説明

文書管理装置

【課題】複数の担当者間において回覧および編集される1つの文書に対して、改ざんもしくは誤った変更を防止するための技術を提供する。
【解決手段】文書管理装置14は、複数の情報項目を含み複数の担当者間で回覧させるべき1つの回覧文書を作成するための画面であって、情報項目ごとに複数の担当者のうち編集権限を有する担当者をユーザに指定させる文書作成画面を表示させる文書作成支援部28と、文書作成画面に対するユーザの入力情報にしたがって、各情報項目と編集権限を有する担当者との対応関係を記録する記録部30と、上記1つの回覧文書を各担当者の端末で表示させ、ある担当者の端末で表示させる場合、上記対応関係にしたがって、複数の情報項目のうちその担当者が編集権限を有しない情報項目を編集が禁止された状態で表示させる文書表示制御部34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、データ処理技術に関し、特に、複数の担当者に閲覧させるべき文書を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
企業の業務の中には、文書に基づく実施が求められるものがあり、また、その実施結果を文書や記録等で残すことが求められるものがある。企業で保持されるべき文書や記録は電子化され、データベース等に格納されることもある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、複数の担当者間で1つの紙文書を回覧し、各担当者が担当する箇所への追記および署名を行う文書管理業務が実施されることがある。例えば、製薬企業における逸脱管理業務では、1つの逸脱発生報告書に対して、(1)逸脱を発見した担当者が起票し署名、(2)逸脱管理責任者が評価を追記し署名、(3)品質管理部門が追記し署名、といった一連のプロセスが実施されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−312422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、企業へのワークフローアプリケーションの導入が進んでおり、複数の担当者間における電子化された文書の回覧が自動化されることもある。しかしながら、電子化された1つの文書を複数の担当者間で回覧および編集する場合、文書の改ざんや誤った変更を防止するための具体的な方法はこれまで十分に提案されてこなかったと本発明者は考えた。
【0006】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、複数の担当者間において回覧および編集される1つの文書に対して、改ざんもしくは誤った変更を防止するための技術を提供することがである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の文書管理装置は、複数の情報項目を含み複数の担当者間で回覧させるべき1つの回覧文書を作成するための画面であって、情報項目ごとに複数の担当者のうち編集権限を有する担当者をユーザに指定させる文書作成画面を表示させる文書作成支援部と、文書作成画面に対するユーザの入力情報にしたがって、複数の情報項目のそれぞれと編集権限を有する担当者との対応関係を記録する記録部と、文書作成画面において作成された1つの回覧文書を閲覧すべき担当者を、複数の担当者の中から順次決定するワークフロー制御部と、閲覧すべき担当者の端末において1つの回覧文書を表示させ、その際、対応関係にしたがって、複数の情報項目のうちその担当者が編集権限を有しない情報項目を編集が制限された状態で表示させる文書表示制御部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様もまた、文書管理装置である。この装置は、複数の情報項目を含み複数の担当者に編集させるべき1つの文書を作成するための画面であって、情報項目ごとに複数の担当者のうち編集権限を有する担当者をユーザに指定させる文書作成画面を表示させる文書作成支援部と、文書作成画面に対するユーザの入力情報にしたがって、複数の情報項目のそれぞれと編集権限を有する担当者との対応関係を記録する記録部と、文書作成画面において作成された1つの文書を各担当者の端末で表示させ、ある担当者の端末で表示させる場合、対応関係にしたがって、複数の情報項目のうちその担当者が編集権限を有しない情報項目を編集が制限された状態で表示させる文書表示制御部と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の担当者間において回覧および編集される1つの文書に対して、改ざんもしくは誤った変更が行われることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態のシステム構成を示す図である。
