説明

断熱屋根用連結具及び断熱屋根

【課題】建物の外観を損なわずに建物を雷撃から保護することができる断熱屋根用連結具を提供する。
【解決手段】上側屋根材30と下側屋根材31との間を断熱空間32として形成するために、前記上側屋根材30と前記下側屋根材31とを離間させた状態で連結する断熱屋根用連結具Aに関する。前記下側屋根材31に取り付けられる導電性のサドル1と、前記上側屋根材30を係止するための導電性の吊子2と、前記サドル1と前記吊子2との間に介在する非伝熱性の断熱部材3と、前記サドル1と前記吊子2とを電気的に接続するための導電部材4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落雷から建物を保護し、雷電流を安全に地中に流すことができる断熱屋根用連結具及び断熱屋根に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の避雷設備は建築基準法、消防法、JISで設置基準や詳細仕様が決まっている。そのため、必要に応じて、避雷針や避雷導体などの雷撃保護設備で雷撃からの保護を行っている。最近では、JISも改正され(JIS A 4201 2003)、落雷保護の規定も変更になっている。
【0003】
このような雷撃保護設備は建物の屋根上に設置されるが(例えば、特許文献1参照)、屋根を形成する屋根材の表面に雷撃保護設備が設けられるために、建物の外観が低下するという問題があった。また、従来の雷撃保護設備は設置することが難しく、専門の業者が施工しなければならなかった。
【特許文献1】特開平10−261495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、建物の外観を損なわず、しかも屋根の施工業者が簡単に確実に施工可能であって、建物を雷撃から保護することができる断熱屋根用連結具及び断熱屋根を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る断熱屋根用連結具Aは、上側屋根材30と下側屋根材31とを離間させた状態で連結させて前記上側屋根材30と前記下側屋根材31との間を断熱空間32として形成するための断熱屋根用連結具Aであって、前記下側屋根材31に取り付けられる導電性のサドル1と、前記上側屋根材30を係止するための導電性の吊子2と、前記サドル1と前記吊子2との間に介在する非伝熱性の断熱部材3と、前記サドル1と前記吊子2とを電気的に接続するための導電部材4とを備えて成ることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項2に係る断熱屋根用連結具Aは、請求項1において、前記吊子2を前記サドル1に対して屋根勾配と略平行に移動自在に形成して成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項3に係る断熱屋根は、請求項1又は2に記載の断熱屋根用連結具Aの前記サドル1を前記下側屋根材31に取り付けると共に前記断熱屋根用連結具Aの前記吊子2を前記上側屋根材30に係止することによって、前記断熱屋根用連結具Aの前記吊子2と前記サドル1と前記導電部材4とで前記上側屋根材30と前記下側屋根材31とを電気的に接続して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、断熱屋根の上側屋根材を受雷部として利用することができ、別途避雷設備を設置する必要が無くなって、建物の外観が低下しないようにすることができるものであり、また、屋根全体を受雷部とすることができ、避雷性能を向上させることができるものであり、さらに、雷撃保護設備の専門の業者が施工しなくても、屋根の施工業者が屋根の形成と同時に施工することができ、簡単に確実な電撃保護の施工を容易に行うことができ、しかも部材点数の減少や施工工程の短縮によりコストダウンを図ることができるものである。加えて、吊子をサドルに対して屋根勾配と略平行に移動自在に形成した場合は、上側屋根材の熱伸縮による爆裂音やバックリング音や擦れ音などの異音を防止することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0010】
