説明

敷物

【課題】隙間の形成や盛り上がりを抑制して、移動し難くした敷物を得る。
【解決手段】シート状基体4の裏面4aが床面6上に載置され、繰り返して粘着・剥離可能な粘着部材12,14を裏面4a側に配置する。その際、裏面4aに凹部8,10を形成すると共に、凹部8,10に粘着部材12,14を収納する。また、凹部8,10の底面8a,10aと粘着部材12,14との間に、底面8a,10aと粘着部材12,14とを着脱可能に係合する係合部材32,34を設けてもよい。係合部材32,34に面ファスナを用い、面ファスナの係合力が、床面6と粘着部材12,14との粘着力よりも小さくしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玄関の床面上に載置され、または、浴室の出入口の床面上に載置され、あるいは、室内の床面上に載置される敷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、玄関の床面上に載置され、出入する人の靴底に付着している土や埃をぬぐい去る靴拭用マット、浴室の出入口の床面上に載置され、足裏の水滴等を拭き取る浴室マット、室内の床面上に載置されるカーペットや絨毯等の敷物が知られている。この敷物を床面上に載置した際に、敷物がずれるのを防ぐために、特許文献1にあるように、敷物の裏面に粘着部材を固着して、粘着部材を介して敷物を床面上に載置するようにしている。反復して粘着・剥離可能な粘着部材を用いることにより、移動が必要なときには、粘着部材を床面から剥がして移動させることができ、反復して利用することができる。
【特許文献1】実開昭64−31070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした従来の敷物では、敷物上を人が通過する際に、敷物に通過方向と反対方向の外力が作用するので、通過方向と直交する敷物の縁に沿って粘着部材が配置される。しかし、敷物の裏面に粘着部材を固着して、敷物を床面上に載置した際、図6(イ)に示すように、敷物50の裏面50aと床面52との間に粘着部材54が介在することになり、敷物50が粘着部材54により盛り上がり、粘着部材54の両側には隙間56が形成されてしまう。
【0004】
このような隙間56が形成されると、敷物50の裏面50aと床面52との接触面積が減少して、外力が敷物50に作用した際に、敷物50が移動しやすくなる。また、敷物50が盛り上がるために、この上を足で踏んで通過すると、大きな外力の発生を招き、敷物50が移動しやすくなり、しかも、違和感を招く場合もあるという問題があった。更に、隙間56に埃等が溜まりやすく、粘着部材54と床面52との間や、粘着部材54と裏面50aとの間に埃等が進入すると、粘着部材54の接着性を低下させてしまう。
【0005】
特に、粘着部材54が敷物50の縁の近傍に配置された際、図6(ロ)に示すように、隙間56が外部に開口してしまうと、敷物50の縁に外力が作用しやすく、敷物50が床面52から離間されやすく、敷物50が顕著に移動しやすくなる。
【0006】
隙間56を形成しないように、敷物50の縁に沿うようにして粘着部材54を配置することもできるが、この場合、粘着部材54を敷物の縁全周にわたって配置しなければならず、過剰な粘着部材54が用いられることになる。また、粘着部材54が敷物50から露出することになるので、外観が損なわれるという問題があった。
【0007】
本発明の課題は、隙間の形成や盛り上がりを抑制して、移動し難くした敷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を達成すべく、本発明は課題を解決するため次の手段を取った。即ち、
シート状基体の裏面が床面上に載置され、繰り返して粘着・剥離可能な粘着部材を前記裏面側に配置した敷物において、
前記裏面に凹部を形成すると共に、該凹部に前記粘着部材を収納したことを特徴とする敷物がそれである。
【0009】
また、前記凹部の底面と前記粘着部材との間に、前記底面と前記粘着部材とを着脱可能に係合する係合部材を設けた構成としてもよい。その際、前記係合部材は面ファスナであってもよい。前記面ファスナの係合力は、前記床面と前記粘着部材との粘着力よりも小さくするとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の敷物は、裏面に形成した凹部に粘着部材を収納したので、床面上に載置しても隙間が形成されることがなく、また、盛り上がることもないので、人が通過する際に移動し難いという効果を奏する。しかも、隙間に埃等が溜まることがなく、埃等が進入して粘着部材に付着し、粘着材の接着性の低下を招くのを防止できるので、粘着部材の接着性を確保できる。更に、係止部材を設けると、粘着部材とシート基体との係合が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、1は長方形状の敷物で、例えば、玄関の出入口や浴室の出入口等に置かれ、靴底に付着している土や埃をぬぐい、あるいは、足裏の水滴等を拭き取るため等に用いられる。尚、敷物1の形状は、正方形状でも、楕円形状等でもよい。
【0012】
図2に示すように、敷物1は、敷物本体2とシート状基体4とを備え、敷物本体2とシート状基体4とが積層されて形成されている。本実施形態では、敷物本体2は基布にパイル糸等の繊維を植設して形成されており、基布の裏側は繊維の脱落を防止するためにバッキング層が形成されている。
【0013】
敷物本体2の裏面側がシート状基体4上に重ねられて一体にされている。シート状基体4はゴム製等の可撓性を有する部材でシート状に形成されおり、敷物本体2が重ねられている面との反対側の裏面4aが床面6上に載置される。この裏面4aには、2列に凹部8,10が形成されている。本実施形態の凹部8,10は、裏面4aが直方体状に敷物本体2側に窪まされて形成され、長方形状の敷物1の長辺側の縁に沿って設けられている。
【0014】
両凹部8,10には、それぞれ粘着部材12,14が収納されている。粘着部材12,14は、繰り返し粘着・剥離可能な、また、クッション性や形状への追従性等を有する軟質ウレタン樹脂、あるいは、内部可塑性を有するアクリル系共重合樹脂等により形成される。
【0015】
例えば、本実施形態では、軟質ウレタン樹脂により形成されており、表1に示すように、ポリエーテルポリオールが59.2重量%、触媒が0.6重量%、顔料が0.2重量%、MDIまたはTDIプレポリマが40.0重量%の成分割合で混合・反応されて形成されている。
【0016】
【表1】

