説明

断熱容器及びそれを備えた集合電池

【課題】二次電池の効率が高い場合であっても、熱的に自立した運転を行うことができるとともに、温度上昇に応じて放熱を行うことで内部の過剰な温度上昇を抑制でき、さらに放熱ロスを最小にしつつ内部を所定の温度範囲に維持することができる断熱容器を提供する。
【解決手段】本発明の断熱容器4は、下部容器3と、天板部6を有し真空状の二重壁構造に形成され下部開口部を下部容器3に挿着する上部容器2と、上部容器2の外壁部7と内壁部8の間の中空部9又は上部容器2の下端部に1乃至複数配設され、一端部が内壁部8又は外壁部7に固定され他端部を自由端とした温度調整部55と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のナトリウム−硫黄電池等の高温で作動する二次電池を収容する断熱容器、及びそれを備えた集合電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の単電池を集合した集合電池が用いられている。このような集合電池の単電池としてナトリウム−硫黄電池を用いたものがある。ナトリウム−硫黄電池は電力貯蔵用、電気自動車の駆動電源用等に用いられる2次電池であり、290℃から350℃の作動温度に加熱された状態で負極室のナトリウムがナトリウムイオンとなって固体電解質管を透過して正極室の硫黄と反応し、多硫化ナトリウムを生成し放電が行われると共に、充電時には正極室内の多硫化ナトリウムから可逆的にナトリウムイオンと硫黄が生成され、ナトリウムイオンは固体電解質管を透過して負極室に戻る。したがって、ナトリウム−硫黄電池を単電池として用いた集合電池は、作動温度を290℃から350℃の一定温度に維持するために、複数のナトリウム−硫黄電池の単電池を収容し、ジュール発熱や放電時の反応熱が外部へ放熱することを抑制する断熱容器を備えたものがある。
このような断熱容器として、特許文献1には「内部に複数の電池が立設され上部が開口した箱状の真空断熱容器に真空断熱蓋を縁部に形成された合せ目で突き合わせたナトリウム硫黄電池用断熱容器」が開示されている。
また、特許文献2には「上面が開放された箱型の容体に、下面が開放された箱型の蓋体を冠着したものであり、容体と蓋体は、外壁と内壁をステンレス板で構成した中空容器内に、ガラス繊維、ロックウールなどの熱伝導性の小さい素材からなる繊維状物を板状に固化せしめた真空断熱ボードを装填した断熱容器」が開示されている。
一方、断熱容器を備えた燃料電池として、特許文献3には「外壁と内壁とを有する釣り鐘状の形状を有した真空断熱容器を平板状の断熱材上に載置された燃料電池スタックに覆設し、真空断熱容器の下端縁部に形成された外壁と内壁との接合部において真空断熱容器を断熱材に取り付けた高温型燃料電池」が開示されている。
また、特許文献4には、「絶縁性板材よりなる芯材の周面に複数の電熱線を巻回し、その両面に絶縁性の薄板を配置して一体化した集合電池の加熱装置、及び、該加熱装置を断熱容器の内底面に配設した集合電池」が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−83832号公報
【特許文献2】特開2000−21364号公報
【特許文献3】特開平8−138721号公報
【特許文献4】特開平11−162507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来技術では、以下のような課題を有していた。
(1)特許文献1乃至2の断熱容器では、合せ目が形成された部分や真空断熱ボードを介して外部へ放熱するため、断熱性に欠けるという課題を有していた。
(2)特許文献1乃至2の断熱容器では、矩形の箱型に形成されているため、外壁と内壁との間の中空部を真空に形成した場合、負圧により容器の一部に応力が集中するため耐久性に欠け、また、耐久性を向上させるために中空部に補強部材を形成したり充填材を充填したりした場合は、補強部材や充填材を介して外部へ放熱するため、断熱性に欠けるという課題を有していた。
(3)特許文献1乃至2の断熱容器では、複数のナトリウム−硫黄電池の単電池が断熱容器内に横方向及び縦方向に一定間隔で並設されるため、単電池の設置効率が悪く断熱容器が大型化し省スペース性に欠けると共に、断熱容器の大型化によりその表面積が大きくなるため断熱性が低下するという課題を有していた。
(4)特許文献3の高温型燃料電池では、釣り鐘状の真空断熱容器の下端部の開口部は平板状の断熱材で閉じられているだけなので、真空断熱容器の下端部の外壁と内壁の接合部や下端部に接触した断熱材から多大な放熱が生じ断熱性に欠けるという課題を有していた。
(5)特許文献3の高温型燃料電池は650℃〜1000℃の高温で作動するため、作動時に真空断熱容器の壁面に吸着した水分子や水素分子が脱離して真空部分の真空度が低下し断熱性が低下するという課題を有していた。
(6)特許文献3の高温型燃料電池では、燃料ガス及び空気が真空断熱容器の内外に出入りし、燃料ガス及び空気の顕熱として外部に放熱するため、真空断熱容器を用いても断熱性に欠けるという課題を有していた。
(7)特許文献4の集合電池では、断熱容器が比較的熱伝導率が小さくならないように形成されており、断熱容器から放熱された熱を加熱装置による加熱で補うことで断熱容器内の温度を所定の動作温度に維持している。したがって、所定の時間間隔で加熱装置に供給する電力が必要となり、集合電池の電力を供給するとエネルギロスが生じ、或いは外部から安価な電力を供給するとその分のコストがかかり、省エネルギ性及び省コスト性に欠けるという課題を有していた。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、内部に収容される二次電池の効率が高い場合、すなわち内部抵抗が小さく放電及び充電によるジュール発熱量が少ない場合であっても、放熱を抑えて熱的に自立した運転が可能で、さらに内部の過剰な温度上昇を抑制でき、また放熱ロスを最小にしつつ内部を所定温度の範囲内に維持することができる断熱容器を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は上記従来の課題を解決するもので、放熱を抑えて熱的に自立した運転が可能であると共に、単電池を稠密に無駄なく配置することができるのでエネルギ密度を高くすることができ、また単電池の直列数と並列数の組合せにより変圧器を用いることなく交流200Vに接続することができ、さらに内部の過剰な温度上昇を抑制でき、また放熱ロスを最小にしつつ内部を所定温度の範囲内に維持することができる集合電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために本発明は以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の断熱容器は、ナトリウム−硫黄電池等の高温で作動する二次電池が収容される密封された断熱容器であって、架台部と、前記架台部から立設された周壁部と、を有し前記架台部上に断熱部が敷設された下部容器と、天板部と、胴体部と、下部に下部開口部と、を有し、外壁部と内壁部との間が真空状に形成された二重壁構造に形成され、前記下部開口部を前記下部容器の前記断熱部に当接して前記下部容器に挿着する上部容器と、前記上部容器の前記外壁部と前記内壁部の間の中空部又は前記上部容器の下端部に1乃至複数配設され、一端部が前記内壁部又は前記外壁部に固定され他端部を自由端とした温度調整部と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)上部容器が、二重壁構造に形成され二重壁の内部が真空状に形成されているので、上部容器の熱伝導率を0.001W/mK〜0.02W/mKとすることができ、外部への放熱を抑制することができ、上部容器内部に収容される二次電池の効率が高い場合、すなわち内部抵抗が小さく放電及び充電によるジュール発熱量が少ない場合であってもヒータ等による加熱が不要で熱的に自立した運転が可能である。
(2)上部容器が、円筒状等の胴体部と湾曲面状等の天板部とを備えているので、構造的強度が高く、二重壁構造の内部の中空部に補強部材を設けたり強度維持のための充填材を充填したりする必要がないので、補強部材や充填材を介して外部に放熱することがなく、上部容器の熱伝導率を極めて小さくできる。
(3)上部容器の内部の天板部近傍は、収容した二次電池やそれを集合したモジュールのジュール発熱や反応熱等により発生した熱の対流により温度が高くなる。上部容器の下部に下部開口部を形成し、温度が高くなる上部容器の天板部側には開口部を形成していないので外部への放熱を抑制することができる。
