説明

断層測定装置及び断層測定方法

【課題】同じ支持板の径(面積)であっても、より光路長の変化を大きくすることのできる断層測定装置を提供する。
【解決手段】断層測定装置を、光を放出する光源と、光源から放出された光を第一の光と第二の光に分割する第一の光分割部材と、第一の光の光路を変化させる光路可変部材と、第一の光と前記第二の光を結合させる光結合部材と、結合部材により結合した光の振幅を測定する振幅測定部材と、を有し、光路可変部材は、支持板41と、支持板を支持し、かつ回転させる回転支持部材と、第一の光を第三の光と第四の光24に分割する第二の光分割部材と、支持板上に配置される支持反射部材43と、支持反射部材から反射された第三の光を再度支持反射部材に入射させる第一の固定反射部材45と、支持反射部材から反射された第四の光を再度支持反射部材に入射させる第二の固定反射部材48を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断層測定装置及び断層測定方法に関し、より詳細には光干渉技術を用いた断層測定装置及び断層測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉技術を用いた断層測定装置とは、光源から射出された光を少なくとも二つの光に分割し、その分割された光をそれぞれ異なる光路を経た後で再び重ね合わせ、光路差により発生する干渉縞を測定し、この干渉縞に基づき被測定物の表面状態を把握する装置である。
【0003】
公知の断層測定装置及び断層測定方法に関する技術としては、例えば、下記特許文献1の図1〜図4に、支持板に支持反射部材を配置させ、支持板を回転させる光路可変部材を有する断層測定装置及びそれを用いた断層測定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/062288号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、光路長の変化を大きくするためには、支持反射部材を配置する支持板の半径、面積を大きくする必要があり、断層測定装置が大型化してしまうという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、同じ支持板の半径(面積)であっても、より光路長の変化を大きくすることのできる断層測定装置及び断層測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る断層測定装置は、光を放出する光源と、光源から放出された光を第一の光と第二の光に分割する第一の光分割部材と、第一の光の光路を変化させる光路可変部材と、第一の光と第二の光を結合させる光結合部材と、光結合部材により結合した光の振幅を測定する振幅測定部材と、を有し、光路可変部材は、支持板と、支持板を支持し、かつ回転させる回転支持部材と、第一の光を第三の光と第四の光に分割する第二の光分割部材と、支持板上に配置される支持反射部材と、支持反射部材から反射された第三の光を再度前記支持反射部材に入射させる第一の固定反射部材と、支持反射部材から反射された第四の光を再度前記支持反射部材に入射させる第二の固定反射部材を有する。
【0008】
また、上記課題を解決する本発明のほかの一観点に係る断層測定方法は、光を放出する
手順と、放出された光を第一の光と第二の光に分割する手順と、第二の光を被測定物に照
射し、反射させる手順と、第一の光を第三の光と第四の光に分割する手順と、第三の光を
支持板に配置された支持反射部材に反射させる手順と、支持反射部材に反射された第三の
光を第一の固定反射部材に反射させる手順と、第一の固定反射部材に反射された第三の光
と被測定物に反射された第二の光を結合する第一の結合手順と、第一の結合手順により結
合された光の振幅を測定する第一の測定手順と、第四の光を支持板に配置された支持反射
部材に反射させる手順と、支持反射部材に反射された第四の光を第二の固定反射部材に反
射させる手順と、第二の固定反射部材に反射された第四の光と被測定物に反射された第二
の光を結合する第二の結合手順と、第二の結合手順により結合された光の振幅を測定する
第二の測定手順とを有するものである。
【発明の効果】
【0009】
以上により本発明によれば、同じ支持板の半径(面積)であっても、より光路長の変化を大きくすることのできる断層測定装置及び断層測定方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】

【図1】実施形態1に係る断層測定装置の機能ブロックを示す図である。
【図2】実施形態1に係る光路可変部材の概略を示す図である。
