説明

敷物

【課題】優れた吸放出性、保水性及び強度を備え、かつ優れた消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有する敷物を提供すること。
【解決手段】吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bとを構成繊維とする基布10、または吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束11Cを構成繊維とする基布20を用いたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の室内や廊下の床面、自動車や列車、飛行機の床面に敷設されるカーペットやマット、特には玄関マット、浴室や洗面所に敷設されるカーペットや足拭きマット、台所のキッチンマット、便所用マットなど、水に濡れやすく、しかも悪臭を発生しやすい用途に適用される敷物に関し、より詳しくは、優れた吸放出性、保水性及び強度を備え、かつ優れた消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有する敷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばホテルや劇場などの公共施設の玄関先には玄関マットが敷かれていることが多い。雨天時には、多くの利用者がこの玄関マットを通って出入りするため、該玄関マットは多くの水を含んでしまい、利用者が玄関マットを踏むことで、足を濡らしてしまうことがあった。このため、頻繁に玄関マットを取り替えなければならないという煩雑さもあった。さらには、玄関の奥には大理石などが敷かれた玄関ホールが隣接されていることが多く、足を濡らした利用者が玄関ホールで転倒するという危険もあった。
【0003】
一方、浴室や洗面所に敷設されるカーペットや足拭きマットなどの敷物は、水が掛かって濡れる度毎に、取り外して乾燥させる必要があり、濡れたままに放置すれば、該敷物が細菌の温床となり、悪臭の発生原因ともなっていた。
【0004】
さらに、便所用マットなどの敷物の場合、尿で濡れることを前提として使用とするものであることから、頻繁に清掃しなければならないという煩雑さがあった。濡れたままにしておくと、悪臭が発生し、利用者に不快感を与えていた。
【0005】
このような事情から、ゼオライト、シリカゲル等の無機物からなる吸水材や吸水性樹脂からなる吸水材を使用した敷物が提案されている。ところが、このような敷物にあっては、吸水性を高くするため、吸水材量を多くした場合、吸水材が吸水して膨潤して強度が低くなり、反対に敷物としての強度を高くするため、吸水材量を減らすと、十分な吸水性が得られないといった問題があった。
【0006】
そこで、十分な吸水性と強度を兼ね備えた敷物が提案されるに至っている(例えば特許文献1参照)。この敷物は、吸水量10g/g以上の高吸水性繊維からなる吸水性不織布層の少なくとも片面に、伸度50%以上の伸縮性不織布層が積層され、部分的に一体化されたことを特徴とするものである。
【0007】
しかし、この敷物にあっては、吸水量が飽和に達すると、保持した水分を放水、放湿する機能を持っていないため、効果がなくなり取り替えなければならない。また、踏みつけられる等の圧力が加わると、吸水した水が逆戻りする現象も発生するといった不具合があった。
【0008】
そこで、提案されたのが、水を速やかに吸水して保持すると共に、一旦吸収した水を放出することができる機能を備えた敷物である。このような敷物としては、吸水性樹脂分散体(D)中のポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(P)とを反応させてなるウレタン樹脂からなるフロアーマット用バッキング材及びそれを用いたものであり、吸水性に優れ、多湿な環境によって引き起こされる不快感を防止できる効果を奏するものがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−57610
【特許文献2】特開2000−325217
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、水を速やかに吸水して保持すると共に、一旦吸収した水を放出することができる機能を備えた敷物について、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至ったのである。
【0011】
すなわち、本発明は、優れた吸放出性、保水性及び強度を備え、かつ優れた消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有する敷物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束とフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束とを構成繊維とする基布、または吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を構成繊維とする基布を用いたことを特徴とする敷物をその要旨とした。
【0013】
請求項2記載の発明は、吸排水性ポリマーが感温吸排水性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の敷物をその要旨とした。
【0014】
請求項3記載の発明は、吸排水性ポリマーの感温点が10−45℃であることを特徴とする請求項2に記載の敷物をその要旨とした。
