説明

断熱ドア装置

【課題】適用場所や意匠性に制限を来たす屋外側枠体の肥大化を招くことがなく、かつ、建物躯体への支持強度(取付強度)も十分に取ることが可能となるよう、一層改善された断熱ドア装置を提供する。
【解決手段】断熱ドア装置において、建物の躯体に取付け可能な第1枠1Aと、縦軸心P回りで揺動開閉可能にドア2を枢支し、かつ、断熱材3を介して第1枠1Aに連結される第2枠1Bとを有するとともに、断熱材3を板状に形成してその表面3aが両枠1A,1Bのうちのいずれか一方に面当接され、かつ、裏面3bがいずれか他方に面当接される状態で第1枠1Aと第2枠1Bとの間に介装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンションやオフィスビル等における玄関、ベランダ等の外部へ通ずる開口部、或いは非常口等に設置される断熱ドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
断熱ドア装置は、断熱性や遮音性に優れ、玄関ドア、緊急非難ドアといった戸外と戸内との仕切に主に設置されており、防火ドアとしても役立つことができる。
【0003】
従来の断熱ドア装置としては、特許文献1や特許文献2において開示されたものが知られている。特許文献1にて開示される断熱ドア装置(断熱ドア)は、ドアを開閉可能に支持するドア枠を、屋外側の金属枠と屋内側の樹脂枠とを連結一体化して構成することにより、屋外側と屋内側との断熱を図っている。しかしながら、断熱性を持たせるための樹脂材自体で屋内側の枠が構成されているため、建物躯体への取付強度や支持強度の点では不安が残る。
【0004】
そこで、特許文献2にて開示される断熱ドア装置(断熱ドア)のように、屋外側及び屋内側のいずれも金属製の枠とし、それら両者を樹脂部材を介して連結する構造とすることにより、断熱性を得ながら建物躯体への取付け強度や支持強度も持たせることが可能となるように思える。ところが、屋内側の枠体の建物躯体への支持強度等に関しては特許文献1の断熱ドア装置に比べて改善できるが、樹脂部材を介して連結される屋外側の枠体の支持強度を十分に取り難い問題がある。
【0005】
即ち、ドアを枢支する屋外側の枠体には十分な支持強度を必要とするが、ビスやボルト等を用いて建物躯体に固定される屋内側の枠体には、金属材に比べて強度や剛性に劣る樹脂部材を介して連結されることから支持強度が不足気味になることが予測されるのである。その点に関しては、特許文献2の図1等に示されるように、屋外側の枠体(符号10や30が付された部材等)を、建物の外面に沿う長さ(面積)を大きく取った大型な構造体とすることにより、実質的な支持強度を補うことが可能となる手段が採られているのが理解できる。
【0006】
しかしながら、その「屋外側の枠体を大型化すること」が必須条件となる構成の断熱ドア装置では、間口の狭い玄関等には適用できない(又は適用し難い)とか、薄肉のイメージを持つ外枠の採用が不可になる等、意匠性にも制限が出るものとなる。従って、それら適用場所や外観等の制限が無く、かつ、支持強度も十分なものとなる断熱ドア装置を実現させるには更なる改善の余地が残されているものであった。
【特許文献1】特開2004−293227号公報
【特許文献2】特開2002−61463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、構造をさらに工夫することにより、適用場所や意匠性に制限を来たす屋外側枠体の肥大化を招くことがなく、かつ、建物躯体への支持強度(取付強度)も十分に取ることが可能となるよう、一層改善された断熱ドア装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、断熱ドア装置において、建物の躯体Kに取付け可能な第1枠1Aと、縦軸心P回りで揺動開閉可能にドア2を枢支し、かつ、断熱材3を介して前記第1枠1Aに連結される第2枠1Bとを有するとともに、前記断熱材3が板状に形成されてその表面3aが前記両枠1A,1Bのうちのいずれか一方に面当接され、かつ、裏面3bがいずれか他方に面当接される状態で前記第1枠1Aと前記第2枠1Bとの間に介装されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の断熱ドア装置において、前記第1枠1Aと前記断熱材3とが第1螺子14で連結され、かつ、前記