【図3】実施形態1に係る支持反射部材の概略を示す図である。
【図4】実施形態1に係る光路を示す図である。
【図5】実施形態1に係る光路を示す図である。
【図6】実施形態1における支持板回転角度と光路長変化の関係を示す図である。
【図7】実施形態1に係る振幅測定部材の機能ブロックを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施形態に限定されるものではない。また、明細書及び請求の範囲において「第一の」「第二の」等の記載は、一つの実施形態、請求項において存在する同種の構成要件を区別し説明するためにのみ用いる語句にすぎず、この語句によって機能が限定されるわけではない。
【0012】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る断層測定装置の概略を示す機能ブロック図であり、図2は、本実施形態に係る光路可変部材の概略を示す図である。
本実施形態に係る断層測定装置1は、光を放出する光源2と、光源2から放出された光を第一の光21と第二の光22に分割する第一の光分割部材3と、第一の光21の光路を変化させる光路可変部材4と、第一の光21(後述の第三の光23及び第四の光24を含む。)と第二の光22を結合させる光結合部材5と、光結合部材5により結合した光の振幅を測定する振幅測定部材6とを有して構成されている。
【0013】
本実施形態において、光源2は、被測定物を観察するために用いられる光を放出するための部材であって、この限りにおいて限定されるわけではないが低コヒーレンス光を放出することができるものであることが好ましい。ここで、「低コヒーレンス光」とは、発光する光が互いに干渉しにくい光をいい、断層測定以外における影響を受けにくいため、この光を用いることで必要な情報だけをより精度よく抽出することができる。光源2の例としては、上記機能を有する限りにおいて特に限定されるわけではないが、例えばSLD(Super Luminescent Diode)を用いることが好ましい。
【0014】
本実施形態において、光分割部材3は、少なくとも光源2を二以上に分割することができる部材である。光分割部材3としては、上記機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えばハーフミラーや光カプラを好適に用いることができる。
【0015】
また、本実施形態において、光路可変部材4は、光路を変化させることのできる部材であって、この機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、図2の一例で示すように、支持板41と、支持板41を支持し、かつ回転させる回転支持部材42と、支持板41の回転中心411を通る直線412に沿って支持板41上に配置される支持反射部材43と、支持反射部材43から反射された光を反射して再度支持反射部材43に入射させる固定反射部材45とを有する。
【0016】
本実施形態において支持板41は、支持反射部材43を保持し、回転可能である程度に硬いものであれば特に制限されないが、材料としては例えば金属を好適に用いることができる。また、支持板41の形状は、特に制限されないが、回転を均一に行えるよう円形状であることが好ましい。
【0017】
また本実施形態において回転支持部材42は、支持板41を支持かつ回転することができるものであって、この限りにおいて限定されるわけではないが、例えば軸421と、この軸を回転させる回転機構422とを有する装置であることは好ましい一例である。また、本実施形態に係る支持反射部材43は、入射された光と反射される光とが平行となるよう配置されていることが好ましい。具体的には、図3の例で示すように、二つの反射部材431、432を、その反射面433、434が直角で向き合うように組み合わせて結合されたいわゆるコーナーリフレクターを用いることが好ましく、双方の反射面433、434の中間面435と回転中心411を通る直線412とがほぼ直角になるように配置されていることがより好ましい。このように組み合わせることで、支持反射部材に入射された光と支持反射部材によって反射された光の進行方向を平行にすることができ、更に、第一の光21の入射方向を中間面435と平行な方向とすることで、第一の光を反射できる領域を広く確保することができる。
【0018】
図2において、第一の固定反射部材45は、支持板外において固定して配置される反射部材であって、支持反射部材43から入射された光を反射して支持反射部材43に再度入射させることができるものである。材料としては、この機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、プリズム又はミラーであることは好ましい一例である。第二の固定反射部材48も同様である。
