説明

断層画像作成方法および放射線撮像装置

【課題】空間分解能の異方性を低減し、アーチファクトを低減する断層画像作成方法および放射線撮像装置を提供する。
【解決手段】放射線を測定する検出器21を複数有する検出器群21Aと、検出器21の前面に配置して放射線の入射方向を制限するコリメータ26と、データ処理装置12と、を備えるSPECT装置1による断層画像作成方法であって、データ処理装置12は、検出器群21Aから複数の投影データを収集する収集ステップと、収集した投影データから断層画像を再構成する再構成ステップと、再構成された断層画像の各軸方向に、異なった遮断周波数のフィルタリング処理を行う補正処理ステップと、を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断層画像作成方法および放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線計測装置を核医学分野に応用した装置として、ガンマカメラおよびこのガンマカメラを用いた単一光子放射型コンピュータ断層撮影装置(以下、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置と称する)(放射線撮像装置)がある。ガンマカメラは一般的に、放射性同位体を含む化合物の分布を測定し透過画像イメージ(プラナー画像)を提供するのに対し、SPECT装置はガンマカメラを回転計測することにより断層面のイメージ(断層画像)を提供するものである。
【0003】
これまでのガンマカメラに使用されている放射線検出器は、一枚の大きな結晶からなるシンチレータと複数の光電子増倍管とを組み合わせたものが主流であった。また、このガンマカメラは放射線の入射位置決定を複数の光電子増倍管の出力信号から重心演算により行っている。しかしながら、この方法では空間分解能10mm程度が限界であり、臨床現場で用いるには不十分であるため、より高い空間分解能を持つガンマカメラが求められている。
【0004】
近年、より高い空間分解能をもつものとして、ピクセル型の放射線検出器(以下、検出器と称する)が開発されてきている。ピクセル型の検出器には、シンチレータとフォトダイオードで構成されたものや、放射線を電気信号に変換する半導体で構成されたもの等がある。いずれも、小さな検出器単位、即ちピクセル単位で位置信号を取得する。したがって、検出器の固有分解能は、ピクセルサイズで決定され、空間的に離散した計測を行う。また、ピクセルサイズが1〜2mm程度のピクセル型検出器も開発され、空間分解能は10mm以下を達成し、大幅に改善されてきた。
【0005】
なお、以下のピクセル型の検出器の説明において、「検出器」と「検出器群」という用語を用いるが、検出器は任意の形状の1ピクセルを構成するものをいい、検出器群は検出器が配列された集合体をいうものとする。
【0006】
また、SPECT装置における断層面の再構成方法も開発・改良され、空間分解能向上に大きく貢献している。これまでは、フィルタ補正逆投影法(FBP法:filtered back-projection法)、分解能補正なしの逐次近似法(最尤推定期待値最大化法(MLEM法:Maximum Likelihood Expectation Maximization法)、サブセットを用いた期待値最大化法(OSEM法:Ordered Subset Expectation Maximization法))等が用いられていた。近年、分解能補正ありの逐次近似法が開発されている。この方法により、コリメータや検出器の幾何学的形状、散乱線等の物理的要因を考慮して画像を再構成することができ、より正確な画像を提供することができる。
【0007】
一般に、検出器の形状は矩形であり、放射線入射側から検出器群を見ると長方形が稠密に詰まった構成となっている。検出器群をなす全ての検出器において、感度を一様にするために、コリメータの貫通孔と検出器とが、一対一対応となるように配置されることが多い。また、扱いやすさの点から、検出器の形状に合わせて、コリメータの貫通孔の形状も矩形であるのが一般的である。
【0008】
現在、高空間分解能かつ高感度であるSPECT装置が、臨床において求められている。空間分解能や感度を決定する要因としては、放射線源と検出器との距離、セプタの厚さ、放射線のエネルギ、散乱、吸収等多くの要因がある。これらの要因のうち、コリメータのセプタの高さとコリメータの貫通孔の大きさが、空間分解能と感度の決定に大きく関与している。
【0009】
即ち、高空間分解能を得るためには、検出器に入射する放射線の到来方向をコリメータで制限する必要がある。このためには、検出器が測定対象物を見込む視野を、コリメータによって狭めればよい。このようなコリメータとして、LEHR(Low Energy High Resolution)コリメータが知られている。しかし、この制限によって、感度が犠牲になる。
【0010】
一方、高感度を得るために、コリメータの貫通孔のサイズを大きくする必要がある。このようなコリメータとして、LEGP(Low Energy General Purpose)コリメータやLEHS(Low Energy High Sensitivity)コリメータが知られている。しかし、貫通孔のサイズを大きくすることによって、空間分解能が悪化する。このように、従来のSPECT装置では、高空間分解能と高感度が両立しないため、用途に応じてコリメータを入れ替える必要があり、臨床現場の負担となっている。
【0011】
そこで、感度と空間分解能を両立するSPECT装置として、1つの貫通孔に複数の検出器が含まれる、SPECT装置が発明された。このSPECT装置では、貫通孔のサイズが同じとき、貫通孔と検出器とが一対一対応である従来のSPECT装置よりも、高い空間分解能が得られることが実証されている(特許文献1、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2010−507090号公報
【特許文献2】特表2010−523965号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】C. Robert et al. (2008) 2008 IEEE Nuclear Science Symposium Conference Record Vol6 pp.4246-4251