【0015】
請求項4記載の発明は、吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維を鞘部とした親水性吸排水繊維束と、フタロシアニン化合物を含む消臭繊維を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維を鞘部とした親水性消臭繊維束とを構成繊維とする基布を用いたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の敷物をその要旨とした。
【0016】
請求項5記載の発明は、吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維とフタロシアニン化合物を含む消臭繊維とを芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維を鞘部とした親水性吸排水消臭繊維束を構成繊維とする基布を用いたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の敷物をその要旨とした。
【0017】
請求項6記載の発明は、基布表面に撥水性のパイル糸が打ち込まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の敷物をその要旨とした。
【0018】
請求項7記載の発明は、基布裏面に表裏を貫通する多数の貫通孔を有するバッキング層を形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の敷物をその要旨とした。
【0019】
請求項8記載の発明は、基布裏面に吸水シートを取り替え自在に配置したことを特徴とする請求項7に記載の敷物をその要旨とした。
【発明の効果】
【0020】
本発明の敷物にあっては、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束とフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束とを構成繊維とする基布、または吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を構成繊維とする基布を用いたことから、優れた吸放出性、保水性及び強度を備え、かつ優れた消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の敷物を構成する吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束とフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束とを構成繊維とする基布を示す拡大断面図である。
【図2】本発明の敷物の基布の構成繊維として含まれる吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束を示す模式図である。
【図3】本発明の敷物の基布の構成繊維として含まれるフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束を示す模式図である。
【図4】本発明の敷物を構成する吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を構成繊維とする基布を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の敷物の基布の構成繊維として含まれる吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を示す模式図である。
【図6】図1又は図4に示す基布を用いた敷物を示す拡大断面図である。
【図7】図1又は図4に示す基布を用いた敷物であって、前記基布裏面に吸水シートを取り替え自在に配置した敷物を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の敷物を図面に示した好ましい実施の形態に従ってさらに詳しく説明する。本発明の敷物は、優れた吸放出性、保水性及び強度を備え、かつ優れた消臭効果、抗アレルゲン効果及び抗菌効果を有し、建物の室内や廊下の床面、自動車や列車、飛行機の床面に敷設されるカーペットやマット、特には玄関マット、浴室や洗面所に敷設されるカーペットや足拭きマット、台所のキッチンマット、便所用マットなど、水に濡れやすく、しかも悪臭を発生しやすい用途に好適な敷物である。
【0023】
本発明の敷物は、図1−図3に示す吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bとを構成繊維とする基布10、または図4−図5に示す吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束11Cを構成繊維とする基布20を用いたことを特徴とするものである。
【0024】
図1−図3に示す基布10について説明する。図1に示す基布10を構成する吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとしては、例えば図2に示すように、吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維12を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維14を鞘部としたものを挙げることができる。
