説明

文書処理装置およびプログラム

【課題】助詞「は」を含む文を検出し、当該文の修正を促すことが可能な文書処理装置およびプログラムを提供することにある。
【解決手段】入力手段は、自立語および助詞「は」を含む第1の文節と第1の文節を係り受け元とする第2の文節とを含む複数の文節から構成される文を入力する。構文解析手段は、入力された文を構文解析し、当該文を構成する文節間の係り受け関係を含む構文解析結果を取得する。抽出手段は、入力された文を構成する第1の文節と第2の文節との間の係り受け関係を、構文解析結果から抽出する。メッセージ生成手段は、抽出された係り受け関係に応じた入力された文に対する指摘事項を含むメッセージを、当該係り受け関係に対応づけて格納手段に格納されているメッセージ生成情報に基づいて生成する。出力手段は、生成されたメッセージを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、文書の作成を支援する文書処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、文書を構成する文は、例えば人が誤って内容(意味)を解釈することや当該機械翻訳での誤訳等を避けるために、分かりやすい文であることが望まれる。
【0003】
ところで、日本語において用いられる助詞の中には、当該助詞が付加された語(自立語)に意味を添えて強調する係助詞と呼ばれるものがあり、これは日本語に特有な文法現象である。
【0004】
係助詞と呼ばれる代表的な助詞として「は」がある。この助詞「は」は、文の主語を提示する際によく用いられるが、その一方で目的語を強調する際にも用いられる場合がある。したがって、文中に用いられている助詞「は」が付加された語の役割が曖昧になり、当該文の意味が分かりにくくなる場合がある。
【0005】
ここで、例えば「明細データは運用担当者が管理画面を操作することで出力する。」という文(以下、例文1と表記)の場合を想定する。この場合、例文1において助詞「は」が付加された語(つまり、助詞「は」の直前の語)「明細データ」が当該例文1の述語である「出力する」の目的語(目的格)であるのかまたは主語(主格)であるのかが、例文1の読み手にとって分かりにくい。このため、例文1の内容を誤解してしまう可能性がある。
【0006】
また、例えば「薬品は中濃度に濃縮し、それから、装置の連続運動を可能にする。」という文(以下、例文2と表記)の場合、当該例文2において助詞「は」が付加された語「薬品」は、当該例文2における「濃縮し」の目的語である。しかしながら、例文2を機械翻訳した場合、「薬品」が「濃縮し」や「可能にする」の主語であると誤って認識し、結果として原文とは意味が異なる翻訳をしてしまう可能がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−081542号公報
【特許文献2】特開2009−146238号公報
【特許文献3】特開平08−249331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したような誤解や誤訳を回避するためには、文中において用いられている助詞「は」を効率よく検出し、当該文を分かりやすい文または機械翻訳に適した文(から構成される文書)とするような仕組みが必要である。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、助詞「は」を含む文を検出し、当該文の修正を促すことが可能な文書処理装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係る文書処理装置は、格納手段と、入力手段と、構文解析手段と、抽出手段と、メッセージ生成手段と、出力手段とを具備する。
【0011】
格納手段は、自立語および助詞「は」を含む第1の文節と前記第1の文節を係り受け元とする自立語を含む第2の文節との間の係り受け関係に対応づけて、当該係り受け関係に応じた当該第1の文節および当該第2の文節から構成される文に対する指摘事項を含むメッセージを生成するために用いられるメッセージ生成情報を予め格納する。
【0012】
入力手段は、前記第1の文節と前記第2の文節とを含む複数の文節から構成される文を入力する。
【0013】
構文解析手段は、前記入力された文を構文解析し、前記入力された文を構成する文節間の係り受け関係を含む構文解析結果を取得する。
【0014】
抽出手段は、前記入力された文を構成する前記第1の文節と前記第2の文節との間の係り受け関係を、前記取得された構文解析結果から抽出する。
【0015】
メッセージ生成手段は、前記抽出された係り受け関係に応じた前記入力された文に対する指摘事項を含むメッセージを、当該係り受け関係に対応づけて前記格納手段に格納されているメッセージ生成情報に基づいて生成する。
【0016】
出力手段は、前記生成されたメッセージを出力する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る文書処理装置のハードウェア構成を示すブロック図。
【図2】図1に示す文書処理装置30の主として機能構成を示すブロック図。
【図3】図2に示す助詞検査規則格納部22のデータ構造の一例を示す図。
【図4】本実施形態に係る文書処理装置30の処理手順を示すフローチャート。
【図5】例文1の構文解析結果の一例を示す図。
【図6】助詞検査処理の処理手順を示すフローチャート。
【図7】例文1の場合においてユーザに対して提示される指摘メッセージの一例を示す図。
【図8】例文2の構文解析結果の一例を示す図。
【図9】例文2の場合においてユーザに対して提示される指摘メッセージの一例を示す図。
【図10】例文2の場合においてユーザに対して提示される修正候補を選択可能な指摘メッセージの一例を示す図。
【図11】例文3の構文解析結果の一例を示す図。
【図12】例文4の構文解析結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る文書処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、コンピュータ10は、例えばハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)のような外部記憶装置20と接続されている。この外部記憶装置20は、コンピュータ10によって実行されるプログラム21を格納する。コンピュータ10および外部記憶装置20は、文書処理装置30を構成する。
【0020】
この文書処理装置30は、文中において用いられている分かりにくい助詞(係助詞)「は」を検出し、当該文の修正を促すようなメッセージを出力する機能を有する。
【0021】
