断層撮影装置
【課題】円錐傾斜断層撮影装置で生じるリング状アーチファクトを低減化する。
【解決手段】X線3を照射するX線源4と、被検体1からのX線透過像を検出する検出器5と、被検体を相対的に回転軸RAに対して回転させる回転手段2,6と、3次元画像を作成する制御処理部12とを備えた装置であって、回転軸RAは、X線中心線の方向に対し90度より小さなラミノ角で交差し、制御処理部12は、3次元サイノグラムP0に対し回転方向にローパスフィルタ処理してサイノグラムP1を得、サイノグラムP1に対し透過像に沿った2次元ローパスフィルタ処理してサイノグラムP2を得、サイノグラムP1からP2を減算してリング成分を抽出し、サイノグラムP0からリング成分を減算したサイノグラムP*を得るリング補正処理部12cと、得られたサイノグラムP*から3次元画像を再構成する再構成部12dとを有する断層撮影装置である。
【解決手段】X線3を照射するX線源4と、被検体1からのX線透過像を検出する検出器5と、被検体を相対的に回転軸RAに対して回転させる回転手段2,6と、3次元画像を作成する制御処理部12とを備えた装置であって、回転軸RAは、X線中心線の方向に対し90度より小さなラミノ角で交差し、制御処理部12は、3次元サイノグラムP0に対し回転方向にローパスフィルタ処理してサイノグラムP1を得、サイノグラムP1に対し透過像に沿った2次元ローパスフィルタ処理してサイノグラムP2を得、サイノグラムP1からP2を減算してリング成分を抽出し、サイノグラムP0からリング成分を減算したサイノグラムP*を得るリング補正処理部12cと、得られたサイノグラムP*から3次元画像を再構成する再構成部12dとを有する断層撮影装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に対する放射線の照射方向を円錐に沿って変化させる円錐軌道の断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円錐軌道の断層撮影装置は、円形トモシンセシス(Tomosynthesis)装置、あるいは円形ラミノグラフ(Laminograph)、あるいは傾斜型CT(Computer Tomograpy)装置とも呼ばれている。
【0003】
円錐軌道の断層撮影装置は、放射線源から発生する放射線を被検体に照射し、当該被検体から透過してくる放射線を2次元分解能の放射線検出器で検出し、相対的に、被検体に対する放射線照射方向を円錐に沿って変化させ、この変化の各位置で得られる放射線検出器の出力から被検体の3次元画像を作成する構成である。
【0004】
近年、プリント基板等を検査するための円錐軌道の断層撮影装置が提案されている(特許文献1)。
【0005】
図12は従来の円錐軌道断層撮影装置の概念構成図である。この断層撮影装置は、X線焦点FからX線101を照射するX線源102と、被検体103から透過してくるX線101を検出しデジタル透過像として出力する2次元のX線検出器104と、被検体103を載置して回転する試料テーブル105とからなり、このテーブル105の回転軸106はX線101の中心と直角でなく90度よりも小さな交差角θで交差している。
【0006】
すなわち、この断層撮影装置は、X線源102のX線焦点Fから被検体103に向けてX線101を照射し、被検体103から透過してくるX線の透過像をX線検出器104で検出し、デジタル透過像に変換し収集する。このとき、被検体103は試料テーブル105によって回転される。その結果、X線検出器104は、被検体103が一回転する間に所定の回転角度ごとに撮影された多数の透過像を撮影し(スキャンと言う)、デジタル処理して被検体102の3次元画像(多数の断面像)を再構成する。
【0007】
再構成方法はフェルドカンプ等(非特許文献1)による方法などが用いられる。この方法は、フィルタリング処理と3次元再構成グリッド(格子)上への逆投影を行って被検体103の3次元画像を作成する。
【特許文献1】特開2003−329616号公報。
【非特許文献1】L.A.Feldkamp,L.C.Davis and J.W.Kress,Practical cone-beam algorithm,J.Opt.Soc.Am.A/Vol.1,No.6/June1984。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、以上のような円錐軌道断層撮影装置では、被検体103から見て相対的にX線源102とX線検出器104が相対する位置関係を保ったまま回転するので、X線源102(X線焦点F)からX線検出器104のある検出素子まで引いた投影線は回転軸106に対して回転している。それゆえに、回転軸106に対して垂直な断面を見たとき、投影線の交点は円を描く。
【0009】
その結果、ある検出素子に温度特性の変動や劣化などが生じていると、その検出素子の出力が周囲に対して突出する(リング成分となる)ことで、断面像上にリング状あるいは円弧状のアーチファクトが発生し、被検体103の3次元画像が劣化する問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、リング状アーチファクトを低減し、被検体の高品位な3次元画像を作成する断層撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明は、被検体に向けて放射線ビームを照射する放射線源と、前記被検体から透過してくる放射線ビームを透過像として検出する2次元の放射線検出器と、前記放射線源から照射される放射線ビーム内で、被検体または所定の位置関係を保ったまま一体的または別体的に前記放射線源,前記放射線検出器を回転軸に対して回転させる回転手段と、この回転手段によって回転を行うスキャンの間に所定の回転角度ごとに前記放射線検出器で検出した前記被検体の透過像を順次取込み、当該被検体の3次元画像を作成する制御処理部とを備えた断層撮影装置であって、
前記回転軸は、前記放射線ビームの中心線の方向に対して90度より小さなラミノ角で交差し、
前記制御処理部は、前記放射線検出器で検出した被検体の多数の透過像を前記回転手段による前記回転の順に並べた3次元のサイノグラムに対して回転方向にローパスフィルタ処理を行って第1のサイノグラムを取得し、この取得された第1のサイノグラムに対し前記透過像に沿った2次元ローパスフィルタ処理を行って第2のサイノグラムを取り出した後、前記第1のサイノグラムから前記第2のサイノグラムを減算してリング成分だけを抽出した第3のサイノグラムを取得し、さらに、前記第3次元のサイノグラムから前記第3のサイノグラムのリング成分を減算してリング補正処理した第4のサイノグラムを取得するリング補正処理手段と、このリング補正処理手段で得られた第4のサイノグラムから前記被検体の3次元画像を再構成する再構成手段とを有する構成である。
【0012】
このような手段を講じることにより、サイノグラムから回転方向に直線状に周囲から突出している成分であるリング成分(3次元画像上でリングを発生させる成分)を低減することができる。具体的には、3次元のサイノグラムに対し回転方向にローパスフィルタ処理することにより回転方向にほぼ一定で直線状であるリング成分を変化させずに被検体の信号成分を均してなだらかにした第1のサイノグラムを得、この得られた第1のサイノグラムに対し透過像に沿った2次元ローパスフィルタ処理を行ってリング成分も均してなだらかにした第2のサイノグラムを得、さらに第1のサイノグラムから第2のサイノグラムを減算してリング成分だけの第3のサイノグラムを得た後、前記第3次元のサイノグラムから前記第3のサイノグラムのリング成分を減算してリング補正処理した第4のサイノグラムを得るので、リング成分を低減することができ、リング成分の低減された第4のサイノグラムを用いて再構成するので、円錐軌道断層撮影装置にとってリング状アーチファクトを低減した被検体の高品位な3次元画像を作成することができる。
【0013】
なお、前記2次元ローパスフィルタ処理としては、その一種であるメディアンフィルタ処理を行って前記第2のサイノグラムを求めることにより、リング成分も均してなだらかにした第2のサイノグラムを得ることができる。
【0014】
(2) また、別の発明は、前記(1)の記載する制御処理部としては、前記放射線検出器で検出した前記被検体の多数の透過像を前記回転手段による前記回転の順に並べた3次元のサイノグラムに対し回転方向にローパスフィルタ処理を行って第1のサイノグラムを得た後、この第1のサイノグラムに対し前記透過像に沿った2次元ハイパスフィルタ処理を行ってリング成分だけを抽出した第2のサイノグラムを得、前記3次元のサイノグラムから前記抽出したリング成分を減算してリング補正処理した第3のサイノグラムを得るリング補正処理手段と、このリング補正処理後の第3のサイノグラムから被検体の3次元画像を再構成する再構成手段とを有する構成であってもよい。
【0015】
以上のような手段を講じたことにより、3次元のサイノグラムに対し回転方向にローパスフィルタ処理を行って得られる第1のサイノグラムは、回転方向に直線状であるリング成分以外は透過像に沿った高周波成分を持たないので、透過像に沿った2次元ハイパスフィルタ処理することにより、直接リング成分だけの第2のサイノグラムを抽出でき、処理工程を減らしつつサイノグラムからリング成分を確実に低減でき、これにより円錐軌道断層撮影装置にとってはリング状アーチファクトを低減した被検体の高品位な3次元画像を作成できる。
【0016】
また、前記(1),(2)の構成に新たに、前記リングの補正強度を設定する補正強度設定手段を設け、前記リング補正処理手段は、前記補正強度設定手段から設定された補正強度に応じて、前記透過像に沿った2次元ローパスフィルタまたは前記透過像に沿った2次元ハイパスフィルタを選択し、当該2次元ローパスフィルタ処理または当該2次元ハイパスフィルタ処理を施すことにより、リング状アーチファクトが強いほどリング補正の強度を強くなるように変更でき、必要以上に強い補正をかけて被検体の円弧状の部分をぼかしてしまうことを防ぐことができる。
【0017】
