説明

断熱カバー

【課題】炊飯器や電気湯沸し器などの保温機器に適した断熱カバーを提供する。
【解決手段】被保温物(炊飯器)4の少なくとも一部を被覆する被覆体1と、被覆体1の内面または外面に設けられた高い赤外線反射率を有する赤外線反射シート2とからなる断熱カバーを、炊飯器や電気湯沸し器などの保温機器に適用した場合、保温機器の保温性を高め、消費エネルギー量を低減することができる。また、断熱カバーに貫通孔3を設けたことにより内部の蒸れや異常高温化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器や電気湯沸し器、飲料用ペットボトルや調理鍋などの保温を必要とする機器類における保温性の向上を目的とした断熱カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の断熱カバーは、ペットボトルの保冷を目的として、断熱カバー内面にアルミ蒸着層を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10は、特許文献1に記載された従来の断熱カバーを示すものである。図10に示すように、保冷専用袋は、袋状部3と、折り曲げカバー部5とからなり、袋状部3は、複数の積層構造からなる前面シート19および後面シート21とから構成されており、前面シート19には、アルミ蒸着層が含まれている。
【0004】
袋内に低温のプラスチックボトルを挿入すると、袋状部の積層構造により断熱され、プラスチックボトル内部の温度は低温に保たれる。
【特許文献1】特開平7−215375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の構成では、断熱カバーの内面に設置したアルミ蒸着層の赤外線反射率が不十分であることや、または赤外線の大部分がアルミ蒸着層の上層の保護層のフィルムにて吸収されていたため、赤外線の反射による保温効果は十分ではなかった。
【0006】
また、炊飯器や電気湯沸し器など、蒸気孔を有し、そこから高温の水蒸気を排出するような保温機器の運転中に用いた場合、断熱カバー内部に水蒸気が水滴として付着するとともに、内部が異常に高温となり、保温機器の筐体の樹脂変形や発火などの恐れがあったため、適用することができなかった。
【0007】
また、これらの機器において蓋体と胴体とを有する場合、断熱カバーの適用時には蓋開閉ができない為、蓋開閉を行う毎に断熱カバーを機器より着脱する必要があり、使い勝手が悪いという課題を有していた。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、保温性がよく、炊飯器や電気湯沸し器などの保温機器の運転時に適用することができ、また使い勝手のよい断熱カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、本発明の断熱カバーは、被保温物を被覆する被覆体の内面または外面に赤外線反射率50%以上の赤外線反射シートを設けたのである。
【0010】
これによって、保温機器から外部への輻射による伝熱を従来よりも大幅に低減することができるので、保温性が向上し、保温機器の消費エネルギー量を従来よりも低減することができる。
【0011】
また、本発明の断熱カバーは、少なくとも一部分に貫通孔を設けたものであり、これによって蒸気孔を有する保温機器に適用した場合の蒸気通路を形成することができるので、断熱カバー内部の蒸れや異常高温化を抑制することができ、保温機器の運転時にも断熱カバーを適用することが可能となる。
【0012】
また、本発明の断熱カバーは、開閉自在となる開口部を設けたものであり、これにより保温機器の蓋開閉を、断熱カバーを適用したまま行うことができるので使い勝手性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の断熱カバーは、被覆体の内面または外面に高い赤外線反射率を有する赤外線反射シートを適用したものであり、炊飯器や電気湯沸し器などの保温機器に適用した場合、保温機器の保温性を高め、消費エネルギー量を低減することができる。
【0014】
また、断熱カバーに貫通孔を設けたことにより、内部の蒸れや異常高温化を抑制することができる。
【0015】
