説明

斜行台車設備の荷重検出装置

【課題】斜行台車の走行位置に応じた演算補正を不要として現場調整を容易に行えると共に、作業員を含む被搬送物の荷重Wを正確に把握し得、精度向上並びに信頼性向上を図り得る斜行台車設備の荷重検出装置を提供する。
【解決手段】索体4と斜行台車2の牽引支持点との間に荷重検出センサ18を設けると共に、前記索体4とケーブルキャリヤとの間に、該ケーブルキャリヤに作用する給電・信号ケーブル7の荷重を支持する給電・信号ケーブル荷重支持部材17を介装し、前記索体4に対し前記荷重検出センサ18と給電・信号ケーブル荷重支持部材17とが並列接続されるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜行台車設備の荷重検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発電設備や各種プラントにおいては、高さの高い機器の上部に作業員並びに点検機器や資材等の被搬送物を搬送するために斜行台車設備が用いられている。
【0003】
図4は斜行台車設備の一例を示す全体概要構成図であって、該斜行台車設備は、傾斜配設される走行レール1に、被搬送物を搭載可能な斜行台車2を走行自在に設け、該斜行台車2を、走行駆動手段3の索体4による牽引動作により前記走行レール1に沿って走行させるよう構成すると共に、前記走行レール1に沿ってケーブルキャリヤレール5を傾斜配設し、該ケーブルキャリヤレール5に沿ってスライド自在なケーブルキャリヤ6により、前記斜行台車2に電気及び信号を供給する給電・信号ケーブル7を懸吊支持せしめるよう構成してある。
【0004】
前記走行駆動手段3は、図4及び図5に示される如く、地上に設置したモータ8によって回転駆動されるドラム9から繰り出されるワイヤロープ等の索体4を、前記走行レール1の上端部に配設した頭部転向シーブ10と、前記斜行台車2の底部に配設した底部シーブ11とに順次掛け回し、前記索体4の端部を前記斜行台車2の後端部に取り付けたイコライザビーム12に連結してなる構成を有しており、前記索体4をモータ8によって回転駆動されるドラム9に巻き取ることにより、前記斜行台車2を走行レール1に沿って上昇させる方向へ牽引走行させる一方、前記索体4をモータ8によって回転駆動されるドラム9から繰り出すことにより、前記斜行台車2を走行レール1に沿って下降させる方向へ走行させるようにしてある。
【0005】
尚、図5中、13は前記走行レール1上を転動自在となるよう前記斜行台車2に取り付けられた走行車輪、14は該走行車輪13の走行レール1からの浮き上がりを防止するよう前記斜行台車2に取り付けられた浮上防止ローラである。
【0006】
又、前記索体4は、図6に示される如く、二系統設けられているが、前記斜行台車2の後部における幅方向中心部に対しイコライザビーム12を、前記索体4の延長方向と直交する方向の軸15を中心として揺動自在となるよう取り付け、該イコライザビーム12の両幅端部に前記二系統の索体4を連結してあり、これにより、万一、前記二系統の索体4に長さの差が発生したような場合であっても、前記イコライザビーム12が軸15を中心として揺動することにより、前記二系統の索体4に長さの差を吸収しつつ、牽引力が斜行台車2の後部における幅方向中心部に伝達されるようにしてある。
【0007】
更に又、前記ケーブルキャリヤ6は、図4に示される如く、ケーブルキャリヤレール5に対し多数組み付けられ、給電・信号ケーブル7をその長手方向へ所要ピッチで支持するようになっているが、前記多数のケーブルキャリヤ6のうち最も斜行台車2寄りに位置するケーブルキャリヤ6と、斜行台車2の後端部所要箇所に固定したブラケット16とを、ワイヤロープ等の給電・信号ケーブル荷重支持部材17によって連結することにより、前記斜行台車2の上昇に伴って連動する形で引き上げられる給電・信号ケーブル7の荷重を斜行台車2によって支持するようにしてある。
【0008】
一方、前記頭部転向シーブ10の支持部には、ロードセル等の荷重検出センサ18を取り付けてあり、該荷重検出センサ18で検出した検出値に基づいて作業員を含む被搬送物の荷重を求め、該作業員を含む被搬送物の荷重が制限値を超えないよう監視を行っている。
【0009】
因みに、前記荷重検出センサ18の検出値をLとし、作業員を含む被搬送物の荷重をW、斜行台車2の荷重をF、ケーブルキャリヤ6に懸吊支持された給電・信号ケーブル7の荷重をF´とした場合、
