説明

敷居レール

【課題】 広い面積でレール本体を支持でき、敷居下部および溝を簡単な構造にしつつ高さ調整を可能にする敷居レールを提供する。
【解決手段】 敷居のレール用溝B,Cに装着されるレール本体1と、このレール本体の裏面に配置される高さ調整部材2とで構成する。レール本体は、長尺なレール面部11と、レール面部の長手方向に所定長さで貫設された調整孔14とを備える。高さ調整部材は、さらに昇降部3と摺動部4とを備える。昇降部は、敷居のレール用溝底面に当接する下面部31と、下面部に対して斜状に形成される上面部32とを備える。摺動部は、レール本体の裏面に摺接する摺接面部42,43と、昇降部の上面部に当接して昇降部の下面部をレール面部に対して略平行に維持する斜状面部41とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敷居レールに関し、特に、レール溝の底面の高さを調整可能としたレールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、家屋の部屋を仕切るための扉には、大別するとドア式と引戸式とがあり、ドア式とは、ヒンジ等によって回動可能に扉を支持する構成であるのに対し、引戸式は、鴨居と敷居に設けられるレールに扉の上下端縁を係入し、そのレールに沿って摺動する構成であった。この引戸式の扉は、和室等を仕切る際に使用されることが多く、鴨居および敷居、さらに扉の枠体についても木製で構成される場合が多かった。
【0003】
そこで、引戸式の扉の開閉状態を安定させるためには、鴨居および敷居に設けられるレール溝の加工、特に、敷居のレールの底面の加工が重要となり、このレール底面の高さが一定しない場合には、扉の摺動が安定しないばかりでなく、扉を閉めた状態において、堅縁と柱との間に隙間が生じることがあった。そのため、大工または建具屋などの熟練した者によって加工される必要があった。
【0004】
ところで、近年の住宅、特に木造住宅では、使用する材料を予め加工(いわゆるプレカット)し、これを部品のようにして組み立てる工法が採用されている。このようなプレカットされた敷居等を使用する場合には、建設現場において敷居レールの高さ調整が必要なものとなっていた。しかし、この敷居レールの高さ調整は簡単なものではなかった。
【0005】
そこで従来は、敷居全体の高さを調整可能にする矯正装置が開発されていた(特許文献1ないし3参照)。しかし、これらの技術は敷居全体の高さを調整することによってレール部分の水平程度を調整するものであるが、長尺なレールそのものの調整を可能にするものではなかった。他方、レールごとに、そのレール底面の高さを調整するものとしては、レール底面の高さを数ヶ所で調整するように構成したものがあった(特許文献4および5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−4427号公報
【特許文献2】特開平9−144433号公報
【特許文献3】特開平11−280341号公報
【特許文献4】実開平4−2887号公報
【特許文献5】実開平6−25487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献4に開示される構成は、敷居の下部に埋め込んだ固定部材とレールとの間をボルトで連結するとともに、当該ボルト頭部の高さによってレール面の高さを調整するものであり、特許文献5に開示される構成は、敷居の溝に上壁および下壁を有するレール本体を嵌挿するとともに、このレール本体の上下の壁の中間に頭部を配置したビスを溝の底部にねじ込んで、ビスの頭部によって上壁を支えるものであった。
【0008】
しかしながら、上記双方の技術は、いずれもボルトまたはビスの螺入位置によって頭部位置を上下させ、その頭部の位置によってレールの表面の高さを調整する構成であるため、ボルトまたはナットが螺入できる高さ(深さ)の溝を構成することが必要となり、また、敷居の下部構造が複雑なものとなっていた。また、レールそのものは、数ヶ所に設けられるボルトまたはビスによってのみ支えられる構成となっていたことから、ボルトまたはビスの断面積程度の小さな面で長尺なレールを支持することとなるから、扉等の重量が集中することとなっていた。さらに、ボルトまたはビスが設けられていない位置のレール下部は中空となるが、上述のとおり溝が深いことから、レールの撓みの原因となるものであった。
