説明

断熱パネル及びその製造方法

【課題】金属外皮と断熱材との剥離を防止することができる断熱パネルを提供する。
【解決手段】金属外皮1と樹脂発泡体からなる断熱材2とが積層一体化された断熱パネルに関する。金属外皮1と断熱材2との間には金属外皮1と断熱材2とを接着するための樹脂接着層3が形成される。該樹脂接着層3は断熱材2よりも高密度に形成される。断熱材2をその自己接着力により金属外皮1に直接接着する場合に比べて、機械的(接合)強度が格段に優れた樹脂接着層3と金属外皮1との界面及び樹脂接着層3と断熱材2との界面を金属外皮と断熱材2との間に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネルや間仕切りパネルなどとして用いられる断熱パネル及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、二枚の金属外皮の間に硬質ウレタンの原料液を注入し、発泡及び硬化させることにより硬質ウレタンフォームからなる断熱材と金属外皮とを一体化した断熱パネルが提案されている(特許文献1参照)。このような断熱パネルでは、硬質ウレタンの原料液の自己接着力により断熱材と金属外皮とを接着するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、硬質ウレタンの原料液の自己接着力だけでは断熱材と金属外皮との接着力が不十分で、断熱材と金属外皮との界面で剥離が生じるおそれがあった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、金属外皮と断熱材との接合強度を向上させることができる断熱パネル及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る断熱パネルAは、金属外皮1と樹脂発泡体からなる断熱材2とが積層一体化された断熱パネルであって、金属外皮1と断熱材2との間には金属外皮1と断熱材2とを接着するための樹脂接着層3が形成され、該樹脂接着層3は断熱材2よりも高密度に形成されて成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2に係る断熱パネルAは、請求項1において、樹脂接着層3は無発泡又は微発泡であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項3に係る断熱パネルAは、請求項1又は2において、断熱材2と樹脂接着層3の樹脂成分は同種であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項4に係る断熱パネルAの製造方法は、金属外皮1と樹脂発泡体からなる断熱材2とを積層一体化する断熱パネルの製造方法であって、金属外皮1の表面に樹脂液3aを供給した後、金属外皮1のこの表面に発泡性樹脂液2aを供給し、発泡性樹脂液2aを発泡させつつ樹脂液3aを硬化させることによって、発泡性樹脂液2aから断熱材2を形成すると共に樹脂液3aから樹脂接着層3を形成し、金属外皮1と断熱材2とを断熱材2よりも高密度の樹脂接着層3で接着することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項5に係る断熱パネルAの製造方法は、請求項4において、樹脂液3aを無発泡又は微発泡させて樹脂接着層3を形成することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項6に係る断熱パネルAの製造方法は、請求項4又は5において、発泡性樹脂液2aと樹脂液3aとの樹脂成分が同種であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、断熱材より高密度の樹脂接着層で金属外皮と断熱材とを接着することによって、断熱材をその自己接着力により金属外皮に直接接着する場合に比べて、機械的(接合)強度が格段に優れた樹脂接着層と金属外皮との界面及び樹脂接着層と断熱材との界面を金属外皮と断熱材との間に形成することができ、樹脂接着層を介して金属外皮と断熱材とを強固に接着して剥離を防止することができるものである。