【0025】
吸排水性繊維12としては、親水性繊維の表面に吸排水性ポリマーをバインダーを介して付着させたもの、或いは親水性繊維の繊維内部に吸排水性ポリマーを含ませたものを挙げることができ、親水性繊維としては、例えば木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維を挙げることができる。
【0026】
吸排水性ポリマーとしては、特に限定されないが、取り扱い性が良好であり、かつ吸排水性の制御が容易であることから、吸水性に優れると共に一旦吸水した後、温度変化に伴って吸水率が変化して排水する機能を持つ感温吸排水性ポリマーが好ましい。感温吸排水性ポリマーとしては、感温点が10−45℃の温度領域にあるものがより好ましく、感温点が35°Cのものがさらに好ましい。図2及び図5の例では、感温点が35°Cの感温吸排水性ポリマーを吸排水性ポリマーとして用いた。
【0027】
このような感温吸排水性ポリマーとしては、イソプロピルアクリルアミド構造を含むポリマーの他に、アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド誘導体、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト、アクリル酸ステアリンアクリレート共重合体などのポリマーを挙げることができる。
【0028】
鞘部を構成する繊維には、吸排水性繊維のベースとした親水性繊維と同じく、木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維などの親水性繊維を用いることができる。
【0029】
尚、親水性吸排水繊維束は、芯部を構成する吸排水性繊維の含有割合によっては、該吸排水性繊維中の感温吸排水性ポリマーが吸水により膨潤し、親水性吸排水繊維束自体の繊維強度を低下する恐れがあるが、吸水時の親水性吸排水繊維束の繊維強度の低下を抑えるため、繊維束中にポリエステルなどの熱接着性繊維を混入させても良い。
【0030】
図1に示す基布10を構成するフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bとしては、例えば図3に示すように、フタロシアニン化合物を含む消臭繊維13を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維14を鞘部としたものを挙げることができる。
【0031】
消臭繊維としては、親水性繊維の表面にフタロシアニン化合物をバインダーを介して付着させたもの、或いは親水性繊維の繊維内部にフタロシアニン化合物を含ませたものを挙げることができ、親水性繊維としては、例えば木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維を挙げることができる。
【0032】
フタロシアニン化合物としては、下記化学式1で表されるものであり、式中のMは、鉄、マンガン、チタン、バナジウム、ニッケル、銅、タングステンからから選択される金属である。
【化1】

【0033】
鞘部を構成する繊維には、吸排水性繊維のベースとした親水性繊維と同じく、木綿、麻、木質パルプまたは竹パルプのようなセルロース系繊維、羊毛または絹のような蛋白質系繊維から選ばれる天然繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維から選ばれる合成繊維、アセテートレーヨンなどのセルロース系繊維からなる半合成繊維、ビスコースレーヨンなどのようなセルロース系繊維から選ばれる再生繊維などの親水性繊維を用いることができる。
【0034】
図1−図3に示す吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bとを構成繊維とする基布10は、不織布、織物、編物、紙などの形態を採ることができ、この基布10を単独で使用するほかに、基布10に不織布、織物、編物、紙、プラスチックネットなどの補強シートを積層し、部分接着、絡合処理などにより一体化した複合体の形態を採ることもできる。
【0035】
基布10のさらに好ましい形態としては、吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束11Aとフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束11Bとを含み、さらに熱接着性繊維を含む繊維ウェブを形成し、この繊維ウェブを水流絡合やニードルパンチなどの絡合処理を行ない、さらに加熱処理をすることで得られる不織布からなるもの、或いは前記繊維ウェブの一方面側にプラスチックネットからなる補強シートを積層し、水流絡合やニードルパンチなどの絡合処理を行ない、さらに加熱処理をすることで得られる複合シートからなるものを挙げることができる。
【0036】
次に、図4−図5に示す基布20について説明する。図4に示す基布20を構成する吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束11Cとしては、例えば図5に示すように、吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維12とフタロシアニン化合物を含む消臭繊維13とを芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維14を鞘部としたものを挙げることができる。