本発明の断熱屋根用連結具Aは、上側屋根材30と下側屋根材31との間を断熱空間32とする断熱性の高い断熱屋根を形成する際に、上側屋根材30と下側屋根材31とを離間させた状態で連結するために用いられるものである。このような断熱屋根としては二重折板屋根を例示することができ、この場合、上側屋根材30と下側屋根材31としては塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板などの導電性のある金属板をロール成形などで折り曲げて形成した折板を用いることができる。
【0011】
本発明の断熱屋根用連結具Aは、サドル1、吊子2、断熱部材3及び導電部材4を備えて形成されている。
【0012】
図2(a)(b)に示すように、サドル1は一対のサドル半体10、10をボルトなどの結合具11で結合して形成されるものである。サドル半体10はステンレス鋼板やめっき鋼板などの導電性のある金属板を折り曲げ加工して形成されるものであり、矩形板状の支持片12の上端に断面略半円弧状の保持部13を設けると共に支持板12の下端に載置片14を設けて形成されている。支持板12にはネジ孔44が形成されている。保持部13と載置片14とは共に支持板12の一方の表面よりも外側に突出している。また、一対のサドル半体10、10のうちの一方には馳締め係合部15が設けられている。馳締め係合部15は支持片12の下部に断面略つ字状に折り曲げ形成されており、保持部13や載置片14と同じ方向で支持板12の表面に突出して形成されている。
【0013】
図3に示すように、吊子2はステンレス鋼板やめっき鋼板などの導電性のある金属板を折り曲げ加工して形成されるものであり、矩形板状のスライド片16の下端に装着片17、17を突出して設けると共にスライド片16の上端に突出片18を略垂直に突出して設け、突出片18の先端からスライド片16側に向かって斜め下方に突出する係止片19を設けて形成されている。装着片17、突出片18及び係止片19は吊子2(スライド片16)の長手方向の全長にわたって設けられている。また、スライド片16の両方の表面には複数個の突起部20、20…をスライド片16の長手方向に並べて設けられている。また、装着片17の長手方向の両端部には脱落防止片21が突設されている。
【0014】
断熱部材3はサドル1や吊子2よりも熱が伝わりにくい非伝熱性を有するものであり、例えば、ABS樹脂などのプラスチックの成形品で形成することができる。この断熱部材3は外形が略小判状の被保持部22と、被保持部22の上面にその長手方向の全長にわたって突設された一対のガイド片23、23とを備えて形成されている。また、被保持部22にはその長手方向の両端面と上面とに開口するガイド溝24が形成されている。被保持部22の上面におけるガイド溝24の開口は一対のガイド片23、23の間でガイド片23の長手方向に沿って形成されている。
【0015】
導電部材4はアルミニウムや鉄や銅など導体で形成されるものであれば何でも良く、形状も線状や板状などの任意に形成することができる。例えば、導電部材4としては、両端部に接続金具25、25を設けた被覆導線などを用いることができる。
【0016】
そして、本発明の断熱屋根用連結具Aは次のようにして形成する。サドル1は対向配置した一対のサドル半体10、10を結合具11で結合して形成する。このとき、一対のサドル半体10、10は支持板12、12の内面(保持部13や載置片14が突出する面と反対側の面)同士を合わせるようにし、ネジ孔44に結合具11を螺着することにより結合することができる。また、上記のように結合したサドル半体10、10の間には断熱部材3を挟持して保持する。このとき、サドル半体10の保持部13の内側に断熱部材3の被保持部22を嵌め込むようにし、対向するサドル半体10、10の保持部13、13の間に被保持部22を介在させるようにする。従って、対向する保持部13、13の上端間には断熱部材3のガイド片23、23が介在するものである。
【0017】
上記のようにしてサドル1と断熱部材3とを一体化した後、この断熱部材3に吊子2を取り付ける。このとき、図4に示すように、吊子2の装着片17、17をガイド溝24に差し込むと共に吊子2のスライド片16を断熱部材3のガイド片23、23に位置させるようにするものであり、これにより、吊子2をスライド吊子としてサドル1及び断熱部材3に対して長手方向にスライド移動自在に取り付けることができる。また、ガイド溝24に装着片17を差し込んだ状態で装着片17の長手方向の両端の脱落防止片21を下方に向かって折り曲げる。これにより、脱落防止片21がガイド溝24の開口縁部に引っ掛かるようになって、装着片17がガイド溝24から抜けないようにすることができ、サドル1及び断熱部材3からの吊子2の脱落を防止することができる。
