説明

断熱層のための組成物

断熱層を形成するための硬化性コーティング組成物であって、該組成物は、(a)湿潤ゾルゲルを乾燥することによって得られる材料でなる高多孔性粒子であり、少なくとも80%の孔隙率および5μm〜4.0mmの範囲の粒子サイズを有する粒子;および(b)膜形成性重合体を含む膜形成性樹脂システムを含む。この粒子(a)は、樹脂システム(b)に分散され、そして該樹脂システム(b)は、約1,000〜約4,000の範囲の平均分子量を有する少なくとも1つの安定化剤を含み、該安定化剤は、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリC−Cアルコキシ化されたC12−C18飽和または不飽和脂肪族アルコール、ポリC−Cアルコキシ化された水添または部分水添ヒマシ油、ポリC−Cアルコキシ化された水添または部分水添ダイズ油、ポリジメチルシロキサンC−Cアルコキシラート、およびC12−C18飽和または不飽和脂肪酸のソルビタンエステルからなる群より選択される少なくとも1つのメンバーである。この粒子(a)の量は、該組成物の質量を基準として2〜6質量%の範囲であり、そして該安定化剤の量は、高多孔性粒子の質量を基準として約50質量%〜約90質量%の範囲である。本発明の組成物は、高い保存安定性を有し、そして優れた断熱値を有するコーティングを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年11月12日に提出された米国仮出願60/519,400についての優先権を主張し、そしてそれは参考文献として本明細書に援用される。
【0002】
本発明は断熱材に関し、より明確には、基材に断熱層を形成するためのコーティング組成物、このような断熱層を形成するための方法、およびこのような組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
意図しない熱移動は、消費者によるおよび工業的設定によるエネルギー使用において非効率の原因となり、財政上のコストを伴う。このような望まれない熱移動の例は、太陽輻射熱吸収に由来する建築建造物による熱取得;不十分に断熱されたパイプおよびその他の構造物からの熱損失などがある。長期間にわたる熱移動は、熱が移動される材料の劣化の原因となり得る。意図しない熱移動のもう1つの影響は、断熱されていない装置または不十分に断熱された装置に接触することによって引き起こされる火傷または凍傷による労働者の生産性の損失である。少なくとも、職場における熱ストレスおよび寒冷ストレスは、労働者の生産性を減少させる。
【0004】
意図しない熱移動を軽減する方法は、「断熱材」の範疇において公知であり、そして断熱材材料の固体部分を構成する組成物によって一般的に同定される。例えば、ポリウレタンフォーム、ガラス繊維詰め綿、岩綿、ばら詰めバーミキュライトまたはパーライト、ブローンインセルロース(blown-in cellulose)、ポリスチレンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、アクリルコーティング、セラミック粒子またはミクロスフェアを含むコーティングなどが挙げられる。
【0005】
上記の各々の断熱方法には、以下の問題の1またはそれ以上がある:設置後、塵、湿気、カビ、および白カビ(mildew)の浸入による断熱特性の損失;これらの材料が金属表面に使用される場合、断熱材の下の湿気の蓄積、特に断熱材と基材との間の境界面に生じる温度差に起因する結露による腐食;および不十分な断熱特性、特に表面コーティングの場合の不十分な断熱特性。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、薄層またはコーティングの形態の断熱材を提供することであり、それは、低い熱伝導率ならびに基材に対する優れた付着性および均一な付着性を示すことによって特徴付けられる保護層であり、したがって、腐食に対して金属基材を保護し、そしてカビおよび白カビからすべての基材を保護する層である。この層は、良好な貯蔵安定性によって特徴付けられる液状のコーティング組成物の塗布により形成される。本発明者の研究は、本発明のコーティング組成物という結果となり、該組成物は、上述の目的を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコーティング組成物は、湿潤ゾルゲルを乾燥することによって得られる材料でなる高多孔性粒子を含む。このような材料は、限定されないが、エアロゲルおよびキセロゲルとして公知の材料が挙げられる。その従来の意味では、用語「エアロゲル」は、臨界温度より高い温度および臨界圧力より高い圧力で湿潤ゾルゲルを乾燥することによって得られる材料を説明するために用いられる。このような条件下では、ゾルゲルからゲル液状物(例えば水)の除去により、ゲルの構造を破損することなく多孔性構造となり、高い孔隙率が得られる。