説明

断熱カーテン及び断熱室

【課題】 材料コスト及び製造コストの双方においてコストダウンを図るとともに、高い断熱性能を得る。
【解決手段】 合成樹脂シートSを用いた断熱性を有する断熱カーテンを構成するに際して、合成樹脂シートSを短冊状に形成した複数の空気層形成シート部2…又は合成樹脂シートSを所定間隔おきに順次折曲して得られる短冊状をなす複数の空気層形成シート部2…における長辺2p…,2q…側の当該長辺2p…,2q…に沿った面領域2pa…,2qa…であって、同じ側における面同士を接合して順次連結するとともに、接合した接合部3の端部側を、合成樹脂シートSにより形成した一枚のベースシート4の面に接合することにより当該ベースシート4の面に複数の断熱空気層5…を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂シートを用いた断熱性を有する断熱カーテン及びこの断熱カーテンを用いた断熱室に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡易保冷倉庫等の断熱室を構成する際に用いる断熱性を有する断熱カーテンは知られており、特許文献1には、この種の断熱カーテンに用いる遮熱シートが開示されている。
【0003】
この遮熱シートは、アラミド繊維を主とした布地または、ニールドパンチをしたフェルトを含む不織布の表面にアルミ蒸着を施した布地を表面に使用し、アラミド繊維を50%以上含む不織布を断熱材に使用して裏地は結露の防げる布地で断熱材を補強できる生地または、アルミ蒸着を施した布地に断熱材を接着接合した布地を使用し、二層または三層の布地を一体に縫製したものである。
【特許文献1】特開2000−141545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した遮熱シートをはじめ、従来の断熱カーテンは、次のような問題点があった。
【0005】
第一に、断熱カーテンに使用するシート自身に断熱性を施すため、シート自身が特殊となり、材料コスト及び製造コストの双方においてコストアップを招く。したがって、得られる断熱カーテンは高価となり、特に、屋外に建造する簡易保冷倉庫等の断熱室を構成する際には広い面積が必要とすることから、コストアップの問題は無視できない重要な課題となる。
【0006】
第二に、シート自身に断熱性を施すことから、断熱性能を高めるには、例えば、シートの厚さを厚くしたり、積層する層数を多くするなどの必要があり、断熱性能を高めるには限界がある。したがって、例えば、断熱カーテンを用いて簡易保冷倉庫等の断熱室を構成した際には、必要かつ十分な断熱性能を確保しにくい。
【0007】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した断熱カーテン及び断熱室の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る断熱カーテン1は、上述した課題を解決するため、合成樹脂シートSを用いた断熱性を有する断熱カーテンを構成するに際して、合成樹脂シートSを短冊状に形成した複数の空気層形成シート部2…又は合成樹脂シートSを所定間隔おきに順次折曲して得られる短冊状をなす複数の空気層形成シート部2…における長辺2p…,2q…側の当該長辺2p…,2q…に沿った面領域2pa…,2qa…であって、同じ側における面同士を接合して順次連結するとともに、接合した接合部3の端部側を、合成樹脂シートSにより形成した一枚のベースシート4の面に接合することにより当該ベースシート4の面に複数の断熱空気層5…を設けたことを特徴とする。
【0009】
この場合、発明の好適な態様により、空気層形成シート部2…は、ベースシート4の片面4f又は両面4f,4rに接合することにより、ベースシート4に一層又は二層の断熱空気層5…を設けることができる。また、空気層形成シート部2…及びベースシート4は、透明又は半透明の合成樹脂シートS…を用いることができる。
【0010】
一方、本発明に係る断熱室50は、上述した課題を解決するため、合成樹脂シートSによる断熱性を有する断熱カーテン1を用いた断熱室を構成するに際して、合成樹脂シートSを短冊状に形成した複数の空気層形成シート部2…又は合成樹脂シートSを所定間隔おきに順次折曲して得られる短冊状をなす複数の空気層形成シート部2…における長辺2p…,2q…側の当該長辺2p…,2q…に沿った面領域2pa…,2qa…であって、同じ側における面同士を接合して順次連結するとともに、接合した接合部3の端部側を、合成樹脂シートSにより形成した一枚のベースシート4の面に接合することにより当該ベースシート4の面に複数の断熱空気層5…を設けた断熱カーテン1を用いることにより、室内空間Rの全部又は一部を覆ったことを特徴とする。
