説明

断熱処理方法

【課題】 反応容器等は保温処理が施される。これは、ロックウール等の繊維製の厚い膜状体を巻きつけるか断熱塗料を厚く塗布することが行われている。ロックウール等の繊維製膜体を巻きつける方法は手間であり費用も相当かかるものであった。断熱塗料の塗布は簡単であるが、100℃程度の温度低下を求めるとすると、2〜5mmの厚みで塗布する必要があるが、これは1度では塗布できず、6〜10回も積層しなければならない。やはり非常に手間である。このような断熱処理の手間を省き、簡単で断熱効果の大きい処理方法を提供する。
【解決手段】 被断熱物表面に下地樹脂を塗布し、該下地樹脂が完全硬化する前に無機繊維製材を貼り、さらにその上に表面樹脂を塗布するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の設備の断熱処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
反応容器や恒温槽のみならず、保温を要する設備にはその表面に保温処理が施される。また、周囲の作業員や一般の人の危険を防止するためにも同種の処理が行われている。このような保温処理は、例えば600℃以上等の非常な高温表面には、レンガ等が敷設されるが、300℃以下程度では、ロックウール等の繊維製の厚い膜状体を巻きつけるか断熱塗料を厚く塗布することが行われている。
【0003】
ロックウール等の繊維製膜体を巻きつける方法は、その固定が難しく、針金等で固定しその上に金属板を固着していた。しかし、これは非常に手間であり費用も相当かかるものであった。
【0004】
断熱塗料の塗布は簡単であるが、100℃程度の温度低下を求めるとすると、2〜5mmの厚みで塗布する必要があるが、これは1度では塗布できず、6〜10回も積層しなければならない。やはり非常に手間である。
また、手間がかかるだけでなく、工期が長くなる。その間工場を止めなければならないため損失も大きい。
さらに、水性タイプの塗料では、養生時間が短い場合は水が蒸発するため、塗膜が膨れる場合があり、平滑に塗布するのが難しく、結果工期が長くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような断熱処理の手間を省き、簡単で断熱効果の大きい処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明断熱処理方法を完成したものであり、その特徴とするところは、被断熱物表面に下地樹脂を塗布し、該下地樹脂が完全硬化する前に無機繊維製材を貼り、さらにその上に表面樹脂を塗布する点にある。
【0007】
被断熱物とは、断熱処理する対象物であり、反応器や貯蔵容器、建屋の壁面その他どのようなものでもよい。金属表面が好適であるが、それに限定せずどのような材質でもよい。また、本発明処理を施す前に、前処理としてプライマー樹脂等を塗布してもよく、要するに本発明方法実施前に何を行っても、行わなくてもよいということである。
【0008】
ここで無機繊維製材とは、無機繊維から構成されるもので、織物、編物、不織布(ペーパーを含む)等が公的である。
材質としては、酸化アルミニウム(アルミナ)又は炭化ケイ素の極細繊維である。他の繊維も種々実験したが効果はなかった。繊維の太さは、限定するものではないが、0.5μm〜20μmがよく、1μm〜10μmがより好適である。
不織布としては、繊維のみのものでも、バインダーを加えて圧縮して膜状にしたものでもよい。不織布の使用量としては、0.05〜1.0kg/mが好適である。また、繊維を糸状に縒り、それを織ったものでも、編んだものでもよい。
これらの厚みは、1〜10mm程度である。特に2〜5mm程度が好適である。
【0009】
不織布であるため、被断熱物の形状に沿い貼付が容易である。また、繊維間に空気(連続気泡)があるため、その断熱効果も大きい。
【0010】
下地樹脂は、どのようなものでもよいが、被断熱物の表面温度に耐えるものであることは当然である。本発明では、被断熱物は、限定はしないが、100℃〜600℃を主な対象としているため、その程度の耐熱性は必要である。
【0011】
下地樹脂として、アルコシキシロキサンをビヒクルとするものが好適である。ここでアルコキシシロキサンとは、Si−O結合(シロキサン結合)を持ち、分子内にアルコキシ基を有するものである。空気中の水分によって硬化反応するもので、アルコキシシロキサン単体でも、それにアルコキシドを少量(3〜10重量%)混合したものでもよい。分子末端がアルコキシ基で封鎖されたものはアルコキシオリゴマーであり、これが硬化するもの等でもよい。
【0012】
下地樹脂には溶剤を混合してもよい。これは単に粘度調整等のものであり、アルコキシシロキサンが溶解するものであればよい。例えば、アルコール系やケトン系等でよく特別なものである必要はない。
溶剤の混合量も塗布の容易性、塗布したときの垂れ等から決めればよい。通常は、アルコキシシロキサン100容積部に対して溶剤が10〜50容積部程度である。
【0013】
下地樹脂としては、ビヒクルのみでもよいが、断熱性を向上させるために骨材を混合してもよい。この骨材としては中空バルーンが好適である。中空バルーンとは、ガラスやセラミックの中が空洞になったもので、そのサイズは20μm〜500μm程度のものである。粒度分布もあるが中心サイズが30〜120μmのもので市販されているものが好適である。
ビヒクルに対する混合割合は、ビヒクル100重量部に対して、5〜80重量部程度が好適である。