【図2】図1の文書管理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】テンプレート設定画面を模式的に示す図である。
【図4】テンプレート詳細設定画面を模式的に示す図である。
【図5】テンプレート保持部の格納データの構成を示すER図である。
【図6】テンプレートXMLデータの構成を示す図である。
【図7】ワークフロー情報保持部の格納データの構成を示すER図である。
【図8】回覧文書XMLデータの構成を示す図である。
【図9】回覧文書確認画面を模式的に示す図である。
【図10】図1の文書管理装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】図10のS24のワークフロー処理を詳細に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
企業における文書管理業務では、複数の担当者間で文書を回覧し、その文書に対して各担当者が逐次追記し署名する一連のプロセスが実施されることがある。その一方、電子化された文書を回覧する場合、改ざん等を防止するために文書に対して編集権限を有する担当者を示す情報(以下、「編集権限情報」とも呼ぶ。)を設定する必要がある。これまでは文書全体に対して一律の編集権限情報を設定することとなり、上記の文書管理業務では複数の電子化文書を回覧する必要があった。そのため、各担当者は複数の電子化文書を個々に確認する必要があり、担当者の負担の増大やミスの発生を招き、実際には複数の担当者間の回覧文書としては紙文書が用いられていた。
【0013】
そこで本実施の形態では、1つの電子化文書に含まれる複数の情報項目のそれぞれに対して編集権限情報を設定し、ある担当者がその電子化文書を閲覧する際には、その担当者が編集権限を有する情報項目のみを編集可能な状態で提示する技術を提案する。具体的には、複数の担当者が各担当部分を個々に追記していき1つの文書(例えば、製薬会社における逸脱発生報告書や変更計画書、ワークフロー申請書類等)を完成させるワークフローにおいて、担当者間で回覧および編集される1つの電子化文書に対して、改ざんや誤った変更が行われることを防止できる。
【0014】
図1は、実施の形態のシステム構成を示す。情報システム10では、LAN16を介して、社員端末12で総称される社員A端末12a、社員B端末12b、社員C端末12cと、文書管理装置14とが接続されている。社員端末12は、各社員により操作される情報処理端末であり、例えばウェブブラウザがインストールされた一般的なPCである。
【0015】
本実施の形態では、図1の各装置は製薬会社に設置されたものであることとし、業務の逸脱の発生を発見した社員Aが社員A端末12aを介して逸脱発生報告書を作成・申請する。文書管理装置14は、その逸脱発生報告書を回覧文書として管理する。そして、逸脱管理責任者である社員Bが社員B端末12bを介して逸脱発生報告書をレビューし、最終的に品質管理責任者である社員Cが社員C端末12cを介して逸脱発生報告書を承認するプロセスが実行されることとする。
【0016】
なお、以下に説明する文書管理技術は、製薬会社に限らず、様々な分野の企業や団体における文書の回覧に適用できることはもちろんである。また、文書管理装置14と他装置の接続には、LANに限らず、WANやインターネット等、様々な公知の通信手段が用いられてもよいことはもちろんである。
【0017】
文書管理装置14は、上述したように、社員間で回覧される文書を管理する情報処理装置である。また、社員端末12に対して文書の回覧に関する各種のウェブページを提供するウェブサーバでもある。図2は、図1の文書管理装置14の機能構成を示すブロック図である。文書管理装置14は、管理DB(データベース)20と、文書作成支援部28と、記録部30と、ワークフロー制御部32と、文書表示制御部34と、入力情報取得部36とを備える。
【0018】
本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。例えば、各機能ブロックは、コンピュータプログラムとして記録媒体に格納され、文書管理装置14のハードディスクにインストールされ、文書管理装置14のメインメモリに適宜読み出されてCPUにて実行されてもよい。
【0019】
管理DB20は、文書管理を実現するための各種情報が格納される記憶領域である。管理DB20は、ユーザ情報保持部22と、テンプレート保持部24と、ワークフロー情報保持部26とを含む。なお管理DB20は、ユーザ情報保持部22・テンプレート保持部24・ワークフロー情報保持部26のそれぞれに対応するテーブルを含むデータベースであってもよいことはもちろんである。
【0020】
