説明

整髪料

【課題】毛束の厚さないし量の調整が容易で、毛髪に動きをだすスタイリング性に優れるとともに、調整した毛束の纏まりを良好にできる整髪料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、[A]ジグリセリン、[B]下記式(1)で表される非環式多価アルコール、[C]カチオン界面活性剤、[D]高級アルコール、及び[E]油成分を配合し、[A]ジグリセリンの質量aの[B]非環式多価アルコールの質量bに対する比α(a/b)が下記関係式(I)を満たし、[E]油成分が分散している整髪料である。
HOCH(CHOH)CHOH ・・・(1)
(式(1)中、nは1〜6の整数である。);
1.0<α≦5.0 ・・・(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛束調整が容易でスタイリング性に優れており、調整した毛束の纏まりを良好にできる整髪料に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、ウェーブパーマ毛に対し、不均一なウェーブと毛束感とを持たせることで毛髪に動き(静止した状態でも毛髪に生じている躍動感)を与えるスタイルが流行している。「不均一なウェーブ」とは、くせ毛様の形状となるように、ウェーブの大きさやカール方向を意図的に不揃いにしたスタイルをいう。このようなスタイルは、ウェーブパーマをかけた毛髪に対して、整髪料及びセット技術を工夫することで与えることができるようになる。
【0003】
ウェーブパーマスタイルをセットするときの整髪料として、従来はワックス若しくはフォームが多用されてきた。しかしながら、ワックスでは、毛束の厚薄調整の際等で、粘着性によって指が引っ掛かってしまい、不均一なウェーブを作ることができない。フォームの場合は、毛束が筋のようにくっきりとした形に整ってしまうため、不均一なウェーブを作ることができない。
【0004】
他方、ゲル状又はクリーム状の整髪料も開発されている。国際公開第2008/087766号パンフレットには、多価アルコールの単量体、重合体が2〜10である多価アルコールの重合体、界面活性剤及び水が配合された毛髪化粧料組成物が開示されている。また、特開2008−169182号公報には、界面活性剤、ジメチコノールまたはアミノ変性シリコーンから選ばれる少なくとも一種のシリコーン誘導体、ポリオール類及び水が配合された毛髪化粧料組成物が記載されている。
【0005】
しかしながら、これらの文献に記載の毛髪化粧料組成物は、不均一なウェーブをだしたスタイルにする際の毛束の調整や、自在なスタイリング性、調整した毛束の纏まりにおいては改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/087766号パンフレット
【特許文献2】特開2008−169182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の改善余地があることに鑑みてなされたものであり、その目的は、毛束の厚さないし量の調整が容易で、毛髪に動きをだすスタイリング性に優れるとともに、調整した毛束の纏まりを良好にできる整髪料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、配合成分として、ジグリセリン、所定構造の非環式多価アルコール、カチオン界面活性剤、高級アルコール、分散状態の油成分を用い、かつ、ジグリセリンと該非環式多価アルコールとの比率を特定範囲とすることによって、毛束の調整が容易であり、スタイリング性に優れ、毛束の纏まりが良好にできる整髪料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る整髪料は、
[A]ジグリセリン、
[B]下記式(1)で表される非環式多価アルコール、
[C]カチオン界面活性剤、
[D]高級アルコール、及び
[E]油成分
を配合しており、
[A]ジグリセリンの質量aの[B]非環式多価アルコールの質量bに対する比α(a/b)が下記関係式(I)を満たし、
[E]油成分が分散している整髪料である。
HOCH(CHOH)CHOH ・・・(1)
(式(1)中、nは1〜6の整数である。);
1.0<α≦5.0 ・・・(I)
【0010】
本発明の整髪料によれば、ジグリセリン、上記式(1)で表される非環式多価アルコール、カチオン界面活性剤、高級アルコール及び油成分を配合し、さらにジグリセリンと上記式(1)で表される非環式多価アルコールとの比率を特定範囲としていることから、毛束の調整が容易であり、優れたスタイリング性を発揮し、その上、分散した毛髪の小束状態をつくることも可能になるから、不均一なウェーブによる動きのある毛髪スタイルをつくりだすことができる。また、本発明の整髪料によれば、毛束調整、スタイリングをバランスよく行うことができる。
