説明

文字入力装置、文字入力方法及び文字入力プログラム

【課題】文字入力装置において、階層化された仮想キーボードにおいて1回のタッチ操作で文字入力を行うことができることを目的とする。
【解決手段】タッチパネルとスクリーンとCPUとを有する文字入力装置であって、前記CPUは、第1階層の複数の文字に対応する第1階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、前記第1階層仮想キーボードのキーに対するタッチに応じて、タッチされた前記キーに対応する第2階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、前記キーをタッチした指のスライドに応じて、前記第2階層仮想キーボードのキーのうち前記スライドの方向に表示されているキーに対応する第3階層仮想キーボードが存在する場合に、前記第3階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、前記指が前記タッチパネルから離れた場合に、離れた位置に表示されているキーに対応する文字を入力文字とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字を入力する文字入力装置、文字入力方法及び文字入力プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPDA(Personal Digital Assistants)等の携帯デバイスは、利用者のニーズから更なる小型化を追求している。文字入力デバイスであるキーボードはスクリーンとは別の面に設けなければならないことから、小型化とは相反するデバイスとなっており、スクリーン面とキーボード面を合わせる形で折り畳む機構にしたり、キーボードをスクリーン裏側に折り畳む又は収納する機構などを設けて携帯時の小型化を追及している。
【0003】
ただし、これらの機構を設けても体積や重量への効果はないことや、携帯デバイスを使用する際には畳んだキーボードを展開しなければならないことから、キーボードを不要にできるスクリーン一体型タッチパネルへの期待が高まっている。
【0004】
ところで、タッチパッドを用いた文字入力に関し、文字を複数の文字を代表とする階層クループに分け、代表文字を選択した後、一つのスイッチの接触移動方向と移動長とにより、次階層グループ内の一つの文字を選択する技術がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−342011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、スクリーンへの情報表示を行った上で、文字入力のための仮想キーボードをスクリーンに表示するためには、スクリーン自体をより大きくせざるを得ないため、携帯性の追求という観点からジレンマが生じている。そのため、仮想キーボードを含めた文字入力のための表示は極力省スペースに収めなければならない。
【0007】
キーボードによる文字入力と同様にスクリーン一体型タッチパネルを利用した文字入力においても、仮名漢字変換プログラムまたは予測変換プログラムへのインプットとして仮名文字を入力する必要がある。
【0008】
通常のキーボードを備えたデバイスでは、各仮名文字を1つキーに割り当てたり、アルファベットを各キーに割り当てて一旦ローマ字入力したものを仮名文字に変換するプログラムを用いたりすることで、両手全指を使い各指の連続タッチを可能とすることで、比較的容易に文字入力を行うことができる。
【0009】
携帯デバイスにおいても文字入力を容易にするためには、タッチ回数を極力少なくする必要があるが、そのためには仮想キーボードを多数表示することが必要となり、上記した仮想キーボードを含めた文字入力のための表示は極力省スペースに収める必要があることと相反する。
【0010】
更に、携帯デバイスにおける文字入力では、携帯デバイスを持ったまま操作を行わなければならないことから、操作に使える指は限られている。通常、携帯デバイスを持つ手の指は親指1本しか操作に使えないことが多い。また、タッチパネルはパネル面に指が触れるだけですぐに感知してしまうことから、持ち手ではない方の手の指で操作する場合でも、1本指(通常は人差し指)しか操作に使えず、複数指での連続タッチによる入力の簡便さを求めることはできない。つまり、携帯デバイスにおける文字入力方法を検討する場合には、片手操作時は親指又は人差し指の1本、両手操作時は左右の親指計2本であることを考慮する必要がある。
【0011】
