断熱材料及びその形成に関連する方法
断熱材料及び該断熱材料の形成方法を提供する。断熱材料は、温度に応じて形状変化するよう構成されているので、例えば、断熱材料は、温度が低下するにつれて断熱性が大きくなってもよい。例えば、断熱材料は、温度低下に応じてカールすることなどにより形状変化する複数の繊維を含むことにより、これに応じて断熱特性が変化してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般に、断熱材料に関し、より詳細には、温度変化に応じて形状が変化するよう構成された断熱材料、及び、該断熱材料を形成するための関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱材料は、広範な用途に利用されている。例えば、宇宙機及びその他の航空輸送手段は一般に断熱材を含むことにより、それがなければ曝される可能性のある比較的極端な温度から乗員及び/又は貨物を保護している。別の例として、ジャケットのような衣服は、寒冷な気候において着用者を暖かく保つのを助ける1層以上の断熱材を含むことがある。宇宙機、衣服及びその他の用途で利用されている断熱材は、一般的に、比較的変化のない熱的条件に対しては適しているかもしれないが、周囲温度が上昇する場合、断熱ジャケットの着用者が運動するか、そうでなければ自らの代謝率を上昇させる場合、又は、日陰から日向へ移動するとき起こるであろうように放射熱負荷が変化する場合といった、熱的条件の変化につれて、不適当又は不必要になることがある。実際、断熱衣服は一般的に、一定の耐熱性を有するので、着用者は、周囲温度の変化、着用者の代謝率の変化、又は、放射熱負荷の変化につれて、暑過ぎたり寒過ぎたりするようになる場合がある。着用者が暑過ぎるようになる場合は、着用者は、衣服を脱ぐことができるが、そうすると、脱いだ衣服を運ぶかそうでなければ責任を持って処理する必要にさいなまれる。
【0003】
衣服の中には、条件変化に伴って衣服の耐熱性を変えようと設計されたものもある。例えば、いくつかのスキーウェアには、開閉可能な通気穴がある。開放時には、通気穴により、空気が断熱層の周囲を流れ、着用者を冷却する。こうして、スキーヤーは、温度が上昇したとき、1回又はそれ以上の滑走後スキーヤーの代謝率が上昇したとき、又は、放射熱負荷が増大したときに、自らの衣服の通気穴を開放することができる。反対に、スキーヤーは、温度が下がった場合、スキーヤーの代謝率が低下した場合、又は、放射熱負荷が低下した場合は、通気穴を閉鎖して、断熱層の周囲の空気の流れを制限することにより、暖かさを保つことができる。また、引っ張るとジャケット内の断熱材料の位置がずれるため、ジャケットの断熱特性が変わる紐を有するスキージャケットも開発されている。
【0004】
上記のスキーウェアは、スキーウェアの断熱特性を少なくとも幾分かは修正するが、このスキーウェアは依然として、比較的狭い範囲の温度、代謝率及び放射熱負荷に亘る許容可能な断熱を提供するに過ぎず、それ自体では、温度、代謝率及び/又は放射熱負荷のいずれかのより大きい変化に十分対応することができない。さらに、上記のスキーウェアでは、着用者が手動で介入する必要があり、これがある状況下では望ましくない可能性があったり、他の場合では着用者が見落としたり忘れたりする可能性がある。
【0005】
したがって、可変断熱特性を提供することにより、温度、代謝率及び/又は放射熱負荷の変化といった熱的特性が変化する際にも適切な断熱を提供するよう構成された改良型断熱材料を開発することが望まれるであろう。
【発明の概要】
【0006】
本発明のさまざまな側面にしたがって、断熱材料及び該断熱材料を形成するための方法を提供する。断熱材料は、温度に応じて形状が変化するよう構成されているので、例えば、一実施形態の断熱材料は、温度低下に伴い断熱性が増大する可能性がある。したがって、断熱材料及び該断熱材料を組み込んだ適応衣服物品により、着用者は、より広い温度範囲に亘って快適さを保つことができる。というのも、より暖かい温度では、断熱材料の断熱性が小さくなるので、着用者がより涼しさを保つことができる一方で、より涼しい温度では、断熱材料の断熱性が大きくなることにより、着用者がより暖かさを保つことができるからである。あるいは、例えば、消防士の用いるような高温に対する保護のための衣服に望まれる可能性のあるように、温度上昇に伴って、より断熱性が大きくなるよう断熱材料を調整してもよい。
【0007】