伝統的には、超臨界的な条件より低い条件で乾燥することによって得られる生産物は、「キセロゲル」として公知である。それは、より低い孔隙率を有し、細孔構造の少なくともいくつかは乾燥工程の間に破損されている。超臨界的な条件下での乾燥工程は、非常にエネルギー集約的であり、エネルギーコストがかかるので、エアロゲルの特性とほぼ同じのキセロゲルを製造しようとする試みがなされている。そのようなキセロゲルは、本発明の組成物における使用のために適している。例えば、米国特許第5,565,142号は、「超臨界圧力より低い真空で乾燥されるが、典型的に超臨界圧力で乾燥されるエアロゲルの特性を有する非常に多孔性のキセロゲル。これは、乾燥の間に、細孔における流体メニスカスの接触角を変化させるために、湿潤ゲルの内部の細孔表面と有機物質とを反応することによって行われる。」と記載している。
【0008】
シリカエアロゲルは、最初に広く研究されたエアロゲルであった。しかし、エアロゲルおよびキセロゲルは、広い範囲の化学的組成で調製され得る。他の無機エアロゲルは、有機重合体から調製されるエアロゲルと同様に、本発明において用いられ得、時には「炭素エアロゲル」と称される。無機キセロゲルおよび有機キセロゲルは、エアロゲルに類似の特性を有する場合には、本発明の組成物のために適している。
【0009】
エアロゲルおよびキセロゲルはまた、それらの特性を変えるために表面処理され得る。例えば、シリカエアロゲルは、表面の−OH基を−OR基(ここで、Rは脂肪族基である)に変えることによって、より小さい親水性にされ得る。米国特許第6,806,299号(その内容の全体は、参考文献として本明細書に援用される)は、疎水性有機エアロゲルの調製を記載している。これらの化学的に改変されたエアロゲルもまた、エアロゲルの特性と類似の特性を有する化学的に改変されたキセロゲルと同様に、本発明の組成物における使用のために適している。
【0010】
エアロゲルが優れた断熱特性を有することは公知であり、そしてエアロゲルの孔隙率および細孔構造とほぼ同じ孔隙率および細孔構造を有するキセロゲルもまた、良好な断熱材料である。断熱材としての公知の使用としては、エアロゲル粒子は、必要に応じてバインダーの補助剤として、パネル内に圧縮されるか、または密閉容器もしくは柔軟性のある袋に詰め込まれる。もう1つの使用として、米国特許公開2003−0215640号は、「断熱材ベース層(疎水性エアロゲル粒子と水溶性バインダーとを含む)および熱反射最上層(保護用バインダーと赤外線反射剤とを含む)を含む耐熱性のエアロゲル断熱材複合材料」を記載している。断熱材層は、「好ましくは発泡剤を含み」そして「所望の量の機械的強度を達成するために必要とされるのであれば、少量の水溶性バインダーを用いることが望ましい」と記載されている。
【0011】
米国特許公開2004−0077738A1号は、「水溶性バインダー、疎水性エアロゲル粒子、および中空の非多孔性粒子を含むエアロゲル中空粒子バインダー組成物、ならびに該エアロゲル中空粒子バインダー組成物を含む断熱材複合材料、そして該エアロゲル中空粒子バインダー組成物および断熱材複合材料を調製する方法(sic)」を記載している。組成物は、「好ましくは発泡剤を含み」そして「所望の量の機械的強度を達成するために必要とされるのであれば、少量の水溶性バインダーを用いることが望ましい」と記載されている。
【0012】
本発明者らによって行われた研究は、本特許出願の主題を形成するが、その以前においては、エアロゲル粒子およびキセロゲル粒子は、基材にしっかりと付着される薄層またはコーティングに埋め込まれる主要な断熱剤として上手く用いられず、良好な貯蔵安定性を有しそして保存中に過度に粘度が高くならない膜形成液状組成物を塗布することによって、薄層またはコーティングが形成されていた。さらに、本発明において、エアロゲル粒子およびキセロゲル粒子の断熱特性は、コーティング組成物のその他の成分によって低下しない。例えば、粒子の繊細な細孔構造の損傷および/または細孔への浸入および飽和により引き起こされる結果として低下しない。また、本発明の組成物から形成されるコーティング中のエアロゲル粒子およびキセロゲル粒子は、コーティングの固有の物理的特性によって、環境条件により引き起こされる損傷および崩壊から保護される。
【0013】
本発明の第1の目的は、コーティング組成物を提供することであり、該コーティング組成物は、断熱剤としてゾルゲルを乾燥することによって得られる材料でなる高多孔性粒子を含み、そして該コーティング組成物は、例えば、工業用および製造用の適用において見られるような厳しい使用環境においてさえ、耐えられる構造上の完全性および性能完全性を有するコーティングを形成する。本発明の断熱層は、湿気、塵、白カビ、および昆虫を浸入させない。これらの湿気、塵、白カビ、および昆虫は、従来の断熱材が天候条件および環境条件に曝される場所に用いられる場合、該断熱材に断熱特性の重大な損失を引き起こす。本発明の断熱層はまた、損傷または圧縮されることなく重大な物理的な衝撃に耐え得る。この物理的な衝撃は、塊状の断熱材材料における破損の他の一般的な原因である。