ユーザ情報保持部22は、複数の社員それぞれの本人確認情報(認証情報とも言える)としてのユーザID・パスワードと、各社員の氏名、所属するグループ(部門等)と、各社員の役割とを対応付けて保持する。本実施の形態における「役割」とは、企業の逸脱管理における各社員の役割であることとし、例えば発見者・逸脱管理責任者・品質管理責任者が含まれる。別の例として、情報システム10において手順書等の変更管理が行われる場合、その変更管理における各社員の役割が規定されてもよく、例えば変更管理責任者がさらに含まれてもよい。
【0021】
テンプレート保持部24は、回覧文書の雛形となる文書(以下、「テンプレート」とも呼ぶ。)に関するデータを保持する。ワークフロー情報保持部26は、テンプレートを使用して作成された回覧文書に関するデータを保持する。テンプレート保持部24およびワークフロー情報保持部26に格納されるデータの詳細は後述する。
【0022】
文書作成支援部28は、テンプレートの設定要求を社員端末12から受け付けた場合、テンプレートの設定画面のデータを社員端末12へ送信することにより、その設定画面を表示させる。また、テンプレートの登録要求を社員端末12から受け付けた場合、テンプレートの設定画面への入力情報を取得する。記録部30は、新規のテンプレートIDを払い出し、そのテンプレートIDと、テンプレートの設定画面への入力情報とを対応づけてテンプレート保持部24へ格納する。
【0023】
また文書作成支援部28は、特定のテンプレートを指定した回覧文書の設定要求を社員端末12から受け付けた場合、指定されたテンプレートのデータを含む回覧文書の設定画面のデータを社員端末12へ送信することにより、その設定画面を表示させる。また、回覧文書の登録要求(本実施の形態では回覧文書の発出要求でもある)を社員端末12から受け付けた場合、回覧文書の設定画面への入力情報を取得する。記録部30は、新規のワークフローIDを払い出し、そのワークフローIDと、回覧文書の設定画面への入力情報とを対応づけてワークフロー情報保持部26へ格納する。
【0024】
図3は、テンプレート設定画面を模式的に示す。テンプレート設定画面40は、テンプレート名フィールド42と、経路入力エリア44とを含む。経路入力エリア44の経路番号フィールドには、文書の回覧順序が設定される。アクションフィールドには、文書の回覧における処理名称が設定される。役割フィールドにはアクションを実施すべき実施者の役割が設定され、実施者フィールドには実施者名もしくは実施者が所属するグループ名が設定される。テンプレートを用いて回覧文書が設定される際、典型的には実施者フィールドがその回覧文書の内容に応じて適宜変更される。ボタン46が押下されると、テンプレートの詳細内容を設定するためのテンプレート詳細設定画面が表示される。
【0025】
図4は、テンプレート詳細設定画面を模式的に示す。テンプレート詳細設定画面50は、テンプレートエリア52と、コントロールリスト54と、プロパティリスト56とを含む。テンプレートエリア52は、回覧文書の本文が設計される領域であり、具体的にはコントロールリスト54で示されたウェブコントロール(例えば、回覧文書のウェブページにレイアウトされるHTMLエレメント)がユーザにより配置される。
【0026】
コントロールリスト54は、テンプレートエリア52に配置可能なウェブコントロールの一覧を示すリストである。文書作成支援部28は、コントロールリスト54に示されたウェブコントロールがユーザによりテンプレートエリア52へドラッグ・アンド・ドロップされた場合、そのウェブコントロールをテンプレートエリア52へ追加して表示させる。ウェブコントロールは、文書の回覧に携わる複数の社員それぞれが入力すべき情報項目であるとも言える。プロパティリスト56は、テンプレートエリア52へ配置されたウェブコントロールごとの属性情報を設定するリストである。
【0027】
図4では、テンプレートエリア52にライン58が配置されて、第1ブロック60、第2ブロック62、第3ブロック64に区分けされている。第1ブロック60は、逸脱発生報告書の申請者である発見者(すなわち社員A)が設定すべき領域である。第2ブロック62は、逸脱発生報告書のレビュー者である逸脱管理責任者(すなわち社員B)が設定すべき領域である。第3ブロック64は、逸脱発生報告書の最終的な承認者である品質管理責任者(すなわち社員C)が設定すべき領域である。
【0028】
図4の第1ブロック60には、報告年月日を設定するための申請日表示ラベル66と、報告者名を設定するための署名者表示ラベル68と、製品名および製品番号を入力するためのテキストボックスと、逸脱の概要を入力するためのテキストエリアが配置されている。第2ブロック62にも、様々なウェブコントロールが配置されているが、特に、評価者名を設定するための署名者表示ラベル68と、評価署名日を設定するための署名日表示ラベル70が配置されている。申請日表示ラベル66、署名者表示ラベル68、署名日表示ラベル70のデータは、申請者もしくは回覧者による入力を要さず、自動的に設定される。