また、断熱カバーに開閉自在となる開口部を設けたことにより、保温機器の蓋開閉が断熱カバーを着用したまま行うことができるので、使い勝手のよい断熱カバーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
請求項1に記載の断熱カバーの発明は、被保温物の少なくとも一部を被覆する被覆体と、前記被覆体の内面の少なくとも一部に設けられた赤外線反射率50%以上の赤外線反射シートとからなるものであり、被保温物から外部への輻射による伝熱を低減したもので、これにより被保温物の保温性を高め、保温に要する消費エネルギー量を低減することができる。また、断熱カバーで被覆することにより、被保温物への汚れの付着を低減するとともに、断熱カバーを使用者の嗜好に添った色、柄を有する生地にて作製することができるので、インテリア性を向上することができる。
【0017】
請求項2に記載の断熱カバーの発明は、被保温物の少なくとも一部を被覆する被覆体と、前記被覆体の外面の少なくとも一部に設けられた赤外線反射率50%以上の赤外線反射シートとからなるものであり、外部から被保温物への輻射による伝熱を低減したもので、これにより被保温物への熱の流入を低減し、保温に要する消費エネルギー量を低減することができる。
【0018】
請求項3に記載の断熱カバーの発明は、請求項1または2に記載の発明の断熱カバーの少なくとも一部に貫通孔を有するものであり、これにより被保温物が蒸気排出口などを有する機器である場合に、断熱カバー内部から外部への蒸気孔の役割を果たすので、蒸気の蓄積による断熱カバー内部の蒸れや、断熱カバー内部の異常高温化による被保温物へ与える悪影響を防止することができる。
【0019】
請求項4に記載の断熱カバーの発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明における赤外線反射シートが、金属箔または金属蒸着層を有するものであり、これにより赤外線反射シートは高い反射性を有し、被保温物から外部への輻射による伝熱の低減、または外部から被保温物への輻射による伝熱を低減することができるので、被保温物の保温に要するエネルギー量を低減することができる。
【0020】
請求項5に記載の断熱カバーの発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明における赤外線反射シートが、金属箔、金属蒸着層の上層に赤外線透過層を有したラミネート構造体であるものであり、これにより赤外反射シートの反射性を阻害することなく、赤外線反射層の酸化、破れ、傷などを抑制することができるので、赤外線反射性能の劣化を低減し、断熱カバーの断熱性の経時信頼性を高めることができる。
【0021】
請求項6に記載の断熱カバーの発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明の赤外線反射シートが、被覆体より着脱自在であるものであり、これにより赤外線反射シートが著しく汚れた場合には、赤外線反射シート単品を交換することができるので、断熱カバーを清潔に保つことができる。
【0022】
請求項7に記載の断熱カバーの発明は、被保温物の少なくとも一部を被覆する被覆体からなり、前記被覆体の少なくとも一部に貫通孔を有するものであり、被保温物から漏洩する対流による伝熱を低減することができるので、被保温物の保温性を高め、消費エネルギー量を低減することができる。また貫通孔を有することにより被保温物が蒸気排出口などを有する機器である場合に、断熱カバー内部から外部への蒸気孔の役割を果たすので、蒸気の蓄積による断熱カバー内部の蒸れや、断熱カバー内部の異常高温化により被保温物へ与える悪影響を防止することができる。なお、請求項7に記載の発明は、被覆体の少なくとも一部に特に反射率を規定しないシートを備えているものを含む。
【0023】
請求項8に記載の断熱カバーの発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明における被覆体が、開閉自在である開口部を有するものであり、これにより蓋体と胴体を有する機器に断熱カバーを適用する際、断熱カバーを着用したまま保温機器の蓋開閉を行うことができるので、断熱カバーの使い勝手性が向上する。
【0024】