【0011】
この場合、発明の好適な態様により、断熱カーテン1は、単一の断熱カーテン1を使用し、又は複数枚の断熱カーテン1…を重ねる方向に並べて使用することができる。また、所定の高さに支持した天板部11及びこの天板部11の周縁側に配したカーテンレール12を備え、このカーテンレール12から断熱カーテン1を吊下げることにより、天板部11の下方における室内空間Rの一部又は全部を覆うことにより閉空間を形成することができる。さらに、室内空間Rには暖房又は冷房を行うための空調装置14a,14bを付設することができる。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明に係る断熱カーテン1及び断熱室50によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 断熱カーテン1に使用するシート自身には、既存の一般的な合成樹脂シートS…である安価な塩化ビニルシート等を用いて容易に製造できるため、材料コスト及び製造コストの双方のコストダウンを図ることができる。したがって、屋外に建造する簡易保冷倉庫等のように、面積の大きい断熱カーテン1を必要とする断熱室50等を建造する場合であっても大幅なコストダウンを実現できる。
【0014】
(2) 一枚のベースシート4の面に設けた断熱空気層5…により高い断熱性能を確保できるため、必要かつ十分な断熱性能を有する断熱室50等を容易に実現することができる。この結果、冷房負荷や暖房負荷が低減され、設備に伴うイニシャルコストや電力消費に伴うランニングコストを大幅に削減できる。
【0015】
(3) 好適な態様により、空気層形成シート部2…は、ベースシート4の片面4f又は両面(4f,4r)に接合することにより、ベースシート4に一層又は二層の断熱空気層5…を設けることができるなど、標準の断熱カーテン1に加え、断熱性能を倍増できる断熱カーテン1も容易に得ることができる。
【0016】
(4) 好適な態様により、空気層形成シート部2…及びベースシート4に、透明又は半透明の合成樹脂シートS…を用いれば、例えば、断熱室50に用いた際には、断熱カーテン1の開閉を行うことなく外部から内部の状態を確認できるなど、省エネルギ性向上にも寄与できる。
【0017】
(5) 好適な態様により、単一の断熱カーテン1を使用し、又は複数枚の断熱カーテン1…を重ねる方向に並べて使用できるなど、使用目的に応じて容易に断熱性能を変更することができる。
【0018】
(6) 好適な態様により、所定の高さに支持した天板部11及びこの天板部11の周縁側に配したカーテンレール12を備え、このカーテンレール12から断熱カーテン1を吊下げることにより、天板部11の下方における室内空間Rの一部又は全部を覆うことにより閉空間を形成するようにすれば、地面の上であっても、使い勝手の良好な断熱室50を容易かつ確実に建造することができる。
【0019】
(7) 好適な態様により、室内空間Rに暖房又は冷房を行うための空調装置14a,14bを付設すれば、簡易保冷倉庫や簡易保温室等を容易に建造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施形態に係る断熱カーテン1の製造方法及び構成について、図1〜図3を参照して具体的に説明する。
【0022】
断熱カーテン1には、基本的な材料として、複数の空気層形成シート部2…と一枚のベースシート4を用いる。各空気層形成シート部2…は、短冊状の細長に形成した透明又は半透明の合成樹脂シートSを用いる。このような合成樹脂シートSとしては、広く一般に普及している比較的安価な塩化ビニルシートなどを用いることができる。また、ベースシート4は、後述するように、複数の空気層形成シート部2…を順次接合できる大きさ及び形状に形成した透明又は半透明の合成樹脂シートSを用いる。したがって、この合成樹脂シートSにも広く一般に普及している塩化ビニルシートなどを用いることができる。
【0023】