図2は、図1に示す文書処理装置30の主として機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、文書処理装置30は、入力部31、構文解析部32、助詞検査部33および出力部34を含む。本実施形態において、これらの各部31〜34は、図1に示すコンピュータ10が外部記憶装置20に格納されているプログラム21を実行することにより実現されるものとする。このプログラム21は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に予め格納して頒布可能である。また、このプログラム21が、例えばネットワークを介してコンピュータ10にダウンロードされても構わない。
【0022】
また、文書処理装置30は、助詞検査規則格納部22を含む。本実施形態において、助詞検査規則格納部22は、例えば外部記憶装置20に格納される。
【0023】
入力部31は、例えばユーザによって指定された文を入力する(入力手段)。ユーザは、例えばキーボードまたはマウス等に対する操作を行うことによって文を指定することができる。
【0024】
なお、入力部31によって入力される文は、少なくとも自立語(名詞および動詞等)を含む複数の文節から構成される。文を構成する文節には、自立語以外に付属語(助詞等)が含まれていてもよい。
【0025】
構文解析部32は、入力部31によって入力された文を構文解析し、当該文を構成する文節間の係り受け関係を含む構文解析結果を取得する(構文解析手段)。なお、構文解析部32によって取得された構文解析結果に含まれる文節間の係り受け関係には、例えば目的格および主格等が含まれる。
【0026】
助詞検査規則格納部22には、助詞「は」を含む文節(第1の文節)と当該文節を係り受け元とする文節、つまり、助詞「は」を含む文節の係り受け先となる文節(第2の文節)との間の係り受け関係に対応づけて、当該係り受け関係に応じた当該文節から構成される文に対する指摘事項を含むメッセージを生成するために用いられるメッセージ生成情報(メッセージ生成方法)が格納されている。また、助詞検査規則格納部22には、係り受け関係に対応づけて、文を構成する文節に含まれる助詞「は」の分かりやすさを診断するための処理方針および述語検査条件(後述する)が格納されている(格納手段)。
【0027】
助詞検査部33は、構文解析部32によって取得された構文解析結果に基づいて、助詞「は」を含む文節を表すノード、当該ノードの親ノードおよび当該ノード間のアーク(係り受け関係)を抽出する(抽出手段)。そして、助詞検査規則格納部22に格納されている助詞検査規則に基づいて、入力部31によって入力された文(を構成する文節)に含まれている助詞「は」の分かりやすさを診断する。助詞検査部33は、入力部31によって入力された文に含まれている助詞「は」が分かりにくいと診断された場合、当該文に対する指摘事項を含むメッセージを生成する(メッセージ生成手段)。
【0028】
出力部34は、助詞検査部33によって生成されたメッセージをユーザに対して出力する(出力手段)。
【0029】
図3は、図2に示す助詞検査規則格納部22のデータ構造の一例を示す。図3に示す例では、助詞検査規則格納部22には、係り受け関係に対応づけて、処理方針、述語検査条件およびメッセージ生成情報が格納されている。
【0030】
係り受け関係は、文中における助詞「は」を含む文節と当該文節を係り受け元とする文節との間の係り受け関係を示す。なお、係り受け関係には、例えば助詞「は」を含む文節に含まれる自立語が当該文節を係り受け元とする文節に含まれる自立語の目的語であることを示す目的格、助詞「は」を含む文節に含まれる自立語が当該文節を係り受け元とする文節に含まれる自立語の主語であることを示す主格およびその他(例えば、連体修飾等)が含まれる。
【0031】
処理方針は、対応づけられている係り受け関係の場合における処理方針を示す。述語検査条件は、対応づけられている係り受け関係が主格である場合に、文に対する指摘事項を含むメッセージを生成するか否か(つまり、助詞「は」が分かりやすいか否か)を判定するための条件である。つまり、本実施形態においては、助詞検査規則格納部22に格納されている処理方針および述語検査条件によって、文中における助詞「は」の分かりやすさ(つまり、助詞「は」の用法に問題があるか)が診断される。
【0032】
メッセージ生成情報は、上記したように処理方針および述語検査条件によって文中における助詞「は」が分かりにくいと診断された場合に、当該文(を構成する文節に含まれる助詞「は」)に対する指摘事項を含むメッセージを生成するために用いられる。
【0033】
なお、図3に示す助詞検査規則格納部22に格納されている項番は、係り受け関係、処理方針、述語検査条件およびメッセージ生成情報の組(つまり、助詞検査規則)を識別するために便宜的に付与されている識別番号である。
【0034】
図3に示す例では、助詞検査規則格納部22には、係り受け関係「目的格」に対応づけて、処理方針「指摘対象とし、指摘メッセージを生成する。」、述語検査条件「−」およびメッセージ生成情報『「○○」の助詞「は」が主語を表さないので分かりにくい。助詞「を」に変更してください。』が格納されている。
【0035】
これによれば、助詞「は」を含む文節と当該文節を係り受け元とする文節との間の係り受け関係が目的格である場合には、当該文節から構成される文を指摘対象とし、指摘メッセージ(当該文に対する指摘事項を含むメッセージ)を生成することが示されている(第1の生成手段)。また、この場合、『「○○」の助詞「は」が主語を表さないので分かりにくい。助詞「を」に変更してください。』というメッセージが生成されることが示されている。
【0036】
なお、このメッセージ中の「○○」には、メッセージ生成情報に付加されている定義情報(ここでは、「○○:助詞「は」を含む文節の表層文字列」)によって定義される文字列が挿入される。つまり、本実施形態において、メッセージ生成情報は指摘事項を含むメッセージのフォーマットを表しており、当該メッセージは、定義情報によって定義される文字列が当該メッセージ生成情報に対して挿入されることによって生成される。ここで、定義情報に記述されている表層文字列とは、入力部31によって入力されている文字列そのものを指す。
【0037】
また、助詞検査規則格納部22には、係り受け関係「主格」に対応づけて、処理方針「述語検査条件にあてはまるもののみ、指摘対象とし、指摘メッセージを生成する。」が格納されている。これによれば、入力部31によって入力された文が主格に対応づけて前記格納手段に格納されている条件を満たすかを、構文解析部32によって取得された構文解析結果に基づいて判定して(判定手段)、助詞「は」を含む文節と当該文節を係り受け元とする文節との間の係り受け関係が主格である場合には、述語検査条件を満たす文を指摘対象とし、指摘メッセージを生成することが示されている(第2の生成手段)。