省スペース化のために1回に表示できる仮想キーボードの数を減らすことを検討すると、全入力可能文字から所望の入力対象文字に絞り込むために、2階層以上の仮想キーボードの階層化を行い複数回のタッチ操作が必要となる。この場合に2回目のタッチ操作は、1回目にタッチしたものから絞り込んだ結果を第2階層の仮想キーボードに反映した状態で選択することが必要となるが、最初にタッチした親指又は人差し指に隠れてしまう位置に第2階層の仮想キーボードが表示されると、隠れて見えなくなるため、一旦指を離してスクリーンを見る必要が生じる。省スペース内に表示された小さな仮想キーボードへのタッチ操作自体が小さなターゲットを指で指す行為となり、それを1文字入力するのに2回以上行うことは、精神的ストレスが溜まることから容易な入力方法とは言えない。
【0012】
携帯デバイスのスクリーン一体型タッチパネルは必要な情報表示を行った上で、文字入力のための仮想キーボードを表示させる必要があり、前記省スペース化と、タッチ操作できる指は片手操作時では親指又は人差し指の1本、両手操作時は左右の親指計2本であることと、第2階層以降の仮想キーボードの表示は現在タッチしている指に隠れない位置に表示しなければならないことを考慮すると、入力を容易にできる仮想キーボードの表示レイアウトは非常に困難であるという問題があった。
【0013】
開示の文字入力装置は、階層化された仮想キーボードにおいて1回のタッチ操作で文字入力を行うことができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
開示の一実施態様による文字入力装置は、タッチパネルとスクリーンとCPUとを有する文字入力装置であって、
前記CPUは、
第1階層の複数の文字に対応する第1階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、
前記第1階層仮想キーボードのキーに対するタッチに応じて、タッチされた前記キーに対応する第2階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、
前記キーをタッチした指のスライドに応じて、前記第2階層仮想キーボードのキーのうち前記スライドの方向に表示されているキーに対応する第3階層仮想キーボードが存在する場合に、前記第3階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、
前記指が前記タッチパネルから離れた場合に、離れた位置に表示されているキーに対応する文字を入力文字とする。
【発明の効果】
【0015】
開示の装置によれば、階層化された仮想キーボードにおいて1回のタッチ操作で文字入力を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】携帯デバイスの一実施形態の外観斜視図である。
【図2】携帯デバイスの一実施形態のブロック図である。
【図3】文字入力に関するプログラム構成の一実施形態を示す図である。
【図4】文字入力プログラムが実行する処理の一実施形態のフローチャートである。
【図5】文字入力プログラムの実行する処理の一実施形態のフローチャートである。
【図6】第1階層仮想キーボードの表示例を示す図である。
【図7】第2階層仮想キーボードの表示例を示す図である。
【図8】左手入力での扇形の仮想キーボードの展開方向とタッチ軌跡を示す図である。
【図9】右手入力での扇形の仮想キーボードの展開方向とタッチ軌跡を示す図である。
【図10】両手入力での扇形の仮想キーボードの展開方向とタッチ軌跡を示す図である。
【図11】スクリーン表面一体型のタッチパネルを説明するための図である。
【図12】スライド方向θと移動量dを説明するための図である。
【図13】第2階層仮想キーボードの扇形の角度範囲を広げた状態を示す図である。
【図14】文字入力プログラムが実行する処理の第1変形例のフローチャートである。
【図15】文字入力プログラムが実行する処理の第2変形例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて実施形態について説明する。
【0018】
<実施形態>
図1は、携帯デバイスの一実施形態の外観斜視図を示す。この携帯デバイスは例えば携帯電話又はPDAである。同図中、携帯デバイス10は、本体部11の一面に設けられたスクリーン(ディスプレイ)12と、スクリーン12の表面に一体化して設けられた透明なタッチパネル13を有している。
【0019】
図2は、携帯デバイスの一実施形態のブロック図を示す。同図中、本体部11の内部には、CPU21,RAM22,ROM23,無線通信部24,スクリーンインタフェース25,タッチパネルインタフェース26が設けられており、これらの間はバス27により相互接続されている。スクリーンインタフェース25にはスクリーン12が接続され、タッチパネルインタフェース26にはタッチパネル13が接続されている。
【0020】
