説明

【課題】 本発明は、薪を割るときなどに斧の柄が薪の材料である木材に当たっても柄が損傷を受けることがなく長期間使用できる斧を部品数の少ない簡単な構成で提供することを課題とする。
【解決手段】 刃3に設けられた柄穴6に柄2の先端部が嵌入され、柄穴6内にクサビ4が圧入されている斧であって、クサビ4は柄2の下側に存在し且つ刃3の刃先7の後端9を越えて後方に延びている。好ましくは、クサビ4の、刃先7の後端9を越えて後方に延びている部分に、少なくとも1つの釘穴11が設けられている。さらに好ましくは、クサビ4の、刃先7の後端9を越えて後方に延びている部分の長さが、柄2の長さ方向における刃先の前端8から後端9までの水平距離の50%から120%の範囲の長さである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薪などを割るための斧に関する。
【背景技術】
【0002】
斧は柄の先端部を刃の柄穴に嵌入することにより柄に刃を結合した構成であり、その結合の度合いを強固にするためにクサビを打ち込んでいる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実公昭35−29094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、薪を割るときなどに斧の柄が薪の材料である木材に当たっても柄が損傷を受けることがなく長期間使用できる斧を部品数の少ない簡単な構成で提供することを課題とする。
【0004】
特許文献1に記載されているように、従来の斧のクサビは刃の刃先の後端を越えてそれよりも後方に延びていない。そのほかの多くの斧のクサビは引用文献1よりも短く形成されており、刃の柄穴からわずかに突出する程度の長さである。したがって、仮に特許文献1とは異なってクサビが柄の下側に打ち込まれても、刃先の後端よりも後方に延びる柄の下面は柄の材料である木が露出している。このために、薪割りをするときに薪の材料である木材の幅が刃先よりも長いときは、刃先からはみ出た木材が柄の下面に当たって柄を傷めるのである。また、割ろうとする木材の幅と刃先の長さが同じ程度であっても、刃先を木材よりも前寄りに当ててしまうと木材が柄の下面に当たるのである。このような状態で長期間使用すると、木材が当たる柄の部分は損傷によりえぐれてしまうのである。その結果、そのえぐれた部分の強度が弱くなり使用中に柄が折れる虞があるのである。
【0005】
また、引用文献1のクサビは柄の上側に取り付けられている。その理由は、仮にクサビを柄の下側に取り付けると、クサビを固定するためにネジを回そうとしても刃が邪魔になってドライバーが使用できないからである。したがって、引用文献1ではクサビを柄の上側に取り付けざるを得ないのである。そのために、クサビをネジや釘で補強して固定しようとするときはクサビを柄の上側に取り付けることになるから、柄の下面は柄の材料である木が露出し前述したように使用中に柄が損傷するのである。
【0006】
このように、柄の下面が柄の材料で露出しているときに、割ろうとする木材が柄に当たって柄を損傷することを防止するためには、ネジや釘を用いて別体の厚めの鉄板を柄の下面に取り付ければよい。この場合、ネジや釘を取り付ける位置は刃先の後端よりも後方の位置と刃先の後端よりも前方の位置の2箇所になる。このようにして別体の鉄板を取り付けたときは、ある程度使用していると鉄板の締め付けが緩んでくるので、締め直しをしなければならない。そうすると、刃先の後端よりも前方に取り付けたネジを締めたり釘を打ち付けたりするときに刃が邪魔になってドライバーやハンマーを使用することができない。したがって、そのようなときは柄から刃を取り外してから行わなければならず面倒である。本発明は、柄から刃を取り外さなくても鉄板の締め直しができる斧を提供することも課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1は、刃に設けられた柄穴に柄の先端部が嵌入され、柄穴内にクサビが圧入されている斧において、クサビは柄の下側に存在し且つ前記刃の刃先の後端を越えて後方に延びている構成である。
【0008】
請求項2は、クサビの、刃先の後端を越えて後方に延びている部分に、少なくとも1つの釘穴が設けられている要素が請求項1に付加された構成である。
【0009】
