説明

断熱材及びその製造方法

【課題】無機微粒子を含む断熱材における無機微粒子の脱離を防止するとともに、亀裂が無く、平滑で良好な表面とし、更には使用温度や形状の制限を無くする。
【解決手段】BET比表面積が15〜500m/gで且つ一次粒子径が0.003〜1μmであるシリカ微粒子、アルミナ微粒子、ケイ酸アルミニウム微粒子もしくはこれらの混合物を含む断熱性成形体の表面の少なくとも一部に被覆層が形成され、該被覆層は平均粒子径0.05〜50μmの無機粒子と、バインダーとを含む断熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機微粒子を主原料として含む断熱性成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エアロゲル、ヒューム状のシリカやアルミナ等の無機微粒子を加圧成形した断熱材や、無機微粒子に、補強用の繊維状物質や、輻射光の透過を抑制して断熱効果を向上させるための乳白材等を配合し、加圧成形した断熱材が広く使用されている。
【0003】
しかし、このような無機微粒子を含む断熱材では、微粒子間の結合力が小さいため、その表面は非常に脆弱で、無機微粒子が脱離しやすい。そのため、このような無機微粒子を含む断熱材を製造、施工する作業者の手や着衣に無機微粒子の付着が頻繁に発生し、更に送風装置が設置された屋内で使用する場合には、多量の無機微粒子が飛散するという問題がある。
【0004】
このような無機微粒子の脱離の問題を解決するために、金属フィルム、プラスチックフィルム、ガラス繊維製の織布等の表層材で断熱材を覆うことが一般に行われている。しかし、表層材の種類により使用温度が制限されたり、平板状の断熱材にしか適応できない等の不具合がある。
【0005】
また、断熱材の表面に釉薬からなる緻密な被膜を形成したり(特許文献1参照)、表面をバインダ等で高密度化する(特許文献2参照)等の対策も採られている。しかし、前者は釉薬の焼結によって被膜自身に亀裂が生じたり、被膜が剥離するといった問題があり、また、後者は断熱材表面の無機微粒子を凝集させる方法であるため、断熱材表面に亀裂が発生するといった問題がある。これらの問題は、外観不良を招いたり、亀裂から無機微粒子が脱離する等の不具合を生じさせる。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−106476号公報
【特許文献2】特開2005−36975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、無機微粒子を含む断熱材における無機微粒子の脱離を防止するとともに、亀裂が無く、平滑で良好な表面とし、更には使用温度や形状の制限を無くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は下記の断熱材及びその製造方法を提供する。
(1)BET比表面積が15〜500m/gで且つ一次粒子径が0.003〜1μmであるシリカ微粒子、アルミナ微粒子、ケイ酸アルミニウム微粒子もしくはこれらの混合物を含む断熱性成形体の表面の少なくとも一部に被覆層が形成され、該被覆層は平均粒子径0.05〜50μmの無機粒子と、バインダーとを含むことを特徴とする断熱材。
(2)バインダーがアルコキシド化合物の加水分解物及び金属酸化物のゾルの少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1記載の断熱材。
(3)アルコキシド化合物の加水分解物の少なくとも一部が、金属原子に直接結合したアルキル基を有することを特徴とする上記(2)に記載の断熱材
(4)断熱性成形体が、繊維状物質及び乳白材の少なくとも一方を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の断熱材。
(5)被覆層を構成する無機粒子が、シリカ、アルミナ、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩または乳白材の各粒子、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか1項に記載の断熱材。
(6)被覆層が、繊維状物質及び有機増粘剤の少なくとも一方を含有することを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか1項に記載の断熱材。