請求項9に記載の断熱カバーの発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の発明における被覆体の最外層が、耐水性を有する素材からなるものであり、これにより汚れの付着等が生じた場合には、水拭きなどにより容易に取り除くことができ、断熱カバーを清潔に保つことができる。
【0025】
請求項10に記載の断熱カバーの発明は、請求項6または7に記載の発明における被覆体が、水洗可能な素材からなるものであり、これにより汚れの付着等が生じた場合には、被覆体部分のみを水洗することができるので、断熱カバーを清潔に保つことができる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における炊飯器4へ適用したの断熱カバーの断面図である。
【0028】
図1において、被覆体1は、被保温物である炊飯器4の天面と側面を被覆しており、被覆体1の内面には、赤外線反射率50%以上の赤外線反射シート2が設置されている。また、被保温物である炊飯器4の天面には蒸気孔5が存在し、その上方を覆う断熱カバー部には蒸気孔5に対応するように貫通孔3を設けている。
【0029】
図2は本発明の実施の形態1による断熱カバーの赤外線反射シート2の断面図である。赤外線反射シート2は、上層に赤外線透過層7と、中層に赤外線反射層8と、下層に保護層9とが積層され、接着剤10にてラミネートされたフィルムである。
【0030】
図3は本発明の実施の形態1における断熱カバー内面を示す平面図である。図3において、被覆体1の内面には折り返された被覆体マチ部11と、被覆体マチ部11と縫合された留め具12を有している。留め具12の両端部は被覆体マチ部11に縫合されており、留め具12と被覆体1の内面との間には赤外線反射シート2が挿入され、固定されている。
【0031】
以上のように構成された断熱カバーについて、以下その動作、作用を説明する。
【0032】
本発明の実施の形態1の断熱カバーは、炊飯器4の天面と側面を被覆する形状となっており、炊飯器の上方より覆いかぶせて使用するものであるが、底面を被覆する袋形状であっても構わないものとする。
【0033】
被覆体1で炊飯器4被覆することにより、炊飯器4筐体から外部への空気対流による熱伝達を低減することができ、また被覆体1内面に設置した赤外線反射シート2により炊飯器4筐体からの輻射の大部分を反射することができるので、輻射伝熱を低減することができる。これにより、炊飯器4の放熱量が低減し、保温時に要するエネルギー消費量を低減することができる。
【0034】
炊飯中には、炊飯器4の天面に存在する蒸気孔5により多量の水蒸気放出が生じるが、貫通孔3が通気孔となるため、断熱カバー内部に水蒸気が蓄積することはないので、断熱カバー内部の蒸れや異常高温化による樹脂変形などを抑制することができる。よって、断熱カバーに貫通孔3を設けたことにより、断熱カバーを炊飯器4や電気湯沸し器などの蒸気を排出する機構を持つ機器の作動中に適用することが可能となる。
【0035】
また、炊飯器4は通常台所に設置されることが多いが、台所では加熱調理時における油の飛散などが多い為、炊飯器4の筐体表面にはホコリと油分の混合した汚れが付着し易く、水拭きなどで容易に取り除くことが困難であった。本発明の断熱カバーを炊飯器4に適用した場合、炊飯器4への汚れの付着を防止することができるので、衛生面において良好であるとともに、清掃の手間を省くことができる。
【0036】
また、断熱カバーを使用者の嗜好に添った色、柄を有する生地にて作製することができるので、個人の満足感が高まるとともに、インテリア性を向上することができる。
【0037】
被覆体1とは、被保温物の少なくとも一部を被覆するものであり、その設置方法は、被保温物と密着または多少の空間を有するものとするが、特に規定するものではない。被覆体1の素材としては、防水性を備えた素材を用いた場合、汚れの付着時に払拭にて除去することが可能となるため、衛生面において好ましく、また清掃性が向上する。素材としては、ポリ塩化ビニル系のシートやポリエチレン系のシートなどが適しているが、使用温度域における耐熱性と耐水性を有し、成型加工が容易な素材であれば良く、特に指定するものではない。
【0038】