(4)下部容器が架台部と、架台部から立設された周壁部と、架台部に敷設された断熱部と、を有し、上部容器の下部開口部を下部容器の断熱部に当接して挿着しているので、上部容器の下部開口部側からの放熱を抑制することができる。特に上部容器の下端部で中空部を封止するための外壁部と内壁部の接合部分(下端部封止部)から下部容器への伝熱を断熱部により防ぎ、放熱を抑制することができる。
(5)下部容器に載置した二次電池からの電力の取り出しのための電力線や電圧や電流の計測のための計測線等を下部容器の架台部から外部に引き出すことができるので、設置作業が容易であると共に、上部容器に電力線や計測線を取り出すための孔や開口を設ける必要がなく上部容器を容易に製作でき、二重壁構造に孔や開口を設けないのでその孔や開口からの熱伝導がなく上部容器の断熱性の低下を防ぐことができる。
(6)上部容器と下部容器を気密に接合して断熱容器を密封でき、断熱容器内の気密性が保たれ断熱性を向上させることができる。
(7)温度調整部の一端部を内壁部に固定した場合、断熱容器内部の熱が内壁部から温度調整部に伝熱すると温度調整部が湾曲変形し、その自由端が外壁部に当接するので、熱を内壁部から外壁部に伝熱し外気に放熱することができ、断熱容器内部の過剰な温度上昇を抑制できる。また、断熱容器内部の温度が所定温度より低くなると温度調整部の自由端が外壁部から離れ、伝熱しなくなり放熱を止めることができる。
(8)温度調整部の一端部を外壁部固定した場合、断熱容器内部の熱が内壁部から下端部封止部及び外壁部を介して温度調整部に伝熱すると温度調整部が湾曲変形し、その自由端が内壁部に当接するので、熱を内壁部から外壁部に伝熱し外気に放熱することができる。
(9)バイメタルの2枚の金属板の熱膨張率、取り付け角度、大きさ等を適宜設定することにより、温度調整部の自由端が外壁部又は内壁部に当接する温度すなわち放熱を開始する温度を設定することができるので、断熱容器内部の温度を収容された二次電池の作動温度の範囲内に自動で維持させることができ、人手により断熱カバーを外して断熱容器内部の温度を低下させる作業や、真空断熱容器の真空度を低下させる作業、温度調整用のヒートパイプ等が必要なく、省力性及び省コスト性に優れる。
(10)断熱容器を真空断熱構造とし断熱性を高くしても、温度調整部により温度上昇に応じて放熱を行うことで、断熱容器内部の過剰な温度上昇を抑制でき、また、放熱ロスを最小にしつつ加熱装置を用いることなく断熱容器内部を所定温度の範囲内に維持することができるので、エネルギ効率が高く、また省コスト性に優れる。
【0008】
ここで、上部容器の材質としてはステンレス鋼(SUS)や一般構造用圧延鋼材(SS)等の金属が用いられる。上部容器の中空部の真空度としては、絶対圧で100Pa以下、好ましくは10Pa以下の真空度に形成されることが好ましい。これにより、上部容器の熱伝導率を0.001W/mK〜0.02W/mKと小さくすることができる。真空度が10Paより大きくなるにつれ上部容器の熱伝導率が大きくなり熱的に自立した運転ができなくなり、100Paより大きくなるとその傾向が著しく顕著になるため好ましくない。
下部容器はSUSやSS等の金属、又は硬質の断熱材や耐熱性が高く熱伝導率の小さい材質等により形成される。また、下部容器は金属製の外壁と内壁を有しその間の中空部を真空状とした二重壁構造に形成してもよい。下部容器の底部に敷設される断熱部としては、1乃至複数の平板状、シート状の断熱材や真空断熱プレート、或いはそれらを組み合わせたもの等を用いることができる。また、断熱材や真空断熱プレートを積層して用いることもできる。
上部容器と下部容器を密封接合する場合は、上部容器の胴体部と下部容器の周壁部の上端部とを溶接したり、各々にフランジ部を設けて溶接やボルトナットにより螺着したりする接合手段が用いられる。なお、上部容器の胴体部と下部容器の周壁部の上端部とを溶接する場合は上部容器の外径と下部容器の内径を略同一に形成して、上部容器が下部容器に隙間無く挿着されることが好ましい。また、ボルトナットにより螺着する場合は耐熱性のパッキン等を介して接合される。
【0009】
また、上部容器の内壁部の内側面又は外側面、或いは外壁部の内側面の少なくとも1面に輻射熱反射部を配設してもよい。これにより、断熱容器内部に収容される二次電池から発生した輻射熱を輻射熱反射部により反射することにより外部に漏れるのを抑制することができる。輻射熱反射部としては、銅やアルミニウムにより形成された板状体や銅やアルミニウムをめっきや蒸着により層状に形成したもの等が用いられる。或いは内壁部の内側面や外側面、外壁部の内側面を研磨して各壁面に一体形成することもできる。
なお、上部容器の中空部にアルミニウム等により形成された箔状の反射板とガラスウール等のスペーサを交互に積層して配設した断熱方法、いわゆるスーパーインシュレーションを用いることもでき、断熱性を高めることができる。
また、上部容器の外壁部と内壁部との間の中空部に、ジルコニア合金やチタン合金等の粒状物や塊状物からなるゲッタを配設してもよい。これにより、上部容器の中空部に残留したガスを吸収するゲッタを配設することにより、中空部の真空度を極度に低下させ上部容器の断熱性を高めることができる。
【0010】
温度調整部としてはバイメタル等が用いられる。温度調整部は、上部容器の外壁部と内壁部の間の中空部、或いは上部容器の下端部に1乃至複数配設される。中空部に配設される場合は、一端部を内壁部に固定し、他端部を自由端とする。なお、中空部の下端部封止部の近傍に配設される場合は、一端部を外壁部に固定し、他端部を自由端としてもよい。
また、温度調整部が上部容器の下端部封止部の下部に配設される場合は、内壁部と下端部に沿って内リングを設け、外壁部の下端部に沿って該内リングの外側に外リングを設け、一端部を内リング又は外リングに固定し、他端部を自由端とする。内リング及び外リングを設けることで、温度調整部が内壁部と外壁部の接合部分に接触しないようにして正確な温度調整ができる。
なお、温度調整部を上部容器の中空部に配設する場合、その取り付け位置としては、上部容器の下部容器への挿入部分或いは、上部容器の天板部又はその近傍に取り付けられる。ここで、温度調整部が湾曲変形してその自由端が外壁部に当接するとその当接部分は断熱容器内部の熱が伝熱して高温になるが、上部容器の下部容器への挿入部分或いは、上部容器の天板部又はその近傍に温度調整部を取り付けることにより、本発明の断熱容器の特性を知らない者等が誤って高温になる部分に触れてしまうことがなく安全性に優れる。
【0011】
断熱容器は、前記下部容器の前記周壁部の上端部に周設された下部フランジ部と、前記上部容器の前記胴体部に周設された上部フランジ部と、を備え、前記上部フランジ部を前記下部フランジ部に気密に接合し密封した構成とすることにより、以下のような作用を有する。
(1)上部容器が上部フランジ部を備え、下部容器が下部フランジ部を備えているので、上部容器の上部フランジ部を下部容器の下部フランジ部に気密に接合し断熱容器を密封でき、断熱容器内の気密性が保たれ断熱性を向上させることができる。
(2)上部フランジ部と下部フランジ部を備えているので、上部容器の外径と下部容器の内径が多少異なっていても上部フランジ部と下部フランジ部とを溶接等で接合することにより断熱容器を密封することができる。
【0012】
また、断熱容器は、前記下部容器の前記断熱部の上部に配設され前記上部容器の前記下部開口部に嵌合する円柱状の嵌合断熱部を備えた構成とすることにより、以下のような作用を有する。
(1)上部容器の下部開口部を嵌合断熱部で塞ぐことができるので、上部容器の下端部からの放熱、特に外壁部と内壁部の接合部及び下部容器の底部の断熱部からの放熱を抑制することができる。
【0013】
ここで、嵌合断熱部として真空断熱プレートを用いた場合、さらに放熱を抑制できると共に、真空断熱プレートの側壁を伝わる熱をその下部に敷設された断熱部により遮断できるので、断熱性を著しく高めることができる。
【0014】
断熱容器の製造方法は、前記上部容器を前記二次電池の作動温度以上の温度に加熱する加熱工程と、前記上部容器を加熱した状態で外壁部と内壁部との間の中空部を真空脱気する真空脱気工程を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)上部容器を製作する際に、加熱工程において上部容器を二次電池の作動温度以上の温度に加熱することにより上部容器の外壁部や内壁部の表面に吸着した水分子や水素分子、或いは外壁部や内壁部を形成する金属内部の水素分子等が脱離させることができ、真空脱気工程において脱離した気体を除去することができるので、作動温度において上部容器の中空部の真空度を極めて大きくすることができ、断熱性を向上できる。