(7)BET比表面積が15〜500m/gで且つ一次粒子径が0.003〜1μmであるシリカ微粒子、アルミナ微粒子、ケイ酸アルミニウム微粒子もしくはこれらの混合物を含む成形体材料を所定形状に成形して得た断熱性成形体に、平均粒子径0.05〜50μmの無機粒子と、バインダーとを含む分散液を塗布した後、または含浸させた後、乾燥することを特徴とする断熱材の製造方法。
(8)バインダーがアルコキシド化合物の加水分解物及び金属酸化物のゾルの少なくとも1種からなることを特徴とする上記(7)記載の断熱材の製造方法。
(9)アルコキシド化合物の加水分解物の少なくとも一部が、金属原子に直接結合したアルキル基を有することを特徴とする上記(8)記載の断熱材の製造方法
(10)分散液の分散媒が、アルコールまたはアルコールと水との混合液であることを特徴とする上記(7)〜(9)の何れか1項に記載の断熱材の製造方法。
(11)分散液が、繊維状物質及び有機増粘剤の少なくとも一方を含有することを特徴とする上記(7)〜(10)の何れか1項に記載の断熱材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の断熱材は、無機微粒子を含む断熱性成形体の表面に、無機粒子や繊維状物質をアルコキシド化合物の加水分解物や金属酸化物のゾル等からなるバインダーで結合した被覆層を形成したものである。そのため、無機微粒子の脱離が無く、また、亀裂も無く表面が平滑であり、更に被覆層は無機質であることから使用温度の制限もない。しかも、被覆層の形成方法は、被覆層の構成成分を含む分散液を塗布または含浸し、乾燥するだけであるため、工程が簡易であり、断熱性成形体の形状にも制限が無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0011】
本発明において、断熱性成形体は、BET比表面積が15〜500m/gで、且つ一次粒子径が0.003〜1μmであるシリカ微粒子、アルミナ微粒子、ケイ酸アルミニウム微粒子もしくはこれらの混合物を主成分として含む。これらの無機微粒子の一次粒子径が1μmを越えると、断熱性成形体が十分な断熱効果を得られず、0.003μmよりも小さい場合は非常に嵩高く、取扱いが困難である。また、無機微粒子のBET比表面積が15m/g未満または500m/gを超える場合も、断熱性成形体が十分な断熱効果を得られない。
【0012】
このようなBET比表面積及び一次粒径を満足するシリカ微粒子としては、ハロゲン化物等の燃焼により得られるシリカ、ケイ酸ナトリウムと硫酸との反応により得られるシリカ、アルコキシドの縮合により得られるシリカが挙げられる。また、アルミナ微粒子及びケイ酸アルミニウム微粒子についても、同様の方法により製造されたものを使用することができる。
【0013】
断熱性成形体は、上記の無機微粒子のみで形成することもできるが、補強のために繊維状物質を含有してもよい。繊維状物質としてはガラス繊維、アルミナ繊維、ムライト繊維、シリカ繊維、ケイ酸アルミニウム繊維、ケイ酸塩繊維、アルミノケイ酸塩繊維、カーボン繊維、炭化ケイ素繊維等の無機繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維等の有機繊維、もしくはこれらの混合物等が挙げられ、断熱材が使用される雰囲気、温度等を考慮して適宜選択される。尚、繊維径や繊維長には制限が無く、繊維の種類にもよるが、繊維径は0.8〜50μm、繊維長は1〜15mmが適当である。
【0014】
更に、断熱性成形体は乳白材を含有してもよい。乳白材は、輻射光の透過を抑制する機能を有しており、断熱性能を高める効果がある。乳白材としては酸化チタン、酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化鉄、イルメナイト、窒化ほう素からなる各粒子、もしくはこれらの混合物等が挙げられ、断熱材が使用される温度での乳白効果等を考慮して適宜選択される。
【0015】
繊維状物質や乳白材を含有する場合、繊維状物質の含有量を断熱性成形体全量の30質量%以下、乳白材の含有量を断熱性成形体全量の50質量%以下とするのが適当である。繊維状物質の含有量が30質量%を越えると、断熱性成形体の断熱性に与える影響が大きくなり、十分な断熱効果が得られなくなる。また、乳白材の含有量が50質量%を越えると、輻射光の抑制効果よりも乳白材自身の熱伝導効果が大きくなり、やはり十分な断熱効果が得られなくなる。
【0016】
断熱性成形体は、無機微粒子、必要に応じて繊維状物質や乳白材を添加して混合したものを所定の金型に充填し、加圧することで得られる。成形条件は、無機微粒子の種類、繊維状物質や乳白材の種類及びその配合比率、得られる成形体の形状等に応じて適宜設定される。
