説明

断熱材形成キット、断熱材の製造方法、断熱材の施工方法及びこれらにより形成された断熱材

【課題】不定形断熱材組成物を効率よく硬化できる断熱材形成キット及び断熱材を提供する。
【解決手段】本発明に係る断熱材形成キットは、無機繊維及び溶媒を含有する第一不定形組成物と、イソシアネート系硬化性化合物を含有する第二不定形組成物と、を有する。本発明に係る断熱材は、無機繊維と、溶媒と、イソシアネート系硬化性化合物と、を含有する不定形断熱材組成物を硬化することにより形成される。本発明に係る断熱材は、無機繊維と、イソシアネート系硬化性化合物の硬化反応生成物と、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材形成キット、断熱材の製造方法、断熱材の施工方法及びこれらにより形成された断熱材に関し、特に、不定形断熱材組成物の効率的な硬化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱処理装置、工業窯炉又は焼却炉等の高温で使用される構造物の目地材として、無機繊維と溶媒とを含有する不定形断熱材組成物を硬化させて形成される断熱性目地材があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−306713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の不定形断熱材組成物は、施工後に高温に晒されることにより溶媒が除去され硬化されるものであった。したがって、この不定形断熱材組成物は、溶媒が除去されにくい場所や、必ずしも高温に晒されない場所に施工された場合には、効率よく硬化できないことがあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、不定形断熱材組成物を効率よく硬化できる断熱材形成キット、断熱材の製造方法、断熱材の施工方法及びこれらにより形成された断熱材を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る断熱材形成キットは、無機繊維及び溶媒を含有する第一不定形組成物と、イソシアネート系硬化性化合物を含有する第二不定形組成物と、を有することを特徴とする。本発明によれば、不定形断熱材組成物を効率よく硬化できる断熱材形成キットを提供することができる。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る断熱材は、無機繊維と、溶媒と、イソシアネート系硬化性化合物と、を含有する不定形断熱材組成物を硬化することにより形成されたことを特徴とする。本発明によれば、不定形断熱材組成物の効率的な硬化により形成された断熱材を提供することができる。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る断熱材は、無機繊維と、イソシアネート系硬化性化合物の硬化反応生成物と、を含有することを特徴とする。本発明によれば、不定形断熱材組成物の効率的な硬化により形成された断熱材を提供することができる。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る断熱材の製造方法は、無機繊維と、溶媒と、イソシアネート系硬化性化合物と、を含有する不定形断熱材組成物を硬化することにより断熱材を形成することを特徴とする。本発明によれば、不定形断熱材組成物を効率よく硬化できる断熱材の製造方法を提供することができる。
【0010】
また、前記無機繊維及び前記溶媒を含有する第一不定形組成物と、前記イソシアネート系硬化性化合物を含有する第二不定形組成物と、を混合して前記不定形断熱材組成物を調製し硬化することにより前記断熱材を形成することとしてもよい。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る断熱材の施工方法は、無機繊維と、溶媒と、イソシアネート系硬化性化合物と、を含有する不定形断熱材組成物を構造物に適用して硬化することにより、前記構造物に断熱材を施工することを特徴とする。本発明によれば、不定形断熱材組成物を効率よく硬化できる断熱材の施工方法を提供することができる。
【0012】
また、前記無機繊維及び前記溶媒を含有する第一不定形組成物と、前記イソシアネート系硬化性化合物を含有する第二不定形組成物と、混合して前記不定形断熱材組成物を調製し、前記不定形断熱材組成物を前記構造物に適用して硬化することとしてもよい。また、前記構造物の目地部分に形成された空間に前記不定形断熱材組成物を充填して硬化することにより、前記構造物に断熱性目地材である前記断熱材を施工することとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、不定形断熱材組成物を効率よく硬化できる断熱材形成キット、断熱材の製造方法、断熱材の施工方法及びこれらにより形成された断熱材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る不定形断熱材組成物について組成及び特性の一例を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る断熱材について特性の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は、本実施形態に限られるものではない。
【0016】
まず、本発明の概要について説明する。本発明においては、イソシアネート系硬化性化合物を使用して、無機繊維及び溶媒を含有する不定形断熱材組成物を硬化する。すなわち、従来は溶媒を除去することで硬化させていた不定形断熱材組成物を、イソシアネート系硬化性化合物の硬化反応によって硬化させる。
【0017】
したがって、例えば、構造物に形成された半閉鎖的な空間等の溶媒が除去されにくい場所や、一般的な建築物等の必ずしも高温に晒されない構造物においても、不定形断熱材組成物を効率よく且つ確実に硬化させることができる。このように、本発明によれば、不定形断熱材組成物を効率よく硬化させることができる。
