説明

文字板組立体および時計

【課題】装飾部材が文字板の表側の面から突出するのを抑制することができる文字板組立体および時計を提供すること。
【解決手段】文字板組立体4は、時針101および分針102を回転可能に支持するムーブメント9とともに、腕時計1内に収納されるものである。この文字板組立体4は、板状の文字板6と、文字板6の表側から視認される装飾部材7と、装飾部材7を文字板6に対して支持する支持部材8とを有する少なくとも1つの装飾用構造体70とを備えている。また、文字板6は、文字板6の厚さ方向に貫通する貫通孔で構成され、装飾用構造体70を固定する固定部64を有している。そして、装飾用構造体70は、装飾部材7と支持部材8とを組み立てた状態で、文字板6の裏側から固定部64に挿入され、固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字板組立体および時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の腕時計には、文字板と、文字板の表側の面に複数個配置され、時刻を表す1〜12の数字にそれぞれ相当する板片状の表示部材とを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の時計では、表示部材の裏側の面には、棒状の脚部が一体的に突出形成されている。一方、文字板には、各表示部材がそれぞれ配置される位置に、脚部が挿入される取付孔が形成されている。そして、各表示部材は、それぞれ、脚部が文字板の表側から取付孔に挿入され、その挿入状態の脚部を文字板の裏側からかしめることにより、固定されている。このような固定方法では、各表示部材がその厚さ分だけ文字板の表側の面に突出した状態となる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の時計では、表示部材の厚さ、すなわち、表示部材の文字板の表側の面からの突出量によっては、当該表示部材が時針や分針と干渉するおそれがあり、それを防止するのに、時針や分針を極端に短くする必要があった。そして、時針や分針を極端に短くした場合、その時計は、見栄えが良くないものとなってしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−275360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、装飾部材が文字板の表側の面から突出するのを抑制することができる文字板組立体、および、かかる文字板組立体を備える時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の文字板組立体は、時針および分針を回転可能に支持するムーブメントとともに、時計のケース内に収納される文字板組立体であって、
板状の文字板と、
前記文字板の表側から視認される装飾部材と、該装飾部材を前記文字板に対して支持する支持部材とを有する少なくとも1つの装飾用構造体とを備え、
前記文字板は、該文字板の厚さ方向に貫通する貫通孔で構成され、前記装飾用構造体を固定する固定部を有し、
前記装飾用構造体は、前記装飾部材と前記支持部材とを組み立てた状態で、前記文字板の裏側から前記固定部に挿入され、固定されることを特徴とする。
これにより、裏側から装飾用構造体を挿入することができ、表側から装飾用構造体を挿入する場合に比べ、文字板の全厚さ分、装飾用構造体の全厚さ(高さ)のうちの、装飾部材が文字板の表側の面から突出するのをできる限り抑制することができる。
【0007】
本発明の文字板組立体では、前記装飾用構造体は、一部分が前記文字板の表側の面から突出しており、前記一部分よりも表側を前記時針および前記分針のうちの少なくとも前記分針が通過することが好ましい。
これにより、少なくとも分針が回転する際に、当該分針は、装飾用構造体の装飾部材と干渉するのが防止され、よって、装飾部材よりも表側を通過することができる。また、分針を短くする必要がなくなり、よって、時計の見栄えが悪くなるのを防止することができる。
【0008】
本発明の文字板組立体では、前記支持部材は、ブロック体で構成されており、側面に突出し、前記固定部の縁部に係合して、該固定部に対する挿入深さを規制する突出部が形成されていることが好ましい。
これにより、支持部材の固定部に対する挿入深さが確実に規制され、よって、支持部材の挿入が過剰であったり、支持部材の挿入が不十分であったりするのを確実に防止することができる、すなわち、過不足なく支持部材を固定部に挿入することができる。
【0009】
本発明の文字板組立体では、前記支持部材は、ブロック体で構成されており、表側の面に前記装飾部材が収納される凹部が形成されたものであることが好ましい。