ROM23にはアプリケーションプログラム,文字入力プログラム,ローマ字仮名変換プログラム,仮名漢字変換プログラム等の各種プログラムが格納されており、CPU21はこれらのプログラムをROM23から読み出して実行し、この際にRAM22を作業領域として使用する。なお、本明細書で言う文字には、文字の他に、記号、制御コマンド等を含むものとする。
【0021】
図3は、文字入力に関するプログラム構成の一実施形態を示す。同図中、文字入力プログラム31は、スクリーン12に仮想キーボードを表示する仮想キーボード表示機能31a、スクリーン表面一体型のタッチパネル13からどの仮想キーにタッチしているかを判定するタッチ判定機能31b、タッチパネル13上を指でスライドする操作を行ったときに、スライド方向と移動量を判定するスライド検出機能31cを持つ。更に、角度拡大機能31dを持たせても良い。
【0022】
文字入力プログラム31は文字入力を必要とするアプリケーションプログラム32から起動される。起動の際に、そのアプリケーションプログラム32の入力に必要とする文字の種類(仮名漢字、アルファベット、記号、制御コマンド等)、入力モード(左手モード、右手モード、両手モード等)が指定される。
【0023】
文字入力プログラム31は入力した文字を、必要に応じて、ローマ字仮名変換プログラム33、仮名漢字変換プログラム(又は予測変換プログラム)34に渡す。入力した文字は各プログラムにより適切に変換され文字入力が行われ、入力文字がプリケーションプログラム32に通知される。文章を入力する場合は、この処理を繰り返し行うことにより実現する。
【0024】
文字入力プログラム31では、プリケーションプログラム32の入力に必要とする文字の種類により、入力対象文字の集合が異なるから、使用する入力対象文字の集合毎に階層グループを予め用意しておく。
【0025】
<フローチャート>
図4及び図5は、文字入力プログラム31が実行する処理の一実施形態のフローチャートを示す。
【0026】
図4において、ステップS11で文字入力プログラム31は、起動の際に、そのアプリケーションプログラム32から入力に必要とする文字の種類(仮名漢字、アルファベット等)を指定されることにより、使用する階層グループを決定する。
【0027】
入力を行うべき文字すなわち入力可能文字の全てを、代表とする数個の文字を頂点とした階層グループに分けについては、ひらがなであれば「あかさたなはまやらわ」を頂点(第1階層)とし、例えば「あ」の下階層(第2階層)に「いうえおぁぃぅぇぉ」とする。この他にも、「あ」の下階層(第2階層)に「いうえお」として、更に例えば「い」の下階層(第3階層)に「ぃ」を設けても良い。これら入力可能文字の階層グループ構造は、例えば携帯電話の数値キーボードと同様として操作のとっつき易さを重視しても良い。また、複数の階層パターンを保持しておき、動的に変更するようにしても良い。
【0028】
次に、ステップS12で文字入力プログラム31は、使用する階層グループの代表文字を第1階層仮想キーボードとしてスクリーン12に表示し、仮想キーボードへのタッチを待つ。図6に、第1階層仮想キーボードの表示例を示す。
【0029】
ステップS13でタッチ判定機能31bが第1階層仮想キーボードへのタッチを判定すると、ステップS14でスライド検出機能31cにて求めた移動量dが閾値を超えたときにステップS15に進む。なお、ステップS14は必ずしも設けなくても良い。
【0030】
ステップS15で文字入力プログラム31は、階層グループの代表文字つまり第1階層仮想キーボードにおいてタッチされたキー(第1階層仮想キー)の仮入力を行ってRAM22に保持し、入力文字の第2階層仮想キーボードをスクリーン12に表示する。図7は第2階層仮想キーボードの表示例を示す。第1階層仮想キーボードの文字「な」の配下である第2階層仮想キーボードの文字列「にぬめの」は、第1階層仮想キーボードに重ねて、タッチした指の指先方向に扇形に配列されて表示される。
【0031】
次に、ステップS16でタッチしていた指がタッチパネル13から離れたか否かを判別し、離れていない場合にはステップS17でスライド検出機能31cにて求めたスライド方向と移動量を取得する。そして、ステップS18で取得した移動量からスライドの有無を判別し、スライドがない場合にはステップS16に進み、スライドがあった場合にはステップS19に進む。
【0032】
第2階層仮想キーボードに対しタッチした指をスライドする操作を行った場合は、ステップS19において、階層グループの既に仮入力された代表文字(第1階層仮想キー)配下の第2階層の文字(第2階層仮想キー)の仮入力を行ってRAM22に保持した仮入力値を更新する。ここでは、第2階層仮想キーの位置までスライドする前にスライド方向にある第2階層仮想キーの仮入力を行っているが、第2階層仮想キーの位置までスライドした時点で第2階層仮想キーの仮入力を行っても良い。
【0033】