【0011】
本発明の整髪料における含水量は、12質量%以下であることが好ましい。含水量をこのような範囲とすることで、当該整髪料の粘度を適度なものとすることができ、当該整髪料のスタイリング性を向上させることができる。
【0012】
本発明の整髪料では、[A]ジグリセリン及び[B]非環式多価アルコール(以下、[A]成分のジグリセリンと[B]成分の非環式多価アルコールとを合わせて単に「多価アルコール」ともいう。)の合計配合量が、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。上記多価アルコールの配合量を上記範囲とすることで、本発明の整髪料の粘度をより適度な範囲とすることができ、スタイリング性を向上させることができる。
【0013】
本発明の整髪料において、[B]非環式多価アルコールとして、式(1)中のnが4で表される非環式多価アルコールを含むことが好ましい。当該整髪料がこの非環式多価アルコールを含むことにより、毛髪の保湿感を優れるものにできる。
【0014】
本発明の整髪料では、[C]カチオン界面活性剤の配合量が、1.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。[C]カチオン界面活性剤の配合量を上記範囲に設定することにより、スタイリング性、調整した毛束の纏まりが良好となり、さらに、毛髪の柔らかさと保湿感を高めることができる。
【0015】
本発明の整髪料では、[E]油成分として、流動パラフィンと該流動パラフィンよりも揮発性の高い揮発性シリコーンを含むことが好ましい。このような配合とすることにより、毛髪の艶及び保湿感を優れたものとし、油分のようなぎらつきを抑えた毛髪を実現できる。
【0016】
本発明の整髪料は、さらにノニオン界面活性剤を含むことが好ましい。これによって、当該整髪料の使用後に水洗いで洗い流すことができ、当該整髪料が手に残る感覚を抑えることができる。
【0017】
本発明の整髪料は、ウェーブヘアー用整髪料として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
ジグリセリン、上記式(1)で表される非環式多価アルコール、カチオン界面活性剤、高級アルコール及び油成分を配合し、さらにジグリセリンと上記式(1)で表される非環式多価アルコールとの比率を特定範囲とした本発明の整髪料は、適度な粘度を有し、毛束の調整やスタイリング性、毛束自体の纏まりを優れるものにできる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の整髪料は、[A]ジグリセリン、[B]非環式多価アルコール、[C]カチオン界面活性剤、[D]高級アルコール、及び[E]油成分を配合しており、[A]ジグリセリンの質量aの[B]非環式多価アルコールの質量bに対する比α(a/b)が上記関係式(I)を満たし、[E]油成分が分散している。
【0020】
本発明の整髪料は、クリーム状乃至ゲル状の剤型である。このような剤型である限り本発明の整髪料の動的粘弾率は、特に限定されないが、例えば3000Pa以上15000Pa以下、好ましくは7000Pa以上13000Pa以下である。ここで、本発明の整髪料の「粘度」というときは、応力制御型レオメーターを使用し、測定温度25℃、コーンプレートセンサーの直径35mm及び傾斜角2°、せん断応力0.5Pa、周波数依存モード、角速度20rad/sの条件で、動的粘弾率を測定した値を採用する。
【0021】
本発明の整髪料における多価アルコール([A]ジグリセリン及び[B]非環式多価アルコール)の合計配合量は、例えば10質量%以上50質量%以下であり、15質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上35質量%以下が特に好ましい。
【0022】
以下、上記配合成分[A]、[B]、[C]、[D]及び[E]を説明する。
[A]成分:ジグリセリン
[A]成分であるジグリセリンの配合量としては、特に限定されないが、好ましい上限は40質量%であり、より好ましい上限は35質量%であり、特に好ましい上限は25質量%である。一方、好ましい下限は3質量%であり、より好ましい下限は5質量%であり、特に好ましい下限は10質量%である。
【0023】
[B]成分:上記式(1)で表される非環式多価アルコール
[B]成分である上記式(1)で表される非環式多価アルコールは、[A]成分と合わせて主に本発明の整髪料の粘度を調整することにより、毛束調整、スタイリング性等を発揮させる。
【0024】