なお、前記ラミノ角としては、90度に設定することにより、コーンビームCT装置として構成し、リング状アーチファクトを低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リング補正処理を実施した後のサイノグラムを用いて再構成処理するので、円錐軌道断層撮影装置で生じるリング状アーチファクトを確実に低減でき、被検体の高品位な3次元画像を作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る断層撮影装置の一実施形態を示す構成図である。
この断層撮影装置は、被検体1が載置されるテーブル2と、テーブル2上の被検体1に向けてX線ビーム3を照射するX線源4と、被検体1から透過してくるX線ビーム3を透過像(透過データ)として検出する2次元X線検出器5と、被検体1を載置させた状態で回転軸RA(垂直方向)に対して回転させるテーブル2及び回転機構6からなる回転手段と、この回転手段による1回転のスキャンの間に所定の回転角度ごとにX線検出器5で検出して得られるデジタル透過像から被検体1の3次元画像を再構成する制御処理本体部7とで構成される。
【0020】
回転軸RAは、X線ビーム3の中心線L(ほぼX線源4のX線焦点FとX線検出器5の中心とを結ぶ線であって、以下、X線光軸Lと称する)の方向に対し90度より小さなラミノ角αLで交差している。回転軸RAは、X線光軸Lとラミノ角αLで交差しているのでなく、X線光軸Lの方向とラミノ角αLで交差している。すなわち、回転軸RAとX線光軸Lが交わっている必要はない。ラミノ角αLは概略的には40度から80度の範囲で設定される。
【0021】
テーブル2は、プラスチックやカーボンなどで作られ、X線の吸収を少なくするためにテーブル内部が中空に形成されている。
【0022】
X線源4は、照射するX線ビーム3の発散点であるX線焦点Fが1μm程度のマイクロフォーカスX線管、制御処理本体部7からの設定制御指令に従って管電圧、管電流等を制御する制御回路及び制御回路の制御指令に応じた所望の管電圧、管電流をX線管に印加する電気回路からなり、例えば基台上にアーム(図示せず)などに支持されている。ここで、X線ビーム3は、実際に検出されるX線のことであり、X線ビーム3の外側の領域にはみ出して検出されないX線も放射されている。
【0023】
X線検出器5は、多数のX線検出素子が2次元のマトリックス(n,m)状に配列されたX線フラットパネルディテクタ(FPD)等が用いられ、X線源4からのX線ビーム3の照射のもとに被検体3内部を透過してくるX線透過像を2次元分解能で検出し、制御処理本体部7へ送信して、制御処理本体部7がこれを取り込む。
【0024】
被検体1は、前述したようにテーブル2上に載置され、制御処理本体部7からの回転制御指令に従って回転機構6によりテーブル2と共に、X線ビーム3内で回転軸RAに対して回転される。
【0025】
なお、回転機構6には図示されていないがエンコーダが取り付けられ、例えば回転によるスキャンの間に所定の回転角度を読み取って制御処理本体部7に送出する。
【0026】
制御処理本体部7は、通常のコンピュータが用いられ、ハードウェア的な構成としては、キーボード11a、マウス11bなどの入力部11と、CPU等で構成される制御処理部12と、磁気ディスクまたは光ディスクなどの記憶装置13と、表示部14が設けられ、その他にX線検出器5との間でデータのやり取りを行うインタフェース(図示せず)や回転機構6との間で回転制御に関するデータのやり取りを行う中継機能の役割を果す機構制御ボード(図示せず)などが設けられている。
【0027】
制御処理部12は、機能的には、個別のプログラムデータに基づいて、スキャン制御を実施するとともに、X線検出器5からデジタル透過像を収集し、記憶するスキャン制御部12aと、このスキャン制御部12aにより収集された透過像の前処理を行う前処理部12bと、断面像上に生じるリング状アーチファクトの低減化処理を行うリング補正処理部12cと、再構成により被検体1の3次元画像(多数の断面像)を作成する再構成部12dとが設けられている。
【0028】
制御処理部12としては、入力部11からの指示のもとにX線源4に対し管電圧、管電流等の設定制御指令を送出し、所望の管電圧、管電流等に設定するとともに、X線の放射、停止指令も送出する。なお、管電圧、管電流は被検体1の大きさに合わせて変えることができる。
【0029】
すなわち、制御処理部12は、入力部11及び表示部14を用いて、操作者による操作のもとにメニュー選択、管電圧、管電流等を含む撮影条件の設定、必要な機構部分の手動操作、スキャンの開始、ステータスの読取り、3次元画像の表示などを行う。
【0030】
なお、制御処理本体部7は、前述したように汎用のコンピュータが用いられるが、例えば構成部分1〜6と一体化したCPU内蔵の専用断層撮影装置を用いて、実現しても構わない。
【0031】
次に、以上のように構成された断層撮影装置の一実施の形態における作用について、図2を参照して説明する。
【0032】
先ず、操作者は、断層撮影に先立ち、テーブル2上に被検体1を載置し、断層撮影条件の設定を行う。断層撮影条件としては、X線源4の管電圧、管電流等の断層撮影X線条件と、ラミノ角αL、被検体1中の撮影位置(拡大率を含む)等の断層撮影幾何条件と、回転速度、1回転中に取得する透過像の撮影枚数その他必要な条件などがあるが、これら条件設定については従来から広く実施されているので、ここでは省略する。
【0033】
操作者は、入力部11からスキャン開始指示を入力すると、X線源4から被検体1に向けてX線ビーム3を照射させた状態にて、スキャン制御部12aがスキャン制御用プログラムに基づいてスキャン制御を実施する(ステップS1)。
【0034】
すなわち、ステップS1では、スキャン制御部12aが機構制御ボードを介して回転制御指令を回転機構6に与える。回転機構6は回転制御指令に従ってテーブル2を回転させ、スキャン制御を実施する。このスキャンの間、テーブル2が所定の回転角度ごとに、X線検出器5が被検体1から透過されてくる透過像を撮影し、デジタル透過像として制御処理本体部7に送出して、制御処理本体部7はこのデジタル透過像を収集し、記憶装置13に記憶する。
【0035】
従って、テーブル2が一回転するスキャンの間に記憶装置13には、X線検出器5から収集された多数のデジタル透過像が回転の順に並べられ、3次元のサイノグラムが記憶される。
【0036】
ステップS2では、制御処理部12が前処理部12bを実行する。
この前処理部12bは、記憶装置13に記憶された全部の透過像に対して前処理を行う。ここで、前処理とは例えばオフセット補正、感度補正、対数変換などである。
【0037】
これらオフセット補正、感度補正、対数変換などの前処理は画像処理で一般的に行われている手法を用いて処理する。
【0038】
図3は、前処理後の3次元のサイノグラムP0を説明する模式図である。なお、同図において、n,mはある回転角度における1枚の透過像の2次元面の画素番号、kは回転制御指令に従って回転機構6がテーブル2を回転させたときの回転方向の番号を表わしている。従って、各回転角度ごとの透過像を重ね合わすことにより、3次元のサイノグラムP0となっている。ここで、X線検出器5の検出素子に温度特性の変動や劣化などが生じていると、当該素子(画素)の出力が周囲に対し突出することで、サイノグラムP0にリング成分21a,21bが発生する。リング成分21a,21bは回転方向に直線として現れる。
【0039】
ステップS3では、制御処理部12がリング補正処理部12cを実行する。
リング補正処理部12cは、サイノグラムP0からリング成分21a,21bを抽出し、これを減算処理して取り除く処理である。
【0040】
<リング補正処理>
以下、図4ないし図7を用いて、リング補正処理について詳しく説明する。
図4はリング補正処理における一連の処理の流れを説明する図である。
【0041】
ステップS31では、サイノグラムP0に対する回転方向にローパスフィルタ処理(平均処理)を行う。
【0042】
図5は回転方向のローパスフィルタの一例を示す図であって、これはk番目の透過像に対して自身及び前後K枚の透過像を重み付き平均するフィルタW(j)で、重みはすべて1とする。このフィルタ処理の計算式は、
P1(n,m,k)={Σ(j=-KないしK)W(j)・P0(n,m,k+j)}
/(2K+1) ……(1)
で表わされる。なお、(2K+1)の「1」は中央のkの1枚の透過像を表わす。計算はすべてのn,m,kについて行う。なお、式(1)のkの端部の計算はサイノグラムが角度方向に循環している(例えば−10度は350度に等しい)として行う。
【0043】
図7はリング補正処理途中におけるサイノグラムの遷移を示す図である。同図(a)はリング補正処理前のサイノグラムP0であって、被検体1の信号成分(被検体1の構造から生じる本来の信号)の細かな凹凸や画像ノイズの凹凸にまぎれてリング成分21a,21bが含まれているが、明確にリング成分21a,21bと特定し難い。
【0044】
そこで、ステップS31では、リング補正処理前のサイノグラムP0に対し回転方向にローパスフィルタ処理を行うことにより、同図(b)に示すように回転方向に平均化したサイノグラムP1を得る。このサイノグラムP1は、被検体1の信号成分や画像ノイズは均されてなだらかになるのに対し、リング成分21a,21bは回転方向にほぼ一定であるのでそのまま残った状態となる。
【0045】
引き続き、リング補正処理部12cは、ステップS32による処理を実施する。ステップS32では、サイノグラムP1に対し、透過像に沿った2次元のローパスフィルタ処理を実施する。
【0046】
図6は透過像に沿った2次元ローパスフィルタの一例であって、これはn,m番目の画素(イ)を中心に5×5の画素範囲を重み付けして平均化するフィルタa(i,j)である。この2次元ローパスフィルタ処理の計算式は、
P2(n,m,k)=Σ(j=-2ないし2) Σ(i=-2ないし2) a(i,j)
・P1(n+i,m+j,k) ……(2)
で表わされる。計算はすべてのn,m,kについて行う。
【0047】