本発明の一側面にしたがって、少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから形成され、第1構成要素と第2構成要素とが、つなぎ合わされ、且つ、それぞれ第1材料と第2材料とから構成される適応断熱材料を提供する。第1材料と第2材料とは熱膨張率が異なり、その結果、断熱材料は、温度変化に応じて形状が変化するよう構成されている。一実施形態の適応断熱材はまた、断熱材料が一体化された非適応断熱材料を含んでいてもよい。
【0008】
一実施形態において、断熱材料は、複数の繊維を含んでおり、該繊維の一部は、熱膨張率の異なる少なくとも第1材料と第2材料とから構成されている。その結果、各繊維は、温度変化に応じてカールするかそうでなければ変形することにより形状が変化するよう構成されている。この点で、各繊維は、温度変化に応じて少なくとも一次元において膨張するよう構成されていてもよく、この結果、複数の繊維は、繊維間でより大きく、且つ/又は、より多数の空隙を生じ、且つ、それに応じて断熱材料の断熱性が増大する。
【0009】
一実施形態において、第1材料と第2材料とはともに、それぞれの繊維に沿って長手方向に延在する。第1材料と第2材料とのうちの少なくとも一方は、それぞれの繊維に沿った長手方向において相対位置、形状又は大きさのうちの少なくとも1つが変化してもよい。別の実施形態において、複数の繊維の各々は、中立温度を有し、中立温度からの温度変化に伴い、繊維はその形状が変化するよう構成されている。この実施形態において、複数の繊維は、第1の中立温度と、それとは異なる第2の中立温度とをそれぞれ有する繊維の第1の組又は層と第2の組又は層とを含むことができる。こうして、この実施形態の断熱材料は、異なる温度範囲内において形状が変化する繊維を含み、これにより、断熱材料を、さらに広い温度範囲に亘って有用とすることができる。
【0010】
一実施形態において、第1構成要素は、第1材料から形成されたシートを含んでいてもよい。この実施形態において、第2構成要素は、シート上に配置されて、互いに離間した複数の第2材料の細片を含んでいてもよい。この実施形態の第1構成要素と第2構成要素とのうちの少なくとも一方はまた、断熱材料の形状変化に応じて開放構成と閉鎖構成との間で変化する少なくとも1つの開口を画定していてもよい。第1構成要素が第1材料から形成されたシートを含む別の実施形態において、第2の構成要素を形成する第2材料は、第1材料より熱膨張率が低いことから、第2構成要素を、繊維の縫い目の形態といったシートの一部のみに接合することにより、シートの膨張の仕方を限定してもよい。
【0011】
本発明の別の側面にしたがって、適応断熱材の形成方法を提供する。該方法では、少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから適応断熱材料を形成する。第1構成要素と第2構成要素とは、つなぎ合わされ、且つ、熱膨張率の異なる第1材料と第2材料とからそれぞれ形成される。こうして、断熱材料は、温度変化に応じて形状が変化するよう構成される。また、該方法により、適応断熱材料を非適応断熱材料と一体化してもよい。
【0012】
一実施形態において、断熱材料は、複数の繊維から形成され、各繊維は、第1構成要素と第2構成要素とから形成されている。複数の繊維の各々は、中立温度を有していてもよく、且つ、繊維は、中立温度からの温度変化に伴って形状が変化するよう構成されていてもよい。こうして、断熱材料は、第1の中立温度と、それとは異なる第2中立温度とをそれぞれ有する繊維の第1の組と第2の組とから形成されていてもよい。
【0013】
別の実施形態において、第1構成要素は、第1材料から形成されるシートを含んでいてもよく、且つ、第2構成要素は、複数の第2材料の細片を含んでいてもよい。こうして、断熱材料は、複数の第2材料の細片を、複数の細片が互いに離間した状態でシートに接合することにより形成してもよい。第1構成要素と第2構成要素とのうちの少なくとも一方において、少なくとも1つの開口が画定されていてもよい。この点において、開口は、断熱材料の形状変化に応じて開放構成と閉鎖構成との間で変化するよう構成されていてもよい。第1構成要素が第1材料から形成されるシートを含む別の実施形態において、断熱材料は、2つの材料の熱膨張が異なることによりシートが離れる方向の力を受けるように、第2構成要素をシートの一部のみに接合することにより形成してもよい。
【0014】
これまで一般的な用語で本発明を説明してきたが、ここで、一律の縮尺に必ずしも従わずに描かれている添付の図面に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施形態にしたがって作製され、着用者が着用するジャケットのような衣服物品の分解斜視図である。
【図2a】図2aは、本発明の一実施形態に係る直線状の繊維の斜視図である。
