説明

斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱

【課題】保全コストを上昇させることなく、斜面落下物防護ネットに接続された上端部横主ロープの局所的な損傷や上端部横主ロープの支持手段の偏摩耗を抑えることができる斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱を提供する。
【解決手段】ヒンジ支柱のロープ支持手段110は、支柱本体10の頭部11に設置された支持基板111と、支持基板111に設置された一対のガイド側板112と、一対のガイド側板112の間に回転自在に配置された1本の浮き上がり防止ローラ113および2本の支持ローラ114とを具備し、一対のガイド側板112と1本の浮き上がり防止ローラ113と2本の支持ローラ114によって、上端部横主ロープ70の一部が包囲される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱、特に、岩石や倒木あるいは雪等(以下、まとめて「斜面落下物」と称す)の落下のおそれがある法面や沢地等に設置され、斜面落下物を受け止める斜面落下物防護ネットを支持するヒンジ支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、落石防護ネット用のヒンジ支柱は斜面に傾動自在に立設され、ヒンジ支柱の頭部において落石斜面落下物防護ネットの上端部に接続されたロープ(以下、「上端部横主ロープ」と称す)が接続されていた。そして、落石防護ネットが落石を受け止めた際、落石防護ネットは膨出して変形する(各部材が伸びる)ことによって衝撃エネルギーを吸収するため、上端部横主ロープも伸ばされ、ヒンジ支柱には落石防護ネット側(受け止めた落石の方向)に倒そうとする力が作用していた。
そうすると、ヒンジ支柱を支持するサイドロープが破断したり、ヒンジ支柱自体にかかる力が増大してヒンジ支柱自体が損傷したりするため、これを解消する目的で、上端部横主ロープを摺動自在に支持する落石防護ネット用のヒンジ支柱が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−113201号公報(第4−5頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたヒンジ支柱は、支柱本体の頂部に設けられたガイド機構とを具備するものであって、ガイド機構が凸湾曲部と、凸湾曲部の上方に配置された外れ止め部材と、凸湾曲部と外れ止め部材とを挟んで対峙する側壁部と、を有するものである。
すなわち、上端部横主ロープは凸湾曲部(または凸湾曲部と側壁部との両者)によって摺動自在に支持されている。
このため、昼夜間の温度変化や季節間の温度変化、あるいは、落石の受け止めに際しての伸縮(衝撃エネルギーを吸収した後、上端部横主ロープは元の長さに戻る)によって、上端部横主ロープの限られた範囲が局所的に凸湾曲部に擦られるため、上端部横主ロープが局所的に損傷したり、凸湾曲部が偏摩耗するという問題があった。
また、かかる損傷や偏摩耗を防止しようとすると、摺動部に潤滑材を供給する(グリスアップ)作業が生じ、落石防護ネットを含む構造物全体の維持管理が煩雑になって、保全コストが上昇するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するものであって、保全コストを上昇させることなく、上端部横主ロープの局所的な損傷や上端部横主ロープの支持手段の偏摩耗を抑えることができる斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱は、斜面落下物防護ネットの上端部が中央範囲に接続されている上端部横主ロープを移動自在に支持するものであって、
支柱本体と、
該支柱本体の頭部に設置された一対のガイド側板と、
該一対のガイド側板の間に配置され、両端が前記一対のガイド側板に回転自在に支持された支持ローラと、
該支持ローラに対向して配置された浮き上がり防止ローラと、
前記支柱本体の脚部に設置され、支柱ヒンジ孔が形成された支柱ヒンジ板と、
前記支柱本体の側部に設置され、支持ロープが係止自在な支持ロープ係止手段と
を有し、
前記上端部横主ロープの長手方向の一部が、前記支持ローラと前記浮き上がり防止ローラと前記一対のガイド側板とによって包囲された空間を通過することを特徴とする。
【0007】
(2)前記(1)において、前記一対のガイド側板によって、平面視において、中央範囲に互いに略平行な側板平行部と、該側板平行部から端部に向かって除々に互いの間隔が増大する側板拡大部とが、形成されていることを特徴とする。
【0008】
(3)前記(1)または(2)において、前記支持ローラは2本であって、側面視で二等辺三角形の底辺の両端に相当する位置に配置され、
前記浮き上がり防止ローラは1本であって、側面視で二等辺三角形の頂点に相当する位置に配置されることを特徴とする。