この軟質ウレタン樹脂の物性値を表2に示す。
【0017】
【表2】

この軟質ウレタン樹脂により試験片Pを形成して、粘着力の試験を行った。試験片Pは、大きさが40mm×40mmで、厚さが3mmと5mmの2種類を形成した。被着体21,22としては、構造用鋼板(SPCC:JIS)の間に試験片Pを挟んで、試験環境温度20℃、引張速度300mm/minで試験を行った。
【0018】
また、試験の内容は、試験Aが、図3(イ)に示すように、2枚の被着体21,22の間に挟んだ試験片Pにせん断方向の作用力が働くように、2枚の被着体21,22をその長手方向に引っ張り、2枚の被着体21,22が離間するときの粘着力を測定した。試験Bは、2枚の被着体21,22の間に挟んだ試験片Pに引張方向の作用力が働くように、2枚の被着体21,22をその厚さ方向に引っ張り、2枚の被着体21,22が離間するときの粘着力を測定した。
【0019】
その測定結果を表3に示す。試験片Pの厚さの違いによる粘着力の差はなく、前述した本実施形態の軟質ウレタン樹脂により、実用上十分な粘着力が得られ、粘着・剥離可能な粘着部材12,14を形成できることがわかった。
【0020】
【表3】

また、粘着・剥離を繰り返しても十分な粘着力が得られることを試験した。厚さ3mmの前述した試験片Pを用いて、前述した試験Bを行って、2枚の被着体21,22を離間させた後、試験片Pを水で洗浄してから、再度、2枚の被着体21,22の間に挟み込むようにして貼り付けて試験Bを行った。これを5回繰り返して、そのとき毎の粘着力を測定した。その測定結果を表4に示す。その結果、水洗いして繰り返し粘着・剥離しても、十分な粘着力が得られることがわかった。
【0021】
【表4】