【0013】
請求項2の発明では、無発泡又は微発泡の樹脂接着層を用いることにより、樹脂接着層の発泡による樹脂接着層と金属外皮との界面の接着強度の低下を防止することができ、樹脂接着層を介して金属外皮と断熱材とを強固に接着して剥離を防止することができるものである。
【0014】
請求項3の発明では、断熱材と樹脂接着層とを異種の樹脂成分で形成する場合に比べて、断熱材の発泡性樹脂液の未反応成分と接着樹脂層の樹脂液の未反応成分とを化学的に反応させることにより、金属外皮と断熱材との間に、高密度の接着樹脂層と樹脂発泡体の断熱材との化学的な結合による密着性の高い一体化層を形成して断熱材と樹脂接着層との接着性を高くすることができ、断熱材と樹脂接着層との界面での剥離を防止することができるものである。
【0015】
請求項4の発明では、断熱材よりも高密度の樹脂接着層で金属外皮と断熱材とを接着することによって、断熱材をその自己接着力により金属外皮に直接接着する場合に比べて、機械的(接合)強度が格段に優れた樹脂接着層と金属外皮との界面及び樹脂接着層と断熱材との界面を金属外皮と断熱材との間に形成することができ、樹脂接着層を介して金属外皮と断熱材とを強固に接着して剥離を防止することができるものである。しかも、発泡性樹脂液を発泡させつつ樹脂液を硬化させるために、金属外皮の表面に発泡性樹脂液よりも先に塗布する樹脂接着層の樹脂液の化学的反応が終了するまでに発泡性樹脂液を散布して供給することによって、樹脂接着層の樹脂液が樹脂発泡体の断熱材のセル間に進入して硬化することになり、アンカー効果(投錨効果)により断熱材と樹脂接着層とを互いに食い込ませた状態で接着することができ、断熱材と樹脂接着層との界面での剥離を防止することができるものである。
【0016】
請求項5の発明は、無発泡又は微発泡の樹脂接着層を形成することにより、樹脂接着層の発泡による樹脂接着層と金属外皮との界面の接着強度の低下を防止することができ、樹脂接着層を介して金属外皮と断熱材とを強固に接着して剥離を防止することができるものである。
【0017】
請求項6の発明は、断熱材と樹脂接着層とを異種の樹脂成分で形成する場合に比べて、断熱材の発泡性樹脂液の未反応成分と接着樹脂層の樹脂液の未反応成分とを化学的に反応させることにより、金属外皮と断熱材との間に、高密度の接着樹脂層と樹脂発泡体の断熱材との化学的な反応による結合強度の高い一体化層を形成して断熱材と樹脂接着層との接着性を高くすることができ、断熱材と樹脂接着層との界面での剥離を防止することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の断熱パネルの実施の形態の一例を示し、(a)は斜視図、(b)は一部の断面図、(c)は他例を示す一部の断面図である。
【図2】本発明の断熱パネルの製造方法の実施の形態の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の断熱パネルの製造方法で用いるダブルコンベアの一例を示す概略図である。
【図4】本発明の断熱パネルの製造方法で用いる樹脂液塗布装置の例を示し、(a)乃至(c)は概略図である。
【図5】本発明の断熱パネルの他の実施の形態の例を示し、(a)(b)は一部の断面図である。
【図6】実施例及び比較例のピーリング強度を示すグラフである。
【図7】実施例及び比較例の剥離試験後の金属外皮の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
本発明の断熱パネルAは、厚みが例えば20〜150mmに形成され、図1(a)に示すように、対向配置される二枚の金属外皮1、1の間に断熱材2を充填して形成されるものである。断熱パネルAの一方の側端部には凸部7が設けられていると共に断熱パネルの他方の側端部には凸部7と嵌合可能な凹部8が設けられていてもよい。
【0021】