【0038】
換言すれば、助詞「は」を含む文節と当該文節を係り受け元とする文節との間の係り受け関係が主格である場合であっても、述語検査条件を満たさない場合には、当該助詞「は」は分かりにくいとは診断されず、指摘メッセージは生成されない。
【0039】
なお、図3に示す例では、助詞検査規則格納部22には、係り受け関係「主格」に対応づけて3つの述語検査条件(以下、第1〜第3の述語検査条件と表記)が格納されており、更に当該第1〜第3の述語検査条件のそれぞれに対応づけてメッセージ生成情報が格納されている。
【0040】
ここで、図3に示すように、第1の述語検査条件は『助詞「は」の係り受け先の述語が他動詞であり、かつ該当述語の目的語がない。』であり、当該第1の述語検査条件に対応づけられているメッセージ生成情報は『「○○」の助詞「は」が曖昧です。』、『○○−が−△△』および『○○−を−△△』である。これによれば、助詞「は」を含む文節の係り受け先の文節に含まれる自立語(述語)が他動詞であり、当該他動詞に目的語がない場合には、『「○○」の助詞「は」が曖昧です。』、『○○−が−△△』および『○○−を−△△』というメッセージが生成されることが示されている。このメッセージのうち、『○○−が−△△』および『○○−を−△△』は、助詞「は」に対する修正候補を示している。なお、メッセージ中の「○○」、「△△」には、メッセージ情報に付加されている定義情報(ここでは、「○○:助詞「は」を含む文節の語幹」、「△△:係り受け先述語(文節)の表層文字列」)によって定義される文字列が挿入される。なお、定義情報に記述されている文節の語幹とは、当該文節に含まれる自立語の部分(つまり、付属語以外の部分)を指す。
【0041】
また、第2の述語検査条件は『助詞「は」の後部に、係り受け先以外に他の述語が存在する場合、該当述語が他動詞であり、かつ該当述語の目的語がない。』であり、当該第2の述語検査条件に対応づけられているメッセージ生成情報は『「○○」の助詞「は」が曖昧です。』、『○○−が−△△』および『○○−を−□□』である。これによれば、助詞「は」含む文節の後部に、当該文節の係り受け先となる文節以外に述語となる自立語を含む文節が存在する場合であって、当該自立語(該当述語)が他動詞であり、かつ当該他動詞に目的語がない場合には、『「○○」の助詞「は」が曖昧です。』、『○○−が−△△』および『○○−を−□□』というメッセージが生成されることが示されている。このメッセージのうち、『○○−が−△△』および『○○−を−□□』は、助詞「は」に対する修正候補を示している。なお、メッセージ中の「○○」、「△△」および「□□」には、メッセージ情報に付加されている定義情報(ここでは、「○○:助詞「は」を含む文節の語幹」、「△△:係り受け先述語(文節)の表層文字列」、「□□:他の述語(文節)の表層文字列」)によって定義される文字列が挿入される。
【0042】
また、第3の述語検査条件は『助詞「は」の後部に、係り受け先以外に他の述語が存在する場合、該当述語の主語がない。』であり、当該第3の述語検査条件に対応づけられているメッセージ生成情報は『「○○」の助詞「は」が曖昧です。』、『○○−が−△△』および『○○−が−□□』である。これによれば、助詞「は」を含む文節の後部に、当該文節の係り受け先となる文節以外に述語となる自立語を含む文節が存在する場合であって当該自立語(該当述語)に主語がない場合、『「○○」の助詞「は」が曖昧です。』、『○○−が−△△』および『○○−が−□□』というメッセージが生成されることが示されている。このメッセージのうち、『○○−が−△△』および『○○−が−□□』は、助詞「は」に対する修正候補を示している。なお、メッセージ中の「○○」、「△△」および「□□」には、メッセージ情報に付加されている定義情報(ここでは、「○○:助詞「は」を含む文節の語幹」、「△△:係り受け先述語(文節)の表層文字列」および「□□:他の述語(文節)の表層文字列」)によって定義される文字列が挿入される。
【0043】
更に、図3に示す助詞検査規則格納部22には、係り受け関係「その他」に対応づけて、処理方針「指摘対象としない。」、述語検査条件「−」およびメッセージ生成情報「−」が格納されている。これによれば、助詞「は」を含む文節と当該文節を係り受け元とする文節との間の係り受け関係が目的格および主格以外である場合には、当該文節から構成される文を指摘対象としないことが示されている。なお、この場合には指摘メッセージは生成されない。
【0044】
つまり、本実施形態においては、助詞「は」を含む文節と当該文節を係り受け元とする文節との間の係り受け関係が目的格および主格以外である場合には、当該助詞「は」は分かりにくいとは診断されず、指摘メッセージは生成されない。
【0045】
なお、図3に示す助詞検査規則格納部22は一例であり、他の処理方針、述語検査条件およびメッセージ生成情報が格納されていても構わない。
【0046】
次に、図4のフローチャートを参照して、本実施形態に係る文書処理装置30の処理手順について説明する。
【0047】
まず、入力部31は、ユーザによって指定された文を入力する(ステップS1)。この文は、少なくとも自立語を含む複数の文節から構成される。なお、入力部31によって入力される文は、ユーザによってキーボード等を介して直接入力されたものであってもよいし、例えば既存のファイル等から読み込まれたものであっても構わない。以下の説明において、入力部31によって入力された文を単に入力文と称する。
【0048】
次に、構文解析部32は、入力文を構文解析し、当該入力文を構成する文節間の係り受け関係を含む構文解析結果を取得する(ステップS2)。
【0049】
ここで、図5を参照して、構文解析部32によって取得された構文解析結果について具体的に説明する。
【0050】
図5は、「明細データは運用担当者が管理画面を操作することで出力する。」という文(以下、例文1と表記)の構文解析結果の一例を示す。
【0051】
図5に示す例において、構文解析結果は、ノードおよびアークによって構成される。ノードは、文を構成する各文節を示し、図5に示す構文解析結果において楕円形で表されている。また、図5に示す構文解析結果においては、ノードには、当該ノードによって示される文節の表層文字列および当該文節の語幹(自立語)の品詞が表記されている。
【0052】
一方、アークは、文を構成する各文節間の係り受け関係を示し、図5に示す構文解析結果においてノード間を結ぶ矢印によって表されている。図5に示す構文解析結果においては、アークには、当該アークによって示される文節間の係り受け関係の種類が付されている。
【0053】
なお、矢印(アーク)の先側のノード(係り受け先のノード)は親ノードと称され、一方、矢印の元側のノード(係り受け元のノード)は子ノードと称される。