第2枠1Bと前記断熱材3とが第2螺子38で連結されることにより、前記第1枠1Aと前記第2枠1Bとが連結されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の断熱ドア装置において、前記第1螺子14の締弛操作が前記第2枠1B側から行えるようにするための第1螺子操作用手段22が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の断熱ドア装置において、閉じ状態での前記ドア2のドア面2a,2bに沿う方向において前記第1枠1Aが前記第2枠1Bよりも内側に張り出る突出部tを有し、かつ、前記断熱材3が前記突出部tにも重なるように設定されるとともに、前記第1螺子14を前記突出部tに配置することによって前記第1螺子操作用手段22が構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の断熱ドア装置において、閉じ状態での前記ドア2に接触させて気密させるためのドアシール材13が、前記断熱材3を介して前記突出部tに設置されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の断熱ドア装置において、前記断熱材3が、前記第1枠1Aと前記第2枠1Bとの間に介装される主板状部3iと、その主板状部3iの一端から前記主板状部3iの面に沿う方向に交差する方向に延設される補助板状部3fと、を有する断面L字形状又はほぼL字形状の型材に形成されるとともに、前記主板状部3iと前記補助板状部3fとの双方において前記断熱材3と前記第2枠1Bとが相対固定されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の断熱ドア装置において、前記断熱材3が、前記ドア2の上下各辺に対応する上断熱片3A及び下断熱片3Bと、前記縦軸心P存在側の側辺に対応する軸心側断熱片3Cと、開閉側の側辺に対応する開閉側断熱片3Dとを有して構成されており、前記軸心側断熱片3Cの厚みがその他の断熱片3A,3B,3Dの厚みよりも厚く設定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明は、請求項1に記載の断熱ドア装置において、前記第1枠1Aの第2枠側壁1fと前記第2枠1Bの第1枠側壁1rとが対向配備され、前記第2枠側壁1fと前記第1枠側壁1rとの間に前記断熱材3が介装されていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の断熱ドア装置において、前記第2枠側壁1fと前記断熱材3と前記第1枠側壁1rとがこれらを貫通する螺着手段Rによって一体的に連結されていることを特徴とする。
【0017】
請求項10に係る発明は、請求項8又は9に記載の断熱ドア装置において、前記断熱材3が前記第2枠側壁1f又は前記第1枠側壁1rを挟み込み可能となるように、前記断熱材3の断面形状がコ字形又はほぼコ字形或いはJ字形又はほぼJ字形に形成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項11に係る発明は、請求項1〜10の何れか一項に記載の断熱ドア装置において、前記断熱材3が、硬質材製の心材40と断熱材料による表層39とが積層一体化されて成る積層部材に構成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項12に係る発明は、請求項1〜11の何れか一項に記載の断熱ドア装置において、前記断熱材3が合成樹脂製のものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、断熱材をその肉厚側という極短い(薄い)距離を隔て、かつ、広い接触面積でもって第1枠と第2枠との間に介装させた状態で、それら第1枠と第2枠とを相対固定することができるので、第2枠及びドアに対して第1枠を十分に断熱させることが可能になるとともに、第1枠と断熱材、及び断熱材と第2枠とがそれぞれ面接触状態で一体化され、必要な支持強度も得ることが可能になる。従って、第2枠が屋外側となる場合のドアにも好適である。また、第2枠がこれと第1枠との間に断熱材を挟むサンドイッチ構造によって強度十分に支持されるので、例えば、建物表面に広い面積でもって沿わせることで支持強度を補うような構成を採る必要がなく、第2枠の枠厚を薄くも厚くもすることが自在であり、狭い箇所でも配置取付可能である上、必要な機能を維持しながら意匠性(デザイン性)の自由度も高くすることが可能である。