【図2b】図2bは、本発明の一実施形態に係るカールした繊維の斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係るスプールに巻かれている押し出し成形繊維の斜視図である。
【図4a】図4aは、本発明の別の実施形態に係る直線状の繊維の斜視図である。
【図4b】図4bは、本発明の別の実施形態に係るカールした繊維の斜視図である。
【図5a】図5aは、本発明のさらなる実施形態に係る直線状の繊維の斜視図である。
【図5b】図5bは、本発明のさらなる実施形態に係るカールした繊維の斜視図である。
【図6a】図6aは、本発明のさらに別の実施形態に係る直線状の繊維の斜視図である。
【図6b】図6bは、本発明のさらに別の実施形態に係るカールした繊維の斜視図である。
【図7a】図7aは、本発明の別の実施形態に係る断熱材料の斜視図である。
【図7b】図7bは、本発明の別の実施形態に係る断熱材料の斜視図である。
【図8a】図8aは、本発明のさらに別の実施形態に係る断熱材料の斜視図である。
【図8b】図8bは、本発明のさらに別の実施形態に係る断熱材料の斜視図である。
【図9a】図9aは、本発明の別の実施形態に係る断熱材料の側面図である。
【図9b】図9bは、本発明の別の実施形態に係る断熱材料の側面図である。
【図10a】図10aは、本発明のさらに別の実施形態に係る断熱材料の側面図である。
【図10b】図10bは、本発明のさらに別の実施形態に係る断熱材料の側面図である。
【図11a】図11aは、本発明のさらなる実施形態に係る断熱材料の斜視図である。
【図11b】図11bは、本発明のさらなる実施形態に係る断熱材料の斜視図である。
【図12】図12は、本発明に係る断熱材料のさらに別の実施形態の斜視図である。
【図13a】図13aは、中立温度における本発明の一実施形態に係る断熱材料の模式図である。
【図13b】図13bは、中立温度を外れた本発明の一実施形態に係る断熱材料の模式図である。
【図14a】図14aは、中立温度における本発明の別の実施形態に係る断熱材料の模式図である。
【図14b】図14bは、中立温度を外れた本発明の別の実施形態に係る断熱材料の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付の図面を参照して、本発明をさらに十分に説明する。添付図面においては、本発明のすべてではないがいくつかの実施形態が示されている。実際、これらの発明は、多くの異なる形態で実施可能であり、ここに記載されている実施形態に限定して解釈すべきではなく、むしろ、これら実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすよう提供されている。同様の番号は、全体を通じて同様の要素を指している。
【0017】
ここで図1を参照して、本発明の実施形態にしたがって作製された衣服10の物品を描写する。衣服物品は、ジャケットとして示されているが、本発明の実施形態にしたがってその他の広範な衣服物品が作製可能である。さらに、本発明の実施形態の断熱材料を、衣服物品の作製に関連して大まかに説明しているが、断熱材料は、例えば、宇宙機やその他の輸送手段などを熱的に保護するための断熱材料の使用を含むその他の広範な用途において使用してもよい。
【0018】
図1を参照して、例えば、本発明の一実施形態にしたがって形成される衣服10の物品は、間に空隙のようなポケットを画定する第1衣服層及び第2衣服層12を含む。示されている実施形態にあるように、第1衣服層及び第2衣服層は、衣服物品の内層及び外層であってもよい。あるいは、第1衣服層と第2衣服層とのうちの一方又は両方は、ジャケットやその他の衣服物品の内部に配置される内層であってもよい。図1のジャケットはまた、第1衣服層と第2衣服層との間に画定されるポケット内のような、第1衣服層と第2衣服層との間に配置される適応断熱材料14を含んでいる。下に説明するように、断熱材料は、温度変化に応じて形状が変化するよう構成されており、これにより、種々の温度において異なる断熱の程度を提供する。有利な一実施形態において、例えば、断熱材料は、着用者が涼しいように、より高い温度においてはより断熱性が小さくなり、着用者が暖かいように、より低い温度においてはより断熱性が大きくなるよう設計されている。以下の説明において明らかとなるように、断熱材料の形状変化に影響する温度は、断熱材料自体が曝される温度であるので、一般的に、周囲温度と着用者の体温との組み合わせである。こうして、周囲温度が比較的低いままである場合でさえ、自らの代謝率を上昇させるので体温が上がるような運動又はその他の課題を行っている着用者は、それに応じて断熱材料が曝されている温度を上昇させる傾向にあり、断熱材料を断熱性が小さくなるように形状変化させることにより、運動やその他の活動による過熱を回避するよう比較的寒い周囲温度により着用者を幾分冷却することができる。