これにより、装飾部材を確実に固定することができる。また、装飾部材の特に露出させたい部分、すなわち、装飾部材の凹部に収納されている部分以外の部分を確実に露出させることができ、当該部分を確実に表側から見せることができる。
【0010】
本発明の文字板組立体では、前記支持部材の表側の面には、前記凹部と異なる位置に複数の爪部が突出形成されており、
前記各爪部は、それぞれ、前記凹部に前記装飾部材が収納された状態で、折り曲げられて前記装飾部材に係合することが好ましい。
これにより、折り曲げられた各爪部は、それぞれ、塑性変形して、その折り曲げ状態が維持される。そして、折り曲げられた各爪部は、それぞれ、凹部に収納された装飾部材のうちの露出した部分に係合することができる。このような係合により、装飾部材が支持部材に確実に支持、固定されることとなり、よって、支持部材から不本意に離脱するのを確実に防止することができる。
【0011】
本発明の文字板組立体では、前記装飾部材は、宝石であることが好ましい。
これにより、装飾部材を宝石のうちの例えばダイヤモンドで構成することができる。そして、ダイヤモンドで構成された装飾部材を有する時計は、審美性が向上するとともに、高級品となる(時計が腕時計の場合、いわゆる「高級腕時計」となる)。
本発明の文字板組立体では、前記装飾用構造体は、前記文字板上で、時刻を表す1〜12の数字のうちの少なくとも1つの数字に対応するものであることが好ましい。
これにより、固定部に固定された装飾用構造体を時針、分針がそれぞれ指し示すことができる。そして、時針、分針がそれぞれ指し示す位置によって、時刻を確認することができる。
【0012】
本発明の時計は、本発明の文字板組立体と、
時針および分針を回転可能に支持するムーブメントと、
前記文字板組立体と前記ムーブメントとが収納されるケースとを備えることを特徴とする。
これにより、裏側から装飾用構造体を挿入することができ、表側から装飾用構造体を挿入する場合に比べ、文字板の全厚さ分、装飾用構造体の全厚さ(高さ)のうちの、装飾部材が文字板の表側の面から突出するのをできる限り抑制することができる時計を得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の文字板組立体を備える本発明の時計を腕時計に適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1中のA−A線断面図である。
【図3】図1中の文字板組立体を矢印B方向から見た図(平面図)である。
【図4】図1に示す時計における装飾用構造体の斜視図である。
【図5】本発明の文字板組立体の組立工程を順に示す断面図である。
【図6】本発明の文字板組立体の組立工程を順に示す断面図である。
【図7】本発明の文字板組立体の組立工程を順に示す断面図である。
【図8】本発明の文字板組立体の組立工程を順に示す断面図である。
【図9】本発明の文字板組立体の組立工程を順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の文字板組立体および時計を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の文字板組立体を備える本発明の時計を腕時計に適用した場合の実施形態を示す斜視図、図2は、図1中のA−A線断面図、図3は、図1中の文字板組立体を矢印B方向から見た図(平面図)、図4は、図1に示す時計における装飾用構造体の斜視図、図5〜図9は、それぞれ、本発明の文字板組立体の組立工程を順に示す断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1、図2および図4〜図9中の上側を「上」、「上方」または「表」、下側を「下」、「下方」または「裏」と言う。
【0015】
図1、図2に示す腕時計(以下、単に「時計」という)1は、胴(ケース)2と、裏蓋3と、カバーガラス(風防)5と、バンド20とを備えている。また、時計1の内部空間50(胴2と裏蓋3とカバーガラス5とで囲まれた空間)には、カバーガラス5が設けられた側から順に、文字板組立体4と、ムーブメント9とが収納されている。また、ムーブメント9には、指針(針)10(時針101、分針102、秒針103)が回転可能に支持されており、ムーブメント9とともに時計1の内部空間50内に収納されている。以下、各部の構成について説明する。
【0016】
図2に示すように、胴2は、円環状をなす部材で構成されている。胴2の内周部21には、その中心側に向かった突出したリブ22が形成されている。リブ22は、内周部21の周方向に沿ってリング状に形成されている。そして、このリブ22上にカバーガラス5が気密的、液密的に装着、固定される。この固定方法としては、特に限定されず、例えば、接着(接着剤や溶媒による接着)による方法が挙げられる。
【0017】