【0018】
次に、本発明の詳細について説明する。まず、本実施形態に係る断熱材の製造方法(以下、「本製造方法」という。)について説明する。本製造方法においては、無機繊維と、溶媒と、イソシアネート系硬化性化合物と、を含有する不定形断熱材組成物を硬化することにより断熱材を形成する。
【0019】
ここで、「不定形組成物」は、特定の形状を有しない組成物である。すなわち、不定形組成物は、例えば、いわゆる練り材等のペースト状組成物や、より粘性の低い液状組成物等、可塑性や流動性を有する組成物である。そして、不定形断熱材組成物は、硬化することで一定の形状の断熱材を形成する不定形組成物である。
【0020】
無機繊維は、無機材料からなる繊維であって、断熱材における骨材の全部又は一部を構成できるものであれば特に限られない。すなわち、例えば、アルミナ繊維、シリカ・アルミナ質繊維、ジルコニア繊維等のセラミック繊維、セラミックウール、ロックウール、ガラス繊維、グラスウールを使用することができる。
【0021】
また、生体溶解性の無機繊維を使用することもできる。生体溶解性無機繊維としては、肺に吸入されても体内で分解される溶解性(分解性)を有する無機繊維であれば特に限られない。
【0022】
具体的に、例えば、特開2000−220037号公報に記載されているような、SiOとCaOとの合計含有量が85重量%以上であり、0.5〜3.0重量%のMgOと2.0〜8.0重量%のPとを含有し、且つドイツ危険物質規制による発癌性指数(KI値)が40以上である生理学的媒体に可溶な非晶質無機繊維を使用することができる。
【0023】
また、例えば、特開2002−68777号公報に記載されているような、SiO、MgO及びTiOを必須成分として含有し、且つ当該成分からなる非晶質部分を構造中に含む無機繊維を使用することができる。
【0024】
また、例えば、特開2003−73926号公報に記載されているような、SiO、MgO及び酸化マンガンを必須成分として含有し、且つ当該成分からなる非晶質部分を構造中に含む無機繊維を使用することができる。
【0025】
また、例えば、特開2003−212596号公報に記載されているような、52〜72重量%のSiOと、3重量%未満のAlと、0〜7重量%のMgOと、7.5〜9.5重量%のCaOと、0〜12重量%のBと、0〜4重量%のBaOと、0〜3.5重量%のSrOと、10〜20.5重量%のNaOと、0.5〜4.0重量%のKOと、0〜5重量%のPと、を含む無機繊維を使用することができる。
【0026】
また、例えば、CaOとMgOとの合計含有量が19〜25重量%であり、75〜80重量%のSiOと、1.0〜3.0重量%のAlと、を含む無機繊維を使用することができる。
【0027】
また、例えば、特開2007−63078号公報に記載されているような、60〜80重量%のSiO、5〜20重量%のMgO、5〜30重量%のCaO、0.5〜5重量%のAl及び0.1〜5重量%のBaOを含む無機繊維を使用することができる。
【0028】
また、例えば、特開2005−281079号公報や特開2006−282404号公報に記載されているような、40℃における生理食塩水溶解率が1%以上の無機繊維を使用することができる。
【0029】
ここで、無機繊維の生理食塩水の溶解率は、例えば、次のようにして測定することができる。すなわち、先ず、無機繊維を200メッシュ以下に粉砕して調製された試料1g及び生理食塩水150mLを三角フラスコ(容積300mL)に入れ、40℃のインキュベーターに設置する。次に、三角フラスコに、毎分120回転で50時間水平振動を加え、濾過する。そして、濾液に含有されている元素をICP発光分析装置により定量する。この定量された元素含有量と、もとの試料の組成及び重量と、に基づいて当該試料から当該濾液中に溶出した元素量の割合(溶解による試料の重量減少率)を表す溶解度を求める。
【0030】
このような40℃における生理食塩水中の溶解率が1%以上の無機繊維としては、例えば、特開2006−306713号公報に記載されているような、リン酸塩(トリポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム又はリン酸亜鉛等)、モリブデン化合物、ポリアミジン化合物又はエチレンイミン化合物により被覆された生体溶解性無機繊維を使用することもできる。不定形断熱材組成物は、このような無機繊維を1種又は2種以上含有することができる。
【0031】
無機繊維の単繊維の平均繊維径は、例えば、1〜50μmとすることができ、好ましくは2〜10μmとすることができ、特に好ましくは2〜5μmとすることができる。平均繊維径を上述の範囲内とすることにより、十分な断熱性と強度とを備えた断熱材を形成することができる。
【0032】
無機繊維の単繊維の平均繊維長は、例えば、1〜200mmとすることができ、好ましくは2〜50mmとすることができ、特に好ましくは10〜50mmとすることができる。平均繊維長を上述の範囲内とすることにより、十分な断熱性と強度とを備えた断熱材を形成することができる。
【0033】
不定形断熱材組成物における無機繊維の含有量は、例えば、5〜50重量%とすることができ、好ましくは8〜30重量%とすることができ、特に好ましくは10〜20重量%とすることができる。無機繊維の含有量を上述のような範囲内とすることにより、良好な製造性と成形性を確保しつつ、十分な断熱性を備えた断熱材を形成することができる。
【0034】
溶媒は、無機繊維を分散させることができる溶媒であって、不定形断熱材組成物に不定形性を付与できるものであれば特に限られない。すなわち、例えば、水及び極性有機溶媒の一方又は両方を使用することができる。
【0035】
水は、特に限られず、例えば、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水を使用することができる。極性有機溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール等の1価アルコールや、エチレングリコール等の2価アルコールを使用することができる。これらのうち、水は、作業環境を悪化させず、環境への負荷がないため最も好ましく使用することができる。不定形断熱材組成物は、このような溶媒を1種又は2種以上含有することができる。