その結果、サイノグラムP1に対して2次元ローパスフィルタ処理を行って得られるサイノグラムP2は、図7(c)に示すようにリング成分21a,21bが均されてなだらかな山となってほぼ消滅する。
【0048】
リング補正処理におけるステップS33では、サイノグラムP1からサイノグラムP2を減算してリング成分を抽出する。このリング成分を抽出処理する計算式は、
P3(n,m,k)=P1(n,m,k)−P2(n,m,k) ……(3)
で表わされる。計算はすべてのn,m,kについて行う。
【0049】
その結果、リング成分抽出後のサイノグラムP3は、サイノグラムP1に現れていた均らされた被検体1の信号成分が取り除かれ、サイノグラムP3上にリング成分21a,21bだけを抽出できる(図7(d)参照)。
【0050】
さらに、ステップS34では、元のサイノグラムP0からリング成分21a,21bだけを抽出した第3のサイノグラムP3を減算し、リング成分21a,21bを低減させたリング補正処理後のサイノグラムP*を求める。この計算式は、
P*(n,m,k)=P0(n,m,k)−P3(n,m,k) ……(4)
で表わされる。計算はすべてのn,m,kについて行う。
【0051】
その結果、式(4)の計算処理を実行することにより、リング成分21a,21bが大幅に低減されたリング補正処理後のサイノグラムP*が得られる。<>終了。
【0052】
以上のようなリング補正処理を行った後、制御処理部12は再構成部12dを実行する(図2のステップS4)。すなわち、ステップS4では、リング補正処理したサイノグラムP*から被検体1の3次元画像を再構成する。
【0053】
再構成は、リング補正処理したサイノグラムP*を構成するk番目の透過像P*(n,m,k)に対し、n方向に|ω|に略比例する高域強調処理(CTで言うRamachandran & Lakshminarayanan フィルタ処理等)を行う。そして、高域強調処理後のk番目の透過像を被検体1の位置に仮想設定した3次元再構成グリッド上へX線経路に沿って逆投影(加算)する。すべての透過像について高域強調処理と逆投影とを行うことにより、被検体1の3次元画像を作成する。
【0054】
従って、以上のような実施の形態によれば、まず、3次元のサイノグラムP0に対し、回転方向にローパスフィルタ処理を施して当該回転方向にほぼ一定で直線状であるリング成分だけを変化させずに被検体1の信号成分を均してなだらかにしたサイノグラムP1を得た後、当該サイノグラムP1について透過像に沿った2次元ローパスフィルタ処理を行ってリング成分も均してなだらかにしたサイノグラムP2を得る。
【0055】
さらに、サイノグラムP1からサイノグラムP2を減算し、リング成分21a,21bを抽出したサイノグラムP3を取り出した後、3次元のサイノグラムP0からサイノグラムP3に現れるリング成分21a,21bを減算することでリング補正処理を行い、さらにリング成分を低減したリング補正処理後のサイノグラムP*を用いて再構成を行うので、円錐軌道断層撮影装置においてリング状アーチファクトを低減した被検体1の高品位な3次元画像を得ることができる。
【0056】
(上記実施の形態の変形例)
(変形例1)
上記実施の形態における作用の説明は、簡単化するために、図2,図4に示すように各ステップそれぞれでサイノグラム全体(全n,m,k)の処理を行うように説明したが、図2,図4に示す処理の流れに限定されない。
【0057】
例えば、ステップS1によるスキャンが完結する前に既に収集した透過像から順にステップ2による前処理を開始してもよく、また、最初の2K+1枚の透過像を収集した時点でステップS3によるリング補正処理を開始させてもよい。また、透過像番号kのループ内でステップS32,S33,S34の処理を行っても構わない。
【0058】
(変形例2)(請求項3対応)
上記実施の形態では、回転方向にローパスフィルタ処理を行って得られたサイノグラムP1に対して、透過像に沿った2次元ローパスフィルタ処理を行ったサイノグラムP2を減算処理(P1−P2)し、リング成分だけのサイノグラムP3を抽出しているが、このローパスフィルタ処理したものを減算する処理は結果としてハイパスフィルタ処理にほかならず、1回のハイパスフィルタ処理でおきかえることができる。すなわち、図4に示すステップS32,S33の処理の代わりに、例えば「ステップS32´:透過像に沿った2次元ハイパスフィルタ処理」に置き換えてもよい。
【0059】
図8はこの変形例2における透過像に沿った2次元ハイパスフィルタの一例であって、これはn,m番目の画素(ロ)を中心に5×5の画素範囲を重み付けして平均化するフィルタb(i,j)である。このフィルタ処理の計算式は、
P3(n,m,k)=Σ(j=-2ないし2) Σ(i=-2ないし2) b(i,j)
・P1(n+i,m+j,k) ……(5)
で表わされる。計算はすべてのn,m,kについて行う。
【0060】
なお、変形例2は、回転方向のローパス処理(S31)と透過像に沿った2次元ハイパスフィルタ処理(ステップS32´)は可逆の関係にあり、何れかの処理が先でもよく、また、同時に行ってもよい。
【0061】
変形例2のリング補正処理においては、3次元のサイノグラムP0に対して回転方向にローパスフィルタ処理することで回転方向にほぼ一定で直線状であるリング成分を変化させずに被検体1の信号成分を均してなだらかにしたサイノグラムP1を得ているが、当該サイノグラムP1はリング成分21a,21b以外は透過像に沿った高周波成分を持たないことから、透過像に沿った2次元ハイパス処理を実施することにより、直接リング成分のサイノグラムP3を抽出することができ、さらに、サイノグラムP0からリング成分だけを抽出したサイノグラムP3を減算することでリング成分を低減した補正後サイノグラムP*を求めることができ、リング成分を低減した補正後サイノグラムを用いて再構成することにより、円錐軌道断層撮影装置においてリング状アーチファクトを低減した被検体の高品位な3次元画像を作成できる。
【0062】
(変形例3)(請求項4対応)
この変形例は、上記実施の形態におけるリング補正処理の補正強度を設定変更する例である。
【0063】
具体的には、操作者がキーボード11aやマウス11b等の入力部 11を用いて、補正の強度を指示することにより、補正強度を設定変更する(補正強度設定手段)。リング補正処理部12cは、入力部11から設定される補正強度に応じて2次元ローパスフィルタを選択し、リング補正処理を行う。
【0064】
図9は変形例3における透過像に沿った2次元ローパスフィルタの一例を示す図であって、重み付けして平均するフィルタa1(i,j)、a2(i,j)である。
【0065】
同図(a)は、あるn,m番目の画素を中心に多くの画素数の範囲を重み付けして平均化するフィルタa1(i,j)を用いた例であって、リング成分の抽出が強く(ゆるやかな成分まで抽出)、補正強度が強くなる。
【0066】
同図(b)は、あるn,m番目の画素を中心に少ない画素数の範囲を重み付けして平均化するフィルタa2(i,j)を用いた例であって、リング成分の抽出が弱く(急峻な成分のみ抽出)、補正強度が弱くなる。
なお、補正強度の設定変更は2段階でなく、3段階以上としてもよい。
【0067】
従って、変形例3によれば、リング状アーチファクトが強いときはリング補正強度の強いフィルタを選択し、リング補正処理を行うことにより、リング成分を確実に抽出でき、また、リング状アーチファクトが弱いときは補正強度の弱いフィルタを選択することで、必要以上に強い補正をかけて被検体1の円弧状の部分ぼやかしてしまう(被検体1の円弧状部分はリングと似ているので、削減されてしまう)ことを防ぐことができる。
【0068】
(変形例4)(請求項4対応)
この変形例は、変形例2におけるリング補正処理の補正強度を設定変更する例である。
具体的には、操作者がキーボード11aやマウス11b等の入力部 11を用いて、補正の強度を指示することにより、補正強度を設定する(補正強度設定手段)。リング補正処理部12cは、入力部 11から設定された補正強度に応じて2次元ハイパススフィルタを選択し、リング補正処理を行う。
【0069】
図10は変形例4における透過像に沿った2次元ハイパスフィルタの一例であって、重み付けして平均するフィルタb1(i,j)、b2(i,j)である。
【0070】
図10(a)はハイパスフィルタの+部分(ハ)の画素数が多いため、リング成分の抽出が強く(ゆるやかな成分まで抽出)、補正強度が強くなる。
【0071】
同図(b)はハイパスフィルタの+部分(ハ)の画素数が少ないため、リング成分の抽出が弱く(急峻な成分のみ抽出)、補正強度が弱くなる。
なお、補正強度の設定変更は2段階でなく、3段階以上としてもよい。
【0072】
(変形例5)
上記実施の形態では、リング補正処理の補正強度を回転軸RAに近い位置ほど強くすることができる。これには、透過像の回転軸投影位置に近いほど、変形例3、変形例4で述べた補正強度が強い透過像に沿った2次元ローパスフィルタまたはハイパスフィルタを用いる(図9、図10)。
【0073】
例えばサイノグラム上のリング成分強度が同じであっても、断面像上ではリングアーチファクトは回転軸RAに近いほど強くなるので、補正強度を変えることにより、補正を均一にすることができる。
【0074】
(変形例6)
上記実施の形態及び変形例3においては、2次元ローパスフィルタとしての重み付け平均するフィルタの形やサイズは図示されたものに限定されない。
【0075】
また、2次元ローパスフィルタ処理は、周波数の低域通過処理であればよく、重み付け平均に限定されない。例えば、論理演算を含む諸演算を行う2次元ローパスフィルタ処理を用いてもよい。また、2次元ローパスフィルタ処理としては、例えば、メディアンフィルタ処理であってもよいし、フーリエ変換して周波数空間でフィルタ掛けした後、逆フーリエ変換によって戻す方法を用いてもよい。
【0076】
さらに、実施の形態及び変形例3においては、2次元のフィルタ処理を行っているが、1次元のフィルタ処理を2方向にわたって行ってもよい。つまり、一方の方向に対して1次元のローパスフィルタ処理を施し、そのフィルタ処理結果に他方の方向に対して1次元のローパスフィルタ処理を施すことにより、実質的に実施の形態及び変形例3の2次元ローパスフィルタ処理と同様の機能をもたせてもよい。