[B]成分は、上記式(1)におけるnが1〜6のものである。この式(1)で表される非環式多価アルコールの具体的な化合物としては、n=1の場合のグリセリン、n=2の場合のエリスリトール、トレイトール等のテトリトール、n=3の場合のキシリトール、アラビニトール、リビトール等のペンチトール、n=4の場合のソルビトール、マンニトール、ダルシトール、イジトール等のヘキシトール、n=5の場合のボレミトール、ペルセイトール等のヘプチトール、n=6の場合のD−エリトロ−D−ガラクト−オクチトール等のオクチトールが挙げられる。これらの非環式多価アルコールは、単独で又は組み合わせて用いてもよい。これらの中でソルビトールを選択すれば、本発明の整髪料の適度な粘度を維持し、毛髪の保湿感や整髪料の曳糸性を高められる。また、2種以上を組み合わせて用いる場合は、グリセリンとソルビトールとの組み合わせが好ましい。
【0025】
本発明の整髪料において、[B]成分の配合量は特に限定されないが、好ましい上限は20質量%であり、より好ましい上限は15質量%であり、特に好ましい上限は12質量%である。また、好ましい下限は2質量%であり、より好ましい下限は4質量%であり、特に好ましい下限は5質量%である。
【0026】
[B]成分の配合量は、[A]成分の質量aの[B]成分の質量bに対する比α(a/b)が上記関係式(I)を満たす。その関係式を満たしていれば、容易な毛束の調整、優れたスタイリング性及び良好な毛束の纏まりの全てを実現でき、その上、毛髪の柔らかさ及び艶を優れたものにできる。
【0027】
[C]成分:カチオン界面活性剤
[C]成分であるカチオン界面活性剤としては、通常整髪料で使用されるものである限り、特に限定されない。このようなカチオン界面活性剤の例としては、
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、ベヘニルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ベヘントリモニウムメトサルフェート、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のモノ長鎖アルキルアンモニウム類(例えばアルキル基の炭素数は12〜24);
塩化ステアリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化3−ドコシルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ドコシルオキシプロピルトリメチルアンモニウム等のモノ長鎖アルキルオキシアルキルアンモニウム類(例えばアルキル基の炭素数は12〜24);
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム等のジ長鎖アルキルアンモニウム類(例えばアルキル基の炭素数は12〜24);
塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキシド等のアルキルアミンオキシド類(例えばアルキル基の炭素数は12〜24);
N−ヤシ油脂肪酸アシルL−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩等のヤシ油脂肪酸エステル類;
などが挙げられる。これらのカチオン界面活性剤は、単独で用いてもよいし、複数種のものを併用(例えば、モノ長鎖アルキルアンモニウム類、モノ長鎖アルキルオキシアルキルアンモニウム類及びジ長鎖アルキルアンモニウム類の併用)してもよい。
【0028】
本発明の整髪料における[C]成分の好ましい配合量は、1.0質量%以上5.0質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以上3.0質量%以下である。本発明の整髪料におけるカチオン界面活性剤の配合量を1.0質量%以上とすることによって、[E]成分である油成分の分散性を高めて当該整髪料に適度な滑らかさを与えることができ、これにより毛髪の動きを再現するスタイリング性を向上させることができる。また、カチオン界面活性剤の配合量を5.0質量%以下とすることによって、毛束の纏まりをより良好にできるとともに、塗布後の毛髪の柔らかさや保湿感をより良いものにできる。
【0029】
[D]成分:高級アルコール
[D]成分である「高級アルコール」とは、炭素数6以上の一価アルコールを意味する。本発明の高級アルコールは、直鎖アルコール、分枝アルコール、不飽和アルコール、飽和アルコール等特に限定されるものではなく、炭素数が16以上22以下の飽和アルコールが良い。例えば、セチルアルコール(セタノール)、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコールを用いることができる。これらの高級アルコールは、1種類のみであってもよいし、複数種類のもの(例えば、セチルアルコール及びベヘニルアルコール)を用いてもよい。
【0030】