【0009】
(4)また、斜面落下物防護ネットの上端部が中央範囲に接続されている上端部横主ロープを移動自在に支持する斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱であって、
支柱本体と、
該支柱本体の頭部に回転自在に設置された支持ローラと、
該支持ローラに対向して配置された浮き上がり防止ローラと、
前記支柱本体の脚部に設置され、支柱ヒンジ孔が形成された支柱ヒンジ板と、
前記支柱本体の側部に設置され、支持ロープが係止自在な支持ロープ係止手段と
を有し、
前記支持ローラが円筒状または円柱状の支持ローラ面と、該ローラ面の両端部に設置されたローラ側板とを具備し、
前記浮き上がり防止ローラが円筒状または円柱状の浮き上がり防止ローラ面を具備し、
前記上端部横主ロープの長手方向の一部が、前記支持ローラ面、前記ローラ側板および前記浮き上がり防止ローラ面によって包囲された空間を通過することを特徴とする。
【0010】
(5)さらに、斜面落下物防護ネットの上端部が中央範囲に接続されている上端部横主ロープを移動自在に支持する斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱であって、
支柱本体と、
該支柱本体の頭部に回転自在に設置された支持ローラと、
該支持ローラに対向して配置された浮き上がり防止ローラと、
前記支柱本体の脚部に設置され、支柱ヒンジ孔が形成された支柱ヒンジ板と、
前記支柱本体の側部に設置され、支持ロープが係止自在な支持ロープ係止手段と
を有し、
前記支持ローラが、前記上端部横主ロープが侵入自在な凹面を具備する鼓型ロールであって、
前記上端部横主ロープの長手方向の一部が、前記支持ローラの凹面と前記浮き上がり防止ローラの外面とによって包囲された空間を通過することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱は回転自在に設置された支持ローラを有するから、上端部横主ロープの限られた範囲が支持ローラによって回転支持されるため、上端部横主ロープの局所的な摩耗や損傷、および上端部横主ロープの支持手段である支持ローラの偏摩耗が抑えられ、保全コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係る斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱を説明するものであって、斜面落下物防護ネット構造物を示す正面図。
【図2】図1に示す斜面落下物防護ネット構造物を示す側面図。
【図3】本発明の実施の形態1に係る斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱を説明する平面図、正面図および底面図。
【図4】本発明の実施の形態1に係る斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱を説明する側面図および斜視図。
【図5】図3に示す斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱の一部(ロープ支持手段)の使用状況を示す平面図、正面図および側面図。
【図6】図3に示す斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱の一部(支柱ベース金物)を示す平面図、正面図および側面図。
【図7】図3に示す斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱の一部(アンカーベース金物)を示す平面図、正面図および側面図。
【図8】図3に示す斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱の一部(支柱ベース金物)の使用状況を示す正面図および側面図。
【図9】本発明の実施の形態2に係る斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱を説明する側面図。
【図10】本発明の実施の形態3に係る斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱を説明する一部を断面にした側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態1]