【0029】
プロパティリスト56の役割フィールド72は、ウェブコントロールの編集権限を有するユーザを指定するフィールドであり、本実施の形態では、編集権限を有するユーザに対して割り当てられている役割が指定される。文書作成支援部28は、役割フィールド72をドロップダウンリストとして表示させる。そして、図3で示したテンプレート設定画面40において経路入力エリア44の役割フィールドへ設定された複数種類の役割名を選択可能な役割の候補として一覧表示させる。これにより、テンプレートの作成者が役割フィールド72を設定する負担が低減されるとともに、文書の回覧経路との不整合が生じることを防止できる。
【0030】
図4の例では、第1ブロック60・第2ブロック62・第3ブロック64に配置されたウェブコントロールの役割フィールドには、発見者・逸脱管理責任者・品質管理責任者がそれぞれ設定されている。言い換えれば、編集権限を同じ役割へ付与したウェブコントロールをテンプレートエリア52における同じ領域に配置している。これにより、ある役割を担う担当者は、回覧文書の同じ領域に配置されたウェブコントロールに対してのみ情報入力を行えばよいため、担当者による情報入力を効率化することができる。ただし既述したように、ウェブコントロールごとに役割を設定することができるため、異なるブロック(言い換えれば、回覧文書内の離れた位置)に配置された複数のウェブコントロールであっても役割フィールドに同じ値を設定してもよいことはもちろんである。
【0031】
なお、回覧文書の設定画面については図示しないが、文書作成支援部28は、図4のテンプレートエリア52の情報に加えて、図3の経路入力エリア44の情報や、申請期限等の申請情報の入力エリアを表示させる。ユーザは、申請内容に応じて、テンプレートエリア52(例えば逸脱発生報告書の第1ブロック60)へ情報入力し、また経路入力エリア44における回覧経路を適宜変更する。
【0032】
例えば、回覧文書を設定するユーザは、テンプレートの経路入力エリア44における実施者フィールドを編集して、任意のユーザもしくはユーザのグループを指定することができる。テンプレートでは実施者を抽象化した役割が規定されることにより、テンプレートの再利用が容易になる。具体例として、逸脱発生報告書のテンプレートをAさんが作成した後、そのテンプレートの役割「発見者」に対応する実施者としてAさん本人を設定した逸脱発生報告書を作成したとする。その後、Bさんはそのテンプレートを再利用して、当該テンプレートの役割「発見者」に対応する実施者としてBさんを設定した別の逸脱発生報告書を作成して回覧を開始させることができる。
【0033】
図5は、テンプレート保持部24の格納データの構成を示すER図である。本明細書のER図では、上段にキー項目を示し、下段に非キー項目を示している。テンプレート情報テーブル80およびテンプレート経路テーブル82には、テンプレート設定画面40およびテンプレート詳細設定画面50への入力情報が記録される。1つのテンプレートについて、テンプレート情報テーブル80のエンティティは1つ設定される一方、テンプレート経路テーブル82のエンティティは経路の数だけ複数設定される。また、テンプレート情報テーブル80のテンプレート内容フィールドには、テンプレートの内容を示すXML文書(以下、「テンプレートXMLデータ」とも呼ぶ。)が格納される。
【0034】
例えば、テンプレート情報テーブル80では、複数種類のテンプレートのそれぞれに対応するレコードとして、テンプレートIDと、テンプレート名(例えば「逸脱発生報告書のテンプレート」、「逸脱対応完了報告書のテンプレート」、「変更申請書」等)と、テンプレート内容(すなわちテンプレートXMLデータ)とが対応付けて保持される。
【0035】
図6は、テンプレートXMLデータの構成を示す。同図の第1ブロック90には図4の第1ブロック60、第2ブロック92には図4の第2ブロック62、第3ブロック94には、図4の第3ブロック64に配置されたウェブコントロールのデータが、itemタグのデータとして記録されている。例えば、各ウェブコントロールの種類はtype属性96において記録されており、各ウェブコントロールに対して設定された役割はrole属性98において記録されている。
【0036】
図7は、ワークフロー情報保持部26の格納データの構成を示すER図である。ワークフロー情報テーブル100、アクティビティ情報テーブル102、アクティビティメンバテーブル104、および文書内容テーブル106には、テンプレートにおける設定情報および回覧文書設定画面への入力情報が記録される。なお、図5のテンプレート経路テーブル82のエンティティのうち、回覧文書作成時に指定されたテンプレートのエンティティに対応するデータが、図7のアクティビティ情報テーブル102およびアクティビティメンバテーブル104に記録される。
