説明

断熱容器及び断熱シート

【課題】 容器内の物品への毀損行為を容易に発見することができるカゴ車用保冷容器を実現可能とする断熱容器及び断熱シートを提供する。
【解決手段】 断熱容器であって、断熱層及び緩衝層を含む多層構造である透光部を備え、断熱層及び緩衝層は、少なくとも緩衝層側から断熱層側への光の一部又は全部を常に透過させるものであり、緩衝層は、断熱層よりも容器の内側に形成されており、緩衝層は、断熱層への物理的な衝撃を緩和するものであり、断熱層は、熱伝導を阻害するものである、断熱容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱容器及び断熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保冷容器は、一般的に、保冷効果を高めるためにアルミニウム等の不透光性の物質で覆われていた(特許文献1参照)。また、特許文献2には、保冷容器を透明の合成樹脂材で作製することにより、内部の生鮮食料品等の商品を確認することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−105945号公報
【特許文献2】特開2003−063527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の一般的な保冷容器は、外部から内部を視認できない。そのため、このような保冷容器では、容器内の物品の瑕疵を発見することが困難であった。
【0005】
特に、このような課題は、特許文献1記載のカゴ車用保冷容器で顕著になる。ここで、カゴ車は、一般に、格子状又は網状の枠で作られたかご状の容器に、キャスターを付けた構造のものである。カゴ車は、一時保管やトラックへの積込場までの搬送に用いられる運搬台車の一種である。
【0006】
カゴ車用保冷容器は、人が内部で行動することができるほどに大きい。このようなカゴ車用保冷容器で、外部から内部を視認できない結果、例えば、異物混入や落書きなどの容器内の物品を毀損する行為に対して、抑止力を持ちえなかった。これは、専ら保冷のみを目的とするため、容器内部に入り込んで物品を毀損する行為が想定されておらず、課題として認識されてもいなかったためといえる。
【0007】
また、特許文献2記載の保冷容器は、生鮮食料品等を内包して容器ごと流通する流通用容器である。例えばカゴ車用保冷容器のように、容器内部で作業が行われることは想定されない。そのため、特許文献2には、単に、生鮮食料品等を保管するための容器について、断熱のための部材を透明の合成樹脂材で作製することが開示されているにとどまる。すなわち、容器内部で作業が行われ、商品や断熱のための部材などが毀損する可能性については記載も示唆もされておらず、課題として認識されていない。
【0008】
ゆえに、本発明は、容器内の物品への毀損行為を容易に発見することができるカゴ車用保冷容器を実現可能とする断熱容器及び断熱シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、断熱容器であって、断熱層及び緩衝層を含む多層構造である透光部を備え、前記断熱層及び前記緩衝層は、少なくとも前記緩衝層側から前記断熱層側への光の一部又は全部を常に透過させるものであり、前記緩衝層は、前記断熱層よりも当該容器の内側に形成されており、前記緩衝層は、前記断熱層への物理的な衝撃を緩和するものであり、前記断熱層は、熱伝導を阻害するものである、断熱容器である。
【0010】
本発明の第2の観点は、第1の観点の断熱容器であって、前記透光部は、前記断熱層と前記緩衝層を有する断熱シートを、複数、不透光な部材を用いて縫製したものである。
【0011】
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点の断熱容器であって、前記透光部は、当該断熱容器の外部から内部への光の一部又は全部をも常に透過させるものであり、対向する側面に形成される。
【0012】
本発明の第4の観点は、熱伝導を阻害する断熱層を有する断熱シートであって、前記断熱層への物理的な衝撃を緩和する緩衝層を備え、前記断熱層及び前記緩衝層は、少なくとも前記緩衝層側から前記断熱層側への光の一部又は全部を常に透過させる、断熱シートである。
【0013】