金属外皮1としては、亜鉛鉄板、アルミニウム板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、チタン鋼板等、あるいはこれら金属板を一般の塗料で着色したものや塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂などを被覆したものを用いることができる。尚、金属外皮1の断熱材2と接着する側の表面にはプライマ塗装を施しておくのが好ましい。また、金属外皮1を形成する金属板の厚みは0.2〜2.0mmとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
断熱材2はポリイソシアヌレートフォームやフェノールフォームやポリウレタンフォームなどの樹脂発泡体である。これらの断熱材2は既知の方法で形成されるものであって、例えば、ポリイソシアヌレートフォームの場合は、粗トリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと、エチレングリコールなどのポリオールと、2−エチルヘキサン酸カリウムなどの三量化触媒と、シクロペンタンやn−ペンタンや水などの発泡剤とを混合して調製される発泡性樹脂液2aを加熱発泡する方法などを採用することができる。
【0023】
金属外皮1と断熱材2とは樹脂接着層3により接着されている。樹脂接着層3は接着性を有する樹脂成分を主成分とする樹脂液3aの硬化物であって、断熱材2よりも高密度の樹脂硬化物で形成されている。このように高密度の樹脂接着層3を用いることにより、低密度の断熱材2を自己接着力により直接金属外皮1に接着する場合に比べて、機械的な接合強度が格段に優れた相溶性の良い樹脂接着層3と金属外皮1との界面及び樹脂接着層3と断熱材2との界面を金属外皮と断熱材との間に形成することができ、樹脂接着層3により断熱材2を金属外皮1に強固に接着することができる。すなわち、従来のように、樹脂発泡体の断熱材2を自己接着力で直接接着した場合、金属外皮1と断熱材2との界面近傍で断熱材2のセル(気泡)が破壊されて金属外皮1と断熱材2の剥離が生じるが、本発明では、金属外皮1と断熱材2の間に断熱材2よりも高密度で破壊されにくい樹脂接着層3が形成されているために、金属外皮1と断熱材2の界面での剥離を防止することができるものである。断熱材2の密度は、特に限定されないが、断熱材2は断熱性やパネル強度等を考慮して30kg/m以上100kg/m未満にするのが好ましい。また、樹脂接着層3の密度は断熱材2よりも高密度であればよいが、断熱材2と金属外皮1との接着性を考慮して100〜1000kg/mにするのが好ましく、さらに接着性を向上させるために600kg/m以上であることがより好ましい。断熱材2よりも高密度の樹脂接着層3を形成するためには樹脂液3aを無発泡で硬化させるか、微発泡で硬化させるようにする。このように樹脂接着層3を無発泡又は微発泡にすることにより、気泡(セル)で樹脂接着層が脆弱とならないようにすることができ、樹脂接着層の破壊による樹脂接着層と金属外皮との界面の接着強度の低下を防止することができる。ここで、断熱材2の通常の発泡倍率は30倍前後であり、本発明における「微発泡」とは発泡倍率が2倍以下のことをいう。また、樹脂接着層3の微発泡は、樹脂液3aが発泡性樹脂液2aの発泡と同時に不可避的に発泡する場合も含む。尚、断熱材2の厚みは20〜150mm、樹脂接着層3の厚みは5μm〜1.0mmとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0024】
また、樹脂液3aの樹脂成分は断熱材2を形成するための発泡性樹脂液2aの樹脂成分と同種であることが好ましい。例えば、断熱材2がポリイソシアヌレートフォームである場合は、上記のような組成の発泡性樹脂液2aから発泡剤を除いた樹脂組成物を用いることができる。また、断熱材2をフェノールフォームやポリウレタンフォームで形成する場合も、発泡性樹脂液2aを樹脂成分のフェノールやポリウレタン等と発泡剤との混合物を用い、樹脂液3aとしては発泡性樹脂液2aから発泡剤を除いた樹脂成分のみ(フェノールやポリウレタン等)を用いることができる。