【0021】
その結果、構造をさらに工夫することにより、適用場所や意匠性に制限を来たす屋外側枠体の肥大化を招くことがなく、かつ、建物躯体への支持強度(取付強度)も十分に取ることが可能となるよう、一層改善された断熱ドア装置を提供することができる。この場合、請求項12のように、断熱材を合成樹脂製とすれば、十分な断熱作用と優れた支持強度、即ち第1枠と第2枠との強固な一体化とが両立可能となる利点がある。
【0022】
請求項2の発明によれば、断熱材と各枠とが各別に螺子連結されているから、例えば、断熱材を介して第1枠と第2枠とをボルト連結する場合に比べて、螺子を介しての伝熱作用も防止することが可能になり、より断熱性を向上させることができる利点がある。
【0023】
請求項3の発明によれば、断熱材と第1枠との締付連結及び弛み分離が第2枠側から操作できるから、建物等へ組付後においても第2枠の取外しや再組付けを行うことが可能となる。従って、第2枠が汚れたり損傷した場合の新品等への交換とか、第2枠を異なるデザインや形状のものに付替えることが可能となり、使い勝手や汎用性が向上する断熱ドア装置を提供することができる。
【0024】
請求項4の発明によれば、第1枠における第2枠よりもドア内方側に張り出た突出部において、断熱材を第1枠に螺着させてあるから、例えば第2枠に第1螺子を操作するための操作用孔やきり欠きを形成する必要がなく、生産工程上で有利であるとともに余計なコストも不要となる良さがある。また、第1螺子の操作を第2枠側から行わせる構成では、閉じ状態のドアや化粧モール材、或は請求項5に言うドアシール材により、断熱材付の突出部を普段は見えないようにする手段を採ることが可能となる利点もある。
【0025】
請求項6の発明によれば、第1枠と第2枠との間に介装される板状の断熱材をL字形状(又はほぼL字形状)として、一方の枠に断熱材を2方向から螺子固定できるようにしてあるから、その一方の枠と断熱材とをがたつきなく、かつ、強固に連結一体化することが可能になる。これは、例えば断熱材が双方の枠に一方向の螺子のみで固定される構造に比べて、第1枠と第2枠との相対的ながたつきや一体化強度の各点において明らかに有利であり、断熱材を介しながらも十分な強度や剛性を有するより好ましいドア枠、即ち断熱ドア装置を提供することができる。
【0026】
請求項7の発明によれば、次のような効果がある。即ち、第2上横部材及び第2下横部材それぞれの縦軸心側の端部には、ドアを枢支するための上下の揺動軸が常時接する構造となって断熱性の点では不利であるが、軸心側断熱片の厚みをその他よりも厚くしてあるので、その不利を相殺又は軽減させて優れた断熱性を発揮可能となっている。
【0027】
請求項8の発明によれば、断熱材がその肉厚側という極短い(薄い)距離を隔て、かつ、広い接触面積でもって互いに対向する第2枠側壁と第1枠側壁との間に介装されており、ドアを枢支する第2枠を強度十分に第1枠に強度十分にして支持させることができるとともに、第2枠及びドアに対して第1枠を十分に断熱させることも可能である。この場合、請求項9のように、螺着手段を用いて第2枠側壁と第1枠側壁とを貫通支持させれば、第1枠と第2枠との支持強度をより一層高めることが可能となる利点がある。
【0028】
請求項10の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて説明するが、断熱材を第2枠側壁又は第1枠側壁に仮装備させた状態で、第1枠と第2との組付けが可能になり、生産性に優れる断熱ドア装置を提供することができる。
【0029】
請求項11の発明によれば、硬質材製の心材と断熱材料製の表層とを積層一体化して断熱材が構成されているから、第1枠と第2枠との結合強度が増し、断熱性を持ちながら強度や剛性に優れるドア枠を有するととともに、防火(耐火)性能も改善される断熱ドア装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明による断熱ドア装置の実施の形態を、マンションの玄関ドアとして採用した場合について図面を参照しながら説明する。図1,2は玄関ドアの正面図と背面図、図3,4は断熱ドア装置全体の横断面図と縦断面図、図5,6は玄関ドア部分の横断面図と縦断面図である。