【0036】
不定形断熱材組成物における溶媒の含有量は、例えば、30〜85重量%とすることができ、好ましくは50〜80重量%とすることができ、特に好ましくは60〜75重量%とすることができる。溶媒の含有量を上述のような範囲内とすることにより、不定形断熱材組成物の流動性や可塑性等の不定形性を適切なものとすることができる。
【0037】
イソシアネート系硬化性化合物は、イソシアネート基を有する有機化合物であって、水その他の活性水素化合物(例えば、水酸基、アミノ基、アミド基等の活性水素を含む官能基を有する化合物)と反応することにより、不定形断熱材組成物を硬化させることのできるものであれば特に限られない。
【0038】
すなわち、例えば、分子内に複数のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートを使用することができる。具体的に、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)、トリレンジイソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート)、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートを使用することができる。
【0039】
また、例えば、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートを使用することができる。また、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートを使用することができる。
【0040】
不定形断熱材組成物は、このような有機ポリイソシアネートを1種又は2種以上含有することができる。すなわち、不定形断熱材組成物は、例えば、分子の両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネートと、分子中に3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、を含有することができる。
【0041】
具体的に、この場合、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートと、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートと、を好ましく使用することができる。
【0042】
また、イソシアネート系硬化性化合物としては、例えば、分子中に複数のイソシアネート基を有するプレポリマーを使用することができる。すなわち、例えば、分子の両末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを使用することができる。このようなプレポリマーとしては、例えば、ウレタンプレポリマーを好ましく使用することができる。
【0043】
ウレタンプレポリマーは、例えば、有機ポリイソシアネートとポリオールとの反応により生成することができる。ウレタンプレポリマーの原料である有機ポリイソシアネートとしては、ポリウレタンの原料として利用可能なものであれば特に限られない。すなわち、例えば、上述のイソシアネート系硬化性化合物として使用可能な有機ポリイソシアネートを使用することができる。ウレタンプレポリマーの生成には、上述のような有機ポリイソシアネートを1種又は2種以上使用することができる。
【0044】
ウレタンプレポリマーの原料であるポリオールとしては、上述の有機ポリイソシアネートと組み合わせてポリウレタンの原料として利用可能なものであれば特に限られない。すなわち、例えば、多価アルコールやポリエーテルポリオールを好ましく使用することができる。
【0045】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールを使用することができる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、上述の多価アルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合することにより生成されたものを使用することができる。ウレタンプレポリマーの生成には、上述のようなポリオールを1種又は2種以上使用することができる。不定形断熱材組成物は、このようなウレタンプレポリマーを1種又は2種以上含有することができる。
【0046】
また、不定形断熱材組成物は、1種又は2種以上の有機ポリイソシアネートと、1種又は2種以上のプレポリマーと、を含有することができる。すなわち、不定形断熱材組成物は、例えば、ジイソシアネートと、ポリイソシアネートと、プレポリマーと、を含有することができる。
【0047】
この場合、ジイソシアネートとしては、芳香族イソシアネートを好ましく使用することができる。また、ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネートを好ましく使用することができる。また、プレポリマーとしては、ウレタンプレポリマーを好ましく使用することができる。したがって、不定形断熱材組成物は、例えば、芳香族イソシアネートと、芳香族ポリイソシアネートと、ウレタンプレポリマーと、を含有することができる。
【0048】
不定形断熱材組成物におけるイソシアネート系硬化性化合物の含有量は、例えば、0.5〜50重量%とすることができ、好ましくは0.7〜20重量%とすることができ、特に好ましくは1〜10重量%とすることができる。
【0049】
また、イソシアネート系硬化性化合物として有機イソシアネートを使用する場合には、当該有機イソシアネートの含有量は、例えば、0.1〜15重量%とすることができ、好ましくは0.15〜8重量%とすることができ、特に好ましくは0.2〜5重量%とすることができる。