【0054】
図5に示す構文解析結果によれば、ノード101は、例文1を構成する文節「明細データは」を示している。また、ノード101を参照すると、例文1を構成する文節「明細データは」の語幹(自立語)である「明細データ」の品詞が名詞であることが示されている。なお、ノード101によって示される文節「明細データは」に含まれる「は」は助詞(係助詞)である。
【0055】
また、ノード101とノード102とは、アーク103によって結ばれている。また、アーク103には「目的格」が付されている。これによれば、アーク103は、ノード101およびノード102(によって示される文節)の間の係り受け関係が目的格であることが示している。この場合、ノード101は子ノード(つまり、係り受け元)であり、ノード102は親ノード(つまり、係り受け先)である。
【0056】
ここでは、ノード101、ノード102およびアーク103について主に説明したが、他のノードおよびアークについても同様であるため、その詳しい説明を省略する。
【0057】
また、図5においては省略されているが、構文解析結果には、入力文において述語となる自立語(動詞)の特性(例えば、他動詞か自動詞か等)の情報等についても含まれている。
【0058】
再び図4に戻ると、助詞検査部33は、構文解析部32によって取得された構文解析結果に基づいて、入力文において助詞「は」がある(つまり、助詞「は」が用いられている)か否かを判定する(ステップS3)。なお、上述した図5に示す構文解析結果の場合、ノード101を参照すると、文節「明細データは」には助詞「は」が用いられているため、入力文において助詞「は」があると判定される。
【0059】
次に、助詞検査部33は、構文解析部32によって取得された構文解析結果および助詞検査規則格納部22を参照して、助詞検査処理を実行する(ステップS4)。この助詞検査処理においては、助詞検査規則格納部22に格納されている処理方針および述語検査条件に基づいて入力文における助詞「は」の用法が検査され、当該助詞「は」が分かりにくいと診断された場合には当該助詞「は」が分かりにくいことを指摘するメッセージが生成されて出力される。なお、この助詞検査処理の詳細については後述する。
【0060】
一方、入力文において助詞「は」がない(つまり、助詞「は」が用いられていない)と判定された場合(ステップS3のNO)、本実施形態に係る文書処理装置30の処理は終了される。
【0061】
次に、図6のフローチャートを参照して、前述した助詞検査処理(図4に示すステップ4の処理)の処理手順について説明する。
【0062】
まず、助詞検査部33は、構文解析部32によって取得された構文解析結果に基づいて、助詞「は」を含む文節を表すノード、当該ノードの親ノードおよび当該ノード間のアーク(係り受け関係)を抽出する(ステップS11)。
【0063】
以下、ステップS11において抽出された係り受け関係に対応する処理方針に従って入力文において用いられている助詞「は」の用法が診断される。
【0064】
助詞検査部33は、抽出された係り受け関係が目的格であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0065】
係り受け関係が目的格でないと判定された場合(ステップS12のNO)、助詞検査部33は、当該係り受け関係が主格であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0066】
係り受け関係が主格であると判定された場合(ステップS13のYES)、助詞検査部33は、係り受け関係「主格」に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されている処理方針「述語検査条件に当てはまるもののみ、指摘対象とし、指摘メッセージを生成する。」に従って述語検査条件を適用する。
【0067】
この場合、助詞検査部33は、構文解析部32によって取得された構文解析結果に基づいて、当該係り受け関係「主格」に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されている述語検査条件を入力文が満たすか否かを判定する(ステップS14)。このステップS14の処理により、入力文において用いられている助詞「は」の用法があいまいか否かが診断される。ステップS14の処理は、例えば入力文における助詞「は」と係り受け関係がある述語が他動詞か自動詞か(つまり、動詞の特性)、当該入力文において当該述語以外に他の述語があるか、当該他の述語の主語や目的語があるか等の情報に基づいて実行される。なお、これらの情報は、入力文の構文解析結果から取得される。
【0068】
なお、上述した図3に示す助詞検査規則格納部22のように複数の述語検査条件(第1〜第3の述語検査条件)が格納されている場合には、当該述語検査条件の各々についてステップS14の処理が実行される。
【0069】
述語検査条件を入力文が満たすと判定された場合(ステップS14のYES)、助詞検査部33は、入力文において用いられている助詞「は」が分かりにくいと診断し、当該入力文が満たすと判定された述語検査条件に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されているメッセージ生成情報に基づいて指摘メッセージ(入力文に対する指摘事項を含むメッセージ)を生成する(ステップS15)。なお、指摘メッセージの生成には、メッセージ生成情報に付加されている定義情報が用いられる。
【0070】
出力部34は、助詞検査部33によって生成された指摘メッセージを出力する(ステップS16)。この場合、指摘メッセージは、入力文の修正を促すために、例えば液晶ディスプレイに表示されることによって、ユーザに対して提示される。これにより、ユーザは、指摘メッセージを参照して入力文(に用いられている助詞「は」)を修正することができる。なお、指摘メッセージは、例えばCSVファイルで一覧として出力されてもよいし、文書ファイルのコメントとして記載されても構わない。
【0071】
一方、係り受け関係が目的格であると判定された場合(ステップS12のYES)、係り受け関係「目的格」に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されている処理方針「指摘対象とし、指摘メッセージを生成する。」に従って、上記したステップS15の処理が実行される。このステップS15においては、助詞検査部33は、係り受け関係「目的格」に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されているメッセージ情報に基づいて指摘メッセージを生成する。なお、指摘メッセージの生成には、メッセージ生成情報に付加されている定義情報が用いられる。