カバーガラス5は、円板状をなすカバーガラス本体51と、カバーガラス本体51の裏側の面511に一体的に突出形成された脚部52とで構成されている。なお、カバーガラス5は、透明性を有する部材で構成されている。ここで、「透明性を有する部材」とは、可視光の透過度が50%以上程度の透明性を有するものをいう。また、「透明」には、無色透明の他、有色(着色)透明も含まれる。カバーガラス5の構成材料としては、特に限定されず、例えば、無機ガラス等が挙げられる。この無機ガラスとしては、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、ハードレックス(強化無機ガラス)、クリアレックス(無反射処理)、スピネルガラス、サファイアガラス等が挙げられる。無機ガラスは、材料強度(強度)が高いため、例えば加圧や衝撃による変形、割れを少なくすることができ、傷が付きにくく、鏡面性も良くすることができる。これにより、カバーガラス5自体の強度を高く、視認性を良くすることができる。また、無機ガラスは、接着剤による接着を容易に行うことができ、よって、高接着強度が得られる接着剤の種類や接着方法の選択の幅が広い。
【0018】
カバーガラス本体51は、その表側の面512が凸状に湾曲した湾曲凸面となっている。これにより、例えば、時計1が全体として、審美性が優れたものとなり、デザイン性も高まる。
また、カバーガラス本体51の表側の縁部には、面取りを施した面取り部513が形成されている。これにより、例えばカバーガラス本体51の表側の縁部に皮膚が当たっても、当該皮膚が傷を受けるのを確実に防止することができ、カバーガラス5は安全性が高いものとなる。
【0019】
脚部52は、胴2のリブ22に沿ったリング状をなし、当該胴2に固定される部分である。なお、脚部52の内径および厚さ(高さ)は、カバーガラス5の指針10との干渉が防止される程度であれば、特に限定されない。
胴2の外周部23には、その中心軸を介して両側に、バンド20が連結される連結部としてのラグ24が設けられている(図1参照)。バンド20は、時計1を腕に装着する際に用いられるものである。
【0020】
また、胴2の外周部23の両ラグ24同士の間の部分には、巻真パイプ11が嵌入・固定されている。この巻真パイプ11内には、りゅうず12の軸部121が回転可能に挿入されている。さらに、りゅうず12の軸部121は、シャフト13を介して、ムーブメント9と連結されている。そして、りゅうず12を回転操作することにより、その回転力がシャフト13を介してムーブメント9に伝達されて、時針101および分針102の位置を調整することができる。
【0021】
りゅうず12の軸部121の途中の外周には溝122が形成され、この溝122内にはリング状のゴムパッキン(りゅうずパッキン)16が嵌合されている。ゴムパッキン16は、巻真パイプ11の内周面111に密着し、当該内周面111と溝122の内面との間で圧縮される。この構成により、りゅうず12と巻真パイプ11との間が液密に封止され防水機能が得られる。なお、りゅうず12を回転操作したとき、ゴムパッキン16は、軸部121とともに回転し、巻真パイプ11の内周面に密着しながらその周方向に摺動する。
【0022】
胴2の裏側には、裏蓋3が例えば螺合や嵌合により装着される。裏蓋3は、円板状をなす部材で構成されている。裏蓋3の上面側の部分(縁部)には、その周方向に沿って凹部31が形成されている。凹部31には、弾性材料で構成されたパッキン30が設置されている。そして、裏蓋3が胴2に装着されると、パッキン30が圧縮され、裏蓋3と胴2との間の気密性、液密性を維持することができる。
【0023】
胴2、裏蓋3、針10の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼や、チタンまたはチタン合金等のような各種金属材料(合金を含む)、各種樹脂材料(プラスチック材料)等が挙げられる。中でも、美的外観、強度などに優れることから、通常、金属材料が好適に用いられる。胴2、裏蓋3、針10は、互いに、同一の材料で構成されたものであってもよいし、異なる材料で構成されたものであってもよい。
【0024】
また、裏蓋3には、固定部材40を介して、ムーブメント9が固定されている。
ムーブメント9は、時針101、分針102および秒針103を回転支持する軸91を有している。このムーブメント9は、ボタン電池(図示せず)から供給された電力によって、時針101、分針102および秒針103をそれぞれ軸91を介して駆動する(回転させる)機構を内蔵している。この機構としては、特に限定されず、例えば、時間基準源として水晶振動子、水晶振動子の発振周波数をもとに時計を駆動する駆動パルスを発生する半導体集積回路、この駆動パルスを受けて輪列機構を1秒毎に指針を駆動するステップモーターや、ステップモーターの動きを各指針に伝達する輪列機構等を備えたものを用いることができる。