また、被覆体1の素材として、水洗可能な素材を用いた場合には、汚れの付着時に手洗いまたは電気洗濯機による水洗にて簡便に汚れを除去することが出来、衛生面においても好ましい。水洗可能な素材としては、不織布または布帛、またはこれらの積層品が好ましく、このうち使用温度域における耐熱性を有するものであれば、有機材料、無機材料を問わず使用できる。中でも、キルティング加工を施し布帛と不織布を積層した素材を使用した場合、不織布の内部の空気断熱効果によりいっそう良好な保温効果が得られる為、被覆体1の素材として好ましい。
【0039】
赤外線反射シートの被覆体1への設置法としては、例えばゴムのような伸縮性を有した素材からなる留め具12の両端を被覆体マチ部11と縫合したものを被覆体内部の数箇所に設置し、留め具12と被覆体1の内面との間に赤外線反射シートを挟み込むことにより固定する方法などがある。
【0040】
また、赤外線反射シート2を、被覆体1にポリエチレン系両面テープなどにより接着する、または被覆体とともにキルティング加工をおこなう、被覆体1と赤外線反射シート2にフックを設け接合するなどが挙げられるが、特に指定するものではない。
【0041】
赤外線反射シート2の赤外線反射率を変え、炊飯器4の消費電力と筐体表面の熱貫流率を測定した結果を実施例1から3に示す。赤外線反射シート2の赤外線反射率が50%とした断熱カバー(実施例1)と、を炊飯器4に適用した場合について評価した。また、被覆体1には、厚み5mmの綿不織布の両側を厚み1mmの綿布で挟み、キルティング加工を施した素材を使用した。
【0042】
炊飯器の消費電力評価は、25℃の室内にて、容器内に5合の米とそれに適した量の水を入れ、炊飯終了後より12時間、75℃保温設定で保温した場合の消費電力を、積算電力計にて計測した。炊飯器4単体(比較例1)と、炊飯器4に断熱カバーを適用した場合の消費電力を(表1)に示す。炊飯器4単体(比較例1)の炊飯器4の消費電力計測した結果は438Wであった。
【0043】
【表1】

熱貫流率の測定は、熱流センサーを炊飯器の蓋と、蓋と胴の継ぎ目である開口部6と、胴のそれぞれ数箇所へ等間隔に設置し、得られた熱流値に炊飯器4の内部温度と表面温度との差の逆数を乗じて、各部分における熱貫流率とした。測定点1〜2は蓋、測定点3〜5は開口部6周囲、測定点6〜9は胴部へそれぞれ設置した。断熱カバーを設置した(実施例1)については、熱流センサーを直接断熱カバーの被覆体1の外側に設置した。炊飯器4単体(比較例1)と、炊飯器4に断熱カバーを適用した場合の熱貫流率を図4に示す。炊飯器4単体(比較例1)の熱貫流率の値より、炊飯器4の熱漏洩は蓋と胴の継ぎ目である開口部6において最も大きく、その最大値は13W/m2Kであった。
【0044】
(実施例1)
赤外線反射シート2として、赤外線反射率50%のフィルムを用いた。赤外線反射シート2は、赤外線透過層7として20μmのETFEフィルムと、赤外線反射層8として12μmのアルミ箔と、保護層9として20μmのナイロンフィルムとを順に積層し、各層を接着材10によりラミネートしたものである。
【0045】
炊飯器4の消費電力は305Wであり、比較例1より30%低減した。熱貫流率においては、特に開口部6において、比較例1より最大80%低減した。
【0046】
被覆体1を適用することにより、炊飯器4からの対流による伝熱を低減することができるので、炊飯器4の保温性が向上し、消費エネルギー量を低減することができる。また赤外線反射率50%のフィルムを適用することにより、輻射の低減効果を得ることができるので、炊飯器4の保温性が向上し、消費エネルギー量を低減することができる。
【0047】
赤外線反射率が50%以上の赤外線反射シート2としては、例えば少なくとも3層構造以上のラミネート構造をなすものである。
【0048】
赤外線透過層7には、例えばETFEフィルム、FEPフィルム、PFAフィルム、PPSフィルムなどが適用でき、特に指定するものではないが、赤外線透過率が25%以上の材料が好ましい。赤外線波長領域である2〜25μmの吸収率が小さいフッ素系樹脂フィルムやポリフェニレンサルファイドフィルムとすることにより、赤外線反射層8での赤外線反射を効率良く行うことができる。
【0049】
中層の赤外線反射層8は高い赤外線反射性を有した金属箔または金属蒸着層からなるものであり、金属素材としては金、銀、胴、アルミ、鉄、ニッケルなどが適用できるが、特に指定するものではない。一般にアルミ箔が安価であり、汎用性が高い。