【0009】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、広い面積でレール本体を支持でき、敷居下部および溝を簡単な構造にしつつ高さ調整を可能にする敷居レールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、敷居のレール用溝に装着されるレール本体と、このレール本体の裏面に配置される高さ調整部材とで構成され、レール本体は、長尺なレール面部と、このレール面部の長手方向に所定長さで貫設された調整孔とを備え、高さ調整部材は、さらに昇降部と摺動部とを備え、上記昇降部は、敷居のレール用溝底面に当接する下面部と、この下面部に対して斜状に形成される上面部とを備え、上記摺動部は、上記レール本体の裏面に摺接する摺接面部と、上記昇降部の上面部に当接して上記昇降部の下面部を上記レール面部に対して略平行に維持する斜状面部とを備えたことを特徴とする敷居レールを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、摺動部は、摺接面部をレール本体の裏面に摺接させ、斜状面部を昇降部に当接させて、当該レール本体と昇降部との間に介在されることとなり、この摺動部をレール本体の長手方向に摺動することによって、斜状面部が昇降部の上面を昇降させることとなる。この上面の昇降によって、昇降部の下面部の位置が変化することとなるから、当該下面部からレール面部までの距離を変化させる結果となるのである。そして、昇降部の下面部がレールの溝の底面に密着することによって、昇降部の位置が固定的となり、摺動部を介してレール本体の高さを調整することとなる。なお、摺動部を摺動させるためには、レール面部に設けられた調整孔から摺動部を直接摺動させることができる。
【0012】
上記発明における摺動部は、さらに、前記レール本体の調整孔に侵入する突起部を備えた構成とすることができる。
【0013】
上記構成によれば、摺動部を摺動させる際、レール本体の調整孔から摺動部に達する長さの器具を使用することなく、摺動部を摺動させることができる。また、突起部が調整孔に沿って摺動することとなるため、摺動部をレール本体の長手方向に沿って摺動させことができる。そして、この突起部を適宜間隔で2ヶ所に設けることによって、摺動部の姿勢を安定させることとなり、摺動の前後において斜状面部の向きが変化させないこととなる。
【0014】
また、上記両発明における昇降部は、前記レール本体の長手方向両端のうち、少なくとも一方が回動可能に支持されてなる構成とすることができる。
【0015】
このような構成であれば、昇降部の位置が摺動部の摺動によって移動することがなく、また、昇降部の下面部の高さが変化した場合であっても、当該変化に応じて回動することにより支持状態が安定的となる。
【0016】
さらに、上記各発明において、前記レール本体は、皿ネジを挿通しつつ皿頭を当接する皿ネジ当接孔を備え、前記昇降部は、上記貫通孔の延長線上に貫設され、該貫通孔を挿通する上記皿ネジを挿通できる貫通孔を備え、前記摺動部は、上記皿ネジを挿通しつつ摺動を許容する長孔を備えた構成とすることもできる。
【0017】
上記構成によれば、皿ネジは、レール本体、摺動部および昇降部をそれぞれ貫通し、レールの溝の底部に螺入されることとなる。このとき、皿ネジの皿頭をレール本体の皿ネジ当接孔に当接させるまで、当該皿ネジを螺入することによって、摺動部および昇降部は、レールの溝の底面とレール本体によって挟持されることとなり、摺動部の自由な摺動を抑制し、かつ、昇降部の下面部からレール本体のレール面部までの高さを確定させることができる。
【0018】
また、本発明は、敷居のレール用溝に装着されるレール本体と、このレール本体の裏面に配置される高さ調整部材と、この高さ調整部材を介在させつつ敷居のレール用溝底面に対して上記レール本体を螺着する皿ネジとで構成され、レール本体は、長尺なレール面部と、このレール面部の長手方向に所定長さで貫設された調整孔と、上記皿ネジを挿通しつつ皿頭を当接する皿ネジ当接孔と、上記レール面部の長手方向に沿った両端縁を下向きに折曲してなる対向片部とを備え、高さ調整部材は、さらに、上記レール本体の対向片部の中間に配置される昇降部と、上記レール本体部および上記昇降部の間に介在され、該レール本体の長手方向に摺動可能な摺動部とを備え、上記昇降部は、上記レール本体の対向片部に回動可能に支持される支持部と、敷居のレール用溝底面に当接する下面部と、この下面部に対して斜状に形成される上面部と、上記皿ネジを挿通する貫通孔とを備え、上記摺動部は、上記レール本体の裏面に摺接する摺接面部と、上記昇降部の上面部に当接して上記昇降部下面部を上記レール面部に対して略平行に維持する斜状面部と、上記皿ネジを挿通しつつ摺動を許容する長孔と、上記レール本体の調整孔に侵入する突起部とを備えたことを特徴とする敷居レールをも要旨としている。