なお、ステップS16でタッチしていた指がタッチパネル13から離れた場合には、ステップS20で指が離れた位置が仮想キー上であるか否かを判別し、仮想キー上でなければ入力をキャンセルして処理を終了する。仮想キー上であればステップS21で第1階層仮想キーボードにおいてタッチされたキー(第1階層仮想キー)を入力値とし、必要に応じて、ローマ字仮名変換プログラム、仮名漢字変換プログラムまたは予測変換プログラムに渡し、この処理を終了する。
【0034】
こののち、図5のステップS31において、下階層(第n階層,nは3以上の整数)があるか否かを判定し、下階層があればステップS32で第n階層(例えば第3階層)仮想キーボードを表示する。
【0035】
こののち、ステップS33でタッチしていた指がタッチパネル13から離れたか否かを判別し、離れていない場合にはステップS34でスライド検出機能31cにて求めたスライド方向と移動量を取得する。そして、ステップS35で取得した移動量からスライドの有無を判別し、スライドがない場合にはステップS33に進み、スライドがあった場合にはステップS36に進む。
【0036】
第n階層仮想キーボードに対しタッチした指をスライドする操作を行った場合は、ステップS36において、階層グループの既に仮入力された代表文字(例えば第2階層仮想キー)配下の第n階層の文字(例えば第3階層仮想キー)の仮入力を行ってRAM22に保持して仮入力値を更新する。ここでは、第3階層仮想キーの位置までスライドする前にスライド方向にある第3階層仮想キーの仮入力を行っているが、第3階層仮想キーの位置までスライドした時点で第3階層仮想キーの仮入力を行っても良い。
【0037】
なお、ステップS33でタッチしていた指がタッチパネル13から離れた場合にはステップS37で指が離れた位置が仮想キー上であるか否かを判別し、仮想キー上でなければ入力をキャンセルして処理を終了する。仮想キー上であればステップS38で第n−1階層仮想キーボードにおいてタッチされたキー(例えば第2階層仮想キー)を入力値とし、必要に応じて、ローマ字仮名変換プログラム、仮名漢字変換プログラムまたは予測変換プログラムに渡し、この処理を終了する。
【0038】
このようにして、文字入力プログラム31は、入力文字の第3階層に属する文字の仮想キーボード(第3階層仮想キーボード)をスクリーン12に扇形に配列表示して同様の動作を繰り返すが、階層グループの既に仮入力された文字の配下に下階層の文字がない場合は、仮想キーボードの表示は行わない。
【0039】
<左手入力>
第2階層もしくはそれ以下の階層の仮想キーボードにおける、扇形の仮想キーボードの展開方向は、携帯デバイスの持ち方の設定に応じて変更して入力を容易にする。勿論、扇形の仮想キーボードの展開方向は動的に設定変更できる。
【0040】
図8(A)に、スクリーン12を縦長状態で使用する携帯デバイス10を右手で持ち、左手(通常は人差し指)で操作する左手モードの第1階層,第2階層,第3階層それぞれの仮想キーボードを示し、図8(B)に、文字「べ」を入力する場合のタッチ軌跡(矢印太線)を示す。
【0041】
携帯デバイス10を右手で持った場合、左手人差し指の指先方向は右上方向となるから、第2階層仮想キーボードの扇形の角度範囲は仮入力したキーを中心として右上方向に表示する。例えば仮入力したキーを中心として真上を0度とすると約0度〜時計方向に約90度範囲とすることにより、第2階層仮想キーボードの文字「ひふへほ」を左手人差し指が隠すことなく、第3階層仮想キーボードの文字「べぺ」を次々と表示することが可能である。なお、上記扇形の角度範囲は仮入力したキーを中心として真上を0度とすると反時計方向に約30度〜時計方向に約120度範囲としてもよい。
【0042】
図8(B)におけるタッチ軌跡(矢印太線)について見ると、第1階層仮想キーボードの「は」の位置でタッチパネル13をタッチしスライドを開始すると、第2階層仮想キーボードの表示が行われ、指を「へ」の方向にスライドさせることにより、「へ」の下階層である文字「べぺ」を含む第3階層仮想キーボードの表示が行われる。
【0043】
更に、文字「べ」の方向に指をスライドさせることにより、文字「べ」の仮入力が行われ、指をタッチパネル13から離すことにより、文字「べ」の入力を確定する。
【0044】
<右手入力>
また、図9(A)に、スクリーン12を縦長状態で使用する携帯デバイス10を左手で持ち、右手(通常は人差し指)で操作する右手モードの第1階層,第2階層,第3階層それぞれの仮想キーボードを示し、図9(B)に、文字「べ」を入力する場合のタッチ軌跡(矢印太線)を示す。
【0045】