図1〜図8は本発明の実施の形態1に係る斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱を説明するものであって、図1は斜面落下物防護ネット構造物を示す正面図、図2は斜面落下物防護ネット構造物を示す側面図、図3の(a)、(b)および(c)は平面図、正面図および底面図、図4の(a)および(b)は側面図および斜視図、図5の(a)、(b)および(c)は一部(ロープ支持手段)の使用状況を示す平面図、正面図および側面図、図6の(a)、(b)および(c)は一部(支柱ベース金物)を示す平面図、正面図および側面図、図7の(a)、(b)および(c)は一部(アンカーベース金物)を示す平面図、正面図および側面図、図8の(a)および(b)は一部(支柱ベース金物)の使用状況を示す正面図および側面図である。なお、各図は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
【0014】
(斜面落下物防護ネット構造物)
図1および図2において、斜面落下物防護ネット構造物1は、脚部12a、12bが斜面9に固定されたアンカーベース金物20a、20bにそれぞれ傾動可能に接続された支柱本体10a、10bと、
一方の端部31a、31bが斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱(以下、「ヒンジ支柱」と称す)100a、100bの支柱本体10a、10bの頭部11a、11bにそれぞれ接続され、他方の端部32a、32bが斜面9に固定された吊りロープ固定手段39a、39bにそれぞれ接続された吊りロープ30a、30bと、
一方の端部41aが支柱本体10aの頭部11aにそれぞれ接続され、他方の端部42aが斜面9に固定されたサイドロープ固定手段49aにそれぞれ接続された一対のサイドロープ40aと、
一方の端部41bが支柱本体10bの頭部11bにそれぞれ接続され、他方の端部42bが斜面9に固定されたサイドロープ固定手段49bにそれぞれ接続された一対のサイドロープ40bと、を有している。
すなわち、ヒンジ支柱100a、100bはそれぞれ、吊りロープ30a、30bと一対のサイドロープ40a、40bとによって支承されている。
【0015】
さらに、斜面落下物防護ネット構造物1は、両方の側部に側部縦主ロープ50a、50bがそれぞれ設置された防護ネット60と、
両方の端部71a、71bがそれぞれ斜面9に固定された上端部横主ロープ固定手段79a、79bに接続され、防護ネット60の上端部(図中、C−Dの範囲)が設置されると共に、側部縦主ロープ50a、50bの上端部51a、51bが吊り金物72を介して接続された上端部横主ロープ70と、
支柱本体10a、10bの頭部11a、11bに設置され、上端部横主ロープ70の防護ネット60が設置された範囲を除く範囲(図中、A−Cの範囲およびB−Dの範囲)の一部を回転支持する上端部横主ロープ支持手段110a、110bと、
側部縦主ロープ50a、50bに交差し、交差部95a、95bにおいて側部縦主ロープ50a、50bにそれぞれ接続され、両方の端部91a、91bがそれぞれ斜面9に固定された横主ロープ固定手段99a、99bに接続された複数の横主ロープ90と、を有している。
なお、以下の説明において、共通する内容については符号の添え字「a、b」の記載を省略する。
【0016】
(防護ネット)
また、防護ネット60は所定の目開きを具備するネット面部61と、ネット面部61を補強する複数の縦補強ロープ62および複数の横補強ロープ63とを具備している。
このとき、縦補強ロープ62の上端部は吊り金物72を介して上端部横主ロープ70に接続され、下端部は、最下方に配置された横主ロープ90に接続されている。また、横補強ロープ63の両方の端部は側部縦主ロープ50にそれぞれ接続されている。そして、縦補強ロープ62と横補強ロープ63とは交差部において互いに接続されている。
【0017】
横主ロープ90は防護ネット60の高さ方向の位置に応じて長さが相違し、例えば、図2に示す例では、防護ネット60の上部分が鉛直に垂下するようにして、落石を付け止める落石捕捉部(ポケット部に同じ)2を形成し、防護ネット60の下部分は斜面9に沿うようにして(部分的に斜面9に当接または部分的に斜面9から浮き上がっている)、捕捉した落石を保管する落石保管部3を形成している。
【0018】
(ヒンジ支柱)
図3〜図5において、ヒンジ支柱100は、例えば、H形鋼や鋼管等によって形成された支柱本体10と、支柱本体10の頭部11に設置された上端部横主ロープ支持手段(以下、「ロープ支持手段」と称す)110と、支柱本体10の脚部12に設置された支柱ベース金物120と、を有している。
【0019】
(ロープ支持手段)
図4において、ヒンジ支柱100の頭部11に設置された上端部横主ロープ70を支持するロープ支持手段110は、支柱本体10の頭部11に設置された支持基板111と、支持基板111に上端部横主ロープ70が通過自在な間隔を空けて設置された一対のガイド側板112と、一対のガイド側板112の間に回転自在に配置された1本の浮き上がり防止ローラ113および2本の支持ローラ114と、を具備している。
一対のガイド側板112は、平面視において、中央範囲に互いに略平行な側板平行部112pを形成し、側板平行部112pからそれぞれの端部に向かって除々に互いの間隔が増大して、左右方向の両側縁に近い範囲が外になる程拡大するハの字状を呈す側板拡大部112vとを、形成する。