【0014】
本発明のもう1つの目的は、本発明の第1の目的で述べられた特徴を有することに加えて、難燃性の断熱層を提供することである。
【0015】
さらに、本発明のもう1つの目的は、上記の本発明の目的のいずれかに記載された特徴を有することに加えて、腐食に対して基材を保護する断熱層を提供することである。
【0016】
さらに、本発明の目的は、上記の本発明の目的のいずれかに記載された特徴を有することに加えて、カビおよび白カビに対して基材を保護する断熱層を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の硬化性コーティング組成物は、膜形成性重合体を含む膜形成性樹脂システムに、以下で定義される安定化剤の存在で分散された高多孔性粒子で形成される。この粒子は、湿潤ゾルゲルを乾燥することによって得られる材料でなる粒子であり、そして少なくとも80%の孔隙率および5μm〜4.0mmの範囲の粒子サイズを有する。
【0018】
(i)高多孔性粒子
組成物に用いられる高多孔性粒子は、ゾルゲルを乾燥することによって得られる材料でなり、そして少なくとも80%の孔隙率および5μm〜4.0mmの範囲の粒子サイズを有する。このようなゾルゲル由来の材料の化学的性質および製造は、化学の論文において、よく文書化され、それは、ゾルゲルの乾燥およびその表面特性の改変のための種々の方法を開示している。
【0019】
本発明の組成物のために適している高多孔性粒子は、制限されないが、エアロゲル粒子(これは、湿潤ゾルゲルが超臨界圧力下で乾燥される工程によって調製される)およびキセロゲル粒子(これは、湿潤ゾルゲルが超臨界圧力より低い圧力で乾燥される工程によって調製される)を含む。無定形シリカエアロゲル粒子または無定形シリカキセロゲル粒子が、炭素エアロゲル粒子または炭素キセロゲル粒子と同様に用いられ得る。
【0020】
本発明のために適している高多孔性粒子のサイズは、5μm〜約4.0mmの範囲である。本発明の1つの実施態様においては、超微細粒子が用いられ、それは、5μm〜1,200μm、好ましくは5μm〜500μm、そしてより好ましくは5μm〜15μmの範囲の粒子サイズを有する。本発明のもう1つの実施態様においては、約0.5mm〜約4mmの範囲のサイズを有する粒子が用いられる。
【0021】
本発明に用いられる高多孔性粒子は、少なくとも80%、そして好ましくは少なくとも90%の孔隙率を有する。この孔隙率は、粒子の体積のうち空気によって占められる割合を示す値である。
【0022】
粒子の形状は特に限定されず、滑らかな形状および対称な形状と同様に、不規則な形状を含む。
【0023】
高多孔性粒子は、典型的に50μmを超えない孔サイズの細孔を有する。本発明の実施態様においては、粒子は、約20μm細孔サイズによって特徴付けられる。
【0024】
高い孔隙率および小さな粒子サイズを有するおかげで、本発明に用いるために適している粒子は、例えば、600〜800m/gの範囲の大きな表面積を有する。
【0025】
高多孔性粒子が作られるエアロゲルまたはキセロゲルは、疎水性または親水性であり得る。本発明の1つの実施態様においては、エアロゲルまたはキセロゲルは、非金属酸化物エアロゲルまたは非金属酸化物キセロゲルであり、その末端の−OH基の水素原子が非極性基で置換され、そして非極性基は、エアロゲルまたはキセロゲルに疎水性を付与する。もう1つの好ましい実施態様においては、エアロゲルまたはキセロゲルは、有機化合物の炭素エアロゲルまたは炭素キセロゲルであり、その末端の−CH基の水素原子は、非極性基で置換され、そして非極性基は、エアロゲルまたはキセロゲルに疎水性を付与する。
【0026】
本発明に用いるために適しているエアロゲルおよびキセロゲルは、当業者に公知の方法によって調製され得、そして業者から入手し得る。
【0027】
(ii)樹脂システム
本発明のコーティング組成物に適している樹脂システムは、水性システムまたは溶剤ベースシステムであり得、そして少なくとも1つの膜形成性重合体を含む。適している膜形成性重合体の化学的性質および製造方法は公知であり、そして重合体は、多数の製造業者から入手し得る。適している膜形成性重合体は、制限されないが、例えば、アクリル重合体、アクリルスチレン共重合体、ビニルアクリル共重合体、エポキシアクリル共重合体、アクリル酢酸ビニル共重合体、アルキド、スチレンブタジエン共重合体、酢酸セルロース重合体、およびポリエステル重合体が挙げられる。重合体の選択は、特定の適用という観点から、当業者によって行われ得る。
【0028】
本発明の1つの局面においては、樹脂システムは、アクリル共重合体、アクリルスチレン共重合体、ビニルアクリル共重合体、エポキシアクリル共重合体、アクリル酢酸ビニル共重合体、スチレンブタジエン共重合体、および酢酸セルロース重合体からなる群より選択される膜形成性重合体の水性エマルジョンである。