【0017】
尚、断熱性成形体の密度は特に制限はないが、断熱性能を発揮するという観点から150〜600kg/mが好ましく、200〜400kg/mがより好ましい。また、熱伝導率についても特に制限はないが、断熱性能を発揮するという観点から0.020〜0.05W/m・K〔100℃〕が好ましく、0.025〜0.035W/m・K〔100℃〕がより好ましい。
【0018】
上記断熱性成形体の全表面、または表面の任意部分には、平均粒子径0.05〜50μmの無機粒子同士が、アルコキシド化合物の加水分解物及び金属酸化物のゾルの少なくとも1種により結合された被覆層が形成される。この被覆層は、平均粒子径0.05〜50μmの無機粒子と、アルコキシド化合物及び金属酸化物のゾルの少なくとも1種とを含む分散液を、断熱性成形体の全面または一部に塗布した後、または前記分散液に断熱性成形体の全体または一部を浸漬した後、乾燥することで形成される。尚、分散液を塗布する場合、塗布方法には制限がなく、刷毛やロール、スプレー等の公知の塗布手段を用いることができる。
【0019】
無機粒子として平均粒径0.05μm未満の微細なものを用いた場合は、無機粒子同士の凝集が顕著となり、被覆層に亀裂が生じてしまう。また、50μmを超える大径粒子では表面の平滑性が低下する。尚、無機粒子の種類には制限がないが、耐熱性を考慮して、断熱性成形体に用いられているシリカやアルミナ、ケイ酸アルミニウムが好ましい。
【0020】
被覆層の厚さは、特に制限はないが、分散液の塗布または含浸、乾燥を経ることで通常は断熱材全体の10%以下の膜厚となる。但し、断熱性能や製造上の観点からは、30〜2000μmが好ましく、40〜500μmがより好ましく、45〜250μmが更に好ましい。また、被覆層が断熱材全体の厚みの10%以下であれば、無機粒子として乳白材も用いることができる。上述のように、乳白材は、多量になると自身の熱伝導の影響が現われてくるが、断熱材全体の厚さの10%以下であれば、乳白材を使用しても支障はない。尚、乳白材は、断熱性成形体に使用される乳白材を例示できるが、被覆層に用いる乳白材と断熱性成形体に用いる乳白材とは、同一でも異なっていてもよい。
【0021】
更に、上記の無機粒子は、混合して用いることができ、その組み合わせや配合比率は、目的とする断熱性能により適宜設定される。
【0022】
分散液は、浸漬や塗布により断熱性成形体を形成している無機微粒子間に浸透するため、極性の高い分散媒を用いると、浸透した分散媒によって無機微粒子同士が凝集し、断熱性成形体に亀裂が発生するようになる。このような不具合は、水のような極性の大きな液体ほど顕著である。そのため、本発明では水よりも極性の小さなアルコールと水との混合液を分散液の分散媒に使用する。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が安全性や取扱い性に優れるため好適である。また、水:アルコール混合重量比は0:100〜70:30が好適である。分散液に含まれる成分にもよるが、この範囲であれば分散液と断熱性成形体との接触により生じる不具合を十分に小さくできる可能性が高い。
【0023】
但し、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシド化合物は一般式「M−(OR)n(M:金属原子、R;アルキル基)」で表されるが、水と反応して加水分解物「M−(OH)n」となり、更にこのアルコキシド化合物の加水分解物同士が脱水縮合して「M−O−M」となってバインダー機能を有するようになる。従って、アルコキシド化合物を用いる場合は、分散媒として、加水分解に十分な量の水とアルコールとの混合物を用いる必要があり、場合によっては、加水分解を促進するための塩酸や硫酸等の酸またはアンモニアや水酸化ナトリウム等のアルカリを添加する必要がある。また、アルコキシド化合物としては、前記のようなケイ素のアルコキシドやアルミニウムのアルコキシドが好ましい。ケイ素やアルミニウムのアルコキシド以外にも数多くのアルコキシド化合物があるが、それらは極めて高価であるため、現実的に使用できない。
【0024】