【0031】
〔実施例1〕
実施例1による断熱ドア装置Aは、図1,図2に示すように、マンション建物に組み付けられて支持される正面視(前後方向視)が矩形筒状のドア枠1と、縦軸心P回りで揺動開閉可能にドア枠1内にて枢支されるドア(玄関ドア)2とを備えて構成されている。ドア2には、ノブ(取っ手)25、及び上下一対の錠26,26が装備されている。尚、本発明は、玄関ドア、屋上ドア、勝手口ドア等の屋外と屋内とを仕切るドアだけでなく、屋内どうしの間のドア、例えば、部屋と土間との間のドア、屋内車庫と廊下との間のドア、ホテルや旅館内における防火ドア等、種々のドアに適用可能である。
【0032】
図3,図4に示すように、断熱ドア装置Aの屋外側は、踏面となる下アプローチ型材33、左右の横アプローチ型材34,34、及び上アプローチ型材36から成るアプローチ部(符記省略)が配備されている。そして、屋内側には、左右の側壁パネル31,31と天井パネル35を有する玄関フロア32が形成されている。ドア枠1は、屋内側となる第1枠1Aと、屋外側となる第2枠1Bと、それら両者1A,1Bの間に介装される断熱材13とから構成されており、両枠1A,1B及びアプローチ部は、縦柱や支柱、或いはコンクリート壁等の建物の躯体Kにステー37を介することで支持されている。
【0033】
前記断熱ドア装置Aの長所を概略説明すると、図1〜図4に示すように、屋内側となる第1枠(第1ドア枠)1Aと、屋外側となる第2枠(第2ドア枠)1Bとを、それらの間に板状断熱材3を広い面積側の表裏面が面当接する状態(横臥姿勢で挟持する状態)で挟み込んで一体化して成るサンドイッチ構造のドア枠1を有するとともに、第1枠1Aを建物躯体Kに固定し、かつ、第2枠1Bにドア2を開閉可能に枢支するようにした構成を特徴としている。
【0034】
つまり、第1枠1Aと第2枠1Bとが断熱材3の肉厚という極短い(薄い)距離を隔て、かつ、広い接触面積でもって相対固定されるので、ドア2を枢支する第2枠1Bを強度十分に第1枠1Aに支持させることができるとともに、屋外側に配置される第2枠1B及びドア2に対して第1枠1Aを必要十分に断熱させることが可能となる。また、第2枠1Bがサンドイッチ構造によって強度十分に支持されるので、例えば、建物表面に広い面積でもって沿わせることで支持強度を補うような構成を採る必要がなく、第2枠1Bの枠厚を薄くも厚くもすることが自在であり、狭い箇所でも配置取付可能である上、必要な機能を維持しながら意匠性(デザイン性)の自由度も高い。
【0035】
図1〜図4に示すように、ドア枠1は、建物の躯体Kに取付けられる屋内側の第1枠1Aと、縦軸心P回りで揺動開閉可能にドア2を枢支し、かつ、断熱材3を介して第1枠1Aに連結される屋外側の第2枠1Bとを有して構成されるとともに、断熱材3は板状に形成されてその内面(表面)3aが第1枠1Aに面当接され、かつ、外面(裏面)3bが第2枠1Bに面当接される状態で第1枠1Aと第2枠1Bとの間に介装されている。
【0036】
第1枠1Aはアルミ合金や鋼板等の金属製であって、第1上横部材4と、第1下横部材5と、縦軸心P側の第1右側部材6と、ドア開閉端側の第1左側部材7とを有して構成されており、L字形の取付片8の複数個を用いて躯体Kに螺着固定される。第2枠1Bもアルミ合金や鋼板等の金属製であって、第2上横部材9、第2下横部材10、縦軸心P側の第2右側部材11、ドア開閉端側の第2左側部材12とを有して構成されている。
【0037】
ドア2は、ドア本体2Aと、ドア本体2Aの一側端に固着される断面半円状の枢支端カバー2Bと、ドア本体2Aの表面側(屋外側)に固着される化粧パネル2Cとを有して、縦軸心P回りで揺動開閉可能に第2枠1Bに、具体的には第2上横部材9と第2下横部材10とに亘って架設されて枢支されている。
【0038】
ドア枠1における断熱材3の介装構造について詳述する。図3〜図6に示すように、断熱材3は、第1上横部材4と第2上横部材9との間に介装される上断熱片3Aと、第1下横部材5と第2下横部材10の間に介装される下断熱片3Bと、第1右側部材6と第2右側部材11との間に介装される右断熱片(軸心側断熱片)3Cと、第1左側部材7と第2左側部材12との間に介装される左断熱片(開閉側断熱片)3Dとから構成されている。いずれの断熱片3A〜3Dも、第1枠1Aの各部材4〜7の前壁4A〜7Aと第2枠1Bの各部材9〜12の背壁9A〜12Aとの間に挟まれている。
【0039】
