説明

断熱リフォーム方法及び断熱リフォーム用断熱パネル

【課題】簡易かつ断熱効果の高いリフォームを行うことができる断熱リフォーム方法及び断熱リフォーム用断熱パネルを提供する。
【解決手段】壁1に囲まれた既存の外窓11の室内側Pに張り出すように新たな窓枠14を取付けるとともに、該新たな窓枠14に障子12を組み付けて二重窓10にするリフォーム時に、新たな窓枠14の室内側Pに張り出した部位18と壁1との間を埋めるように施工される断熱パネル20であって、水平に延びる桟木23を上下方向に所定の間隔で複数配するとともに桟木23間に矩形状の断熱材21を配してなる断熱面板24の室内側P表面に板材22を固定するようにして、断熱材21と板材22を一体化してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の住宅について断熱効果を高めるようにリフォームする断熱リフォーム方法及びその方法に使用される断熱リフォーム用断熱パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新築住宅では地球温暖化防止、省エネルギー等の観点に加えて、建築基準法の改正もあって、壁・天井・床等への断熱材の使用が一般化している。窓についても、寒冷地を中心に、ペアガラスを使用した断熱サッシが普及しつつある。
一方、住宅ストックの大半を占める既存住宅においても断熱工事は可能であり、これらの断熱工事を実施する際には、壁・天井・床に加えて、窓の断熱工事を行えば効果的である。
例えば、熱損失については、暖房と冷房で多少異なるが、壁・天井・床で全体の約25%、窓等の開口部から50〜70%の熱が損失すると言われている。これを少しでも減少させる事で、既存の住宅であっても最新の住宅に近い断熱性能を得ることが可能となる。
【0003】
そこで、近年では既存住宅に対しては、リフォーム時に断熱工事を併せて行う例が多い。既存の断熱リフォームとしては、壁・天井・床の既存表面材を撤去後、グラスウール等の断熱材を間柱・野縁・根太間に施工し、再び表面材を施工する方法が一般的である。
この方法によると、一旦既存の壁・天井・床を撤去するときにそれらを破損してしまうので、たとえリフォーム前において何ら問題がない壁・天井・床であったとしても、一旦撤去された壁・天井・床の再利用は困難であり、通常は廃棄される。
【0004】
一方、既存建材をそのまま生かして断熱工事を行う方法も存在する。例えば、既存壁に穿孔し、この孔から壁裏の空隙にウレタン液を注入し、発泡・硬化させた断熱材施工方法である。これは既存建材を撤去することなく、しかも比較的短時間で施工可能である。天井に関しては、天井裏に上がって手作業でグラスウールを敷き詰める方法が一般的だが、セルロースファイバー等の綿状断熱材をブロワーで吹き込んで積層させ、断熱層を形成する方法もある。
【0005】
また、サッシ等の開口部については、既存サッシを撤去後、高気密サッシへの交換が一般的だが、ガラス部分にペアガラスを用いて、断熱構造を有するアルミサッシや木製サッシ、プラスチック製サッシ等への交換を行う場合が多い(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところで、住宅の種類による断熱リフォームについてみると、戸建住宅では防火地域における外壁やサッシの材質に関する規制等を除けば、特に大きな問題は無い。
しかし、集合住宅ではそもそもサッシを含めた外装は共有部分である為に、大規模修繕等、集合住宅全体で行うような工事を除いて、区分所有者が無断でサッシや外壁の交換等の改装を行う事はできない(但し、破損したガラス交換を除く)。個人が行える断熱リフォームは、あくまで区分所有範囲内のみであり、サッシも既存サッシを残したリフォームに限定されるのが現状である。
【0007】
そこで、これらの問題を解決する為に、図12に示すように、近年、既存の外窓11の室内側にプラスチック製や木製の新たな障子12を内窓として新たに設けて、二重窓とする例がある(例えば、特許文献2,3参照)。
これは、既存の窓枠13に室内側に張り出すように新たな窓枠14を取付けるとともに、新たな窓枠14に新たな障子(内窓)12を設けて、既存の外窓11と内窓12との間に形成された空気層を断熱材として利用するものである。新たな窓枠14は既存の窓枠13に対して矩形状のそのものをそのまま取付けるようにしても、上下左右に分割した状態で取付け、取付け後に矩形状にするようにしてもよい。また、このような二重窓は併せて遮音効果も得る事が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭61−001250号公報
【特許文献2】実公昭62−000389号公報
【特許文献3】特開平11−324526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の既存の住宅における断熱リフォーム工事に関しては、以下の問題点があった。
1.大量の廃棄物が発生する
壁・天井・床の断熱リフォームでは、一旦、既存の仕上げ材を撤去して間柱・野縁・根太間に断熱材を施工する必要がある。この一旦撤去した仕上げ材は、程度に差はあるが通常は汚損している上に、施工時(新築時)に使用された釘や接着剤が付着しているので、再利用は極めて困難であり、廃棄処分されるのが一般的である。場合によっては下地である間柱・野縁・根太等の交換が必要な場合もある。
窓に対し断熱リフォームを施す場合も、既存のサッシから高気密サッシへの交換という方法を採ると、既存のサッシを廃棄する必要がある。
【0010】
2.工期が長くなる
一旦、既存の仕上げ材を撤去すると、その分工期が長くなってしまう。仕上げ材を撤去した後に間柱・野縁・根太材の交換が必要であると判明した場合には、一層リフォームが長期化してしまう。もちろん、工期が長くなると、その分コストが嵩んでしまう。
【0011】
3.部屋単位の断熱リフォームは困難である
上記のような内断熱とは異なり、外断熱の場合、例えば壁一面だけ施工して残りの面には断熱工事を未実施では断熱効果は薄いので、住宅全体を一気に断熱施工する形が一般的である。あくまで外断熱リフォームでは、住宅全体の外周を一度に断熱施工する事が前提である。したがって、莫大な工事費用が必要となってしまうので、気軽に断熱工事を行う事はできない。
また、外断熱は基本的に外壁全体に断熱材を施工するので、断熱工事が不要な納戸、倉庫、未使用の居室等まで断熱する事となってしまい、無駄が多い。
【0012】
4.リフォーム中は生活が困難である
外断熱の場合、外壁面から施工する事となるので、足場施工も必要で、家全体のリフォームとなってしまう。工事中は騒音や振動、ホコリ等が顕著な上に、全部屋が工事対象となってしまうので、工事場所の家具等を他の部屋に退避させておく事は困難である。
また、既存サッシを高気密サッシへ交換する場合、既存サッシ撤去後、新サッシ工事完了までの間は施錠ができず外部からの侵入が容易なので、セキュリティ上の大きな問題も生じてしまう。
以上の問題点1乃至4のように、従来の断熱リフォームは大掛かりなものであるので、気軽に断熱リフォームを行うことができない。
【0013】
5.ヒートブリッジが形成される恐れがある
断熱材は通常、間柱・野縁・根太材間に落とし込むようにして施工されるので、長年の使用によって脱落し易く、一旦断熱材が脱落するとこの部分の断熱効果が大幅に低下してしまう。熱が室内外へ行き来してしまうこの箇所をヒートブリッジいう。