携帯デバイス10を左手で持った場合、右手人差し指の指先方向は左上方向となるから、第2階層仮想キーボードの扇形の角度範囲は仮入力したキーを中心として左上方向に表示する。例えば仮入力したキーを中心として真上を0度とすると約0度〜反時計方向に約90度範囲とすることにより、第2階層仮想キーボードの文字「ひふへほ」を右手人差し指が隠すことなく、第3階層仮想キーボードの文字「べぺ」を次々と表示することが可能である。なお、上記扇形の角度範囲は仮入力したキーを中心として真上を0度とすると時計方向に約30度〜反時計方向に約120度範囲としてもよい。
【0046】
図9(B)におけるタッチ軌跡(矢印太線)について見ると、第1階層仮想キーボードの「は」の位置でタッチパネル13をタッチしスライドを開始すると、第2階層仮想キーボードの表示が行われ、指を「へ」の方向にスライドさせることにより、「へ」の下階層である文字「べぺ」を含む第3階層仮想キーボードの表示が行われる。
【0047】
更に、文字「べ」の方向に指をスライドさせることにより、文字「べ」の仮入力が行われ、指をタッチパネル13から離すことにより、文字「べ」の入力を確定する。この場合は、図8(A),(B)とは左右逆方向とすることで、同様に容易な入力が可能となる。
【0048】
<両手入力>
更に、図10に、スクリーン12を横長状態で使用する携帯デバイス10を両手で持ち、両手の(通常は親指)で操作する両手モードの第1階層,第2階層それぞれの仮想キーボードを示す。
【0049】
この場合は、スクリーン12内における第1階層仮想キーボードの文字位置により、第2階層仮想キーボードの扇形の方向範囲を決める。すなわち、第1階層仮想キーボードの中央から左側の文字「あかさまやら」については、左手親指でタッチするため、扇形の角度範囲は仮入力したキーを中心として右上方向に表示する。例えば仮入力したキーを中心として真上を0度とすると約0度〜時計方向に約90度範囲とする。なお、上記扇形の角度範囲は仮入力したキーを中心として真上を0度とすると反時計方向に約30度〜時計方向に約120度範囲としてもよい。
【0050】
また、第1階層仮想キーボードの中央から左側の文字「たなはわ濁点(半濁点)」については、右手親指でタッチするため、扇形の角度範囲は仮入力したキーを中心として左上方向に表示する。例えば仮入力したキーを中心として真上を0度とすると約0度〜反時計方向に約90度範囲とする。なお、上記扇形の角度範囲は仮入力したキーを中心として真上を0度とすると時計方向に約30度〜反時計方向に約120度範囲としてもよい。
【0051】
これらの実施形態は、入力操作を容易にするためのものであり、この場合は、「携帯デバイスの持ち方の設定により扇形の第n階層仮想キーボードの方向範囲を決める」ことで、仮想キーボードの表示を隠すことなく、1回のタッチ操作内の最小の操作量で、文字入力を容易に行うことが可能となる。また、仮想キーボードの扇形の方向範囲により操作者にスライド方向を伝えてもいる。
【0052】
<仮想キーボード表示機能、タッチ判定機能>
次に、携帯デバイス10のスクリーン表面一体型のタッチパネル13から、どの仮想キーにタッチしているかを判定するタッチ判定機能31b、スライド方向と移動量を判定するスライド検出機能31cについて説明する。
【0053】
スクリーン表面一体型のタッチパネル13は、図11に示すような、スイッチを碁盤の目状に平面配列したマトリックススイッチを実装し、操作者の指がスイッチを押さえると、縦(Y)と横(X)の位置情報を検出する機能を持つ。
【0054】
マトリックススイッチは、例えばY軸位置を検出する水平に配置したY電極と、X軸位置を検出する垂直に配置したX電極を向かい合わせに対向させた2層構造とし、Y電極とX電極を僅かな隙間をあけておき、各電極に電圧をかけることで、押圧した位置でのみY電極とX電極の接続が生じるように構成する。
【0055】
図11における黒四角で示すスイッチを押圧すると、4番目のX電極から5番目のY電極に電流が流れ、(X,Y)=(4,5)という出力が発生する。タッチパネル13はスクリーン表面一体型であるため、X電極,Y電極は透明でなければならないが、光学的な変化を検出する方法、静電気的な電流の微弱な変化を計測する方法、透明電極とフィルム基板を画面上に貼り付ける方法、などの手法により、X電極,Y電極は光が透けるように非常に薄く製作することにより実現可能である。
【0056】
ここで、一般的にマトリックススイッチの解像度(1インチ辺りの電極数)は、X電極,Y電極の部品コストや製作コストなどの関係からスクリーン12の解像度(1インチ辺りの画素数)よりも荒いため、タッチした場所の位置情報をスクリーン座標に変換する必要がある。
【0057】
X,Yそれぞれのスクリーン解像度をXSP,YSPとし、マトリックススイッチの解像度をXtP、YtPとすると、マトリックススイッチから得られた出力(X、Y)をスクリーン12の座標(X,Y)に変換するため、(1),(2)式を使用する。
【0058】
X=X(XSP/XtP) …(1)