【0050】
下層の保護層9は、ナイロンフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなど、有機フィルム、無機フィルムを問わず適用することができる。また、赤外線反射層8が金属蒸着層よりなる場合には、保護層9が蒸着時の基材となることができる。
【0051】
赤外線反射シート2に照射された輻射は、赤外線透過層7によりその大部分が透過し、赤外線反射層8にて、その大部分が反射されるので、輻射による伝熱を効率良く低減することができる。また、赤外線透過層7とともに保護層9は金属箔、金属蒸着層の酸化劣化や腐食、破れ、傷などを低減する効果を有するので、赤外線反射性を経続的に保持することができる。
【0052】
(比較例1)
炊飯器4の内部に5合の米と適量の水を入れ、25℃の室内にて炊飯し、保温時12時間の積算電力を計測したところ、438Wであった。また、炊飯器4の筐体の熱貫流率を計測したところ、熱貫流率の値は開口部6周辺にて顕著に大きく、その最大値は13W/m2Kであった。
【0053】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における炊飯器4へ適用したの断熱カバーの断面図である。
【0054】
図5において、被覆体1は被保温物である炊飯器4の天面と側面を被覆しており、また被保温物である炊飯器4の天面には蒸気孔5が存在し、その上方を覆う被覆体1には貫通孔3を設けている。なお、実施の形態2の断熱カバーは、被覆体の少なくとも一部に特に反射率を規定しないシートを備えているものを含む。
【0055】
本発明の実施の形態2の断熱カバーは、炊飯器4の天面と側面を被覆する形状となっており、炊飯器の上方より覆いかぶせて使用するものであるが、底面を被覆する袋形状であっても構わないものとする。
【0056】
被覆体1で炊飯器4被覆することにより炊飯器4筐体から外部への空気対流による熱伝達を低減することができる。これにより、炊飯器4の放熱量が低減し、保温時に要するエネルギー消費量を低減することができる。
【0057】
炊飯中には、炊飯器4の天面に存在する蒸気孔5により多量の水蒸気放出が生じるが、貫通孔3が通気孔となるため、断熱カバー内部に水蒸気が蓄積することはないので、断熱カバー内部の蒸れや異常高温化による樹脂変形などを抑制することができる。よって、断熱カバーに貫通孔3を設けたことにより、断熱カバーを炊飯器4や電気湯沸し器などの蒸気を排出する機構を持つ機器の作動中に適用することが可能となる。
【0058】
また、炊飯器4は通常台所に設置されることが多いが、台所では加熱調理時における油の飛散などが多い為、炊飯器4の筐体表面にはホコリと油分の混合した汚れが付着し易く、水拭きなどで容易に取り除くことが困難であった。本発明の断熱カバーを炊飯器4に適用した場合、炊飯器4への汚れの付着を防止することができるので、衛生面において良好であるとともに、清掃の手間を省くことができる。
【0059】
また、断熱カバーを使用者の嗜好に添った色、柄を有する生地にて作製することができるので、個人の満足感が高まるとともに、インテリア性を向上することができる。
【0060】
断熱カバーの条件を変え、炊飯器4の消費電力と筐体表面の熱貫流率を測定した結果を実施例2から3に示す。被覆体1のみから構成される断熱カバー(実施例3)と、被覆体1の内面に赤外線反射率35%のシートを備えた断熱カバー(実施例2)とをそれぞれ炊飯器4に適用した場合について評価した。また、評価方法と被覆体1の材料条件については、実施の形態1中の実施例1と同様におこない、各々の消費電力は(表1)に、熱貫流率は図4に示した。
【0061】
(実施例2)
実施例2では、炊飯器4を被覆する断熱カバーに貫通孔3を有した被覆体1単体を適用した。炊飯器4の消費電力は372Wであり、比較例1より15%低減した。炊飯器4の開口部6の熱貫流率においては実施例2よりやや大きく、比較例1より最大60%低減している。
【0062】
被覆体1単体を適用した場合においても、炊飯器4からの対流による伝熱を低減することができるので、炊飯器4の保温性が向上し、消費エネルギー量を低減することができるとともに、赤外線反射シート2を設置する場合よりもコストを削減することができる。被覆体1の適用のみで保温効果が向上する要因としては、従来熱漏洩が大きい開口部6周囲を被覆したことによる断熱効果が大きいためと考えられる。