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
近年のSPECT装置における技術革新により、SPECT画像の空間分解能は大幅に改善してきた。空間分解能を向上させた主な技術として、前記したピクセル型の半導体検出器技術と、逐次近似法による画像再構成技術と、が挙げられる。ピクセル型の半導体検出器は、その固有分解能そのものを大幅に改善する。また、近年の計算機技術の大幅な向上(例えば、メモリ数や計算速度の向上)に伴って、画像再構成技術も大幅に進歩してきており、特に、分解能補正ありの逐次近似法による画質向上効果(空間分解能の向上)は大きなものがある。
【0015】
しかし、空間分解能が向上したことによる新たな課題もいくつか出てきている。以下に主要な3つの課題について説明する。
【0016】
第1の課題として、感度が挙げられる。空間分解能が向上した分、必要なカウント数も増大し、実際の臨床応用にて十分な画質を得るには、感度の向上が必須となる。一般のコリメータにおいて、空間分解能と感度はトレードオフの関係にあり両立することは困難である。
【0017】
この第1の課題に対する一つの解決策として、ピクセル化された半導体検出器において、一つの矩形貫通孔に複数の検出器が含まれる形状のコリメータと分解能補正ありの逐次近似法を組み合わせる技術が開発され、高感度と高空間分解能との両立を実現している(特許文献1、非特許文献1参照)。
【0018】
第2の課題として、空間分解能の異方性が挙げられる。コリメータは、空間分解能の距離依存性が強く、被検体の表面近傍において、周方向(ガンマカメラが回転する方向)の空間分解能は高分解能だが、径方向(ガンマカメラの回転中心の方向)の空間分解能は低くなっている。この空間分解能の異方性により、被検体の表面近傍にある円形のRI(Radioisotope)分布が、楕円形にひずんで画像化されてしまう。特に、高空間分解能化したコリメータでは、画像のひずみが顕著になる傾向がある。
【0019】
また、被検体の心臓撮像時は、より高空間分解能な画像が要求されるため、検出器から心臓までの距離ができるだけ短くなるように、ガンマカメラを被検体にできるだけ近接させて撮像する。このため、ガンマカメラは、被検体に沿って楕円軌道に移動しながら撮像する楕円軌道撮像を実施することがある。このようにガンマカメラが楕円軌道で移動する場合、投影方向により検出器から心臓までの距離が異なるので、空間分解能の異方性が発生する。
【0020】
この第2の課題に対する一つの解決策として、投影データごとに、検出器(ガンマカメラ)と被検体との距離に対応した異なるフィルタリング処理を実施することにより、異方性を低減させる等方性分解能画像再構成方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0021】
しかし、特許文献2で開示された画像再構成方法では、例えば頭部など、体積が大きく中心部位と周辺部位との空間分解能の差が大きい場合における周辺部位での画像のひずみ除去には効果的ではない。
【0022】
第3の課題として、分解能補正によるアーチファクトが挙げられる。高空間分解能化してカウントが十分でないときには統計的なノイズが発生してしまうが、分解能補正によりノイズが局所に集まりアーチファクトとして画像化されてしまう。また、分解能補正に使用する点応答関数が、実測値と異なる時、分解能補正を組込んだ画像再構成によりノイズが発生することもある。
【0023】
そこで、本発明は、空間分解能の異方性を低減し、アーチファクトを低減する断層画像作成方法および放射線撮像装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
このような課題を解決するために、本発明は、放射線を測定する検出器を複数有する検出器群と、前記検出器の前面に配置して前記放射線の入射方向を制限するコリメータと、データ処理手段と、を備える放射線撮像装置による断層画像作成方法であって、前記データ処理手段は、前記検出器群から複数の投影データを収集する収集ステップと、収集した前記投影データから断層画像を再構成する再構成ステップと、再構成された前記断層画像の各軸方向に、異なった遮断周波数のフィルタリング処理を行う補正処理ステップと、を実行することを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、放射線を測定する検出器を複数有する検出器群と、前記検出器の前面に配置して前記放射線の入射方向を制限するコリメータと、データ処理手段と、を備える放射線撮像装置であって、前記データ処理手段は、前記検出器群から複数の投影データを収集し、収集した前記投影データから断層画像を再構成し、再構成された前記断層画像の各軸方向に、異なった遮断周波数のフィルタリング処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、空間分解能の異方性が低減し、アーチファクトを低減することによりひずみが低減した好適な断層画像が得られる断層画像作成方法および放射線撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係るSPECT装置の構成図である。
【図2】第1実施形態に係るSPECT装置に用いるカメラに内蔵するピクセル型の検出器群を示す斜視図である。
【図3】ピクセル型の検出器群の別の例を示す斜視図である。
【図4】別のピクセル型の検出器群の第一の変形例の入射面側を示す斜視図である。
【図5】別のピクセル型の検出器群の第一の変形例の入射面の反対面側を示す斜視図である。
【図6】別のピクセル型の検出器群の第二の変形例を示す斜視図である。
【図7】ピクセル型のシンチレータ検出器を示す斜視図である。
【図8】第1実施形態に係るSPECT装置に用いるカメラに内蔵するコリメータを示す斜視図である。
【図9】第1実施形態に係るSPECT装置におけるコリメータ分解能のコリメータからの距離依存性の一例を示すグラフである。
【図10】第1実施形態に係るSPECT装置の断層画像と断層画像の分解能を示す概念図である。
【図11】第1実施形態に係るSPECT装置のフィルタリング処理後の断層画像を示す概念図である。