第1枠1Aと第2枠1Bとは、第1枠1Aが第2枠1Bよりもドア内方となる入出用スペースSに若干張出す突出部tが形成されるように第1枠1Aの各部材4〜7及び第2枠1Bの各部材9〜12が相対配置されている。そして、突出部tによって第2枠1Bとの間に形成される右縦溝部分mc(=溝部m)にドアシール材13が落し込み配置されている。つまり、閉じ状態でのドア2のドア面2a,2bに沿う方向において第1枠1Aが第2枠1Bよりも内側に張り出る突出部tを有し、かつ、断熱材3が突出部tにも重なるように設定されるとともに、閉じ状態でのドア2に接触させて気密させるためのドアシール材13が、断熱材3を介して突出部tに置されているのである。
【0040】
断熱材3のさらに詳細な介装構造を、例として図5,図3を用いて説明する。まず、ドア開閉端側においては、第1左側部材7の前壁7Aは第2左側部材12よりも内方となる部分の短い幅のものとして形成されており、第1左側部材7の内側壁7Bは、その前端が折り返されることで前壁7Aよりも前方に突出する折返し壁部7bを有している。第2左側部材12は、前壁7Aよりも外方に位置ズレされて配置される背壁12Aと、最も内方に突き出る最屋内側(最後方側)の後内壁部121、最も外方に寄った最屋外側(最前方側)の前内壁部122、及びそれらの間に位置する中間内壁部123とから成る内方壁12Bとを有している。また、背壁12Aは、その外端から直角に折れ曲って続くフランジ壁12aを備えている。
【0041】
左断熱片3Dは、前壁7Aと背壁12Aとの間に介装される板状(全体としては帯状)のものであって、その外端から直角に前方に折れ曲って続くフランジ状の補助板状部3fを有していて断面形状が略L字形状を為している。第1左側部材7と左断熱片3Dとは、後内壁部121の内方位置において、左断熱片3Dにビス頭が配置されて前壁7Aに螺着される皿ビス14を用いて連結一体化されている。第2左側部材12と左断熱片3Dとは、左断熱片3Dにビス頭が配置されて背壁12Aに螺着される皿ビス(第2螺子の一例)38、及び補助板状部3fにビス頭が配置されてフランジ壁12aに螺着されるナベビス15を用いて強固に連結一体化されている。つまり、断熱材3は、第2枠1Bに対しては縦横の双方からビス止めされていてズレ動くことなく強固に一体化されており、それによって第1枠1Aと第2枠1Bとの断熱材3を介しての一体化強度も向上させてある。
【0042】
そして、ドアシール材13は、後内壁部121と折返し壁部7bと左断熱片3Dの内方部分とで形成される左縦溝部分md(=溝部m)に落し込み配置されて(溝奥に押し込んで配置すること)いる。ドアシール材13は、先端に密封円筒部16を有するループ型シールとして圧入設置されるのものであるが、接着剤を用いて貼着する等、別の手段で設置させても良い。溝部mに皿ビス14のビス頭を臨ませることにより、溝部mを通しての第2枠1B側からの第1枠1A連結用の皿ビス14の締弛操作が可能に構成されている。加えて、組付け後の使用時には、溝部mに配置されるドアシール材13によって皿ビス14のビス頭が見えないように隠されており、それによって見栄えを良くしてある。
【0043】
つまり、閉じ状態でのドア2の表面(ドア面の一例)2aや裏面(ドア面の一例)2bに沿う方向において第1枠1Aが第2枠1Bよりも内側に張り出る突出部tを有し、かつ、断熱材3が突出部tにも重なるように設定されるとともに、第1螺子である皿ビス14を突出部tに配置することによって第1螺子操作用手段22が構成されている。そして、断熱材3が、第1枠1Aと第2枠1Bとの間に介装される主板状部3iと、その主板状部3iの一端から主板状部3iの面に沿う方向に交差する方向に延設される補助板状部3fと、を有する断面L字形状又はほぼL字形状の型材に形成されるとともに、主板状部3iと補助板状部3fとの双方において断熱材3と第2枠1Bとが相対固定されている。
【0044】
次に、縦軸心P側の断熱材介装構造は、前述した開閉端側の構造とほぼ同じであり、違う部分について説明する。尚、開閉端側の構成と同様の機能や箇所には対応する同様の符号を付し、その説明が為されたものとする。即ち、図5に示すように、第2右側部材11の背壁11Aは、内方壁11Bの中間内壁部113の裏面に一体化される補助側部材11Hの背壁として形成されており、同様にフランジ壁11aも有している。尚、縦軸心側のドアシール13のみ、一対のシールリップ19,19を有するリップ型シールとして圧入設されるものに構成されている。