【0019】
上記構成によれば、昇降部および摺動部は、レール本体のレール面部裏面および対向片部の対向面によって形成される略コ字形の内部空間内に収容されることとなる。そして、対向片部の先端縁からレール面部までの距離をもって、すなわち対向片部の長さ寸法をもって、レール面部が最も低い位置となるように調整すれば、レール面部を上昇させる場合にのみ、昇降部が対向片部の端縁から外方に突出する状態となる。従って、高さ調整が不要な程度に精密に加工されたレール溝が構成される場合には、昇降部の下面部のみならず対向片部の端縁によっても支持されることとなる。
【0020】
そして、皿ネジがレール本体を挿通し、昇降部をも挿通する状態において、当該皿ネジは摺動部の長孔を挿通することとなるから、この長孔に沿った方向に摺動部を移動させることができ、当該皿ネジによる挟持状態を完了する前の段階で摺動部を微調整することも可能である。なお、摺動部の突起部は、レール本体の調整孔に侵入していることから、摺動部の長孔の長手方向は、上記調整孔の長手方向と平行に設けられる。
【0021】
上記発明における昇降部は、合成樹脂によって一体的に成形され、前記支持部は該合成樹脂によって弾性変形可能に構成することができる。
【0022】
上記構成によれば、昇降部は、レール本体の長手方向両端側から2ヶ所以上の支持部を設けることができ、レール本体との間に介在させる摺動部を仮止めした状態とすることができる。つまり、昇降部が昇降することにより、支持部が支持される位置から昇降部までの距離が僅かながら伸縮するため、その伸縮に応じて弾性変形させることができる。そして、この支持部によって支持される位置の中間に摺動部を配置することにより、摺動部は昇降部とレール本体裏面との間で挟持され、かつ、対向片部によって規制され、摺動部がレール本体および昇降部から離脱することを抑えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、敷居レールの高さは、摺動部と昇降部の肉厚によって決定されることとなり、摺動部を摺動させることによって容易に高さ調整が可能となる。また、敷居レールの下部は、昇降部の下面部が当接できる溝が存在すればよいことから、複雑な構造を要することなく、高さ調整可能な敷居レールを構成することができる。さらに、昇降部および摺動部の肉厚は、斜状に形成される昇降部の上面部、および、同じく斜状に形成される摺動部の斜状面部の傾斜角度に依存することとなり、この傾斜角度は調整を必要とする高さによって異ならせることができるが、著しく変化させず、徐々に高さを変化させるためには傾斜角度は緩やかとなり、その結果、肉厚も薄くなるため、レールの溝を深く加工する必要もない。
【0024】
さらに、レールの高さを調整する位置では、上述のように昇降部の下面がレールの溝の底部に当接することとなるため、広い面積でレール本体を支持することができる。従って、レールの溝の底部とレール本体との中空部分を少なくすることができる。また、ボルトまたはビスの回転(正逆回転)によって高さを調整する場合と異なり、ボルトまたはビスが振動等によって回転して高さが変化するようなこともなく、皿ネジを使用する構成の本発明においても、皿ネジが回転したとしても高さが変更される直接的な要因とはならないものである。さらに、皿ネジによって挟持を完了する前であれば、摺動部を摺動させることは可能であるから、微調整をしながらレールを固定することができる。しかも、レールの高さ調整は、摺動部の摺動のみであり、レール本体の調整孔から直接摺動部を摺動させ、または、当該調整孔に侵入する突起部を操作して摺動させることによって行うことができるので、非常に容易な操作によってレールの高さを調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態の概略を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の使用状態を示す説明図である。