本発明の毛髪処理剤における[D]成分の配合量は、特に限定されないが、例えば0.3質量%以上3.0質量%以下である。本発明の毛髪処理剤において、[D]成分の配合量のより好ましい下限は0.5質量%であり、一層好ましい下限は0.8質量%である。また、[D]成分の配合量のより好ましい上限は2.8質量%であり、一層好ましい上限は2.5質量%である。[D]成分の配合量を上記範囲とすることで、[C]成分であるカチオン界面活性剤とともに[E]成分である油成分の分散状態が良好なものとなって、その結果、本発明の整髪料へより適度な粘度を付与することができ、毛束調整、スタイリング性及び毛束の纏まりの向上に資することになる。
【0031】
[E]成分:油成分
[E]成分の油成分は、本発明の整髪料において分散した状態で存在している。[E]成分の油成分が分散していることにより、本発明の整髪料は適度な粘度を示す。
【0032】
本発明の整髪料に用いられる[E]成分としては、公知の整髪料に用いられている公知の油剤であれば特に限定されず、例えば揮発性シリコーン及びこの揮発性シリコーン以外のシリコーン等のシリコーン、炭化水素、脂肪酸エステル、ロウ、油脂、高級脂肪酸等が挙げられる。
【0033】
揮発性シリコーンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルテトラシクロシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタンシロキサン等の環状シロキサン、動粘度100mm/s以下のメチルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等が挙げられる。
【0034】
揮発性シリコーン以外のシリコーンとしては、動粘度が100mm/sを超え10000mm/s未満であるメチルポリシロキサン、動粘度が10000mm/s以上である高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチコノール、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。アミノ変性シリコーンの例としては、アミノエチルアミノプロピルメチルポリシロキサン・ジメチルポリシロキサン共重合体、アミノプロピルジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0035】
前記炭化水素の具体例としては、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、揮発性イソパラフィン、イソドデカン、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、α−オレフィンオリゴマー、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワラン、フィトスクワラン、ポリブテン等が挙げられる。
【0036】
前記脂肪酸エステルの具体例としては、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸オクチル、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ジオクタン酸エチレングリコール、カプリル酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル((ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル)等が挙げられる。
【0037】
前記ロウの具体例としては、ミツロウ、モクロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、コメヌカロウ、サトウキビロウ、虫白ロウ、パームロウ、モンタンロウ、モクロウ、雪ロウ、水素添加還元ラノリン、ホホバロウ等が挙げられる。
【0038】
前記油脂の具体例としては、オリーブ油、ツバキ油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アルモンド油、アボカド油、カロット油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油、オレンジラフィー油、牛脂、馬脂、水素添加卵黄脂肪油、カカオ脂、シア脂、パーム脂、水素添加パーム核油、水素添加ヒマシ油、テオブロマグランディフロラム種子脂等が挙げられる。
【0039】
前記高級脂肪酸の具体例としては、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、リシノレイン酸等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも本発明の整髪料は[E]成分としてシリコーンを含んでいることが好ましい。シリコーンを配合することにより、本発明の整髪料が適度な滑らかさを有することから、毛束調整が容易となり、毛髪へ塗布した際の柔らかさが良好になる。