【0020】
浮き上がり防止ローラ113および支持ローラ114はそれぞれ、断面円形の滑動パイプ113pおよび滑動パイプ114pと、滑動パイプ113pおよび滑動パイプ114pを回動自在に貫通する取付軸(ボルト)113sおよび取付軸(ボルト)114sと、取付軸113sおよび取付軸114sをガイド側板112に設置する設置ナット113nおよび設置ナット114nと、を具備している。
そして、側板平行部112pに、浮き上がり防止ローラ113を二等辺三角形の頂点に相当する位置に配置するための取付軸113sが貫通自在なボルト孔113hと、2本の支持ローラ114をそれぞれ該二等辺三角形の底辺の両端に相当する位置に配置するための取付軸114sが貫通自在なボルト孔114hとが、形成されている。
【0021】
1本の浮き上がり防止ローラ113と2本の支持ローラ114との間(二等辺三角形の斜辺に相当する範囲)は、上端部横主ロープ70が通過自在な間隔になっている。
したがって、上端部横主ロープ70は、一対のガイド側板112と1本の浮き上がり防止ローラ113と2本の支持ローラ114によって包囲されるから、防護ネット60が落石を受け止めた際の衝撃によって上端部横主ロープ70が踊った(振れたり飛び跳ねたりした)場合でも、上端部横主ロープ70が支柱本体10の頭部11から外れることがない。
また、上端部横主ロープ70は2本の支持ローラ114に回転支持されるから、防護ネット60が落石を受け止めた際の衝撃力による伸び(およびその後に弾性復元)や、昼夜ないし季節の温度変動による伸縮に対し、表面が擦られることがない(正確には、ガイド側板112との間で摺動したり、支持ローラ114との間で僅かに摺動したりすることがある)。
【0022】
よって、局部的な摩擦や摩耗が抑えられ、グリース塗布等の保全作業の負担を軽減することができる。
なお、浮き上がり防止ローラ113および支持ローラ114の形態は、これに限定するものではなく、滑動パイプ113pと取付軸113sとが一体化され、取付軸113sの両端がガイド側板112に設置された軸受によって回転自在に支持され、同様に、滑動パイプ114pと取付軸114sとが一体化され、取付軸114sの両端がガイド側板112に設置された軸受によって回転自在に支持されるものであってもよい。
【0023】
なお、本発明は支持ローラ114の本数を2本に限定するものではなく、1本でも3本以上であってもよい。同様に、浮き上がり防止ローラ113の本数を1本に限定するものではない。
また、一対のガイド側板112は平面視で対称な形状であるものに限定するものではなく、非対称であってもよいし、平面視で略円弧状であってもよいし、一方または両方の側板拡大部112vが形成されなくてもよい(このとき、ガイド側板112の側縁部は円弧状に面取りすることが好ましい)。
さらに、回転自在な浮き上がり防止ローラ113に替えて、回転不能な円筒体や断面略円弧状部材にしてもよい。このとき、上端部横主ロープ70は常時、支持ローラ114によって回転支持され、防護ネット60が落石を受け止めた際等の限られた場合にのみ、浮き上がり防止ローラ113に当接するだけであるから、上端部横主ロープ70の局部摩耗が防止される。
また、図5の(c)では、側部縦主ロープ50の上端部51が上端部横主ロープ70に直接接続された例を示しているが、図1に示すように、吊り金物72を介して接続するようにしてもよい。
【0024】
(支柱ベース金物)
支柱ベース金物120は、支柱本体10の脚部12に設置された支柱ヒンジ基板121と、支柱ヒンジ基板121に設置された一対の支柱ヒンジ板122と、支柱ヒンジ板122に形成された支柱ヒンジ孔122hと、を具備する。
【0025】
(アンカーベース金物)
アンカーベース金物20は、支柱ヒンジ孔122hを貫通自在なアンカーヒンジ軸26と、アンカーヒンジ軸26が貫通するアンカーヒンジ孔25hが形成されたアンカーヒンジ板25と、アンカーヒンジ板25が固定され、ベース固定アンカー29が貫通するアンカーベース孔24hが形成されたアンカーベース24と、を有し、アンカーベース24は、斜面9に固定され、アンカーベース孔24hを貫通したベース固定アンカー29によって、斜面9に設置されている。
そして、アンカーヒンジ軸26は防護ネット60の面と略平行(斜面9に最大傾斜線の方向に対して略直角)になるように設置されている。すなわち、支柱ヒンジ板122およびアンカーヒンジ板25は上下方向の面(最大傾斜線を含む面に略同じ面)内で傾動自在になっている(正確には、支柱本体10を支承する前記ロープが伸びた際あるいは緩んだ際には、上下方向の面を外れる方向に傾動する)。
【0026】
(ヒンジ支柱の立設部材)
図4において、支柱本体10の頭部11で、斜面9の上流側になる面に、吊りヒンジ板13が設置され、吊りヒンジ板13に形成された吊りヒンジ孔13hを貫通するヒンジボルト33によって、吊りロープ30に端部32が支柱本体10に接続されている。