【0015】
ここで、加熱工程における加熱温度としては、二次電池がナトリウム−硫黄電池である場合は作動温度が290℃〜350℃であるので、その作動温度以上の温度が用いられる。
【0016】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の断熱容器であって、前記上部容器の中空部に配設された前記温度調整部が、前記上部容器の前記下部容器への挿入部分、或いは、前記上部容器の前記天板部又はその近傍に取り付けられた構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)断熱容器の特性を知らない者等が誤って高温になる部分に触れてしまうことがなく安全性に優れる。
【0017】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の断熱容器であって、前記上部容器の前記内壁部の下端部に固着された内リングと、前記上部容器の前記外壁部の下端部に固着された外リングと、を備え、前記温度調整部の一端部が前記内リング又は前記外リングに固定され他端部を自由端とした構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)上部容器の下端部に外リングと内リングと温度調整部とを備えているので、断熱容器の上部容器を真空二重壁構造とし断熱性を高くしても、温度調整部により温度上昇に応じて放熱を行うことで、断熱容器内部の過剰な温度上昇を抑制し、加熱装置による温度調整を不要とし、所定の温度範囲に維持できるので、エネルギ効率を向上できる。
(2)内リング及び外リングを設けることで、温度調整部が内壁部と外壁部の接合部分に接触しないようにして正確な温度調整ができる。
【0018】
本発明の請求項4に記載の集合電池は、ナトリウム−硫黄電池等の高温で作動する二次電池の単電池を集合した集合電池であって、請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の断熱容器と、前記断熱容器に収容された1乃至複数の単電池収容箱体と、前記単電池収容箱体に収容された複数の前記単電池と、を備えた構成を有している。
この構成によって、以下のような作用を有する。
(1)断熱容器の上部容器が、二重壁構造に形成され二重壁の内部が真空状に形成されているので、外部への放熱を抑制することができ、上部容器内部に収容される二次電池の効率が高い場合、すなわち内部抵抗が小さく放電及び充電によるジュール発熱量が少ない場合であってもヒータ等による加熱が不要で熱的に自立した運転が可能である。
(2)断熱容器の上部容器が、円筒状等の胴体部と湾曲面状等の天板部とを備えているので、構造的強度が高く、二重壁構造の内部の中空部に補強部材を設けたり強度維持のための充填材を充填したりする必要がないので、補強部材や充填材を介して外部に放熱することがなく、上部容器の熱伝導率を極めて小さくできる。
(3)断熱容器の内部の天板部近傍は、収容した二次電池やそれを集合したモジュールのジュール発熱や反応熱等により発生した熱の対流により温度が高くなる。断熱容器の上部容器の下部に下部開口部を形成し、温度が高くなる上部容器の天板部側には開口部を形成していないので外部への放熱を抑制することができる。
(4)断熱容器の下部容器が架台部と、架台部から立設された周壁部と、架台部に敷設された断熱部と、を有し、上部容器の下部開口部を下部容器の断熱部に当接して挿着しているので、上部容器の下部開口部側からの放熱を抑制でき、特に上部容器の下端部で中空部を封止するための外壁部と内壁部の接合部分から下部容器への伝熱を断熱部により防ぎ、放熱を抑制できる。
(5)断熱容器の下部容器に載置した二次電池からの電力の取り出しのための電力線や電圧や電流の計測のための計測線等を下部容器の架台部から外部に引き出すことができるので、設置作業が容易であると共に、断熱容器の上部容器に電力線や計測線を取り出すための孔や開口を設ける必要がなく上部容器を容易に製作できると共に、二重壁構造に孔や開口を設けないのでその孔や開口からの熱伝導がなく上部容器の断熱性の低下を防ぐことができる。
(6)上部容器が上部フランジ部を備え、下部容器が下部フランジ部を備えると、上部容器の上部フランジ部を下部容器の下部フランジ部に気密に接合し断熱容器を密封でき、断熱容器内の気密性が保たれ断熱性を向上させることができる。
(7)断熱容器の下部容器の架台部上に敷設された断熱部の上部に円柱状の嵌合断熱部を備えると、断熱容器の上部容器の下部開口部を嵌合断熱部で塞ぐことができるので、上部容器の下端部からの放熱、特に外壁部と内壁部の接合部及び下部容器の底部の断熱部からの放熱を抑制することができる。
(8)断熱容器内部の温度が上昇した場合、その熱を内壁部から温度調整部を介して外壁部に伝熱し外気に放熱することで、断熱容器内部の過剰な温度上昇を抑制できる。また、断熱容器内部の温度が所定温度より低くなると温度調整部の自由端が離れ、伝熱しなくなり放熱を止めることができる。このためモジュールは、加熱装置を用いることなく断熱容器内部の温度を所定の範囲内に維持できる。
(9)1乃至複数の単電池収容箱体を備えているので、複数の単電池を種々の配列で、或いは配列を整えて単電池収容箱体の内部に収容することができる。
【0019】
ここで、単電池収容箱体の上下部やその近傍には、単電池の起動時に作動温度を上昇させるためのヒータ等を設けることができる。
また、単電池収容箱体は、平面視形状が円形状或いは四角形、六角形、八角形等の多角形状等に形成され、断熱容器の内部に複数積み重ねて複数設けることができる。これにより、所定数の単電池収容箱体を積み重ねて設け直列に接続することで高電圧が得られると共に、設置面積は変わらないので省スペース性に優れる。
【0020】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の集合電池であって、複数の前記単電池が、前記単電池収容箱体に千鳥状配列で収容された構成を有している。
この構成によって、請求項4の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)単電池を千鳥形配列で単電池収容箱体に収容しているので、単電池を稠密に無駄なく配置することができ多数の単電池を収容でき集合電池のエネルギ密度を向上させることができる。
(2)単電池を整列して配設することができ、各単電池を電気的に接続する際に各列毎に直列に接続し易い。
【0021】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の集合電池であって、前記単電池収容箱体が、平面視形状が正六角形又は円形若しくは楕円形に形成された構成を有している。
この構成によって、請求項4又は5の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)単電池収容箱体を平面視形状で正六角形又は円形若しくは楕円形に形成することにより、上部容器の内部のスペースを有効利用でき、集合電池を小型化できる。また、断熱容器を小型化できるので、放熱面積を小さくでき外部への放熱を最小限に抑制することができる。
【0022】
本発明の請求項7に記載の発明は、請求項4乃至6の内いずれか1項に記載の集合電池であって、平面視形状が正六角形に形成された1乃至複数の前記単電池収容箱体と、前記単電池収容箱体の内部を平面視形状が菱形状に3つに等分割して形成された菱形収容部と、各々の前記菱形収容部に千鳥形配列で配設された複数の前記単電池と、を備えた構成を有している。
この構成によって、請求項4乃至6の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)単電池収容箱体を平面視形状で正六角形に形成することにより、上部容器の内部に無駄な空間を形成することなくスペースを有効利用でき、集合電池を小型化できる。また、断熱容器を小型化できるので、放熱面積を小さくでき外部への放熱を最小限に抑制することができる。
(2)単電池収容箱体の内部に平面視形状が菱形状の3つの菱形収容部を備え、各々の菱形収容部に単電池を千鳥形配列で配設しているので、単電池を稠密に無駄なく配置することができ多数の単電池を収容でき集合電池のエネルギ密度を向上させることができる。
(3)平面視形状が菱形の菱形収容部に単電池を千鳥形配列で配設しているので、単電池を菱形収容部に整列して配設することができ、各単電池を電気的に接続する際に各列毎に直列に接続し易く、また、直列接続された各単電池群を並列に接続し易く、必要に応じた直列数と並列数の設計が容易に行える。