なお、前記透光部は、同一平面にない連続した面に形成され、又は、同一平面にない離れた複数の面に形成されており、当該カゴ車用保冷容器が水平面に置かれた状態で、前記水平面に平行な面に含まれる直線であって前記透光部を2回貫通する直線である透光直線が存在するように形成されているものであってもよい。
【0014】
また、前記緩衝層は、前記断熱層より外側にも形成されているものであってもよい。
【0015】
さらに、前記緩衝層は、直線状に延伸した緩衝材を複数有し、前記緩衝材は、網目を構成するものであってもよい。これにより、緩衝材が不透光性であっても、外部から内部を視認することができる。そのため、透光性を保ちつつ強度を有する側面を備えたカゴ車用保冷容器を実現することが可能となる。緩衝材が不透光性であってもよいため、緩衝材の選択の幅が広く、軽量かつ衝撃に強い材料等を緩衝材に選択することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1から第3の観点に係る断熱容器は、商品などの作業による断熱層への毀損行為を、緩衝層で防止しつつ、外部から内部の物品を視認することができる。そのため、容器内の物品の瑕疵を外部から容易に発見することが可能となる。また、本発明の第4の観点に係る断熱シートは、断熱層と緩衝層の多層構造である。これを用いることにより、そのような断熱容器を容易に提供することが可能となる。
【0017】
特に、カゴ車用保冷容器の場合、カゴ車は、通常、人が入れるほどに大きい。従来のカゴ車用保冷容器は、保冷のみを目的とするため、内部に侵入しさえすれば、密室での行為を防止することは困難であった。しかしながら、本考案の各観点によれば、外部からの視認性により、容器内の物品への毀損行為を発見することが容易となる。さらに、外部から視認可能であるため、毀損行為を躊躇させる心理的な抑止効果も期待できる。この点、透光部が一時的なものでなく、常に透光性を有するものであることから、高い抑止効果が期待される。
【0018】
従来のカゴ車用保冷容器は、専ら保冷のみを目的としていた。この目的を達成するため、光を遮断するものであった。それに対して、本考案は、容器内の物品の保護のため、保冷容器の内部から外部への光の透過に注目するものである。そのため、本考案は、従来のカゴ車用保冷容器と課題を異にする。
【0019】
なお、外部から内部への透光性を許容する場合、内部への光の照射が可能となる。そのため、従来のカゴ車用保冷容器よりも保冷効果が劣ることにもつながりうる。しかし、カゴ車は、通常、保冷処理がなされた場所に保管される。カゴ車用保冷容器は、一時的にのみ(例えば、保冷車への搬送時など)、保冷効果を発揮すれば足りる。長時間の保冷機能は、不要である。カゴ車用保冷容器は、カゴ車の使用状況から検討すれば、内部への透光性が認められたとしても、十分に保冷容器として機能する。
【0020】
さらに、空気による断熱層を、緩衝層により支えることにより形状を維持することが可能になる。さらに、緩衝層を、少なくとも断熱層の内側に形成することにより、カゴ車用保冷容器の内部への物品の出し入れに伴う断熱層の破損を防止することが可能になる。
【0021】
すなわち、透光性を確保するため、断熱層を例えば空気を透明フィルムで覆って形成し、又は、内部を真空として形成した場合、従来のカゴ車用保冷容器におけるアルミニウム層等とは異なり、衝撃に弱く容易に破損する。一方、カゴ車用保冷容器は、流通過程において物品が放り込まれる際など、保冷容器の内部への衝撃が想定される。また、外部からの衝撃は、カゴ車の格子状又は網状の枠により視認性を担保しつつ緩衝される。そのため、保冷容器内部側からの衝撃から断熱層を保護する必要がある。そこで、本発明の各観点によれば、内部から外部への透光性(外部からの内部の視認性)を確保しつつ、断熱層に対する衝撃のうち少なくとも内部からの衝撃を緩和する緩衝層を備えたカゴ車用保冷容器を実現することが可能となる。
【0022】
また、本発明の第2の観点によれば、不透光な縫製部分を除いて大部分が透光部で構成されるため、容器内部を視認することが容易となる。そのため、容器内部の物品の毀損や毀損行為を発見することが容易となる。
【0023】
さらに、本発明の第3の観点によれば、断熱容器を水平面に複数並置した場合であっても、複数の断熱容器の内部を同時に視認することが可能となる。そのため、複数の容器内の物品の瑕疵の有無を一括して視認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係るカゴ車用保冷容器の概要を示す図である。