【0077】
図11は、異なるフィルタを用いた場合のリング補正途中のサイノグラム(一部)を示す図である。
【0078】
図11(a)は図6に示すフィルタを用いた例であり、同図(b)はメディアンフィルタを用いた例である。メディアンフィルタは、フィルタサイズ(フィルタマトリクス)内の画素値が小さい順に並べて真ん中にくる画素値(中央値)を選択するフィルタである。
【0079】
このメディアンフィルタを用いれば、リング成分21aの面積がフィルタサイズの面積の1/2より小さいとき、フィルタ処理後のサイノグラムP2を取得した段階でリング成分21aを完全に消すことができる。従って、サイノグラムP3ではリング成分21aを忠実に抽出でき、リング補正を高品質に行うことができる。
【0080】
メディアンフィルタとしては、フィルタサイズが大きいほど大きなリング成分まで削除できるので、補正強度が強いとも言える。従って、フィルタサイズを変えることで補正強度を変更できる。
【0081】
(変形例7)
変形例2、変形例4において、2次元ハイパスフィルタとしての重み付け平均するフィルタの形やサイズは図示されたものに限定されない。
【0082】
また、2次元ハイパスフィルタ処理は、周波数の高域通過処理であればよく、重み付け平均に限定されない。例えば、論理演算を含む諸演算を行う2次元ハイパスフィルタ処理を用いてもよい。また、例えば、4方向の傾斜の絶対値の最大値を選択するフィルタ処理であってもよい。また、例えば、フーリエ変換して周波数空間でフィルタ掛けした後、逆フーリエ変換によって戻す方法であってもよい。
【0083】
さらに、変形例2、変形例4においては、2次元のフィルタ処理を行っているが、1次元のフィルタ処理を2方向にわたって行ってもよい。つまり、一方の方向に対して1次元のハイパスフィルタ処理を施し、そのフィルタ処理結果に他方の方向に対して1次元のハイパスフィルタ処理を施すことにより、実質的に変形例2、変形例4の2次元ハイパスフィルタ処理と同様の機能をもたせてもよい。
【0084】
(変形例8)
上記実施の形態では、幾何条件を変更する機構を容易に追加することもできる。すなわち、図1に示す構成において、ラミノ角αL可変機構、回転軸RA上でX線光軸Lと最接近する点をC(図示せず)とし、X線焦点Fと点Cとの間の距離、またX線焦点Fと検出器中心Dとの間の距離、また点Cと検出器中心Dとの間の距離の変更を行うことによって透過像の拡大率を変更する機構、テーブル2を上下動させて被検体1の高さを変更できる機構、さらに回転軸RAをX線光軸Lと隔てる方向(紙面と直交方向)に平行移動させるオフセット機構(オフセットスキャン用)などを追加してもよい。
【0085】
(変形例9)
上記実施の形態では、X線ビーム3に対して被検体1を回転させているが、放射線ビームに対して被検体1を相対回転させるものであればよい。例えば、被検体1を回転軸RAに対して回転させるかわりに、X線源4とX線検出器5とを互いの位置関係を保ったまま一体的または別体的に回転軸RAに対して回転させてもよい。
【0086】
(変形例10)(請求項5対応)
上記実施の形態に述べた円錐軌道の断層撮影装置(傾斜CT)において、ラミノ角αLを90度に設定することができる。このような構成にしても、リング補正処理が好適なものとなる。ここで、ラミノ角αLを90度に設定した円錐軌道断層撮影装は、コーンビームCT(Computer Tomography)装置を構成する。すなわち、上記実施の形態におけるリング補正処理はコーンビームCT装置にも適用できる。
【0087】
(変形例11)
上記実施の形態では、スキャンは1回転する通常のスキャンを想定して説明したが、他のスキャン方式の場合も同様にリング補正処理を適用できる。例えば、180°+ファン角で回転するハーフスキャン、モーションアーチファクト除去のために1回転以上回転するオーバスキャン、回転中心投影位置を検出器中心からずらして1回転させるオフセットスキャン、回転軸方向に被検体1を相対移動させながら何回転も回転させるヘリカルスキャンなどにも、上記実施の形態のリング補正処理を適用させることができる。
【0088】
ここで、ハーフスキャン、オーバスキャン、オフセットスキャン、ヘリカルスキャンなどの場合、図5に示す回転方向のローパスフィルタは、回転位置kの端部で形を変え、左右非対象にする。すなわち、回転位置kの両端部で、端に近い側を狭くすることにより(角度の循環を使わないで)、サイノグラムの端部まで回転軸方向のローパスフィルタ処理が可能である。
【0089】
また、角度の循環を使わないこのようなローパスフィルタ処理は上記実施の形態の通常スキャンの場合でも可能である。
【0090】
(変形例12)
上記実施の形態では、X線検出器5としてFPDを用いたが、2次元分解能を有するものであれば、他の検出器の出力である透過像に対しても、リング補正処理を実行できる。
【0091】
(変形例13)
上記実施の形態では、放射線源としては、マイクロフォーカスX線管を有するX線源4を用いたが、他のX線源でもよく、またγ線、マイクロ波等の放射線源を用いてもよい。
【0092】
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係る断層撮影装置の一実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明に係る断層撮影装置における一連の処理の流れを示す図。
【図3】前処理後の3次元のサイノグラムを示す模式図。
【図4】リング補正処理における一連の処理の流れを示す図。
【図5】回転方向のローパスフィルタの一例を示す図。
【図6】透過像に沿った2次元ローパスフィルタの一例を示す図。
【図7】リング補正処理途中のサイノグラムの遷移を示す図
【図8】変形例2における透過像に沿った2次元ハイパスフィルタの一例を示す図。
【図9】変形例3における透過像に沿った2次元ローパスフィルタの一例を示す図。
【図10】変形例4における透過像に沿った2次元ハイパスフィルタの一例を示す図。
【図11】変形例6におけるリング補正処理途中のサイノグラム(一部)の遷移を示す図
【図12】従来の円錐軌道断層撮影装置の概念構成図。
【符号の説明】
【0094】
1…被検体、2…テーブル、3…X線ビーム、4…X線源、5…2次元X線検出器、6…回転機構、7…制御処理本体部、11…入力部、12…制御処理部、12a…スキャン制御部、12b…前処理部、12c…リング補正処理部、12d…再構成部、13…記憶装置、21a,21b…リング成分。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に対する放射線の照射方向を円錐に沿って変化させる円錐軌道の断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円錐軌道の断層撮影装置は、円形トモシンセシス(Tomosynthesis)装置、あるいは円形ラミノグラフ(Laminograph)、あるいは傾斜型CT(Computer Tomograpy)装置とも呼ばれている。
【0003】
円錐軌道の断層撮影装置は、放射線源から発生する放射線を被検体に照射し、当該被検体から透過してくる放射線を2次元分解能の放射線検出器で検出し、相対的に、被検体に対する放射線照射方向を円錐に沿って変化させ、この変化の各位置で得られる放射線検出器の出力から被検体の3次元画像を作成する構成である。
【0004】
近年、プリント基板等を検査するための円錐軌道の断層撮影装置が提案されている(特許文献1)。
【0005】
図12は従来の円錐軌道断層撮影装置の概念構成図である。この断層撮影装置は、X線焦点FからX線101を照射するX線源102と、被検体103から透過してくるX線101を検出しデジタル透過像として出力する2次元のX線検出器104と、被検体103を載置して回転する試料テーブル105とからなり、このテーブル105の回転軸106はX線101の中心と直角でなく90度よりも小さな交差角θで交差している。
【0006】
すなわち、この断層撮影装置は、X線源102のX線焦点Fから被検体103に向けてX線101を照射し、被検体103から透過してくるX線の透過像をX線検出器104で検出し、デジタル透過像に変換し収集する。このとき、被検体103は試料テーブル105によって回転される。その結果、X線検出器104は、被検体103が一回転する間に所定の回転角度ごとに撮影された多数の透過像を撮影し(スキャンと言う)、デジタル処理して被検体102の3次元画像(多数の断面像)を再構成する。
【0007】
再構成方法はフェルドカンプ等(非特許文献1)による方法などが用いられる。この方法は、フィルタリング処理と3次元再構成グリッド(格子)上への逆投影を行って被検体103の3次元画像を作成する。
【特許文献1】特開2003−329616号公報。
【非特許文献1】L.A.Feldkamp,L.C.Davis and J.W.Kress,Practical cone-beam algorithm,J.Opt.Soc.Am.A/Vol.1,No.6/June1984。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、以上のような円錐軌道断層撮影装置では、被検体103から見て相対的にX線源102とX線検出器104が相対する位置関係を保ったまま回転するので、X線源102(X線焦点F)からX線検出器104のある検出素子まで引いた投影線は回転軸106に対して回転している。それゆえに、回転軸106に対して垂直な断面を見たとき、投影線の交点は円を描く。
【0009】