【図12】第2実施形態に係るSPECT装置に用いるカメラに内蔵するコリメータを示す斜視図である。
【図13】第2実施形態に係るSPECT装置に用いるコリメータの1つの貫通孔と検出器の配置を放射線照射方向から見た図である。
【図14】第2実施形態に係るSPECT装置に用いるコリメータの点応答関数算出用の1次元体系図である。
【図15】第2実施形態に係るSPECT装置に用いるコリメータの点応答関数の一例を示すグラフである。
【図16】第2実施形態に係るSPECT装置に用いるコリメータの点応答関数の一例を左右検出器群で分けて示したグラフである。
【図17】(a)は左検出器群の視野角を示した概念図であり、(b)は右検出器群の視野角を示した概念図である。
【図18】比較例に係る一体検出器の点応答関数および第2実施形態に係る左右検出器群の点応答関数を示したグラフである。
【図19】比較例に係る一体検出器の点応答関数および第2実施形態に係る右検出器群の点応答関数の半値幅および1/10幅を説明するグラフである。
【図20】第2実施形態に係るSPECT装置におけるコリメータ分解能のコリメータからの距離依存性の一例を示すグラフである。
【図21】変形例に係るSPECT装置の断層画像と断層画像の分解能を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0029】
≪第1実施形態≫
<SPECT装置(放射線撮像装置)>
第1実施形態に係るSPECT装置(放射線撮像装置)1の全体の構成について図1を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係るSPECT装置1の構成図である。
SPECT装置1は、ガントリ10と、カメラ11A,11Bと、データ処理装置12、表示装置13と、ベッド14と、を含んで構成されている。
【0030】
被検体15は、放射性薬剤、例えば、半減期が6時間の99mTcを含んだ薬剤を投与される。ベッド14に載せられた被検体15の体内の99mTcから放出されるガンマ線(放射線)をガントリ10に支持されたカメラ11A,11Bで検出してプラナー画像および断層画像を撮像するようになっている。
【0031】
カメラ11A,11Bは、コリメータ26と、多数の検出器21から構成される検出器群21A(図2参照)と、を内蔵している。コリメータ26は、貫通孔27と貫通孔27を仕切るセプタ28とを有し、被検体15の体内の99mTcから放出されるガンマ線を選別(入射角を規制)し、一定方向のガンマ線のみを通過させる役割を有している。コリメータ26(貫通孔27)を通過したガンマ線を検出器21で検出する。
【0032】
カメラ11A,11Bは、ガンマ線の検出信号を計測するための特定用途向け集積回路(以下、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)と称する)25を備える。ガンマ線の微小な検出信号は、検出器基板23、ASIC基板24を介して、ASIC25に入力されて増幅する。ASIC25にて増幅された検出器信号は、ADC(Analog Digital Converter)(図示せず)によりデジタル信号化されたのち、FPGA(Field-Programmable Gate Array)(図示せず)等のデジタル回路素子により、ガンマ線を検出した検出器21のID、検出したガンマ線の波高値や検出時刻を検出する。これらはカメラ11A,11Bを構成するアルミニウム、鉄、鉛等でできた遮光・ガンマ線・電磁シールド29によって囲まれており、光、ガンマ線、電磁波を遮断している。
【0033】
カメラ11A,11Bは、固定して撮像することによりプラナー画像を撮像することができる。また、カメラ11A,11Bは、ガントリ10との取り付け部(図示せず)を軸として回転させることもでき、2つのカメラ11A,11Bを並べて固定して、プラナー画像を撮像させることもできる。また、カメラ11A,11Bは、ガントリ10の中央部分に設けられた円筒形開口部の中心軸の半径方向および周方向に可動させることができる。SPECT撮像時には、カメラ11A,11Bは被検体15の周りに最近接軌道を描いて撮像していく。
【0034】
データ処理装置12は、記憶装置(図示せず)および断層画像情報作成装置(図示せず)を有する。データ処理装置12は、検出したガンマ線の波高値、検出時刻のデータおよび検出器(チャンネル)IDを含むパケットデータをFPGA(図示せず)等のデジタル回路素子から取り込み、プラナー画像を生成もしくはサイノグラムデータに変換して断層画像情報を生成し、表示装置13に表示する。
【0035】
データ処理装置12で実行される画像再構成について説明する。
検出器群21A(図2参照)が測定対象に対してある角度をなしているとき、検出器iのカウント数yi は、検出再構成画素jのカウント数をλj として、式(1)で表される。ここで、Cij は、検出器iで検出される確率を表す。
i =ΣCij λj ・・・(1)
上式から、逐次近似画像再構成法等(MLEM法、OSEM法、MAP法等)を用いて画像を再構成する。なお、画像再構成方法はこれに限定されるものではなく、例えば、FBP法を用いてもよい。
そして、データ処理装置12は、再構成画像である断層画像に後記するフィルタリング処理(異方性フィルタリング処理)を実施する。
このようにして、SPECT装置1は被検体15の体内の腫瘍等に集積した放射性薬剤(放射性薬剤から放出されるガンマ線)を撮像し、腫瘍等の位置を同定することができるようになっている。
【0036】
<検出器>
次に、カメラ11A,11Bに用いられる検出器21について図2を用いて更に説明する。図2は、第1実施形態に係るSPECT装置1に用いるカメラ11A,11Bに内蔵するピクセル型の検出器群21Aを示す斜視図である。
検出器基板23(図1参照)に、CdTe半導体を用いた検出器21を2次元に配列し検出器群21Aを構成している。また、個々の検出器21が1つのピクセルを構成する。図2において、上面側が検出器21の入射面21fであり、電圧を印加する電極22a,22bは検出器21の側面に配置される。このように、1枚の大きな結晶からなるシンチレータと異なり、検出信号は、各検出器21単位、つまりピクセル単位で収集される。
【0037】
