説明

断層測定装置

【課題】
同じ支持板の半径(面積)であっても、より光路長の変化を大きくすることのできる断層測定装置を提供する。
【解決手段】
断層測定装置の光路可変部材を、第一の支持板及び第二の支持板と、第一の支持板を回転可能に支持する第一の回転支持部材と、第二の支持板を回転可能に支持する第二の回転支持部材と、第一の支持板に配置された第一の支持反射部材と、第二の支持板に配置された第二の支持反射部材と、固定反射部材とを有し、第二の支持反射部材に反射された第一の光が第一の支持反射部材に入射及び反射され、第一の支持反射部材に反射された第一の光が固定反射部材に入射され、第一の支持板と第二の支持板が反対向きに回転するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断層測定装置に関し、より詳細には光干渉技術を用いた断層測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉技術を用いた断層測定装置とは、光源から射出された光を少なくとも二つの光に分割し、その分割された光をそれぞれ異なる光路を経た後で再び重ね合わせ、光路差により発生する干渉縞を測定し、この干渉縞に基づき被測定物の表面状態を把握する装置である。
【0003】
公知の断層測定装置に関する技術としては、例えば下記特許文献1の図1〜図4に、支持板に支持反射部材を配置させ、支持板を回転させる光路可変部材を有する断層測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/062288号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、効率的に光路長の変化を大きくするためには支持板の半径を大きくする必要があり、断層測定装置が大型化してしまうという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、同じ支持板の半径(面積)であっても、より光路長の変化を大きくすることのできる断層測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る断層測定装置は、光を放出する光源と、光源から放出された光を第一の光と第二の光に分割する第一の光分割部材と、第一の光の光路を変化させる光路可変部材と、第一の光と第二の光を結合させる光結合部材と、光結合部材により結合した光の振幅を測定する振幅測定部材とを有し、光路可変部材は、第一の支持板及び第二の支持板と、第一の支持板を回転可能に支持する第一の回転支持部材と、第二の支持板を回転可能に支持する第二の回転支持部材と、第一の支持板に配置された第一の支持反射部材と、第二の支持板に配置された第二の支持反射部材と、固定反射部材とを有し、第二の支持反射部材に反射された第一の光が第一の支持反射部材に入射及び反射され、第一の支持反射部材に反射された第一の光が固定反射部材に入射され、第一の支持板と第二の支持板が反対方向に回転するものである。
【発明の効果】
【0008】
以上により本発明によれば、同じ支持板の半径(面積)であっても、より光路長の変化を大きくすることのできる断層測定装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1に係る断層測定装置の機能ブロックを示す図である。
【図2】実施形態1に係る光路可変部材の概略を示す図である。
【図3】実施形態1に係る支持反射部材の概略を示す図である。
【図4】実施形態1に係る振幅測定部材の機能ブロックを示す図である。
【図5】実施形態2に係る光路可変部材の概略を示す図である。
【図6】実施形態2に係る第一の支持板と第二の支持板の接触部の概略を示す図である。
【図7】実施形態3に係る光路可変部材の概略を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施形態に限定されるものではない。また、明細書及び請求の範囲において「第一の」「第二の」等の記載は、一つの実施形態、請求項において存在する同種の構成要件を区別し説明するためにのみ用いる語句にすぎず、この語句によって機能が限定されるわけではない。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る断層測定装置の概略を示す機能ブロック図であり、図2は、本実施形態に係る光路可変部材の概略を示す図である。
【0012】
本実施形態に係る断層測定装置1は、光を放出する光源2と、光源2から放出された光を第一の光21と第二の光22に分割する第一の光分割部材3と、第一の光21の光路を変化させる光路可変部材4と、第一の光21と第二の光22を結合させる光結合部材5と、光結合部材5により結合した光の振幅を測定する振幅測定部材6とを有して構成されている。
【0013】
本実施形態において、光源2は、被測定物を観察するために用いられる光を放出するための部材であって、この限りにおいて限定されるわけではないが低コヒーレンス光を放出することができるものであることが好ましい。ここで、「低コヒーレンス光」とは、発光する光が互いに干渉しにくい光をいい、断層測定以外における影響を受けにくいため、この光を用いることで必要な情報だけをより精度よく抽出することができる。光源2の例としては、上記機能を有する限りにおいて特に限定されるわけではないが、例えばSLD(Super Luminescent Diode)を用いることが好ましい。
【0014】
本実施形態において、光分割部材3は、少なくとも光源2を二以上に分割することができる部材である。光分割部材3としては、上記機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えばハーフミラーや光カプラを好適に用いることができる。