【0050】
また、イソシアネート系硬化性化合物としてウレタンプレポリマーを使用する場合には、当該ウレタンプレポリマーの含有量は、例えば、0.2〜45重量%とすることができ、好ましくは0.25〜30重量%とすることができ、特に好ましくは0.5〜15重量%とすることができる。
【0051】
イソシアネート系硬化性化合物として有機ポリイソシアネートとウレタンプレポリマーとを併用する場合には、それぞれの含有量は、上述の範囲とすることができる。
【0052】
不定形断熱材組成物は、さらに弾性付与剤を含有することもできる。この弾性付与剤は、断熱材にゴム弾性を付与することのできる化合物であれば特に限られない。すなわち、例えば、上述のようなウレタンプレポリマーを好ましく使用することができる。
【0053】
上述のように、不定形断熱材組成物がウレタンプレポリマーに加えて有機ポリイソシアネートをも含有する場合には、断熱材の硬化を迅速且つ確実に行うことができるのみならず、当該断熱材に優れたゴム弾性を付与することができる。
【0054】
不定形断熱材組成物は、さらに触媒を含有することもできる。触媒は、イソシアネート系硬化性化合物の硬化反応を促進できるものであれば特に限られない。すなわち、例えば、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒や、ジブチルスズジラウレート等のスズ系触媒を使用することができる。不定形断熱材組成物は、このような触媒を1種又は2種以上含有することができる。
【0055】
不定形断熱材組成物は、さらに耐熱性粉末を含有することもできる。耐熱性粉末は、耐熱性の材料からなる粉末であって、断熱材における骨材の一部を構成し、当該断熱材の耐火性等の耐熱性を高めることができるものであれば特に限られない。
【0056】
すなわち、例えば、シリカ、アルミナ、ムライト、ジルコニア、カオリン、水酸化アルミニウム、チタニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミックス粉末や、カーボンブラック等の炭素粉末を使用することができ、特に当該セラミックス粉末を好ましく使用することができる。不定形断熱材組成物は、このような耐熱性粉末を1種又は2種以上含有することができる。
【0057】
耐熱性粉末の平均粒子径は、例えば、0.1〜100μmとすることができ、好ましくは0.2〜50μmとすることができ、特に好ましくは0.5〜10μmとすることができる。耐熱性粉末の平均粒子径をこのような範囲内とすることにより、断熱材に当該耐熱性粉末を均一に分散し且つ確実に保持することができる。
【0058】
不定形断熱材組成物における耐熱性粉末の含有量は、例えば、0.5〜50重量%とすることができ、好ましくは0.7〜30重量%とすることができ、特に好ましくは1〜10重量%とすることができる。
【0059】
また、耐熱性粉末の含有量は、例えば、不定形断熱材組成物に含有される無機繊維100重量部に対して、1〜300重量部とすることができ、好ましくは3〜200重量部とすることができ、特に好ましくは5〜150重量部とすることができる。耐熱性粉末の含有量をこのような範囲内とすることにより、断熱材に耐火性等の耐熱性を効果的に付与することができる。
【0060】
不定形断熱材組成物は、さらに結合剤(バインダー)を含有することもできる。結合剤は、特に限られず、公知のものを使用することができる。すなわち、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、リン酸アルミニウム水溶液、セメント、ケイ酸ソーダ、粘土鉱物等の無機バインダーを使用することができる。これらの中でも、コロイダルシリカやアルミナゾルが、取り扱いが容易であり、また純度が高いことから好ましく使用することができる。また、有機バインダーとして、例えば、アクリル酸エステルやエチレン酢酸ビニルのエマルジョン等、各種のポリマー及びコポリマーのエマルジョンを使用することもできる。不定形断熱材組成物は、このような結合剤を1種又は2種以上含有することができる。
【0061】
不定形断熱材組成物における結合剤の含有量は、例えば、1〜75重量%とすることができ、好ましくは2〜10重量%とすることができる。また、結合剤の含有量は、例えば、第一組成物に含有される無機繊維100重量部に対して1〜200重量部とすることができ、好ましくは5〜50重量部とすることができる。
【0062】
不定形断熱材組成物は、さらに増粘剤を含有することもできる。増粘剤は、特に限られず、公知のものを使用することができる。すなわち、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アクリル酸ナトリウム重合物、ポリエーテルポリオール、アクリル系重合高分子ポリエステルアミン及び天然糊料等を使用することができる。不定形断熱材組成物は、このような増粘剤を1種又は2種以上含有することができる。増粘剤の含有量は、例えば、不定形断熱材組成物に含有される無機繊維100重量部に対して2〜15重量部とすることが好ましい。
【0063】
不定形断熱材組成物は、さらに分散剤を含有することもできる。分散剤は、特に限られず、公知のものを使用することができる。すなわち、例えば、カルボン酸類、多価アルコール、アミン類等を使用することができる。不定形断熱材組成物は、このような分散剤を1種又は2種以上含有することができる。分散剤の含有量は、例えば、不定形断熱材組成物に含有される無機繊維100重量部に対して1〜5重量部とすることが好ましい。
【0064】
不定形断熱材組成物は、さらに防腐剤を含有することもできる。防腐剤は、特に限られず、公知のものを使用することができる。すなわち、例えば、窒素原子又は硫黄原子を有する無機化合物又は有機化合物を使用することができる。不定形断熱材組成物は、このような防腐剤を1種又は2種以上含有することができる。防腐剤の含有量は、例えば、不定形断熱材組成物に含有される無機繊維100重量部に対して1〜5重量部とすることが好ましい。
【0065】