粘着部材12,14は、凹部8,10に収納できるように、凹部8,10とほぼ同じ大きさの直方体状に形成されており、凹部8,10に粘着部材12,14を収納した際には、粘着部材12,14が凹部8,10から大きく飛び出ないように、本実施形態では、粘着部材12,14の表面がシート状基体4の裏面4aとほぼ同一平面を形成するように構成されている。
【0022】
次に、前出した本実施形態の敷物1の作動について説明する。
凹部8,10に粘着部材12,14を収納した敷物1を、裏面4aを下にして床面6上に載置する。これにより、粘着部材12,14が床面6に粘着して、敷物1の移動を抑制する。しかも、粘着部材12,14は凹部8,10に収納されているので、床面6上に敷物1を載置しても、敷物1は盛り上がることがない。従って、敷物1の表面は、平坦となり、見栄えもよい。
【0023】
例えば、敷物1上を人が通過する際に、敷物1に通過方向と反対方向の外力が作用しても、粘着部材12,14が床面6に粘着しているので、敷物1の移動が抑制される。また、敷物1の表面もほぼ平坦となるので、凹凸による外力が作用することがなく、敷物1は移動しにくく、粘着部材12,14上に靴が乗っても、クッション性があるので、違和感もない。
【0024】
しかも、粘着部材12,14の両側に隙間が形成されないので、敷物1の縁がめくれにくい。凹部8,10は、敷物1の縁の近傍にも形成でき、粘着部材12,14の配置位置の自由度が高く、敷物1の縁に粘着部材12,14が露出することもないので、外観もよい。
【0025】
また、凹部8,10以外の裏面4aは、隙間が形成されることなく、床面6に接触するので、裏面4aと床面6との接触面積が広くなり、この点からも敷物1の移動が抑制される。
【0026】
敷物1を清掃する際には、敷物1を床面6から粘着部材12,14の粘着力に抗して引き剥がす。そして、敷物1を水洗い等による清掃後、再び、敷物1を床面6上に載置する。粘着部材12,14は繰り返し粘着・剥離をしても、粘着力が維持されるので、その都度、粘着部材12,14を交換することなく、繰り返し使用できる。
【0027】
粘着部材12,14に土や埃等が付着した際には、粘着部材12,14を水洗い等して付着した土や埃等を落とせばよい。尚、何度も粘着・剥離を繰り返したことにより、粘着部材12,14の粘着力が低下したときには、粘着部材12,14のみを交換すればよい。
【0028】
また、敷物1を床面6から引き剥がす際に、粘着部材12,14が床面6に粘着した状態で引き剥がされても、敷物1を清掃した後、再び、床面6上の粘着部材12,14と凹部8,10の位置とを合わせて、敷物1を床面6上に載置すれば、同様に使用できる。粘着部材12,14を床面6から引き剥がしても、適度な粘着力と引張強さ等を有するので粘着部材12,14が引き裂かれて、一部の粘着部材12,14が床面6上に残ることはない。
【0029】
次に、前述した第1実施形態と異なる第2実施形態の敷物31について、図4によって説明する。尚、前述した部材と同じ部材については、同一番号を付して詳細な説明を省略する。以下同様。
【0030】
第2実施形態では、凹部8,10の底面8a,10aと粘着部材12,14との間に、底面8a,10aと粘着部材12,14とを着脱可能に係合する係合部材32,34を設けて、粘着部材12,14を凹部8,10に収納している。係合部材32,34には面ファスナが用いられており、凹部8,10の底面8a,10aに雌側面ファスナ32a,34aが接着剤等により取り付けられ、粘着部材12,14には雄側面ファスナ32b,34bが取り付けられている。
【0031】
その際、雌側面ファスナ32a,34aと雄側面ファスナ32b,34bとの係合力が、床面6と粘着部材12,14との粘着力よりも小さくなるようにしている。これにより、敷物1を床面6から引き剥がす際に、係合部材32,34の雌側面ファスナ32a,34aと雄側面ファスナ32b,34bとが剥離される。よって、粘着部材12,14は床面6上に張り付いた状態で残る。
【0032】
敷物31を清掃した後、雌側面ファスナ32a,34aと雄側面ファスナ32b,34bとを合わせて、敷物31を床面6上に載置すれば、再び、敷物31が床面6上に粘着部材12,14により粘着された状態になる。従って、敷物31の敷物本体2とシート状基体4とを複数用意し、清掃等により交換が必要となったときには、粘着部材12,14はそのままで、敷物31の敷物本体2とシート状基体4とを交換するようにすることも出来る。
【0033】
次に、前述した実施形態と異なる第3実施形態の敷物41について、図5によって説明する。尚、図5は凹部8の長手方向に沿った一部を示す断面図である。第3実施形態では、凹部8の底面8aに更に小さな窪み42を複数設けて、凹部8の底面8aと粘着部材12との接触面積を、粘着部材12と床面6との接触面積よりも小さくしている。
【0034】
これにより、敷物41を床面6から引き剥がす際に、底面8aと粘着部材12との粘着が剥がれ、粘着部材12は床面6上に張り付いた状態で残る。第2実施形態のように係合部材32,34を設けなくても、敷物41を床面6から引き剥がす際に、粘着部材12,14を床面6に残すようにすることが出来る。
【0035】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態としての敷物の斜視図である。
【図2】図1のAA断面で示す敷物の分解説明図である。
【図3】本実施形態の粘着部材の試験片による試験の説明図である。
【図4】第2実施形態の敷物を断面で示す分解説明図である。
【図5】第3実施形態の敷物の凹部の長手方向に沿った一部を示す断面図である。
【図6】従来の敷物を断面で示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1,31,41,50…敷物 2…敷物本体
4…シート状基体 4a,50a…裏面
6,52…床面 8,10…凹部
8a,10a…底面 12,14,54…粘着部材
32,34…係合部材 42…窪み
56…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基体の裏面が床面上に載置され、繰り返して粘着・剥離可能な粘着部材を前記裏面側に配置した敷物において、
前記裏面に凹部を形成すると共に、該凹部に前記粘着部材を収納したことを特徴とする敷物。
【請求項2】
前記凹部の底面と前記粘着部材との間に、前記底面と前記粘着部材とを着脱可能に係合する係合部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の敷物。
【請求項3】
前記係合部材は面ファスナであることを特徴とする請求項2に記載の敷物。
【請求項4】
前記面ファスナの係合力は、前記床面と前記粘着部材との粘着力よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の敷物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−264234(P2008−264234A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111813(P2007−111813)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000101905)イイダ産業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】