なお、点応答関数を簡単に求める都合上、検出器群21Aは周期構造を持っていることが望ましい。そうでない場合、一つ一つのピクセルについて点応答関数を求めることになる。
【0038】
なお、カメラ11A,11Bに用いられる検出器21(検出器群21A)は、図2に示すようにピクセルごとに区切られたものに限られず、図3から図7に示す検出器(検出器群21B,21C,21D,21E)を用いてもよい。
【0039】
図3は、ピクセル型の検出器群の別の例を示す斜視図である。
図3に示す検出器(検出器群21B)は、1枚のCdTe半導体の基板に対して、共通電極22cをCdTe半導体の基板の一方の面、つまり、入射面21f側の全面に配置し、入射面21fの反対側の面にピクセル単位で区切られた電極22dを配置して、電極22dの1個分に相当する面積部分のCdTe半導体の基板と共通電極22cとで、それぞれがピクセルに対応した検出器を構成するものである。
【0040】
次に、図3に示す検出器(検出器群21B)の変形例を図4から図6に示す。
図4は、別のピクセル型の検出器群の第一の変形例の入射面側を示す斜視図であり、図5は、図4の検出器群の入射面の反対面側を示す斜視図である。
図4、図5に示す検出器(検出器群21C)は、1枚のCdTe半導体の基板に対して、入射面21f側の全面に共通電極22cを配置し、CdTe半導体の基板の入射面21f側と反対面側にピクセル単位で区切られた電極22dを配置し、加えて、ダイシングによって形成された溝で個々の検出器に区切られた構造をしている。
【0041】
図6は、別のピクセル型の検出器群の第二の変形例を示す斜視図である。
図6に示す検出器(検出器群21D)は、1枚のCdTe半導体の基板に対して、複数の帯状の電極22e,22fをCdTe半導体の基板の上面と下面に直角ねじれの関係で対向して配置している。上面および下面のいずれか一方の帯状の電極22eを陽極とし、他方の面の帯状の電極22fを陰極とする。陽極の電極22eと陰極の電極22fのクロスした部分が1つの検出器を形成する(特開2004−125757号公報参照)。
【0042】
図7は、ピクセル型のシンチレータ検出器を示す斜視図である。
検出器の構造は図7に示す検出器(検出器群21E)のように、シンチレータ21gとフォトダイオード21hからなるピクセル単位に区切って構成されたシンチレータ検出器でもよい。
この場合、個々のシンチレータ21gの側面は、図示しない遮光材で囲われている。また、図7に示すシンチレータ検出器の変形として、ピクセル毎に区切られたシンチレータ21gと位置感応型光電子増倍管(PSPMT:Position-Sensitive Photomultiplier Tube)で構成されたものであってもよい。
【0043】
<コリメータ>
次に、カメラ11A,11Bに用いられるコリメータ26について、図8を用いて更に説明する。図8は、第1実施形態に係るSPECT装置1に用いるカメラ11A,11Bに内蔵するコリメータ26を示す斜視図である。
コリメータ26は鉛製であり、検出器21の入射面21fに対して垂直方向から平面視した際、見通せる方向に貫通孔27を有し、貫通孔27は碁盤目状に配置されている。また、各貫通孔27は、セプタ28によって仕切られている。
図8に示すように、第1実施形態に係るSPECT装置1に用いるコリメータ26は、1つの貫通孔27に対し1個分の検出器21が含まれる構成となっている。
【0044】
<分解能および画質>
次に、第1実施形態に係るSPECT装置1の断層画像の分解能について考察する。図9は、第1実施形態に係るSPECT装置におけるコリメータ分解能のコリメータ26からの距離依存性の一例を示すグラフであり、横軸はコリメータ26から点線源までの距離を示し、縦軸は空間分解能としてFWHM(Full Width at Half Maximum、半値幅)を示す。半値幅は、2つの点線源を識別できる最小の線源間距離を意味する。
なお、図9の例において、検出器21のピッチ(検出器21の中心と、x方向またはy方向に隣接する検出器21の中心との距離)を1.4mmとし、セプタ28のピッチ(セプタ28の中心と、平行に隣接するセプタ28の中心との距離)を1.4mmとし、セプタ長(セプタ28のz方向長さ)を26mmとした。
図9に示すように、コリメータ26から点線源までの距離(換言すれば、検出器21(検出器群21A)から点線源までの距離)の増加に比例して、FWHMが増加する、即ち、空間分解能が低下することがわかる。
【0045】
図10は、第1実施形態に係るSPECT装置1の断層画像と断層画像の分解能を示す概念図である。
図10は、被検体15の中心部(カメラ11A,11Bの回転中心)と、周辺部(被検体15の表面近傍)の2ヶ所に半径の等しい円形のRI集積(RI分布RI1 、RI分布RI2 )がある場合における被検体15の体軸方向を法線とする断層画像の例を太実線で示している。
【0046】
中心部にあるRI分布RI1 について、検出器位置Aにおける検出器21(検出器群21A)からRI分布RI1 までの距離と、検出器位置Bにおける検出器21(検出器群21A)からRI分布RI1 までの距離とは、ほぼ等しい。このため、検出器21(検出器群21A)が検出器位置Aにある場合の分解能(カウント数Rcir1 のFWHM)と、検出器21(検出器群21A)が検出器位置Bにある場合の分解能(カウント数Rrad1 のFWHM)とは、ほぼ等しい等方的な分解能であり、丸いRI分布RI1 は断層画像において、図10に示すように、丸く画像化することができる。
【0047】
周辺部にあるRI分布RI2 について、検出器位置Aにおける検出器21(検出器群21A)からRI分布RI2 までの距離は、検出器位置Bにおける検出器21(検出器群21A)からRI分布RI2 までの距離より短くなっている。このため、検出器21(検出器群21A)が検出器位置Aにある場合の分解能(カウント数Rcir2 のFWHM)(周方向分解能)は高い分解能(FWHMが小さく)となっており、検出器21(検出器群21A)が検出器位置Bにある場合の分解能(カウント数Rrad2 のFWHM)(径方向分解能)は低い分解能(FWHMが大きく)となっている。
このように、周辺部にあるRI分布RI2 は、周方向の分解能(カウント数Rcir2 のFWHM)と径方向の分解能(カウント数Rrad2 のFWHM)とが異なる異方性の分解能を有するため、丸いRI分布RI2 は断層画像において、図10に示すように、径方向に延びた楕円形状にひずんで画像化されてしまう。