また、アルコキシド化合物の加水分解物の少なくとも一部が、金属原子に直接結合されたアルキル基を有していても良い。この場合、得られた断熱材が撥水性を示すといった利点が生じる。但し、アルコキシド化合物の加水分解物のすべてがアルキル基を有する場合、バインド作用が少なくなり、発塵抑制効果が低減してしまうので、(i)(a)金属原子に直接結合したアルキル基を有しないアルコキシド化合物の加水分解物と(b)金属原子に直接結合されたアルキル基を有するアルコキシド化合物の加水分解物との併用、(ii)(c)金属酸化物のゾルと(b)金属原子に直接結合されたアルキル基を有するアルコキシド化合物の加水分解物との併用、(iii)(a)金属原子に直接結合したアルキル基を有しないアルコキシド化合物の加水分解物と(c)金属酸化物のゾルと(b)金属原子に直接結合されたアルキル基を有するアルコキシド化合物の加水分解物との併用が好ましい。
【0025】
金属酸化物のゾルとしては、バインダー効果に優れ、入手も容易で取扱い性にも優れることから、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカのゾルを好適に使用することができる。また、金属酸化物のゾルの粒子径としては5〜200nmが好ましく、5nm未満ではバインダー効果が強すぎるため被覆層に亀裂が生じてしまい、200nmを超えると十分なバインダー効果が得られない。尚、金属酸化物のゾルの分散媒は、分散液の分散媒に溶解可能なものであればよいが、水性の金属酸化物のゾルを使用する場合は分散媒の極性を増大させるため、その添加量には注意を払わなければならない。これに対し、アルコール類を分散媒とする金属酸化物のゾルは、このような注意が不要であるため好ましい。金属酸化物のゾルは、塗布または含浸された分散液において無機粒子同士の隙間に入り込み、乾燥により粒子が析出する。そして、この金属酸化物のゾルに由来する粒子の凝集力によって無機粒子同士を結合させる。
【0026】
分散液における無機粒子、アルコキシド化合物、金属酸化物のゾルのそれぞれの含有量は、無機粒子同士を結合した状態で断熱性成形体の表面に保持できる限り制限はなく、また、アルコキシドや金属酸化物のゾルの種類によっても異なる。例えば、テトラエトキシシランを用いる場合は、無機粒子100重量部対し5〜200重量部とするのが好ましく、金属酸化物のゾルを用いる場合は、その固形分量が無機粒子100重量部対し5〜100重量部とすることが好ましい。
【0027】
また、被覆層は、補強用に繊維状物質を含有しても良い。繊維状物質により、被覆層にクラック(小さいひび割れ)が入るのをふせぐことができる。繊維状物質としては、断熱性成形体に配合されるものを例示でき、断熱材が使用される雰囲気や温度等を考慮して適宜選択される。但し、得られる被覆層の平滑性を考慮して、繊維径は無機粒子と同様の50μm以下であることが好ましい。繊維長は、繊維状物質の種類により適宜設定されるが、10mm以下が適当である。尚、被覆層における繊維状物質の含有量が多すぎると、繊維の絡まり等によって被覆層内に空隙が生じ、結果として断熱性成形体からの無機微粒子の脱離防止効果の低下を招き、更には被膜層の剥離や表面の平滑性の低下を招くおそれがある。そのため、本発明では、繊維状物質の含有量は、被覆層全量の40質量%以下とすることが好ましい。
【0028】
繊維状物質を被覆層に含有させるには、無機粒子やアルコキシド化合物、金属酸化物のゾルとともにこれらを分散媒に添加すればよく、上記した被覆層における含有量となるように添加量を調整する。
【0029】
また、分散液には有機増粘剤を添加してもよい。断熱性成形体に塗布または含浸された分散液は、断熱性成形体の内部へと浸透するため、有機増粘剤を添加して分散液の流動性を低下させて浸透を抑制することにより、被覆層が形成されやすくなる。有機増粘剤としては、増粘効果に優れ、被覆層の膜強度を高める効果もあることから、ポリビニルアルコールや、メチルセルロール、エチルセルロース等のセルロース類が好適である。但し、断熱材の使用時に異臭や発煙を生じるおそれがあるため、有機増粘剤の添加量は、分散媒全量の5質量%以下とするのが好ましい。
【0030】
分散液の断熱性成形体への塗布量や含浸量は、分散液の組成や濃度、断熱性成形体の大きさや形状、被覆層が形成される部分の面積や形状に応じて適宜設定され、好ましくは上記の被覆層厚となるように調整する。そして、塗布または含浸された分散液を乾燥することにより、無機粒子が、アルコキシド化合物の加水分解物や金属酸化物のゾルで結合された被覆層が形成される。形成される被覆層は、無機粒子の間に空隙も持つため、乾燥による収縮が抑えられ、亀裂の発生が抑えられる。
【0031】