また、ウレタン注入・発泡及びセルロースファイバー吹き込みによる断熱層形成の場合、断熱材が隅々まで正確に充填されたかどうかを目視により確認することはできず、また他の確認方法もない。よって、断熱層の充填状態は作業者の勘と経験に頼るしかないので、断熱層が形成されない箇所が残ってしまい、ヒートブリッジを形成してしまう危険性がある。
また、これらの断熱材は正常に施工された状態であったとしても、間柱・野縁・根太材の存在する部分には断熱材が存在しないので、その部分は断熱材がある部分に比較して相対的に熱が伝わり易い。その結果、リフォーム施工後長期間経過すると、間柱・野縁・根太材等の位置が黒い影のように浮かび上がって見苦しくなる場合がある。
窓に関してサッシを交換する場合、アルミは熱を伝え易いので、アルミサッシでは室内・室外間を遮断する断熱層の設置が不可欠である。これを怠ると、たとえ断熱性に優れたペアガラスを用いたとしても、アルミのサッシ枠部分から熱損失が生じてしまう。
【0014】
6.見栄えが悪い
特に、既存の窓の内側に内窓を設けて二重窓にする場合、内窓部分が室内側へ張り出すので、既存の窓を囲む既存の壁との間に大きな段差ができてしまい、見栄えが悪い。
【0015】
7.天候に左右される
外壁に断熱材を施工する場合等では、天候にリフォームが左右されてしまう場合が多い。特に積雪地では冬季の工事は基本的に不可能である。
【0016】
8.集合住宅に適した工法が無い
集合住宅では、入居者の区分所有権の及ぶ範囲は室内側のみであり、外断熱は勿論、サッシに対しても、区分所有者が無断で改装を行う事は出来ない。
【0017】
そこで、本発明の目的とするところは、簡易かつ断熱効果の高いリフォームを行うことができる断熱リフォーム方法及び断熱リフォーム用断熱パネルを提供することにある。
また、他の目的として、見栄えがよい断熱リフォーム方法及び断熱リフォーム用断熱パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の断熱リフォーム方法は、壁(1)に囲まれた既存の外窓(11)の室内側(P)に張り出すように新たな窓枠(14)を取付けるとともに、該新たな窓枠(14)に障子(12)を組み付けて二重窓(10)にするリフォーム方法であって、前記新たな窓枠(14)の室内側(P)に張り出した部位(18)と前記壁(1)との間に、断熱材(21)と板材(22)を一体化してなる断熱パネル(20)を施工して、前記張り出した部位(18)を埋めることを特徴とする。
ここで、障子(12)とは木製窓だけではなく、窓材一般のことをいう。
【0019】
また、請求項2に記載の断熱リフォーム用断熱パネル(20)は、壁(1)に囲まれた既存の外窓(11)の室内側(P)に張り出すように新たな窓枠(14)を取付けるとともに、該新たな窓枠(14)に障子(12)を組み付けて二重窓(10)にするリフォーム時に、前記新たな窓枠(14)の室内側(P)に張り出した部位(18)と前記壁(1)との間を埋めるように施工される断熱パネル(20)であって、水平に延びる桟木(23)を上下方向に所定の間隔で複数配するとともに前記桟木(23)間に矩形状の断熱材(21)を配してなる断熱面板(24)の室内側(P)表面に板材(22)を固定するようにして、前記断熱材(21)と前記板材(22)を一体化してなることを特徴とする。
【0020】
また、請求項3に記載の断熱リフォーム用断熱パネル(20)は、前記桟木(23)は上下に位置する前記断熱材(21)で挟持されているだけであり、前記断熱材(21)及び前記板材(22)に対しては固定されていないことを特徴とする。
【0021】
また、請求項4に記載の断熱リフォーム用断熱パネル(20)は、前記桟木(23)は上下に位置する前記断熱材(21)で挟持されているものであり、前記板材(22)に対しては剥離可能な仮固定部材(25)によって固定されていることを特徴とする。
ここで、剥離可能な仮固定部材(25)とは例えば、ステープラの針や、少量又は弱粘着の接着剤、粘着テープ等をいう。
【0022】
また、請求項5に記載の断熱リフォーム用断熱パネル(20)は、前記断熱面板(24)の所定の位置にある桟木(23)では、二つの桟木(23)が上下二段に固定されることなく重ねられ、その二段の桟木(23)の境界線を切断時の切断ガイド線(26)としてなることを特徴とする。
【0023】
また、請求項6に記載の断熱リフォーム用断熱パネル(20)は、前記板材(22)には、前記断熱面板(24)の上下からそれぞれ突出する突出部(27)が形成され、全体が断面略凸字状の形状であることを特徴とする。
【0024】
また、請求項7に記載の断熱リフォーム方法は、既存の壁(1),既存の天井(2),及び既存の床(3)のうち少なくとも一つの部位の室内側(P)に、断熱材(21,31,41)と板材(22,32,42)を一体化してなるとともに周囲に嵌合部(27,37,47)が設けられた断熱パネル(20,30,40)を重ねて施工することを特徴とする。
なお、請求項7,後述の請求項8,請求項10でいう周囲とは、必ずしも四辺全てということではなく、例えば断熱パネルの上端及び下端の二辺、又は左端及び右端の二辺などであってもよい。
【0025】
また、請求項8に記載の断熱リフォーム用断熱パネル(20)は、既存の壁(1),既存の天井(2),及び既存の床(3)のうち少なくとも一つの部位の室内側(P)に施工される断熱パネルであって、水平に延びる桟木(23,33,43)を上下方向に所定の間隔で複数配するとともに前記桟木(23,33,43)間に矩形状の断熱材(21,31,41)を配してなる断熱面板(24)の室内側(P)表面に板材(22,32,42)を固定するようにして、前記断熱材(21,31,41)と前記板材(22,32,42)を一体化してなり、しかも周囲に嵌合部(27,37,47)が設けられてなることを特徴とする。
【0026】
また、請求項9に記載の断熱リフォーム用断熱パネル(50)は、壁(1)に囲まれた既存の外窓(11)の室内側(P)に張り出すように新たな窓枠(14)を取付けるとともに、該新たな窓枠(14)に障子(12)を組み付けて二重窓(10)にするリフォーム時に、前記新たな窓枠(14)の室内側(P)に張り出した部位(18)と前記壁(1)との間を埋めるように施工される断熱パネル(50)であって、水平に延びる桟木(53)を上下方向に所定の間隔で複数配するとともに前記桟木(53)間に矩形状の断熱材(51)を配するとともに、複数配された桟木(53)の左右両端側に上下に延びる縦桟木(58)を配したもの(54)の室内側(P)表面に板材(52)を、上下からそれぞれ突出するように固定して、前記断熱材(51)と前記板材(52)を一体化してなることを特徴とする。
【0027】
また、請求項10に記載の断熱リフォーム用断熱パネル(50)は、既存の壁(1),既存の天井(2),及び既存の床(3)のうち少なくとも一つの部位の室内側(P)に施工される断熱パネル(50)であって、水平に延びる桟木(53)を上下方向に所定の間隔で複数配するとともに前記桟木(53)間に矩形状の断熱材(51)を配するとともに、複数配された桟木(53)の左右両端側に上下に延びる縦桟木(58)を配したもの(54)の室内側(P)表面に板材(52)を、上下からそれぞれ突出するように固定して、前記断熱材(51)と前記板材(52)を一体化してなり、しかも周囲に嵌合部(57)が設けられてなることを特徴とする。