【0041】
本発明の整髪料は、[E]成分として、さらに流動パラフィンを含み、かつ上記シリコーンとして該流動パラフィンよりも揮発性の高い揮発性シリコーンを含んでいることが好ましい。また、揮発性シリコーンとしては、環状シロキサンを好適に用いることができる。このような配合とすることで、流動パラフィンと揮発性シリコーンとの組合せにおける流動パラフィンを軽質流動パラフィンに置き換えたときに比べて、毛束調整やスタイリング性を向上させることができるとともに、スタイリングの持続性を高めることができ、毛髪に艶及び保湿感を与えることができる。環状シロキサンとしては、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。適度な揮発性を有することから本発明の整髪料を手にとったときの滑らかさと毛髪に塗布した際の柔らかさといった使用感が良好になるからである。
【0042】
[E]成分の配合量は、本発明の整髪料が適度な粘性を有する限り特に限定されない。[E]成分の油成分の配合量の好ましい上限は75質量%であり、より好ましい上限は70質量%であり、特に好ましい上限は65質量%である。[E]成分の配合量の好ましい下限は45質量%であり、より好ましい下限は50質量%であり、特に好ましい下限は55質量%である。
【0043】
[E]成分の油成分として、流動パラフィンとこの流動パラフィンよりも揮発性の高い揮発性シリコーンとを含む場合、後者の揮発性シリコーンの質量cと前者の流動パラフィンの質量dとの比β(c/d)の下限は、0.5が好ましく、0.8がより好ましく、1.0が特に好ましい。また、比βの上限は4.0が好ましく、3.5がより好ましく、3.2が特に好ましい。環状シロキサンの質量と流動パラフィンの質量との比を前記範囲にすることで、毛髪に塗布した後の柔らかさをより良好にできる。
【0044】
本発明の整髪料には、本発明によって意図される上記効果を阻害しない限りは、所望の特性を付与するために、[A]、[B]、[C]、[D]及び[E]成分以外の適量の任意成分を添加することができる。任意成分としては、公知の整髪料原料であれば特に限定されず、例えば[C]成分以外の界面活性剤、水、水溶性高分子、溶剤、防腐剤、香料等が挙げられる。
【0045】
[C]成分以外の界面活性剤を任意成分とする場合、ノニオン界面活性剤を選定すると良い。本発明の整髪料にノニオン界面活性剤を配合することにより、手に残った整髪料の洗浄が容易となり、洗浄後のさっぱり感を高めることができる。ノニオン界面活性剤の具体例としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、グリセリン脂肪酸エステル類(グリセリンモノステアレート、グリセリンモノイソステアレート、グリセリントリイソステアレート等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEオレイルエーテル、POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油、POEヒマシ油誘導体、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油誘導体、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、デシルグルコシド、ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド、テトラオレイン酸POEソルビット等が挙げられる。なお、上記化合物中、「POE」とは「ポリオキシエチレン」を意味し、「POP」とは「ポリオキシプロピレン」を意味する。
【0046】
本発明の整髪料の含水量としては、この整髪料をクリーム状乃至ゲル状に維持させることができる限りは特に限定されないが、12質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上8質量%以下がより好ましく、1質量%以上6質量%以下が特に好ましい。
【0047】
使用方法
本発明の整髪料は、公知の整髪料と同様に毛髪に塗布して使用されるものである。整髪対象となる毛髪は、特に限定されず、ウェーブヘアーをも対象にできる。ウェーブヘアーを対象とした場合、不均一なウェーブをつくりだすことも可能である。
【0048】
整髪料の調製方法