【0019】
第一の光分割部材3により分割された第一の光21は、第二の光分割部材47によって第三の光23と第四の光24に分割(分岐)される。なお、本明細書、特許請求の範囲では、第二の光分割部材47によって分割された第三の光23又は第四の光24を第一の光ということがある。第三の光23は光ファイバ471を通過して第一の出力端461に導かれる。第四の光24は、光ファイバ472を通過して第二の出力端462に導かれる。
【0020】
図4及び図5は、本実施形態における光路の変化を示す図である。図4において、支持板41は、413の方向に回転している。支持板41が本図の位置にある場合、第一の出力端461から出射された第三の光23は、支持反射部材43に入射される。支持反射部材43に入射された光は、第一の反射面433及び第二の反射面434に順次反射され、第一の固定反射部材45に入射される。第一の固定反射部材45に入射された光は、第一の固定反射部材45の反射面451により反射され、支持反射部材43に入射され、第一の固定反射部材45に入射された経路とほぼ同一の経路を逆向きに通過して、第一の出力端461に戻る。支持板41の回転に伴って、支持反射部材43の位置が変動し、第三の光が出力端461から出射されてから出力端461に戻ってくるまでの光路長が変化する。
【0021】
図5は、図4の状態から支持板41がθ回転した状態における光路を示す図である。第二の出力端462から出射された第四の光24は、支持反射部材43に入射される。支持反射部材43に入射された光は、支持反射部材43の第一の反射面433及び第二の反射面434に反射されて、第二の固定反射部材48に入射される。第二の固定反射部材48に入射された光は、第二の固定反射部材48の反射面481に反射され、再度支持反射部材43に入射される。支持反射部材43に入射された光は、第二の出力端462から第二の固定反射部材48に入射されるまでの経路とほぼ同一の経路を逆向きに通過し、第二の出力端462に戻る。支持板41の回転に伴って、支持反射部材43の位置が変動し、第四の光が出力端462から出射されてから出力端462に戻ってくるまでの光路長が変化する。
【0022】
光結合部材5(図1参照)は、上記光分割部材3により分割される第一の光21(前述の第三の光23及び第四の光24を含む。)と第二の光22を結合させることのできるものである。この機能を有する限りにおいて限定されないが、例えばハーフミラーや光カプラを好適に用いることができる。なお、本実施形態において、光結合部材5において結合される光は、上記光路可変部材4により光路が変化した第一の光21と、被測定物7に対して照射され反射された第二の光22である。
また、本実施形態において、振幅測定部材6は、光結合部材5が結合した光の振幅を測定することのできるものである。振幅測定部材6は、上記の限りにおいて限定されるわけではないが、例えば図7の例で示すように、検出器61と、この検出器61に接続され所定の処理を行う情報処理装置62を有して構成されていることが好ましい。
【0023】
本実施形態における検出器61としては、入射される光63を定量化、例えば電気信号化して出力することのできるものであり、例えばフォトダイオード、CCD等を好適に用いることができる。
【0024】
図7は、本実施形態に係る振幅測定部材6の機能ブロックを示す図である。本実施形態に係る情報処理装置62は、検出器61が検出した光63の量に対し処理を行い、その結果を表示することのできるものである。いわゆるパーソナルコンピュータ及びそれに組み込まれる各種計算プログラムが該当する。
【0025】
なお、検出器61に入射される光が微弱である場合、光量を増幅するために、情報処理装置62と検出器61との間に、例えばロックインアンプ等の増幅部材を配置してこの光量を増幅させることは好ましい一例である。
【0026】
図6は、支持板の回転角度と光路長変化の概略を示す図である。71は、支持板回転角度に対する第三の光の光路長変化を示している。第三の光の光路長は、l1変化させることができる。72は、支持板回転角度に対する第四の光の光路長であり、第四の光の光路長は、l3-l2変化させることができる。本実施形態では、光路長変化を一つの支持反射部材43でリレーするものである。本実施形態によれば、光路長を合計l3連続的に変化させることができ、第二の出力端462及び第二の固定反射部材452を設けない場合と比較して、支持板の半径を大きくすることなく、光路差をl3-l1増加させることができる。第三の光23を導く第一の光ファイバ471と第四の光24を導く第二の光ファイバ372の長さを調節して第三の光23の光路長の最大の長さl1と第四の光24の最小の長さl2との差を0に近づけることが全体の光路長変化を大きくする観点からは好ましい。l1とl2の差を0とした場合、第一の光を分割しないで第二の出力端462及び第二の固定反射部材452を配置しない構成と比較して本実施形態によれば2倍の光路長変化を確保することができる。