【0014】
この下地樹脂の塗布厚みは、特に限定はしないが、0.5〜2mm程度が好適である。複数回塗布して積層してもよいが、最後の表面部分の樹脂が完全硬化する前に前記不織布を貼る。これは接着剤を不要にするためである。
【0015】
表面樹脂は、前記した下地樹脂と同様であり、どのような樹脂でもよく、アルコキシシロキサンをビヒクルとするものが好適である。また、前記同様に中空バルーンのような骨材を含有するものが好適である。要するに、下地樹脂とまったく同様のものが使用できるということである。
また、実施する場合、下地樹脂と表面樹脂は同じでも、異なってもよい。例えば、下地樹脂には骨材を入れ、表面樹脂には骨材を入れない等である。
【0016】
さらに、表面樹脂として、金属粉末(特にアルミニウム粉末)を多量に混合したものを使用してもよい。例えば、アルコキシシロキサンをビヒクルとして骨材として、アルミニウム粉末を混合したものである。混合割合としては、ビヒクル100容積部に対して10〜65容積部程度である。
このような多量のアルミニウム粉末を含有する樹脂を表面に塗布することによって、表面の放射率を下げるのである。放射率は断熱とは関係はないが、表面からの放熱量に関係する係数である(シュテファン・ボルツマンの式)。断熱する目的は、そのほとんどが表面からの熱エネルギーの損失の軽減であるため、この放熱量を下げることも意味があるのである。
【0017】
さらに、中空バルーンを含有する表面樹脂を塗布した後に、アルミニウム粉末を含有する樹脂を塗布してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明には次のような効果がある。
(1) 本発明は無機繊維製不織布を樹脂で挟み込んだ形態であるため、断熱効果が高い。
(2) 断熱塗料の塗布と比較して、何回も積層する手間が不要である。
(3) 樹脂を塗布し、不織布を貼り、さらに樹脂を塗布するだけであり、従来のロックウールを固着する方法と比較して簡単である。
(4) 特に水性耐熱塗料の場合、硬化途中で塗膜の膨れがない。処理が簡単であるため、工期が短く操業停止期間がほとんどない。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
下地樹脂として、アルコキシシロキサンに中空バルーン(ガラス)を混合したものを使用した。混合割合は次の通りである。
1 アルコキシシロキサン 100重量部
2 セラミック製中空バルーン(中心サイズが60μmで略正規分布の粒度分布をもったもの) 40 重量部
3 溶剤(トルエン) 20重量部
【0020】
次に不織布として、酸化アルミニウムの繊維製の不織布で、厚さ1mmで使用量が0.2kg/mのものを用いた。
また、表面樹脂は下地樹脂と同じものを用いた。被断熱物は、表面温度が200℃の反応容器とした。
【0021】
まず、被断熱物表面に下地樹脂を0.4mmの厚みで塗布した。これが硬化する前に繊維材(ここでは不織布で厚みが1mm)を貼った。その上から表面樹脂を0.4mmの厚みで塗布した。よって、全体の厚みは1.8mmであった。これを実施例1とした。
【0022】
次に同じ不織布の厚みの変えたものを、樹脂厚みも変えて実施例2、3、4とした。また、繊維材として炭化珪素の不織布を用いたものを実施例5とした。
【0023】
また、これと比較対照するため、断熱塗料(下地塗料と同じもの)を厚み4.2mmで塗布した。1度に塗布できないため、4回に分けて塗布した。これを比較例1とした。また同じものを塗布厚みを5.5mmにしたものを比較例2とした。
さらに、繊維製材としてガラス繊維を用い、同じ不織布を製造した。それを比較例3とした。
【0024】
両者の表面温度を熱電対で測定した。処理をしなければ、表面温度は200℃である。この結果を表1に示した。実施例では、82℃〜127℃であった。
断熱材の厚みがほぼ同じものは、実施例3と比較例1であるが、90℃と122℃と大きな差があった。実施例4と比較例2も同様であり、82℃と119℃と大きな差があった。
また、炭化珪素のもの(実施例5)も大きな効果があった。また、同じ無機繊維製でもガラス繊維のもの(比較例3)は効果がなかった。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被断熱物表面に下地樹脂を塗布し、該下地樹脂が完全硬化する前に無機繊維製材を貼り、さらにその上に表面樹脂を塗布することを特徴とする断熱処理方法。
【請求項2】
該下地樹脂には中空骨材を含有するものである請求項1又は2記載の断熱処理方法。
【請求項3】
該下地樹脂のビヒクルはアルコキシシロキサンである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の断熱処理方法。
【請求項4】
該表面樹脂は該下地樹脂と同じものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の断熱処理方法。





【公開番号】特開2012−254534(P2012−254534A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127456(P2011−127456)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(591167278)中外商工株式会社 (12)
【Fターム(参考)】