不定形断熱材組成物は、無機繊維の全部又は一部として上述の生体溶解性無機繊維を含有する場合、さらに防錆剤を含有することもできる。防錆剤は、生体溶解性無機繊維の劣化を防止できるものであれば特に限られない。
【0066】
すなわち、例えば、特開2006−306713号公報に記載されているように、トリポリリン酸アルミニウム、トリポリリン酸ニ水素アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム等のリン酸塩、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウム等のモリブデン化合物、アクリルアミド、アクリロニトリル、N−ビニルアクリルアミジン塩酸塩、N−ビニルアクリルアミド、ビニルアミン塩酸塩、N−ビニルホルムアミド共重合体等のポリアミジン化合物、アミノエチレン、ジメチレンイミン等のエチレンイミン化合物を使用することができる。
【0067】
このような防錆剤は、生体溶解性無機繊維の表面に被覆層を形成することにより、当該生体溶解性無機繊維の劣化を効果的に防止することができる。不定形断熱材組成物は、このような防錆剤を1種又は2種以上含有することができる。防錆剤の含有量は、例えば、不定形断熱材組成物に含有される生体溶解性無機繊維100重量部に対して0.2〜20重量部とすることができ、好ましくは0.3〜15重量部とすることができ、特に好ましくは0.5〜10重量部とすることができる。
【0068】
不定形断熱材組成物は、さらに凍結防止剤を含有することもできる。凍結防止剤は、不定形断熱材組成物の凍結を防止できるものであれば特に限られない。すなわち、例えば、エチレングリコールを使用することができる。
【0069】
不定形断熱材組成物の密度は、例えば、0.5〜2.0g/cmとすることができ、好ましくは0.8〜1.5g/cmとすることができる。
【0070】
不定形断熱材組成物のちょう度は、例えば、調製してから15分経過後において50〜350とすることができ、好ましくは100〜300とすることができる。なお、ちょう度は、例えば、JIS K 2220(グリース)に準じた方法により所定のちょう度計を使用して測定することができる。
【0071】
本製造方法においては、このような成分を含有する不定形断熱材組成物を硬化させることにより断熱材を形成する。この硬化は、イソシアネート系硬化性化合物と硬化反応を進行させる化合物の存在下で行う。
【0072】
この化合物としては、例えば、水その他の活性水素化合物を使用することができる。活性水素化合物は、水酸基、アミノ基、アミド基等の活性水素を含む官能基を有する化合物であれば特に限られない。具体的に、例えば、水、アルコール、ポリエーテルポリオール、アミンを好ましく使用することができる。
【0073】
本製造方法における断熱材の形成は、例えば、不定形断熱材組成物を所定の型に充填し、硬化させることにより、当該型に対応する形状の断熱材を形成する。また、例えば、所定の構造体の表面に不定形断熱材組成物を塗布し、又は当該構造体の内部に当該不定形断熱材組成物を充填し、硬化させることにより、当該構造体と一体的に構成される断熱材を形成することもできる。
【0074】
本実施形態に係る断熱材(以下、「本断熱材」という。)は、無機繊維と、溶媒と、イソシアネート系硬化性化合物と、を含有する不定形断熱材組成物を硬化することにより形成された断熱材である。
【0075】
すなわち、本断熱材は、上述の本製造方法により製造することができる。したがって、本断熱材は、無機繊維と、イソシアネート系硬化性化合物の硬化反応生成物と、を含有する。
【0076】
本断熱材に含有される無機繊維は、上述の不定形断熱材組成物に含有されていた無機繊維である。本断熱材に含有される硬化反応生成物は、上述の不定形断熱材組成物に含有されていたイソシアネート系硬化性化合物の重合体である。
【0077】
すなわち、本断熱材は、例えば、上述の有機ポリイソシアネートの重合体を含有する。また、本断熱材は、例えば、上述のウレタンプレポリマーから生成されたポリウレタンを含有する。さらに、不定形断熱材組成物がウレタンプレポリマーと水とを含有していた場合には、本断熱材は、ポリウレタンの発泡体(ポリウレタンフォーム)を含有する。本断熱材がポリウレタンエラストマーを含有する場合、当該本断熱材は所定のゴム弾性を有することができる。
【0078】
本断熱材の密度は、例えば、0.1〜1.2g/cmとすることができ、好ましくは0.15〜0.4g/cmとすることができる。この密度は、乾燥させた本断熱材の密度である。本断熱材の乾燥は、例えば、当該本断熱材を100℃で24時間維持することにより行うことができる。
【0079】
本断熱材の硬度は、例えば、30〜90とすることができ、好ましくは40〜80とすることができる。この硬度は、例えば、JIS S 6050に規定の方法で測定することができる。
【0080】
本実施形態に係る断熱材の施工方法(以下、「本施工方法」という。)においては、無機繊維と、溶媒と、イソシアネート系硬化性化合物と、を含有する不定形断熱材組成物を構造物に適用して硬化することにより、当該構造物に断熱材を施工する。
【0081】
本施工方法において使用する不定形断熱材組成物は、上述の本製造方法において使用する不定形断熱材組成物を好ましく使用することができる。また、本施工方法における不定形断熱材組成物の硬化は、上述の本製造方法における硬化と同様に行うことができる。そして、本施工方法によれば、構造物に上述の本断熱材を施工することができる。
【0082】
本施工方法において断熱材を施工する対象となる構造物は、その全体又は一部において断熱が必要な構造物であれば特に限られない。すなわち、例えば、一般的な住宅用建築物、高層ビル、工場、競技場等の建築物を対象とすることができる。もちろん、従来から不定形断熱材組成物を施工している熱処理装置、工業窯炉又は焼却炉等の高温で使用される構造物も対象とすることができる。また、例えば、寒冷地に設置された構造物も対象とすることができる。
【0083】