Y=Y(YSP/YtP) …(2)
どの仮想キーボードへタッチしているかをプログラムに通知する機構は、この変換式により得られたスクリーン座標(X,Y)が仮想キーボード表示範囲内であるか否かの判定により実現できる。
【0059】
更に、図12に示すように、得られたスクリーン座標(X,Y)を(X,Y)として保持しておき、マトリックススイッチからの出力を継続してスクリーン座標(X、Y)に変換したとき、タッチパネルを指でなぞるスライド操作を行った場合のスライド方向θと移動量dは(3),(4)式により計算できる。
【0060】
θ=arctan[(Y−Y)/(X−X)] …(3)
d=[(X−X+(Y−Y1/2 …(4)
更に、第3階層仮想キーボード以降の方向θnと移動量dnについては、第n−1仮想キーボードの選択が行われたときのスクリーン座標(Xn−1,Yn−1)を(X,Y)として保持することにより、同様に計算できることから、タッチパネルを指でなぞるスライド操作を行った場合に、その方向と移動量をプログラムに通知することが可能である。
【0061】
ここでマトリックススイッチの解像度XtP、YtPがスクリーン解像度XSP,YSPよりもかなり小さい場合、スライド方向θと移動量dは離散的に出力されることから、移動量dが十分でないときは、スライド方向θがスクリーン12における扇形の第n階層仮想キーボードの各キーの角度範囲内であるかどうか判定するのに十分なサンプリングができない場合がある。
【0062】
このような場合を考慮して、移動量dについて閾値を設けて閾値以上のdの値が得られなければ、例えば扇形のキーを非選択状態のままにしているが(ステップS14)、操作者がよりスライド操作を行って移動量dを増加させる操作を煽るような「もっとスライド!」等の画面表示を行うようにしてもよい。
【0063】
また、移動量dの値に応じて、例えば移動量dの値がまだ十分でないところでスライドを停止した場合には、スライド方向θがスクリーン12における扇形の第2階層仮想キーボードの各キーの角度範囲内であるかどうか判定できない。これを判定できるよう図13に示すように、第2階層仮想キーボードの扇形の角度範囲を約180度まで広げた状態で表示し、選択されるキーをできるだけ明らかにすることで操作量を低減させるような角度拡大機能31dを文字入力プログラム31に設ける。
【0064】
以上のように、第1階層仮想キーボードへのタッチ開始から、そのまま下の階層の仮想キーボードの表示内容を見つつ、指を所定の方向へスライドさせて、第n階層仮想キーボード内の入力対象文字上で指を離す操作を行うことにより、文字入力が可能となる。すなわち、たった1回のタッチ操作で文字入力を行えることで、誤入力操作を防止すると共に、入力操作数を低減することができる。
【0065】
<変形例>
図14は、図4の第1変形例のフローチャートを示す。
【0066】
図14において、ステップS11で文字入力プログラム31は、起動の際に、そのアプリケーションプログラム32から入力に必要とする文字の種類(仮名漢字、アルファベット等)を指定されることにより、使用する階層グループを決定する。
【0067】
こののち、ステップS41でタッチパネル13へのタッチを判定する。タッチ判定機能31bがタッチを判定すると、ステップS42で文字入力プログラム31は、タッチ位置を中心として、スクリーン12に使用する階層グループの代表文字を第1階層仮想キーボードとして表示し、ステップS13に進む。この後の処理は、図4及び図5と同一である。
【0068】
この変形例によれば、第1階層仮想キーボードをスクリーン12の任意の位置に表示することができる。
【0069】
図15は、図4の第2変形例のフローチャートを示す。
【0070】
図14において、ステップS51で文字入力プログラム31は、大文字又は小文字、濁点又は半濁点、全角又は半角などを選択するための文字属性変更キーをスクリーン12に表示する。
【0071】
ステップS52で文字属性変更キーをタッチすることにより、大文字又は小文字、濁点又は半濁点、全角又は半角のいずれかが選択されると、ステップS53に進む。
【0072】
ステップS53で文字入力プログラム31は、文字属性変更キーの選択に応じて、使用する階層グループを決定してステップS12に進む。この後の処理は、図4及び図5と同一である。
【0073】
この変形例によれば、階層グループの各文字を指定した属性に変更すると共に、各階層の仮想キーボードの表示配列を変えることができ、指定した文字属性の文字入力が可能となる。
(付記1)
文字を表示するスクリーンの表面にタッチパネルを設けた文字入力装置であって、
入力対象となる全ての文字を複数階層の階層グループに分けて、第1階層の複数の文字を第1階層仮想キーボードとして前記スクリーンに表示する第1階層仮想キーボード表示手段と、