そして、このような複数の空気層形成シート部2…と一枚のベースシート4を用いて断熱カーテン1を製造することができる。以下、図3(a)〜(c)を参照して断熱カーテン1の製造方法について説明する。まず、図3(a)に示すように、複数の空気層形成シート部2…の長辺2p…,2q…側における当該長辺2p…,2q…に沿った面領域2pa…,2qa…であって、同じ側における面同士を接合して順次連結する。この場合、面同士の接合は、例示のように紐Waにより縫合してもよいし、或いは接着剤等により接着してもよい。また、紐Waによる縫合と接着剤等による接着を組合わせてもよい。
【0024】
これにより、面領域2paと2qaを接合した接合部3が形成される。接合する際には、長辺2q(又は2p)側は長辺2p(又は2q)側よりも長めとし、接合部3から長辺2q(又は2p)側が所定長さ延出するようにしてベースシート4に接合するための接合片部3cを設ける。これにより、全ての空気層形成シート部2…を連結すれば、空気層形成部材20を得ることができる。この空気層形成部材20の全体の大きさ及び形状、即ち、縦寸法と横寸法は、ベースシート4の縦寸法と横寸法にそれぞれ一致するように予め設計を行う。
【0025】
ところで、断熱カーテン1は、後述する断熱室50等の建造に用いるため、実際に使用する際には、断熱カーテン1の端部を手で持ち、開閉操作を行うとともに、閉じた際には、閉塞性(密閉性)を高める必要があることから、断熱カーテン1の端部には、剛性の高い端部フレーム21を付設する。この場合、端部フレーム21は、断熱カーテン1を取付ける状況に応じて、断熱カーテン1の一方の端部のみに付設してもよいし、両端部に付設してもよい。端部フレーム21は、例えば、アルミニウム等の金属素材を用いてプレート状に形成する。なお、端部フレーム21の端面には、断熱カーテン1の全閉時に固定するためのマグネット22…等の固定手段を設けることが望ましい。また、例示の端部フレーム21は、一枚のプレート状に描いてあるが、実際の製作に際しては、軽量化を図るため、薄いプレート材の両側を直角に折曲してリブを設けた形態、即ち、断面がコの字形となる形態に形成することが望ましい。
【0026】
断熱カーテン1の端部に、端部フレーム21を付設するに際しては、図3(b)に示すように、端部フレーム21の一方の面に、ベースシート4における縦辺4sの近傍領域を複数の固定具(固定ネジ等)23…により固定する。さらに、端部フレーム21の一方の面における他の位置に、空気層形成部材20における端部に位置する空気層形成シート部2の長辺2pの近傍領域を複数の固定具(固定ネジ等)24…により固定する。なお、固定具23…,24…により固定するに際しては、ベースシート4における縦辺4sの近傍領域や空気層形成シート部2における長辺2pの近傍領域を上から挟む当て板などを使用してもよいし、接着剤等を組合わせてもよい。
【0027】
次いで、図3(c)に示すように、空気層形成部材20における各接合部3…の端部に設けた接合片部3c…を、ベースシート4の片面4fに接合する。この場合の接合も、例示のように、紐Wbにより縫合してもよいし、或いは接着剤等により接着してもよい。また、紐Wbによる縫合と接着剤等による接着を組合わせてもよい。ベースシート4に対して全ての接合片部3c…(接合部3…)を接合すれば、図2(図1)に示すように、ベースシート4の面4fに複数の断熱空気層5…が設けられた断熱カーテン1を得ることができる。この場合、一つの断熱空気層5の大きさは、図2に示すように、ベースシート4の面方向の長さLaを5〜7〔cm〕前後,ベースシート4の面に対して直角方向の長さLbを2〜4〔cm〕前後に選定することが望ましい。
【0028】
次に、上述した断熱カーテン1を用いた本実施形態に係る断熱室50について、図4を参照して説明する。
【0029】
図4中、Gは、例えば、青果市場における屋外地面を示すとともに、100は地面G上に設置した簡易保冷倉庫を示す。断熱室50は、この簡易保冷倉庫100に含まれる。簡易保冷倉庫100は、地面Gから上方に起設した複数の支持柱101…を備え、断熱室50は、この支持柱101…により吊り下げられる。断熱室50は、天板部11を備え、この天板部11は、支持柱101…の上端部と天板部11の上面間に架け渡したチェーン等の吊下部材102…により所定の高さに支持される。また、天板部11の周縁側であって、天板部11の下面には、天板部11の周縁にほぼ沿ったカーテンレール12を取付ける。例示のカーテンレール12は、底面側から見た形状が小判形である。そして、カーテンレール12には複数の移動ローラ25…を移動自在に装填するとともに、各移動ローラ25…により断熱カーテン1の上端を吊下げる。この際、断熱カーテン1の下端と地面G間は、接触しない程度の僅かな隙間が生じるように、予め断熱カーテン1の縦方向の長さ或いは天板部11の高さを選定する。