【0037】
ワークフロー情報テーブル100のエンティティは、1つの回覧文書あたり1つ設定される。その現在経路番号フィールドには現在時点で処理されるべきアクティビティを示す経路番号が記録される。またワークフローステータスフィールドにはワークフロー全体が終了したか否かを示すデータが記録される。アクティビティ情報テーブル102のエンティティは、回覧文書のアクティビティ数、すなわち経路の数だけ複数設定される。その経路番号フィールドには、アクティビティの実行順序を示す経路番号が記録される。また、アクティビティステータスフィールドにはアクティビティが終了したか否かを示すデータが記録される。
【0038】
アクティビティメンバテーブル104のエンティティは、回覧文書の1つのアクティビティについて、そのアクティビティを実施可能なメンバに対応する1以上のエンティティを格納する。文書内容テーブル106のエンティティは、1つの回覧文書あたり1つ設定され、その申請文書内容フィールドには回覧文書の内容を示すXML文書(以下、「回覧文書XMLデータ」とも呼ぶ。)が格納される。
【0039】
図8は、回覧文書XMLデータの構成を示す。同図の回覧文書XMLデータは、図4のテンプレートを使用した逸脱発生報告書のデータを示している。図8のテンプレートブロック110には、図6の<template>〜</template>のデータが記録される。またデータブロック112には、テンプレートブロック110の各itemに対応するウェブコントロールへの入力情報が記録される。例えば図8の例では、図4の製品名フィールド(id=“6”)に、「XXXYYYZZZZ」が入力されたことを示している。
【0040】
図2に戻り、ワークフロー制御部32は、ワークフロー情報保持部26に対して新規のエンティティが追加されたこと、言い換えれば、新規の回覧文書が登録されたことを検出すると、ワークフロー処理を開始する。そして、回覧文書作成時に指定された回覧経路にしたがって、回覧文書を確認すべき担当者を決定し、その担当者に対して文書の確認タスク(例えば、レビュータスクや評価タスク)を通知する。具体的には、ワークフロー情報保持部26を参照して、現在アクティビティ番号で指定されたアクティビティを処理すべきメンバ(例えば社員Bや社員C)を、回覧文書を閲覧すべきメンバとして特定する。そして、そのメンバの社員端末12宛に、回覧文書の位置を示すURLを記載した電子メールを送信する。
【0041】
文書表示制御部34は、回覧文書の位置を示すURLを指定した回覧文書の表示要求を受け付けると、そのURLで特定される回覧文書のデータ、すなわち回覧文書XMLデータをワークフロー情報保持部26から取得する。文書表示制御部34は、回覧文書XMLデータにしたがって、回覧文書を確認および編集させるためのウェブページ(以下、「回覧文書確認画面」とも呼ぶ。)のデータを設定する。具体的には、回覧文書XMLデータに設定された各itemタグのtype属性に対応するHTMLエレメントを、回覧文書確認画面のデータとして設定する。
【0042】
また、文書表示制御部34は、回覧文書の表示要求元であるユーザの役割を識別する。例えば、ワークフロー制御部32が文書の閲覧タスクをユーザへ通知する際に、回覧文書の位置を示すURLのパラメータとしてそのユーザの役割を設定しておき、文書表示制御部34はそのURLにしたがって表示要求元のユーザの役割を識別してもよい。また、文書表示制御部34は、表示要求元のユーザの端末からそのユーザのIDを別途取得し、ユーザ情報保持部22を参照してそのIDと対応づけられた役割を特定してもよい。
【0043】
そして文書表示制御部34は、回覧文書の表示要求元であるユーザの役割とは異なる役割のユーザにより編集されるべきHTMLエレメントを、編集が禁止された状態に設定する。例えば、HTMLエレメントに対して「disabled」属性を指定することにより、ボタンを押せなくし、テキストを入力不能とし、選択ボックスを選択不能としてもよい。言い換えれば、文書表示制御部34は、回覧文書確認画面に含まれる複数のHTMLエレメントのうち、表示要求元のユーザの役割で編集可能に設定されたウェブコントロールに対応するHTMLエレメントのみを編集可能な状態に設定する。文書表示制御部34は、回覧文書確認画面のデータを、回覧文書の表示要求元の社員端末12へ送信して表示させる。
【0044】