[数1]
L=W+F+F´
となるため、前記作業員を含む被搬送物の荷重Wは、
[数2]
W=L−F−F´
として求められる。
【0010】
ここで、前記斜行台車2の荷重Fは既知の値であるため、前記ケーブルキャリヤ6に懸吊支持された給電・信号ケーブル7の荷重F´が斜行台車2の走行位置に比例する形で直線状に増減すると仮定すれば、前記索体4のドラム9からの繰り出し量に基づいて前記斜行台車2の走行位置を割り出すことにより、前記ケーブルキャリヤ6に懸吊支持された給電・信号ケーブル7の荷重F´も演算可能となり、[数2]の式から前記作業員を含む被搬送物の荷重Wを求め、該荷重Wが制限値を超えた場合には、警報を発して作業員に異常を知らせると共に、斜行台車2を停止させることが可能となる。
【0011】
尚、前述の如き斜行台車設備と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−219214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、実際には、前記ケーブルキャリヤ6に懸吊支持された給電・信号ケーブル7の荷重F´は、斜行台車2の走行位置に比例する形で直線状に増減しないため、斜行台車2の走行位置に応じて演算補正が必要となり、その設定が難しく現場調整に時間がかかると共に、前記作業員を含む被搬送物の荷重Wを正確に把握することが困難となっていた。
【0014】
本発明は、斯かる実情に鑑み、斜行台車の走行位置に応じた演算補正を不要として現場調整を容易に行えると共に、作業員を含む被搬送物の荷重を正確に把握し得、精度向上並びに信頼性向上を図り得る斜行台車設備の荷重検出装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、傾斜配設される走行レールと、
該走行レールに沿って走行自在で且つ被搬送物を搭載可能な斜行台車と、
該斜行台車を索体による牽引動作により前記走行レールに沿って走行させる走行駆動手段と、
前記走行レールに沿って傾斜配設されるケーブルキャリヤレールと、
該ケーブルキャリヤレールに沿ってスライド自在なケーブルキャリヤにより懸吊支持され且つ前記斜行台車に電気及び信号を供給する給電・信号ケーブルと
を備えた斜行台車設備の荷重検出装置であって、
前記索体と斜行台車の牽引支持点との間に荷重検出センサを設けると共に、前記索体とケーブルキャリヤとの間に、該ケーブルキャリヤに作用する給電・信号ケーブルの荷重を支持する給電・信号ケーブル荷重支持部材を介装し、前記索体に対し前記荷重検出センサと給電・信号ケーブル荷重支持部材とが並列接続されるよう構成したことを特徴とする斜行台車設備の荷重検出装置にかかるものである。
【0016】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0017】
前述の如く索体と斜行台車の牽引支持点との間に荷重検出センサを設けると共に、前記索体とケーブルキャリヤとの間に、該ケーブルキャリヤに作用する給電・信号ケーブルの荷重を支持する給電・信号ケーブル荷重支持部材を介装し、前記索体に対し前記荷重検出センサと給電・信号ケーブル荷重支持部材とが並列接続されるよう構成すると、従来の場合と同様、前記走行駆動手段の索体による牽引動作により、前記斜行台車を走行レールに沿って上昇させる方向へ牽引走行させつつ、前記ケーブルキャリヤに懸吊支持された給電・信号ケーブルをケーブルキャリヤレールに沿って引き上げる方向へスライドさせることが可能となる一方、前記斜行台車を走行レールに沿って下降させる方向へ走行させつつ、前記ケーブルキャリヤに懸吊支持された給電・信号ケーブルをケーブルキャリヤレールに沿って引き下げる方向へスライドさせることが可能となる。
【0018】
しかも、前記荷重検出センサにおいては、作業員を含む被搬送物の荷重と、既知の値である斜行台車の荷重との和が検出値として検出され、前記ケーブルキャリヤに懸吊支持された給電・信号ケーブルの荷重は全く検出せずに無視できるため、前記作業員を含む被搬送物の荷重が容易に求められ、該荷重が制限値を超えた場合には、警報を発して作業員に異常を知らせると共に、斜行台車を停止させることが可能となる。
【0019】