【図2】図1のカゴ車用保冷容器における(a)透光部を含む図、(b)(a)の拡大図である。
【図3】透光部の断面の概略を示す図である。
【図4】図1のカゴ車用保冷容器の六面図であって、(a)正面図、(b)背面図、(c)右側面図、(d)左側面図、(e)平面図、(f)底面図である。
【図5】図1のカゴ車用保冷容器の使用状態を示す斜視図であって、保冷容器をカゴ車に取り付けて、(a)正面を閉じた状態、(b)正面を開けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、本発明の実施の形態は、本実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
図1は、本実施例に係るカゴ車用保冷容器1(特許請求の範囲における「断熱容器」の一例)の概要を示す図である。
【0027】
カゴ車用保冷容器1は、おおよそ直方体の形状に構成されている。また、各面は、カゴ車用保冷容器1の構造を支える不透光な枠体3(特許請求の範囲における「不透光な部材」の一例)及び内部から外部の光のうち一部又は全てを常に透過させ、かつ、外部から内部の光のうち一部又は全てを常に透過させる透光部5(特許請求の範囲における「透光部」の一例)を有する。カゴ車用保冷容器1は、正面の枠体3付近に設けられたレール7上をスライドするファスナ9の開閉で、正面部分が開閉可能な構造をしている。加えて、カゴ車用保冷容器1は、右側面の上部に、輪状の取付部13を備える。同様に、左側面上部に1つの取付部13、背面上部に2つの取付け部13及び13を備える。
【0028】
透光部5は、視認性を確保するため、少なくとも内部から外部への光の一部又は全部を透過すれば足りる。外部から内部への光を遮断する場合、保冷目的には適するものの、内部で毀損行為をする侵入者15にとっては、暗闇の中で、外部から見られていることを忘れて行為する可能性がある。そのため、本実施例では、透光部5は、外部から内部への光の透過を許容して、一定の光が内部に入るようにして視認性を担保し、さらに、侵入者15に、外部から視認可能であるという状況を冷静に把握させることにより、心理的な抑制効果を働かせるものとしている。
【0029】
なお、外部から内部に透光性を有する場合、従来のカゴ車用保冷容器よりも保冷効果が劣ることにもつながりうる。しかし、本発明に係るカゴ車用保冷容器は、通常、保冷処理がなされた場所に保管される。そのため、カゴ車用保冷容器は、一時的にのみ(例えば、保冷車への搬送など)、保冷効果を発揮すれば足りる。長時間の保冷機能は、不要である。カゴ車用保冷容器は、カゴ車の使用状況から検討すれば、内部への透光性が認められたとしても、十分に保冷容器として機能する。
【0030】
カゴ車用保冷容器1の各面において、枠体3以外の部分の大半は、透光部5とされている。すなわち、透光部5は、同一平面にない離れた複数の面に形成されている。このため、複数のカゴ車用保冷容器1を並置した場合、それらの保冷容器内の異常を一括して視認することができる。
【0031】
ここで、図2及び図3を参照して、透光性と保冷機能を両立する透光部5について説明する。図2は、カゴ車用保冷容器1における(a)透光部5を含む図、(b)(a)の拡大図である。図3は、透光部5を形成するシート(特許請求の範囲における「断熱シート」の一例)の断面の概略を示す図である。
【0032】
図2(a)は、カゴ車用保冷容器1の一面を示す。枠体3以外の部分は、外部から内部を視認できる透光部5から構成されている。また、図2(b)に拡大して示すように、透光部5は、平面的な網目状の構造をした緩衝材19を有する緩衝層20及び複数の円柱状の緩衝材を有する緩衝層22(緩衝層20及び/又は緩衝層22は、特許請求の範囲における「緩衝層」の一例)を内包する。これらの緩衝層20及び22により、従来の保冷容器において緩衝材としても機能していたアルミニウム層がなくとも、カゴ車用保冷容器1の内部からの物理的な衝撃を緩和することができる。
【0033】