【0023】
ここで、菱形収容部は、仕切り板を設ける等して単電池収容箱体の内部を分割して形成される。また、千鳥形配列とは、隣り合う3つの単電池の各々の中心軸が正三形の角の位置となる配列であり、単電池を千鳥形配列で並設することにより、単電池を最も高密度で配置することができる。なお、隣り合う単電池の接触部分にはマイカシート等の絶縁材を挟んで互いに絶縁状態で配設される。
【0024】
本発明の請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の集合電池であって、各々の前記菱形収容部に配設された複数の前記単電池が前記菱形収容部の側壁に平行な列毎に直列に接続されると共に各列が並列に接続され、さらに各々の前記菱形収容部の単電池群が直列に接続され、且つ、前記菱形収容部内の一列の前記単電池の本数mと、前記断熱容器の内部に配設された前記単電池収納箱体の個数nと、が(数1)を満たすように決定された構成を有している。
【数1】

この構成によって、請求項7の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)集合電池全体の直流電圧値が、交流に変換した際の交流200(V)の交流電圧適正値以上、且つ交流200(V)に接続する場合のインバータ変換素子の耐電圧にスイッチング過電圧を考慮した電圧値以下となるので、集合電池を変圧器を介すことなく交流200(V)に接続することができ、変圧器における電力損失をなくし、またその設置コストを削減できる。
【0025】
ここで、断熱容器の外径や高さは、単電池の大きさ、菱形収容部内の一列の本数mや単電池収納箱体の個数n等により適宜決定されることが好ましい。なお、m=10、n=6の場合は、単電池の外径を20〜100mm、高さを120〜600mmとすると、断熱容器の外径Rdは500〜2500mmに形成され、高さLdは1090〜5450mmに形成されることが好ましい。
また、断熱容器の外径や高さは菱形収容部内の一列の本数mや単電池収納箱体の個数nにより適宜設定されるが、断熱容器内に単電池を3mn本収容するためにはその容積を外径Rd、高さLdの場合の容積と同様にする必要がある。したがって、断熱容器の外径は0.5Rd〜2Rdに形成されることが好ましく、高さは0.25Ld〜4Ldに形成されることが好ましい。断熱容器の高さが0.25Ldより小さくなるにつれ、容積一定なので外径が2Rdより大きくなり集合電池の設置スペースをとるため好ましくない。断熱容器の高さが4Ldより大きくなるにつれ、断熱容器の高さ方向に温度差がつき、単電池の電圧がばらついたり活物質が凝固したりして単電池の制御が困難になるため好ましくない。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)上部容器の熱伝導率を0.001W/mK〜0.02W/mKとすることができ、外部への放熱を抑制することができ、上部容器内部に収容される二次電池の効率が高い場合、すなわち内部抵抗が小さく放電及び充電によるジュール発熱量が少ない場合であってもヒータ等による加熱が不要で熱的に自立した運転が可能である断熱性に優れた断熱容器を提供することができる。
(2)構造的強度が高く、二重壁構造の内部の中空部に補強部材を設けたり強度維持のための充填材を充填したりする必要がないので、補強部材や充填材を介して外部に放熱することがなく、上部容器の熱伝導率を極めて小さくできる断熱性に優れた断熱容器を提供することができる。
(3)温度が高くなる上部容器の天板部から外部への放熱を抑制することができる断熱容器を提供することができる。
(4)上部容器の下部開口部側からの放熱を抑制でき、特に上部容器の下端部で接合される外壁部と内壁部の接合部から下部容器への伝熱を断熱部により防ぎ、放熱を抑制できる断熱性に優れた断熱容器を提供することができる。
(5)設置作業が容易であると共に、上部容器に電力線や計測線を取り出すための孔や開口を設ける必要がなく上部容器を容易に製作できる生産性に優れた断熱容器を提供することができる。
(6)二重壁構造に孔や開口を設けないのでその孔や開口からの熱伝導がなく上部容器の断熱性の低下を防ぐことができる断熱容器を提供することができる。
(7)上部容器と下部容器を気密に接合して断熱容器を密封でき、断熱容器内の気密性が保たれ断熱性を向上させることができる断熱容器を提供することができる。
(8)モジュールは、加熱装置を用いることなく断熱容器内部の温度を所定の範囲内に維持でき、省エネルギ性及び省コスト性に優れた断熱容器を提供することができる。
(9)断熱容器内部を自動で所定温度の範囲内に維持することができ、管理が容易で省力性に優れた断熱容器を提供することができる。
(10)バイメタルの2枚の金属板の熱膨張率、取り付け角度、大きさ等を適宜設定することにより、一端部が内壁部又は外壁部に固定された温度調整部の自由端が外壁部又は内壁部に当接する温度すなわち放熱を開始する温度を設定することができるので、断熱容器内部の温度を収容された二次電池の作動温度の範囲内に自動で維持させることができ、人手により断熱容器内部の温度を低下させる作業や温度調整用のヒートパイプ等が必要ない省力性及び省コスト性に優れた断熱容器を提供することができる。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)断熱容器の特性を知らない者等が誤って高温になる部分に触れてしまうことがなく安全性に優れた断熱容器を提供することができる。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)上部容器の下端部に外リングと内リングと温度調整部とを備えているので、断熱容器の上部容器を真空二重壁構造とし断熱性を高くしても、温度調整部により温度上昇に応じて放熱を行うことで、断熱容器内部の過剰な温度上昇を抑制し、加熱装置による温度調整を不要とし、所定の温度範囲に維持できるので、エネルギ効率を向上できる断熱容器を提供することができる。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、
(1)上部容器の熱伝導率を0.001W/mK〜0.02W/mKとすることができ、外部への放熱を抑制することができ、上部容器内部に収容される二次電池の効率が高い場合、すなわち内部抵抗が小さく放電及び充電によるジュール発熱量が少ない場合であってもヒータ等による加熱が不要で熱的に自立した運転が可能である断熱性に優れた集合電池を提供することができる。
(2)断熱容器の構造的強度が高く、二重壁構造の内部の中空部に補強部材を設けたり強度維持のための充填材を充填したりする必要がないので、補強部材や充填材を介して外部に放熱することがなく、上部容器の熱伝導率を極めて小さくできる断熱性に優れた集合電池を提供することができる。
(3)温度が高くなる上部容器の天板部から外部への放熱を抑制することができる集合電池を提供することができる。
(4)上部容器の下部開口部側からの放熱を抑制でき、特に上部容器の下端部で接合される外壁部と内壁部の接合部から下部容器への伝熱を断熱部により防ぎ、放熱を抑制できる集合電池を提供することができる。
(5)設置作業が容易であると共に、上部容器に電力線や計測線を取り出すための孔や開口を設ける必要がなく上部容器を容易に製作できる生産性に優れた集合電池を提供することができる。
(6)二重壁構造に孔や開口を設けないのでその孔や開口からの熱伝導がなく上部容器の断熱性の低下を防ぐことができる集合電池を提供することができる。
(7)断熱容器内部の温度が上昇した場合、その熱を内壁部から温度調整部を介して外壁部に伝熱し外気に放熱することで、断熱容器内部の過剰な温度上昇を抑制でき、加熱装置を用いることなく断熱容器内部の温度を所定の範囲内に維持でき、省エネルギ性及び省コスト性に優れた集合電池を提供することができる。
(8)断熱容器内部を自動で所定温度の範囲内に維持することができるので、管理が容易で省力性に優れた集合電池を提供することができる。
(9)1乃至複数の単電池収容箱体を備えているので、複数の単電池を種々の配列で、或いは配列を整えて単電池収容箱体の内部に収容することができる省スペース性に優れ且つ単電池の配列作業が容易な集合電池を提供することができる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4の効果に加え、
(1)単電池を千鳥形配列で単電池収容箱体に収容しているので、単電池を稠密に無駄なく配置することができ多数の単電池を収容でき集合電池のエネルギ密度を向上させることができる集合電池を提供することができる。