【0030】
これにより、天板部11の下方における室内空間Rが断熱カーテン1により覆われる。したがって、断熱カーテン1の両端に設けた一方の端部フレーム21を開方向に移動させれば、図4に示すように、出入口26が設けられるとともに、一方の端部フレーム21を他方の端部フレーム21に当接させれば、全閉した室内空間R(閉空間)となる。このように、所定の高さに支持した天板部11及びこの天板部11の周縁側に配したカーテンレール12を備え、このカーテンレール12から断熱カーテン1を吊下げることにより、天板部11の下方における室内空間Rの全部を覆うことにより閉空間を形成するようにすれば、地面Gの上であっても、使い勝手の良好な断熱室50を容易かつ確実に建造することができる。
【0031】
さらに、断熱室50には、室内空間Rの冷房を行う冷房装置(空調装置)14a,14bを付設する。例示の場合、冷房装置14a,14bは、天板部11の上面を利用して設置する。これにより、冷却装置14a,14bを作動させれば、室内空間Rに冷気を送り、室内空間Rを冷房する簡易保冷倉庫100となる。このように、室内空間Rに冷房を行うための冷房装置14a,14bを付設すれば、簡易保冷倉庫100を容易に建造することができる。
【0032】
次に、本実施形態に係る断熱室50及び断熱カーテン1の使用方法について、図1〜図5を参照して説明する。
【0033】
断熱室50に用いた断熱カーテン1は、端面にマグネット22,22を固定した端部フレーム21,21を有するため、各端部フレーム21,21を接近させてマグネット22と22同士を吸着させれば、出入口26が全閉され、かつ全閉した状態が維持される。また、冷却装置14a,14bを作動させ、室内空間Rを、例えば、10〔℃〕程度に維持すれば、簡易保冷倉庫100として機能させることができる。したがって、断熱室50の中に青果等を一時的に収容すれば、鮮度を低下させることなく保存することができる。
【0034】
この際、断熱カーテン1は、図2に示すように、伸長した状態となり、ベースシート4の面に複数の断熱空気層5…が設けられているため、高い断熱性能が確保される。また、この際、空気層形成シート部2…及びベースシート4には、透明又は半透明の合成樹脂シートS…を用いているため、断熱カーテン1の開閉を行うことなく外部から内部の状態を確認できるなど、省エネルギ性向上にも寄与できる。
【0035】
他方、一方のマグネット22から他方のマグネット22を離し、図4に示すように、一方の端部フレーム21を他方の端部フレーム21から離間して広げれば、断熱カーテン1の両端間に出入口26を設けることができる。これにより、この出入口26を利用して、青果等が入った箱(被冷却物)などを室内空間Rの中に収容(又は取出)することができる。図4に示すF…は室内空間Rの中に収容されて積まれた青果等が入った箱を示す。この際、断熱カーテン1の端部側は短縮した状態となる。図5に、短縮した状態の断熱カーテン1を実線で示す。
【0036】
次に、本発明の変更実施形態に係る断熱カーテン1について、図6〜図9を参照して説明する。
【0037】
図6は、二枚の断熱カーテン1,1を重ねる方向に並べて使用する変更実施形態を示す。図1〜図5に示した基本実施形態は、単一の断熱カーテン1を使用したものであるが、図6の変更実施形態は、二枚の断熱カーテン1,1を用意し、一つの端部フレーム21に対して、二枚の断熱カーテン1,1を並列に取付けることにより、いわばペアカーテンとして構成したものである。もちろん端部フレーム21の幅を広くすれば、三枚以上の断熱カーテン1…を重ねる方向に並べることも可能である。したがって、このような変更実施形態によれば、使用目的に応じて容易に断熱性能を変更することができる。
【0038】
図7は、空気層形成シート部2…を、ベースシート4の両面、即ち、一方の片面4fと他方の片面4rに接合することにより、ベースシート4の両面(4f,4r)に断熱空気層5…を設ける変更実施形態を示す。図1〜図5に示した基本実施形態は、ベースシート4における一方の片面4fのみに空気層形成シート部2…を設けたものであるが、図7の変更実施形態は、ベースシート4の他方の片面4rにも一方の片面4fに対して対称となるように空気層形成シート部2…を接合したものであり、これにより、ベースシート4の両面側に二層の断熱空気層5…を設けることができる。したがって、このような変更実施形態によれば、ベースシート4に一層の断熱空気層5…を設ける標準の断熱カーテン1に加え、ベースシート4に二層の断熱空気層5…を設ければ、断熱性能を倍増できる断熱カーテン1も容易に得ることができる。