【0025】
図2に示すように、ムーブメント9上には、文字板組立体4が載置されている。図3に示すように、文字板組立体4は、文字板6と、11個の装飾用構造体70とを有している。
図2、図3に示すように、文字板6は、板状(例えば円板状)をなす部材で構成された文字板本体61と、文字板本体61上に配置された表示部(時刻目盛り)63とで構成されている。
【0026】
文字板本体61は、ムーブメント9と胴2のリブ22との間で挟持されている。これにより、文字板6(文字板組立体4)が確実に固定され、時計の使用中にズレてしまうのが確実に防止される。
また、文字板本体61の中心部には、ムーブメント9の軸91が挿通する挿通孔62が形成されている。
【0027】
文字板本体61の表側の面611には、時針101、分針102および秒針103が指し示して時刻を表示する、短冊状をなす表示部63が固定されている。この固定方法としては、特に限定されず、例えば、接着(接着剤や溶媒による接着)による方法、融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)による方法、嵌合による方法、かしめによる方法等が挙げられる。
表示部63は、時刻を表す1〜12の数字のうちの「12」に対応する位置に配置されている。そして、時針101、分針102および秒針103がそれぞれ表示部63を指す位置によって、時刻が確認される。
【0028】
また、文字板本体61(文字板6)の、時刻を表す1〜12の数字のうちの「1」〜「11」に対応する位置には、それぞれ、装飾用構造体70を固定する固定部64が設けられている。各固定部64は、それぞれ、文字板本体61をその厚さ方向に貫通する貫通孔で構成されている。そして、この貫通孔で構成された固定部64に装飾用構造体70が挿入されることにより、当該装飾用構造体70が嵌合して、確実に固定される(図8、図9参照)。固定された、いずれかの装飾用構造体70を時針101、分針102および秒針103がそれぞれ指し示す位置によって、時刻を確認することができる。
文字板本体61や表示部63の構成材料としては、特に限定されず、例えば、胴2の構成材料と同様に、ステンレス鋼や、チタンまたはチタン合金等のような各種金属材料(合金を含む)、各種樹脂材料(プラスチック材料)等を用いることができる。中でも、美的外観、強度などに優れることから、金属材料が好ましい。
【0029】
各装飾用構造体70は、それぞれ、同じ構成であるため、以下、1つの装飾用構造体70について代表的に説明する。
図2〜図9に示すように、装飾用構造体70は、装飾部材7と支持部材8とで構成されている。
装飾部材7は、文字板6の表側からカバーガラス5を介して視認される宝石である。宝石としては、特に限定されず、例えば、ダイヤモンド、サファイア、ルビー等が挙げられる。装飾部材7がこのような宝石で構成されていることにより、時計1の審美性が向上するとともに、当該時計1が高級品(いわゆる「高級腕時計」)となる。
【0030】
図5〜図9に示すように、この装飾部材7は、表側の多面形成部71と、裏側の円錐状部72(または多角錐状部)とに分けることができる。
多面形成部71には、多数の平面が形成されており、各平面は、互いに異なる方向を向いている。図4に示す構成では、多面形成部71は、上方を向き、八角形状をなす平面711と、平面711の周囲に当該平面711の法線に対し互いに異なる方向に傾斜して形成された、扇形状をなす8枚の平面712、713、714、715、716、717、718、719とを有している。このような多面形成部71により、光が多方向に反射され(拡散され)、時計1の審美性がさらに向上する。
円錐状部72は、その中心軸が平面711の法線と平行となるよう形成されている。
このような装飾部材7は、支持部材8を介して、文字板6の文字板本体61に支持されている。
【0031】
支持部材8は、金属製の偏平なブロック体で構成されている。支持部材8を構成する金属材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼や、チタンまたはチタン合金等のような各種金属材料(合金を含む)等が挙げられる。
支持部材8の表側の面81には、その中央部に凹部82が形成されている。凹部82は、装飾部材7の円錐状部72の外形形状に対応した形状をなしている、すなわち、すり鉢状をなしている。この凹部82に、装飾部材7の円錐状部72が収納される。また、装飾部材7の凹部82に収納されていない部分、すなわち、多面形成部71は、露出することとなり、カバーガラス5を介して視認される。
また、凹部82の底部には、貫通孔821が形成されている。この貫通孔821内に円錐状部72の頂点721が位置している。
【0032】