図9は、回覧文書確認画面を模式的に示し、逸脱管理責任者である社員Bの社員B端末12bにおける表示イメージを示している。同図の回覧文書確認画面120では、逸脱発生報告書における第1ブロック60および第3ブロック64が編集不可能な状態で表示される。したがって、逸脱管理責任者である社員Bは、発見者である社員Aにより編集されるべき第1ブロック60や、承認者である社員Cにより編集されるべき第3ブロック64を編集することはできない。社員Bは、社員Aにより編集された第1ブロック60の情報を確認しつつ、自身が編集責任を負う第2ブロック62に対して情報を入力する。そして、逸脱発生報告書を承認する場合は承認ボタン122、社員Aへ差し戻す場合は差し戻しボタン124、逸脱発生報告書を却下する場合は却下ボタン126の押下操作(これらの操作を以下、「許否操作」とも呼ぶ。)を行う。
【0045】
入力情報取得部36は、回覧文書確認画面に対するユーザの入力情報を社員端末12から取得して、その入力情報を回覧文書XMLデータのデータブロック112へ設定することにより回覧文書を更新する。言い換えれば、閲覧者による回覧文書への追記情報を、回覧文書へ反映させる。入力情報取得部36は署名実行部38を含む。
【0046】
署名実行部38は、回覧文書確認画面において許否操作が行われた場合、許否操作者の本人確認情報としてのユーザIDおよびパスワードの入力画面(以下、「本人情報入力画面」とも呼ぶ。)を回覧文書確認画面上にポップアップ表示させる。そして、本人情報入力画面に入力されたユーザIDおよびパスワードを取得する。署名実行部38は、本人情報入力画面に入力されたユーザIDが、アクティビティメンバテーブル104のアクティビティメンバIDと整合し、かつ、ユーザIDとパスワードの組み合わせがユーザ情報保持部22に保持されている場合、許否操作者の本人確認に成功したと判定する。その一方で、入力されたユーザIDが、アクティビティメンバテーブル104のアクティビティメンバIDと不整合、または、ユーザIDとパスワードの組み合わせがユーザ情報保持部22に保持されていない場合、許否操作者の本人確認に失敗したと判定する。
【0047】
許否操作者の本人確認に成功した場合、署名実行部38は、許否操作者による署名情報として、許否操作者名および操作日時を記録する。署名実行部38は、本人確認入力画面に入力されたユーザIDをキーとしてユーザ情報保持部22から許否操作者名を取得してもよい。
【0048】
本実施の形態では、許否操作者が逸脱管理責任者の場合、許否操作者名を、逸脱発生報告書の第2ブロック62における署名者表示ラベル68のデータとして記録する。言い換えれば、回覧文書XMLデータのデータブロック112における<item id=17>のデータとして記録する。また操作日時を、逸脱発生報告書の第2ブロック62における署名日表示ラベル70のデータとして記録する。言い換えれば、回覧文書XMLデータのデータブロック112における<item id=18>のデータとして記録する。
【0049】
変形例として署名実行部38は、許否操作者名および操作日時を回覧文書XMLデータにおける表示対象外の部分、例えば所定のメタ情報格納領域に記録してもよい。また、回覧文書XMLデータとは別の所定の記録領域(データベース等)に記録してもよい。なお、入力情報取得部36は、回覧文書XMLデータの更新を、署名実行部38による許否操作者の本人確認が成功したことを条件として実行する。
【0050】
以上の構成による動作を以下説明する。
図10は、図1の文書管理装置14の動作を示すフローチャートである。テンプレートの作成要求を社員A端末12aから受け付けると(S10のY)、文書作成支援部28は、テンプレート設定画面を社員A端末12aに表示させる(S12)。テンプレートの登録要求を社員A端末12aから受け付けると、記録部30は、テンプレート設定画面への入力情報にしたがって、テンプレートに設定されたウェブコントロール、言い換えれば情報入力項目のそれぞれをテンプレートXMLデータへ記録する。それとともに文書作成支援部28は、ウェブコントロールのそれぞれと、編集権限を有するユーザを示す役割との対応関係をテンプレートXMLデータへさらに記録する(S14)。テンプレートの作成要求を受け付けなければ(S10のN)、S12およびS14はスキップされる。
【0051】
特定のテンプレートを指定した回覧文書の作成要求を社員A端末12aから受け付けると(S16のY)、文書作成支援部28は、そのテンプレートの内容を含む回覧文書設定画面を社員A端末12aに表示させる(S18)。社員Aは、回覧文書設定画面に対して、回覧期限等の設定や、経路の変更、および発見者の入力領域(例えば、逸脱発生報告書における第1ブロック60)に対する情報入力を行う。
【0052】
回覧文書の登録要求を社員A端末12aから受け付けると(S20のY)、記録部30は、テンプレートのデータおよび回覧文書設定画面への入力情報にしたがって、回覧文書XMLデータを記録する(S22)。図4のテンプレートに基づいて設定された(第1ブロック60が設定された)回覧文書の場合、記録部30は、第1ブロック60の申請日表示ラベル66のデータとして回覧文書の登録日を記録し、第1ブロック60の署名者表示ラベル68のデータとして回覧文書の登録者(すなわち社員A)を記録する。以降、ワークフロー処理を実行する(S24)。回覧文書の登録要求が受け付けられなければ(S20のN)、S22およびS24はスキップされ、回覧文書の作成要求が受け付けられなければ(S16のN)、S18以降はスキップされる。