また、支柱本体10の頭部11で、左右方向の面に、サイドヒンジ板14が設置され、サイドヒンジ板14に形成されたサイドヒンジ孔14hを貫通するヒンジボルト43によって、サイドロープ40の端部42が支柱本体10に接続されている。
【0027】
なお、吊りロープ固定手段39、サイドロープ固定手段49、上端部横主ロープ固定手段79、横主ロープ固定手段99は、アンカーベース金物20に準じた構造であって、アンカーベース金物20におけるアンカーヒンジ軸26をヒンジボルトに変更したものに相当するから、説明を省略する。
【0028】
(作用)
図1において、前記のように支柱本体10は、吊りロープ30とサイドロープ40との2部材によって、支承され、防護ネット60の両方の側縁に設置された側部縦主ロープ50の上端部51は上端部横主ロープ70に接続されている。このため、防護ネット60が落石を受け止めた際、防護ネット60は斜面9から離れる方向に膨出し、側部縦主ロープ50および上端部横主ロープ70は何れも伸ばされる。
このとき、防護ネット60の両方の側縁は正面視で互いに近づく(それぞれ支柱本体10から離れる方向に移動する)から、防護ネット60、側部縦主ロープ50および上端部横主ロープ70の何れも変形性能が向上し、落石衝突時のエネルギーに対するそれぞれの変形によるエネルギー吸収が円滑になるという効果が得られる。
【0029】
そして、前記のように、上端部横主ロープ70はロープ支持手段110によって回転支持され、側部縦主ロープ50の上端部51が支柱本体10に接続されていないから、支柱本体10を倒そうとする偏荷重が最小に抑えられ、サイドロープ40、あるいは支柱ベース金物120や支柱ベース金物120の破損が防止され、支柱転倒に対する信頼性が向上するという効果が得られる。
なお、以上は、側部縦主ロープ50の上端部51が上端部横主ロープ70に接続されているが、本発明はこれに限定するものではなく、側部縦主ロープ50の上端部51を支柱本体10に接続してもよい。このとき、落石衝突時に支柱本体10を倒そうとする力が支柱本体10に作用するものの、上端部横主ロープ70はロープ支持手段110によって回転支持されているため、上端部横主ロープ70および支持ローラ114の局部的な摩擦や摩耗が抑えられ、グリース塗布等の保全作業の負担を軽減することができる。
【0030】
[実施の形態2]
図9は本発明の実施の形態2に係る斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱を説明する側面図である。なお、図9は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
図9において、斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱(以下、「ヒンジ支柱」と称す)200は、実施の形態1で説明したヒンジ支柱100に設置されたロープ支持手段110を、上端部横主ロープ支持手段(以下、「ロープ支持手段」と称す)210に取り替えたものである。そして、ロープ支持手段210を除く部材はヒンジ支柱100に同じであるから、説明を省略する。
【0031】
(ロープ支持手段)
図9において、ロープ支持手段210は、実施の形態1で説明したロープ支持手段110における支持ローラ114(正確には滑動パイプ114p)に上端部横主ロープ70を案内する機能を具備する案内フランジを設け、一対のガイド側板112を撤去したものに相当している。
すなわち、ロープ支持手段210は、支柱本体10の頭部11に設置された支持基板211と、支持基板211に設置された所定の間隔を空けて設置された一対の支持側板212と、一対の支持側板212に回転自在に設置された浮き上がり防止ローラ213および支持ローラ214と、を具備している。
【0032】
浮き上がり防止ローラ213は、断面円形の滑動パイプ213pと、滑動パイプ113pを回動自在に貫通する取付軸(ボルト)213sと、取付軸213sを支持側板212に設置する設置ナット213nと、を具備している。
支持ローラ214は断面円形の滑動パイプ214pと、滑動パイプ214pを回動自在に貫通する取付軸(ボルト)214sと、取付軸214sを支持側板212に設置する設置ナット214nと、を具備している。
このとき、支持ローラ214の滑動パイプ214pには上端部横主ロープ70を収納自在な間隔を設けて、一対の円板(ドーナツ)状のパイプフランジ214fが設置されている。そして、浮き上がり防止ローラ213の滑動パイプ213pの外周に近い範囲が、支持ローラ214のパイプフランジ214fによって挟まれた範囲に侵入している。
【0033】