【0039】
図8は、一枚の合成樹脂シートSを所定間隔おきに順次折曲して得られる短冊状をなす複数の空気層形成シート部2…における長辺2p…,2q…側の当該長辺2p…,2q…に沿った面領域2pa…,2qa…であって、同じ側における面同士を接合して順次連結するとともに、接合した接合部3の端部側を、合成樹脂シートSにより形成した一枚のベースシート4の面に接合した変更実施形態を示す。この変更実施形態であっても、図3に示す手順に従って同様に製造することができる。さらに、図9は、図8の変更実施形態を図7の形態に適用した変更実施形態である。図8及び図9の場合、合成樹脂シートSの面同士は、熱溶着により接合した場合を示す。図中、Ha,Hbは溶着部を示す。また、2k…は合成樹脂シートSを折返した折曲部を示す。
【0040】
なお、図6〜図9は、空気層形成シート部2とベースシート4を端部フレーム21に固定する際に、両者の一部を重ねた状態にして共通の固定具(固定ネジ等)24…により固定する場合を示す。特に、図8及び図9は空気層形成シート部2及びベースシート4と端部フレーム21をより確実(強固)かつ安定に固定するために、押え板31を用いた場合を示す。なお、図6〜図9において、図1〜図5と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にした。
【0041】
よって、このような本実施形態(基本実施形態及び変更実施形態)に係る断熱カーテン1…及び断熱室50によれば、当該断熱カーテン1に使用するシート自身には、既存の一般的な合成樹脂シートS…である安価な塩化ビニルシート等を用いて容易に製造できるため、材料コスト及び製造コストの双方のコストダウンを図ることができる。したがって、後述する屋外に建造する簡易保冷倉庫等のように、面積の大きい断熱カーテン1を必要とする断熱室50等を建造する場合であっても大幅なコストダウンを実現できる。また、一枚のベースシート4の面に設けた断熱空気層5…により高い断熱性能を確保できるため、必要かつ十分な断熱性能を有する断熱室50等を容易に実現することができる。この結果、冷房負荷や暖房負荷が低減され、設備に伴うイニシャルコストや電力消費に伴うランニングコストを大幅に削減できる。
【0042】
[表1]には、本実施形態に係る断熱カーテン1…を用いて断熱室50を構成した場合の実施例1(図2に示す断熱空気層が一層の場合),実施例2(図7に示す断熱空気層が二層の場合)の諸データを示す。なお、断熱空気層を設けない場合、即ち、一枚の合成樹脂シートSのみをカーテンとして用いた場合の諸データを比較例として示す。
【0043】
【表1】

【0044】
[表1]から明らかなように、例えば、断熱性能を示すカーテンの熱貫流率K〔kcal/m2・h・℃〕の場合、比較例ではK=5.35、実施例1ではK=2.63、実施例2ではK=1.74であり、比較例を100〔%〕とすれば、実施例1は49.0〔%〕、実施例2は32.5〔%〕となり、ベースシート4の面に一層の断熱空気層5…を設ければ、断熱空気層を設けない場合に比べてほぼ2倍、ベースシート4の面に二層の断熱空気層5…を設ければ、断熱空気層を設けない場合に比べてほぼ3倍の断熱性能を確保できる。
【0045】
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0046】
例えば、合成樹脂シートSとして塩化ビニルシートを用いた場合を示したが、他の各種合成樹脂シートSを用いることができる。また、空気層形成シート部2…及びベースシート4は、透明又は半透明の合成樹脂シートS…を用いることが最適であるが、非透明の合成樹脂シートS…を用いる場合を排除するものではない。さらに、空気層形成シート部2…とベースシート4は、同種の合成樹脂シートSを用いてもよいし、異種の合成樹脂シートSを用いてもよい。一方、断熱室50は、例示の構成に限定されるものではない。例示の断熱室50は、断熱カーテン1により天板部11の下方における室内空間Rの全部を覆う場合を示したが、例えば、既存の建造物の壁面に付設するような場合には、当該建造物の壁面により室内空間Rの一部を覆い、残りの部分を断熱カーテン1により覆うこともできる。また、断熱カーテン1は、必要により天井に用いてもよいし、室内における仕切カーテンとして用いてもよいなど、各種の用途に利用することができる。さらに、例示は、断熱室50に対して冷房装置(空調装置)14a,14bを付設した場合を示したが、断熱室50に対して室内空間Rの暖房を行う暖房装置或いは加湿装置等の各種空調装置14a,14bを付設することにより、簡易保温室や簡易加湿室等を容易に建造することができる。その他、本発明に係る断熱カーテン1は、断熱を行うカーテンとして様々な用途に利用することができるとともに、断熱室50は、断熱を行う室として様々な用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る断熱カーテンの一部を示す斜視図、