【0028】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0029】
本発明の請求項1に記載の断熱リフォーム方法によれば、壁に囲まれた既存の外窓の室内側に張り出すように新たな窓枠を取付けるとともに、該新たな窓枠に障子を組み付けて二重窓にするリフォーム方法であって、新たな窓枠の室内側に張り出した部位と壁との間に、断熱材と板材を一体化してなる断熱パネルを施工するので、以下の効果がある。
1.廃棄物がほとんど発生しない
既存の壁における仕上げ材を撤去することなく、断熱材と板材を一体化してなる断熱リフォーム用断熱パネルを施工するだけなので、廃棄物はほとんど発生しない。
窓に対する断熱リフォームにおいても、既存のサッシをそのまま温存するので、廃棄物が発生しない。
2.工期が短い
既存の仕上げ材を撤去する手間が掛からないので、工期は短期である。当然ながら、仕上げ材の撤去に伴う間柱の破損がないので、これらの交換の必要もない。
【0030】
3.部屋単位の断熱リフォームが可能
室内側からの施工であるので、断熱施工が一部屋単位であってもその部屋における断熱効果は高い。したがって、例えば初年度は一部屋だけリフォームを行い、他の部屋のリフォームは次年度以降に行うといった部屋単位でのリフォームも可能である。つまり、外断熱の場合のように、住宅全体を一気に断熱施工する必要は無いので、気軽に断熱リフォームを行うことができる。
また、断熱工事が不要な納戸、倉庫、未使用の居室等は断熱する必要が無いので、その分の費用節約も可能である。
4.リフォーム中も生活が可能
部屋単位で順番に施工可能なので、断熱リフォーム中もその住宅での生活が可能である。また、施工現場の家具のみを他の部屋に一時的に退避して工事続行が可能である。よって、転居や、家具の退避に伴う倉庫を借りる等の手間及びコストが掛からない。
また、全て室内側から工事が可能なので、外壁足場は不要である。サッシも既存サッシがそのままなので、施錠することができ、セキュリティ上も全く問題ない。
以上に示したように、この断熱リフォーム方法は簡易なものである。しかも、本発明には同時に以下に示す効果もある。
【0031】
5.ヒートブリッジが形成される恐れが少ない
既存の間柱と断熱パネルの断熱材が直交するように施工すれば、断熱材の無いヒートブリッジとなり得る部分は僅かしかない。
断熱材は工場で均質な状態で製造したものを用いるので、断熱材が隅々まで正確に施工されたかは目視で容易に確認可能であり、ヒートブリッジ形成の危険性は殆ど無い。
このようにヒートブリッジが形成され難いので、断熱効果が高く、またリフォーム施工後長期間経過しても、間柱等の位置が黒い影のように浮かび上がって見苦しくなる恐れも無い。
6.見栄えがよい
また、断熱リフォーム用断熱パネルを施工して、窓枠の室内側に張り出した部位を埋めるので、壁と張り出した部位との段差が小さくなり、見栄えがよい。
【0032】
7.天候に左右されない
室内での工事だけで済むので、天候の影響は受けない。よって、冬季の積雪地であっても、資材の運搬さえできれば支障なく工事が可能である。
8.集合住宅に適した工法である
断熱リフォーム用断熱パネルの施工は、全て入居者の区分所有権の及ぶ範囲である室内側であり、しかも既存の壁を撤去しなくてよいので、集合住宅であっても断熱施工が可能である。
また、既存のサッシには全く手を加えないので、窓についても集合住宅において断熱施工が可能である。
このように、既存の壁やサッシは残したままなので、リフォーム後も原状復旧が可能であり、退去時に原状復旧が必要な賃貸住宅にも適している。
【0033】
また、請求項2に記載の断熱リフォーム用断熱パネルによれば、これは請求項1に記載の断熱リフォーム方法に用いられる断熱リフォーム用断熱パネルであるので、請求項1に記載の発明と同様の作用効果がある。
すなわち、壁に囲まれた既存の外窓の室内側に張り出すように新たな窓枠を取付けるとともに、該新たな窓枠に障子を組み付けて二重窓にするリフォーム時に、この断熱リフォーム用断熱パネルは新たな窓枠の室内側に張り出した部位と壁との間を埋めるように施工されるので、廃棄物がほとんど発生しない。つまり、既存の壁における仕上げ材を撤去することなく、断熱リフォームを行うことができる。
また、既存の仕上げ材を撤去する手間がかからないので、工期は短期である。
また、部屋単位の断熱リフォームが可能であるとともに、リフォーム中も生活が可能である。
【0034】
しかも、水平に延びる桟木を上下方向に所定の間隔で複数配するとともに桟木間に矩形状の断熱材を配してなる断熱面板の室内側表面に板材を固定するようにして、断熱材と板材を一体化してなるので、既存の上下に延びる間柱と断熱材とが直交する。よって、断熱材の無いヒートブリッジとなり得る部分は僅かしかなく、断熱効果が高い。
また、窓枠の室内側に張り出した部位を断熱リフォーム用断熱パネルで埋めるので、壁との間の段差が小さくなり、見栄えがよい。
また、桟木が断熱材に対して補強材となるので、上下の長さが壁の高さと略等しく大きな断熱リフォーム用断熱パネルであっても、その強度を十分保つことができる。
さらに、リフォームは全て屋内で行われるので、施工が天候に左右されない。
また、既存の壁やサッシはそのまま残すので、集合住宅であっても断熱施工が可能である。
【0035】
また、請求項3に記載の断熱リフォーム用断熱パネルによれば、請求項2に記載の発明の作用効果に加え、桟木は上下に位置する断熱材で挟持されているだけであり、断熱材及び板材に対しては固定されていないので、断熱リフォーム用断熱パネルから桟木を容易に取り外すことができ、その位置にて断熱リフォーム用断熱パネルを切断し易い。つまり、断熱リフォーム用断熱パネルを切断するときには、板材だけを切断するだけでよいので、断熱リフォーム用断熱パネルの寸法を対象の壁の寸法に容易に合わせることができる。
【0036】
また、請求項4に記載の断熱リフォーム用断熱パネルによれば、請求項2に記載の発明の作用効果に加え、桟木は上下に位置する断熱材で挟持されているものであり、板材に対しては剥離可能な仮固定部材によって固定されているので、請求項3に記載の断熱リフォーム用断熱パネルと同様に、桟木を取り外すことで断熱リフォーム用断熱パネルの寸法を対象の壁の寸法に容易に合わせることができる。
【0037】
また、請求項5に記載の断熱リフォーム用断熱パネルによれば、請求項2乃至4に記載の発明の作用効果に加え、断熱面板の所定の位置にある桟木では、二つの桟木が上下二段に固定されることなく重ねられ、その二段の桟木の境界線を切断時の切断ガイド線としてなるので、境界線に鋸等を沿わせて断熱リフォーム用断熱パネルを直線状に切断することが容易である。よって、現場での断熱リフォーム用断熱パネルの寸法合わせをさらに容易に行うことができる。
【0038】
また、請求項6に記載の断熱リフォーム用断熱パネルによれば、請求項2乃至5に記載の発明の作用効果に加え、板材には、断熱面板の上下からそれぞれ突出する突出部が形成され、全体が断面略凸字状の形状であるので、例えば、既存の壁の上下位置に角材を水平に配置しておけば、その角材に突出部を重ね合わせ、突出部に釘を打ち付けるだけで、断熱リフォーム用断熱パネルを壁に固定することができる。
【0039】