そして、上端部横主ロープ70は、一対のパイプフランジ214fと浮き上がり防止ローラ213の滑動パイプ213pと支持ローラ214の滑動パイプ214pとによって包囲自在になっている。このため、防護ネット60が落石を受け止めた際の衝撃によって上端部横主ロープ70が踊った(振れたり飛び跳ねたりした)場合でも、上端部横主ロープ70が支柱本体10の頭部11から外れることがない。
また、上端部横主ロープ70は、支持ローラ214に回転支持されると共に、支持ローラ214と同じ回転をするパイプフランジ214fによって案内されるから、表面が擦られる程度が緩和され、局部的な摩擦や摩耗がさらに抑えられる。
【0034】
[実施の形態3]
図10は本発明の実施の形態3に係る斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱を説明する一部を断面にした側面図である。なお、図10は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
図10において、斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱(以下、「ヒンジ支柱」と称す)300は、実施の形態2で説明したヒンジ支柱200に設置されたロープ支持手段210を、上端部横主ロープ支持手段(以下、「ロープ支持手段」と称す)310に取り替えたものである。そして、ロープ支持手段310を除く部材はヒンジ支柱200に同じであるから、説明を省略する。
【0035】
(ロープ支持手段)
図10において、ロープ支持手段310は、実施の形態2で説明したロープ支持手段210における浮き上がり防止ローラ213および支持ローラ214を一体構造にすると共に、支持ローラ214を上端部横主ロープ70が侵入自在な凹面(カリバー)を具備する鼓型ロールにしたものに相当している。
すなわち、ロープ支持手段310は、支柱本体10の頭部11に設置された支持基板311と、支持基板311に設置された所定の間隔を空けて設置された一対の支持側板312と、一対の支持側板312に回転自在に設置された浮き上がり防止ローラ313および支持ローラ314と、を具備している。
【0036】
浮き上がり防止ローラ313は、断面円形のローラ外面を具備するローラ部313pと、ローラ部313pに一体的に設けられたローラ軸313sと、から形成された中実ローラまたは中空ローラであって、ローラ軸313sの両端は、支持側板312に設置された軸受315によって回動自在に支持されている。
支持ローラ314は、上端部横主ロープ70が侵入自在な凹面(カリバー)が形成されたカリバーロール部314pと、カリバーロール部314pに一体的に設けられたローラ軸313sと、から形成されたカリバーロールであって、ローラ軸313sの両端は、支持側板312に設置された軸受316によって回動自在に支持されている。
【0037】
そして、上端部横主ロープ70は、支持ローラ314のカリバーロール部314p(凹面)と浮き上がり防止ローラ313のローラ面(円筒面)とによって包囲自在になっている。
このため、防護ネット60が落石を受け止めた際の衝撃によって上端部横主ロープ70が踊った(振れたり飛び跳ねたりした)場合でも、上端部横主ロープ70が支柱本体10の頭部11から外れることがない。
また、上端部横主ロープ70は支持ローラ314との当接位置や摺動方向が変動しても、回転するカリバーロール部314pの凹面によって案内されるから、表面が擦られる程度がさらに緩和され、局部的な摩擦や摩耗がさらに抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は以上の構成であるから、斜面に設置されて落石を受け止めるだけでなく、各種斜面を落下する諸々の物を受け止める落下防止手段等として、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 斜面落下物防護ネット構造物
2 落石捕捉部
3 落石保管部
9 斜面
10 支柱本体
11 頭部
12 脚部
13 吊りヒンジ板
13h 吊りヒンジ孔
14 サイドヒンジ板
14h サイドヒンジ孔
20 アンカーベース金物
24 アンカーベース
24h アンカーベース孔
25 アンカーヒンジ板
25h アンカーヒンジ孔
26 アンカーヒンジ軸
29 ベース固定アンカー
30 吊りロープ
31 端部
32 端部
33 ヒンジボルト
39 吊りロープ固定手段
40 サイドロープ
41 端部
42 端部
43 ヒンジボルト
49 サイドロープ固定手段
50 側部縦主ロープ
51 上端部
60 防護ネット
61 ネット面部
62 縦補強ロープ
63 横補強ロープ
70 上端部横主ロープ
71 端部
72 吊り金物
79 上端部横主ロープ固定手段
90 横主ロープ
91 端部
95 交差部
99 横主ロープ固定手段
100 ヒンジ支柱
110 ロープ支持手段
111 支持基板
112 ガイド側板
112p 側板平行部
112v 側板拡大部
113 浮き上がり防止ローラ
113h ボルト孔
113n 設置ナット
113p 滑動パイプ