このように断熱材2と樹脂接着層3とを発泡剤の有無の違いだけで、樹脂成分としては同種のものを用いることによって、断熱材2と樹脂接着層3とを異種の樹脂成分で形成する場合に比べて、断熱材2と樹脂接着層3との接着性を高くすることができ、断熱材2と樹脂接着層3との界面での剥離を防止することができる。すなわち、断熱材2の発泡性樹脂液2aの未反応成分と接着樹脂層3の樹脂液3aの未反応成分とを化学的に反応させることにより、金属外皮1と断熱材2との間に、高密度の接着樹脂層3と樹脂発泡体の断熱材2との化学的な共有結合による結合強度の高い一体化層を形成することができ、断熱材2と樹脂接着層3との接着性を高くして断熱材2と樹脂接着層3との界面での剥離を防止することができる。
【0025】
図2に本発明の断熱パネルAの製造装置の一例を示す。この製造装置は金属板成形部40と充填部41と仕上げ部43とを備えている。金属板成形部40は帯状金属板25から上記の金属外皮1を形成する箇所であって、ペイオフリール10a、10bから上下に配置された二枚の帯状金属板25をピンチローラ12a、12bにて引き出し、引き出した帯状金属板25の両側縁部に成形機11a、11bにて折り返し成形を施して凸部7及び凹部8に対応する部分を形成すると共に必要に応じて帯状金属板25の全面に亘って凹凸を付与して断熱パネルAの表面模様などを形成することによって、二枚の長尺の金属外皮1を成形する箇所である。このようにして形成された長尺の金属外皮1はサポートローラ13などの搬送手段によって充填部41へと連続的に進行して搬送される。尚、図中の符号29はシャーである。
【0026】
充填部41は上記の発泡性樹脂液2aを二枚の長尺の金属外皮1の間に充填する箇所であって、発泡性樹脂液2aから形成される断熱材2と金属外皮1の接着性を高めるために金属外皮1を最適温度30〜80℃に予備加熱するためのプレヒータ15と、予備加熱された金属外皮1の接着面(上側の金属外皮1にあっては下面、下側の金属外皮1にあっては上面)に樹脂液3aを塗布する樹脂液塗布装置26と、金属外皮1の幅方向(短手方向)に往復移動して上下に対向配置された金属外皮1の間に発泡性樹脂液2aを注入密度30〜60kg/mで均一に散布して注入するためのスプレーノズル31を備えたガントリー16と、上下に対向配置された金属外皮1の間隔を所定の寸法に設定するためのダブルコンベア17と、ダブルコンベア17を収容して金属外皮1の間に注入された発泡性樹脂液2aを保温するための保温装置28とを備えている。
【0027】
図3に示すように、上記のダブルコンベア17は上下一対のコンベア17a、17bを具備しており、コンベア17a、17bは油圧シリンダーなどにより上下移動自在に形成されている。このダブルコンベア17を用いて金属外皮1の上下の間隔を所定の寸法に設定するには、コンベア17a、17bの間に上下一対の金属外皮1を導入すると共にコンベア17a、17bをそれぞれ上下移動させて上下の間隔を変化させることによって金属外皮1を押圧し、金属外皮1の上下の間隔を変化させるようにするのである。従って、ダブルコンベア17は発泡性樹脂液2aの発泡により破損しないように発泡性樹脂液2aの発泡圧力に耐え得る構造となっている。
【0028】
樹脂液塗布装置26としては、図4(a)に示すように、金属外皮1の幅方向(進行方向と直交する方向)に沿って複数の噴出口が形成され、この噴出口から樹脂液3aを金属外皮1の接着面に向けて噴出する方式を採用することもできる。このとき樹脂液3aはビード状に塗布されるものである。すなわち、金属外皮1の接着面にその搬送方向に沿って複数条の樹脂液3aが塗布されるものである。また、図4(b)に示すように、金属外皮1の搬送方向と直交する方向に沿って往復運動しながら、樹脂液塗布装置26が備える噴出口21から樹脂液3aを金属外皮1の接着面に向けて噴出する方式(トラバース方式)を採用することもできる。このとき樹脂液3aは金属外皮1の接着面に蛇行状に塗布される。さらに、図4(c)に示すように、樹脂液塗布装置26をロールコーターで形成し、金属外皮1の接着面でロールコーターを回転させることにより、樹脂液3aを金属外皮1の接着面のほぼ全面にわたって塗布することができる。