この結果、実際には、前記ケーブルキャリヤに懸吊支持された給電・信号ケーブルの荷重が、斜行台車の走行位置に比例する形で直線状に増減しないとしても、斜行台車の走行位置に応じて演算補正を行う必要がなくなり、現場調整に時間がかからなくなると共に、前記作業員を含む被搬送物の荷重を正確に把握することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の斜行台車設備の荷重検出装置によれば、斜行台車の走行位置に応じた演算補正を不要として現場調整を容易に行えると共に、作業員を含む被搬送物の荷重を正確に把握し得、精度向上並びに信頼性向上を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の斜行台車設備の荷重検出装置の実施例を示す側面図である。
【図2】本発明の斜行台車設備の荷重検出装置の実施例を示す平面図であって、図1のII−II矢視相当図である。
【図3】本発明の斜行台車設備の荷重検出装置の実施例におけるイコライザビームを示す後面図であって、図1のIII−III矢視相当図である。
【図4】斜行台車設備の一例を示す全体概要構成図である。
【図5】従来の斜行台車設備の荷重検出装置の一例を示す側面図である。
【図6】従来の斜行台車設備の荷重検出装置の一例を示す平面図であって、図5のVI−VI矢視相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1〜図3は本発明の斜行台車設備の荷重検出装置の実施例であって、図中、図4〜図6と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図4〜図6に示す従来のものと同様であるが、本実施例の特徴とするところは、図1〜図3に示す如く、索体4と斜行台車2の牽引支持点との間に荷重検出センサ18を設けると共に、前記索体4とケーブルキャリヤ6(図4参照)との間に、該ケーブルキャリヤ6に作用する給電・信号ケーブル7の荷重を支持する給電・信号ケーブル荷重支持部材17を介装し、前記索体4に対し前記荷重検出センサ18と給電・信号ケーブル荷重支持部材17とが並列接続されるよう構成した点にある。
【0024】
本実施例の場合、前記斜行台車2の牽引支持点は、図2に示す如く、軸15が設けられた箇所となっており、該牽引支持点としての軸15に対し、イコライザビーム12を介して前記荷重検出センサ18(例えば、ロードセル)と索体4とを接続してある。
【0025】
又、前記給電・信号ケーブル荷重支持部材17は、二系統の索体4の荷重検出センサ18接続部より底部シーブ11側の所要箇所に掛け渡す如く連結ビーム17aを取り付け、該連結ビーム17aに一端が接続されたワイヤロープ17bを、前記イコライザビーム12の貫通孔12a(図2及び図3参照)に通し、前記斜行台車2の後端部に配設した後端部シーブ17cに掛け回し、前記ワイヤロープ17bの他端を前記ケーブルキャリヤ6に連結してなる構成を有している。
【0026】
尚、前記荷重検出センサ18は、図1及び図2に示す如く、イコライザビーム12、連結ビーム17a、及び後端部シーブ17cに掛け回す手前のワイヤロープ17bに対し同一平面内に収まるように配設してある。
【0027】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0028】
前述の如く索体4と斜行台車2の牽引支持点との間に荷重検出センサ18を設けると共に、前記索体4とケーブルキャリヤ6との間に、該ケーブルキャリヤ6に作用する給電・信号ケーブル7の荷重を支持する給電・信号ケーブル荷重支持部材17を介装し、前記索体4に対し前記荷重検出センサ18と給電・信号ケーブル荷重支持部材17とが並列接続されるよう構成すると、従来の場合と同様、前記索体4をモータ8によって回転駆動されるドラム9に巻き取れば、前記斜行台車2を走行レール1に沿って上昇させる方向へ牽引走行させつつ、前記ケーブルキャリヤ6に懸吊支持された給電・信号ケーブル7をケーブルキャリヤレール5に沿って引き上げる方向へスライドさせることが可能となる一方、前記索体4をモータ8によって回転駆動されるドラム9から繰り出せば、前記斜行台車2を走行レール1に沿って下降させる方向へ走行させつつ、前記ケーブルキャリヤ6に懸吊支持された給電・信号ケーブル7をケーブルキャリヤレール5に沿って引き下げる方向へスライドさせることが可能となる。
【0029】
しかも、前記荷重検出センサ18においては、作業員を含む被搬送物の荷重Wと、既知の値である斜行台車2の荷重Fとの和が検出値Lとして検出され、該検出値Lは、