113s 取付軸
114 支持ローラ
114h ボルト孔
114n 設置ナット
114p 滑動パイプ
114s 取付軸
120 支柱ベース金物
121 支柱ヒンジ基板
122 支柱ヒンジ板
122h 支柱ヒンジ孔
200 ヒンジ支柱(実施の形態2)
210 ロープ支持手段
211 支持基板
212 支持側板
213 浮き上がり防止ローラ
213n 設置ナット
213p 滑動パイプ
213s 取付軸
214 支持ローラ
214f パイプフランジ
214n 設置ナット
214p 滑動パイプ
214s 取付軸
300 ヒンジ支柱(実施の形態3)
310 ロープ支持手段
311 支持基板
312 支持側板
313 浮き上がり防止ローラ
313p ローラ部
313s ローラ軸
314 支持ローラ
314p カリバーロール部
315 軸受
316 軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜面落下物防護ネットの上端部が中央範囲に接続されている上端部横主ロープを移動自在に支持する斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱であって、
支柱本体と、
該支柱本体の頭部に設置された一対のガイド側板と、
該一対のガイド側板の間に配置され、両端が前記一対のガイド側板に回転自在に支持された支持ローラと、
該支持ローラに対向して配置された浮き上がり防止ローラと、
前記支柱本体の脚部に設置され、支柱ヒンジ孔が形成された支柱ヒンジ板と、
前記支柱本体の側部に設置され、支持ロープが係止自在な支持ロープ係止手段と
を有し、
前記上端部横主ロープの長手方向の一部が、前記支持ローラと前記浮き上がり防止ローラと前記一対のガイド側板とによって包囲された空間を通過することを特徴とする斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱。
【請求項2】
前記一対のガイド側板によって、平面視において、中央範囲に互いに略平行な側板平行部と、該側板平行部から端部に向かって除々に互いの間隔が増大する側板拡大部とが、形成されていることを特徴とする請求項1記載の斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱。
【請求項3】
前記支持ローラは2本であって、側面視で二等辺三角形の底辺の両端に相当する位置に配置され、
前記浮き上がり防止ローラは1本であって、側面視で二等辺三角形の頂点に相当する位置に配置されることを特徴とする請求項1または2記載の斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱。
【請求項4】
斜面落下物防護ネットの上端部が中央範囲に接続されている上端部横主ロープを移動自在に支持する斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱であって、
支柱本体と、
該支柱本体の頭部に回転自在に設置された支持ローラと、
該支持ローラに対向して配置された浮き上がり防止ローラと、
前記支柱本体の脚部に設置され、支柱ヒンジ孔が形成された支柱ヒンジ板と、
前記支柱本体の側部に設置され、支持ロープが係止自在な支持ロープ係止手段と
を有し、
前記支持ローラが円筒状または円柱状の支持ローラ面と、該ローラ面の両端部に設置されたローラ側板とを具備し、
前記浮き上がり防止ローラが円筒状または円柱状の浮き上がり防止ローラ面を具備し、
前記上端部横主ロープの長手方向の一部が、前記支持ローラ面、前記ローラ側板および前記浮き上がり防止ローラ面によって包囲された空間を通過することを特徴とする斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱。
【請求項5】
斜面落下物防護ネットの上端部が中央範囲に接続されている上端部横主ロープを移動自在に支持する斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱であって、
支柱本体と、
該支柱本体の頭部に回転自在に設置された支持ローラと、
該支持ローラに対向して配置された浮き上がり防止ローラと、
前記支柱本体の脚部に設置され、支柱ヒンジ孔が形成された支柱ヒンジ板と、
前記支柱本体の側部に設置され、支持ロープが係止自在な支持ロープ係止手段と
を有し、
前記支持ローラが、前記上端部横主ロープが侵入自在な凹面を具備する鼓型ロールであって、
前記上端部横主ロープの長手方向の一部が、前記支持ローラの凹面と前記浮き上がり防止ローラの外面とによって包囲された空間を通過することを特徴とする斜面落下物防護ネット用のヒンジ支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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