図4に示すように、支持部材8の表側の面81には、4つの爪部841、842、843、844が突出形成されている。爪部841〜844は、凹部82と異なる位置、すなわち、凹部82の周囲に沿って等間隔に配置されている。また、爪部841〜844は、それぞれ、太さが下方に向かって徐々に太くなっている。そして、爪部841〜844は、その表側の面81との境界部となる根元部845で折り曲げることができる(図6、図7参照)。折り曲げられた根元部845は、塑性変形して、その折り曲げ状態が維持される。
【0033】
このように根元部845で折り曲げられた爪部841〜844は、それぞれ、凹部82に収納された装飾部材7に係合することができる(図7〜図9参照)。本実施形態では、爪部841は、装飾部材7の多面形成部71の平面712に係合し、爪部842は、多面形成部71の平面714に係合し、爪部843は、多面形成部71の平面716に係合し、爪部844は、多面形成部71の平面718に係合する。このような係合により、装飾部材7が支持部材8に確実に支持、固定され、よって、支持部材8から不本意に離脱するのを確実に防止することができる。
【0034】
なお、爪部841〜844は、それぞれ、折り曲げられる以前の状態では、一部が装飾部材7の多面形成部71の平面711よりも上方に突出しているが、折り曲げられた状態では、平面711よりも下方に位置する(図6〜図9参照)。
また、支持部材8の側面86(角部)の下部には、係合部(突出部)851、852、853、854が突出形成されている。係合部851は、爪部841の外側に配置され、係合部852は、爪部842の外側に配置され、係合部853は、爪部843の外側に配置され、係合部854は、爪部844の外側に配置されている。
【0035】
一方、図8、図9に示すように、文字板6の各固定部64の縁部には、それぞれ、その内径が段階的に変化した段差部641が形成されている。
装飾用構造体70(支持部材8)が文字板6の裏側から固定部64に挿入されると、係合部851〜854が段差部641に係合する。これにより、装飾用構造体70の固定部64に対する挿入深さが規制され、よって、装飾用構造体70の挿入が過剰であったり、装飾用構造体70の挿入が不十分であったりするのを確実に防止することができる。
また、図2、図9に示すように、文字板6の固定部64に挿入された装飾用構造体70は、その一部分(上部)が文字板6の表側の面611から突出することとなる。以下、この突出した一部分を「突出部701」と言う。
【0036】
前述したように、文字板組立体4では、装飾用構造体70は、装飾部材7を支持部材8に収納して、係合し、これら部材同士を組み立てた状態で、文字板6の裏側から固定部64に挿入され、固定される。このように裏側から挿入することにより、表側から挿入する場合に比べ、文字板本体61の全厚さ分、装飾用構造体70の全厚さ(高さ)のうちの、突出部701の突出量(突出高さ)、すなわち、装飾部材7が文字板6の表側の面611から突出するのをできる限り抑制することができる。これにより、図2に示すように、分針102および秒針103は、回転する際に、突出部701と干渉するのが防止され、よって、突出部701よりも表側(上側)を通過することができる。また、分針102および秒針103を短くする必要がなくなり、よって、時計1の見栄えが悪くなるのを防止することができる。
【0037】
次に、文字板組立体4の組立方法について、図5〜図9を参照しつつ説明する。
[1] 図5に示すように、各装飾用構造体70をそれぞれ構成する装飾部材7と支持部材8とを用意する。
[2] 次に、図6に示すように、装飾部材7を支持部材8の表側から凹部82に挿入し、収納する。このとき、装飾部材7は、多面形成部71の平面712が支持部材8の爪部841に臨んでおり、多面形成部71の平面714が支持部材8の爪部842に臨んでおり、多面形成部71の平面716が支持部材8の爪部843に臨んでおり、多面形成部71の平面718が支持部材8の爪部844に臨んでいる。
【0038】
[3] 次に、図7に示すように、爪部841〜844をそれぞれ根元部845で折り曲げる。これにより、爪部841が装飾部材7の平面712に係合し、爪部842が装飾部材7の平面714に係合し、爪部843が装飾部材7の平面716に係合し、爪部844が装飾部材7の平面718に係合する。よって、支持部材8に装飾部材7が支持、固定された装飾用構造体70を得る。このような装飾用構造体70は、11個組み立てられている。
【0039】
[4] 次に、図8に示すように、組み立てられた各装飾用構造体70を、それぞれ、文字板6の固定部64に裏側から挿入する。図9に示すように、その挿入の程度は、支持部材8の係合部851〜854が固定部64の段差部641に当接するまでである。これにより、各装飾用構造体70の突出部701の突出量が全て同じ(一定)の文字板組立体4を得る。
【0040】