【0072】
また、係り受け関係が主格でない(つまり、係り受け関係がその他である)と判定された場合(ステップS13のNO)、助詞検査部33は、係り受け関係「その他」に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されている処理方針「指摘対象としない。」に従って、入力文において用いられている助詞「は」が分かりにくくないと診断する。
【0073】
また、述語検査条件を入力文が満たさないと判定された場合(ステップS14のNO)、助詞検査部33は、上述した係り受け関係「主格」に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されている処理方針に従って、入力文において用いられている助詞「は」が分かりにくくないと診断する。
【0074】
ステップS13において係り受け関係が主格でないと判定された場合およびステップS14において述語検査条件を入力文が満たさないと判定された場合、ステップS15およびS16の処理は実行されず、助詞検査処理は終了される。
【0075】
以下、本実施形態に係る文書処理装置30の動作について具体的に説明する。ここでは、文書処理装置30は、上述した図3に示す助詞検査規則格納部22を備えているものとする。
【0076】
まず、入力文が上述した例文1「明細データは運用担当者が管理画面を操作することで出力する。」である場合について説明する。
【0077】
この場合、構文解析部32は、例文1を構文解析し、当該例文1の構文解析結果を取得する。ここでは、上述した図5に示す構文解析結果が取得される。なお、図5に示す構文解析結果については上述した通りであるため、その詳しい説明を省略する。
【0078】
次に、助詞検査部33は、図5に示す構文解析結果に基づいて、入力文である例文1において助詞「は」があるか否かを判定する。
【0079】
ここでは、図5に示す構文解析結果を構成する文節「明細データは」を表すノード101において「明細データ」の直後に助詞「は」が用いられている。このため、助詞検査部33は、例文1において助詞「は」があると判定する。なお、以下の説明においては、文節「明細データは」を表すノードを便宜的に「明細データは」ノードと称する。他のノードについても同様である。
【0080】
この場合、助詞検査部33は、助詞検査処理を実行する。助詞検査処理において、助詞検査部33は、図5に示す構文解析結果に基づいて、助詞「は」を含む文節を表す「明細データは」ノード101、当該「明細データは」ノード101の親ノードである「出力する」ノード102および当該「明細データは」ノード101と「出力する」ノード102との間の係り受け関係「目的格」のセットを抽出する。
【0081】
ここで抽出された係り受け関係は目的格であるため、助詞検査部33は、係り受け関係「目的格」に対応づけて図3に示す助詞検査規則格納部22に格納されている処理方針に従って、例文1において用いられている助詞「は」が分かりにくいと診断する。この場合、助詞検査部33は、係り受け関係「目的格」に対応づけて図3に示す助詞検査規則格納部22に格納されているメッセージ情報に基づいて指摘メッセージを生成する。
【0082】
ここで、図3を参照すると、係り受け関係「目的格」に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されているメッセージ情報は、『「○○」の助詞「は」が主語を表さないので分かりにくい。助詞「を」に変更してください。』である。
【0083】
また、このメッセージ生成情報には、定義情報「○○:助詞「は」を含む文節の表層文字列」が付加されている。例文1において、助詞「は」を含む文節の表層文字列(つまり、○○)は、「明細データは」である。
【0084】
したがって、助詞検査部33は、「明細データは」の文字列をメッセージ情報中の「○○」に挿入することによって指摘メッセージを生成する。具体的には、助詞検査部33は、指摘メッセージ『「明細データは」の助詞「は」が主語を表さないので分かりにくい。助詞「を」に変更してください。』を生成する。
【0085】
このように指摘メッセージが生成された場合、出力部34は、生成された指摘メッセージを出力する。これにより、指摘メッセージは、例えばディスプレイ等に表示されることによってユーザに対して提示される。
【0086】
ここで、図7は、例文1の場合においてユーザに対して提示される指摘メッセージの一例を示す。図7に示す例では、指摘メッセージ『「明細データは」の助詞「は」が主語を表さないので分かりにくい。助詞「を」に変更してください。』がユーザに対して提示されている。これにより、ユーザは、図7に示す指摘メッセージを参照して、例えば例文1を「明細データを運用担当者が管理画面を操作することで出力する。」のように修正することができる。
【0087】
ここでは、指摘メッセージとして『「明細データは」の助詞「は」が主語を表さないので分かりにくい。助詞「を」に変更してください。』が出力(提示)されるものとして説明したが、後述する他の指摘メッセージと同様に、例えば「明細データ−を−出力する」のような修正候補が指摘メッセージに含まれていても構わない。
【0088】
次に、入力文が「薬品は中濃度に濃縮し、それから、装置の連続運動を可能にする。」という文(以下、例文2と表記)である場合について説明する。
【0089】
この場合、構文解析部32は、例文2を構文解析し、当該例文2の構文解析結果を取得する。ここでは、図8に示す構文解析結果が取得される。なお、図8に示す構文解析結果についての詳しい説明は省略する。
【0090】
次に、助詞検査部33は、図8に示す構文解析結果に基づいて、入力文である例文2において助詞「は」があるか否かを判定する。
【0091】
ここでは、図8に示す構文解析結果を構成する「薬品は」ノードにおいて「薬品」の直後に助詞「は」が用いられている。このため、助詞検査部33は、例文2において助詞「は」があると判定する。
【0092】
この場合、助詞検査部33は、助詞検査処理を実行する。助詞検査処理において、助詞検査部33は、図8に示す構文解析結果に基づいて、助詞「は」を含む文節を表す「薬品は」ノード、当該「薬品は」ノードの親ノードである「可能にする」ノードおよび当該「薬品は」ノードと「可能にする」ノードとの間の係り受け関係「主格」のセットを抽出する。
【0093】
ここで抽出された係り受け関係は主格であるため、助詞検査部33は、図8に示す構文解析結果(および例文2)に基づいて、当該係り受け関係「主格」に対応づけて図3に示す助詞検査規則格納部22に格納されている処理方針に従って、第1〜第3の述語検査条件を例文2が満たすか否かを判定する。
【0094】