【図3】(a)はレール本体の位置を低い状態としたときの説明図であり、(b)は高い状態としたときの説明図である。
【図4】第二の実勢形態を示す説明図である。
【図5】変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態の概略を示す斜視分解図である。この図に示すように、本実施形態の敷居レールは、木製の敷居Aのレール用溝B,Cに装着するレール本体1と、そのレール本体1の高さを調整する高さ調整部材2とで構成され、高さ調整部材2は、さらに昇降部3と摺動部4とで構成されている。図は、2つのレール用溝B,Cに対して1つの敷居レールのみを示しているが、実際には、それぞれのレール用溝B,Cにそれぞれ1つの敷居レールが設けられる。また、レール本体1の表面側には、仕上げの際に摺接テープ(図示せず)が貼着され、敷居を構成する木製材料に応じた色彩を有し、表面に凹凸を形成するなどによって摩擦係数が少ない構造によってレールの仕上げ面が構成されるものである。
【0027】
レール本体は、長尺な長方形状の平面部(以下、レール面部という)11の両側には、長手方向に長尺な対向片部12,13が設けられており、レール本体1の全体が横断面形状を略コ字形に形成されている。このレール本体1のレール面部11には、長手方向に長尺な長孔(以下、調整孔という)14が貫設されており、摺動部4の摺動を操作する際に、当該調整孔14を介して摺動部4に到達できるようになっている。また、この調整孔14の近傍にテーパ状の丸孔(以下、皿ネジ当接孔という)15が貫設されており、皿ネジ(皿頭を有する木ネジ)5を挿通できるとともに、皿頭51を周縁に当接できるようになっている。
【0028】
高さ調整部材2を構成する昇降部3は、その本体部分30が薄肉の直方体で構成されており、長手方向はレール本体1の長手方向に一致し、幅寸法は、レール本体1の対向片部12,13が対向する幅寸法よりも小さく構成され、全体的に対向片部12,13の内側に収容可能になっている。本体部分30の長手方向両端には支持部33,34が設けられ、それらの先端には、係止部33a,34aが設けられており、その両端がレール本体1の対向片部12,13に支承され、回動自在に支持される。
【0029】
また、本体部分30の上面部32が設けられている側には、平面部35が設けられており、摺動部4の位置によっては、当該平面部35がレール本体11の裏面16に直接当接することができるようになっている。また、斜状に形成されている上面部32の幅方向両側には、上記平面部35に連続する高さの規制部36,37が設けられており、上面部32に当接する摺動部2の摺動を規制するようになっている(詳細は後述する)。
【0030】
さらに、昇降部3の上面部32が形成されている部分には貫通孔38が貫設されており、上述した皿ネジ5をレール本体1の皿ネジ当接孔15に挿入するとき、当該皿ネジ5のネジ部分52を挿通できるようになっている。従って、支持部33,34によって、昇降部3をレール本体1に装着したとき、レール本体1の皿ネジ当接孔15の中心と、昇降部3の貫通孔38の中心とは、同一直線上となるように両孔15,38の位置が調整されている。
【0031】
なお、上記昇降部3は、合成樹脂製で一体的に構成されており、本体部30が昇降することに起因して、支持部33,34が僅かながら伸縮できるように構成されている。また、本体部30の昇降により、支持部33,34の長手方向の角度が若干変化することとなるが、本体部30と支持部33,34との境界部分、および、支持部33,34と係止部33a,34aとの境界部分には、微細な切り込みが設けられ、角度変化に応じて容易に折曲できるように構成されている。
【0032】
高さ調整部材3を構成する摺動部4は、上記昇降部3の上面部32に当接する斜状面部41が設けられるとともに、その両側には、レール本体1の長手方向に沿って適宜長さを有する摺接面部42,43が設けられている。摺接面部42,43は、薄肉板状に形成されており、その上面側がレール本体1の裏面16に当接するものであり、また、その下面側は昇降部3の規制部36,37に当接するものである。従って、摺動部4をレール本体1と昇降部3との中間に介在させることにより、摺接面部42,43は、レール本体1の裏面と、昇降部3の規制部36,37の中間に位置することとなるのである。そして、斜状面部41は、昇降部3の規制部36,37の中間において、昇降部3の上面部32に当接することとなり、斜状面部41は昇降部3の上面部32とのみ当接することとなるのである。