その結果、ある検出素子に温度特性の変動や劣化などが生じていると、その検出素子の出力が周囲に対して突出する(リング成分となる)ことで、断面像上にリング状あるいは円弧状のアーチファクトが発生し、被検体103の3次元画像が劣化する問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、リング状アーチファクトを低減し、被検体の高品位な3次元画像を作成する断層撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明は、被検体に向けて放射線ビームを照射する放射線源と、前記被検体から透過してくる放射線ビームを透過像として検出する2次元の放射線検出器と、前記放射線源から照射される放射線ビーム内で、被検体または所定の位置関係を保ったまま一体的または別体的に前記放射線源,前記放射線検出器を回転軸に対して回転させる回転手段と、この回転手段によって回転を行うスキャンの間に所定の回転角度ごとに前記放射線検出器で検出した前記被検体の透過像を順次取込み、当該被検体の3次元画像を作成する制御処理部とを備えた断層撮影装置であって、
前記回転軸は、前記放射線ビームの中心線の方向に対して90度より小さなラミノ角で交差し、
前記制御処理部は、前記放射線検出器で検出した被検体の多数の透過像を前記回転手段による前記回転の順に並べた3次元のサイノグラムに対して回転方向にローパスフィルタ処理を行って第1のサイノグラムを取得し、この取得された第1のサイノグラムに対し前記透過像に沿った2次元ローパスフィルタ処理を行って第2のサイノグラムを取り出した後、前記第1のサイノグラムから前記第2のサイノグラムを減算してリング成分だけを抽出した第3のサイノグラムを取得し、さらに、前記第3次元のサイノグラムから前記第3のサイノグラムのリング成分を減算してリング補正処理した第4のサイノグラムを取得するリング補正処理手段と、このリング補正処理手段で得られた第4のサイノグラムから前記被検体の3次元画像を再構成する再構成手段とを有する構成である。
【0012】
このような手段を講じることにより、サイノグラムから回転方向に直線状に周囲から突出している成分であるリング成分(3次元画像上でリングを発生させる成分)を低減することができる。具体的には、3次元のサイノグラムに対し回転方向にローパスフィルタ処理することにより回転方向にほぼ一定で直線状であるリング成分を変化させずに被検体の信号成分を均してなだらかにした第1のサイノグラムを得、この得られた第1のサイノグラムに対し透過像に沿った2次元ローパスフィルタ処理を行ってリング成分も均してなだらかにした第2のサイノグラムを得、さらに第1のサイノグラムから第2のサイノグラムを減算してリング成分だけの第3のサイノグラムを得た後、前記第3次元のサイノグラムから前記第3のサイノグラムのリング成分を減算してリング補正処理した第4のサイノグラムを得るので、リング成分を低減することができ、リング成分の低減された第4のサイノグラムを用いて再構成するので、円錐軌道断層撮影装置にとってリング状アーチファクトを低減した被検体の高品位な3次元画像を作成することができる。
【0013】
なお、前記2次元ローパスフィルタ処理としては、その一種であるメディアンフィルタ処理を行って前記第2のサイノグラムを求めることにより、リング成分も均してなだらかにした第2のサイノグラムを得ることができる。
【0014】
(2) また、別の発明は、前記(1)の記載する制御処理部としては、前記放射線検出器で検出した前記被検体の多数の透過像を前記回転手段による前記回転の順に並べた3次元のサイノグラムに対し回転方向にローパスフィルタ処理を行って第1のサイノグラムを得た後、この第1のサイノグラムに対し前記透過像に沿った2次元ハイパスフィルタ処理を行ってリング成分だけを抽出した第2のサイノグラムを得、前記3次元のサイノグラムから前記抽出したリング成分を減算してリング補正処理した第3のサイノグラムを得るリング補正処理手段と、このリング補正処理後の第3のサイノグラムから被検体の3次元画像を再構成する再構成手段とを有する構成であってもよい。
【0015】
以上のような手段を講じたことにより、3次元のサイノグラムに対し回転方向にローパスフィルタ処理を行って得られる第1のサイノグラムは、回転方向に直線状であるリング成分以外は透過像に沿った高周波成分を持たないので、透過像に沿った2次元ハイパスフィルタ処理することにより、直接リング成分だけの第2のサイノグラムを抽出でき、処理工程を減らしつつサイノグラムからリング成分を確実に低減でき、これにより円錐軌道断層撮影装置にとってはリング状アーチファクトを低減した被検体の高品位な3次元画像を作成できる。
【0016】
また、前記(1),(2)の構成に新たに、前記リングの補正強度を設定する補正強度設定手段を設け、前記リング補正処理手段は、前記補正強度設定手段から設定された補正強度に応じて、前記透過像に沿った2次元ローパスフィルタまたは前記透過像に沿った2次元ハイパスフィルタを選択し、当該2次元ローパスフィルタ処理または当該2次元ハイパスフィルタ処理を施すことにより、リング状アーチファクトが強いほどリング補正の強度を強くなるように変更でき、必要以上に強い補正をかけて被検体の円弧状の部分をぼかしてしまうことを防ぐことができる。
【0017】
なお、前記ラミノ角としては、90度に設定することにより、コーンビームCT装置として構成し、リング状アーチファクトを低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リング補正処理を実施した後のサイノグラムを用いて再構成処理するので、円錐軌道断層撮影装置で生じるリング状アーチファクトを確実に低減でき、被検体の高品位な3次元画像を作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る断層撮影装置の一実施形態を示す構成図である。
この断層撮影装置は、被検体1が載置されるテーブル2と、テーブル2上の被検体1に向けてX線ビーム3を照射するX線源4と、被検体1から透過してくるX線ビーム3を透過像(透過データ)として検出する2次元X線検出器5と、被検体1を載置させた状態で回転軸RA(垂直方向)に対して回転させるテーブル2及び回転機構6からなる回転手段と、この回転手段による1回転のスキャンの間に所定の回転角度ごとにX線検出器5で検出して得られるデジタル透過像から被検体1の3次元画像を再構成する制御処理本体部7とで構成される。
【0020】
回転軸RAは、X線ビーム3の中心線L(ほぼX線源4のX線焦点FとX線検出器5の中心とを結ぶ線であって、以下、X線光軸Lと称する)の方向に対し90度より小さなラミノ角αLで交差している。回転軸RAは、X線光軸Lとラミノ角αLで交差しているのでなく、X線光軸Lの方向とラミノ角αLで交差している。すなわち、回転軸RAとX線光軸Lが交わっている必要はない。ラミノ角αLは概略的には40度から80度の範囲で設定される。
【0021】
テーブル2は、プラスチックやカーボンなどで作られ、X線の吸収を少なくするためにテーブル内部が中空に形成されている。
【0022】
X線源4は、照射するX線ビーム3の発散点であるX線焦点Fが1μm程度のマイクロフォーカスX線管、制御処理本体部7からの設定制御指令に従って管電圧、管電流等を制御する制御回路及び制御回路の制御指令に応じた所望の管電圧、管電流をX線管に印加する電気回路からなり、例えば基台上にアーム(図示せず)などに支持されている。ここで、X線ビーム3は、実際に検出されるX線のことであり、X線ビーム3の外側の領域にはみ出して検出されないX線も放射されている。
【0023】
X線検出器5は、多数のX線検出素子が2次元のマトリックス(n,m)状に配列されたX線フラットパネルディテクタ(FPD)等が用いられ、X線源4からのX線ビーム3の照射のもとに被検体3内部を透過してくるX線透過像を2次元分解能で検出し、制御処理本体部7へ送信して、制御処理本体部7がこれを取り込む。
【0024】
被検体1は、前述したようにテーブル2上に載置され、制御処理本体部7からの回転制御指令に従って回転機構6によりテーブル2と共に、X線ビーム3内で回転軸RAに対して回転される。
【0025】
なお、回転機構6には図示されていないがエンコーダが取り付けられ、例えば回転によるスキャンの間に所定の回転角度を読み取って制御処理本体部7に送出する。
【0026】
制御処理本体部7は、通常のコンピュータが用いられ、ハードウェア的な構成としては、キーボード11a、マウス11bなどの入力部11と、CPU等で構成される制御処理部12と、磁気ディスクまたは光ディスクなどの記憶装置13と、表示部14が設けられ、その他にX線検出器5との間でデータのやり取りを行うインタフェース(図示せず)や回転機構6との間で回転制御に関するデータのやり取りを行う中継機能の役割を果す機構制御ボード(図示せず)などが設けられている。
【0027】
制御処理部12は、機能的には、個別のプログラムデータに基づいて、スキャン制御を実施するとともに、X線検出器5からデジタル透過像を収集し、記憶するスキャン制御部12aと、このスキャン制御部12aにより収集された透過像の前処理を行う前処理部12bと、断面像上に生じるリング状アーチファクトの低減化処理を行うリング補正処理部12cと、再構成により被検体1の3次元画像(多数の断面像)を作成する再構成部12dとが設けられている。
【0028】
制御処理部12としては、入力部11からの指示のもとにX線源4に対し管電圧、管電流等の設定制御指令を送出し、所望の管電圧、管電流等に設定するとともに、X線の放射、停止指令も送出する。なお、管電圧、管電流は被検体1の大きさに合わせて変えることができる。
【0029】
すなわち、制御処理部12は、入力部11及び表示部14を用いて、操作者による操作のもとにメニュー選択、管電圧、管電流等を含む撮影条件の設定、必要な機構部分の手動操作、スキャンの開始、ステータスの読取り、3次元画像の表示などを行う。
【0030】
なお、制御処理本体部7は、前述したように汎用のコンピュータが用いられるが、例えば構成部分1〜6と一体化したCPU内蔵の専用断層撮影装置を用いて、実現しても構わない。
【0031】
次に、以上のように構成された断層撮影装置の一実施の形態における作用について、図2を参照して説明する。
【0032】