【0045】
右断熱片3Cは、補助板状部3fを有する断面形状L字形の第1断熱板17と、平板状の(帯板状の)第2断熱板18とを重ねた二層構造のものに構成されている。これら第1断熱板17と第2断熱板18とは、第1右側部材6との連結用皿ビス14,38と、第2右側部材11との連結用皿ビス38とによって連結一体化されており、皿ビス14,38の兼用ボルト止めによる合理化構造とされている。第2上横部材9及び第2下横部材10それぞれの縦軸心P側の端部には、ドア2を枢支するための上下の揺動軸20,21が常時接していて、断熱性の点では不利であるが、断熱材3を、二枚の断熱板17,18を積層した厚肉のものとすることにより、前述の不利を相殺又は軽減させることが可能となっている。
【0046】
そして、図6に示すように、上断熱片3A及び下断熱片3Bに関する構造は、概ね左断熱片3Dの場合と同じであり、対応する箇所には対応する符号を付記(例:12A→9A,10A)し、その説明が為されたものとする。即ち、第1上横部材4と第2上横部材9とが上断熱片3Aを介してビス止め連結一体化されており、第1下横部材5と第2下横部材10とが下断熱片3Bを介してビス止め連結一体化されている。双方共に円筒部16を有するドアシール材13が上横溝部分ma、下横溝部分mbに設置されている。尚、第2上横部材9には縦軸心Pを持つ上揺動軸20が支承され、第2下横部材10には縦軸心Pを持つ下揺動軸21が支承されている。
【0047】
図5に示すように、ステー37(図3,4参照)に溶着される取付片23aを備えた屈曲板状の取付部材23が、第1右側部材6及び第1左側部7の上下複数箇所に一体化されている。同様に、ステー37(図3,4参照)に溶着される取付片24aを備えた屈曲板状の取付部材24が、第2右側部材11及び第2左側部12の上下複数箇所に一体化されている。そして、図6に示すように、ステー37(図3,4参照)に溶着される取付片27aを備えた屈曲板状の取付部材27が、第1上横部材4及び第1下横部材5の左右複数箇所に一体化されている。同様に、ステー37(図3,4参照)に溶着される取付片28aを備えた屈曲板状の取付部材28が、第2上横部材9及び第2下横部材10の左右複数箇所に一体化されている。
【0048】
上述のように、第1枠1Aと断熱材3との連結手段である複数の皿ビス(第1螺子の一例)14は、その全てが溝部mを通しての第2枠1B側から締込み及び緩みの螺着操作が行えるようになっており、その溝部mにより、皿ビス14の締弛操作が第2枠1B側から行えるようにするための第1螺子操作用手段22が構成されている。建物に装着されている使用状態では、それら皿ビス14(第1螺子)はドアシール材13によって覆われて見えないので好都合であるが、それらドアシール材13を取外して皿ビス14を操作することにより、断熱材3が装着された状態の第2枠1Bを第1枠1Aから取外すことが可能である。
【0049】
従って、第2枠1Bを、即ちドア2を強度十分に支持できる断熱ドアでありながらも、マンション等の建物への装着後において、第2枠1Bが経時によって汚れたり損傷した場合の新品等への交換が可能であるとともに、第2枠1Bを異なるデザインや形状のものに付替えることも可能である。
【0050】
〔実施例2〕
断熱材3は、断熱材料からなる表層39と、強度や剛性を有する硬質材で成る心材40とが積層一体化されて成る積層部材でも良い。例として上断熱片3Aで説明すると、図7に示すように、ステンレス材、鋼板、アルミ合金等で成る心材40の表裏両面に、FRP、フェルト、PVC等の断熱性を有する合成樹脂材料で成る表層(断熱層)39,39が積層されたサンドイッチ構造のものである。図示のように、表層39と同じ材料によって心材40の端面を覆う端面材41,41を設けて、心材40を覆うようにすれば好都合である。
【0051】
このように、心材40付の断熱材3とすれば、第1枠1Aと第2枠1Bとの連結強度が向上してより高強度なドア枠1になるとともに、断熱3としての耐火強度耐火温度が上がり、防火上でもより好ましいドア枠1を有する断熱ドア装置Aを提供することが可能になる。尚、心材40と片側の表層39とが積層された構造の断熱材3でも良いし、平板状やZ状(階段状)等の断面形状がL字形以外のものも可能である。また、断熱性を有する合成樹脂としては種々のものが可能である。
【0052】