【0018】
上記のようにしてサドル1と断熱部材3及び吊子2とを一体化した後、導電部材4でサドル1と吊子2とを電気的に接続することによって、本発明の断熱屋根用連結具Aを形成することができる。ここで、導電部材4の一端の接続金具25はサドル1の支持板12に接続し、導電部材4の他端の接続金具25は吊子2の脱落防止片21に接続することができるが、接続金具25の接続位置は支持板12や脱落防止片21に特に限定されず、他の部分であってもよい。また、導電部材4は吊子2がその全長にわたってスライド移動できるように十分な長さと可撓性を有するものである。また、接続金具25の接続方法は溶接やビス止めなどの方法を採用することができる。
【0019】
本発明の断熱屋根用連結具Aはサドル1と吊子2との間に非伝熱性(断熱性)を有する断熱部材3を介在させてサドル1と吊子2とが直接接触しないので、サドル1と吊子2との熱伝導を遮断してほとんど無いようにすることができ、上側屋根材30と下側屋根材31の間にヒートブリッジが形成されないようにすることができるものであり、断熱性の高い断熱屋根を形成することができる。また、サドル1と吊子2とが直接接触しないので、断熱部材3としてプラスチックなどの非導電性の部材を用いた場合にはサドル1と吊子2の導電が断熱部材3により遮断されるが、本発明の断熱屋根用連結具Aではサドル1と吊子2とを導電部材4で電気的に接続するので、サドル1と吊子2の導電性を確保することができるものである。
【0020】
本発明の断熱屋根用連結具Aを用いて断熱屋根として二重折板屋根を形成するにあたっては以下のようにして行う。断熱屋根を形成する上側屋根材30及び下側屋根材31としては、図5に示すような折板49を用いることができる。この折板49は塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板などの金属板を折り曲げ加工して形成されるものであって、屋根の傾斜方向(流れ方向)に長尺に形成されるものである。また、折板49は断面略U字状に形成されており、平板状の谷部50と、その両側から斜め上方に向かって突出する連結山部51、51とを備えて形成されている。一方の連結山部51の上部は、谷部50と反対側に向かって突出する頂部片52と、頂部片52の端部から上方に向かって突出する断面略逆U字状の嵌合部53とから構成されている。また、他方の連結山部51の上部は、谷部50と反対側に向かって突出する頂部片52と、頂部片52の端部から上方に向かって突出する断面略逆L字状の被嵌合部54とから構成されている。そして、嵌合部53と被嵌合部54とを嵌合した後に馳締めすることにより、隣接する折板49、49の連結山部51、51同士を連結し、隣接する折板49、49を接続することができる。また、連結された連結山部51、51からなる山部55と谷部50とが交互に繰り返した折板屋根となる。
【0021】
そして、まず、梁や母屋などの屋根下地40の上にタイトフレーム41を取り付ける。屋根下地40はH型鋼などで形成することができ、タイトフレーム41は塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板などの金属板を折り曲げ成形などして形成することができ、いずれも電気導通性のある金属材料で形成されるものである。
【0022】
次に、複数枚の折板49、49…を下側屋根材31として屋根の勾配方向(傾斜方向)と直交する方向に並べながら、上記タイトフレーム41の上側から屋根下地40の上に載置する。また、上記の下側屋根材31は屋根の勾配方向に並ぶ複数本の屋根下地40、40…の間にわたるようにして架設する。ここで、タイトフレーム41の隣り合う山部65、65の間に下側屋根材31の谷部50が位置し、山部25の略半分の外面に沿って連結山部51が位置するようにして各下側屋根材31を配置する。また、山部25を挟んで隣接する下側屋根材31、31は、上記のように嵌合部53と被嵌合部54とを嵌合した後に馳締めすることにより、連結山部51、51同士を連結して接続するものであるが、馳締めの際に、タイトフレーム41の山部65に設けた固定吊子48を嵌合部53と被嵌合部54の間に挟んだ状態で馳締めする。