【0063】
(実施例3)
被覆体1の内面に赤外線反射率35%のラミネートフィルムを用いた。欄にネートフィルムは、20μmのナイロンフィルムと、赤外線反射層8となる12μmのアルミ箔と、保護層9となる20μmのPETフィルムとを順に積層し、各層を接着材10によりラミネートしたものである。
【0064】
炊飯器4の消費電力は363Wであり、比較例1より17%低減した。炊飯器4の熱貫流率においては、実施例1よりは劣るが、特に開口部6において比較例1より最大65%低減した。
【0065】
被覆体1を適用することにより、炊飯器4からの対流による伝熱を低減することができるので、炊飯器4の保温性が向上し、消費エネルギー量を低減することができる。また赤外線反射率35%のフィルムを適用することにより輻射の反射効果が得られるので、炊飯器4の保温性が向上し、消費エネルギー量を低減することができる。
【0066】
以上より、断熱カバーにおいて有意な輻射の反射効果を得るためには、被覆体1の内面には赤外線反射率が50%以上の赤外線反射シート2を使用するのが望ましいが、赤外線反射率が50%未満のシートとして例えばラミネートフィルや単層フィルムなどを用いた場合にも、炊飯器4からの対流による伝熱の低減効果が得られるので、炊飯器4の保温性が向上し、消費エネルギー量を低減することができる。
【0067】
また、赤外線反射率50%未満のシートとしては、単層またはラミネート構造の有機フィルムまたは無機フィルムが適用でき、使用温度域における耐熱性を有していれば特に材質と赤外線反射率を規定するものではない。
【0068】
(実施の形態3)
図6は本発明の実施の形態3による炊飯器4に適用した断熱カバーの断面図である。
【0069】
図6において、断熱カバー被覆体1と赤外線反射シート2とから構成されている。炊飯器4の保温時にこの断熱カバーで被覆することにより、空気の対流による伝熱の低減と、輻射による伝熱の低減効果が得られるので、炊飯器4の保温性が向上し、消費エネルギー量を低減することができる。
【0070】
また、本実施の形態の断熱カバーで炊飯器4の停止時と保温時に被覆しておくことにより、炊飯器4への汚れの付着を防止することができるので、衛生面において良好であるとともに、清掃の手間を省くことができる。
【0071】
(実施の形態4)
図7は本発明の実施の形態4による炊飯器4に適用した断熱カバーの断面図である。
【0072】
図7において、内面に赤外線反射シート2を備えた被覆体2が炊飯器4の蓋と胴の継ぎ目である開口部6の周囲を被覆しており、被覆体6は例えばゴムのような伸縮性を有する素材と布帛または不織布を組み合わせた素材からなり、輪状に形成されたもので、炊飯器の開口部6の周囲はめ込み、固定させることができ、その着脱も容易におこなえる。炊飯器4の熱漏洩は開口部6が最も大きいが、従来、炊飯器内部に断熱部材を設けることが困難であった。本実施例の断熱カバーで開口部6を被覆することにより、開口部6からの熱漏洩により生じる空気の対流による伝熱と輻射による伝熱を低減することができるので、炊飯器4の保温性が向上し、消費エネルギー量を低減することができる。
【0073】
(実施の形態5)
図8は、本発明の実施の形態5における飲料入りペットボトル13へ適用した断熱カバーの断面図である。
【0074】
図8において、被保温物である飲料入りペットボトル13中には低温の飲料が封入されており、被覆体1は飲料入りペットボトル13の底面と側面を被覆している。被覆体1の外面には赤外線反射シート2が設置されている。仮に、この断熱カバーを適用した飲料入りペットボトル13を屋外など、輻射による伝熱の寄与度の高い場所に放置した場合においても、断熱カバーの最外層に設置した赤外線反射シート2により輻射の大部分を反射することができる。よって、断熱カバーの内部への熱の流入量を低減することにより、被保温物である飲料入りペットボトル13を低温状態のままに保つことができる。
【0075】
(実施の形態6)
図9は、本発明の実施の形態6における炊飯器4へ適用した断熱カバーの斜視図である。
【0076】