【0029】
本発明のもう1つの局面においては、樹脂システムは溶剤ベースである。適している溶剤は、制限されないが、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール、酢酸エステル、グリコールエーテル、およびグリコールエーテルエステルが挙げられる。特定の例は、ヘキサン、トルエン、キシレン、イソプロパノール、酢酸エチル、およびジエチレングリコールモノエチルエーテルである。適している溶剤ベースシステムの選択は、特定の適用という観点から、当業者によって行われ得る。
【0030】
(iii)安定化剤
本発明の組成物に分散される粒子が、非常に高い孔隙率およびそれに相当する低い密度を有する場合には、分散液におけるそれらの最大負荷レベルは、非常に低い。典型的には、分散液の固形量を基準として0.1〜0.5質量%を超える分散量で粒子を取り入れることは困難である。特に、このような粒子は、せん断に敏感なので、高速のせん断速度での混合は、それらの構造に傷を付けるおそれがある。さらに、ゾルゲルの乾燥から誘導されるこれらの粒子の多く(特にシリカ)はチキソトロピー性を有する。そのため、分散液の固形量を基準として1質量%で負荷された分散液は、該分散液の粘度が約25,000センチポイズに上がることがあり、これは、塗布するのに適していない。
【0031】
上記問題は、本発明の組成物においては安定化剤の使用によって軽減され、安定化剤は、高多孔性粒子の混合前に組成物に添加される。安定化剤は、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリC−Cアルコキシ化されたC12−C18飽和または不飽和脂肪族アルコール、ポリC−Cアルコキシ化された水添または部分水添ヒマシ油、ポリC−Cアルコキシ化された水添または部分水添ダイズ油、ポリジメチルシロキサンC−Cアルコキシラート、およびC12−C18飽和または不飽和脂肪酸のソルビタンエステルからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0032】
上記リストにおける安定化剤の第1の群、エチレンオキサイド(EO)−プロピレンオキサイド(PO)ブロック共重合体は、POブロックの周囲に2つの同じ鎖長のEOブロックを有する対称の共重合体である。共重合体におけるEO対POの比は多様であり得る。このような共重合体は、例えば、EO13−PO30−EO13構造を有する。
【0033】
本発明における使用に適している安定化剤は、約1,000〜約4,000、好ましくは約2,000〜3,000の範囲の平均分子量を有する。
【0034】
安定化剤は、高多孔性粒子の質量を基準として、合計量で約50質量%〜90質量%、好ましくは60%〜80%、そしてより好ましくは65%〜75%の範囲で用いられる。
【0035】
本発明における使用に適している安定化剤の化学的性質および製造は公知であり、そして適している種々の安定化剤は、製造業者から入手し得る。これらの市販品は、例えば、以下の表に列挙される。
【0036】
【表1】

【0037】
上記安定剤がコーティング組成物を安定させるのを助ける機作については、いずれの理論にも束縛されないが、本発明者らは、安定化剤の作用が、それらの分子中の脂肪族長鎖の存在およびそれらの分子量範囲に関係し得るという可能性に気付いている。
【0038】
(iv)その他の添加剤
組成物は、組成物のコーティングおよび「層平面」特性を改善するために、当業者に公知のその他の添加剤を、当業者によって決定され得るように含み得る。それは、これらの添加剤には、界面活性剤;平滑化剤;粘稠化剤のようなレオロジー調節剤;泡止め剤または消泡剤;凝集剤;硬化剤(組成物の樹脂が自己硬化しない場合);および増量剤が挙げられるが、特に制限されない。
【0039】
組成物は、必要に応じて、白色顔料を含み得る。もし、二酸化チタン(TiO)(これは、一般的な白色顔料である)が本発明の組成物に用いられると、それは、組成物の粉吹きを防止するために、ルチル形態でなければならない。本発明の実施態様においては、コーティング組成物は、組成物の質量を基準として5〜15質量%、好ましくは10〜12質量%の量のルチルを含む。
【0040】
コーティング組成物は、1またはそれ以上の難燃化剤を、当業者によって選択され得るように含み得る。例えば、難燃化剤には、重合体グレードのモンモリロナイト粘土またはアルミノケイ酸塩、塩素化されたリン酸エステル、およびブロモアリールエーテル/リン酸塩が挙げられるが、特に制限されない。
【0041】