前記スクリーンに表示された第1階層仮想キーボードのキー位置をタッチしたことを前記タッチパネルで検出したとき、タッチした前記第1階層仮想キーボードのキーを仮入力する第1の仮入力手段と、
タッチした指の指先方向に仮入力したキーを中心として広がる扇形の第2階層又はそれより下階層の仮想キーボードを表示する下階層仮想キーボード表示手段と、
タッチした指のスライド方向と移動量を検出するスライド検出手段と、
前記スライド検出手段で検出されたスライド方向にある第2階層又はそれより下階層の仮想キーボードのキーを仮入力する第2の仮入力手段と、
前記タッチが離れたことを前記タッチパネルで検出したとき、前記第1又は第2の仮入力手段で仮入力された文字を入力する入力手段と、
を有することを特徴とする文字入力装置。
(付記2)
付記1記載の文字入力装置において、
前記下階層仮想キーボード表示手段は、前記タッチパネルを左手の指でタッチする左手モードでは、前記第2階層又はそれより下階層の仮想キーボードの扇形を、仮入力したキーを中心として右上方向に表示する
ことを特徴とする文字入力装置。
(付記3)
付記1記載の文字入力装置において、
前記下階層仮想キーボード表示手段は、前記タッチパネルを右手の指でタッチする右手モードでは、前記第2階層又はそれより下階層の仮想キーボードの扇形を、仮入力したキーを中心として左上方向に表示する
ことを特徴とする文字入力装置。
(付記4)
文字を表示するスクリーンの表面にタッチパネルを設けた文字入力装置の文字入力方法であって、
入力対象となる全ての文字を複数階層の階層グループに分けて、第1階層の複数の文字を第1階層仮想キーボードとして前記スクリーンに表示し、
前記スクリーンに表示された第1階層仮想キーボードのキー位置をタッチしたことを前記タッチパネルで検出したとき、タッチした前記第1階層仮想キーボードのキーを仮入力し、
タッチした指の指先方向に仮入力したキーを中心として広がる扇形の第2階層又はそれより下階層の仮想キーボードを表示し、
タッチした指のスライド方向と移動量を検出し、
検出されたスライド方向にある第2階層又はそれより下階層の仮想キーボードのキーを仮入力し、
前記タッチが離れたことを前記タッチパネルで検出したとき、前記第1又は第2の仮入力手段で仮入力された文字を入力する
ことを特徴とする文字入力装置。
(付記5)
文字を表示するスクリーンの表面にタッチパネルを設けた文字入力装置を、
入力対象となる全ての文字を複数階層の階層グループに分けて、第1階層の複数の文字を第1階層仮想キーボードとして前記スクリーンに表示する第1階層仮想キーボード表示手段と、
前記スクリーンに表示された第1階層仮想キーボードのキー位置をタッチしたことを前記タッチパネルで検出したとき、タッチした前記第1階層仮想キーボードのキーをメモリに保持して仮入力する第1の仮入力手段と、
タッチした指の指先方向に仮入力したキーを中心として広がる扇形の第2階層又はそれより下階層の仮想キーボードを表示する下階層仮想キーボード表示手段と、
タッチした指のスライド方向と移動量を検出するスライド検出手段と、
前記スライド検出手段で検出されたスライド方向にある第2階層又はそれより下階層の仮想キーボードのキーを前記メモリに保持して仮入力する第2の仮入力手段と、
前記タッチが離れたことを前記タッチパネルで検出したとき、前記第1又は第2の仮入力手段で前記メモリに保持された文字を入力する入力手段と、
して機能させるための文字入力プログラム。
(付記6)
付記2記載の文字入力装置において、
前記下階層仮想キーボード表示手段は、前記タッチパネルを左手の指でタッチする左手モードでは、前記第2階層の仮想キーボードの扇形を、仮入力したキーを中心として真上を0度とすると約0度から時計方向に約90度の角度範囲で表示する
ことを特徴とする文字入力装置。
(付記7)
付記3記載の文字入力装置において、
前記下階層仮想キーボード表示手段は、前記タッチパネルを右手の指でタッチする右手モードでは、前記第2階層の仮想キーボードの扇形を、仮入力したキーを中心として真上を0度とすると約0度から反時計方向に約90度の角度範囲で表示する
ことを特徴とする文字入力装置。
(付記8)
請求項1記載の文字入力装置において、
前記下階層仮想キーボード表示手段は、前記タッチパネルを両手の指でタッチする両手モードでは、前記第1階層仮想キーボードの中央から左側のキーについて前記第2階層の仮想キーボードの扇形を仮入力したキーを中心として右上方向に表示し、前記第1階層仮想キーボードの中央から右側のキーについて前記第2階層の仮想キーボードの扇形を仮入力したキーを中心として左上方向に表示する
ことを特徴とする文字入力装置。
(付記9)
付記1乃至3のいずれか1項記載の文字入力装置において、
前記タッチパネルで検出したタッチ位置を、前記第1階層仮想キーボードの表示中心として前記第1階層仮想キーボード表示手段に通知する表示位置設定手段を