また、請求項7に記載の断熱リフォーム方法によれば、既存の壁,既存の天井,及び既存の床のうち少なくとも一つの部位の室内側に、断熱材と板材を一体化してなるとともに周囲に嵌合部が設けられた断熱パネルを重ねて施工するので、壁,天井,床のいずれに対するリフォームであっても、廃棄物をほとんど発生させずに断熱リフォームが可能である。また、壁,天井,床の既存の仕上げ材を撤去する手間が掛からないので、工期が短い。
これらの施工は全て室内側から行うことができるので、部屋単位の断熱リフォームが可能であるとともに、リフォーム中もその住宅での生活は可能である。
また、断熱リフォーム用断熱パネルにおける断熱材を既存の間柱・野縁・根太材と直交させるように断熱リフォーム用断熱パネルを施工すれば、断熱材の無いヒートブリッジとなり得る部分は僅かしか無く、さらに壁,天井,床の断熱リフォームを一度に行えば、その部屋における断熱効果は非常に高くなる。
【0040】
また、請求項8に記載の断熱リフォーム用断熱パネルによれば、水平に延びる桟木を上下方向に所定の間隔で複数配するとともに桟木間に矩形状の断熱材を配してなる断熱面板の室内側表面に板材を固定するようにして、断熱材と板材を一体化してなるので、既存の間柱・野縁・根太と断熱材を直交させることができる。よって、断熱材の無いヒートブリッジとなり得る部分は僅かしかないので、断熱効果が高い。
また、桟木が断熱材に対して補強材となるので、大きな断熱リフォーム用断熱パネルであっても、その強度を十分保つことができる。
しかも周囲に嵌合部が設けられてなるので、例えば、既存の壁の上下位置に下地材として角材を水平に配置しておけば、その角材に嵌合部を重ね合わせ、嵌合部に釘を打ち付けるだけで、柱などの位置を気にせず断熱リフォーム用断熱パネルを壁に固定することができ、また、断熱リフォーム用断熱パネルの嵌合部と他の断熱リフォーム用断熱パネルの嵌合部とを嵌合させることで、その嵌合が強固となり、また目違いが生じ難い。
また、嵌合部に角材が納まるので、嵌合部のない断熱パネルを角材の上にそのまま固定した場合のように部屋が狭くなることはない。
【0041】
さらに、請求項9及び請求項10に記載の断熱リフォーム用断熱パネルによれば、水平に延びる複数の桟木に加えて、上下に延びる縦桟木を、複数配された桟木の左右両端側に配し、室内側表面に板材を固定しているので、補強材となり強度を十分保つことができる。
【0042】
なお、本発明の断熱リフォーム方法及び断熱リフォーム用断熱パネルのように、既存の外窓や壁を撤去することなく、断熱パネルを壁等に重ねて施工する点は、上述した特許文献1乃至3には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る壁用の断熱リフォーム用断熱パネルを示す斜視図である。
【図2】図1に示す壁用の断熱リフォーム用断熱パネルを示す拡大背面図である。
【図3】図1に示す壁用の断熱リフォーム用断熱パネルを示す拡大側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る天井用の断熱リフォーム用断熱パネルを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る床用の断熱リフォーム用断熱パネルを示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る二重窓と壁用の断熱リフォーム用断熱パネルの施工状態を示す横断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る二重窓と壁用の断熱リフォーム用断熱パネルの施工状態を示す縦断面図である。
【図8】図1に示す壁用の断熱リフォーム用断熱パネルの施工方法を示す縦断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る二重窓の施工方法を示す正面図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る壁用の断熱リフォーム用断熱パネルの施工方法を示す縦断面図であり、(a)は切断前の壁用の断熱リフォーム用断熱パネルを、(b)は切断後の壁用の断熱リフォーム用断熱パネルを、(c)は上下二段に重ねられた桟木を取り外した状態をそれぞれ示す。
【図11】本発明の他の実施形態に係る壁用の断熱リフォーム用断熱パネルの割付を示す割付図である。
【図12】既存の外窓を二重窓にするリフォーム方法を示す斜視図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る壁用の断熱リフォーム用断熱パネルの施工方法を示す縦断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係る壁用の断熱リフォーム用断熱パネルを示す背面図である。
【図15】図14のA−A線拡大断面図である。
【図16】図14のB−B線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1乃至9、及び図12を参照して、本発明の実施形態に係る断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40及び断熱リフォーム方法を説明する。
断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40としては、壁1用、天井2用、床3用の各種があり、それぞれサイズが異なるが、板材22,32,42の片面に断熱材21,31,41が接着され一体化したという点では共通する。
また、断熱のための二重窓10についても説明する。
なお、従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0045】
壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20は、図1乃至3に示すように、断熱面板24の室内側P表面に板材22(ここでは合板)を固定してなる。
そして、断熱面板24は、水平に延びる桟木23を上下方向に所定の間隔で複数配し、桟木23間に矩形状の断熱材21を配してなる。桟木23は上下に位置する断熱材21で挟持されており、板材22に対しては剥離可能なようにステープラ、あるいは少量の接着剤25をスポット状に塗布することによって固定されている。また、桟木23は短手方向に延びる。この断熱材21は工場において均質に製造されたものであり、ここではその断熱材区分がFランク(熱伝導率0.022以下)のA種フェノールフォーム保温板1種2号を用いた。
また、図2に示すように、上から二番目の断熱材21と三番目の断熱材21との間にある桟木23、及び上から四番目の断熱材21と五番目の断熱材21との間にある桟木23はそれぞれ、二つの桟木23が上下二段に互いに固定されることなく重ねられている。上下二段の桟木23の間は、境界線として数mm開けられている。この境界線は、壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20を上下に切断する際の切断ガイド線26となるが、通常は切断せずにそのままの状態で壁1に対して施工される。なお、二つの桟木23を隙間を設けることなく上下二段にそのまま重ねるようにすることもできる。この場合でも切断ガイド線26は外部から容易に把握することができる。また、一方の桟木23を外し、もう一方の桟木23をガイドとして、カッター等で切断してもよい。板材22が石膏ボードであれば、カッターで容易に切断することができる。