【0048】
<異方性フィルタリング処理>
そこで、第1実施形態に係るSPECT装置1のデータ処理装置12(図1参照)は、特に、周方向の分解能が径方向の分解能と同程度になるように、断層画像上でフィルタリング処理(異方性フィルタリング処理)を実施する。
具体的には、周方向のカットオフ周波数(遮断周波数)が径方向のカットオフ周波数と同程度になるように、低周波通過のフィルタリング処理を実施している。
なお、フィルタリング処理は、周方向にのみフィルタリング処理を行ってもよく、周方向に径方向よりも強くフィルタリング処理を行ってもよい。
【0049】
フィルタリング処理後の画像を図11に示す。図11は、第1実施形態に係るSPECT装置1のフィルタリング処理後の断層画像を示す概念図である。図11に示すように、中心部にあるRI分布RI1 だけでなく、周辺部にあるRI分布RI2 においても等方的な分解能とすることができ、断層画像上のひずみを低減させることができる。
【0050】
なお、特許文献2は、投影データごとにコリメータと被検体の撮像対象(RI分布)との距離に対応した異なるフィルタリング処理を実施することにより、断層画像の異方性を低減させる方法であり、撮像対象が心臓等の高集積で体積が小さな臓器の場合には有効である。
しかし、撮像対象が脳等の体積が大きく中心部位と周辺部位の分解能の差が大きい場合には、特許文献の方法は効果的ではない。即ち、特許文献2の方法は、投影データにフィルタリング処理を実施するために、周方向だけでなく、径方向の分解能も劣化させてしまい、全体の分解能を落とすことになる。
【0051】
これに対し、第1実施形態に係るSPECT装置1における異方性フィルタリング処理は、周方向の分解能は径方向に合わせて低下するが、径方向の分解能は劣化しない。このため、全体の分解能を損なわずに、異方性を除去することができる。即ち、撮像対象が脳等の体積が大きく中心部位と周辺部位の分解能の差が大きい場合であっても、分解能の異方性が低減し、ひずみが低減した好適な断層画像が得られる。
【0052】
≪第二実施形態≫
<SPECT装置(放射線撮像装置)>
次に、第2実施形態に係るSPECT装置(放射線撮像装置)1について説明する。図12は、第2実施形態に係るSPECT装置1に用いるカメラ11A,11Bに内蔵するコリメータ26Aを示す斜視図である。図13は、第2実施形態に係るSPECT装置1に用いるコリメータ26Aの1つの貫通孔27Aと検出器21の配置を放射線照射方向から見た図である。
【0053】
第2実施形態に係るSPECT装置1と第1実施形態に係るSPECT装置1との差異点は、第1実施形態のコリメータ26は、1つの貫通孔27に対し1個分の検出器21が含まれる構成となっている(図8参照)のに対し、第2実施形態のコリメータ26Aは、1つの貫通孔27Aに対し4個分の検出器21が含まれる構成となっている(図12、図13参照)点で異なる。即ち、第2実施形態に係るSPECT装置1に用いるコリメータ26Aは、1つの貫通孔27Aに対し4個分の検出器21が含まれる構成となっている。その他の構成については、第1実施形態に係るSPECT装置1と同様であり、説明を省略する。
【0054】
また、第2実施形態に係るSPECT装置1のデータ処理装置12で実行される画像再構成は、第1実施形態と同様に、式(1)から、逐次近似画像再構成法等(MLEM法、OSEM法、MAP法等)を用いて画像を再構成する。
特に、第2実施形態においては、検出器iの点応答関数を逐次近似画像再構成に組み込むことにより、空間分解能を補正する。ここで、点応答関数とは、点線源から発生した放射線を検出器21が検出する確率であり、式(1)の検出確率Cij に等しい。この点応答関数を用いることで、逐次近似画像再構成法を用いて、より高分解能な画像を提供することができる。
【0055】
<点応答関数>
次に、第2実施形態に係るSPECT装置1のコリメータ26Aにおける点応答関数について考察する。図14は、第2実施形態に係るSPECT装置1に用いるコリメータ26Aの点応答関数算出用の1次元体系図である。ここでは、簡単のために図14に示すように、1次元体系にて議論する。なお、実際の検出器21(検出器群21A)およびコリメータ26Aは2次元に配置されているが(図12参照)、本1次元体系の考察を2次元に拡張すればよい。なお、簡単のためにセプタ28Aおよび検出器21はガンマ線を完全に吸収すると仮定して議論する。また、以下の議論において、検出器21のピッチを1.4mmとし、セプタ28Aのピッチを2.8mmとし、セプタ長lを26mmとし、コリメータ26Aから点線源30までの距離Lを100mmとした。
【0056】
図15は、第2実施形態に係るSPECT装置1に用いるコリメータ26Aの点応答関数の一例を示すグラフである。
図15は、図14の1次元体系において、点線源30から各検出器21を望む立体角(感度に比例)を求めたものである。グラフ上の「◆」は1つの検出器21と対応する。横軸は検出器21の位置を示し、縦軸は点線源30からその検出器21を望む立体角を示す。
図15に示すように、セプタ28Aの陰になり立体角が小さくなる検出器21とそうでない検出器21とが交互にあり、応答関数が複雑なことがわかる。
【0057】
発明者らの考察により、図15に示す点応答関数は、2種の点応答関数の重ね合わせであり、それぞれに分けて考えることにより、第2実施形態に係るコリメータ26Aの点応答関数が簡易的に理解できることを以下に示す。
【0058】
図14に示すように、検出器21(検出器群21A)を、コリメータ26Aの貫通孔27内の右側の検出器群(右検出器群21R)と、左側の検出器群(左検出器群21L)と、に分けて考える。図15に示す点応答関数を、右検出器群21Rの点応答関数と左検出器群21Lの点応答関数とに分けたものを図16に示す。
【0059】
図16は、第2実施形態に係るSPECT装置1に用いるコリメータ26Aの点応答関数の一例を右検出器群21Rと左検出器群21Lとで分けて示したグラフである。グラフ上の「□」は左検出器群21Lの1つの検出器21と対応し、グラフ上の「■」は左検出器群21Lの1つの検出器21と対応する。横軸は検出器21の位置を示し、縦軸は点線源30からその検出器21を望む立体角を示す。