本発明の整髪料を調製する方法としては、[E]成分の油成分が分散するように各種原料を混合して均一となるよう攪拌すればよい。調製方法の一例としては、例えば、以下のような手順が挙げられる。まず、[C]成分の界面活性剤、[A]成分のジグリセリン、[B]成分の非環式多価アルコール、及び[D]成分の高級アルコールを容器に所定量投入し、その後攪拌しながら加熱する。次いで、攪拌しているところへ[E]成分の油成分を徐々に添加してさらに攪拌し、相が均一になった段階で徐々に冷却させる。最後に、必要に応じて防腐剤、香料、水を添加して攪拌することで、本発明の整髪料の調製を完了する。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱することがない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。特に示さない限り、実施例における整髪料原料の数値は表を含め「質量%」を示す。
【0050】
[実施例1〜3及び比較例1〜2]
実施例1〜3及び比較例1〜2の整髪料を、下記表1の配合組成で調製した。各調製においては、[A]成分、[B]成分、[C]成分及び[D]成分を80℃以上の温度で混合し、次いで、[E]成分のうち、シリコーン(デカメチルシクロペンタシロキサン、高重合メチルポリシロキサン(1))及び軽質流動パラフィンの順で混合し、続けて残りの[E]成分を混合した。その後、温度が50℃以下になった後、水、香料を混合した。
【0051】
<整髪方法>
ウェーブパーマ処理された人の毛髪を対象に、頭部の左右で異なる整髪料を使用して整髪した。整髪においては、手で延ばした適量の整髪料を毛髪の中間部分から毛先に向かって擦り込むように塗布し、次いで、指と指の間で毛束を不揃いにずらすとともに、毛先部分に整髪料を揉み込みながらウェーブを崩していき、不均一なウェーブ形状を頭部の左右でそれぞれつくるという手順を採用した。
【0052】
各整髪料の評価基準は、下記の通りとした。
<毛束調整>
専門の評価者が毛束の厚薄調整の容易さについて整髪料の使用テストを行い、下記の評価基準で官能評価を行った。
(評価基準)
A:毛束の厚薄調整が容易であり、毛束毎の厚薄調整が容易であった。
B:市販フォームと同様、筋のような毛束となって束厚薄の調整が困難であった。
C:市販ワックスと同様、毛束をずらす際の束厚薄の調整が困難であった。
【0053】
<スタイリング性>
専門の評価者が毛束の動きの保持について整髪料の使用テストを行い、整髪時の髪型形状が整髪終了時に保持されたかを下記の評価基準で官能評価した。
(評価基準)
A:動きのある毛束状態が保持された。
B:動きのある毛束状態は保持されなかったが、ウェーブ形状を保持できた。
C:動きのある毛束状態は保持されず、ウェーブ形状が伸びた。
【0054】
<毛束の保持>
専門の評価者により、毛髪の小束状態の保持性について整髪料の使用テストを行い、整髪終了時の毛束を下記の評価基準で官能評価した。
(評価基準)
A:毛束が纏まっていた。
B:毛束がある程度纏まっていたが、毛先が広がった。
C:毛束が纏まらなかった。
【0055】
評価結果を下記表1に示す。なお、実施例1、実施例2及び実施例3の整髪料組成に、ノニオン界面活性剤であるポリオキシエチレンセチルエーテルを更に加えた整髪料は、そのポリオキシエチレンセチルエーテルを加えなかったものに比べて、水洗い後の手に残る感覚が抑えられたものであった。
【表1】

【0056】
表1の結果より、[A]成分から[E]成分までを所定の組成で配合した実施例1〜3の整髪料では、毛束の厚薄調整が容易であり、毛束の動きが保たれており、また毛束がうまく纏まっていた。一方、[B]成分を配合していない比較例1、及び環状多価アルコール(マルトース)を配合した比較例2の整髪料では、いずれも動きのある毛束状態が保持されず、ウェーブ形状が伸びてしまう結果となった。
【0057】
[実施例4及び比較例3]
下記表2に示す組成の整髪料を実施例1と同様に調製し、これらの整髪料の評価を行った。本評価では、整髪後の毛髪の「柔らか」さ、「艶」、「ぎらつき」についても官能評価した。なお、表中の評価結果における「1」、「2」、「3」は、実施例4及び比較例3のそれぞれの間での相対的な官能評価であり、「1」が最も優れる(下記の相対評価において優れる順は、「1」、「2」、「3」である。)。また、ここでの「柔らかさ」とは、毛髪に触れた際の柔らかさを、「艶」とは、健康な毛髪に本来備わる艶のある感じを、「ぎらつき」とは、油分が多くなったときのギトギトした感じをそれぞれ意味する。評価結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
表2の結果より、[A]成分の質量と[B]成分の質量とが上記関係式(I)を満たす実施例4では、スタイリング性及び毛束の保持が良好であったとともに、整髪料の塗布後の柔らかさ、艶に優れ、ぎらつきも抑えられていることが分かった。これに対し、上記関係式(I)を満たさない比較例3では、毛束の保持、柔らかさ、艶に劣る結果となった。
【0060】
[実施例5〜8]
下記表3に示す組成の整髪料を実施例1と同様に調製し、これらの整髪料の評価を行った。下記表3における「保湿感」とは、毛髪に触れたときのしっとりとした感じを意味する。結果を表3に併せて示す。