請求項3は、クサビの、刃先の後端を越えて後方に延びている部分の長さが、柄の長さ方向における刃先の前端から後端までの水平距離の50%から120%の範囲の長さである要素が請求項1又は請求項2のいずれか一項に付加された構成である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1は、クサビが柄の下側に存在し且つ刃の刃先の後端を越えて後方に延びている構成である。したがって、薪を割るときに薪の材料である木材の一部が刃先の後端よりも後方にはみ出ても、長く延びたクサビにより柄が保護されて損傷することがない。
【0011】
請求項2は、クサビの、刃先の後端を越えて後方に延びている部分に、少なくとも1つの釘穴が設けられている構成である。したがって、釘穴を通してネジをねじ込んだり釘を打ち付けることにより、クサビを確実に固定することができる。
【0012】
請求項3は、クサビの、刃先の後端を越えて後方に延びている部分の長さは、柄の長さ方向における刃の前端から後端までの水平距離の50%から120%の範囲の長さである。クサビがこの範囲の長さで刃先の後端から延びていることにより、木材が当たることによる柄の損傷をほぼ防止することができる。また、クサビが刃先の後端から必要以上に長く延びていると、クサビがすぐにぐら付く虞があるが、本発明はこのような虞がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明の実施の形態について説明する。斧1は、柄2と刃3とクサビ4とから成る。柄2は樫などの硬い木材で作られている。柄2の前部分5は断面が矩形に形成され、それよりも後方部分は断面が楕円又は円形に形成されている。しかし、本発明の柄はこれらの形状に限定されるものでない。
【0014】
刃3は、その上部に柄穴6が設けられており、その柄穴6に柄2の先端部が嵌入されている。また、刃3の下端に刃先7が形成されている。刃先7の前端8から後端9までの水平距離tは柄3を含めた斧1の全長に対応して設定されている。本実施形態では斧1の全長が約90cmで刃先7の水平距離tは約8cmであるがこの数値に限定されるものでなく、例えば、全長が45cmのときに水平距離tを7cmとしたり、全長が37cmのときに水平距離tを5.5cmとしたりしてもよい。
【0015】
クサビ4は鉄で細長く形成され、前端10が鍵形に曲がっている。クサビ4は刃3の柄穴6に圧入されており、刃先7の後端9を越えて後方に延びている。クサビ4の全長は約17.5cmであり、刃先7の後端9を越えて後方に延びているクサビ4の部分の長さは約6cmである。この長さは、刃先7の前端8から後端9までの水平距離の75%に相当する。本発明はこれらの数値に限定されるものではない。この、刃先7の後端9を越えて後方に延びているクサビ4の部分が柄2の下面を保護して、薪を割るときに材料である木材がその部分に当たっても柄2を損傷させることがない。
【0016】
刃先7の後端9を越えて後方に延びているクサビ4の部分に2つの釘穴11,11が設けられている。これらの釘穴11,11を通して釘12,12が打ち付けられている。釘12に代えてネジでもよいことは勿論である。ネジや釘を使用しなくても差し支えなく、針金で柄とクサビを一緒に巻き付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一部正面図
【図2】クサビの正面図
【図3】クサビの平面図
【符号の説明】
【0018】
1 斧
2 柄
3 刃
4 クサビ
5 柄の前部分
6 柄穴
7 刃先
8 刃先の前端
9 刃先の後端
10 クサビの前端
11 釘穴
12 釘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃に設けられた柄穴に柄の先端部が嵌入され、柄穴内にクサビが圧入されている斧において、前記クサビは柄の下側に存在し且つ前記刃の刃先の後端を越えて後方に延びていることを特徴とする斧。
【請求項2】
クサビの、前記刃先の後端を越えて後方に延びている部分に、少なくとも1つの釘穴が設けられている請求項1記載の斧。
【請求項3】
クサビの、前記刃先の後端を越えて後方に延びている部分の長さは、柄の長さ方向における刃先の前端から後端までの水平距離の50%から120%の範囲の長さである請求項1又は請求項2のいずれか一項記載の斧。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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