【0029】
仕上げ部43は、上記の充填部41で形成された断熱パネル原板27から断熱パネルAを仕上げる箇所であって、断熱パネル原板27の幅寸法と厚み寸法を計測するための幅厚み計19と、プロセスコンピュータにより制御されて断熱パネル原板27を所定の寸法にカットするための走間切断機20と、断熱パネルAをその長さと梱包枚数単位に応じて制御して積層するためのリジェクトパイラ22及びパイラ24とを具備している。
【0030】
そして、断熱パネルAを製造するにあたっては次のようにして行なう。まず、上記のようにして金属板成形部40にて帯状金属板25から長尺の金属外皮1を形成し、この長尺の金属外皮1を上下に対向させた状態で進行させて搬送することにより金属外皮1を金属板成形部40から充填部41に導入する。次に、充填部41に導入した金属外皮1をプレヒータ15内に通過させて加熱する。次に、加熱した金属外皮1の接着面に樹脂液塗布装置26で樹脂液3aを塗布する。このとき、樹脂液3aは接着性の確保のために5μm〜1.0mmの厚みで塗布することができるが、これに限定されるものではない。次に、図2に示すように、樹脂液3aを塗布した金属外皮1をガントリー16にまで進行させ、ここで、金属外皮1の間に位置するスプレーノズル31からクリーム状の発泡性樹脂液2aを下側の金属板2の上面に向けて噴射することによって、長尺の金属外皮1の間に発泡性樹脂液2aを注入して供給する。ここで樹脂液3aの塗布から発泡性樹脂液2aまでの時間は短いほど好ましいが、樹脂液3aの可使時間の範囲内であれば良い。樹脂液3aの可使時間は樹脂液3aの種類や金属外皮1の温度などによって異なるが、例えば、2分である。この後、図3に示すように発泡性樹脂液2aを介在させた状態で金属外皮1を上下のコンベア17a、17bの間に連続的に導入すると共に保温装置28で金属外皮1の間の発泡性樹脂液2aを40〜50℃に保温する。これにより、発泡性樹脂液2aが反応(ポリイソシアヌレートフォームの場合は、発泡性樹脂液2a中のポリイソシアネートとポリオールが三量化触媒の存在下で反応する)して硬化しながら発泡剤により発泡することによって、断熱材2が金属外皮1、1の間に形成される。また、これと同時に樹脂液3aが硬化して樹脂接着層3が形成されると共に、硬化した樹脂接着層3により金属外皮1と断熱材2とが接着される。このように、金属外皮1の表面に発泡性樹脂液2aよりも先に塗布する樹脂液3aの化学的反応が終了するまでに発泡性樹脂液2aを散布して供給することによって、樹脂接着層3の樹脂液3aが樹脂発泡体の断熱材2のセル間に進入して硬化することになり、アンカー効果により断熱材2と樹脂接着層3とを互いに食い込ませた状態で接着することができる。上記のように、本発明ではアンカー効果による物理的効果と共有結合による化学的効果の相乗効果により、金属外皮1と断熱材2との耐剥離性能(機械的(接合)強度)を大幅に向上させることができる。
【0031】
尚、樹脂接着層3は発泡性樹脂液2aを発泡させつつ硬化させるので、その発泡の影響で樹脂接着層3が微発泡する場合がある。また、樹脂液3aを部分的に塗布した場合においても、樹脂液3aが全く塗布されていない場合に比べて、断熱材2の接着強度が高くなり、用途によっては使用可能な断熱パネルを得ることができる。このようにして金属外皮1、1の間に断熱材2が充填された断熱パネル原板27が連続的に成形されるものである。
【0032】
この後、断熱パネル原板27を仕上げ部43に導入する。ここで、断熱パネル原板27の寸法の計測を幅厚み計19により行い、次に、プロセスコンピュータにより制御される走間切断機20にて断熱パネル原板27を所定の寸法にカットすることにより図1(a)(b)に示すような、金属外皮1と断熱材2とが積層一体化された断熱パネルAを形成することができる。その後、断熱パネルAはリジェクトパイラ22及びパイラ24などの自動積載装置により長さと梱包枚数単位が制御されて積層されるようになっている。尚、上記の製造装置のラインスピード(金属外皮1を送るスピード)は5.0〜15.0m/分にするのが好ましい。
【0033】