【0053】
図11は、図10のS24のワークフロー処理を詳細に示すフローチャートである。ワークフロー制御部32は、ワークフロー情報保持部26に格納された現在経路番号を参照して、その経路番号のアクティビティの実施者(社員Bや社員Cの端末)へ文書閲覧のタスクを通知する(S30)。回覧文書の表示要求がアクティビティ実施者から受け付けられると(S32のY)、文書表示制御部34は、回覧文書確認画面の情報項目のうち、アクティビティ実施者の役割では編集が許可されていない情報項目を、編集が無効な状態に設定する(S34)。そして、その設定後の回覧文書確認画面をアクティビティ実施者の端末へ表示させる(S36)。
【0054】
回覧文書確認画面において回覧文書の承認操作が行われた場合(S38のY)、署名実行部38は、アクティビティ実施者の端末へ本人情報入力画面を表示させて、ユーザIDおよびパスワードを入力させる(S40)。そして、入力されたユーザIDおよびパスワードにより、承認操作者が予め定められたアクティビティ実施者と整合する場合、署名実行部38は、承認操作者の本人確認が成功したと判定する。入力情報取得部36は、承認操作者の本人確認が成功した場合(S42のY)、回覧文書確認画面への入力データを回覧文書XMLデータへ反映させる(S44)。そして、入力情報取得部36は、アクティビティステータスが完了した旨をワークフロー情報保持部26へ記録するとともに、現在アクティビティ番号を更新する。
【0055】
少なくとも1つのアクティビティが未完了である場合(S46のN)、S30へ戻り、ワークフロー制御部32は次のアクティビティの実施者へ文書閲覧タスクを通知する。全アクティビティが完了した場合(S46のY)、ワークフロー制御部32は、ワークフローステータスを完了として本図のフローを終了する。この結果、社員A、社員B、社員Cのそれぞれが、各担当部分に対して情報入力した文書が完成したことになる。
【0056】
本人確認が失敗した場合(S42のN)、署名実行部38はその旨を示すエラー通知を承認操作者の端末へ通知し(S48)、入力情報取得部36は回覧文書XMLデータの更新を拒否する。回覧文書の承認操作が受け付けられなければ(S38のN)、S40〜S48はスキップされる。回覧文書の表示要求が受け付けられなければ(S32のN)、S34以降はスキップされる。なお、図11では、回覧文書に対する許否操作のうち承認操作のみを示したが、差し戻し操作および却下操作の場合も同様に操作者の本人確認が成功した場合に限り、回覧文書の差し戻しおよび却下のための所定処理が実行される。
【0057】
本実施の形態の文書管理装置14によれば、複数の情報項目を含み複数の担当者間で回覧させるべき1つの電子化文書において、情報項目ごとに編集権限を有する担当者を記録し、ある担当者に電子化文書を提示する際にはその担当者が編集権限を有する情報項目のみを編集可能な状態で提示する。これにより、1つの電子化文書の回覧における改ざんや誤った変更の発生を防止し、複数の担当者が各担当部分を作成して1つの文書を作成するワークフローを実現できる。また、回覧文書に対して許否操作がなされた際には、その操作者が正しい実施者か否かを確認した上で回覧文書に署名を記録する。これにより、不正な第三者による許否操作を防止するとともに、文書回覧のプロセスが実行されたことの証跡を残すことができる。
【0058】
また文書管理装置14によれば、回覧文書の情報項目と、その情報項目の編集権限を有する役割との対応関係が、XML形式の文書で記述されて管理DB20に格納される。これにより、ユーザは、管理DB20に格納されたXMLデータをXMLファイルとして取得でき、例えば自身の端末へダウンロードすることができる。CSS(Cascading Style Sheets)等のスタイルシートがXMLファイルと一緒に提供され、もしくはユーザの端末側に予め用意されることにより、上記の対応関係(すなわちXMLデータ)を任意の表示態様(見た目)で表示させることができる。また本実施の形態では、回覧文書のデータが、上記の対応関係および情報項目への設定内容が集約された1つのXMLファイルとして管理DB20に格納される。これにより、所定の情報項目に対する編集権限を有する役割と、その情報項目に対して実際に設定された内容とを適宜組み合わせて任意の態様で表示させることを容易に実現できる。すなわち、回覧文書に対する編集者とその編集内容をユーザに容易に確認させることができる。
【0059】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0060】