先ず、操作者は、断層撮影に先立ち、テーブル2上に被検体1を載置し、断層撮影条件の設定を行う。断層撮影条件としては、X線源4の管電圧、管電流等の断層撮影X線条件と、ラミノ角αL、被検体1中の撮影位置(拡大率を含む)等の断層撮影幾何条件と、回転速度、1回転中に取得する透過像の撮影枚数その他必要な条件などがあるが、これら条件設定については従来から広く実施されているので、ここでは省略する。
【0033】
操作者は、入力部11からスキャン開始指示を入力すると、X線源4から被検体1に向けてX線ビーム3を照射させた状態にて、スキャン制御部12aがスキャン制御用プログラムに基づいてスキャン制御を実施する(ステップS1)。
【0034】
すなわち、ステップS1では、スキャン制御部12aが機構制御ボードを介して回転制御指令を回転機構6に与える。回転機構6は回転制御指令に従ってテーブル2を回転させ、スキャン制御を実施する。このスキャンの間、テーブル2が所定の回転角度ごとに、X線検出器5が被検体1から透過されてくる透過像を撮影し、デジタル透過像として制御処理本体部7に送出して、制御処理本体部7はこのデジタル透過像を収集し、記憶装置13に記憶する。
【0035】
従って、テーブル2が一回転するスキャンの間に記憶装置13には、X線検出器5から収集された多数のデジタル透過像が回転の順に並べられ、3次元のサイノグラムが記憶される。
【0036】
ステップS2では、制御処理部12が前処理部12bを実行する。
この前処理部12bは、記憶装置13に記憶された全部の透過像に対して前処理を行う。ここで、前処理とは例えばオフセット補正、感度補正、対数変換などである。
【0037】
これらオフセット補正、感度補正、対数変換などの前処理は画像処理で一般的に行われている手法を用いて処理する。
【0038】
図3は、前処理後の3次元のサイノグラムP0を説明する模式図である。なお、同図において、n,mはある回転角度における1枚の透過像の2次元面の画素番号、kは回転制御指令に従って回転機構6がテーブル2を回転させたときの回転方向の番号を表わしている。従って、各回転角度ごとの透過像を重ね合わすことにより、3次元のサイノグラムP0となっている。ここで、X線検出器5の検出素子に温度特性の変動や劣化などが生じていると、当該素子(画素)の出力が周囲に対し突出することで、サイノグラムP0にリング成分21a,21bが発生する。リング成分21a,21bは回転方向に直線として現れる。
【0039】
ステップS3では、制御処理部12がリング補正処理部12cを実行する。
リング補正処理部12cは、サイノグラムP0からリング成分21a,21bを抽出し、これを減算処理して取り除く処理である。
【0040】
<リング補正処理>
以下、図4ないし図7を用いて、リング補正処理について詳しく説明する。
図4はリング補正処理における一連の処理の流れを説明する図である。
【0041】
ステップS31では、サイノグラムP0に対する回転方向にローパスフィルタ処理(平均処理)を行う。
【0042】
図5は回転方向のローパスフィルタの一例を示す図であって、これはk番目の透過像に対して自身及び前後K枚の透過像を重み付き平均するフィルタW(j)で、重みはすべて1とする。このフィルタ処理の計算式は、
P1(n,m,k)={Σ(j=-KないしK)W(j)・P0(n,m,k+j)}
/(2K+1) ……(1)
で表わされる。なお、(2K+1)の「1」は中央のkの1枚の透過像を表わす。計算はすべてのn,m,kについて行う。なお、式(1)のkの端部の計算はサイノグラムが角度方向に循環している(例えば−10度は350度に等しい)として行う。
【0043】
図7はリング補正処理途中におけるサイノグラムの遷移を示す図である。同図(a)はリング補正処理前のサイノグラムP0であって、被検体1の信号成分(被検体1の構造から生じる本来の信号)の細かな凹凸や画像ノイズの凹凸にまぎれてリング成分21a,21bが含まれているが、明確にリング成分21a,21bと特定し難い。
【0044】
そこで、ステップS31では、リング補正処理前のサイノグラムP0に対し回転方向にローパスフィルタ処理を行うことにより、同図(b)に示すように回転方向に平均化したサイノグラムP1を得る。このサイノグラムP1は、被検体1の信号成分や画像ノイズは均されてなだらかになるのに対し、リング成分21a,21bは回転方向にほぼ一定であるのでそのまま残った状態となる。
【0045】
引き続き、リング補正処理部12cは、ステップS32による処理を実施する。ステップS32では、サイノグラムP1に対し、透過像に沿った2次元のローパスフィルタ処理を実施する。
【0046】
図6は透過像に沿った2次元ローパスフィルタの一例であって、これはn,m番目の画素(イ)を中心に5×5の画素範囲を重み付けして平均化するフィルタa(i,j)である。この2次元ローパスフィルタ処理の計算式は、
P2(n,m,k)=Σ(j=-2ないし2) Σ(i=-2ないし2) a(i,j)
・P1(n+i,m+j,k) ……(2)
で表わされる。計算はすべてのn,m,kについて行う。
【0047】
その結果、サイノグラムP1に対して2次元ローパスフィルタ処理を行って得られるサイノグラムP2は、図7(c)に示すようにリング成分21a,21bが均されてなだらかな山となってほぼ消滅する。
【0048】
リング補正処理におけるステップS33では、サイノグラムP1からサイノグラムP2を減算してリング成分を抽出する。このリング成分を抽出処理する計算式は、
P3(n,m,k)=P1(n,m,k)−P2(n,m,k) ……(3)
で表わされる。計算はすべてのn,m,kについて行う。
【0049】
その結果、リング成分抽出後のサイノグラムP3は、サイノグラムP1に現れていた均らされた被検体1の信号成分が取り除かれ、サイノグラムP3上にリング成分21a,21bだけを抽出できる(図7(d)参照)。
【0050】
さらに、ステップS34では、元のサイノグラムP0からリング成分21a,21bだけを抽出した第3のサイノグラムP3を減算し、リング成分21a,21bを低減させたリング補正処理後のサイノグラムP*を求める。この計算式は、
P*(n,m,k)=P0(n,m,k)−P3(n,m,k) ……(4)
で表わされる。計算はすべてのn,m,kについて行う。
【0051】
その結果、式(4)の計算処理を実行することにより、リング成分21a,21bが大幅に低減されたリング補正処理後のサイノグラムP*が得られる。<>終了。
【0052】
以上のようなリング補正処理を行った後、制御処理部12は再構成部12dを実行する(図2のステップS4)。すなわち、ステップS4では、リング補正処理したサイノグラムP*から被検体1の3次元画像を再構成する。
【0053】
再構成は、リング補正処理したサイノグラムP*を構成するk番目の透過像P*(n,m,k)に対し、n方向に|ω|に略比例する高域強調処理(CTで言うRamachandran & Lakshminarayanan フィルタ処理等)を行う。そして、高域強調処理後のk番目の透過像を被検体1の位置に仮想設定した3次元再構成グリッド上へX線経路に沿って逆投影(加算)する。すべての透過像について高域強調処理と逆投影とを行うことにより、被検体1の3次元画像を作成する。
【0054】
従って、以上のような実施の形態によれば、まず、3次元のサイノグラムP0に対し、回転方向にローパスフィルタ処理を施して当該回転方向にほぼ一定で直線状であるリング成分だけを変化させずに被検体1の信号成分を均してなだらかにしたサイノグラムP1を得た後、当該サイノグラムP1について透過像に沿った2次元ローパスフィルタ処理を行ってリング成分も均してなだらかにしたサイノグラムP2を得る。
【0055】
さらに、サイノグラムP1からサイノグラムP2を減算し、リング成分21a,21bを抽出したサイノグラムP3を取り出した後、3次元のサイノグラムP0からサイノグラムP3に現れるリング成分21a,21bを減算することでリング補正処理を行い、さらにリング成分を低減したリング補正処理後のサイノグラムP*を用いて再構成を行うので、円錐軌道断層撮影装置においてリング状アーチファクトを低減した被検体1の高品位な3次元画像を得ることができる。
【0056】
(上記実施の形態の変形例)
(変形例1)
上記実施の形態における作用の説明は、簡単化するために、図2,図4に示すように各ステップそれぞれでサイノグラム全体(全n,m,k)の処理を行うように説明したが、図2,図4に示す処理の流れに限定されない。
【0057】
例えば、ステップS1によるスキャンが完結する前に既に収集した透過像から順にステップ2による前処理を開始してもよく、また、最初の2K+1枚の透過像を収集した時点でステップS3によるリング補正処理を開始させてもよい。また、透過像番号kのループ内でステップS32,S33,S34の処理を行っても構わない。
【0058】
(変形例2)(請求項3対応)
上記実施の形態では、回転方向にローパスフィルタ処理を行って得られたサイノグラムP1に対して、透過像に沿った2次元ローパスフィルタ処理を行ったサイノグラムP2を減算処理(P1−P2)し、リング成分だけのサイノグラムP3を抽出しているが、このローパスフィルタ処理したものを減算する処理は結果としてハイパスフィルタ処理にほかならず、1回のハイパスフィルタ処理でおきかえることができる。すなわち、図4に示すステップS32,S33の処理の代わりに、例えば「ステップS32´:透過像に沿った2次元ハイパスフィルタ処理」に置き換えてもよい。
【0059】
図8はこの変形例2における透過像に沿った2次元ハイパスフィルタの一例であって、これはn,m番目の画素(ロ)を中心に5×5の画素範囲を重み付けして平均化するフィルタb(i,j)である。このフィルタ処理の計算式は、
P3(n,m,k)=Σ(j=-2ないし2) Σ(i=-2ないし2) b(i,j)
・P1(n+i,m+j,k) ……(5)
で表わされる。計算はすべてのn,m,kについて行う。
【0060】
なお、変形例2は、回転方向のローパス処理(S31)と透過像に沿った2次元ハイパスフィルタ処理(ステップS32´)は可逆の関係にあり、何れかの処理が先でもよく、また、同時に行ってもよい。
