047】
尚、「整髪力」の評価は、毛髪をすり合せるよう立ち上げてもらい、整髪を施していないウィッグの毛髪と対比して、ふんわりとボリュームアップされているものを整髪力が高いとして評価を行った。
【0048】
<べたつき感の評価基準>
◎:20名中16名以上が、べたつき感がないと回答
○:20名中11〜15名が、べたつき感がないと回答
△:20名中6〜10名が、べたつき感がないと回答
×:20名中5名以下が、べたつき感がないと回答
【0049】
<整髪力の評価基準>
◎:20名中16名以上が、整髪力が高いと回
○:20名中11〜15名が、整髪力が高いと回答
△:20名中6〜10名が、整髪力が高いと回答
×:20名中5名以下が、整髪力が高いと回答
【0050】
(試験例2:風合いの評価)
試験例1の10分後、同評価パネル20名により、整髪を施した毛髪を見てもらい、毛髪の「ギラつき」について、下記評価基準に従って目視評価した。更に、同パネルにより、今度は実際に触れてもらい、毛髪の「仕上がり感」について、下記評価基準に従って官能評価した。
【0051】
<ギラつきの評価基準>
◎:20名中16名以上が、油剤特有の不自然なギラつきはないと回答
○:20名中11〜15名が、油剤特有の不自然なギラつきはないと回答
△:20名中6〜10名が、油剤特有の不自然なギラつきはないと回答
×:20名中5名以下が、油剤特有の不自然なギラつきはないと回答
【0052】
<仕上がり感の評価基準>
◎:20名中16名以上が、粉浮きやパサつきがなく、自然な風合いの軽い仕上がり感があると回答
○:20名中11〜15名が、粉浮きやパサつきがなく、自然な風合いの軽い仕上がり感があると回答
△:20名中6〜10名が、粉浮きやパサつきがなく、自然な風合いの軽い仕上がり感があると回答
×:20名中5名以下が、粉浮きやパサつきがなく、自然な風合いの軽い仕上がり感があると回答
【0053】
(試験例3:再整髪時の評価)
試験例2の評価から2時間後、同評価パネル20名により、再度、毛髪をすり合わせるようにして整髪を施し、「再整髪性」について、下記評価基準に従って官能評価した。
【0054】
<再整髪の評価基準>
◎:20名中16名以上が、整髪力の低下はなく、思い通りに整髪し直すことができると回答
○:20名中11〜15名が、整髪力の低下はなく、思い通りに整髪し直すことができると回答
△:20名中6〜10名が、整髪力の低下はなく、思い通りに整髪し直すことができると回答
×:20名中5名以下が、整髪力の低下はなく、思い通りに整髪し直すことができると回答
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
表1〜表3に示された結果から、実施例1〜10に記載された各整髪剤用乳化組成物は、べたつき感なく整髪することができることが分かる。また、整髪後の毛髪は、油剤特有の不自然なギラつきがなく、頭髪全体をふんわりとボリュームアップさせて自然な風合いの軽い仕上がり感が得られるとともに、再整髪性にも優れた効果を奏していることが分かる。
【0059】
一方、本発明の(A)成分を含有しない比較例1〜2や、(A)成分を他の粉体へ置き換えた比較例5では、本発明特有の整髪特性は全く得られないことが分かる。また、(A)成分を整髪剤用乳化組成物で汎用され、整髪機能を十分に発揮できる量の室温で固形の油剤に置き換えた比較例4では、整髪はできるものの、頭髪全体をふんわりとボリュームアップさせて自然な風合いの軽い仕上がり感は得られず、本発明特有の整髪特性が発揮できないことが分かる。
【0060】
更に、本発明の(D)成分を含有しない比較例3では、組成物中において(A)成分が均一分散せずに局在化することから、手に取った試料ごとに整髪力の評価結果にバラつきが生じるため、本発明特有の整髪特性である頭髪全体をふんわりとボリュームアップさせるという効果を常に発揮させることができないものである。尚、上記比較例3の評価結果は、本発明の効果を十分に発揮されない場合を示したものである。
【0061】
以下、本発明に係る整髪剤用乳化組成物の処方例を示す。尚、含有量は質量%である。
【0062】
(処方例1)
無水ケイ酸 2.0
流動パラフィン 5.0
モノステアリン酸ソルビタン 2.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20) 2.0
カルボキシビニルポリマー 0.2
濃グリセリン 5.0
トリエタノールアミン 0.2
ヘクトライト 1.0
エタノール 5.0
メチルパラベン 0.3
精製水 残 部
合 計 100.0
【0063】
(処方例2)
疎水化無水ケイ酸 3.0
流動パラフィン 5.0
メチルポリシロキサン 2.0
モノステアリン酸ソルビタン 5.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20) 5.0
1,3−ブチレングリコール 2.0
ヘクトライト 2.0
モンモリロナイト 1.0
エタノール 3.0
メチルパラベン 0.3
精製水 残 部
合 計 100.0

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)無水ケイ酸および/又は疎水化無水ケイ酸、(B)室温で液状の油剤、(C)非イオン性界面活性剤、並びに(D)粘土鉱物を含有してなる整髪剤用乳化組成物。
【請求項2】
前記(A)成分の含有量が、組成物中、0.1〜10質量%である請求項1に記載の整髪剤用乳化組成物。
【請求項3】
前記(B)成分の油剤が、炭化水素油、脂肪酸エステル油およびシリコーン油の群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の整髪剤用乳化組成物。
【請求項4】
前記(A)成分と前記(B)成分との質量含有比が、(A):(B)=1:0.1〜1:20の範囲を満たすことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の整髪剤用乳化組成物。
【請求項5】
前記(D)成分の含有量が、組成物中、0.1〜5質量%である請求項1〜4の何れかに記載の整髪剤用乳化組成物。
【請求項6】
実質的に、室温で固形のロウおよび/又は室温で固形の炭化水素油を含有しないことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の整髪剤用乳化組成物。

【公開番号】特開2013−63921(P2013−63921A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202755(P2011−202755)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】