【0015】
また、本実施形態において、光路可変部材4は、光路を変化させることのできる部材であって、この機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、図2の一例で示すように、第一の支持板41及び第二の支持板42と、第一の支持板41を回転可能に支持し、かつ回転させる第一の回転支持部材46と、第二の支持板42を回転可能に支持し、かつ回転させる第二の回転支持部材47と、支持板41の回転中心411を通る直線412に沿って第一の支持板41上に配置される第一の支持反射部材43及び第二の支持板42の回転中心421を通る直線422に沿って第二の支持板42上に配置される第二の支持反射部材44と、第二の支持反射部材44から反射された光を反射して再度第二の支持反射部材44に入射させる固定反射部材45とを有する。
【0016】
本実施形態において第一の支持板41は、第一の支持反射部材43を保持し、回転可能である程度に硬いものであれば特に制限されないが、材料としては例えば金属を好適に用いることができる。また、支持板41の形状は、特に制限されないが、回転を均一に行えるよう円形状であることが好ましい。第二の支持板42も同様である。
【0017】
また本実施形態において第一の回転支持部材46は、支持板41を回転可能に支持し、かつ回転することができるものであって、この限りにおいて限定されるわけではないが、例えば軸461と、この軸を回転させる回転機構462とを有する装置であることは好ましい一例である。第二の回転支持部材47も同様である。
【0018】
また、本実施形態に係る第一の支持反射部材43は、入射された光と反射される光とが平行となるよう配置されていることが好ましい。具体的には、図3の例で示すように、二つの反射部材431、432を、その反射面433、434が直角で向き合うように組み合わせて結合させたいわゆるコーナーリフレクターを用いることが好ましく、双方の反射面433、434の中間面435と回転中心411を通る直線412とがほぼ直角になるように配置されていることがより好ましい。このように組み合わせることで、支持反射部材に入射された光と支持反射部材によって反射された光の進行方向を平行にすることができ、更に、第一の光21の入射方向を中間面435と平行な方向とすることで、第一の光を反射できる領域を広く確保することができる。第二の支持反射部材44も同様である。
【0019】
図2において、固定反射部材45は、支持板外において固定して配置される反射部材であって、第二の支持反射部材44から入射された光を反射して第二の支持反射部材44に再度入射させることができるものである。材料としては、この機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、プリズム又はミラーであることは好ましい一例である。
【0020】
図2において、第一の光21は、出力端48から出射され、第一の支持反射部材43の第一の反射面433に入射及び反射され、第一の支持反射部材43の第二の反射面434に入射及び反射される。第一の支持反射部材43に反射された光は、第二の支持反射部材44の第一の反射面443に入射及び反射され、第二の支持反射部材44の第二の反射面444に入射及び反射される。第二の支持反射部材44に反射された光は、固定反射部材45に入射され、固定反射部材45の反射面451に入射及び反射される。固定反射部材45に反射された光は、固定反射部材45に入射された経路とほぼ同一の経路を逆向きに通過して出力端48に入射され、戻される。
【0021】
第一の支持板41の回転方向413は反時計回りであり、第二の支持板42の回転方向423は時計回りであり、第一の支持板41と第二の支持板42は反対方向に回転している。また、第一の支持板41と第二の支持板42は、第一の支持反射部材43の回転角度と第二の支持反射部材44の回転角度が互いに同期するように同一の回転速度で回転している。したがって、一周期毎に、第一の支持反射部材43と第二の支持反射部材44は図2に示す位置関係となる。そして、第一の支持板41と第二の支持板42の回転に伴って第一の光21の光路長が変化する。本実施形態では、第一の支持板41の半径r1と第二の支持板42の半径r2はほぼ同一とされている。ただし、支持板の加工精度には限界があるため、r1とr2の差が2mm程度となる場合がある。第一の支持板41と第二の支持板42の半径が異なっていても測定は可能であるが、本実施形態のように第一の支持板41と第二の支持板42の半径を同一のものとすれば、第一の支持反射部材43と第二の支持反射部材44の回転運動に伴う直線運動からのずれを互いに相補することができ、容易に大きな光路長変化を確保することができる。
【0022】
光結合部材5(図1参照)は、上記光分割部材3により分割される第一の光21と第二の光22を結合させることのできるものである。この機能を有する限りにおいて限定されないが、例えばハーフミラーや光カプラを好適に用いることができる。なお、本実施形態において、光結合部材5において結合される光は、上記光路可変部材4により光路が変化した第一の光21と、被測定物7に対して照射され反射された第二の光22である。
【0023】
また、本実施形態において、振幅測定部材6は、光結合部材5が結合した光の振幅を測定することのできるものである。振幅測定部材6は、上記の限りにおいて限定されるわけではないが、例えば図4の例で示すように、検出器61と、この検出器61に接続され所定の処理を行う情報処理装置62を有して構成されていることが好ましい。
【0024】
本実施形態における検出器61としては、入射される光63を定量化、例えば電気信号化して出力することのできるものであり、例えばフォトダイオード、CCD等を好適に用いることができる。
【0025】