コーティング組成物はまた、1またはそれ以上の殺真菌薬、殺白カビ剤(mildewcide)、または殺生物剤(biocide)を、当業者によって選択され得るように含み得る。例えば、殺真菌薬、殺白カビ剤、および殺生物剤には、4,4−ジメチルオキサゾリジン、3,4,4−トリメチルオキサゾリジン、改変されたメタホウ酸バリウム、オルトフェニルフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、およびデヒドロ酢酸が挙げられるが、特に制限されない。
【0042】
コーティング組成物はまた、1またはそれ以上の耐食剤を、当業者によって選択され得るように含み得る。例えば、耐食剤には、メルカプトベンゾチアゾールおよびその塩、ならびに疎水基を有するベンゾチアゾール誘導体が挙げられるが、特に制限されない。
【0043】
さらに、これらの添加剤の例は、National Paint & Coatings Association, 1500 Rhode Island Avenue, N.W., Washington, D.C. 20005によって出版されたRaw Materials Indexに見られ得、そしてそこから選択され得る。その全体の記載は、参考文献として本明細書に援用される。
【0044】
(iv)組成物の調製
本発明によれば、高多孔性粒子が樹脂システムに添加されること、および低いせん断条件下で穏やかに混合されることが不可欠であり、この高多孔性粒子は、組成物のすべてのその他の成分が、すでにより高速でおよび中程度から高いせん断速度で混合された後に添加される。最も好ましい方法としては、高多孔性粒子は、きわめて低いせん断条件下で、安定化剤(および必要に応じて、均一なペーストを形成するためにごく少量の水)とともに別の容器で混合される。一度、均一なペーストが得られると、それは、残りの成分の混合物に、撹拌しながらゆっくり加えられ、該撹拌は、きわめて低いせん断力によって特徴付けられる。
【0045】
本発明のいくつかの実施態様においては、高多孔性粒子と安定化剤との独立した予備混合を省略すること、および高多孔性粒子を、組成物のすべてのその他の成分の予備混合物(安定化剤を含む)に、ゆっくりと添加することによって時間節約が成し遂げられる。例えば、多量の安定化剤が組成物に用いられる場合、この簡単な方法が用いられ得る。
【0046】
用いられる方法に関係なく、非常に微細な高多孔性粒子の混合は、密閉容器で行われるべきである。なぜなら、粒子は毛羽のような粉末を形成し、大気中に飛散する傾向にあり、作業者に健康障害を引き起こし、そして高価な材料を無駄にすることによってコストを上げるからである。
【0047】
任意の白色顔料がコーティング組成物に用いられる場合、顔料は、所望の粒子サイズに摩砕され、そして高多孔性粒子が添加される前に樹脂システムに混合される。
【0048】
本発明は、コーティング組成物に、該組成物から得られるコーティングに良好な断熱特性を付与するのに十分な量の高多孔性粒子を混合する方法、さらに組成物の保存中に過度の粘稠化を防止するための方法を提供する。
【0049】
本発明の組成物は、約12,000センチポイズを超えない、好ましくは約10,000センチポイズを超えないブルックフィールド(Brookfield)粘度を有する。したがって、この組成物は、スプレーおよびその他従来のコーティング組成物と同様の方式で扱われ得る。
【0050】
本発明の組成物は、優れた保存安定性(3ヶ月間の保存による経時変化で10%未満の粘度増加を示す)を有する。組成物は、従来の方法によって、例えば、ブラシ、ローラー、またはスプレーによって基材に塗布され得る。組成物は、基材に直接塗布され得るか、または基材に最初に塗布された従来のプライマーコートの上に塗布され得る。従来のオーバーコート層は、必要に応じて、本発明の組成物の層の上に塗布され得る。
【0051】
本発明の組成物は、種々の幅広い基材を断熱するために用いられ得る。その例には、制限されないが、屋根、天井、壁、容器、タンク、パイプ、トラック、ボート、伝馬船、および船が挙げられる。
【0052】
以下の実施例は、さらに本発明の局面を説明する。実施例が、本発明を制限するために挙げられていないこと、および種々の改変が、本発明の本質的な特徴および基本的な概念を改変することなく、当業者によってなされ得ることを理解されるべきである。他に示さない限り、実施例およびその他明細書中のすべての部、パーセント、比などは、質量を基準とする。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
透明なコーティング組成物を、以下の表に示される成分から調製した。
【0054】
【表2】

【0055】
成分1および2を、カウルスミキサー(Cowles mixer)で5分間混合した。次いで、成分3、4、および5を添加し、そして5分間混合し、次いでそこに成分6〜12を添加する一方で、均一な分散が得られるまで混合した。最後の工程で、シリカエアロゲル粒子(成分13)をゆっくり添加し、そしてカバーをかけて、500rpm/hrを超えない低速で混合した。透明な液状のコーティング組成物を得た。
【0056】