【0033】
また、摺動部3には、斜状面部41に連続する舌片部44が設けられ、さらに、この舌片部44の一部からレール本体1に向かって突出する突出部45,46が設けられている。一方の突出部45は、垂直に折り曲げられてレール本体1の調整孔14に対して十分に侵入するものであり、他方の突出部46は、斜め方向に折り曲げられており、レール本体1の調整孔14に部分的に侵入するものである。両突出部45,46はその突出方向および突出長を同じにしてもよいが、摺動を操作するための突出部45を明確にするためには、一方の突出部45を十分に侵入させる構成としている。なお、これらの突出部45,46は、摺動部4の摺動範囲を規制するためのストッパとしても機能するものであり、また、レール本体1の調整孔14に侵入させた状態においても、その先端はレール面部11の表面から突出しない程度に突出長が調整されている。
【0034】
さらに、摺動部3の斜状面部41には、レール本体1の長手方向に沿った所定長さの長孔47が貫設されている。この長孔47は、上述の皿ネジ5のネジ部分52が挿通するためのものであるが、皿ネジ5は昇降部3の上面部32に設けた貫通孔38をも同時に挿通するため、当該上面部32に当接する斜状面部41に設けられている。この長孔47の長手方向は、摺動部4の全体が摺動する方向にも一致しており、摺動部4が摺動する方向を規制するとともに、当該摺動部4が摺動できる範囲を確定するものでもある。
【0035】
そこで、上記長孔47と皿ネジ5の関係と、突出部45,46と調整孔14との関係は、皿ネジ5をレール本体の皿ネジ当接孔15に挿通させるとき、当該皿ネジ5が長孔47を確実に挿通するように、二つの突出部45,46が調整孔14の両端で停止するように調整されているのである。
【0036】
本実施形態を形成する各部の構成は上記のとおりであるから、レール本体1に高さ調整部材2を装着するためには、図2に示すように、摺動部4をレール本体1と昇降部3との中間に介在させつつ、昇降部3の支持部33,34によって当該昇降部3をレール本体1に装着するのである。これにより、摺動部4は、レール本体1と昇降部4との間に挟まれる状態で装着されることとなる。
【0037】
このとき、昇降部3の本体部30は、レール本体1の対向片部12,13の中間に位置することとなり、レール本体1の幅方向にも移動が制限され、これとともに、摺動部3の斜状面部41も昇降部3の規制部36,37によって幅方向の移動が制限されている。そして、摺動部4の摺動範囲は突出部45,46によって規制されることとなるから、昇降部4による挟持を離脱できる位置まで、摺動部4がレール本体1の長手方向に移動することはない。
【0038】
そこで、この状態において、摺動部4をレール本体1の長手方向に移動させることによって、摺動部4の斜状面部41が楔のように、レール本体1と昇降部4の中間に侵入し、両者に間隔を生じさせることとなるのである。従って、レールの高さを調整するためには、摺動部4が楔となって侵入するように移動させることが必要となる。そこで、以下においては、楔が侵入する方向に移動することを前進すると記載し、その逆方向に移動することを後退すると記載することとする。
【0039】
次に、本実施形態の使用態様について説明する。図3(a)はレール本体1のレール面部11を最も低い位置とした状態を示し、図3(b)はレール本体1のレール面部11を最も高い位置とした状態を示している。
【0040】
図3(a)に示すように、レール面部11を低い位置とする場合には、摺動部4を後退(図中右方向(矢印参照)に移動)させている。この状態では、レール本体1と昇降部3との間には間隙が生じておらず、昇降部3の本体部30に構成される平面部35はレール面部11の裏面16に当接し、また、下面31の位置は、レール本体1の対向片部12,13の先端縁12a,13aの位置と一致している。従って、レール本体1は、幅方向両端においては対向片部12,13によって支持され、中央においては昇降部3の本体部30によって支持される状態となる。なお、この状態において、皿ネジ5を挿通させ、敷居のレール用溝B,Cに螺入することにより、レール本体1のレール面部11の高さは固定的となる。