図16に示すように、図15に示す点応答関数は2種の略台形状の点応答関数の重ね合わせであることがわかる。
なお、図15は検出器群21Aで1つの点応答関数として曲線表示したものであり、図16は右検出器群21Rの点応答関数と左検出器群21Lの点応答関数とに分けて曲線表示したものであり、全く同じ点応答関数である。即ち、図15のグラフ上の「◆」の位置と、図16のグラフ上の「□」または「■」の位置とは一致する。
【0060】
図17(a)は左検出器群21Lの視野角VAを示した概念図であり、図17(b)は右検出器群21Rの視野角VAを示した概念図である。
図17に示すように、左右の検出器群21L,21Rで視野角VA,VAが異なっている。即ち、図17(a)に示すように、左検出群21Lによる視野は検出器面に垂直な方向に対し右側に傾いており、図17(b)に示すように、右検出器群21Rによる視野は検出器面に垂直な方向に対し左側に傾いている。
図16に示す2種の点応答関数(右検出器群21Rの点応答関数、左検出器群21Lの点応答関数)は、略台形の点応答関数であり、それぞれ線源の有る原点(x=0)からシフトしているのは、この視野角VA,VAの差異によるものである。
【0061】
<分解能および画質>
次に、点応答関数を右検出器群21Rの点応答関数と左検出器群21Lの点応答関数とに分離した場合におけるそれぞれのプラナー画像の空間分解能を考察する。
【0062】
ここで、比較例として、図12から図14に示すに示すコリメータ26Aと検出器21(検出器群21A)との配置において、貫通孔27Aに含まれる4つの検出器21を独立した検出器とせずに1つの検出器(以下、一体検出器と称する)として考えた場合の点応答関数を図18に示す(グラフ上の「○」で示す)。なお、図18には、比較のために、図16で示した右検出器群21Rの点応答関数および左検出器群21Lの点応答関数も合わせて表示している。
図18に示すように、比較例に係る一体検出器の点応答関数は、右検出器群21Rの点応答関数と左検出器群21Lの点応答関数とを足し合わせたものであることがわかる。
【0063】
比較例に係る一体検出器の点応答関数を最大値で規格化し、右検出器群21Rの点応答関数の重心が原点(x=0)にくるようにx軸方向にシフトし最大値で規格化したグラフを図19に示す。なお、左検出器群21Lの点応答関数の重心が原点(x=0)にくるようにx軸方向にシフトし最大値で規格化したものは、右検出器群21Rの点応答関数の重心が原点(x=0)にくるようにx軸方向にシフトし最大値で規格化したものと左右が反転する点を除けば同様であり、省略する。
【0064】
図19に示すように、一体検出器の点応答関数と比較して、右検出器群21Rの点応答関数は、FWHM(Full Width at Half Maximum、半値幅)は等しいが、FWTM(Full Width at Tenth Maximum、1/10幅)が小さいことがわかる。FWHMが等しいことは、分解能が等しいことを意味している。FWTMが小さいことは、周辺へのデータの広がりが小さく、切れの良い、コントラストの高い画像を提供できることを意味している。
【0065】
つまり、左右の検出器群21L,21Rごとのプラナー画像は、一体検出器(貫通孔27Aに含まれる4つの検出器21を1つの検出器としたもの)と比較して、切れが良く(境界がシャープ)、コントラストの高い(濃淡がはっきりした)画像であることがわかる。
【0066】
また、これらのプラナー画像から画像再構成して得られる断層画像も切れが良く(境界がシャープ)、コントラストの高い(濃淡がはっきりした)画像となる。また、点応答関数を逐次近似画像再構成に組み込むことにより、空間分解能を補正するので、より高分解能な画像を提供できる。
【0067】
図20は、第2実施形態に係るSPECT装置におけるコリメータ分解能のコリメータ26Aからの距離依存性の一例を示すグラフであり、横軸はコリメータ26Aから点線源までの距離を示し、縦軸は空間分解能として右又は左検出器群の点応答関数のFWHM(Full Width at Half Maximum、半値幅)を示す。なお、図20の例において、検出器21のピッチを1.4mmとし、セプタ28Aのピッチを2.8mmとし、セプタ長を26mmとした。
【0068】
第二実施形態においては、空間分解能の補正により、より高分解能化が可能である。しかし、図9(第1実施形態)と図20(第2実施形態)とを対比して示すように、第二実施形態の分解能(FWHM)は、第1実施形態と比較して、コリメータ26Aからの距離依存性が高く(グラフの傾きが大きく)、周辺部位での画像のひずみが顕著となる。
【0069】
これに対し、断層画像に対して前記した異方性フィルタリング処理を実施することが有効であり、全体の分解能を低下させることなく周辺部位の画像のひずみを低減することができる。
【0070】
次に、統計ノイズによるアーチファクトについて説明する。
分解能補正を組み込んだ逐次近似画像再構成は、コリメータ26Aと検出器21によりぼけた投影データから、点応答関数による重みづけをしながら、繰り返し計算により正しいRI発生位置分布へと収束させる手法であるが、画像中にノイズ成分が有る時には、そのノイズ成分を集めて強調させてアーチファクトをしばしば発生させる。
【0071】
特に、第二実施形態においては、コリメータ26Aから点線源までの距離の増加に対して、FWHMの増加(空間分解能が低下)が顕著である。このため、断層画像において、周辺部位の画像のひずみが顕著であり、周辺部位の画像は、径方向には分離できずに引き延ばされ、反面、周方向には強く分離された画像となる。
このため、ノイズがあると、周辺部位では放射状に延びるアーチファクトを発生させることになる。十分なカウントが得られない核医学診断において回避困難である統計ノイズにより、画像周辺部位での放射状のアーチファクトが発生してしまう。
【0072】
これに対し、断層画像に対して、周辺部位の周方向分解能が径方向分解能と同じ程度となるように前記した異方性フィルタリング処理を実施することにより、アーチファクトを低減することが可能である。
【0073】
次に、分解能補正に使用する点応答関数が実際の点応答関数と異なることにより生じるアーチファクトについて説明する。