【0037】
親水性吸排水消臭繊維束11Cにおける吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維12、フタロシアニン化合物を含む消臭繊維13、親水性繊維14については、親水性吸排水繊維束11Aの芯部を構成する吸排水性繊維12、親水性消臭繊維束11Bの芯部を構成する消臭繊維13、親水性吸排水繊維束11A及び親水性消臭繊維束11Bの鞘部を構成する親水性繊維と同じであるため、ここでの説明は割愛する。
【0038】
尚、親水性吸排水消臭繊維束11Cにおける吸排水性繊維12及び消臭繊維13の量は任意であり、本発明の敷物の用途や使用状態において、要求される吸排水性及び消臭性の大小に応じて適宜決定すると良い。
【0039】
次に、上記基布10又は20を使用した敷物について説明する。上述の如く、本発明の敷物は、例えば玄関マット、浴室や洗面所に敷設されるカーペットや足拭きマット、台所のキッチンマット、便所用マットなどに好適に使用される。図6は、玄関マットとして使用した敷物を例示したものである。
【0040】
図6に示す敷物は、上述の基布10又は20に撥水性のパイル糸15を打ち込むと共に、基布10又は20裏面に表裏を貫通する多数の貫通孔18を有するバッキング層17を形成したものである。パイル糸15は、基布10又は20に所定のボリュームとなるように打ち込まれて該織物表面の意匠性を高めている。この基布10又は20に打ち込まれるパイル糸15には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系の合成繊維が好適に使用される。パイル糸21の太さは任意であり、予定する敷物の種類や用途に合わせて自由に決定すると良い。
【0041】
パイル糸15は、該パイル糸15を構成する繊維表面に撥水剤を付着させて撥水加工が施されている。使用する撥水剤としては、例えばフッソ系撥水剤、シリコン系撥水剤、パラフィン系撥水剤等があり、要求される撥水性能に応じて適宜選択すると良い。特にパーフルオロエチレン系およびその共重合物からなるものは撥水性能が高く好ましい。この撥水剤の付着量としては、純分で0.01〜10.0重量%の範囲が望ましい。この範囲よりも付着量が下回ると、十分な撥水性能が得られず、この範囲よりも多い付着量とした場合には、上回った分だけの効果が期待できず不経済となる。
【0042】
撥水加工されたパイル糸15は、図6中矢印で示すように、該敷物表面の水がパイル糸15の構成繊維間を通してパイル糸15基部の基布10又は20に浸透し、基布10又は20に含まれる、吸排水性繊維12の吸排水性ポリマーに吸水されるようになっている。基布10又は20には、図2、図3又は図5に示すように、吸排水性繊維12とともにフタロシアニン化合物を含む消臭繊維13が含まれており、吸排水性繊維12中の吸排水性ポリマーの吸水に伴って、これに隣り合う消臭繊維13中のフタロシアニン化合物も水と接触し、該フタロシアニン化合物の持つ消臭効果、さらには抗アレルゲン効果及び抗菌効果がより活性化され、効果的に敷物の消臭、抗アレルゲン及び抗菌がなされるようになっている。
【0043】
吸水した吸排水性繊維12中の吸排水性ポリマーは、所定の湿度又は温度となったとき(図示の場合感温点が35°Cの感温吸排水性ポリマーを吸排水性ポリマーとして用いたので、感温点35℃となったとき)、一旦吸収した水を放出するようになっている。
【0044】
パイル糸15が打ち込まれた基布10又は20裏面には、パイル糸の抜け止め層16が設けられている。図6に示す抜け止め層16は、蜘蛛の巣状の透孔性接着シートからなる。この透孔性接着シートには、接着時の熱およびまたは圧力で薄膜化されて成るもの、ホットメルト樹脂などの接着樹脂中に発泡剤を入れて混練、シート化したものなどを用いることができる。図6に示す例では、この透孔性接着シートをパイル糸15を打ち込んだ基布10又は20裏面に配置し熱プレスすることで、該透孔性接着シートが薄膜(フィルム)状となって基布10又は20内部に浸透し、パイル糸15の抜けを止めるようになっている。
【0045】
基布10又は20裏面に形成されているバッキング層17は、該敷物の補強および保形、すべり止めを行う目的で形成されるものである。図6に示す例において、バッキング層17は連続気泡構造となっており、その裏面側にはズレ止め用の多数のスパイク19が形成されている。
【0046】
バッキング層を構成する樹脂としては、例えばスチレンーブタンジエンースチレン共重合体、アクリルニトリルーブタジエン系共重合体、ウレタン樹脂等の高分子、スチレンーブタンジエンゴム、アクリルニトリルーブタンジエンゴム、ブタンジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴム高分子、またはこれらを複数種混合したものなどを例示することができる。また、上記樹脂には必要に応じて充填剤、発泡剤、増粘剤、分散剤を加えてもよい。
【0047】
充填剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化アンチモンなどが例示できる。発泡剤としては、例えば脂肪酸石けん、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、Nーオクタデシルスルホコハク酸モノアミドジナトリウムなどが挙げられる。増粘剤としては、例えばポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、ポリビニルアルコール、カゼイン、発酵多糖類などが挙げられるが、好ましくは低分子量のポリアクリル酸ソーダである。分散剤としては、例えばトリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダなどが例示できる。