また、分散液の塗布または浸漬と、その後の乾燥とを繰り返し行うこともできる。被覆層に亀裂が生じても、その上に新たな被覆層を形成することにより、亀裂が無く平滑な表面を有する被覆層が得られる。分散液の塗布または浸漬と、乾燥とを繰り返し行うことにより、上記の2000μm程度の厚い被覆層を形成することも可能である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0033】
(実施例1)
一次粒子径が0.012μmで、BET比表面積が200m/gであるシリカ微粒子70重量部、平均径10μmで平均繊維長3mmのE−ガラス繊維10重量部及び炭化ケイ素20重量部を均一になるまで混合し、この混合物を加圧成形して密度300kg/mで、熱伝導率0.04W/m・K〔100℃〕の断熱性成形体を得た。
【0034】
次いで、平均粒径0.7μmのシリカ粒子100重量部、平均径10μmで平均繊維長3mmのE−ガラス繊維3重量部、エタノール67重量部、水30重量部、テトラエトキシシラン150重量部及びメチルセルロース2重部からなる分散液を上記断熱性成形体の全面に塗布し、100℃の加熱炉に入れて乾燥して試験体を得た。
【0035】
(実施例2)
平均粒径0.7μmのシリカ粒子100重量部、平均径10μmで平均繊維長3mmのE−ガラス繊維3重量部、エタノール50重量部及びシリカゾル(固形分:20%、媒体:エタノール)100重量部からなる分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして試験体を得た。
【0036】
(実施例3)
平均粒径0.7μmのシリカ粒子100重量部、平均径10μmで平均繊維長3mmのE−ガラス繊維3重量部、エタノール90重量部、シリカゾル(固形分:20%、媒体:エタノール)25重量部及びテトラエトキシシラン75重量部からなる分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして試験体を得た。
【0037】
(実施例4)
平均粒径0.7μmのシリカ粒子100重量部、平均径10μmで平均繊維長3mmのE−ガラス繊維3重量部、エタノール67重量部、水30重量部、テトラエトキシシラン125重量部、ジメチルジエトキシシラン50重量部及びメチルセルロース2重量部からなる分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして試験体を得た。
【0038】
(実施例5)
平均粒径0.7μmのシリカ粒子100重量部、平均径10μmで平均繊維長3mmのE−ガラス繊維3重量部、エタノール40重量部、水10重量部、シリカゾル(固形分:20%、媒体エタノール)75重量部及びジメチルジエトキシシラン50重量部からなる分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして試験体を得た。
【0039】
(実施例6)
平均粒径0.7μmのシリカ粒子100重量部、平均径10μmで平均繊維長3mmのE−ガラス繊維3重量部、エタノール90重量部、水15重量部、シリカゾル(固形分:20%、媒体エタノール)25重量部、テトラエトキシシラン50重量部及びジメチルジエトキシシラン50重量部からなる分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして試験体を得た。
【0040】
(実施例7)
平均粒径0.7μmのシリカ粒子100重量部、平均径10μmで平均繊維長3mmのE−ガラス繊維3重量部、エタノール67重量部、水30重量部、ジメチルジエトキシシラン200重量部及びメチルセルロース2重量部からなる分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして試験体を得た。
【0041】
(比較例1)
実施例1で作製した断熱性成形体を試験体とした。
【0042】
(比較例2)
平均粒径0.7μmのシリカ粒子100重量部とエタノール200重量部とからなる分散液を用いて被覆層の形成を試みたが、シリカ粒子同士が結合せず被覆層が形成できなかった。
【0043】
(比較例3)
平均粒径0.7μmのシリカ粒子100重量部と水200重量部とからなる分散液を用いて被覆層の形成を試みたが、シリカ粒子同士が結合せず被覆層が形成できず、更に断熱性成形体も大きく変形した。
【0044】
(比較例4)
分散液の代わりにシリカゾル(固形分:20%、媒体:エタノール)を塗布したが、被覆層の収縮により断熱性成形体が破壊した。
【0045】
[発塵性の評価]
実施例1〜7及び比較例1の各試験体について、下記手順に従い発塵性の評価を行った。結果を表1に示す。