【0027】
本実施形態においては、第一の光21を第三の光23と第四の光24の2個に分割してそれぞれ支持反射部材43に光を入射させているが、第一の光21を3個以上に分割することも可能である。この場合、第一の光21を分割させる数が増えるほど、光路長変化を大きくすることができる。
【0028】
本実施形態では、支持板41に1個の支持反射部材43を配置しているが、支持板41に複数の支持反射部材43を配置することも可能である。この場合、回転に対するスキャン数を増加させることができ、被測定物の状態を効率的に測定することができる。支持反射部材43の調整に光路長拡大に伴う難易度はなく、光軸調整も支持板41の回転のむらによる影響を受けにくい。
【0029】
以上、本実施形態に係る断層測定装置は、第一の光21を第三の光23と第四の光24に分割し、それぞれの光を支持反射部材43に入射させることにより、支持板41の半径、面積を大きくすることなく光路長変化を大きくすることができ、光路長変化の大きい断層測定装置を大幅に小型化することが可能となる。すなわち、一つの支持反射部材43に2回光を入射させて利用することによって、支持反射部材43を効率的に利用して光路長変化を大きくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、断層測定装置及び断層測定方法として産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0031】
1…断層測定装置、2…光源、3…光分割部材、4…光路可変部材、5…光結合部材、6…振幅測定部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放出する光源と、
前記光源から放出された光を第一の光と第二の光に分割する第一の光分割部材と、
前記第一の光の光路を変化させる光路可変部材と、
前記第一の光と前記第二の光を結合させる光結合部材と、
前記光結合部材により結合した光の振幅を測定する振幅測定部材と、を有し、
前記光路可変部材は、
支持板と、
前記支持板を支持し、かつ回転させる回転支持部材と、
前記第一の光を第三の光と第四の光に分割する第二の光分割部材と、
前記支持板上に配置される支持反射部材と、
前記支持反射部材から反射された前記第三の光を再度前記支持反射部材に入射させる第一の固定反射部材と、
前記支持反射部材から反射された第四の光を再度前記支持反射部材に入射させる第二の固定反射部材と、を有する断層測定装置。
【請求項2】
前記第三の光の光路長と前記第四の光の光路長を連続的に変化させる請求項1記載の断層測定装置。
【請求項3】
前記光結合部材は、前記光路可変部材により光路長が変化した第一の光と、被測定物に対して照射され反射した第二の光を結合するものである請求項1乃至2のいずれかに記載の断層測定装置。
【請求項4】
光を放出する手順と、
前記放出された光を第一の光と第二の光に分割する手順と、
前記第二の光を被測定物に照射し、反射させる手順と、
前記第一の光を第三の光と第四の光に分割する手順と、
前記第三の光を支持板に配置された支持反射部材に反射させる手順と、
前記支持反射部材に反射された第三の光を第一の固定反射部材に反射させる手順と、
前記第一の固定反射部材に反射された第三の光と前記被測定物に反射された第二の光を結合する第一の結合手順と、
前記第一の結合手順により結合された光の振幅を測定する第一の測定手順と、
前記第四の光を前記支持板に配置された前記支持反射部材に反射させる手順と、
前記支持反射部材に反射された第四の光を第二の固定反射部材に反射させる手順と、
前記第二の固定反射部材に反射された第四の光と前記被測定物に反射された第二の光を結合する第二の結合手順と、
前記第二の結合手順により結合された光の振幅を測定する第二の測定手順とを有する断層測定方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−44726(P2013−44726A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185073(P2011−185073)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】