(2)単電池を整列して配設することができ、各単電池を電気的に接続する際に各列毎に直列に接続し易く単電池の電気接続の作業性に優れた集合電池を提供することができる。
【0031】
請求項6に記載の発明によれば、請求項4又は5の効果に加え、
(1)単電池収容箱体を平面視形状で正六角形又は円形若しくは楕円形に形成することにより、上部容器の内部のスペースを有効利用でき、集合電池を小型化でき、断熱容器を小型化できるので、放熱面積を小さくでき外部への放熱を最小限に抑制することができる集合電池を提供することができる。
【0032】
請求項7に記載の発明によれば、請求項4乃至6の内いずれか1項の効果に加え、
(1)単電池収容箱体を平面視形状で正六角形に形成することにより、上部容器の内部に無駄な空間を形成することなくスペースを有効利用でき、集合電池を小型化できるコンパクトな集合電池を提供することができる。
(2)断熱容器を小型化できるので、放熱面積を小さくでき外部への放熱を最小限に抑制することができる集合電池を提供することができる。
(3)単電池収容箱体の内部に平面視形状が菱形状の3つの菱形収容部を備え、各々の菱形収容部に単電池を千鳥形配列で配設しているので、単電池を稠密に無駄なく配置することができ多数の単電池を収容でき集合電池のエネルギ密度を向上させることができる集合電池を提供することができる。
(4)平面視形状が菱形の菱形収容部に単電池を千鳥形配列で配設しているので、単電池を菱形収容部に整列して配設することができ、各単電池を電気的に接続する際に各列毎に直列に接続し易く、また、直列接続された各単電池群を並列に接続し易く、必要に応じた直列数と並列数の設計が容易に行える設計の自由度及び容易性に優れた集合電池を提供することができる。
【0033】
請求項8に記載の発明によれば、請求項7の効果に加え、
(1)集合電池全体の直流電圧値が、交流に変換した際の交流200(V)の交流電圧適正値以上、且つ交流200(V)に接続する場合のインバータ変換素子の耐電圧にスイッチング過電圧を考慮した電圧値以下となるので、変圧器を介すことなく交流200(V)に接続することができ、変圧器における電力損失をなくし、またその設置コストを削減できる省コスト性に優れた集合電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態1における集合電池の一部破断要部斜視図であり、図2(a)は本実施の形態1における集合電池の要部側面断面図であり、図2(b)は断熱部の他の例を示す要部側面断面図であり、図3(a)は図2のA−A線の矢視断面図であり、図3(b)は図3(a)の要部拡大図である。
図中、1は集合電池、2は下部が開口した釣り鐘状の上部容器、3は上部容器2の下部開口部側が挿着された下部容器、4は上部容器2と下部容器3により構成された断熱容器、5は上部容器2の円筒状の胴体部、6は胴体部5の上部に一体的に形成された湾曲面状の天板部、7は胴体部5及び天板部6の外壁部、8は外壁部7の内側に配設された内壁部、9は外壁部7と内壁部8の間に形成された中空部であり、外壁部7と内壁部8は上部容器2の下端部封止部9aで封止され中空部9が密閉されている。なお、下端部封止部9aの断面形状としては内壁部8の下端部と外壁部7の下端部を最短距離で接続した直線状に限られるものではなく、山形状や湾曲状等を用いることもできる。下端部封止部9aを断面山形状や断面湾曲状とすることにより、内壁部8から外壁部7への伝熱距離を長くでき、下端部封止部9aによる放熱を低減できる。10は胴体部5の外壁部7に周設された上部フランジ部、11は下部容器3の架台部、12は架台部11から立設された円筒状の周壁部、13は下部容器3の上端縁部に周設された下部フランジ部、14は上部フランジ部10と下部フランジ部13とを接合するボルトナット、15はナトリウム−硫黄電池等の高温で作動する二次電池の単電池、16は複数の単電池15が収容された平面視形状が正六角形の単電池収容箱体、16aは単電池収容箱体16内に立設され単電池収容箱体16を菱形の3つの領域に等分割する仕切り板、16bは単電池収容箱体16の内部に形成された3つの菱形収容部、17は複数の単電池15を収容した単電池収容箱体16を複数段積み重ねて各々電気的に接続して形成されたモジュール、18は架台部11を貫通して配設され、モジュール17から放電された電力の取り出し及び充電するための電力の供給を行う電力線、19は架台部11を貫通して配設され、モジュール17の総電圧や温度等を計測するために外部の計測器等に接続される計測線である。
【0035】
図2(a)において、21はモジュール17の周囲に配設された保護容器、22,23はモジュール17の上部及び下部に配設された起動用の上部ヒータ及び下部ヒータ、24a,24bは下部容器3の底部に敷設された断熱材(断熱部)24cの上部に積層された嵌合断熱材(嵌合断熱部)である。上部容器2の下部開口部は最下層の下部断熱材24c上に当接している。嵌合断熱材24a,24bは上部容器2の下部開口部と同形状の円柱状に形成され下部開口部に嵌合している。なお、図2(a)において示した保護容器21及び上部ヒータ22、下部ヒータ23は図1においては説明を分かり易くするために図示を省略している。また、図2(b)において、25は下部容器3の底部に敷設された断熱材、26は断熱材25の上面に敷設され上部容器2の下部開口部に嵌合する真空断熱プレートである。なお、本実施の形態1においては、図2(a)に示すように断熱部として断熱材24a,24b,24cを用いているが、図2(b)に示すように断熱部として断熱材25と真空断熱プレート26を組み合わせて用いることもできる。なお、図2(b)に示すものに限らず、断熱材25を真空断熱プレートとすることもできる。真空断熱プレート26は、内部の中空部に真空断熱層が形成されたものである。
また、図3(a)において、31は直列に接続された単電池15の一群を並列に接続するための並列接続端子である。図3(b)において、15a,15b,15cは単電池、33は正極端子、34は負極端子、35は各々の単電池15,15a,15b,15cに巻着された絶縁材であるマイカシートである。
【0036】
ここで、断熱容器4の外径や高さとしては、収容される単電池15の大きさや個数、配置により適宜設定されることが好ましい。本実施の形態1においては、図1乃至図3に示すように、単電池収容箱体16内の3つの菱形収容部16bに千鳥状配列で各々複数の単電池15を配置し、その単電池収容箱体16を複数段積み重ねて、所定本数の単電池15を断熱容器4内に収容している。本実施の形態1においては、単電池15としては外径が20〜100mm、高さが120〜600mmのものを用い、断熱容器4としては外径が500〜2500mm、高さが1090〜5450mmのものを用いた。
なお、断熱容器4内に収容される単電池15の配置は上述したものに限られないため、断熱容器4の外径や高さは単電池15の配置により適宜決定される。
単電池収容箱体16の材質としては、ステンレス鋼や炭素鋼等が用いられる。特に炭素鋼を用いると蓄熱性が向上し放熱を抑制することができる。また、炭素繊維の内張りを施すこともでき同様の効果が得られる。
また、本実施の形態1においては、保護容器21とモジュール17との間やモジュール17の単電池収容箱体16内部等に火災防止のための耐熱性及び電気絶縁性を有する砂(図示せず)を充填する。これにより、断熱容器4内部が単電池15の活物質の漏れ等により高温になった場合であっても火災の発生を抑制することができる。
【0037】
以上のように構成された本実施の形態1における集合電池1について、以下その断熱容器4の上部容器2の製造方法について説明する。
まず、上部容器2を二次電池のモジュール17の作動温度以上の温度に加熱した加熱炉等に入れ、加熱する(加熱工程)。次に、加熱した状態で中空部9に設けた脱気口(図示せず)に真空ポンプ等を接続し真空脱気を行う(真空脱気工程)。なお真空脱気工程の後、脱気口を封止し中空部9を密閉する。これにより、上部容器2の外壁部7の内表面や内壁部8の外表面に吸着した水分子や水素分子、或いは外壁部7の内表面や内壁部8を形成する金属内部の水素分子等を脱離させ除去することができ、作動時に水蒸気や水素の発生を抑制することができるので、中空部9の真空度を極めて低くすることができる。なお、本実施の形態1においては、収容される二次電池の単電池15がナトリウム−硫黄電池である場合は、その作動温度である290℃〜350℃以上、例えば500℃に加熱される。
【0038】
次に、モジュール17内の単電池15の配置及び電気的接続について、図3を用いて説明する。