図3を参照して、透光部5は、緩衝層20及び22の外側に断熱層23(特許請求の範囲における「断熱層」の一例)を有する。断熱層23は、空気を含むことにより熱伝導を阻害するものである。ここで、カゴ車用保冷容器1は、荷物11を運搬するものであり、流通過程において内部からの衝撃が当然に予想される。そのため、透光部5は、断熱層23の内側に緩衝層20及び22を有する。
【0034】
また、緩衝層20及び22並びに断熱層23は、透光性を有するべく、ポリエチレン(PE)やポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料で構成することが好ましい。このようにして構成された透光部5が不透光な枠体3を用いて縫製されることにより、保冷機能を保ちつつ直方体としての形状が維持される。
【0035】
図4は、図1のカゴ車用保冷容器の六面図であって、(a)正面図、(b)背面図、(c)右側面図、(d)左側面図、(e)平面図、(f)底面図である。正面27、背面29、右側面31、左側面33、天面35、底面37のいずれも、枠体3及び透光部5を有する。また、右側面31及び左側面33は、それぞれ取付部13及び13を有する。背面29は、取付部13及び13を有する。
【0036】
続いて、図5を参照して、カゴ車用保冷容器1の使用状態について説明する。図5は、図1のカゴ車用保冷容器の使用状態を示す斜視図であって、(a)正面を閉じた状態、(b)正面を開けた状態を示す図である。図5において、カゴ車用保冷容器1は、取付部13によりカゴ車39(特許請求の範囲における「カゴ車」の一例)に取り付けられている。正面部分が開閉可能であるため、カゴ車用保冷容器1をカゴ車39に取り付けたままでも荷物11の出し入れが容易である。
【0037】
なお、透光部5は、カゴ車用保冷容器1が水平面に置かれた状態で、水平面に平行な面に含まれる直線であって透光部を2回貫通する直線である透光直線が存在するように形成されていればよい。例えば、保冷容器の側面の一部が曲面であり、この曲面に透光部5が形成されるものであってもよい。
【0038】
また、緩衝層20及び22は、どちらか一方のみであってもよいし、それぞれ複数あってもよい。また、緩衝層20が緩衝層22よりも外側にあってもよい。さらに、外側からの衝撃をも緩和すべく、緩衝層23の外側にも緩衝層20及び/又は22があってもよい。
【0039】
さらに、緩衝層20及び22は、透光性を有する緩衝層であれば、その形態を問わない。例えば、緩衝層20は、網目構造の緩衝材を有する層ではなく透明板であってもよい。また、緩衝層22は、円柱以外の柱体を緩衝材として有するものであってもよい。さらに、平面的な緩衝材及び立体的な緩衝材を併せもつ緩衝層であってもよい。
【0040】
さらに、断熱層23は、1つ又は複数の空気層を含むものでもよいし、発泡性材料を含むものであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1・・・カゴ車用保冷容器、5・・・透光部、15・・・侵入者、17・・・管理者、19、21・・・緩衝材、20、22・・・緩衝層、23・・・断熱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱容器であって、
断熱層及び緩衝層を含む多層構造である透光部を備え、
前記断熱層及び前記緩衝層は、少なくとも前記緩衝層側から前記断熱層側への光の一部又は全部を常に透過させるものであり、
前記緩衝層は、前記断熱層よりも当該容器の内側に形成されており、
前記緩衝層は、前記断熱層への物理的な衝撃を緩和するものであり、
前記断熱層は、熱伝導を阻害するものである、断熱容器。
【請求項2】
前記透光部は、前記断熱層と前記緩衝層を有する断熱シートを、複数、不透光な部材を用いて縫製したものである、請求項1記載の断熱容器。
【請求項3】
前記透光部は、当該断熱容器の外部から内部への光の一部又は全部をも常に透過させるものであり、対向する側面に形成される、請求項1又は2記載の断熱容器。
【請求項4】
熱伝導を阻害する断熱層を有する断熱シートであって、
前記断熱層への物理的な衝撃を緩和する緩衝層を備え、
前記断熱層及び前記緩衝層は、少なくとも前記緩衝層側から前記断熱層側への光の一部又は全部を常に透過させる、断熱シート。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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