第二実施形態において使用した点応答関数は、本発明の本質を説明するために簡易計算によるもので、実際には、実測値を使用すべきである。しかし、点応答関数は距離依存性があり実測により必要な応答関数を取得することは困難である。そこで、コリメータ26Aの厚みや検出器21の隙間(不感帯)を考慮したより厳密なレイトレース法やモンテカルロシミュレーションにより算出した点応答関数を使用することになる。
【0074】
しかしながら、このシミュレーションによる点応答関数は、当然のことながら実際の点応答関数と正確には一致しない。この不一致成分が、アーチファクトの発生原因となる。特に、ノイズ成分(統計ノイズ)があると、このアーチファクトが強調され、分解能異方性による放射状等のアーチファクトが発生してしまう。
【0075】
これに対し、断層画像に対して、周辺部位の周方向分解能が径方向分解能と同じ程度となるように前記した異方性フィルタリング処理を実施することにより、アーチファクトを低減することが可能である。
【0076】
≪変形例≫
なお、本実施形態に係る放射線撮像装置は、前記第1実施形態および第2実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0077】
本実施形態において、被検体15の体軸方向を法線とする断層画像(図10参照)を例に、周方向と径方向の分解能の異方性を問題とし、前記した異方性フィルタリング処理を考察したが、その他の方向の分解能異方性について適用してもよい。
【0078】
図21は、変形例に係るSPECT装置1の断層画像と断層画像の分解能を示す概念図である。図21は、被検体15の中心部(体軸方向を回転軸として回転するカメラ11A,11Bの回転中心)と、周辺部(被検体15の表面近傍)の2ヶ所に半径の等しい円形のRI集積(RI分布RI1 、RI分布RI2 )がある場合における被検体15の体軸方向にスライスした断層画像の例を太実線で示している。
【0079】
周辺部にあるRI分布RI2 について、検出器位置Cにおける検出器21(検出器群21A)からRI分布RI2 までの距離は、図示しない検出器位置D(検出器位置Cからカメラ11A,11Bが90度回転した位置)における検出器21(検出器群21A)からRI分布RI2 までの距離より短くなっている。このため、検出器21(検出器群21A)が検出器位置Cにある場合の分解能(カウント数Raxi2 のFWHM)(体軸方向分解能)は高い分解能(FWHMが小さく)となっており、検出器21(検出器群21A)が図示しない検出器位置Dにある場合の分解能(カウント数Rrad2 のFWHM)(径方向分解能)は低い分解能(FWHMが大きく)となっている。
このように、周辺部にあるRI分布RI2 は、体軸方向の分解能(カウント数Raxi2 のFWHM)と径方向の分解能(カウント数Rrad2 のFWHM)とが異なる異方性の分解能を有するため、丸いRI分布RI2 は断層画像において、図21に示すように、径方向に延びた楕円形状にひずんで画像化されてしまう。
【0080】
そこで、第1実施形態において周方向と径方向の分解能の異方性について異方性フィルタリング処理を実施したのと同様に、図21に示す変形例において体軸方向と径方向の分解能の異方性について異方性フィルタリング処理を実施する。即ち、体軸方向の分解能が径方向の分解能と同程度になるように、断層画像上でフィルタリング処理(異方性フィルタリング処理)を実施する。具体的には、体軸方向のカットオフ周波数(遮断周波数)が径方向のカットオフ周波数と同程度になるように、低周波通過のフィルタリング処理を実施する。
なお、フィルタリング処理は、体軸方向にのみフィルタリング処理を行ってもよく、体軸方向に径方向よりも強くフィルタリング処理を行ってもよい。
【0081】
また、本実施形態において、異方性フィルタリング処理におけるフィルタ種類について言及していない。これは、基本的には分解能を低下させる方向のフィルタで有ればよく、つまりは低周波数帯域通過型のフィルタで有ればよく、例えば平滑化処理等でも良い。そのフィルタ種類は限定されない。
【0082】
また、本実施形態において、画像再構成後の断層画像に異方性フィルタリング処理を実施するものとして説明したが、これに限られるものではなく、画像再構成前のプロジェクションデータにフィルタリングしてもよいし、逐次近似画像再構成の繰り返し処理中に異方性フィルタリング処理を組み込むことも可能である。
繰り返し処理中に異方性フィルタリング処理を組み込むことにより、アーチファクトの発生や画像のひずみを抑制する効果が得られ、反復回数を減らすことが可能となる。もしくは同じ反復回数でも、より高画質な画像が提供することができる。
【0083】
また、本実施形態に係る放射線撮像装置は、SPECT装置であるものとして説明したが、ポジトロン断層法(Positron Emission Tomography)を用いた陽電子放出型コンピュータ断層撮影装置(PET(Positron Emission Computed Tomography)装置)に前記した異方性フィルタリング処理を適用してもよい。
【0084】
また、第2実施形態に係る放射線撮像装置は、1つの貫通孔27Aに対し4個の検出器が含まれる構成であるものとして説明したが、これに限られるものではなく、1つの貫通孔27Aに対しM個分の検出器21が含まれる構成であってもよい。なお、Mは整数でなくてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 SPECT装置(放射線撮像装置)
10 ガントリ
11A,11B カメラ
12 データ処理装置(データ処理手段)
13 表示装置
14 ベッド
15 被検体
21 検出器
21A 検出器群
21f 入射面
23 検出器基板
24 ASIC基板
25 ASIC
26,26A コリメータ
27,27A 貫通孔
28,28A セプタ
29 遮光・ガンマ線・電磁シールド
30 点線源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を測定する検出器を複数有する検出器群と、
前記検出器の前面に配置して前記放射線の入射方向を制限するコリメータと、
データ処理手段と、を備える放射線撮像装置による断層画像作成方法であって、
前記データ処理手段は、