【0041】
他方、レール面部11を高い位置とする場合には、図3(b)に示すように、摺動部4を前進(図中左方向(矢印参照)に移動)させるのである。この摺動部4の前進により、摺動部4の斜状面部41が昇降部3の上面部32を押し下げることとなり、レール本体1と昇降部3との間に間隙Hを生じさせるのである。このとき、摺動部4の斜状面部41の一部と昇降部3の上面部32の一部とが当接し、さらに、昇降部3の下面部31がレール用溝B,Cに当接して、上記間隙Hに相当する高さ分だけレール本体1を上昇させることとなる。なお、皿ネジ5を挿通させ、レール用溝B,Cに螺入することにより、昇降部3および摺動部4は、レール本体1とレール用溝B,Cとの間で挟着されることとなり、上記摺動部4は自由な摺動が制限されることとなるから、当該レール本体1の高さを維持させることができる。
【0042】
なお、図3(a),(b)に示されているように、支持部33,34の両端近傍には折曲している部分が設けられており、昇降部3が昇降(特に下降)する(間隙Hが発生する)場合、折曲角度が変化することとなるが、当該折曲部分の内側に切り溝33b,33c,34b,34dを設けることにより、その角度変更を容易にしている。また、図面上は明確に示されていないが、昇降部3が下降する際には、僅かながら支持部33,34の長さが伸びているが、合成樹脂が弾性変形することによって可能になっている。そして、この弾性力は、復元力を有することから、摺動部4を後退させる際には、昇降部3はレール本体1に接近するように移動することとなる。
【0043】
次に、本発明の第二の実勢形態について説明する。本実施形態は、上記実施形態と同様の構成であるが、昇降部3が一方の支持部33のみによってレール本体1に支持された構成である。このような構成の場合、レール用溝B,Cからレール本体1を取り出すと、高さ調整部材2(昇降部3および摺動部4)のうち、摺動部4は分離することとなる。しかし、これにより、摺動部4を交換することが可能となる。すなわち、レール本体1の高さを実質的に調整するのは、摺動部4の斜状面部41の厚さ寸法であるから、レール本体1を大きく上昇させるためには、この厚さ寸法の大きな斜状面部41を有する摺動部3を使用すればよい。そこで、そのような寸法を有する摺動部4を施工現場で交換する場合には好適である。
【0044】
なお、このように昇降部4を一方の支持部33によって支持する場合でも、使用時においては、昇降部3は摺動部4とレール用溝B,Cによって上下方向の移動は不可能であり、また、摺動部4の斜状面部41が斜め方向に当接する結果、昇降部3に対して横向きの力を作用するが、その横方向への移動を一方の支持部33によって制限することにより、昇降部3の位置は安定することとなる。そして、このような支持部を使用する場合には、昇降部3の昇降に応じて支持部33が伸縮する必要性もないので、かかる支持部33は弾性変形しない素材で構成するものであってもよい。
【0045】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。従って、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態をとり得るものである。例えば、上記に示した実施形態では、レール本体1は横断面コ字形としたもの、昇降部3は少なくとも支持部33によって支持されたものについて示したが、レール本体1は板状の部材で構成してもよく、昇降部3は支持部により支持されないものでもよい。
【0046】
そのような変形の一例を図5に示す。この図に示すように、レール本体101は、平板状に構成され、レール面部111および調整孔114が設けられている。レール本体101の裏面112には、昇降部103の位置決めのための枠体106が設けられている。この枠体106は、摺動部104が昇降部103を押し下げる際に横向きに移動しないために設けられるものである。また、この枠体106は、昇降部103の幅方向両側にも存在するため、レール本体101には対向片部を設ける必要がない。なお、上記例においても各部間およびレール溝との固定を皿ネジによるものとしたが、皿ネジによる固定に変えて接着剤等によって各部を固定してもよく、その場合には、摺動部104の位置を調整した後、接触部を接着するものであり、当然のことながら皿ネジ当接孔は不要となる。以上が変形例であるが、当然これに限られるものではない。