〔実施例3〕
実施例3による断熱ドア装置Aは、図8,図9に示すように、第1枠1Aの第2枠側壁1fと第2枠1Bの第1枠側壁1rとが対向配備され、第2枠側壁1fと第1枠側壁1rとの間に断熱材3が介装されている。断熱材3の断面形状(長手方向視形状)は、第1枠側壁1rを挟み込み可能となるようにJ字形(ほぼJ字形や略コ字形でも良い)に形成されるとともに、第2枠側壁1fと断熱材3と第1枠側壁1rとがこれらを貫通するボルト(螺着手段の一例)によって一体的に連結されている。尚、図8,9に示す実施例3に断熱ドア装置Aにおいては、図4,5等に示される実施例1による断熱ドア装置Aと異なる部分、即ち断熱材3の周辺部位のみ説明するものとし、同じ箇所には同一の符号を記してその説明が為されたものとする。
【0053】
即ち、断熱材3周辺の構造例としてドア開閉端側で説明すると、第1左側部材7の内側壁7Bは、その前端が折り返されることで前壁7Aよりも前方に突出する折返し壁部7bを有しており、それに続く前壁7Aは、その横側端が実施例1の場合(図5を参照)に比べて延びていて第2枠側壁1fを形成している。第2左側部材12の背壁12Aは、その横外側端の位置が前壁7Aの端位置と同等に設定され、かつ、折返し壁部12bを伴って横内側端の位置が第1左側部材7の折返し壁部7bに到達せんとする平板状の第1枠側壁1rを形成している。
【0054】
つまり、後内壁部121と第2左側部材12の折返し壁部12bと第1左側部材7の折返し壁部7bとによって左縦溝部分md(=溝部m)が形成されており、ドアシール材13は断熱材3に接する状態で設置される。断熱材3は、前壁7Aと背壁12Aとの間に介装される本体部3hと、第2左側部材12の折返し壁部12bとドアシール材13との間に介装される返り部3kと、第2左側部材12の折返し壁部12bの横端において本体部3hと返り部3kとを繋ぐ連結部3rと、を有する断面J字状のものに構成されている。
【0055】
皿ビス(第1螺子の一例)14は、第1螺子操作用手段22に相当する左縦溝部分mdから操作可能であって、返り部3kから第2左側部材12の折返し壁部12b及び本体部3hを挿通し、前壁7Aに螺着されている。また、前壁7A及び本体部3hを挿通し、背壁12Aに螺着されるナベビス(第2螺子の一例)38が設けられており、これら皿ビス14とナベビス38との対が上下に複数組設定されており、それらによって第1左側部材7と第2左側部材12とが断熱されながらも強固に連結一体化されている。第1左側部材7の室内側壁である後壁7Cの外端はナベビス38の螺軸中心yよりも僅かに内側に寄った位置に設定されており、それによってドライバー等のナベビス操作用工具(図示省略)でのナベビス38の回し操作が可能な第2螺子操作用手段42が構成されている。
【0056】
実施例3による断熱ドア装置Aでは、前壁7A(4A,5A,6A)と背壁12A(9A,10A,11A)との両者に跨って挿通される皿ビス14とナベビス38との対により、第1枠1Aと第2枠1Bとが一体連結されている。そして、前壁7A(4A,5A,6A)と背壁12A(9A,10A,11A)との間に介装される本体部3h、並びに折返し部7b(4b,5b,6b)と折返し部12b(9b,10b,11b)との間に介装される連結部3rとにより、第1枠1Aと第2枠1Bとは皿ビス14とナベビス38以外は断熱材3を介して接触しており、優れた断熱効果と強固な連結強度との双方を発揮するものとなっている。
【0057】
また、断熱材3は、その断面形状がコ字形又はほぼコ字形或いはJ字形又はほぼJ字形に形成されていて、第1枠側壁1r(又は第2枠側壁1f)、即ち背壁12A(9A,10A,11A)を挟み込み可能であるから、組付け時には、断熱材3を折返し壁部12b(9b,10b,11b)を含む背壁12A(9A,10A,11A)に挿入して仮装着させることが可能であり、その断熱材3が仮装着されている第2枠1Bと台枠1Aとを、皿ビス14とナベビス38とを用いて簡単で便利に組付けることができる(例えば、単に板状の断熱材を介装させる構成では、手指で断熱材を支持しながら両枠1A,1Bを合せてボルト通しする、という面倒でやり難い作業が必要になる)。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】マンションの玄関に適用された断熱ドア装置の正面図(実施例1)
【図2】図1の断熱ドア装置の背面図