この組成物から調製された0.048インチの厚みを有するコーティングの断熱特性を、ASTM法のASTMC−518によって測定した。以下に示される結果は、コーティングが顕著な断熱特性を有することを示す。
【0057】
熱伝導率:0.058Btu/hr ft °F
R値=.048/(12×.058)=0.069hr ft2 °F/Btu
mean=170°F
【0058】
(実施例2)
白色コーティング組成物を、以下の表に示される成分から調製した。
【0059】
【表3】

【0060】
成分1〜4を、10分間低速で、ボルテックスミキサー(vortex mixer)を用いて混合した。次いで、成分5(TiOのルチル形態の粉末)を、ボルテックスミキサーの中にゆっくりふるいにかけて入れた。混合物にカバーをかけ、そして粘稠度ヘグマン(Hegman)6となるまで高速で分散させた。混合速度を弱め、そして成分6〜13を、均一な分散液が得られるまで連続して混合しながら添加した。最後の工程で、シリカエアロゲル粒子(成分14)をゆっくり添加し、カバーをかけて20分間、500rpm/hrを超えない低速で混合した。白色液状コーティング組成物を得た(粘度=3,600〜4,400cps(スピンドル3@20rpm))。
【0061】
この組成物から調製された0.058インチの厚みを有するコーティングの断熱特性を、ASTM法のASTMC−518によって測定した。以下に示される結果は、コーティングが顕著な断熱特性を有することを示す。
【0062】
熱伝導率:0.187Btu/hr ft °F
R値=.058/(12×.187)=0.026hr ft2 °F/Btu
mean=180°F
【0063】
本発明のその他の実施態様は、本明細書の考察および本明細書に開示されている本発明の実施から当業者に明らかである。本明細書および実施例は、単なる例示であると考えられ、本発明の真の範囲および意図は、後述の請求の範囲によって示されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱層を形成するための硬化性コーティング組成物であって、該組成物が、
(a)湿潤ゾルゲルを乾燥することによって得られる材料でなる高多孔性粒子であり、少なくとも80%の孔隙率および5μm〜4.0mmの範囲の粒子サイズを有する粒子;および
(b)膜形成性重合体を含む膜形成性樹脂システムを含み、
該粒子(a)が該樹脂システム(b)に分散され、そして該樹脂システム(b)が、約1,000〜約4,000の範囲の平均分子量を有する少なくとも1つの安定化剤を含み、該安定化剤が、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリC−Cアルコキシ化されたC12−C18飽和または不飽和脂肪族アルコール、ポリC−Cアルコキシ化された水添または部分水添ヒマシ油、ポリC−Cアルコキシ化された水添または部分水添ダイズ油、ポリジメチルシロキサンC−Cアルコキシラート、およびC12−C18飽和または不飽和脂肪酸のソルビタンエステルからなる群より選択される少なくとも1つのメンバーであり、
該粒子(a)の量が、該組成物の質量を基準として2〜6質量%の範囲であり、そして該安定化剤の量が、該高多孔性粒子の質量を基準として約50質量%〜約90質量%の範囲である、組成物。
【請求項2】
前記粒子が、エアロゲル粒子およびキセロゲル粒子からなる群より選択される少なくとも1つのメンバーであり、該エアロゲル粒子が、前記湿潤ゾルゲルを超臨界圧力下で乾燥させる方法によって調製され、そして該キセロゲル粒子が、前記湿潤ゾルゲルを超臨界圧力より低い圧力で乾燥させる方法によって調製される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記粒子が、5μm〜15μmの範囲の粒子サイズを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記粒子が、5μm〜500μmの範囲の粒子サイズを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記粒子が、5μm〜1,200μmの範囲の粒子サイズを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記粒子が、約0.5mm〜約4.0mmの範囲の粒子サイズを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記粒子が、少なくとも90%の孔隙率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記粒子が、無定形シリカエアロゲル粒子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記粒子が、無定形シリカキセロゲル粒子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記粒子が