以上、本発明の文字板組立体および時計を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、文字板組立体および時計を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、文字板組立体での装飾用構造体の配置数は、前記実施形態では11個であったが、これに限定されず、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、または、12個であってもよい。
また、時計は、前記実施形態では時針、分針および秒針のうちの分針および秒針が装飾用構造体の突出部の表側を通過するよう構成されているが、これに限定されず、時針、分針および秒針の全指針が装飾用構造体の突出部の表側を通過するよう構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1……腕時計(時計) 2……胴(ケース) 21……内周部 22……リブ 23……外周部 24……ラグ 3……裏蓋 31……凹部 4……文字板組立体 5……カバーガラス(風防) 51……カバーガラス本体 511……裏側の面 512……表側の面 513……面取り部 52……脚部 6……文字板 61……文字板本体 611……表側の面 62……挿通孔 63……表示部(時刻目盛り) 64……固定部 641……段差部 7……装飾部材 71……多面形成部 711、712、713、714、715、716、717、718、719……平面 72……円錐状部 721……頂点 8……支持部材 81……表側の面 82……凹部 821……貫通孔 83……裏側の面 841、842、843、844……爪部 845……根元部 851、852、853、854……係合部(突出部) 86……側面 9……ムーブメント 91……軸 10……指針(針) 101……時針 102……分針 103……秒針 11……巻真パイプ 111……内周面 12……りゅうず 121……軸部 122……溝 13……シャフト 16……ゴムパッキン(りゅうずパッキン) 20……バンド 30……パッキン 40……固定部材 50……内部空間 70……装飾用構造体 701……突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時針および分針を回転可能に支持するムーブメントとともに、時計のケース内に収納される文字板組立体であって、
板状の文字板と、
前記文字板の表側から視認される装飾部材と、該装飾部材を前記文字板に対して支持する支持部材とを有する少なくとも1つの装飾用構造体とを備え、
前記文字板は、該文字板の厚さ方向に貫通する貫通孔で構成され、前記装飾用構造体を固定する固定部を有し、
前記装飾用構造体は、前記装飾部材と前記支持部材とを組み立てた状態で、前記文字板の裏側から前記固定部に挿入され、固定されることを特徴とする文字板組立体。
【請求項2】
前記装飾用構造体は、一部分が前記文字板の表側の面から突出しており、前記一部分よりも表側を前記時針および前記分針のうちの少なくとも前記分針が通過する請求項1に記載の文字板組立体。
【請求項3】
前記支持部材は、ブロック体で構成されており、側面に突出し、前記固定部の縁部に係合して、該固定部に対する挿入深さを規制する突出部が形成されている請求項1または2に記載の文字板組立体。
【請求項4】
前記支持部材は、ブロック体で構成されており、表側の面に前記装飾部材が収納される凹部が形成されたものである請求項1ないし3のいずれかに記載の文字板組立体。
【請求項5】
前記支持部材の表側の面には、前記凹部と異なる位置に複数の爪部が突出形成されており、
前記各爪部は、それぞれ、前記凹部に前記装飾部材が収納された状態で、折り曲げられて前記装飾部材に係合する請求項4に記載の文字板組立体。
【請求項6】
前記装飾部材は、宝石である請求項1ないし5のいずれかに記載の文字板組立体。
【請求項7】
前記装飾用構造体は、前記文字板上で、時刻を表す1〜12の数字のうちの少なくとも1つの数字に対応するものである請求項1ないし6のいずれかに記載の文字板組立体。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の文字板組立体と、
時針および分針を回転可能に支持するムーブメントと、
前記文字板組立体と前記ムーブメントとが収納されるケースとを備えることを特徴とする時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−68430(P2013−68430A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205222(P2011−205222)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)