図4は、本実施形態に係る振幅測定部材6の機能ブロックを示す図である。本実施形態に係る情報処理装置62は、検出器61が検出した光63の量に対し処理を行い、その結果を表示することのできるものである。いわゆるパーソナルコンピュータ及びそれに組み込まれる各種計算プログラムが該当する。
【0026】
なお、検出器61に入射される光が微弱である場合、光量を増幅するために、情報処理装置62と検出器61との間に、例えばロックインアンプ等の増幅部材を配置してこの光量を増幅させることは好ましい一例である。
【0027】
以上、本実施形態に係る断層測定装置は、第一の支持板41に配置した第一の支持反射部材43に反射された光が第二の支持板42に配置された第二の支持反射部材44に入射され、第二の支持反射部材44に反射された光が固定反射部材45に入射される構成とし、第一の支持板41と第二の支持板42を反対向きに回転させることで、支持板の半径を大きくすることなく光路長変化を大きくすることができ、光路長変化の大きい断層測定装置を大幅に小型化することができる。
【0028】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る光路可変部材4の概略を示す図である。実施形態1と同じ構成については説明を省略する。実施形態2が実施形態1と異なるのは、第一の支持板41の側面と第二の支持板42の側面が49において接触している点である。
【0029】
図6は、第一の支持板41と第二の支持板42の接触部49を拡大した図である。支持板41の側面414と第二の支持板42の側面424は歯車形状に加工されており、互いにかみ合うように接触させられている。本実施形態においては、支持板の側面を歯車形状としているが、第二の支持板43に第一の支持板42の回転駆動力が伝達され、第二の支持板43が回転する構造であれば、歯車形状でなくても構わない。
【0030】
図5に示すとおり、第一の回転支持部材46は、回転機構462を有しているが、第二の回転支持部材47には回転機構はない。本実施形態によれば、回転機構が一つであっても光路変化を拡大することができ、二つの支持板の回転角度の同期を容易に実現することができるという効果がある。
【0031】
(実施形態3)
図7は、実施形態3に係る光路可変部材4の概略を示す図である。実施形態1と同じ構成については説明を省略する。実施形態3が実施形態1と異なるのは、第一の支持板41の上に、第一の支持反射部材43の内側に第三の支持反射部材50を配置し、第二の支持板42の上に、第二の支持反射部材44の内側に第四の支持反射部材51を配置した点である。
【0032】
出力端48から出射された第一の光21は、第三の支持反射部材50に入射され、反射される。第三の支持反射部材50に反射された光は、第四の支持反射部材51に入射され、反射される。第四の支持反射部材51に反射された光は、第一の支持反射部材43に入射され、反射される。第一の支持反射部材43に反射された光は、第二の支持反射部材44に入射され、反射される。第二の支持反射部材44に反射された光は、固定反射部材45に入射され、反射される。固定反射部材45に反射された光は、固定反射部材に入射された経路とほぼ同一の経路を逆向きに通過し、出力端48に戻される。
【0033】
本実施形態によれば、第一の支持反射部材43の内側に第三の支持反射部材50を配置し、第二の支持反射部材44の内側に第四の支持反射部材51を配置したことにより、実施形態1よりも更に光路長の変化を大きくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、断層測定装置として産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0035】
1・・・断層測定装置、2・・・光源、3・・・光分割部材、4・・・光路可変部材、5・・・光結合部材、6・・・振幅測定部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放出する光源と、
前記光源から放出された光を第一の光と第二の光に分割する光分割部材と、
前記第一の光の光路を変化させる光路可変部材と、
前記第一の光と前記第二の光を結合させる光結合部材と、
前記光結合部材により結合した光の振幅を測定する振幅測定部材と、を有し、
前記光路可変部材は、
第一の支持板及び第二の支持板と、
前記第一の支持板を回転可能に支持する第一の回転支持部材と、
前記第二の支持板を回転可能に支持する第二の回転支持部材と、
前記第一の支持板に配置された第一の支持反射部材と、
前記第二の支持板に配置された第二の支持反射部材と、
固定反射部材と、を有し、
前記第一の支持反射部材に反射された第一の光が前記第二の支持反射部材に入射及び反射され、
前記第二の支持反射部材に反射された第一の光が前記固定反射部材に入射及び反射され、
前記第一の支持板と前記第二の支持板が反対方向に回転する断層測定装置。
【請求項2】
前記第一の支持反射部材の回転角度と前記第二の支持反射部材の回転角度が同期するように前記第一の支持板と前記第二の支持板が回転する請求項1記載の断層測定装置。
【請求項3】
前記第一の支持板の側面と前記第二の支持板の側面が接触している請求項1記載の断層測定装置。
【請求項4】
前記第一の支持板の半径と前記第二の支持板の半径の差が2mm以内である請求項1記載の断層測定装置。
【請求項5】
前記光結合部材は、前記光路長可変部材により光路長が変化した第一の光と、被測定物に対して照射され反射した第二の光を結合する請求項1乃至4のいずれかに記載の断層測定装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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