【0048】
バッキング層17は、表裏に貫通する多数の貫通孔18を有している。これら多数の貫通孔18を通して図6中点線で示すように敷物内部の基布10又は20に空気が出入りするようになっており、基布10又は20に含まれる吸排水性繊維12中の吸排水性ポリマーの一旦吸収した水の放出を促すようになっている。
【0049】
図7に示す形態は、大容量の吸水が予定される用途、例えばホテルなどの人の出入りが多い建物の玄関に敷かれる玄関マットに好適な敷物の例である。この敷物は、基布10又は20裏面に設けたパイル糸の抜け止め層16に吸水シート21を取り替え自在に配置したものである。吸水シート21は、デンプン,セルロース,ポリアクリル酸,ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン等を、架橋剤,自己架橋,放射線照射等によって網状化反応を行うことにより得られる高吸水性非排水性ポリマー21aを親水性不織布21bと非透水性シート21cとの間に封入したものである。この吸水シート21の場合、水を一旦吸水した後は排水しないので使い捨てであり、吸水した後は、親水性不織布21bと抜け止め層16とに取り付けた雄雌の面ファスナー22A、22Bによって抜け止め層16に取り付けられた吸水シート21を取り外し、新しい吸水シート21に取り替えるようにして使用するようになっている。
【0050】
尚、本発明の敷物は、上述した例に限定されるものではなく、例えば図4に示すように、吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束11Cを含む基布20の構成繊維に導電性繊維を含む糸22(炭素繊維、金属繊維、導電性セラミック繊維などの無機繊維、合成繊維を主材とし、この繊維表面に銅や銀、アルミニウムなどの金属をメッキしたメッキ繊維、繊維表面に銅や銀、アルミニウムなどの金属を練り込んだもの、あるいは繊維成分中に導電性を有する樹脂を含ませた繊維などの導電性繊維を複数本束ねて加撚することで得られる糸)を含ませて、抗菌性をさらに向上させ、かつ静電気除去機能を持たせるなど、特許請求の範囲に記載された範囲で自由に変更することができる。
【符号の説明】
【0051】
10又は20・・・基布
11A・・・親水性吸排水繊維束
11B・・・親水性消臭繊維束
11C・・・親水性吸排水消臭繊維束
12・・・吸排水性繊維
13・・・消臭繊維
14・・・親水性繊維
15・・・パイル糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸排水性ポリマーを含む親水性吸排水繊維束とフタロシアニン化合物を含む親水性消臭繊維束とを構成繊維とする基布、または吸排水性ポリマーとフタロシアニン化合物とを含む親水性吸排水消臭繊維束を構成繊維とする基布を用いたことを特徴とする敷物。
【請求項2】
吸排水性ポリマーが感温吸排水性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の敷物。
【請求項3】
吸排水性ポリマーの感温点が10−45℃であることを特徴とする請求項2に記載の敷物。
【請求項4】
吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維を鞘部とした親水性吸排水繊維束と、フタロシアニン化合物を含む消臭繊維を芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維を鞘部とした親水性消臭繊維束とを構成繊維とする基布を用いたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の敷物。
【請求項5】
吸排水性ポリマーを含む吸排水性繊維とフタロシアニン化合物を含む消臭繊維とを芯部とし、前記芯部の周りに天然繊維 、合成繊維 、半合成繊維 または再生繊維からなる親水性繊維を鞘部とした親水性吸排水消臭繊維束を構成繊維とする基布を用いたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の敷物。
【請求項6】
基布表面に撥水性のパイル糸が打ち込まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の敷物。
【請求項7】
基布裏面に表裏を貫通する多数の貫通孔を有するバッキング層を形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の敷物。
【請求項8】
基布裏面に吸水シートを取り替え自在に配置したことを特徴とする請求項7に記載の敷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−187826(P2010−187826A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33800(P2009−33800)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000149664)株式会社大和 (35)
【出願人】(592083993)株式会社八千代 (34)
【出願人】(592084004)株式会社祥永 (34)
【Fターム(参考)】