板材22の上下の長さは、リフォーム対象の壁1の上下の高さに略等しく、断熱面板24の上下の長さよりも数cm長い。よって、図3に示すように、板材22には、断熱面板24の上下からそれぞれ突出する突出部(嵌合部)27が形成され、壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20は全体が断面略凸字状の形状となっている。
このように壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20は、断熱材21と板材22を一体化してなる。
【0046】
なお、板材22の厚さが5.5mm、断熱材21の厚さが15mmの場合は、壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20の総厚は20.5mmとなる。
この総厚が薄ければ薄い程、部屋が狭くならないので好ましいが、断熱材21が薄ければ、その分、断熱性能は低下する。また、火気使用室等、内装制限にかかる部位に用いる場合には、板材22として不燃性能の高い石膏ボード等を用いるとともに、断熱材21も不燃性能の高いものにする必要がある。こういった諸条件を考えると、Eランク(熱伝導率0.028〜0.023)以下の熱伝導率である断熱材21を用いることが好ましい。また、より好ましくは、Fランク(熱伝導率0022以下)のA種フェノールフォーム保温板1種1号,2号等を断熱材21として用いれば、薄くても断熱性能が得られるとともに、不燃性能も得られる。Cランク(熱伝導率0.040〜0.035)の断熱材21と比較すると、Eランクの断熱材21であれば7割程度、Fランクの断熱材21であれば5割程度あるいはそれ以下の厚みで同等の断熱性が得られる。一方、グラスウール、ロックウール等は不燃性能に優れるが、Cランク、良くてもDランク(熱伝導率0.034〜0.029)程度の断熱性能しか得られないのであまり好ましいとは言えない。それに対し、ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォームといった断熱材21は、不燃性能に劣るものの、Eランク程度の断熱性能を得られるものもあるので、用いることができる。ただし、今のところ、断熱性能、不燃性能、吸湿性能、防湿性能、加工性等の観点から、フェノールフォームが断熱材21として最も好ましい。
ここでいう、C,D,E,Fの各ランクとは、独立行政法人住宅金融支援機構の断熱材区分におけるランクである。
【0047】
天井用の断熱リフォーム用断熱パネル30も、図4に示すように、断熱面板34の室内側P表面に板材32を固定してなる。その構造は基本的には壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20と変わりないが、この断熱リフォーム用断熱パネル30はリフォーム後には荷重がほとんど作用しない天井2部分に用いられるものなので、この板材32は3mm程度の薄いものを使用する。また、桟木33は両側面のみに設けられ長手方向に延びる。嵌合部37としては、天井材に多用されるあいじゃくりを採用した。
【0048】
床用の断熱リフォーム用断熱パネル40も、図5に示すように、壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20や天井用の断熱リフォーム用断熱パネル30と同様に、断熱面板44の室内側P表面に板材42を固定してなる。そして、断熱面板44は所定の間隔で配された複数の桟木43と、桟木43間の矩形状の断熱材41からなる。
ここでの板材42の厚さは壁用のものよりも厚く、12mmである。これは、床材としての耐荷重性を考慮した結果であって、金庫やピアノ、本棚等の重量物が設置される場合は、板材42はさらに厚く、15mm又は24mmのものを用いる事も考えられる。
床用の断熱リフォーム用断熱パネル40の側面には、嵌合部47として実加工を施して、目違いが生じないように強固に嵌合される。
【0049】
二重窓10は、図6,図7及び図12に示すように、壁1に囲まれた既存の外窓11の室内側Pに張り出すように新たな窓枠14を取付け、その窓枠14に内窓として障子12を組み付けてなる。
新たな窓枠14はプラスチック製の窓枠下地15と窓枠化粧材からなる。窓枠下地15が既存の窓枠13上に設けられ、この上に窓枠化粧材を被着している。この際に内窓12と既存の外窓11との間に十分な空間を確保できない場合は、ふかし枠16を用いて適宜調整を行っても良い。
二重窓10における内窓用サッシ12aの構造に関しては通常の木製サッシに類似しているが、内窓用サッシ12aは外気に接しておらず、風雨に晒されるものでは無いので、防水性に関しては考慮しなくても良い。つまり、内窓用サッシ12aは気密性と断熱性を重視した構造となっている。召し合わせ17部分には耐久性に優れたプラスチック又はゴムの押出成型パッキン、窓枠化粧材にはヒダ状パッキン、上部にもプラスチック又はゴムの押出成型パッキンを用いてある。
【0050】
次に、これらの断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40と二重窓10に関する断熱リフォーム方法を順に示す。この断熱リフォームは、部屋単位で行う。
まず、断熱リフォームを行う部屋の家具等を撤去する。
次に、既存内装の壁1・天井2・床3のチェックを行い、剥離・破損等の不具合を補修する。なお、この補修は、壁1・天井2・床3に下地材として各種断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40を保持できるだけの強度を持たせるだけよい。
壁1や天井2にあるコンセントC、スイッチ、エアコン、照明等の器具は、基本的には一旦撤去して、壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20や天井用の断熱リフォーム用断熱パネル30の施工後に再度取り付ける。しかし、場合によってはそのままにして、コンセントC等の周囲に各種断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40を施工することも考えられる。
【0051】
次に、壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20を施工する。その下準備として、図8に示すように、既存壁1の上下位置に下地材として角材Tを予め設けておき、その角材Tに壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20の上下端の突出部27を釘等で固定する。このとき、既存壁1を撤去する必要は無く、そのままこの上に壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20を重ねて施工する。このように壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20は、図6及び図7に示すように、この後に取付けられる新たな窓枠14の室内側Pに張り出した部位18と壁1との間を埋めるように施工される。
壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20の既存壁1への固定は、上下端の突出部27以外にも、桟木23部分を室内側Pから釘等で打撃固定したり、木ネジ、接着剤、両面テープ等による固定が考えられる。
また、既存壁1の強度によっては胴縁を予め施工し、この上に壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20を施工すれば、一層強固に取付けできる。壁1への固定手段には特に制限は無いが、既存壁1の状況によって釘や木ネジ、接着剤等を使い分けるのが好ましい。
【0052】
次に、壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20と同様の手順で、天井用及び床用の断熱リフォーム用断熱パネル30,40を施工する。ここで、天井用の断熱リフォーム用断熱パネル30における断熱材31が野縁と直交するように、また床用の断熱リフォーム用断熱パネル40における断熱材41が根太と直交するようにそれぞれを配置する。
【0053】
これら各種断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40の施工が完了した後、内窓12の施工を行う。
内窓12の施工に関しては、まず既存の外窓11のチェックを行い、気密不完全な部分を補修しておく。
次に、図9に示すように、既存の窓枠13にプラスチック製の窓枠下地15を位置決めして施工する。施工は、木ネジ、接着剤、両面テープ等の手段で固定を行う。このとき、既存の窓枠13の奥行が不足の場合は、室内側Pへふかし枠16を付加しても良い。そして、窓枠下地15の上に窓枠化粧材を嵌合固定する。
窓枠化粧材は、内窓12が木製なので、これに色を合わせておくと違和感が無く好都合である。窓枠化粧材施工後、障子12を取り付けて内窓12の施工が完了する。
【0054】
最後に、床3にはフローリング等の床仕上げ材を施工し、壁1及び天井2には目地部分にパテ等で目止めを行なった上で、壁紙を施工すれば断熱リフォーム工事は完了する。
【0055】
以上のように構成された断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40及び断熱リフォーム方法によれば、既存の壁1等における仕上げ材を撤去することなく、断熱材21,31,41と板材22,32,42を一体化してなる断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40を施工するだけなので、廃棄物はほとんど発生しない。
窓に対する断熱リフォームにおいても、既存のサッシ11aをそのまま温存するので、廃棄物が発生しない。
また、既存の仕上げ材を撤去する手間が掛からないので、工期は短期である。当然ながら、仕上げ材の撤去に伴う間柱等の破損がないので、これらの交換の必要もない。
また、室内側Pからの施工であるので、断熱施工が一部屋単位であってもその部屋における断熱効果は高い。したがって、例えば初年度は一部屋だけリフォームを行い、他の部屋のリフォームは次年度以降に行うといった部屋単位でのリフォームも可能となる。つまり、外断熱の場合のように、住宅全体を一気に断熱施工する必要は無いので、気軽に断熱リフォームを行うことができる。
また、断熱工事が不要な納戸、倉庫、未使用の居室等は断熱する必要が無いので、その分の費用節約も可能である。
また、部屋単位で順番に施工可能なので、断熱リフォーム中もその住宅での生活が可能である。また、施工現場の家具のみを他の部屋に一時的に退避して工事続行が可能である。よって、転居や、家具の退避に伴う倉庫を借りる等の手間及びコストが掛からない。
また、全て室内側Pから工事が可能なので、室外側Qの足場は不要である。サッシも既存サッシ11aがそのままなので、施錠することができ、セキュリティ上も全く問題ない。
このように、本実施形態に係る断熱リフォーム方法は簡易な方法である。
【0056】
それに加え、各種断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40における断熱材21,31,41をそれぞれ既存の間柱・野縁・根太と直交させたので、断熱材21,31,41の無いヒートブリッジとなり得る部分は僅かしかない。
また、断熱材21,31,41は工場で均質に製造したものであるので、断熱材21,31,41が隅々まで正確に施工されたかは目視で容易に確認可能であり、ヒートブリッジ形成の危険性は殆ど無い。
このようにヒートブリッジが形成され難いので、断熱効果が高く、またリフォーム施工後長期間経過しても、間柱等の位置が黒い影のように浮かび上がって見苦しくなる恐れも無い。
【0057】
また、特に壁1のリフォームに関して、断熱リフォーム用断熱パネル20を施工して、窓枠の室内側Pに張り出した部位18を埋めるので、壁1と張り出した部位18との段差が小さくなり、見栄えがよい。
さらに、室内での工事だけで済むので、天候の影響は受けない。よって、冬季の積雪地であっても、資材の運搬さえできれば支障なく工事が可能である。
また、断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40の施工は、全て入居者の区分所有権の及ぶ範囲である室内側Pであり、しかも既存の壁1を撤去しなくてよいので、集合住宅であっても断熱施工が可能である。
また、既存のサッシ11aには全く手を加えないので、窓についても集合住宅において断熱施工が可能である。
このように、既存の壁1やサッシ11aは残したままなので、リフォーム後も原状復旧が可能であり、退去時に原状復旧が必要な賃貸住宅等にも適している。
【0058】
また、板材22には、断熱面板44の上下からそれぞれ突出する突出部27が形成され、全体が断面略凸字状の形状であるので、既存の壁1の上下位置に角材Tを水平に配置しておけば、その角材Tに突出部27を重ね合わせ、突出部27に釘を打ち付けるだけで、柱などの位置を気にせず断熱リフォーム用断熱パネル20を壁1に固定することができる。
また、突出部27に角材Tが納まるので、突出部27のない断熱パネルを角材Tの上にそのまま固定した場合のように部屋が狭くなることはない。
【0059】
なお、壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20は、図10(a)に示すように一部の桟木23を上下二段に重ねたが、こうすることで図10(b)に示すように、二段の桟木23の境界線である切断ガイド線26に鋸等を沿わせて断熱リフォーム用断熱パネル20を容易に上下に切断することができる。このとき、桟木23は板材22に対して剥離可能となるように少量の接着剤25で固定されているので、図10(c)に示すように、切断箇所の桟木23を容易に取り除くことができる。すなわち、新たに断熱リフォーム用断熱パネル20の突出部27を形成することができる。これにより、現場での断熱リフォーム用断熱パネル20の寸法合わせ及び施工を容易に行うことができる。
