説明

斜張吊り架構の斜材架設構造及びその斜材架設工法

【課題】支間長の長大化を図ることを可能とした斜材架設工法を提供する。
【解決手段】左右の橋脚間に跨る主桁2を、複数の橋桁ブロック10による張出し工法により、各橋脚1上に立設した主塔2から、径間の閉合部21に向けて段階的に連設して構築するとともに、各々の橋桁ブロック10を、各主塔2から左右に延びる斜材4により吊支してなる斜張吊り架構の斜材架設工法において、径間の閉合部21における左右の斜材4の一部を、互いに隣設する主桁2上で交叉させて定着することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば斜張橋やエクストラドーズド橋などにおける斜張吊り架構の斜材架設構造及びその斜材架設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば斜張橋においては、図5に示すように、左右の橋脚31,31間に跨る主桁32を、各橋脚31,31上に立設した互いに対峙する主塔33,33から、径間のほぼ中央部に向けて左右に延びる複数本の斜材(以下、斜張ケーブルという)34により吊支してなる構成を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平1−3121108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の斜張橋にあっては、図6に示すように、主桁32に、斜張ケーブル34の張力Pcと主桁32の自重Wとにより、大きな圧縮力Pxが主塔33の基部に向けて働いている。この圧縮力Pxは、主桁32が長くなるほど増大し、主塔33の基部に作用することから、主塔33の破損を招くばかりでなく、橋脚31,31間における支間長Lの距離が、約300〜400mの範囲に限界があり、支間長Lの長大化を妨げている。
【0004】
また、その対策としては、主塔33の耐力を増大させることが考えられるが、これにより、構築費が大幅に高騰するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、支間長の長大化を図ることを可能とした斜張吊り架構の斜材架設構造及びその斜材架設工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を有利に解決するために、第1の発明では、左右の橋脚間に跨る主桁を、各橋脚上に立設した主塔から、径間の閉合部に向けて左右に延びる複数本の斜材により吊支する斜張吊り架構の斜材架設構造において、径間の閉合部における左右の斜材の一部を、互いに隣設する主桁上で交叉させて定着したことを特徴とする。
【0007】
第2の発明では、左右の橋脚間に跨る主桁を、複数の橋桁ブロックによる張出し工法により、各橋脚上に立設した主塔から、径間の閉合部に向けて段階的に連設して構築するとともに、各々の橋桁ブロックを、各主塔から左右に延びる斜材により吊支してなる斜張吊り架構の斜材架設工法において、径間の閉合部における左右の斜材の一部を、互いに隣設する主桁上で交叉させて定着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、径間のほぼ中央部における左右の斜材の一部を、互いに隣設する主桁上で交叉させて定着してなることから、主塔3の基部に働く圧縮力を低減させることができ、例えば、従来の300〜400mの支間長の距離を、500m以上に延ばせるような長大化を図ることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、斜張吊り架構の斜材架設構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る斜張吊り架構としての斜張橋における斜材架設構造の一実施形態を概略的に示す正面図、図2は、同じく斜張橋の斜材架設工程を示す説明図、図3は、図1のA部における主桁への斜材の定着状態を拡大して示す縦断面図である。なお、本実施形態において、図5に示す従来構造と構成が重複する部分は、同一符号を用いて説明する。
【0011】
本実施形態における斜張橋は、図1に示すように、左右の橋脚1,1間に跨る主桁2を、各橋脚1,1上に立設した互いに対峙する主塔3,3から、径間のほぼ中央部に向けて(径間の閉合部21に向けて)左右に延びる複数本の斜張ケーブル4により吊支してなる構成を有する。
【0012】