尚、本発明の断熱パネルAとしては、図1(c)に示すように、一方の金属外皮1と断熱材2との間にのみ接着樹脂層3を設け、もう一方の金属外皮1と断熱材2との間には接着樹脂層3を設けないようにすることもできる。接着樹脂層3を設けない場合は、金属外皮1と断熱材2とを発泡性樹脂液2aの自己接着力で接着することができる。そして、このような断熱パネルAでは、特に、一方の金属外皮1と断熱材2の接着強度が必要な場合に好適に用いることができ、例えば、接着樹脂層3を設けた方を屋外側に向けて施工することができる。また、本発明の断熱パネルAとしては、断熱材2として厚み方向で密度の異なる複数の層で形成しても良い。例えば、図5(a)に示すものでは、断熱材2を厚み方向の中央部に形成される低密度層2bと、低密度層2bの両面に形成される高密度層2cとで構成されている。ここで、低密度層2b、高密度層2c、樹脂接着層3の順で密度が高くなるように形成されており、例えば、低密度層2bの密度を30kg/m以上60kg/m未満、高密度層2cの密度を60kg/m以上100kg/m未満、樹脂接着層3の密度を100kg/m以上1000kg/m以下とすることができる。このように断熱材2に高密度層2cを設けて樹脂接着層3との密度差を小さくすることによって、断熱材2と樹脂接着層3の物性を近づけることができ、断熱材2と樹脂接着層3の剥離をより確実に防止することができるものである。また、上記では断熱パネルAとして二枚の金属外皮1、1の間に断熱材2を充填したサンドイッチパネルについて説明したが、これに限らず、図5(b)に示すように、一枚の金属外皮1の片面に断熱材2を樹脂接着層3により接着して積層一体化したサイディング材として本発明の断熱パネルAを形成しても良い。
【実施例】
【0034】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0035】
(実施例1)
図2に示す断熱パネルAの製造装置を用いて断熱パネルAを形成した。金属外皮1としては、厚み0.5mmの亜鉛めっき鋼板を帯状金属板25として用いた。発泡性樹脂液2aとしてはポリイソシアネート系樹脂液(BASF INOAC ポリウレタン、発泡剤としてn−ペンタンを含む)を用いた。樹脂液3aとしてはポリイソシアネート系樹脂液(BASF INOAC ポリウレタン、発泡剤なし)を用いた。
【0036】
そして、上記と同様の工程にて断熱パネルAを形成した。すなわち、金属板成形部40にて帯状金属板25から長尺の金属外皮1を形成し、この長尺の金属外皮1を上下に対向させた状態で進行させて搬送することにより金属外皮1を金属板成形部40から充填部41に導入した。次に、各金属外皮1、1の接着面に樹脂液塗布装置26で樹脂液3aを塗布した。このとき、樹脂液3aは100μmの厚みで塗布した。次に、樹脂液3aを塗布した金属外皮1をガントリー16にまで進行させ、ここで、金属外皮1の間に位置するスプレーノズル31からクリーム状の発泡性樹脂液2aを下側の金属外皮1の上面に向けて噴射することによって、長尺の金属外皮1の間に発泡性樹脂液2aを注入して供給した。発泡性樹脂液2aの供給は樹脂液3aの塗布の直後(ほぼ0秒)とし、このときの発泡性樹脂液2aの供給量は1.6kg/mとした。この後、発泡性樹脂液2aを介在させた状態で金属外皮1、1を上下のコンベア17a、17bの間に連続的に導入すると共に保温装置28で金属外皮1の間の発泡性樹脂液2aを40〜50℃に保温した。これにより、発泡性樹脂液2aが反応して発泡しつつ硬化することによって、断熱材2が金属外皮1、1の間に形成された。また、これと同時に樹脂液3aが硬化して樹脂接着層3が形成されると共に、硬化した樹脂接着層3により金属外皮1と断熱材2とが接着された。このようにして金属外皮1、1の間に断熱材2が充填された断熱パネル原板27が連続的に成形された。この後、断熱パネル原板27が所定の寸法にカットされて図1のような断熱パネルAが形成された。この断熱パネルAの断熱材2の密度は45kg/m、樹脂接着層3の密度は1200kg/mであった。樹脂接着層3は微発泡であった。
【0037】