【符号の説明】
【0047】
1,101 レール本体
2 高さ調整部材
3,103 昇降部
4,104 摺動部
5 皿ネジ
11,111 レール面部
12,13 対向片部
14,114 調整孔
15 皿ネジ当接孔
16,116 レール本体裏面
30 昇降部本体部分
31 下面部
32 上面部
33,34 支持部
33a,34a 係止部
35 平面部
36,37 規制部
38 貫通孔
41 斜状面部
42,43 摺接面部
44 舌片部
45,46 突出部
47 長孔
A 敷居
B,C レール用溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷居のレール用溝に装着されるレール本体と、このレール本体の裏面に配置される高さ調整部材とで構成され、
レール本体は、長尺なレール面部と、このレール面部の長手方向に所定長さで貫設された調整孔とを備え、
高さ調整部材は、さらに昇降部と摺動部とを備え、
上記昇降部は、敷居のレール用溝底面に当接する下面部と、この下面部に対して斜状に形成される上面部とを備え、
上記摺動部は、上記レール本体の裏面に摺接する摺接面部と、上記昇降部の上面部に当接して上記昇降部の下面部を上記レール面部に対して略平行に維持する斜状面部とを備えたことを特徴とする敷居レール。
【請求項2】
前記摺動部は、さらに、前記レール本体の調整孔に侵入する突起部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の敷居レール。
【請求項3】
前記昇降部は、前記レール本体の長手方向両端のうち、少なくとも一方が回動可能に支持されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の敷居レール。
【請求項4】
前記レール本体は、皿ネジを挿通しつつ皿頭を当接する皿ネジ当接孔を備え、前記昇降部は、上記貫通孔の延長線上に貫設され、該貫通孔を挿通する上記皿ネジを挿通できる貫通孔を備え、前記摺動部は、上記皿ネジを挿通しつつ摺動を許容する長孔を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の敷居レール。
【請求項5】
敷居のレール用溝に装着されるレール本体と、このレール本体の裏面に配置される高さ調整部材と、この高さ調整部材を介在させつつ敷居のレール用溝底面に対して上記レール本体を螺着する皿ネジとで構成され、
レール本体は、長尺なレール面部と、このレール面部の長手方向に所定長さで貫設された調整孔と、上記皿ネジを挿通しつつ皿頭を当接する皿ネジ当接孔と、上記レール面部の長手方向に沿った両端縁を下向きに折曲してなる対向片部とを備え、
高さ調整部材は、さらに、上記レール本体の対向片部の中間に配置される昇降部と、上記レール本体部および上記昇降部の間に介在され、該レール本体の長手方向に摺動可能な摺動部とを備え、
上記昇降部は、上記レール本体の対向片部に回動可能に支持される支持部と、敷居のレール用溝底面に当接する下面部と、この下面部に対して斜状に形成される上面部と、上記皿ネジを挿通する貫通孔とを備え、
上記摺動部は、上記レール本体の裏面に摺接する摺接面部と、上記昇降部の上面部に当接して上記昇降部の下面部を上記レール面部に対して略平行に維持する斜状面部と、上記皿ネジを挿通しつつ摺動を許容する長孔と、上記レール本体の調整孔に侵入する突起部とを備えたことを特徴とする敷居レール。
【請求項6】
前記昇降部は、合成樹脂によって一体的に成形され、前記支持部は該合成樹脂によって弾性変形可能であることを特徴とする請求項5に記載の敷居レール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−231465(P2011−231465A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100178(P2010−100178)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(596066530)宇都宮工業株式会社 (9)
【出願人】(000111694)ハリマ産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】