【0061】
【表3】

【0062】
表3に示した結果より、[C]成分のカチオン界面活性剤の配合量が少ない場合には、スタイリング性の点において相対的に低下する傾向があり、一方で、配合量が多い場合は、スタイリング性は向上するものの、スタイリング性、毛束の保持、柔らかさ、保湿感が相対的に低下する傾向にあることが分かった。このことより、[C]成分のカチオン界面活性剤の配合量を調整することにより、スタイリング性を発揮しつつ、毛束の保持や柔らかさ、保湿感をも高めることができると考えられる。
【0063】
[実施例9〜12]
下記表4に示す組成の整髪料を実施例1と同様に調製し、これらの整髪料の評価を行った。結果を表4に併せて示す。
【0064】
【表4】

【0065】
表4の結果から、動粘度の低い高重合メチルポリシロキサンを用いた場合には、スタイリング性が相対的に低下する傾向にあり、一方、高重合メチルポリシロキサンの動粘度が高くなるにつれて、スタイリング性は改善されるものの、柔らかさや艶に加え、毛束の保持が相対的に低下する傾向にあることが分かった。このことから、[E]成分の油成分、特にシリコーンの粘度を調整することで、スタイリング性、毛束の保持のバランスを保つことができると考えられる。
【0066】
[実施例13〜15]
下記表5に示す組成の整髪料を実施例1と同様に調製し、これらの整髪料の評価を行った。
【0067】
<持続性>
表5における持続性おいては、整髪が終了してから3時間後に、毛束の動き及びウェーブ形状が保持されている程度を確認した。
【0068】
【表5】

【0069】
表5の結果より、軽質流動イソパラフィンとデカメチルシクロペンタシロキサンとを組み合わせた実施例13では、スタイリング性、毛束の保持に加え、柔らかさ、艶、ぎらつき、保湿感、持続性の点で相対的に低下する傾向があることが分かった。これに対し、軽質流動イソパラフィンに代えて流動パラフィンを用いた実施例14では、柔らかさを除いて各評価項目で改善が見られた。さらに、デカメチルシクロペンタシロキサンの流動パラフィンに対する比を高めた実施例15では、柔らかさも改善されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明の整髪料は、毛束調整が容易で、スタイリング性に優れており、調整した毛束の纏まりを良好にできることから、不均一なウェーブをつくりだすことが要求されるウェーブヘアー用の整髪料として好適に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]ジグリセリン、
[B]下記式(1)で表される非環式多価アルコール、
[C]カチオン界面活性剤、
[D]高級アルコール、及び
[E]油成分
を配合しており、
[A]ジグリセリンの質量aの[B]非環式多価アルコールの質量bに対する比α(a/b)が下記関係式(I)を満たし、
[E]油成分が分散している整髪料。
HOCH(CHOH)CHOH ・・・(1)
(式(1)中、nは1〜6の整数である。)
1.0<α≦5.0 ・・・(I)
【請求項2】
含水量が、12質量%以下である請求項1に記載の整髪料。
【請求項3】
[A]ジグリセリン及び[B]非環式多価アルコールの合計配合量が、10質量%以上50質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の整髪料。
【請求項4】
[B]非環式多価アルコールとして、式(1)中のnが4で表される非環式多価アルコールを含む請求項1、請求項2又は請求項3に記載の整髪料。
【請求項5】
[C]カチオン界面活性剤の配合量が、1.0質量%以上5.0質量%以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の整髪料。
【請求項6】
[E]油成分として、流動パラフィンと該流動パラフィンよりも揮発性の高い揮発性シリコーンを含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の整髪料。
【請求項7】
さらに、ノニオン界面活性剤を含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の整髪料。
【請求項8】
ウェーブヘアー用整髪料として用いられる請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の整髪料。


【公開番号】特開2011−98888(P2011−98888A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252538(P2009−252538)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】