(実施例2)
発泡性樹脂液2aの供給を樹脂液3aの塗布から1分後とした以外は実施例1と同様にして断熱パネルAを形成した。樹脂接着層3は微発泡であった。
【0038】
(実施例3)
発泡性樹脂液2aの供給を樹脂液3aの塗布から2分後とした以外は実施例1と同様にして断熱パネルAを形成した。樹脂接着層3は微発泡であった。
【0039】
(実施例4)
発泡性樹脂液2aの供給を樹脂液3aの塗布から11分後とした以外は実施例1と同様にして断熱パネルAを形成した。樹脂接着層3は微発泡であった。
【0040】
(比較例)
樹脂液3aを用いずに、断熱材2を自己接着力で金属外皮1に接着した以外は実施例1と同様に断熱パネルAを形成した。断熱材2の密度は実施例1と同様である。
【0041】
[剥離試験]
実施例1〜4及び比較例の断熱パネルAについて、金属外皮1と断熱材2との剥離試験を行った。試験方法は、断熱パネルAを幅115mm、長さ200mm以上の大きさに切断し、このサンプルをオートグラフにセットし、金属外皮1の先端から150mmの部分を治具で固定し、引っ掛け治具をサンプルの先端に形成した穴に引っ掛け、試験速度20mm/minで押さえ位置150mm付近まで引っ張って、金属外皮1と断熱材2とのピーリング強度(剥離強度)を測定した。
【0042】
その結果、図6に示すように、実施例1〜4は比較例に比べて、ピーリング強度が大きくなった。特に、樹脂液3aの塗布から発泡性樹脂2aの供給までの時間が短い実施例1〜3はピーリング強度が大幅に向上した。これは、樹脂接着層3と断熱材2との界面で樹脂液3aと発泡性樹脂液2aとが互いに混ざり合った状態で硬化することによりアンカー効果が生じたためである。そして、実施例1〜3では、剥離試験で断熱材2が破壊されて金属外皮1が剥離されているため、図7に示すように、剥離試験後の金属外皮1に断熱材2が多く残存しているが、実施例4では剥離試験後の金属外皮1に断熱材2が残存することが少なく、樹脂接着層3のみが金属外皮1に付着しており、比較例では金属外皮1に断熱材2が残存せず、金属外皮1と断熱材2との界面剥離が生じた。
【符号の説明】
【0043】
A 断熱パネル
1 金属外皮
2 断熱材
2a 発泡性樹脂液
3 樹脂接着層
3a 樹脂液


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属外皮と樹脂発泡体からなる断熱材とが積層一体化された断熱パネルであって、金属外皮と断熱材との間には金属外皮と断熱材とを接着するための樹脂接着層が形成され、該樹脂接着層は断熱材よりも高密度に形成されて成ることを特徴とする断熱パネル。
【請求項2】
樹脂接着層は無発泡又は微発泡であることを特徴とする請求項1に記載の断熱パネル。
【請求項3】
断熱材と樹脂接着層の樹脂成分は同種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱パネル。
【請求項4】
金属外皮と樹脂発泡体からなる断熱材とを積層一体化する断熱パネルの製造方法であって、金属外皮の表面に樹脂液を供給した後、金属外皮のこの表面に発泡性樹脂液を供給し、発泡性樹脂液を発泡させつつ樹脂液を硬化させることによって、発泡性樹脂液から断熱材を形成すると共に樹脂液から樹脂接着層を形成し、金属外皮と断熱材とを断熱材よりも高密度の樹脂接着層で接着することを特徴とする断熱パネルの製造方法。
【請求項5】
樹脂液を無発泡又は微発泡させて樹脂接着層を形成することを特徴とする請求項4に記載の断熱パネルの製造方法。
【請求項6】
発泡性樹脂液と樹脂液との樹脂成分が同種であることを特徴とする請求項4又は5に記載の断熱パネルの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−106112(P2011−106112A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259927(P2009−259927)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】