【0061】
変形例2のリング補正処理においては、3次元のサイノグラムP0に対して回転方向にローパスフィルタ処理することで回転方向にほぼ一定で直線状であるリング成分を変化させずに被検体1の信号成分を均してなだらかにしたサイノグラムP1を得ているが、当該サイノグラムP1はリング成分21a,21b以外は透過像に沿った高周波成分を持たないことから、透過像に沿った2次元ハイパス処理を実施することにより、直接リング成分のサイノグラムP3を抽出することができ、さらに、サイノグラムP0からリング成分だけを抽出したサイノグラムP3を減算することでリング成分を低減した補正後サイノグラムP*を求めることができ、リング成分を低減した補正後サイノグラムを用いて再構成することにより、円錐軌道断層撮影装置においてリング状アーチファクトを低減した被検体の高品位な3次元画像を作成できる。
【0062】
(変形例3)(請求項4対応)
この変形例は、上記実施の形態におけるリング補正処理の補正強度を設定変更する例である。
【0063】
具体的には、操作者がキーボード11aやマウス11b等の入力部 11を用いて、補正の強度を指示することにより、補正強度を設定変更する(補正強度設定手段)。リング補正処理部12cは、入力部11から設定される補正強度に応じて2次元ローパスフィルタを選択し、リング補正処理を行う。
【0064】
図9は変形例3における透過像に沿った2次元ローパスフィルタの一例を示す図であって、重み付けして平均するフィルタa1(i,j)、a2(i,j)である。
【0065】
同図(a)は、あるn,m番目の画素を中心に多くの画素数の範囲を重み付けして平均化するフィルタa1(i,j)を用いた例であって、リング成分の抽出が強く(ゆるやかな成分まで抽出)、補正強度が強くなる。
【0066】
同図(b)は、あるn,m番目の画素を中心に少ない画素数の範囲を重み付けして平均化するフィルタa2(i,j)を用いた例であって、リング成分の抽出が弱く(急峻な成分のみ抽出)、補正強度が弱くなる。
なお、補正強度の設定変更は2段階でなく、3段階以上としてもよい。
【0067】
従って、変形例3によれば、リング状アーチファクトが強いときはリング補正強度の強いフィルタを選択し、リング補正処理を行うことにより、リング成分を確実に抽出でき、また、リング状アーチファクトが弱いときは補正強度の弱いフィルタを選択することで、必要以上に強い補正をかけて被検体1の円弧状の部分ぼやかしてしまう(被検体1の円弧状部分はリングと似ているので、削減されてしまう)ことを防ぐことができる。
【0068】
(変形例4)(請求項4対応)
この変形例は、変形例2におけるリング補正処理の補正強度を設定変更する例である。
具体的には、操作者がキーボード11aやマウス11b等の入力部 11を用いて、補正の強度を指示することにより、補正強度を設定する(補正強度設定手段)。リング補正処理部12cは、入力部 11から設定された補正強度に応じて2次元ハイパススフィルタを選択し、リング補正処理を行う。
【0069】
図10は変形例4における透過像に沿った2次元ハイパスフィルタの一例であって、重み付けして平均するフィルタb1(i,j)、b2(i,j)である。
【0070】
図10(a)はハイパスフィルタの+部分(ハ)の画素数が多いため、リング成分の抽出が強く(ゆるやかな成分まで抽出)、補正強度が強くなる。
【0071】
同図(b)はハイパスフィルタの+部分(ハ)の画素数が少ないため、リング成分の抽出が弱く(急峻な成分のみ抽出)、補正強度が弱くなる。
なお、補正強度の設定変更は2段階でなく、3段階以上としてもよい。
【0072】
(変形例5)
上記実施の形態では、リング補正処理の補正強度を回転軸RAに近い位置ほど強くすることができる。これには、透過像の回転軸投影位置に近いほど、変形例3、変形例4で述べた補正強度が強い透過像に沿った2次元ローパスフィルタまたはハイパスフィルタを用いる(図9、図10)。
【0073】
例えばサイノグラム上のリング成分強度が同じであっても、断面像上ではリングアーチファクトは回転軸RAに近いほど強くなるので、補正強度を変えることにより、補正を均一にすることができる。
【0074】
(変形例6)
上記実施の形態及び変形例3においては、2次元ローパスフィルタとしての重み付け平均するフィルタの形やサイズは図示されたものに限定されない。
【0075】
また、2次元ローパスフィルタ処理は、周波数の低域通過処理であればよく、重み付け平均に限定されない。例えば、論理演算を含む諸演算を行う2次元ローパスフィルタ処理を用いてもよい。また、2次元ローパスフィルタ処理としては、例えば、メディアンフィルタ処理であってもよいし、フーリエ変換して周波数空間でフィルタ掛けした後、逆フーリエ変換によって戻す方法を用いてもよい。
【0076】
さらに、実施の形態及び変形例3においては、2次元のフィルタ処理を行っているが、1次元のフィルタ処理を2方向にわたって行ってもよい。つまり、一方の方向に対して1次元のローパスフィルタ処理を施し、そのフィルタ処理結果に他方の方向に対して1次元のローパスフィルタ処理を施すことにより、実質的に実施の形態及び変形例3の2次元ローパスフィルタ処理と同様の機能をもたせてもよい。
【0077】
図11は、異なるフィルタを用いた場合のリング補正途中のサイノグラム(一部)を示す図である。
【0078】
図11(a)は図6に示すフィルタを用いた例であり、同図(b)はメディアンフィルタを用いた例である。メディアンフィルタは、フィルタサイズ(フィルタマトリクス)内の画素値が小さい順に並べて真ん中にくる画素値(中央値)を選択するフィルタである。
【0079】
このメディアンフィルタを用いれば、リング成分21aの面積がフィルタサイズの面積の1/2より小さいとき、フィルタ処理後のサイノグラムP2を取得した段階でリング成分21aを完全に消すことができる。従って、サイノグラムP3ではリング成分21aを忠実に抽出でき、リング補正を高品質に行うことができる。
【0080】
メディアンフィルタとしては、フィルタサイズが大きいほど大きなリング成分まで削除できるので、補正強度が強いとも言える。従って、フィルタサイズを変えることで補正強度を変更できる。
【0081】
(変形例7)
変形例2、変形例4において、2次元ハイパスフィルタとしての重み付け平均するフィルタの形やサイズは図示されたものに限定されない。
【0082】
また、2次元ハイパスフィルタ処理は、周波数の高域通過処理であればよく、重み付け平均に限定されない。例えば、論理演算を含む諸演算を行う2次元ハイパスフィルタ処理を用いてもよい。また、例えば、4方向の傾斜の絶対値の最大値を選択するフィルタ処理であってもよい。また、例えば、フーリエ変換して周波数空間でフィルタ掛けした後、逆フーリエ変換によって戻す方法であってもよい。
【0083】
さらに、変形例2、変形例4においては、2次元のフィルタ処理を行っているが、1次元のフィルタ処理を2方向にわたって行ってもよい。つまり、一方の方向に対して1次元のハイパスフィルタ処理を施し、そのフィルタ処理結果に他方の方向に対して1次元のハイパスフィルタ処理を施すことにより、実質的に変形例2、変形例4の2次元ハイパスフィルタ処理と同様の機能をもたせてもよい。
【0084】
(変形例8)
上記実施の形態では、幾何条件を変更する機構を容易に追加することもできる。すなわち、図1に示す構成において、ラミノ角αL可変機構、回転軸RA上でX線光軸Lと最接近する点をC(図示せず)とし、X線焦点Fと点Cとの間の距離、またX線焦点Fと検出器中心Dとの間の距離、また点Cと検出器中心Dとの間の距離の変更を行うことによって透過像の拡大率を変更する機構、テーブル2を上下動させて被検体1の高さを変更できる機構、さらに回転軸RAをX線光軸Lと隔てる方向(紙面と直交方向)に平行移動させるオフセット機構(オフセットスキャン用)などを追加してもよい。
【0085】
(変形例9)
上記実施の形態では、X線ビーム3に対して被検体1を回転させているが、放射線ビームに対して被検体1を相対回転させるものであればよい。例えば、被検体1を回転軸RAに対して回転させるかわりに、X線源4とX線検出器5とを互いの位置関係を保ったまま一体的または別体的に回転軸RAに対して回転させてもよい。
【0086】
(変形例10)(請求項5対応)
上記実施の形態に述べた円錐軌道の断層撮影装置(傾斜CT)において、ラミノ角αLを90度に設定することができる。このような構成にしても、リング補正処理が好適なものとなる。ここで、ラミノ角αLを90度に設定した円錐軌道断層撮影装は、コーンビームCT(Computer Tomography)装置を構成する。すなわち、上記実施の形態におけるリング補正処理はコーンビームCT装置にも適用できる。
【0087】
(変形例11)
上記実施の形態では、スキャンは1回転する通常のスキャンを想定して説明したが、他のスキャン方式の場合も同様にリング補正処理を適用できる。例えば、180°+ファン角で回転するハーフスキャン、モーションアーチファクト除去のために1回転以上回転するオーバスキャン、回転中心投影位置を検出器中心からずらして1回転させるオフセットスキャン、回転軸方向に被検体1を相対移動させながら何回転も回転させるヘリカルスキャンなどにも、上記実施の形態のリング補正処理を適用させることができる。
【0088】
ここで、ハーフスキャン、オーバスキャン、オフセットスキャン、ヘリカルスキャンなどの場合、図5に示す回転方向のローパスフィルタは、回転位置kの端部で形を変え、左右非対象にする。すなわち、回転位置kの両端部で、端に近い側を狭くすることにより(角度の循環を使わないで)、サイノグラムの端部まで回転軸方向のローパスフィルタ処理が可能である。
【0089】
また、角度の循環を使わないこのようなローパスフィルタ処理は上記実施の形態の通常スキャンの場合でも可能である。
【0090】
(変形例12)
上記実施の形態では、X線検出器5としてFPDを用いたが、2次元分解能を有するものであれば、他の検出器の出力である透過像に対しても、リング補正処理を実行できる。
【0091】
(変形例13)