本施工方法においては、様々な構造物の任意の場所に断熱材を施工することができる。すなわち、例えば、構造物の目地部分に形成された空間に不定形断熱材組成物を充填して硬化することにより、当該構造物に断熱性目地材である断熱材を施工することができる。
【0084】
本施工方法においては、まず、不定形断熱材組成物を使用するため、構造物の任意の形状の表面や、当該構造物に形成された任意の形状の空間に、当該表面や空間の形状に対応した形状の本断熱材を形成することができる。
【0085】
そして、イソシアネート系硬化性化合物を使用して不定形断熱材組成物を迅速且つ確実に硬化させるため、当該不定形断熱材組成物に含有される溶媒が蒸発しにくい半閉鎖空間や、常温又は低温で維持される構造物においても、本断熱材を効率よく施工することができる。
【0086】
また、不定形断熱材組成物がウレタンプレポリマーを含有する場合には、施工された本断熱材はポリウレタンを含有し、当該ポリウレタンに由来するゴム弾性を有することができる。したがって、構造物に施工された本断熱材は、当該構造物の変形に追従して、その断熱性能を効果的に維持することができる。また、構造物に施工された本断熱材は、当該構造物に対する衝撃を効果的に吸収して、当該構造物の変形や破損を効果的に防止することができる。
【0087】
このような本断熱材による効果は、例えば、上述の目地材等、構造物に形成された所定形状の空間に不定形断熱材組成物を充填し硬化させることにより、当該空間に充填された本断熱材を形成した場合に特に有効である。
【0088】
本実施形態に係る断熱材形成キット(以下、「本キット」という。)は、無機繊維及び溶媒を含有する第一不定形組成物(以下、「第一組成物」という。)と、イソシアネート系硬化性化合物を含有する第二不定形組成物(以下、「第二組成物」という。)と、を有する。本キットは、上述した本断熱材を形成するためのキットであって、第一組成物及び第二組成物という2種類の組成物を、互いに混合されない状態で有している。
【0089】
第一組成物に含有される無機繊維は、上述の不定形断熱材組成物に含有される無機繊維と同様である。第一組成物における無機繊維の含有量は、例えば、5〜50重量%とすることができ、好ましくは8〜30重量%とすることができ、特に好ましくは10〜20重量%とすることができる。無機繊維の含有量を上述のような範囲内とすることにより、十分な断熱性を備えた断熱材を効率よく形成することができる。
【0090】
第一組成物に含有される溶媒もまた、上述の不定形断熱材組成物に含有される溶媒と同様である。第一組成物が溶媒として水その他の活性水素化合物を含有する場合には、当該第一組成物と第二組成物とを混合するだけで硬化反応を速やかに進行させて、断熱材を効率よく形成することができる。具体的に、この場合、第一組成物の溶媒は、例えば、水、多価アルコール及びポリエーテルポリオールのうち1種又は2種以上を含有することができる。
【0091】
第一組成物における溶媒の含有量は、例えば、30〜90重量%とすることができ、好ましくは50〜85重量%とすることができ、特に好ましくは60〜80重量%とすることができる。また、溶媒の含有量は、例えば、第一組成物に含有される固形分100重量部に対して、40〜900重量部とすることができ、好ましくは100〜600重量部とすることができ、特に好ましくは150〜400重量部とすることができる。溶媒の含有量を上述のような範囲内とすることにより、第一組成物の流動性や可塑性等の不定形性を適切なものとすることができる。
【0092】
第一組成物の密度は、例えば、0.5〜2.0g/cm3とすることができ、好ましくは0.8〜1.5g/cm3とすることができる。第一組成物のちょう度は、例えば、調製してから15分経過後において50〜350とすることができ、好ましくは100〜300とすることができる。
【0093】
なお、第一組成物は、それ自身単独で断熱材を形成することのできる不定形断熱材組成物とすることもできる。すなわち、例えば、第一組成物は、構造物に塗布し、その後、当該第一組成物に含有されている溶媒を蒸発させることにより硬化して断熱材を形成する不定形組成物とすることができる。
【0094】
第二組成物に含有されるイソシアネート系硬化性化合物は、上述の不定形断熱材組成物に含有されるイソシアネート系硬化性化合物と同様である。すなわち、第二組成物は、例えば、1種又は2種以上の有機ポリイソシアネート及び1種又は2種以上のプレポリマーのうち一方又は両方を含有することができる。
【0095】
第二組成物におけるイソシアネート系硬化性化合物の含有量は、例えば、40〜85重量%とすることができ、好ましくは50〜85重量%とすることができ、特に好ましくは60〜80重量%とすることができる。
【0096】
また、イソシアネート系硬化性化合物として有機イソシアネートを使用する場合には、当該有機イソシアネートの含有量は、例えば、5〜50重量%とすることができ、好ましくは8〜40重量%とすることができ、特に好ましくは10〜30重量%とすることができる。
【0097】
また、イソシアネート系硬化性化合物としてウレタンプレポリマーを使用する場合には、当該ウレタンプレポリマーの含有量は、例えば、10〜80重量%とすることができ、好ましくは20〜70重量%とすることができ、特に好ましくは30〜60重量%とすることができる。
【0098】
イソシアネート系硬化性化合物として有機ポリイソシアネートとウレタンプレポリマーとを併用する場合には、それぞれの含有量は、上述の範囲とすることができる。
【0099】
また、第二組成物は、さらに溶媒を含有することもできる。この溶媒は、第二組成物に不定形性を付与できる溶媒であって、イソシアネート系硬化性化合物と反応して硬化反応を進行させないものであれば特に限られない。
【0100】
この溶媒としては、例えば、第一組成物に含有される溶媒(例えば、水)と相溶性のあるものを好ましく使用できる。具体的に、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート等のエステル系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒といった極性有機溶媒を使用することができる。第二組成物は、このような溶媒を1種又は2種以上含有することができる。