請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0061】
10 情報システム、 14 文書管理装置、 20 管理DB、 22 ユーザ情報保持部、 24 テンプレート保持部、 26 ワークフロー情報保持部、 28 文書作成支援部、 30 記録部、 32 ワークフロー制御部、 34 文書表示制御部、 36 入力情報取得部、 38 署名実行部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の情報項目を含み複数の担当者間で回覧させるべき1つの回覧文書を作成するための画面であって、情報項目ごとに前記複数の担当者のうち編集権限を有する担当者をユーザに指定させる文書作成画面を表示させる文書作成支援部と、
前記文書作成画面に対するユーザの入力情報にしたがって、前記複数の情報項目のそれぞれと前記編集権限を有する担当者との対応関係を記録する記録部と、
前記文書作成画面において作成された1つの回覧文書を閲覧すべき担当者を、前記複数の担当者の中から順次決定するワークフロー制御部と、
前記閲覧すべき担当者の端末において前記1つの回覧文書を表示させ、その際、前記対応関係にしたがって、前記複数の情報項目のうちその担当者が編集権限を有しない情報項目を編集が制限された状態で表示させる文書表示制御部と、
を備えることを特徴とする文書管理装置。
【請求項2】
前記文書作成支援部は、前記1つの回覧文書の回覧経路をユーザに指定させるための画面を表示させ、その回覧経路で指定された複数の担当者を、各情報項目の編集権限を有する担当者の候補として前記文書作成画面においてユーザによる選択が可能な状態で表示させ、
前記ワークフロー制御部は、前記回覧経路にしたがって前記1つの回覧文書を閲覧すべき担当者を順次決定することを特徴とする請求項1に記載の文書管理装置。
【請求項3】
署名実行部をさらに備え、
前記文書作成支援部は、前記1つの回覧文書の回覧経路をユーザに指定させるための画面を表示させ、
前記ワークフロー制御部は、前記回覧経路にしたがって前記1つの回覧文書を閲覧すべき担当者を順次決定し、
前記署名実行部は、ある担当者の端末において前記1つの回覧文書の内容を承認するための所定操作が実行された際、その担当者の本人確認をするための情報の入力画面を表示させ、前記本人確認をするための情報に基づいてその担当者が前記閲覧すべき担当者と整合すると判定される場合、その担当者による署名を示す情報を前記1つの回覧文書における所定領域に記録することを特徴とする請求項1に記載の文書管理装置。
【請求項4】
複数の情報項目を含み複数の担当者に編集させるべき1つの文書を作成するための画面であって、情報項目ごとに前記複数の担当者のうち編集権限を有する担当者をユーザに指定させる文書作成画面を表示させる文書作成支援部と、
前記文書作成画面に対するユーザの入力情報にしたがって、前記複数の情報項目のそれぞれと前記編集権限を有する担当者との対応関係を記録する記録部と、
前記文書作成画面において作成された1つの文書を各担当者の端末で表示させ、ある担当者の端末で表示させる場合、前記対応関係にしたがって、前記複数の情報項目のうちその担当者が編集権限を有しない情報項目を編集が制限された状態で表示させる文書表示制御部と、
を備えることを特徴とする文書管理装置。
【請求項5】
複数の情報項目を含み複数の担当者間で回覧させるべき1つの回覧文書を作成するための画面であって、情報項目ごとに前記複数の担当者のうち編集権限を有する担当者をユーザに指定させる文書作成画面を表示させる機能と、
前記文書作成画面に対するユーザの入力情報にしたがって、前記複数の情報項目のそれぞれと前記編集権限を有する担当者との対応関係を記録する機能と、
前記文書作成画面において作成された1つの回覧文書を閲覧すべき担当者を、前記複数の担当者の中から順次決定する機能と、
前記閲覧すべき担当者の端末において前記1つの回覧文書を表示させ、その際、前記対応関係にしたがって、前記複数の情報項目のうちその担当者が編集権限を有しない情報項目を編集が制限された状態で表示させる機能と、
をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−133664(P2012−133664A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286410(P2010−286410)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年8月30日 http://www.nri.co.jp/news/2010/100830.html
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)