図9において、炊飯器4を被覆している断熱カバーは、蓋部14と胴部15に区切られており、その境界に断熱カバー開口部16が存在している。断熱カバー開口部16を設けたことにより蓋部14を開閉することができる。断熱カバー開口部16には、蓋部14を閉じた場合の留め具が必要な場合はファスナや、ボタンや、一般にマジックテープ(登録商標)と称した簡易ファスナなどを適用することができるが、特に指定するものではない。
【0077】
この開閉機構を設けたことにより、炊飯器4の蓋開閉時には断熱カバーの蓋部14を同時に開閉することにより、断熱カバーを取り外す必要がないので、省手間となり、使い勝手性が良好となる。
【0078】
なお、本発明に記載した保温という概念は、保温、保冷の両方の意味を含むことを規定する。また、被保温物とは、炊飯器や電気湯沸し器、ペットボトル容器や調理鍋など、保温を要する機器全般を指すものとする。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明にかかる断熱カバーは、通常の保温機器の保温性を向上させるほか、蒸気孔を有する保温機器においても適用可能であり、それらの消費エネルギー量の低減が可能となるので、その他大型保温機器にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器へ適用した断熱カバーの断面図
【図2】本発明の実施の形態1における赤外線反射シートの断面図
【図3】本発明の実施の形態1における断熱カバー内面を示す平面図
【図4】本発明の実施の形態1または2の実施例1から3における熱貫流率の推移図
【図5】本発明の実施の形態2にける炊飯器へ適用した断熱カバーの断面図
【図6】本発明の実施の形態3における炊飯器へ適用した断熱カバーの断面図
【図7】本発明の実施の形態4における炊飯器へ適用した断熱カバーの断面図
【図8】本発明の実施の形態5における飲料入りペットボトルへ適用した断熱カバーの断面図
【図9】本発明の実施の形態6における炊飯器へ適用した断熱カバーの斜視図
【図10】従来の断熱カバーの外観構造を示す平面図
【符号の説明】
【0081】
1 被覆体
2 赤外線反射シート
3 貫通孔
4 炊飯器
7 赤外線透過層
8 赤外線反射層
9 保護層
13 飲料入りペットボトル
14 蓋部
15 胴部
16 断熱カバー開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保温物の少なくとも一部を被覆する被覆体と、前記被覆体の内面の少なくとも一部に設けられた赤外線反射率50%以上の赤外線反射シートとからなる断熱カバー。
【請求項2】
被保温物の少なくとも一部を被覆する被覆体と、前記被覆体の外面の少なくとも一部に設けられた赤外線反射率50%以上の赤外線反射シートとからなる断熱カバー。
【請求項3】
少なくとも一部に貫通孔を有する請求項1または2に記載の断熱カバー。
【請求項4】
赤外線反射シートは、金属箔、金属蒸着層を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の断熱カバー。
【請求項5】
赤外線反射シートは、金属箔、金属蒸着層の上層に赤外線透過層を有したラミネート構造体である請求項1から4のいずれか一項に記載の断熱カバー。
【請求項6】
赤外線反射シートは、被覆体より着脱自在とした請求項1から5のいずれか一項に記載の断熱カバー。
【請求項7】
被保温物の少なくとも一部を被覆する被覆体からなり、前記被覆体の少なくとも一部に貫通孔を有する断熱カバー。
【請求項8】
被覆体が開閉自在である開口部を有した請求項1から7のいずれか一項に記載の断熱カバー。
【請求項9】
被覆体の最外層は、耐水性を有する素材からなる請求項1から8のいずれか一項に記載の断熱カバー。
【請求項10】
被覆体は、水洗可能な素材からなる請求項6または7に記載の断熱カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−46441(P2006−46441A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226433(P2004−226433)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能、高機能真空断熱材」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】