図3(a)に示すように、単電池15は円柱状に形成され、複数の単電池15は平面視形状が正六角形の単電池収容箱体16内に起立して並立されている。単電池収容箱体16は仕切り板16aにより平面視形状が菱形の3つの菱形収容部16bに等分割されている。菱形収容部16bは一辺の長さが正六角形の単電池収容箱体16の一辺の長さと同一に形成され、角部の角度は鋭角が略60°、鈍角が略120°に形成されている。また、図3(b)に示すように、各々の菱形収容部16bには単電池15を起立した状態で千鳥形配列で配設している。すなわち、隣り合う3本の単電池15a,15b,15cが各々マイカシート35を介して接触すると共に、各々の単電池15a,15b,15cの中心が正三角形の角に位置するように配置されている。これにより、単電池15a,15b,15cを稠密に無駄なスペースなく配置することができる。
また、図3(a)に示すように、単電池15は、単電池収容箱体16内の菱形収容部16bの側壁に平行な列毎に10本が直列に接続され、その直列に接続された単電池が平行に10列配設され、各列の先頭の単電池15の正極端子33及び各列の最後尾の単電池15の負極端子34が並列接続端子31により接続され、各列が並列に接続されている。さらに、一つの単電池収容箱体16内の各々の菱形収容部16bは直列に接続され、単電池収容箱体16の側壁等に設けられた単電池収容箱体16用の正極端子と負極端子(図示せず)に接続されている。また、各々の菱形収容部16bに単電池15が収容された単電池収容箱体16には隣り合う単電池15の間等に防火用の砂が所定量充填され、その上に絶縁板が取り付けられ、6個積み重ねられ、単電池収容箱体16の側壁等に設けられた正極端子と負極端子(図示せず)で上下方向に直列に接続され、モジュール17が形成されている。ここで、菱形収容部16b内の一列の単電池15の本数mと、断熱容器4の内部に配設された単電池収納箱体16の個数nと、が(数2)を満たすように決定されることにより、集合電池1全体の直流電圧値が、交流に変換した際の交流200Vの交流電圧適正値以上、且つ交流200Vに接続する場合のインバータ変換素子の耐電圧にスイッチング過電圧を考慮した電圧値以下となるので、変圧器を介すことなく交流200Vに接続することができる。
【数2】

ここで、菱形収容部16b内の一列(m本)の単電池15は直列に接続され、各列は並列に接続され、各々の菱形収容部16b(3つ)は直列に接続され、各々の単電池収容箱体16(n個)は直列に接続されているので、(数2)の3mnはモジュール17内の単電池15の内、直列に接続されたものの本数となる。Eは単電池15の充電終止電圧、Eは単電池15の放電終止電圧であるので、3mnEは集合電池1の充電終止電圧Eとなり、3mnEは集合電池1の放電終止電圧となる。ここで、放電開始から放電終了までの集合電池1が出力する直流電圧値をEとすると、3mnE≦E≦3mnEである。
集合電池1を変圧器を介すことなく交流200(V)に接続するためには、集合電池全体の直流電圧値Eを交流に変換した際の交流電圧値E/√2が、交流200(V)の交流電圧適正値以上でなければならない。交流電圧適正値を202±20(V)とすると、E≧(202±20)√2となる。また、集合電池1を変圧器を介すことなく交流200(V)に接続するためには、集合電池全体の直流電圧値Eが、交流200(V)に接続する場合のインバータ変換素子の耐電圧にスイッチング過電圧を考慮した電圧値以下でなければならない。この電圧値を425(V)とすると、E≦425なる。
Eが常にE≧(202±20)√2、及び、E≦425を満たすためには、3mnE≦425、及び、3mnE≧222√2を満たせばよい。
本実施の形態1においては、10本の単電池15を直列に接続しそれを10列並列に接続し、これらが一つの単電池収容箱体16の3つの菱形収容部16bに各々収容され、この単電池収容箱体16を6個積み重ねて、モジュール17を形成している。また、一つの単電池15の充電終止電圧Eが2.35(V)、放電終止電圧Eが1.80(V)である。これにより、上記(数1)を満たし、集合電池1を変圧器を介さずに交流200(V)に接続することができる。
【0039】
次に、上部容器2の中空部9に形成された真空断熱層の熱伝導率と単電池15の単セル効率との関係について図4を用いて説明する。
図4は上部容器の真空断熱層の熱伝導率と単電池の単セル効率との関係を示す関係図である。図4は、本実施の形態1における集合電池1について、上部容器2の中空部9に形成された真空断熱層の熱伝導率λと単電池15の単セル効率ηとを適宜変更し、8時間充電及び8時間放電を繰り返す運転を行った場合に、熱自立した運転が可能な真空断熱層の熱伝導率と単セル効率とをグラフ化したものである。
ここで、単セル効率とは、1本の単電池15(単セル)に充電した電力量に対し放電する電力量の割合であり、単電池15の内部抵抗が小さくなるにつれ、単セル効率は高くなる。一方、単電池15の内部抵抗が小さくなるにつれ、単電池15に電流が流れる際に発生するジュール発熱量は減少する。
図4に示すように、上部容器2の中空部9に形成された真空断熱層の熱伝導率λを0.001W/mK〜0.01W/mKとすると、単セル効率ηが0.89〜0.99の高効率の単電池15を用いても、集合電池1は熱的に自立した運転が可能であることがわかった。特に、単セル効率ηが0.90の単電池15を用いた場合は熱伝導率λを0.0086W/mKとし、単セル効率ηが0.93の単電池15を用いた場合は熱伝導率λを0.0059W/mKとし、単セル効率ηが0.96の単電池15を用いた場合は熱伝導率λを0.0034W/mKとすることで、集合電池1は熱的に自立した運転を行うことができることがわかった。なお、熱伝導率λを0.0086W/mKとするための真空断熱層の真空度は16Paであった。
【0040】
次に、輻射熱反射部及びゲッタについて図5を用いて説明する。
図5は上部容器2の胴体部5の要部断面図である。51は内壁部8の外側面すなわち中空部9側の面に沿って配設された輻射熱反射部、52は内壁部8の内側面に沿って配設された輻射熱反射部、53は中空部9の輻射熱反射部51上に配設固定されたゲッタである。
輻射熱反射部51,52は、内壁部8の所定面を研磨して形成することもでき、或いは1乃至複数の反射板を内壁部8に沿って設けることもできる。輻射熱反射部51,52としては、アルミニウムや銅等により形成されたものが用いられる。これにより、モジュール17等から発生した輻射熱を反射し外部への放熱を抑制することができる。
また、上部容器2の中空部9の輻射熱反射部51上には、残留したガスを吸収するゲッタ53が配設固定されている。これにより、上部容器2の中空部9を封止した後であっても、中空部9の内部の残留ガスを除去し真空度をさらに低下させることができる。ゲッタとしては、ジルコニア合金やチタン合金等の塊状物等が用いられる。
【0041】
次に、温度調整部について図6を用いて説明する。
図6(a)は断熱容器の温度調整部を示す要部模式断面図であり、図6(b)は温度調整部の要部動作説明図である。
図6において、55は上部容器2の外壁部7と内壁部8の間の中空部9に配設され、一端部が内壁部8に溶接固定されたバイメタルからなる温度調整部、56,57は温度調整部を構成する2枚の金属板である。
温度調整部55は膨張率の異なる2枚の金属板56,57を張り合わされたバイメタルにより形成されている。金属板56はフェライト系ステンレス鋼等の金属により形成され、金属板57は金属板56より膨張率が大きいオーステナイト系ステンレス鋼等の金属により形成されている。温度調整部55は内壁部8の中空部9側の面に固定端が内壁部8に沿って固定されている。
図6(b)に示すように、断熱容器4内部の温度が上昇するとその熱が内壁部8から温度調整部55に伝熱し温度調整部55が湾曲変形し、その自由端が外壁部7に接触する。これにより、断熱容器4内部の熱は内壁部8から温度調整部55を介して外壁部7に伝熱し外気に放熱され、断熱容器4内部の過剰な温度上昇を抑制できる。断熱容器4内部の熱が温度調整部55を介して放熱され温度が低下し、断熱容器4内部の温度が低くなると温度調整部55の自由端が外壁部7から離れ、伝熱しなくなり放熱を止めることができる。このように、断熱容器4の上部容器2を真空二重壁構造とし断熱性を高くしても、温度調整部55により温度上昇に応じて放熱を行うことで、断熱容器4内部の過剰な温度上昇を抑制し、加熱装置による温度調整を不要とし、所定の温度範囲に維持できるので、エネルギ効率を向上できる。