【図3】図1の断熱ドア装置の横断面図
【図4】図1の断熱ドア装置の縦断面図
【図5】図3の横断面図における要部を示す拡大断面図
【図6】図4の縦断面図における要部を示す拡大断面図
【図7】断熱材の別構造を示す要部の拡大断面図(実施例2)
【図8】断熱ドア装置の要部の横断面図(実施例3)
【図9】図8の断熱ドア装置の要部の縦断面図
【符号の説明】
【0059】
1A 第1枠
1B 第2枠
1f 第2枠側壁
1r 第1枠側壁
2 ドア
2a,2b ドア面
3 断熱材
3A 上断熱片
3B 下断熱片
3C 軸心側断熱片
3D 開閉側断熱片
3a 表面
3b 裏面
3i 主板状部
3f 補助板状部
13 ドアシール材
14 第1螺子
22 第1螺子操作用手段
38 第2螺子
39 表層
40 心材
K 躯体
P 縦軸心
R 螺着手段
t 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体に取付け可能な第1枠と、縦軸心回りで揺動開閉可能にドアを枢支し、かつ、断熱材を介して前記第1枠に連結される第2枠とを有するとともに、前記断熱材が板状に形成されてその表面が前記両枠のうちのいずれか一方に面当接され、かつ、裏面がいずれか他方に面当接される状態で前記第1枠と前記第2枠との間に介装されている断熱ドア装置。
【請求項2】
前記第1枠と前記断熱材とが第1螺子で連結され、かつ、前記第2枠と前記断熱材とが第2螺子で連結されることにより、前記第1枠と前記第2枠とが連結されている請求項1に記載の断熱ドア装置。
【請求項3】
前記第1螺子の締弛操作が前記第2枠側から行えるようにするための第1螺子操作用手段が設けられている請求項2に記載の断熱ドア装置。
【請求項4】
閉じ状態での前記ドアのドア面に沿う方向において前記第1枠が前記第2枠よりも内側に張り出る突出部を有し、かつ、前記断熱材が前記突出部にも重なるように設定されるとともに、前記第1螺子を前記突出部に配置することによって前記第1螺子操作用手段が構成されている請求項3に記載の断熱ドア装置。
【請求項5】
閉じ状態での前記ドアに接触させて気密させるためのドアシール材が、前記断熱材を介して前記突出部に設置されている請求項4に記載の断熱ドア装置。
【請求項6】
前記断熱材が、前記第1枠と前記第2枠との間に介装される主板状部と、その主板状部の一端から前記主板状部の面に沿う方向に交差する方向に延設される補助板状部と、を有する断面L字形状又はほぼL字形状の型材に形成されるとともに、前記主板状部と前記補助板状部との双方において前記断熱材と前記第2枠とが相対固定されている請求項1〜5の何れか一項に記載の断熱ドア装置。
【請求項7】
前記断熱材が、前記ドアの上下各辺に対応する上断熱片及び下断熱片と、前記縦軸心存在側の側辺に対応する軸心側断熱片と、開閉側の側辺に対応する開閉側断熱片とを有して構成されており、前記軸心側断熱片の厚みがその他の断熱片の厚みよりも厚く設定されている請求項1〜6の何れか一項に記載の断熱ドア装置。
【請求項8】
前記第1枠の第2枠側壁と前記第2枠の第1枠側壁とが対向配備され、前記第2枠側壁と前記第1枠側壁との間に前記断熱材が介装されている請求項1に記載の断熱ドア装置。
【請求項9】
前記第2枠側壁と前記断熱材と前記第1枠側壁とがこれらを貫通する螺着手段によって一体的に連結されている請求項8に記載の断熱ドア装置。
【請求項10】
前記断熱材が前記第2枠側壁又は前記第1枠側壁を挟み込み可能となるように、前記断熱材の断面形状がコ字形又はほぼコ字形或いはJ字形又はほぼJ字形に形成されている請求項8又は9に記載の断熱ドア装置。
【請求項11】
前記断熱材が、硬質材製の心材と断熱材料による表層とが積層一体化されて成る積層部材に構成されている請求項1〜10の何れか一項に記載の断熱ドア装置。
【請求項12】
前記断熱材が合成樹脂製のものである請求項1〜11の何れか一項に記載の断熱ドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−221790(P2009−221790A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69623(P2008−69623)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(500062438)吉田サッシ株式会社 (11)
【Fターム(参考)】