【0019】
適応断熱材料14は、下に説明するように、さまざまな手法で作製することができる。ただし、さまざまな実施形態の各々において、断熱材料は、少なくとも第1構成要素及び第2構成要素から形成されている。第1構成要素と第2構成要素とは、つなぎ合わされており、且つ、今度は、第1材料と第2材料とからそれぞれ構成されている。第1材料と第2材料とは、熱膨張率が異なり、こうして、これに応じて断熱材料は、断熱材料の熱伝導性を変化させるために温度変化に応じて形状が変化する。要件とはなっていないが、本発明の実施形態の熱適応断熱材料は、典型的に、非適応断熱材料内に配置され、又はそうでなければこれと一体化されており、この結果、熱適応断熱材料の形状変化によってもまた、非適応断熱材料の熱的性能が変わる。ここで用いられているように、非適応断熱材料は、温度が上昇すると膨張、低下すると収縮することにより大きさが変化するが、第1構成要素及び第2構成要素の適応断熱材料の形成により引き起こされるような、例えば、カールや直線状に伸ばすことによるような形状の変化はないヤーンのような断熱材料である。
【0020】
一実施形態において、断熱材料14は、複数の繊維16から形成されており、各繊維は、第1構成要素18と第2構成要素20とから形成されている。言い換えると、図2aに示されているように、各繊維は、第1材料から構成される第1部分、すなわち、第1構成要素と、第2材料から構成される第2部分、すなわち、第2構成要素とから形成されている。上に触れたように、第1材料と第2材料とは、熱膨張率が異なっていてもよい。繊維は、さまざまな手法で形成可能であるが、繊維は、第1材料及び第2材料を同時押し出し成形して成形してもよい。繊維は、材料をさまざまに組み合わせて形成してもよいが、一実施形態の繊維は、ナイロンのような別のポリマーとともに、又は、熱膨張率を変えるように架橋することにより改質したポリエチレンとともに、同時押し出し成形したポリエチレンから形成されている。あるいは、繊維は、石英ガラス繊維を他のガラス、例えは、ホウケイ酸ガラスと同時押し出し成形して、複合繊維を形成することにより、形成可能である。
【0021】
押し出し成形機から出ると、繊維は一般的に、押し出しプロセスが行われた高温から室温へというように温度が低下するとともに、ねじれて密なコイル状になろうとする。繊維が密にカールすることを防ぐために、押し出し成形ヘッド19からスプール18へと繊維16を引っ張り、プラスチックが硬化する温度―典型的にはガラス遷移温度より低い温度まで徐冷しながら、固定半径に保持してもよい。図3に示されているように、このプロセスは、最後に押し出し成形された繊維が巻かれているスプールの入口部分20が高温に維持される一方で、繊維が引き抜かれるか、又は、取り外されるスプールの出口部分22がもっと低い温度に維持されている状態で、押し出し成形された繊維がスプールの周りに螺旋構成で巻かれて比較的連続して行われてもよい。スプールの入口部分と出口部分との間で、スプールの温度は、入口部分の高温から出口部分のより低い温度へと遷移することができる。
【0022】
スプール18の直径は、少なくとも部分的に、結果として得られる繊維16の中立温度を規定している。例えば、スプールが、無限の又は少なくとも非常に大きい直径を有していた場合、繊維は、硬化温度において直線状か、又は、比較的直線状であろうし、図2bに示されているように温度の低下に応じてカールするであろう。反対に、スプールの直径が比較的小さい場合、繊維は、硬化温度において第1方向にカールされ、室温のようなより低い温度においては直線状か、又は、比較的直線状となるだろう。作製後、温度のさらなる低下に応じて、繊維は、硬化温度において繊維がカールした方向とは反対方向にではあるが再度カールするだろう。図2bを参照のこと。いずれの場合でも、繊維が直線状である温度は、繊維の中立温度と考えられる。
【0023】
こうして、断熱材料14は、第1材料及び第2材料から形成される繊維16が、室温において直線状か、又は、比較的直線状であるかもしれないが、温度低下といった温度変化に応じて少なくとも一次元において膨張する、より詳細には、カールすることによるような形状変化が起こるように、形成することができる。カールするか、又はそうでなければ、少なくとも一次元において膨張することにより、複数の繊維は、繊維間でより大きく、且つ/又は、より多数の空隙を生じ、且つ、それに応じて温度低下に伴い断熱材料の断熱性が増大する。この点において、より大きく、且つ/又は、より多数の空隙から生じる材料の空隙率の増加により、材料を通じる伝導経路がより間接的になり、これにより、断熱特性が増大する。したがって、室温において繊維が比較的直線状である本発明の一実施形態の断熱材料を含むジャケット10は、より低い温度における同じジャケットより断熱性が低い。というのも、繊維は、より低い温度に応じてカールされて、断熱性がより大きくなるからである。