また、図6(a)に示すように、温度調整部55は、上部容器2の下部容器3への挿入部分と、上部容器2の天板部6の位置に取り付けられ、外壁部7の温度調整部55の当接部分が温度上昇しても、断熱容器4の特性を知らない者等が誤って高温になる部分に触れてしまうことがない位置に取り付けられている。
なお、金属板56,57の熱膨張率、取り付け角度、大きさ等を適宜設定することにより、温度調整部55の自由端が外壁部7に当接する温度すなわち放熱を開始する温度を設定することができるので、断熱容器4内部の温度を収容された二次電池の作動温度の範囲内に自動で維持させることができる。
【0042】
次に、単電池15の配列の他の例について図7を用いて説明する。
図7は単電池の配列の他の例を示す要部断面図である。
図7において、2は上部容器、7は外壁部、8は内壁部、9は中空部、15は単電池であり、これらは図3において説明したものと同様のものであるので同一の符号を付けて説明を省略する。16′は平面視形状で円形に形成された単電池収容箱体である。なお、図7においては、説明をわかり易くするために、並列接続端子31や正極端子33、負極端子34は図示を省略している。
本実施の形態1においては、図3(a)に示すように、単電池収容箱体16を平面視形状で正六角形に形成し、その単電池収容箱体16の内部に複数の単電池15を千鳥状配列で収容しているが、これに限られるものではなく、図7に示すように、単電池収容箱体16′を平面視形状で円形に形成し、円形の単電池収容箱体16′の内部に複数の単電池15を千鳥状配列で収容することもできる。単電池収容箱体16′を円形とすることにより、単電池15同士の電気的接続は多少複雑になるが、単電池15の収容本数を増加させることができる。或いは、同本数を収容する場合は、六角形に比べ上部容器2を小型化することができる。
【0043】
以上のように本実施の形態1における集合電池及び断熱容器は構成されているので、以下のような作用を有する。
(1)断熱容器4の上部容器2が、中空部9が真空状に形成された二重壁構造に形成され、中空部9の真空度が絶対圧で100Pa以下、好ましくは10Pa以下に形成されているので、上部容器2の熱伝導率を0.001W/mK〜0.02W/mKとすることができ、外部への放熱を抑制することができ、上部容器2内部に収容される単電池15の効率が高い場合、すなわち内部抵抗が小さく放電及び充電によるジュール発熱量が少ない場合であってもヒータ等による加熱が不要で熱的に自立した運転を行うことができる。
(2)上部容器2の胴体部5が円筒状に形成されると共に天板部6が胴体部5に一体に形成された湾曲面状に形成されているので、構造的強度が高く、これにより二重壁構造の内部の中空部9に補強部材を設けたり強度維持のための充填材を充填したりする必要がないので、補強部材や充填材を介して外部に放熱することがなく、上部容器2の熱伝導率を極めて小さくできる。
(3)断熱容器4内部の天板部6近傍は、収容した二次電池の単電池15やそれを集合したモジュール17のジュール発熱や反応熱等により発生した熱の対流で温度が高くなる。天板部6が湾曲状に形成されているので、天板部6の二重壁構造の中空部9に補強部材や充填材を設けることなく構造的強度を維持することができ、補強部材や充填材を設けないので、外部への放熱を抑制することができる。
(4)上部容器2は円筒状の胴体部5の上部に天板部6が一体に形成され下部に下部開口部が形成されているので、温度が高くなる断熱容器4内部の上部において内壁部と外壁部の接合部分がないため熱伝導率を小さくでき外部への放熱を抑制することができる。
(5)下部容器3は架台部11と周壁部12とにより形成されているので、上部容器2の胴体部5を下部容器3に挿入して下部開口部を断熱材24cに当接させると共に、下部開口部に嵌合断熱材24a,24bを嵌合して、上部容器2を下部容器3に挿着しているので、上部容器2の下部開口部側からの放熱、特に上部容器2の下端部で接合された外壁部7と内壁部8との接合部からの放熱を抑制することができる。また、断熱材24a,24bに替えて真空断熱プレート26を用いた場合はさらに断熱性を高めることができると共に、真空断熱プレート26を上部容器2の下部開口部に嵌合させているので、真空断熱プレート26の側壁を伝わる熱をその下部に敷設された断熱部25により遮断でき、断熱性を著しく高めることができる。
(6)上部容器2が上部フランジ部10を備え、下部容器3が下部フランジ部13を備えているので、上部容器2の上部フランジ部10を下部容器3の下部フランジ部13に気密に接合し断熱容器4を密封でき、断熱容器4内の気密性が保たれ断熱性を向上させることができる。
(7)上部容器2を製作する際に、加熱工程において上部容器2を二次電池の作動温度以上の温度に加熱することにより上部容器2の外壁部7や内壁部8の表面に吸着した水分子や水素分子、或いは外壁部7や内壁部8を形成する金属内部の水素分子等が脱離させることができ、真空脱気工程において脱離した気体を除去することができるので、上部容器の中空部の真空度を100Pa以下、好ましくは10Pa以下に極めて低くすることができる。
(8)断熱容器4内部に収容されるモジュール17から発生した輻射熱を輻射熱反射部51,52により反射することにより外部に漏れるのを抑制することができ、断熱性を高めることができる。
(9)上部容器2の中空部9に残留したガスを吸収するゲッタ53を内壁部8の中空部9側の面に配設することにより、中空部9の真空度を100Pa以下、好ましくは10Pa以下に低下させ、上部容器2の断熱性を高めることができる。
(10)単電池収容箱体16が正六角形に形成されることにより、上部容器2の円筒状の胴体部5内部に単電池収容箱体16が無駄な空間を形成することなく収容されるので、省スペース性を向上させることができる。
(11)単電池収容箱体16の内部を仕切り板16aで仕切って平面視形状が菱形状の3つの菱形収容部16bを形成し、各々の菱形収容部16bに単電池15を千鳥形配列で配設しているので、単電池15を稠密に無駄なく配置することができ多数の単電池15を収容でき集合電池1のエネルギ密度を向上させることができる。また、菱形収容部16bに単電池15を千鳥形配列で配設しているので、単電池15を整列して配設することができ、各単電池15を電気的に接続する際に各列毎に直列に接続し易く、また、直列接続された各単電池15群を並列に接続し易く、必要に応じた直列数と並列数の設計が容易に行える。
(12)集合電池1全体の直流電圧値が、交流に変換した際の交流200(V)の交流電圧適正値以上、且つ交流200(V)に接続する場合のインバータ変換素子の耐電圧にスイッチング過電圧を考慮した電圧値以下となるので、変圧器を介すことなく交流200(V)に接続することができ、変圧器における電力損失をなくし、その設置コストを削減できる。
(13)断熱容器4内部の温度が上昇するとその熱が内壁部8から温度調整部55に伝熱しバイメタルからなる温度調整部55が湾曲変形し、その自由端が外壁部7に接触するので、断熱容器4内部の熱は内壁部8から温度調整部55を介して外壁部7に伝熱し外気に放熱され、断熱容器4内部の過剰な温度上昇を抑制できる。断熱容器4内部の温度が上限温度より低くなると温度調整部55が変形してその自由端が外壁部7から離れ、伝熱しなくなり放熱を止めることができるので、加熱装置等を用いることなく、断熱容器4内部を所定温度の範囲内に維持することができる。
【0044】
(実施の形態2)
図8(a)は本実施の形態2における断熱容器の温度調整部を示す要部模式断面図であり、図8(b)は温度調整部が動作した状態を示す要部模式断面図であり、図8(c)は温度調整部の配置を説明する説明図である。
図8において、2は上部容器、7は外壁部、8は内壁部、9は中空部であり、これらは実施の形態1において説明したものと同様のものであるので同一の符号を付けて説明を省略する。61は上部容器2の下端部を封止する下端部封止部、62は外壁部7の下端部に固着されたリング状の外リング、63は内壁部8の下端部に固着されたリング状の内リング、64は一端部が内リング63に固着されたバイメタルからなる温度調整部である。なお、温度調整部64としては実施の形態1で説明した温度調整部55と同様のものを用いることができる。
以上のように構成された本実施の形態2における断熱容器が実施の形態1と異なる点は、上部容器2の下端部に外リング61と内リング63と温度調整部64とを備えている点である。
図8(a)に示すように、下端部封止部61は下部に温度調整部64が配設されている。温度調整部64は一端部が内リング63に固着され他端部は外リング62の下面に離隔して配設されている。