【図2】同断熱カーテンの一部であって伸長した状態を示す平面図、
【図3】同断熱カーテンの製造方法の説明図、
【図4】同断熱カーテンを用いた断熱室を示す外観正面図、
【図5】同断熱カーテンの一部であって短縮した状態を示す平面図、
【図6】本発明の変更実施形態に係る断熱カーテンの一部を示す平面図、
【図7】本発明の他の変更実施形態に係る断熱カーテンの一部を示す平面図、
【図8】本発明の他の変更実施形態に係る断熱カーテンの一部を示す平面図、
【図9】本発明の他の変更実施形態に係る断熱カーテンの一部を示す平面図、
【符号の説明】
【0048】
1:断熱カーテン,2…:空気層形成シート部,2p…:空気層形成シート部の長辺,2q…:空気層形成シート部の長辺,2pa…:空気層形成シート部の長辺に沿った面領域,2qa…:空気層形成シート部の長辺に沿った面領域,3:接合部,4:ベースシート,4f:ベースシートの面(一方の片面),4r:ベースシートの面(他方の片面),5…:断熱空気層,11:天板部,12:カーテンレール,14a:空調装置(冷却装置),14b:空調装置(冷却装置),50:断熱室,S:合成樹脂シート,R:室内空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂シートを用いた断熱性を有する断熱カーテンにおいて、合成樹脂シートを短冊状に形成した複数の空気層形成シート部又は合成樹脂シートを所定間隔おきに順次折曲して得られる短冊状をなす複数の空気層形成シート部における長辺側の当該長辺に沿った面領域であって、同じ側における面同士を接合して順次連結するとともに、接合した接合部の端部側を、合成樹脂シートにより形成した一枚のベースシートの面に接合することにより当該ベースシートの面に複数の断熱空気層を設けたことを特徴とする断熱カーテン。
【請求項2】
空気層形成シート部は、前記ベースシートの片面又は両面に接合することにより、前記ベースシートに一層又は二層の前記断熱空気層を設けることを特徴とする請求項1記載の断熱カーテン。
【請求項3】
前記空気層形成シート部及び前記ベースシートは、透明又は半透明の合成樹脂シートを用いることを特徴とする請求項1又は2記載の断熱カーテン。
【請求項4】
合成樹脂シートによる断熱性を有する断熱カーテンを用いた断熱室において、合成樹脂シートを短冊状に形成した複数の空気層形成シート部又は合成樹脂シートを所定間隔おきに順次折曲して得られる短冊状をなす複数の空気層形成シート部における長辺側の当該長辺に沿った面領域であって、同じ側における面同士を接合して順次連結するとともに、接合した接合部の端部側を、合成樹脂シートにより形成した一枚のベースシートの面に接合することにより当該ベースシートの面に複数の断熱空気層を設けた断熱カーテンを用いることにより、室内空間の全部又は一部を覆ってなることを特徴とする断熱室。
【請求項5】
前記断熱カーテンは、単一の断熱カーテンを使用し、又は複数枚の断熱カーテンを重ねる方向に並べて使用することを特徴とする請求項4記載の断熱室。
【請求項6】
所定の高さに支持した天板部及びこの天板部の周縁側に配したカーテンレールを備え、このカーテンレールから前記断熱カーテンを吊下げることにより、前記天板部の下方における室内空間の一部又は全部を覆うことにより閉空間を形成してなることを特徴とする請求項4又は5記載の断熱室。
【請求項7】
前記室内空間には暖房又は冷房を行うための空調装置を付設することを特徴とする請求項4,5又は6記載の断熱室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−95847(P2010−95847A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264813(P2008−264813)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(508281033)株式会社コスモ熱学 (1)
【Fターム(参考)】