このようにして、固定吊子48及びタイトフレーム41を介して複数の折板49(下側屋根材31)を屋根下地40に連結して固定することによって、二重折板屋根の下側の折板屋根を形成することができる。上記の固定吊子48は塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板などの金属板を折り曲げ成形などして形成することができ、電気導通性のある金属材料で形成されるものである。従って、下側屋根材31は直接あるいは固定吊子48を介してタイトフレーム41及び屋根下地40と電気的に接続される。この場合、屋根下地40、タイトフレーム41、固定吊子48、下側屋根材31の表面に塗膜が形成されていても、その塗膜は非常に薄いために絶縁物とはならない。
【0023】
上記のようにして下側の折板屋根を形成した後、下側の折板屋根の山部55の頂部に本発明の断熱屋根用連結具Aのサドル1を取り付ける。このとき、サドル1には断熱部材3が取り付けられているが、吊子2及び導電部材4は取り付けられていない。また、サドル1は下側の折板屋根の山部55の頂部に形成された馳締め部(嵌合部53と被嵌合部54の馳締め部分)47をサドル半体10、10で挟持して取り付けることができる。すなわち、頂部片52の上にサドル半体10の載置片14を載せながら、馳締め部47の両側にサドル半体10、10を配置すると共に一方のサドル半体10に設けた馳締め係合部15に馳締め部47を差し込んで係合し、馳締め部47の上側においてサドル半体10、10の支持片12、12を貫通するように結合具11を螺合して締め付けることにより、馳締め部47をサドル半体10、10で挟持し、山部55の頂部にサドル1を取り付けることができる。また、サドル半体10、10の支持片12、12の下部と、結合した嵌合部53及び被嵌合部54とをビスやボルトなどの固定具46で連結してサドル1を固定することができる。サドル1は、馳締め部47と馳締め係合部15との接触や支持板12と山部55の接触や固定具46により、下側屋根材31と電気的に接続される。この場合、サドル1や下側屋根材31の表面に塗膜が形成されていても、その塗膜は非常に薄いために絶縁物とはならない。
【0024】
上記のようにして下側の折板屋根に複数のサドル1、1…を取り付けた後、下側の折板屋根の上に断熱材56を配設する。断熱材56としてはロックウールやグラスウールなどの無機繊維体あるいはウレタンフォームやフェノールフォームなどの樹脂フォームを用いることができる。断熱材56は下側の折板屋根の上面全面にわたって敷き詰められる。また、下側の折板屋根に取り付けたサドル1はその保持部13よりも下側の部分が断熱材56で覆われた状態となり、保持部13及び断熱部材3は敷き詰めた断熱材56よりも上側に位置している。
【0025】
次に、一枚の折板49を上側屋根材30として断熱材56の上に載置する。このとき、上側屋根材30は下側屋根材31と同様に屋根の傾斜方向(流れ方向)を長尺方向として配置する。また、上側屋根材30の被嵌合部54は下側の折板屋根に取り付けた上記サドル1の側方に位置し、被嵌合部54の長手方向とガイド溝24の長手方向とガイド片23の長手方向とがほぼ平行な状態となる。
【0026】
次に、断熱材56に載置した上側屋根材30の被嵌合部54の下側に吊子2の係止片19を係止すると共にこの吊子2を上側屋根材30に近接して位置するサドル1の断熱部材3に差し込むことによって、サドル1と吊子2からなる断熱屋根用連結具Aに上側屋根材30を係止する。ここで、吊子2の長手方向の一方に形成した脱落防止片21は下側に向かって折り曲げられており、この脱落防止片21に導電部材4の一端の接続金具25が溶接等により接続されている。従って、吊子2は折り曲げていない脱落防止片21の方から断熱部材3のガイド溝24とガイド片23、23の間に差し込まれ、吊子2を断熱部材3に差し込んだ後、折り曲げていない方の脱落防止片21を下方に向かって折り曲げるようにする。この場合、上側屋根材30の表面に塗膜が形成されていても、その塗膜は非常に薄いために絶縁物とはならない。
【0027】