[数3]
L=W+F
となり、前記ケーブルキャリヤ6に懸吊支持された給電・信号ケーブル7の荷重F´は全く検出せずに無視できるため、前記作業員を含む被搬送物の荷重Wは、
[数4]
W=L−F
として求められる。
【0030】
即ち、[数4]の式から前記作業員を含む被搬送物の荷重Wが容易に求められ、該荷重Wが制限値を超えた場合には、警報を発して作業員に異常を知らせると共に、斜行台車2を停止させることが可能となる。
【0031】
この結果、実際には、前記ケーブルキャリヤ6に懸吊支持された給電・信号ケーブル7の荷重F´が、斜行台車2の走行位置に比例する形で直線状に増減しないとしても、斜行台車2の走行位置に応じて演算補正を行う必要がなくなり、現場調整に時間がかからなくなると共に、前記作業員を含む被搬送物の荷重Wを正確に把握することが可能となる。
【0032】
尚、仮に、前記荷重検出センサ18が、イコライザビーム12、連結ビーム17a、及び後端部シーブ17cに掛け回す手前のワイヤロープ17bに対し同一平面内に収まるように配設されていないと、斜行台車2の牽引時に、給電・信号ケーブル荷重支持部材17のワイヤロープ17bから連結ビーム17aに加わる荷重が索体4に対しある角度を持って伝達され、該荷重が荷重検出センサ18に外乱として作用する可能性があり、その検出値Lの信頼性に悪影響を及ぼす虞があるが、本実施例において、前記荷重検出センサ18は、図1及び図2に示す如く、イコライザビーム12、連結ビーム17a、及び後端部シーブ17cに掛け回す手前のワイヤロープ17bに対し同一平面内に収まるように配設してあるため、斜行台車2の牽引時に、給電・信号ケーブル荷重支持部材17のワイヤロープ17bから連結ビーム17aに加わる荷重が索体4に対しある角度を持って伝達されることが避けられ、該荷重が荷重検出センサ18に外乱として作用することはなく、その検出値Lの信頼性に悪影響を及ぼす心配もない。
【0033】
こうして、斜行台車2の走行位置に応じた演算補正を不要として現場調整を容易に行えると共に、作業員を含む被搬送物の荷重Wを正確に把握し得、精度向上並びに信頼性向上を図り得る。
【0034】
尚、本発明の斜行台車設備の荷重検出装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 走行レール
2 斜行台車
3 走行駆動手段
4 索体
5 ケーブルキャリヤレール
6 ケーブルキャリヤ
7 給電・信号ケーブル
9 ドラム
10 頭部転向シーブ
11 底部シーブ
12 イコライザビーム
12a 貫通孔
13 走行車輪
15 軸
17 給電・信号ケーブル荷重支持部材
17a 連結ビーム
17b ワイヤロープ
17c 後端部シーブ
18 荷重検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜配設される走行レールと、
該走行レールに沿って走行自在で且つ被搬送物を搭載可能な斜行台車と、
該斜行台車を索体による牽引動作により前記走行レールに沿って走行させる走行駆動手段と、
前記走行レールに沿って傾斜配設されるケーブルキャリヤレールと、
該ケーブルキャリヤレールに沿ってスライド自在なケーブルキャリヤにより懸吊支持され且つ前記斜行台車に電気及び信号を供給する給電・信号ケーブルと
を備えた斜行台車設備の荷重検出装置であって、
前記索体と斜行台車の牽引支持点との間に荷重検出センサを設けると共に、前記索体とケーブルキャリヤとの間に、該ケーブルキャリヤに作用する給電・信号ケーブルの荷重を支持する給電・信号ケーブル荷重支持部材を介装し、前記索体に対し前記荷重検出センサと給電・信号ケーブル荷重支持部材とが並列接続されるよう構成したことを特徴とする斜行台車設備の荷重検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−116590(P2012−116590A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266702(P2010−266702)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000198363)IHI運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】