図8(b)に示すように、断熱容器内部の温度が上昇するとその熱が内壁部8から内リング63を介して温度調整部64に伝熱し温度調整部64が湾曲変形し、その自由端が外リング62に接触する。これにより、断熱容器内部の熱は内壁部8から内リング63、温度調整部64、外リング62を介して外壁部7に伝熱し外気に放熱され、断熱容器内部の過剰な温度上昇を抑制できる。断熱容器内部の熱が温度調整部64を介して放熱され温度が低下し、断熱容器内部の温度が低くなると温度調整部64の自由端が外リング62から離れ、伝熱しなくなり放熱を止めることができる。
また、温度調整部64は、図8(c)に示すように、上部容器2の下端部の全周に渡って複数設けることができ、全周に渡って放熱することができるので、温度上昇に対して素早く応答できる。
なお、上部容器2の下端部封止部61とその下方の断熱材24c(図2(a)参照)との間には、温度調整部64を設けるための空隙を形成することが好ましい。該空隙は、下端部封止部61と断熱材24cとの間にスペーサ等を挿入したり、断熱材24cの下端部封止部61が当接する部分に凹部を設けたりすることにより形成することができる。これにより、上部容器2の下端部封止部61の下部に温度調整部64が湾曲変形できる空隙が形成され、温度調整部64の取り付けが容易になる。
また、本実施の形態2においては、内リング63に温度調整部64の一端部を固着したが、これに限られるものではなく、外リング62に温度調整部64の一端部を固着してもよい。このとき、温度上昇により、例えば内壁部8から下端部封止部61、外壁部7、外リング62を介して温度調整部64に伝熱し、熱により湾曲変形してその自由端が内リング63に接触する。
【0045】
以上のように本実施の形態2における断熱容器は構成されているので、実施の形態1の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)上部容器2の下端部に外リング61と内リング63と温度調整部64とを備えているので、断熱容器の上部容器2を真空二重壁構造とし断熱性を高くしても、温度調整部64により温度上昇に応じて放熱を行うことで、断熱容器内部の過剰な温度上昇を抑制し、加熱装置による温度調整を不要とし、所定の温度範囲に維持できるので、エネルギ効率を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本発明は複数のナトリウム−硫黄電池等の高温で作動する二次電池を収容する断熱容器に関し、特に本発明によれば、内部に収容される二次電池の効率が高い場合、すなわち内部抵抗が小さく放電及び充電によるジュール発熱量が少ない場合であっても、放熱を抑えて熱的に自立した運転が可能で、さらに内部の過剰な温度上昇を抑制でき、また放熱ロスを最小にしつつ内部を所定温度の範囲内に維持することができる断熱容器を提供することができる。
また、以上説明したように、本発明は複数のナトリウム−硫黄電池等の高温で作動する二次電池を集合した集合電池に関し、特に本発明によれば、放熱を抑えて熱的に自立した運転が可能であると共に、単電池を稠密に無駄なく配置することができるのでエネルギ密度を高くすることができ、また単電池の直列数と並列数の組合せにより変圧器を用いることなく交流200ボルトに接続することができ、さらに内部の過剰な温度上昇を抑制でき、また放熱ロスを最小にしつつ内部を所定温度の範囲内に維持することができる集合電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施の形態1における集合電池の一部破断要部斜視図
【図2】(a)実施の形態1における集合電池の要部側面断面図 (b)断熱部の他の例を示す要部側面断面図
【図3】(a)図2のA−A線の矢視断面図 (b)図3(a)の要部拡大図
【図4】上部容器の真空断熱層の熱伝導率と単電池の単セル効率との関係を示す関係図
【図5】断熱容器の胴体部の要部拡大断面図
【図6】(a)断熱容器の温度調整部を示す要部模式断面図 (b)温度調整部の要部動作説明図
【図7】単電池の配列の他の例を示す要部断面図
【図8】(a)実施の形態2における断熱容器の温度調整部を示す要部模式断面図 (b)温度調整部が動作した状態を示す要部模式断面図 (c)温度調整部の配置を説明する説明図
【符号の説明】
【0048】
1 集合電池
2 上部容器
3 下部容器
4 断熱容器
5 胴体部
6 天板部
7 外壁部
8 内壁部
9 中空部
9a 下端部封止部
10 上部フランジ部
11 架台部
12 周壁部
13 下部フランジ部
14 ボルトナット
15 単電池
16,16′ 単電池収容箱体
16a 仕切り板
16b 菱形収容部
17 モジュール
18 電力線
19 計測線
21 保護容器
22 上部ヒータ
23 下部ヒータ
24a,24b 嵌合断熱材(嵌合断熱部)
24c 断熱材(断熱部)
25 断熱材
26 真空断熱プレート
31 並列接続端子
33 正極端子
34 負極端子
35 マイカシート
51,52 輻射熱反射部
53 ゲッタ
55 温度調整部
56,57 金属板
61 下端部封止部
62 外リング
63 内リング
64 温度調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム−硫黄電池等の高温で作動する二次電池が収容される密封された断熱容器であって、
架台部と、前記架台部から立設された周壁部と、を有し前記架台部上に断熱部が敷設された下部容器と、
天板部と、胴体部と、下部に下部開口部と、を有し、外壁部と内壁部との間が真空状に形成された二重壁構造に形成され、前記下部開口部を前記下部容器の前記断熱部に当接して前記下部容器に挿着する上部容器と、
前記上部容器の前記外壁部と前記内壁部の間の中空部又は前記上部容器の下端部に1乃至複数配設され、一端部が前記内壁部又は前記外壁部に固定され他端部を自由端とした温度調整部と、
を備えていることを特徴とする断熱容器。
【請求項2】
前記上部容器の中空部に配設された前記温度調整部が、前記上部容器の前記下部容器への挿入部分、或いは、前記上部容器の前記天板部又はその近傍に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の断熱容器。
【請求項3】
前記上部容器の前記内壁部の下端部に固着された内リングと、前記上部容器の前記外壁部の下端部に固着された外リングと、を備え、前記温度調整部の一端部が前記内リング又は前記外リングに固定され他端部を自由端としたことを特徴とする請求項1に記載の断熱容器。
【請求項4】
ナトリウム−硫黄電池等の高温で作動する二次電池の単電池を集合した集合電池であって、
請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の断熱容器と、
前記断熱容器に収容された1乃至複数の単電池収容箱体と、
前記単電池収容箱体に収容された複数の前記単電池と、
を備えていることを特徴とする集合電池。
【請求項5】
複数の前記単電池が、前記単電池収容箱体に千鳥状配列で収容されていることを特徴とする請求項4に記載の集合電池。
【請求項6】
前記単電池収容箱体が、平面視形状が正六角形又は円形若しくは楕円形に形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の集合電池。
【請求項7】
平面視形状が正六角形に形成された1乃至複数の前記単電池収容箱体と、前記単電池収容箱体の内部を平面視形状が菱形状に3つに等分割して形成された菱形収容部と、各々の前記菱形収容部に千鳥形配列で配設された複数の前記単電池と、を備えていることを特徴とする請求項4乃至6の内いずれか1項に記載の集合電池。
【請求項8】
各々の前記菱形収容部に配設された複数の前記単電池が前記菱形収容部の側壁に平行な列毎に直列に接続されると共に各列が並列に接続され、さらに各々の前記菱形収容部の単電池群が直列に接続され、且つ、前記菱形収容部内の一列の前記単電池の本数mと、前記断熱容器の内部に配設された前記単電池収納箱体の個数nと、が(数1)を満たすように決定されていることを特徴とする請求項7に記載の集合電池。
【数1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−192622(P2008−192622A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71632(P2008−71632)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【分割の表示】特願2004−203936(P2004−203936)の分割
【原出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】