この切断で形成された壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20のうち小幅の部分は、図11に示すように、他の壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20の継ぎ足し部分28(不足部分)に転用可能である。例えば、天井2から床3までが8尺であっても、運搬上の都合等から全長が6尺の壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20が用いられることがある。このとき、6尺の壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20を三等分して2尺の壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20を三つ作り、上下の桟木23を外す。そして、図13に示すように、壁1の上下位置に加え、天井2から略2尺の位置にも角材Tを二つ上下二段に設け、上側には2尺の壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20を、下側には6尺の壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20を施工する。この天井2から略2尺の位置の二つの角材Tは、縦幅が通常の角材T二段分のものを一本としてもよい。
また、壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20と天井用の断熱リフォーム用断熱パネル30は兼用可能である。
【0060】
また、一部の桟木23を上下二段に重ねたが、これに限られるものではなく、全ての桟木23が一本ずつであって、それぞれ断熱材21と交互に配置されていてもよい。
【0061】
また、ステープラや少量の接着剤25によって桟木23,33,34を板材22,32,42に対して剥離可能に固定したが、仮固定部材25はこれに限られるものではない。他には、弱粘着の接着剤や少量又は弱粘着の粘着テープ等が仮固定部材25として考えられる。また、桟木23,33,34を断熱材21,31,41にも固定してもよい。
一方、桟木23,33,34を取り外す必要がないとき又は取り外す必要のない箇所では、通常の粘着力の接着剤を用いて桟木23,33,34を断熱材21,31,41及び板材22,32,42に対して恒久的に固定してもよい。
さらに、これらの仮固定部材25を用いず、桟木23は上下に位置する断熱材21で挟持されているだけで、断熱材21及び板材22に対しては固定されていなくてもよい。もちろん、この場合は一層桟木23の取り外しが容易である。
【0062】
また、壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20を壁1へ固定し易いように、板材22に断熱面板44の上下からそれぞれ突出する突出部27を形成したが、これに限られるものではない。突出部27がなくても木ネジ、接着剤、両面テープ等の既知の固定手段を用いて、断熱リフォーム用断熱パネル20の壁1への固定は可能である。
【0063】
また、本実施形態では、既存の壁1,既存の天井2,及び既存の床3の全てに断熱リフォームを施したが、例えば壁1のみに対して行なっても一定の断熱効果は得られる。
集合住宅の一つの部屋に対して本実施形態に係る断熱リフォームを行う場合、隣の部屋との境界である壁1には、壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20の配置の省略、又はそれよりも断熱性能の低い断熱リフォーム用断熱パネルに変更しても支障がないこともある。
【0064】
また、断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40における板材22,32,42は合板としたが、これに限られるものではなく、MDF等の繊維板、パーティクルボード、LVL等他の木質材料を用いても差し支えない。
一方、火気使用室等、内装制限に係る部位をリフォームする場合には、板材22,32,42として石膏ボード、あるいは珪酸カルシウム、粘土鉱物のバーミキュライト等からなる面材(例えば、MOISS/モイス(登録商標))などの不燃、準不燃、難燃等の非木質材料を用いることもできる。このように、目的によって、板材22,32,42はその材質を問わず採用可能である。
【0065】
また、板材22,32部分の厚さに関しては、天井用は、歩行等で荷重がかかる事も無いので、厚さは3mm程度で十分だが、壁用は人や家具等が衝突・接触する恐れがあるので、概ね6〜12mm程度が必要とされる。もちろん、壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20と天井用の断熱リフォーム用断熱パネル30を兼用するときには、厚さは壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20のほうに合わせる。
【0066】
さらに、断熱リフォーム用断熱パネル30,40同士を嵌合させるための嵌合部37,47は、実、あいじゃくり等を使い分けたが、これらに限定されるものでは無く、例えば天井用の断熱リフォーム用断熱パネル30について、嵌合部37を実形状としてもよい。壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20の嵌合部27も適宜、実やあいじゃくり等にできる。また、目違いが生じにくく施工性が良好であれば他の方法も採用可能である。
また、断熱リフォームを部屋単位で行ったが、住宅全体に対して同時に行なってもよい。もちろん、新築時に同様の施工を行なってもよい。
【0067】
また、壁用の断熱リフォーム用断熱パネル20を施工してから障子12を取付けたが、現場によってはこの順番は逆であっても構わない。
また、壁用や天井用の断熱リフォーム用断熱パネル20,30へ化粧材として壁紙を施工したが、塗装でもよく、またこれらに限られるものではない。
床3に関しては、フローリングを施工するとしたが、カーペット、畳、塩ビシート等の施工が可能である。
【0068】
また、天井用の断熱リフォーム用断熱パネル30において、桟木33を両側面のみに設けたが、桟木33を中央部に設けてもよい。
また、断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40は、その周囲に、壁1・天井2・床3に対し断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40を固定させるための、又は隣接する断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40同士を嵌合させるための突出部(嵌合部)27,37,47が設けられていれば、その位置が上端及び下端の二辺であっても、左端及び右端の二辺であっても構わない。一方、場合によっては突出部(嵌合部)27,37,47を外周四辺に設けること、又は全く設けないことも考えられる。
【0069】
また、断熱リフォーム用断熱パネル20,30,40では、水平に延びる桟木23,33,43を設けて補強するように、またネジや釘等にて固定できるようにしたが、図14乃至図16に示すように、水平に延びる桟木53に加えて上下に延びる縦桟木58を設けるようにした断熱リフォーム用断熱パネル50としてもよい。
すなわち、水平に延びる桟木53を上下方向に所定の間隔で複数配するとともに桟木53間に矩形状の断熱材51を配するとともに、複数配された桟木53の左右両端側に上下に延びる縦桟木58を配したもの、ここでは、桟木53と断熱材51と縦桟木54が一体化された断熱面板54、の室内側P表面に板材52を、断熱面板54の上下からそれぞれ突出するように固定して、断熱材51と板材52を一体化したものである。また、板材52が断熱面板54から上下にそれぞれ突出した部位には、断熱リフォーム用断熱パネル50を嵌め込むときの嵌合部57が形成されている。