、炭素エアロゲル粒子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記粒子が、炭素キセロゲル粒子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記樹脂システムが、水溶性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記粒子が、疎水性である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記樹脂システムが、溶剤ベースである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記粒子が、親水性である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記膜形成性重合体が、アクリル重合体、アクリルスチレン共重合体、ビニルアクリル重合体、エポキシアクリル共重合体、アクリル酢酸ビニル共重合体、アルキド、スチレンブタジエン共重合体、酢酸セルロース重合体、およびポリエステル重合体からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記樹脂システムが、アクリル重合体、アクリルスチレン共重合体、ビニルアクリル共重合体、エポキシアクリル共重合体、アクリル酢酸ビニル共重合体、スチレンブタジエン共重合体、および酢酸セルロース重合体からなる群より選択される膜形成性重合体の水溶性エマルジョンである、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
さらに、組成物の質量を基準として5〜15質量%の量のルチルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
さらに、難燃化剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
基材に断熱層を形成するための方法であって、該基材に請求項1の組成物を塗布する工程を包含する、方法。
【請求項21】
断熱層を形成するためのコーティング組成物を調製する方法であって、該方法が、
(a)膜形成性重合体および約1,000〜約4,000の範囲の平均分子量を有する少なくとも1つの安定化剤を含む樹脂システムを供給する工程であり、該安定化剤が、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリC−Cアルコキシ化されたC12−C18飽和または不飽和脂肪族アルコール、ポリC−Cアルコキシ化された水添または部分水添ヒマシ油、ポリC−Cアルコキシ化された水添または部分水添ダイズ油、ポリジメチルシロキサンC−Cアルコキシラート、およびC12−C18飽和または不飽和脂肪酸のソルビタンエステルからなる群より選択される少なくとも1つのメンバーである工程、および
(b)工程(a)で得られる該樹脂システムに、湿潤ゾルゲルを乾燥することによって得られる材料でなる高多孔性粒子であって、少なくとも80%の孔隙率および5μm〜4.0mmの範囲の粒子サイズを有する粒子を添加する工程、および得られる組成物を低いせん断速度で混合する工程を包含し、
該粒子の量が、該組成物の質量を基準として2〜6質量%の範囲であり、そして該安定化剤の量が、該高多孔性粒子の質量を基準として約50質量%〜約90質量%の範囲である、方法。
【請求項22】
前記高多孔性粒子が、もし必要であれば、均一なペーストを得るのに十分な量の安定化剤および水とともにゆっくりかつ低いせん断下で予め混合され、そして該得られたペーストが該樹脂システムに添加される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
白色化剤が工程(b)の前に、樹脂システムと混合される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記粒子が、少なくとも90%の孔隙率を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記粒子が、シリカエアロゲル粒子である、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2007−514810(P2007−514810A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539883(P2006−539883)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/037740
【国際公開番号】WO2005/047746
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506159275)
【出願人】(506159884)
【Fターム(参考)】