上記のようにしてサドル1に吊子2を取り付けた後、図1に示すように、吊子2に接続した導電部材4のもう一方の端部の接続金具25をサドル1に接続する。このとき、断熱材56は柔軟性があるため、断熱材56の押し下げてサドル1の支持片12を露出させ、この支持片12の外面に導電部材4の接続金具25をビス止め等で取り付けるようにする。この後、断熱材56の押し下げた部分を元に戻してサドル1の支持片12を覆うようにする。尚、図1では断熱材56を図示省略している。
【0028】
次に、上記とは別の他の上側屋根材30をさらに断熱材56の上に載置し、上記吊子2に係止した上側屋根材30と隣接させる。そして、上記吊子2に係止した上側屋根材30の被嵌合部54及び吊子2の突出片18及び係止片19を、新たに載置した上側屋根材30の嵌合部53の内側に収納して嵌合し、この後に嵌合部53と被嵌合部54とを馳締めすることにより、隣接する上側屋根材30、30の連結山部51、51同士を連結して接続する。
【0029】
このようにしてサドル1に対する吊子2の取り付けと、断熱材56への上側屋根材30の敷設とを交互に行うことによって、複数枚の上側屋根材30、30…が接続された上側の折板屋根を形成することができる。そして、上側の折板屋根と下側の折板屋根の間は断熱材56が充填された断熱空間32として形成され、断熱性の高い二重折板屋根を形成することができる。また、上側の折板屋根は断熱屋根用連結具Aで下側の折板屋根に連結されて支持されるものである。
【0030】
本発明の断熱屋根では、上側屋根材30、吊子2、導電部材4、サドル1、下側屋根材31、タイトフレーム41及び屋根下地40の全てが電気的に接続されている。また、屋根下地40は柱などの建物躯体と電気的に接続されており、さらに建物躯体は基礎躯体等を介して大地に接地されている。従って、上側屋根材30に落雷があった場合は上記の各部材を通じて大地にまで雷電流を流すことができ、断熱屋根を利用して避雷することができるものである。また、避雷針等の避雷設備よりも大きな面積の断熱屋根全体が受雷部となって、避雷性能を向上させることができる。さらに、断熱屋根を形成するための断熱屋根用連結具Aや工程を利用して屋根の施工業者であっても容易に避雷構造を形成することができ、部材点数の減少や施工工程の短縮によりコストダウンを図ることができる。
【0031】
本発明の断熱屋根では、上側屋根材30が屋根の傾斜方向に伸縮した場合に、それに伴って、吊子2をサドル1に対して屋根の傾斜方向(流れ長さ方向)にスライド移動させることができる。従って、上側屋根材30はその伸縮による動きが拘束されないものであり、このため、外気温や太陽の輻射熱、風雨などの外的熱要因により上側屋根材30が熱伸縮しても、上側屋根材30自体に内部応力が蓄積したり、内部応力が剛性の弱い上側屋根材の斜辺や緊結部分などに集中したりすることがなくなって、ズレや変形が生じにくくなり、この結果、異音の発生を防止することができるものである。
【0032】
図7、8に他の実施の形態を示す。この断熱屋根用連結具Aでは、導電部材4の一端が吊子2のスライド片16の側面に溶接やビス止めなどで接続されている。また、図8(a)に示すように、導電部材4の他端には接続板60が接続されている。接続板60はアルミニウムや鉄や銅などの導体で矩形板状に形成されるものであり、その一方の短辺部に上記の導電部材4が接続され、他方の短辺部には略半円状の切欠部61が形成されている。切欠部61の周囲には緩み止め部62が切り起こし等により形成されている。この緩み止め部62は結合具11が緩むのを防止するものである。尚、図8(b)に示すように、緩み止め部62が切り起こしにより形成する代わりに、結合具11の緩み止め用のワッシャ63を切欠部61の周囲に設けても良い。その他のサドル1や断熱部材3などの構成は上記と同様である。
【0033】