(1)試験体の表面に圧力3×104N/mで粘着テープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)「CT−24」、幅24mm)を貼り付けた。
(2)5秒の静置後、試験体から粘着テープを剥がした。
(3)剥がした粘着テープを黒色紙上に貼り付けて明度指数を測定し、次式に従い発塵指数を求めた。明度指数はLb表示系のL値であり、色彩色差計(ミノルタ株式会社製「CR−300」、測定ヘッド91mm幅×201mm高さ×60mm奥行×670g重量×測定径8mm、)を用いて測定した。また、明度指数の測定は同一試験体について5回行い、その平均値を測定した。
発塵指数=試験体から剥がした粘着テープの明度指数−粘着テープ自体の明度指数
【0046】
[撥水性の評価]
実施例1および4〜7の試験体の表面に純水1gを滴下し、水の吸収具合から撥水性を評価した。
【0047】
【表1】


【0048】
付着物が付着していない粘着テープでは、光源からの光が粘着テープをほとんど透過し、黒色紙からは光がほとんど反射しないためL値が低くなる。これに対し付着物が付着した粘着テープでは、光源からの光が付着物で反射されるためL値が高くなる。従って、粘着テープへの付着物の付着量が多いほど、発塵指数も大きい値を示す。表1に示すように、本発明に従う被覆層が形成された実施例の試験体では、発塵指数が小さくなっており、被覆層中でシリカ粒子及びガラス繊維が強固に結合されていることがわかる。
【0049】
また、撥水性についても、実施例1において、純水は1秒もしないうちに試験体に吸収され、試験体表面に陥没状の変形が生じたが、実施例4〜7においては、純水は試験体に吸収されず24時間後もその表面に留まっていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が15〜500m/gで且つ一次粒子径が0.003〜1μmであるシリカ微粒子、アルミナ微粒子、ケイ酸アルミニウム微粒子もしくはこれらの混合物を含む断熱性成形体の表面の少なくとも一部に被覆層が形成され、該被覆層は平均粒子径0.05〜50μmの無機粒子と、バインダーとを含むことを特徴とする断熱材。
【請求項2】
バインダーがアルコキシド化合物の加水分解物及び金属酸化物のゾルの少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1記載の断熱材。
【請求項3】
アルコキシド化合物の加水分解物の少なくとも一部が、金属原子に直接結合したアルキル基を有することを特徴とする請求項2に記載の断熱材
【請求項4】
断熱性成形体が、繊維状物質及び乳白材の少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の断熱材。
【請求項5】
被覆層を構成する無機粒子が、シリカ、アルミナ、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩または乳白材の各粒子、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の断熱材。
【請求項6】
被覆層が、繊維状物質及び有機増粘剤の少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の断熱材。
【請求項7】
BET比表面積が15〜500m/gで且つ一次粒子径が0.003〜1μmであるシリカ微粒子、アルミナ微粒子、ケイ酸アルミニウム微粒子もしくはこれらの混合物を含む成形体材料を所定形状に成形して得た断熱性成形体に、平均粒子径0.05〜50μmの無機粒子と、バインダーとを含む分散液を塗布した後、または含浸させた後、乾燥することを特徴とする断熱材の製造方法。
【請求項8】
バインダーがアルコキシド化合物の加水分解物及び金属酸化物のゾルの少なくとも1種からなることを特徴とする請求項7記載の断熱材の製造方法。
【請求項9】
アルコキシド化合物の加水分解物の少なくとも一部が、金属原子に直接結合したアルキル基を有することを特徴とする請求項8記載の断熱材の製造方法
【請求項10】
分散液の分散媒が、アルコールまたはアルコールと水との混合液であることを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載の断熱材の製造方法。
【請求項11】
分散液が、繊維状物質及び有機増粘剤の少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項7〜10の何れか1項に記載の断熱材の製造方法。