上記実施の形態では、放射線源としては、マイクロフォーカスX線管を有するX線源4を用いたが、他のX線源でもよく、またγ線、マイクロ波等の放射線源を用いてもよい。
【0092】
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係る断層撮影装置の一実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明に係る断層撮影装置における一連の処理の流れを示す図。
【図3】前処理後の3次元のサイノグラムを示す模式図。
【図4】リング補正処理における一連の処理の流れを示す図。
【図5】回転方向のローパスフィルタの一例を示す図。
【図6】透過像に沿った2次元ローパスフィルタの一例を示す図。
【図7】リング補正処理途中のサイノグラムの遷移を示す図
【図8】変形例2における透過像に沿った2次元ハイパスフィルタの一例を示す図。
【図9】変形例3における透過像に沿った2次元ローパスフィルタの一例を示す図。
【図10】変形例4における透過像に沿った2次元ハイパスフィルタの一例を示す図。
【図11】変形例6におけるリング補正処理途中のサイノグラム(一部)の遷移を示す図
【図12】従来の円錐軌道断層撮影装置の概念構成図。
【符号の説明】
【0094】
1…被検体、2…テーブル、3…X線ビーム、4…X線源、5…2次元X線検出器、6…回転機構、7…制御処理本体部、11…入力部、12…制御処理部、12a…スキャン制御部、12b…前処理部、12c…リング補正処理部、12d…再構成部、13…記憶装置、21a,21b…リング成分。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けて放射線ビームを照射する放射線源と、前記被検体から透過してくる放射線ビームを透過像として検出する2次元の放射線検出器と、前記放射線源から照射される放射線ビーム内で、被検体または所定の位置関係を保ったまま一体的または別体的に前記放射線源,前記放射線検出器を回転軸に対して回転させる回転手段と、この回転手段によって回転を行うスキャンの間に所定の回転角度ごとに前記放射線検出器で検出した前記被検体の透過像を順次取込み、当該被検体の3次元画像を作成する制御処理部とを備えた断層撮影装置において、
前記回転軸は、前記放射線ビームの中心線の方向に対して90度より小さなラミノ角で交差し、
前記制御処理部は、前記放射線検出器で検出した被検体の多数の透過像を前記回転手段による前記回転の順に並べた3次元のサイノグラムに対し回転方向にローパスフィルタ処理を行って第1のサイノグラムを取得し、この取得された第1のサイノグラムに対し前記透過像に沿った2次元ローパスフィルタ処理を行って第2のサイノグラムを取り出した後、前記第1のサイノグラムから前記第2のサイノグラムを減算してリング成分だけを抽出した第3のサイノグラムを取得し、さらに、前記3次元のサイノグラムから前記第3のサイノグラムのリング成分を減算してリング補正処理した第4のサイノグラムを取得するリング補正処理手段と、このリング補正処理手段で得られた第4のサイノグラムから前記被検体の3次元画像を再構成する再構成手段とを有することを特徴とする断層撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の断層撮影装置において、
前記2次元ローパスフィルタ処理としては、メディアンフィルタ処理を行って前記第2のサイノグラムを求めることを特徴とする断層撮影装置。
【請求項3】
被検体に向けて放射線ビームを照射する放射線源と、前記被検体から透過してくる放射線ビームを透過像として検出する2次元の放射線検出器と、前記放射線源から照射される放射線ビーム内で、被検体または所定の位置関係を保ったまま一体的または別体的に前記放射線源,前記放射線検出器を回転軸に対して回転させる回転手段と、この回転手段によって回転を行うスキャンの間に所定の回転角度ごとに前記放射線検出器で検出した前記被検体の透過像を順次取込み、当該被検体の3次元画像を作成する制御処理部とを備えた断層撮影装置において、
前記回転軸は、前記放射線ビームの中心線の方向に対して90度より小さなラミノ角で交差し、
前記制御処理部は、前記放射線検出器で検出した被検体の多数の透過像を前記回転手段による前記回転の順に並べた3次元のサイノグラムに対し回転方向にローパスフィルタ処理を行って第1のサイノグラムを取得し、この取得した第1のサイノグラムに対し前記透過像に沿った2次元ハイパスフィルタ処理を行ってリング成分だけを抽出した第2のサイノグラムを得、前記3次元のサイノグラムから前記抽出したリング成分を減算してリング補正処理した第3のサイノグラムを取得するリング補正処理手段と、このリング補正処理後の第3のサイノグラムから前記被検体の3次元画像を再構成する再構成手段とを有することを特徴とする断層撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の断層撮影装置において、
前記リングの補正強度を設定する補正強度設定手段を設け、
前記リング補正処理手段は、前記補正強度設定手段から設定された補正強度に応じて、前記透過像に沿った2次元ローパスフィルタまたは前記透過像に沿った2次元ハイパスフィルタを選択し、当該2次元ローパスフィルタ処理または当該2次元ハイパスフィルタ処理を施すことを特徴とする断層撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の断層撮影装置において、
前記ラミノ角は、90度に設定することにより、コーンビームCT装置として構成することを特徴とする断層撮影装置。
【請求項1】
被検体に向けて放射線ビームを照射する放射線源と、前記被検体から透過してくる放射線ビームを透過像として検出する2次元の放射線検出器と、前記放射線源から照射される放射線ビーム内で、被検体または所定の位置関係を保ったまま一体的または別体的に前記放射線源,前記放射線検出器を回転軸に対して回転させる回転手段と、この回転手段によって回転を行うスキャンの間に所定の回転角度ごとに前記放射線検出器で検出した前記被検体の透過像を順次取込み、当該被検体の3次元画像を作成する制御処理部とを備えた断層撮影装置において、
前記回転軸は、前記放射線ビームの中心線の方向に対して90度より小さなラミノ角で交差し、
前記制御処理部は、前記放射線検出器で検出した被検体の多数の透過像を前記回転手段による前記回転の順に並べた3次元のサイノグラムに対し回転方向にローパスフィルタ処理を行って第1のサイノグラムを取得し、この取得された第1のサイノグラムに対し前記透過像に沿った2次元ローパスフィルタ処理を行って第2のサイノグラムを取り出した後、前記第1のサイノグラムから前記第2のサイノグラムを減算してリング成分だけを抽出した第3のサイノグラムを取得し、さらに、前記3次元のサイノグラムから前記第3のサイノグラムのリング成分を減算してリング補正処理した第4のサイノグラムを取得するリング補正処理手段と、このリング補正処理手段で得られた第4のサイノグラムから前記被検体の3次元画像を再構成する再構成手段とを有することを特徴とする断層撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の断層撮影装置において、
前記2次元ローパスフィルタ処理としては、メディアンフィルタ処理を行って前記第2のサイノグラムを求めることを特徴とする断層撮影装置。
【請求項3】
被検体に向けて放射線ビームを照射する放射線源と、前記被検体から透過してくる放射線ビームを透過像として検出する2次元の放射線検出器と、前記放射線源から照射される放射線ビーム内で、被検体または所定の位置関係を保ったまま一体的または別体的に前記放射線源,前記放射線検出器を回転軸に対して回転させる回転手段と、この回転手段によって回転を行うスキャンの間に所定の回転角度ごとに前記放射線検出器で検出した前記被検体の透過像を順次取込み、当該被検体の3次元画像を作成する制御処理部とを備えた断層撮影装置において、
前記回転軸は、前記放射線ビームの中心線の方向に対して90度より小さなラミノ角で交差し、
前記制御処理部は、前記放射線検出器で検出した被検体の多数の透過像を前記回転手段による前記回転の順に並べた3次元のサイノグラムに対し回転方向にローパスフィルタ処理を行って第1のサイノグラムを取得し、この取得した第1のサイノグラムに対し前記透過像に沿った2次元ハイパスフィルタ処理を行ってリング成分だけを抽出した第2のサイノグラムを得、前記3次元のサイノグラムから前記抽出したリング成分を減算してリング補正処理した第3のサイノグラムを取得するリング補正処理手段と、このリング補正処理後の第3のサイノグラムから前記被検体の3次元画像を再構成する再構成手段とを有することを特徴とする断層撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の断層撮影装置において、
前記リングの補正強度を設定する補正強度設定手段を設け、
前記リング補正処理手段は、前記補正強度設定手段から設定された補正強度に応じて、前記透過像に沿った2次元ローパスフィルタまたは前記透過像に沿った2次元ハイパスフィルタを選択し、当該2次元ローパスフィルタ処理または当該2次元ハイパスフィルタ処理を施すことを特徴とする断層撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の断層撮影装置において、
前記ラミノ角は、90度に設定することにより、コーンビームCT装置として構成することを特徴とする断層撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−38878(P2010−38878A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205576(P2008−205576)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
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