まず、第1の述語検査条件について説明する。第1の述語検査条件は、『助詞「は」の係り受け先の述語が他動詞であり、かつ該当述語の目的語がない。』である。ここで、図8に示す構文解析結果を参照すると、助詞「は」を含む文節「薬品は」の係り受け先の文節「可能にする」の自立語(述語)は他動詞であるが、当該他動詞の目的語は「連続運動」である。したがって、例文2は、第1の述語検査条件を満たさない。
【0095】
次に、第2の述語検査条件について説明する。第2の述語検査条件は、『助詞「は」の後部に、係り受け先以外に他の述語が存在する場合、該当述語が他動詞であり、かつ該当述語の目的語がない。』である。ここで、図8に示す構文解析結果を参照すると、例文2においては、助詞「は」を含む文節「薬品は」の後部に、当該文節の係り受け先となる文節「可能にする」以外に述語となる自立語を含む文節「濃縮し」が存在する。また、この文節「濃縮し」に含まれる自立語(該当述語)は他動詞であり、かつ例文2においては、当該他動詞に目的語がない。したがって、例文2は、第2の述語検査条件を満たす。
【0096】
最後に、第3の述語検査条件について説明する。第3の述語検査条件は、『助詞「は」の後部に、係り受け先以外に他の述語が存在する場合、該当述語の主語がない。』である。ここで、図8に示す構文解析結果を参照すると、例文2においては、助詞「は」を含む文節「薬品は」の後部に、当該文節の係り受け先となる文節「可能となる」以外に述語となる自立語を含む文節「濃縮し」が存在する。また、例文2においては、この文節「濃縮し」に含まれる自立語(該当述語)の主語がない。したがって、例文2は、第3の述語検査条件を満たす。
【0097】
このように例文2が第2の述語検査条件および第3の述語検査条件を満たす場合、助詞検査部33は、係り受け関係「主格」に対応づけて図3に示す助詞検査規則格納部22に格納されている処理方針に従って、例文2において用いられている助詞「は」が分かりにくいと診断する。この場合、助詞検査部33は、第2の述語検査条件および第3の述語検査条件に対応づけて図3に示す助詞検査規則格納部22に格納されているメッセージ情報に基づいて指摘メッセージを生成する。
【0098】
ここで、図3を参照すると、第2の述語検査条件に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されているメッセージ情報は、『「○○」の助詞「は」が曖昧です。』、『○○−が−△△』および『○○−を−□□』である。
【0099】
また、このメッセージ情報には、定義情報「○○:助詞「は」を含む文節の語幹」、「△△:係り受け先述語の表層文字列」および「□□:他の述語の表層文字列」が付加されている。例文2において、助詞「は」を含む文節の語幹(つまり、○○)は、「薬品」である。また、係り受け先述語の表層文字列(つまり、△△)は、「可能にする」である。また、他の述語の表層文字列(つまり、□□)は、「濃縮し」である。
【0100】
したがって、助詞検査部33は、「薬品」、「可能にする」および「濃縮し」をメッセージ情報中の「○○」、「△△」および「□□」に挿入することによって指摘メッセージを生成する。具体的には、助詞検査部33は、第2の述語検査条件に対応づけて図3に示す助詞検査規則格納部22に格納されているメッセージ情報に基づいて、指摘メッセージ『「薬品」の助詞「は」が曖昧です。』、『薬品−が−可能にする』および『薬品−を−濃縮し』を生成する。
【0101】
一方、第3の述語検出条件に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されているメッセージ情報は、『「○○」の助詞「は」が曖昧です。』、『○○−が−△△』および『○○−が−□□』である。
【0102】
また、このメッセージ情報には、定義情報「○○:助詞「は」を含む文節の語幹」、「△△:係り受け先述語の表層文字列」および「□□:他の述語の表層文字列」が付加されている。例文2において、助詞「は」を含む文節の語幹(つまり、○○)は、「薬品」である。また、係り受け先述語の表層文字列(つまり、△△)は、「可能にする」である。また、他の述語の表層文字列(つまり、□□)は、「濃縮し」である。
【0103】
したがって、助詞検査部33は、「薬品」、「可能にする」および「濃縮し」をメッセージ情報中の「○○」、「△△」および「□□」に挿入することによって指摘メッセージを生成する。具体的には、助詞検査部33は、第3の述語検査条件に対応づけて図3に示す助詞検査規則格納部22に格納されているメッセージ情報に基づいて、指摘メッセージ『「薬品」の助詞「は」が曖昧です。』、『薬品−が−可能にする』および『薬品−が−濃縮し』を生成する。
【0104】
このように指摘メッセージが生成された場合、出力部34は、生成された指摘メッセージを出力する。なお、上記したように複数の指摘メッセージが生成された場合、同一の指摘メッセージは1つの指摘メッセージとして出力されるものとする。これにより、指摘メッセージは、例えばディスプレイ等に表示されることによってユーザに対して提示される。
【0105】
ここで、図9は、例文2の場合においてユーザに対して提示される指摘メッセージの一例を示す。図9に示す例では、指摘メッセージ『「薬品」の助詞「は」が曖昧です。』、『薬品−が−可能にする』、『薬品−を−濃縮し』および『薬品−が−濃縮し』がユーザに対して提示されている。なお、指摘メッセージ『薬品−が−可能にする』、『薬品−を−濃縮し』および『薬品−が−濃縮し』は、例文2における助詞「は」に対する修正候補である。これにより、ユーザは、図9に示す指摘メッセージを参照して、例えば例文2を「薬品を中濃度に濃縮し、それから、装置の連続運動を可能にする。」のように修正することができる。
【0106】
なお、指摘メッセージは、修正候補を選択可能な形式で提示(表示)されても構わない。図10は、例文2の場合においてユーザに対して提示される修正候補を選択可能な指摘メッセージの一例を示す。この図10に示す指摘メッセージでは、ユーザは、文書処理装置30を操作することによって、3つの修正候補のうち、ユーザが所望の修正候補を例えば選択欄(<選択>)において選択(指定)することができる。これにより、ユーザの操作に応じて選択された修正候補に基づいて、入力文(ここでは、例文2)を自動的に修正される。具体的には、図10に示す指摘メッセージ中の例えば選択欄において、3つの修正候補のうちの2つ目(2.薬品−を−濃縮し)がユーザによって選択された場合、例文2は「薬品を中濃度に濃縮し、それから、装置の連続運動を可能にする。」と自動的に修正される。
【0107】
次に、入力文が「実際は親指を含まない。」という文(以下、例文3と表記)である場合について説明する。
【0108】
この場合、構文解析部32は、例文3を構文解析し、当該例文3の構文解析結果を取得する。ここでは、図11に示す構文解析結果が取得される。なお、図11に示す構文解析結果についての詳しい説明は省略する。