有することを特徴とする文字入力装置。
(付記10)
付記1乃至3のいずれか1項記載の文字入力装置において、
文字属性変更キーを前記スクリーンに表示する文字属性変更キー表示手段を有し、
前記スクリーンに表示された文字属性変更キーのタッチを前記タッチパネルで検出して、タッチした文字属性変更キーに応じて前記第1階層仮想キーボード及び下階層の仮想キーボードとして表示する文字の属性を変更することを特徴とする文字入力装置。
【符号の説明】
【0074】
10 携帯デバイス
11 本体部
12 スクリーン
13 タッチパネル
21 CPU
22 RAM
23 ROM
24 無線通信部
25 スクリーンインタフェース
26 タッチパネルインタフェース
31 文字入力プログラム
31a 仮想キーボード表示機能
31b タッチ判定機能
31c スライド検出機能
31d 角度拡大機能
32 アプリケーションプログラム
33 ローマ字仮名変換プログラム
34 仮名漢字変換プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルとスクリーンとCPUとを有する文字入力装置であって、
前記CPUは、
第1階層の複数の文字に対応する第1階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、
前記第1階層仮想キーボードのキーに対するタッチに応じて、タッチされた前記キーに対応する第2階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、
前記キーをタッチした指のスライドに応じて、前記第2階層仮想キーボードのキーのうち前記スライドの方向に表示されているキーに対応する第3階層仮想キーボードが存在する場合に、前記第3階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、
前記指が前記タッチパネルから離れた場合に、離れた位置に表示されているキーに対応する文字を入力文字とすることを特徴とする文字入力装置。
【請求項2】
前記第1階層仮想キーボードは、利用者にタッチされた位置を中心として表示されることを特徴とする請求項1に記載の文字入力装置。
【請求項3】
タッチパネルとスクリーンとCPUとを有する文字入力装置の文字入力プログラムであって、
第1階層の複数の文字に対応する第1階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、
S対応する第2階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、
前記キーをタッチした指のスライドに応じて、前記第2階層仮想キーボードのキーのうち前記スライドの方向に表示されているキーに対応する第3階層仮想キーボードが存在する場合に、前記第3階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、
前記指が前記タッチパネルから離れた場合に、離れた位置に表示されているキーに対応する文字を入力文字とする処理を前記CPUに実行させることを特徴とする文字入力プログラム。
【請求項4】
タッチパネルとスクリーンとCPUとを有する文字入力装置で実行される文字入力方法であって、
第1階層の複数の文字に対応する第1階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、
前記第1階層仮想キーボードのキーに対するタッチに応じて、タッチされた前記キーに対応する第2階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、
前記キーをタッチした指のスライドに応じて、前記第2階層仮想キーボードのキーのうち前記スライドの方向に表示されているキーに対応する第3階層仮想キーボードが存在する場合に、前記第3階層仮想キーボードを前記スクリーンに表示し、
前記指が前記タッチパネルから離れた場合に、離れた位置に表示されているキーに対応する文字を入力文字とする
ことを特徴とする文字入力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−84190(P2012−84190A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21351(P2012−21351)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【分割の表示】特願2008−193850(P2008−193850)の分割
【原出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】