前記斜張橋は、図2(a)〜(d)に示すように、左右の橋脚1,1間に跨る主桁2,2を、複数の橋桁ブロック10による張出し工法により、各橋脚1,1上に立設した互いに対峙する主塔3,3から、径間のほぼ中央部に向けて段階的に連設して閉合部21を形成するようにしている。また、各々の橋桁ブロック10を、各主塔3,3から左右内側に延びる斜張ケーブル4,4により吊支してなるとともに、径間のほぼ中央部において互いに隣接する複数の橋桁ブロック10,10にそれぞれ定着される左右の斜張ケーブル4,4を、主桁2,2上で交叉させて、図3に示すように、定着装置5,5にて定着し、左右の斜張ケーブル4,4が左右対称となるように架設することにより構築している。この場合、各主塔3,3から外側に延びる終端側の斜張ケーブル4,4は、アンカレイジ部6,6により定着されるようになっている。
【0013】
上記の構成によれば、径間のほぼ中央部における左右の斜張ケーブル4,4を、互いに隣設する主桁3,3上で交叉させて定着しているため、図4に示すように、一方の斜張ケーブル4の張力Pc1と主桁2の自重Wとによる圧縮力Px1と、他方の斜張ケーブル4の張力Pc2と主桁2の自重Wとによる圧縮力Px2とが互いに打ち消し合い、各々の主塔3の基部に働く圧縮力が低減し、支間長Lの長大化が図れる。
【0014】
なお、上記の実施形態においては、主桁3,3から延びる左右の斜張ケーブル4,4を、左右対称となるように架設したが、左右非対称であってもよく、また、複数の径間にも適用することも可能である。
【0015】
また、上記の実施形態においては、径間のほぼ中央部に向けて左右に延びる複数本の斜張ケーブル4により吊支してなる斜張橋を例に挙げて説明をしたが、かかる構成に限定されるものではない。例えば図5に示すように、互いに高さの異なる主塔3,3から、径間の閉合部21に向けて左右に延びる複数本の斜張ケーブル4により吊支してなる斜張橋に対しても同様に適用することができる。かかる場合において、この閉合部21は、主塔の高さの差によって必ずしも径間のほぼ中央部に位置するとは限らず、また左右非対称となる場合もあるが、同様の作用効果を得ることができることは勿論である。
【0016】
なお、この径間の閉合部21は、径間のほぼ中央部に位置し、左右対称となる場合も同様の意味として用いることができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る斜張吊り架構としての斜張橋における斜材架設構造の一実施形態を概略的に示す正面図である。
【図2】同じく斜張橋の張出し工法を示す説明図である。
【図3】図1のA部における斜材の定着状態を示す拡大断面である
【図4】主桁への圧縮力の作用状態を示す説明図である。
【図5】互いに高さの異なる主塔から、径間の閉合部に向けて左右に延びる複数本の斜張ケーブルにより吊支してなる斜張橋への適用例を示す図である。
【図6】従来の斜張橋における斜材架設構造の一実施形態を概略的に示す正面図である。
【図7】同じく主桁への圧縮力の作用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1 橋脚
2 主桁
3 主塔
4 斜張ケーブル(斜材)
5 定着装置
6 アンカレイジ部
10 橋桁ブロック
21 閉合部
L 支間長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の橋脚間に跨る主桁を、各橋脚上に立設した主塔から、径間の閉合部に向けて左右に延びる複数本の斜材により吊支する斜張吊り架構の斜材架設構造において、
径間の閉合部における左右の斜材の一部を、互いに隣設する主桁上で交叉させて定着したこと
を特徴とする斜張吊り架構の斜材架設構造。
【請求項2】
左右の橋脚間に跨る主桁を、複数の橋桁ブロックによる張出し工法により、各橋脚上に立設した主塔から、径間の閉合部に向けて段階的に連設して構築するとともに、各々の橋桁ブロックを、各主塔から左右に延びる斜材により吊支してなる斜張吊り架構の斜材架設工法において、
径間の閉合部における左右の斜材の一部を、互いに隣設する主桁上で交叉させて定着すること
を特徴とする斜張吊り架構の斜材架設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−262796(P2007−262796A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91324(P2006−91324)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000103769)オリエンタル建設株式会社 (136)
【Fターム(参考)】