【0109】
次に、助詞検査部33は、図11に示す構文解析結果に基づいて、入力文である例文3において助詞「は」があるか否かを判定する。
【0110】
ここでは、図11に示す構文解析結果を構成する「実際は」ノードにおいて「実際」の直後に助詞「は」が用いられている。このため、助詞検査部33は、例文3において助詞「は」があると判定する。
【0111】
この場合、助詞検査部33は、助詞検査処理を実行する。助詞検査処理において、助詞検査部33は、図11に示す構文解析結果に基づいて、助詞「は」を含む文節を表す「実際は」ノード、当該「実際は」ノードの親ノードである「含まない」ノードおよび当該「実際は」ノードと「含まない」ノードとの間の係り受け関係「連用修飾」のセットを抽出する。
【0112】
ここで抽出された係り受け関係は連用修飾であるため、助詞検査部33は、係り受け関係「その他」に対応づけて図3に示す助詞検査規則格納部22に格納されている処理方針に従って、例文3において用いられている助詞「は」が分かりにくくないと診断する。つまり、この場合においては、例文3において用いられている助詞「は」は指摘対象とされず、指摘メッセージは生成されない。
【0113】
次に、入力文が「情報は集まったが、総合的な決断ができない。」という文(以下、例文4と表記)である場合について説明する。
【0114】
この場合、構文解析部32は、例文4を構文解析し、当該例文4の構文解析結果を取得する。ここでは、図12に示す構文解析結果が取得される。なお、図12に示す構文解析結果についての詳しい説明は省略する。
【0115】
次に、助詞検査部33は、図12に示す構文解析結果に基づいて、入力文である例文4において助詞「は」があるか否かを判定する。
【0116】
ここでは、図12に示す構文解析結果を構成する「情報は」ノードにおいて「情報」の直後に助詞「は」が用いられている。このため、助詞検査部33は、例文4において助詞「は」があると判定する。
【0117】
この場合、助詞検査部33は、助詞検査処理を実行する。助詞検査処理において、助詞検査部33は、図12に示す構文解析結果に基づいて、助詞「は」を含む文節を表す「情報は」ノード、当該「情報は」ノードの親ノードである「集まった」ノードおよび当該「情報は」ノードと「集まった」ノードとの間の係り受け関係「主格」のセットを抽出する。
【0118】
ここで抽出された係り受け関係は主格であるため、助詞検査部33は、図12に示す構文解析結果(および例文4)に基づいて、当該係り受け関係「主格」に対応づけて図3に示す助詞検査規則格納部22に格納されている述語検査条件を例文4が満たすか否かを判定する。
【0119】
まず、第1の述語検査条件について説明する。第1の述語検査条件は、上記したように『助詞「は」の係り受け先の述語が他動詞であり、かつ該当述語の目的語がない。』である。ここで、図12に示す構文解析結果を参照すると、助詞「は」を含む文節「情報は」の係り受け先の文節「集まったが」に含まれる自立語(述語)は自動詞である。したがって、例文4は、第1の述語検査条件を満たさない。
【0120】
次に、第2の述語検査条件について説明する。第2の述語検査条件は、上記したように『助詞「は」の後部に、係り受け先以外に他の述語が存在する場合、該当述語が他動詞であり、かつ該当述語の目的語がない。』である。ここで、図12に示す構文解析結果を参照すると、例文4においては、助詞「は」を含む文節「情報は」の後部に、当該文節の係り受け先となる文節「集まったが」以外に述語となる自立語を含む文節「できない」が存在するが、当該自立語(該当述語)は自動詞である。したがって、例文2は、第2の述語検査条件を満たさない。
【0121】
最後に、第3の述語検査条件について説明する。第3の述語検査条件は、上記したように『助詞「は」の後部に、係り受け先以外に他の述語が存在する場合、該当述語の主語がない。』である。ここで、図12に示す構文解析結果を参照すると、例文4においては、助詞「は」を含む文節「情報は」の後部に、当該文節の係り受け先となる文節「集まったが」以外に述語となる自立語を含む文節「できない」が存在するが、当該自立語(該当述語)の主語「決断」が存在する。したがって、例文4は、第3の述語検査条件を満たさない。
【0122】
この場合、図3に示す助詞検査規則格納部22に格納されている第1〜第3の述語検査条件の全てを例文4が満たさないので、助詞検査部33は、係り受け関係「主格」に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されている処理方針に従って、例文4において用いられている助詞「は」が分かりにくくないと診断する。つまり、この場合においては、例文4において用いられている助詞「は」は指摘対象とされず、指摘メッセージは生成されない。
【0123】
上記したように本実施形態においては、助詞「は」および自立語を含む文節(第1の文節)と当該第1の文節を係り受け元とする自立語を含む文節(第2の文節)とを含む複数の文節から構成される文を入力し、当該入力された文を構成する文節間の係り受け関係を含む構文解析結果を取得し、入力された文を構成する第1の文節と第2の文節との間の係り受け関係を構文解析結果から抽出し、当該抽出された係り受け関係に応じた入力された文に対する指摘事項を含むメッセージを、当該係り受け関係に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されているメッセージ生成情報に基づいて生成し、当該メッセージを出力する。
【0124】
また、本実施形態においては、第1の文節と第2の文節との間の係り受け関係として目的格または主格を抽出し、当該係り受け関係として目的格が抽出された場合、当該目的格に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されているメッセージ生成情報に基づいてメッセージを生成し、当該係り受け関係として主格が抽出された場合、入力された文が当該主格に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されている条件を満たすかを構文解析結果(に含まれる係り受け関係および入力された文を構成する文節に含まれる動詞の特性)に基づいて判定し、当該入力された文が条件を満たすと判定された場合、当該主格に対応づけて助詞検査規則格納部22に格納されているメッセージ生成情報に基づいてメッセージを生成する。
【0125】
また、本実施形態において、メッセージ生成情報に基づいて生成されたメッセージは、入力された文を構成する第1の文節に含まれる助詞「は」に対する修正候補を含む。
【0126】