【0101】
なお、第二組成物は、イソシアネート系硬化性化合物を、未反応の状態で含有する。すなわち、第二組成物は、例えば、水その他の活性水素化合物等、イソシアネート系硬化性化合物と反応して硬化反応を進行させる成分を含有しない。
【0102】
また、第二組成物は、上述のような溶媒を含有しない、いわゆる無溶媒系の組成物とすることもできる。この場合、第二組成物は、可塑剤を含有することができる。この可塑剤は、第二組成物に不定形性を付与できるものであれば特に限られない。すなわち、例えば、トリクレジルホスフェート(TCP)等の難燃性の可塑剤を好ましく使用することができる。
【0103】
また、第一組成物及び第二組成物は、上述の不定形断熱材組成物に含有され得る弾性付与剤、触媒、耐熱性粉末、結合剤、増粘剤、分散剤、防腐剤、防錆剤及び凍結防止剤のうち一部又は全部を含有することもできる。
【0104】
本キットは、上述のような第一組成物及び第二組成物という2種類の不定形組成物を、互いに分離された状態で有している。すなわち、例えば、本キットにおいて、第一組成物は第一容器に収容され、第二組成物は第二容器に収容される。第一容器と第二容器とは分離された別体として構成することができ、又は一体的に構成することもできる。
【0105】
本キットは、上述の本製造方法に使用することができる。この場合、本製造方法においては、無機繊維及び溶媒を含有する第一組成物と、イソシアネート系硬化性化合物を含有する第二組成物と、を混合して不定形断熱材組成物を調製し硬化することにより断熱材を形成する。
【0106】
すなわち、第一組成物と第二組成物とを混合して、上述のような不定形断熱材組成物を調製し、当該不定形断熱材組成物を水その他の活性水素化合物の存在下で硬化させることにより、上述のような本断熱材を製造する。
【0107】
また、本キットは、上述の本施工方法に使用することができる。この場合、本施工方法においては、無機繊維及び溶媒を含有する第一組成物と、イソシアネート系硬化性化合物を含有する第二組成物と、混合して不定形断熱材組成物を調製し、当該不定形断熱材組成物を構造物に適用して硬化する。
【0108】
すなわち、第一組成物と第二組成物とを混合して、上述のような不定形断熱材組成物を調製し、当該不定形断熱材組成物を構造物に塗布又は充填するとともに水その他の活性水素化合物の存在下で硬化させることにより、上述のような本断熱材を当該構造物に施工する。
【0109】
また、構造物の目地部分に形成された空間に不定形断熱材組成物を充填して硬化することにより、当該構造物に断熱性目地材である本断熱材を施工する場合には、第一組成物と第二組成物とを混合するノズルを備えた容器を使用することができる。
【0110】
すなわち、この場合、第一組成物及び第二組成物をそれぞれ収容する第一室及び第二室と、当該第一室及び第二室からそれぞれ押し出された当該第一組成物及び当該第二組成物が混合されるとともに射出されるノズルと、を備えた容器を使用することにより、構造物に形成された任意の形状の空間に不定形混合組成物を効率よく注入することができる。
【0111】
なお、上述の本製造方法や本施工方法において使用される不定形断熱材組成物は、本キットにより調製されるものに限られない。すなわち、例えば、上述したような無機繊維と、溶媒と、イソシアネート系硬化性化合物と、を含有する不定形断熱材組成物を使用することができる。
【0112】
この不定形断熱材組成物は、イソシアネート系硬化性化合物を、未反応の状態で含有する。すなわち、不定形断熱材組成物は、例えば、水その他の活性水素化合物等、イソシアネート系硬化性化合物と反応して硬化反応を進行させる成分を含有しない。
【0113】
また、この不定形断熱材組成物は、上述したような弾性付与剤、触媒、耐熱性粉末、結合剤、増粘剤、分散剤、防腐剤、防錆剤及び凍結防止剤のうち一部又は全部を含有することもできる。
【0114】
そして、このような不定形断熱材組成物を使用して断熱材を形成する場合には、当該不定形断熱材組成物に、上述のような水その他の活性水素化合物を添加することにより、当該不定形断熱材組成物を硬化させて、迅速且つ確実に本断熱材を形成することができる。
【0115】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0116】
第一組成物としては、水76.9重量%、生体溶解性無機繊維(ファインフレックスファイバー、ニチアス株式会社)18.3重量%、アルミナ粉末(日本軽金属株式会社)1.8重量%、メチルセルロースを含有する増粘剤(信越化学工業株式会社)、分散剤(中部サイデン株式会社)、硫黄を含有する防腐剤(武田薬品工業株式会社)、防錆剤(テイカ株式会社)及び曳糸材(東亜合成株式会社)を含有する不定形組成物を使用した。
【0117】
第二組成物としては、イソシアネート系硬化性化合物として、ウレタンプレポリマー55重量%、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)10重量%、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(粗MDI)10重量%を含有する不定形組成物(ポリグラウトM−2、第一工業製薬株式会社)を使用した。なお、第二組成物は、可塑剤を25重量%含有し、溶媒を含有しない無溶媒系の組成物であった。
【0118】
そして、第一組成物、第二組成物、さらに耐熱性粉末であるコロイダルシリカ(平均粒子径15μm)を30重量%含有する無機バインダー(スノーテック30、日産化学工業株式会社)、凍結防止剤(エチレングリコール)及び可塑剤(TCP)を混合して、組成が互いに異なる複数の不定形断熱材組成物を調製した。
【0119】
具体的には、第一組成物、無機バインダー、凍結防止剤の含有量、及び第二組成物と可塑剤との合計含有量が同一であって、当該第二組成物の含有量が互いに異なる5種類の不定形断熱材組成物を調製した。また、比較のため、第一組成物、無機バインダー、凍結防止剤の含有量は同一であって、第二組成物を含有せず、可塑剤のみ含有する不定形断熱材組成物も調製した。