前記検出器群から複数の投影データを収集する収集ステップと、
収集した前記投影データから断層画像を再構成する再構成ステップと、
再構成された前記断層画像の各軸方向に、異なった遮断周波数のフィルタリング処理を行う補正処理ステップと、を実行する
ことを特徴とする断層画像作成方法。
【請求項2】
放射線を測定する検出器を複数有する検出器群と、
前記検出器の前面に配置して前記放射線の入射方向を制限するコリメータと、
データ処理手段と、を備える放射線撮像装置による断層画像作成方法であって、
前記データ処理手段は、
前記検出器群から複数の投影データを収集する収集ステップと、
収集した前記投影データの各軸方向に、異なった遮断周波数のフィルタリング処理を行う補正処理ステップと、
前記フィルタリング処理された前記投影データから断層画像を再構成する再構成ステップと、を実行する
ことを特徴とする断層画像作成方法。
【請求項3】
放射線を測定する検出器を複数有する検出器群と、
前記検出器の前面に配置して前記放射線の入射方向を制限するコリメータと、
データ処理手段と、を備える放射線撮像装置による断層画像作成方法であって、
前記データ処理手段は、
前記検出器群から複数の投影データを収集する収集ステップと、
収集した前記投影データから断層画像を再構成するとともに、各軸方向に、異なった遮断周波数のフィルタリング処理を行う再構成ステップと、を実行する
ことを特徴とする断層画像作成方法。
【請求項4】
前記コリメータは、
セプタで仕切られ、前記検出器の前記放射線の入射面に対して垂直方向から平面視した際、見通せる方向に貫通孔を有し、
前記貫通孔には、前記垂直方向から平面視した際、複数の前記検出器が配置される
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の断層画像作成方法。
【請求項5】
前記再構成ステップは、
前記投影データから分解能補正ありの逐次近似法により前記断層画像を再構成する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の断層画像作成方法。
【請求項6】
前記各軸方向は、径方向と周方向であって、
前記フィルタリング処理は、前記周方向に前記径方向よりも強くフィルタリング処理を行う
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の断層画像作成方法。
【請求項7】
前記各軸方向は、径方向と体軸方向であって、
前記フィルタリング処理は、前記体軸方向に前記径方向よりも強くフィルタリング処理を行う
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の断層画像作成方法。
【請求項8】
放射線を測定する検出器を複数有する検出器群と、
前記検出器の前面に配置して前記放射線の入射方向を制限するコリメータと、
データ処理手段と、を備える放射線撮像装置であって、
前記データ処理手段は、
前記検出器群から複数の投影データを収集し、
収集した前記投影データから断層画像を再構成し、
再構成された前記断層画像の各軸方向に、異なった遮断周波数のフィルタリング処理を行う
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項9】
放射線を測定する検出器を複数有する検出器群と、
前記検出器の前面に配置して前記放射線の入射方向を制限するコリメータと、
データ処理手段と、を備える放射線撮像装置であって、
前記データ処理手段は、
前記検出器群から複数の投影データを収集し、
収集した前記投影データの各軸方向に、異なった遮断周波数のフィルタリング処理を行い、
前記フィルタリング処理された前記投影データから断層画像を再構成し、
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項10】
放射線を測定する検出器を複数有する検出器群と、
前記検出器の前面に配置して前記放射線の入射方向を制限するコリメータと、
データ処理手段と、を備える放射線撮像装置であって、
前記データ処理手段は、
前記検出器群から複数の投影データを収集し、
収集した前記投影データから断層画像を再構成するとともに、各軸方向に、異なった遮断周波数のフィルタリング処理を行う
ことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項11】
前記コリメータは、
セプタで仕切られ、前記検出器の前記放射線の入射面に対して垂直方向から平面視した際、見通せる方向に貫通孔を有し、
前記貫通孔には、前記垂直方向から平面視した際、複数の前記検出器が配置される
ことを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項12】
前記再構成は、
前記投影データから分解能補正ありの逐次近似法により前記断層画像を再構成する
ことを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項13】
前記各軸方向は、径方向と周方向であって、
前記フィルタリング処理では、前記周方向に前記径方向よりも強くフィルタリング処理を行う
ことを特徴とする請求項8乃至請求項12のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項14】
前記各軸方向は、径方向と体軸方向であって、
前記フィルタリング処理では、前記体軸方向に前記径方向よりも強くフィルタリング処理を行う
ことを特徴とする請求項8乃至請求項12のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項15】
前記放射線撮像装置は、
単一光子放射型コンピュータ断層撮影装置である
ことを特徴とする請求項8乃至請求項14のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項16】
前記放射線撮像装置は、
陽電子放出型コンピュータ断層撮影装置である
ことを特徴とする請求項8乃至請求項14のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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