また、本実施形態においては、ユーザの操作に応じて、メッセージに含まれる修正候補を選択し、当該選択された修正候補に基づいて入力された文を修正する。
【0127】
本実施形態においては、上記したような構成により、入力された文において用いられている分かりにくい助詞「は」を検出し、当該文の修正を促すことができる。
【0128】
これにより、本実施形態においては、ユーザがメッセージに基づいて文(原文)の修正または補足をすることができるため、より分かりやすい文(から構成される文書)の作成を支援することができる。また、本実施形態においては、機械翻訳において誤訳の可能性がある助詞「は」がメッセージに基づいてユーザによって修正されることによって、当該機械翻訳の精度を向上させることができる。
【0129】
なお、本実施形態においては、1つの文を対象として前述した図4に示す処理が行われるものとして説明したが、例えば複数の文を含む文書を対象として当該処理が実行される構成であっても構わない。この場合、例えば図4に示すステップS1において文書が入力され、ステップS2以降の処理が当該文書に含まれる文の各々について実行されればよい。
【0130】
なお、本願発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0131】
10…コンピュータ、20…外部記憶装置、22…助詞検査規則格納部、30…文書処理装置、31…入力部、32…構文解析部、33…助詞検査部、34…出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立語および助詞「は」を含む第1の文節と前記第1の文節を係り受け元とする自立語を含む第2の文節との間の係り受け関係に対応づけて、当該係り受け関係に応じた当該第1の文節および当該第2の文節から構成される文に対する指摘事項を含むメッセージを生成するために用いられるメッセージ生成情報を予め格納する格納手段と、
前記第1の文節と前記第2の文節とを含む複数の文節から構成される文を入力する入力手段と、
前記入力された文を構文解析し、前記入力された文を構成する文節間の係り受け関係を含む構文解析結果を取得する構文解析手段と、
前記入力された文を構成する前記第1の文節と前記第2の文節との間の係り受け関係を、前記取得された構文解析結果から抽出する抽出手段と、
前記抽出された係り受け関係に応じた前記入力された文に対する指摘事項を含むメッセージを、当該係り受け関係に対応づけて前記格納手段に格納されているメッセージ生成情報に基づいて生成するメッセージ生成手段と、
前記生成されたメッセージを出力する出力手段と
を具備することを特徴とする文書処理装置。
【請求項2】
前記抽出手段は、前記第1の文節と前記第2の文節との間の係り受け関係として、前記第1の文節に含まれる自立語が前記第2の文節に含まれる自立語の目的語であることを示す目的格または前記第1の文節に含まれる自立語が前記第2の文節に含まれる自立語の主語であることを示す主格を抽出し、
前記格納手段は、
前記目的格に対応づけて、前記第1の文節に含まれる自立語が前記第2の文節に含まれる自立語の目的語である場合における指摘事項を含むメッセージを生成するために用いられるメッセージ生成情報を格納し、
前記主格に対応づけて、前記第1の文節に含まれる自立語が前記第2の文節に含まれる自立語の主語である場合における指摘事項を含むメッセージを生成するために用いられるメッセージ生成情報および当該メッセージ生成情報に基づいてメッセージを生成する条件を格納し、
前記メッセージ生成手段は、
前記抽出手段によって前記係り受け関係として目的格が抽出された場合、当該目的格に対応づけて前記格納手段に格納されているメッセージ生成情報に基づいて前記メッセージを生成する第1の生成手段と、
前記抽出手段によって前記係り受け関係として主格が抽出された場合、前記入力された文が当該主格に対応づけて前記格納手段に格納されている条件を満たすかを、前記取得された構文解析結果に基づいて判定する判定手段と、
前記入力された文が前記主格に対応づけて前記格納手段に格納されている条件を満たすと判定された場合、前記主格に対応づけて前記格納手段に格納されているメッセージ生成情報に基づいて前記メッセージを生成する第2の生成手段と
を含む
ことを特徴とする請求項1記載の文書処理装置。
【請求項3】
前記第1の生成手段および第2の生成手段によって生成されたメッセージは、前記入力された文を構成する第1の文節に含まれる助詞「は」に対する修正候補を含むことを特徴とする請求項2記載の文書処理装置。
【請求項4】
前記入力された文を構成する文節に含まれる自立語は、動詞を含み、
前記構文解析手段によって取得された構文解析結果は、前記入力された文を構成する文節間の係り受け関係および当該入力された文を構成する文節に含まれる動詞の特性を含み、
前記判定手段は、前記入力された文が前記主格に対応づけて前記格納手段に格納されている条件を満たすかを、前記構文解析手段によって取得された構文解析結果に含まれる係り受け関係および前記入力された文を構成する文節に含まれる動詞の特性に基づいて判定する
ことを特徴とする請求項2記載の文書処理装置。
【請求項5】
自立語および助詞「は」を含む第1の文節と前記第1の文節を係り受け元とする自立語を含む第2の文節との係り受け関係に対応づけて、当該係り受け関係に応じた当該第1の文節および当該第2の文節から構成される文に対する指摘事項を含むメッセージを生成するために用いられるメッセージ生成情報を予め格納する格納手段を有する外部記憶装置と、当該外部記憶装置を利用するコンピュータとから構成される文書処理装置において、前記コンピュータによって実行されるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記第1の文節と前記第2の文節とを含む複数の文節から構成される文を入力するステップと、
前記入力された文を構文解析し、前記入力された文を構成する文節間の係り受け関係を含む構文解析結果を取得するステップと、
前記入力された文を構成する前記第1の文節と前記第2の文節との間の係り受け関係を、前記取得された構文解析結果から抽出するステップと、
前記抽出された係り受け関係に応じた前記入力された文に対する指摘事項を含むメッセージを、当該係り受け関係に対応づけて前記格納手段に格納されているメッセージ生成情報に基づいて生成するステップと、
前記生成されたメッセージを出力するステップと
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−97703(P2013−97703A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242043(P2011−242043)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】