【0120】
これら6種類の不定形断熱材組成物はいずれも、水64.9重量%、生体溶解性無機繊維15.4重量%、耐熱性粉末1.5重量%、無機バインダー4.4重量%、凍結防止剤2.2重量%を含有していた。
【0121】
そして、各不定形断熱材組成物について、密度及びちょう度を測定した。密度は、所定容積の型に充填した不定形断熱材組成物の重量を測定し、当該重量と当該容積とから算出した。
【0122】
ちょう度は、JIS K 2220に準じ、ちょう度計(針入度試験器、株式会社丸菱科学機械製作所)を用いて測定した。試料容器として、内径100mm、内高50mmの金属カップを使用し、円すいには、オプション円すいを使用した。ちょう度は、第一組成物、第二組成物及びその他の添加剤を混合して不定形断熱材組成物を調製した直後、調製してから5分経過後、及び調製してから15分経過後に測定した。
【0123】
また、各不定形断熱材組成物を硬化させることにより形成された断熱材について、密度及び硬度を測定した。密度は、上述のように型に入れた不定形断熱材組成物を100℃で24時間維持して硬化及び乾燥させた後、当該不定形断熱材組成物を当該型から取り出して重量を測定し、当該重量と当該容積とから算出した。
【0124】
硬度は、JIS S 6050(「6.2 硬さ」)に規定の方法で測定した。すなわち、押針が半球状のスプリング硬さ試験機を使用して、水平に保持した試験片の表面に当該硬さ試験機の当該押針が鉛直になるように接触させ、目盛を読み取った。
【0125】
図1には、6種類の不定形断熱材組成物A〜Fの各々について、ウレタンプレポリマー、MDI及び粗MDIの含有量(重量%)と、密度(g/cm)及びちょう度と、を対応させて示す。なお、ウレタンプレポリマー、MDI及び粗MDIの含有量は、各不定形断熱材組成物における第二組成物の含有量及び当該第二組成物におけるこれらイソシアネート系硬化性化合物の含有量に基づき算出した。
【0126】
図1に示すように、イソシアネート系硬化性化合物を含有する不定形断熱材組成物B〜Fは、イソシアネート系硬化性化合物を含有しない不定形断熱材組成物Aに比べて、ちょう度が低かった。すなわち、不定形断熱材組成物がイソシアネート系硬化性化合物を含有することによって流動性が低下し、施工性が向上することが示された。
【0127】
また、不定形断熱材組成物B〜Fについては、イソシアネート系硬化性化合物の含有量が増加するにつれて、ちょう度が低下した。すなわち、不定形断熱材組成物におけるイソシアネート系硬化性化合物の含有量を増加させることによって流動性が低下し、施工性が向上することが示された。
【0128】
また、いずれの不定形断熱材組成物A〜Fについても、調製してからの経過時間が長くなるにつれてちょう度が低下したが、不定形断熱材組成物B〜Fのちょう度は、不定形断熱材組成物Aに比べて急激に低下した。すなわち、不定形断熱材組成物がイソシアネート系硬化性化合物を含有することによって速やかに硬化することが示された。
【0129】
また、不定形断熱材組成物B〜Fについては、イソシアネート系硬化性化合物の含有量が増加するにつれて、ちょう度がより急激に低下した。すなわち、不定形断熱材組成物におけるイソシアネート系硬化性化合物の含有量を増加させることによって硬化を促進できることが示された。
【0130】
図2には、図1に示す6種類の不定形断熱材組成物A〜Fから形成された断熱材A〜Fについて、密度及び硬度を示す。図2に示すように、6種類の不定形断熱材組成物A〜Fについて、密度及び硬度に大きな差は見られなかった。すなわち、不定形断熱材組成物にイソシアネート系硬化性化合物を添加することにより、密度及び硬度について不都合は生じないことが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維及び溶媒を含有する第一不定形組成物と、
イソシアネート系硬化性化合物を含有する第二不定形組成物と、
を有する
ことを特徴とする断熱材形成キット。
【請求項2】
無機繊維と、溶媒と、イソシアネート系硬化性化合物と、を含有する不定形断熱材組成物を硬化することにより形成された
ことを特徴とする断熱材。
【請求項3】
無機繊維と、イソシアネート系硬化性化合物の硬化反応生成物と、を含有する
ことを特徴とする断熱材。
【請求項4】
無機繊維と、溶媒と、イソシアネート系硬化性化合物と、を含有する不定形断熱材組成物を硬化することにより断熱材を形成する
ことを特徴とする断熱材の製造方法。
【請求項5】
前記無機繊維及び前記溶媒を含有する第一不定形組成物と、前記イソシアネート系硬化性化合物を含有する第二不定形組成物と、を混合して前記不定形断熱材組成物を調製し硬化することにより前記断熱材を形成する
ことを特徴とする請求項4に記載された断熱材の製造方法。
【請求項6】
無機繊維と、溶媒と、イソシアネート系硬化性化合物と、を含有する不定形断熱材組成物を構造物に適用して硬化することにより、前記構造物に断熱材を施工する
ことを特徴とする断熱材の施工方法。
【請求項7】
前記無機繊維及び前記溶媒を含有する第一不定形組成物と、前記イソシアネート系硬化性化合物を含有する第二不定形組成物と、混合して前記不定形断熱材組成物を調製し、
前記不定形断熱材組成物を前記構造物に適用して硬化する
ことを特徴とする請求項6に記載された断熱材の施工方法。
【請求項8】
前記構造物の目地部分に形成された空間に前記不定形断熱材組成物を充填して硬化することにより、前記構造物に断熱性目地材である前記断熱材を施工する
ことを特徴とする請求項6又は7に記載された断熱材の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−241640(P2010−241640A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92443(P2009−92443)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】