なお、桟木53の左右両端側に配された縦桟木58は、ここでは、桟木53の左右両端に接するようにして桟木53と断熱材51と縦桟木54が一体化されたものを断熱面板54と呼んでこれに板材52を固定したが、縦桟木54を、桟木53及び断熱材51に対して間を開けて配したものの室内側P表面に板材52を固定するようにしてもよい。この場合、板材52は上下部に位置する断熱材51から上下方向に突出するように固定される。
また、ここでは、水平に延びる全ての桟木53を一本ずつとしてそれぞれ断熱材51と交互に配置している。なお、断熱リフォーム用断熱パネル50を切断して使用する場合には、断熱材51側からカッターナイフ等で板材52に至るまで切込みを入れて断熱材51を除去した後にスクレーパーなどで露出した板材52の裏面を平滑化することにより嵌合部57を形成するようにして切断する。
また、図16に示すように板材52の角部は面取りされていて、カットして使用する場合には面取りにより壁紙を貼った後の段差を抑えるようにしている。
【0070】
このような断熱リフォーム用断熱パネル50は、壁1に囲まれた既存の外窓11の室内側Pに張り出すように新たな窓枠14を取付けるとともに、新たな窓枠14に障子12を組み付けて二重窓10にするリフォーム時に、新たな窓枠14の室内側Pに張り出した部位18と壁1との間を埋めるように施工可能であるとともに、既存の壁1,既存の天井2,及び既存の床3のうち少なくとも一つの部位の室内側Pにも直接的に施工可能である。
【0071】
また、板材52の表面で、その裏面に桟木53や縦桟木58の来る位置に線を設けて位置を容易に確認できるようにしたり、さらには、ネジや釘などの固定部材用のピッチを容易に認識できるように、破線や点線、碁盤の目状の線を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 壁
2 天井
3 床
10 二重窓
11 外窓
11a サッシ
12 障子(内窓)
12a サッシ
13 既存の窓枠
14 新たな窓枠
15 窓枠下地
16 ふかし枠
17 召し合わせ
18 張り出した部位
20 壁用の断熱リフォーム用断熱パネル(断熱パネル)
21 断熱材
22 板材
23 桟木
24 断熱面板
25 接着剤(仮固定部材)
26 切断ガイド線
27 突出部(嵌合部)
28 継ぎ足し部分
30 天井用の断熱リフォーム用断熱パネル(断熱パネル)
31 断熱材
32 板材
33 桟木
34 断熱面板
37 嵌合部
40 床用の断熱リフォーム用断熱パネル(断熱パネル)
41 断熱材
42 板材
43 桟木
44 断熱面板
47 嵌合部
50 床用の断熱リフォーム用断熱パネル(断熱パネル)
51 断熱材
52 板材
53 桟木
54 断熱面板
57 嵌合部
58 縦桟木
C コンセント
P 室内側
Q 室外側
T 角材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に囲まれた既存の外窓の室内側に張り出すように新たな窓枠を取付けるとともに、該新たな窓枠に障子を組み付けて二重窓にするリフォーム方法であって、
前記新たな窓枠の室内側に張り出した部位と前記壁との間に、断熱材と板材を一体化してなる断熱パネルを施工して、前記張り出した部位を埋めることを特徴とする断熱リフォーム方法。
【請求項2】
壁に囲まれた既存の外窓の室内側に張り出すように新たな窓枠を取付けるとともに、該新たな窓枠に障子を組み付けて二重窓にするリフォーム時に、前記新たな窓枠の室内側に張り出した部位と前記壁との間を埋めるように施工される断熱パネルであって、
水平に延びる桟木を上下方向に所定の間隔で複数配するとともに前記桟木間に矩形状の断熱材を配してなる断熱面板の室内側表面に板材を固定するようにして、前記断熱材と前記板材を一体化してなることを特徴とする断熱リフォーム用断熱パネル。
【請求項3】
前記桟木は上下に位置する前記断熱材で挟持されているだけであり、前記断熱材及び前記板材に対しては固定されていないことを特徴とする請求項2に記載の断熱リフォーム用断熱パネル。
【請求項4】
前記桟木は上下に位置する前記断熱材で挟持されているものであり、前記板材に対しては剥離可能な仮固定部材によって固定されていることを特徴とする請求項2に記載の断熱リフォーム用断熱パネル。
【請求項5】
前記断熱面板の所定の位置にある桟木では、二つの桟木が上下二段に固定されることなく重ねられ、その二段の桟木の境界線を切断時の切断ガイド線としてなることを特徴とする請求項2乃至4のうちいずれか一つに記載の断熱リフォーム用断熱パネル。
【請求項6】
前記板材には、前記断熱面板の上下からそれぞれ突出する突出部が形成され、全体が断面略凸字状の形状であることを特徴とする請求項2乃至5のうちいずれか一つに記載の断熱リフォーム用断熱パネル。
【請求項7】
既存の壁,既存の天井,及び既存の床のうち少なくとも一つの部位の室内側に、断熱材と板材を一体化してなるとともに周囲に嵌合部が設けられた断熱パネルを重ねて施工することを特徴とする断熱リフォーム方法。
【請求項8】
既存の壁,既存の天井,及び既存の床のうち少なくとも一つの部位の室内側に施工される断熱パネルであって、
水平に延びる桟木を上下方向に所定の間隔で複数配するとともに前記桟木間に矩形状の断熱材を配してなる断熱面板の室内側表面に板材を固定するようにして、前記断熱材と前記板材を一体化してなり、しかも周囲に嵌合部が設けられてなることを特徴とする断熱リフォーム用断熱パネル。
【請求項9】
壁に囲まれた既存の外窓の室内側に張り出すように新たな窓枠を取付けるとともに、該新たな窓枠に障子を組み付けて二重窓にするリフォーム時に、前記新たな窓枠の室内側に張り出した部位と前記壁との間を埋めるように施工される断熱パネルであって、
水平に延びる桟木を上下方向に所定の間隔で複数配して前記桟木間に矩形状の断熱材を配するとともに、複数配された桟木の左右両端側に上下に延びる縦桟木を配したものの室内側表面に板材を、上下からそれぞれ突出するように固定して、前記断熱材と前記板材を一体化してなることを特徴とする断熱リフォーム用断熱パネル。
【請求項10】
既存の壁,既存の天井,及び既存の床のうち少なくとも一つの部位の室内側に施工される断熱パネルであって、
水平に延びる桟木を上下方向に所定の間隔で複数配して前記桟木間に矩形状の断熱材を配するとともに、複数配された桟木の左右両端側に上下に延びる縦桟木を配したものの室内側表面に板材を、上下からそれぞれ突出するように固定して、前記断熱材と前記板材を一体化してなり、しかも周囲に嵌合部が設けられてなることを特徴とする断熱リフォーム用断熱パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−167535(P2012−167535A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203859(P2011−203859)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000145437)株式会社ウッドワン (70)
【Fターム(参考)】