この断熱屋根用連結具Aを用いて断熱屋根として二重折板屋根を形成するにあたっては以下のようにして行う。まず、上記と同様にして、下側の折板屋根31を形成した後、サドル1を取り付け、さらに断熱材56を配設する。次に、上記と同様にして、一枚の折板49を上側屋根材30として断熱材56の上に載置する。次に、上記と同様にして、断熱材56に載置した上側屋根材30の被嵌合部54の下側に吊子2の係止片19を係止すると共にこの吊子2を上側屋根材30に近接して位置するサドル1の断熱部材3に差し込むことによって、サドル1と吊子2からなる断熱屋根用連結具Aに上側屋根材30を係止する。このようにしてサドル1に吊子2を取り付けた後、図7に示すように、吊子2に接続している導電部材4の一端に設けた接続板60をサドル1に電気的に接続する。この場合、接続板60を一対のサドル半体10、10の支持片12、12の間に差し込み、切欠部61を結合具11に横から挿入するようにし、結合具11の締め付けにより接続板60を支持片12、12の間で挟持するようにする。この後、上記と同様にして、別の上側屋根材30をさらに断熱材56の上に載置していく。そして、サドル1に対する吊子2及び接続板60の取り付けと、断熱材56への上側屋根材30の敷設とを交互に行うことによって、複数枚の上側屋根材30、30…が接続された上側の折板屋根を形成し、上記と同様の二重折板屋根を形成することができる。
【0034】
この実施の形態では、接続板60は施工前に予め吊子2に導電部材4で接続されており、また、接続板60を支持片12、12の間に差し込んだ後、結合具11を締め付けるだけで、サドル1と吊子2とを接続板60と導電部材4とで電気的に接続することができ、屋根の施工業者であっても容易に施工することができる。尚、接続板60は支持片12、12の間に差し込まずに、図9に示すように、支持板12の外面に密着させて固定しても良い。
【0035】
上記では、サドル1に対して吊子2がスライド移動するものについて説明したが、本発明は、これに限らず、図10に示すように、サドル1に対して吊子2が固定具64により固定されて移動しない場合でも、導電部材4を用いてサドル1と吊子2とを電気的に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】(a)(b)は同上のサドルと断熱部材とを示す斜視図である。
【図3】同上の吊子を示す斜視図である。
【図4】同上のサドルと吊子を示す斜視図である。
【図5】同上の上側屋根材及び下側屋根材を示す斜視図である。
【図6】同上の断面図である。
【図7】同上の他の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図8】同上の(a)は他の吊子の一例を示す斜視図、(b)は他の接続板の一例を示す斜視図である。
【図9】同上の他の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図10】同上の他の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
A 断熱屋根用連結具
1 サドル
2 吊子
3 断熱部材
4 導電部材
30 上側屋根材
31 下側屋根材
32 断熱空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側屋根材と下側屋根材を離間させた状態で連結させて前記上側屋根材と前記下側屋根材との間を断熱空間として形成するための断熱屋根用連結具であって、前記下側屋根材に取り付けられる導電性のサドルと、前記上側屋根材を係止するための導電性の吊子と、前記サドルと前記吊子との間に介在する非伝熱性の断熱部材と、前記サドルと前記吊子とを電気的に接続するための導電部材とを備えて成ることを特徴とする断熱屋根用連結具。
【請求項2】
前記吊子を前記サドルに対して屋根勾配と略平行に移動自在に形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の断熱屋根用連結具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の断熱屋根用連結具の前記サドルを前記下側屋根材に取り付けると共に前記断熱屋根用連結具の前記吊子を前記上側屋根材に係止することによって、前記断熱屋根用連結具の前記吊子と前記サドルと前記導電部材とで前記上側屋根材と前記下側屋根材とを電気的に接続して成ることを特徴とする断熱屋根。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−174142(P2009−174142A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11779(P2008−11779)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】