【0024】
上に触れたように、繊維16は、押し出し成形されてもよく、こうして、円形断面形状と矩形断面形状との両方を含むさまざまな断面形状及び大きさを有していてもよい。ただし、断熱材料14は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなくその他の広範な手法で形成可能である。例えば、単一材料から形成された従来の繊維は、繊維の長さに沿って別の材料を付与することによりその長手方向に沿って変質させて、熱膨張率の異なる繊維領域を作り出すことができる。例として、スプール18に巻かれた繊維に加硫剤を吹き付けてもよく、又は、スプール自体が巻き付け及び焼きなましプロセス中に繊維にまとわり付く(leech)化学物質を含んでいてもよい。以前のように、処理済み又は被覆済みの繊維を熱硬化させ、結果として得られる繊維の温度変化に応じた挙動をスプールの曲率が規定してもよい。
【0025】
図4aに示されているように、第1材料18から形成されている繊維16はまた、繊維に非対称に塗布されるか、そうでなければ蒸着された第2材料20を有していてもよい。示されている実施形態において、第2材料は、繊維の一方の面に蒸着又は塗布されており、繊維の他方の面には、第2材料が存在しない。第1材料と第2材料とは、熱膨張率が異なるので、繊維は、室温のような中立温度において比較的直線状であり、図4bに示されているように、温度低下のような温度変化に応じてカールするよう形成することができる。
【0026】
繊維16は、その他の広範な手法で形成することができる。図5aに示されているように、第1材料18から形成される繊維は、繊維の一方又は両方の対向する表面に沿って非連続的に付与された第2材料20を有していてもよい。あるいは、図6aに示されているように、第1材料から形成されている繊維は、繊維の長手方向に沿って厚み及び/又は幅が変化するように付与された第2材料を含んでいてもよい。非連続的に、又は、繊維の長手方向に沿って厚み及び/又は幅が変化するように第2材料を付与することにより、結果として得られる繊維は、室温のような中立温度における比較的直線状の構成から温度低下のような温度変化に応じたカールした又は正弦波の構成へと遷移するよう設計可能である。図5b及び図6bに示されているように、非連続的に、又は、繊維の長手方向に沿って厚み及び/又は幅が変化するように第2材料を付与することにより、より低い温度において、カールしていないか、又は、反対方向にもしくは異なる程度でカールしている区分により区切られたカールを有する繊維が生じる可能性がある。
【0027】
繊維16は、同時押し出し成形以外の手法で形成してもよい。例えば、異種の材料、すなわち、熱膨張率の異なる材料から形成された2種類の繊維を、熱及び圧力下で溶着するか、又は、接着剤によりつなぎ合わせてもよい。さらに、2つの異種材料から形成された繊維は、互いに協働する断面を有するように形成してもよく、且つ、互いに押し付けると化学的又は物理的に結合してもよい。
【0028】
断熱材料14は、熱膨張率の異なる第1構成要素18と第2構成要素20とから形成されているが、断熱材料は、必ずしも繊維から形成されている必要はない。図7及び図8に描写されている実施形態において、例えば、第1構成要素は、第1材料から形成されているシート24を含んでいてもよい。この実施形態において、断熱材料の第2構成要素は、シート上に配置されて、互いに離間した第2材料から形成された複数の細片26を含んでいてもよい。この点において、第2材料の細片は、用途によって、図7に示されているような第2材料の帯状片であっても、図8に示されているような第2材料のタブであってもよく、且つ、その他広範な形状及び大きさを有する第2材料の細片であってもよい。第1構成要素と第2構成要素とは、互いにつなぎ合わされていると有利である。例えば、第1構成要素と第2構成要素とは、溶着、接着、もしくはそうでなければ融合されていてもよく、又は、第1材料と第2材料とは、接着剤などにより接合されていてもよい。
【0029】
図7の実施形態において、断熱材料14は、シート24が、室温では比較的平坦又は平面であるが、温度低下によるような温度変化に伴いしわになるか、でこぼこになるか、そうでなければ変形するように形成されていてもよい。これらのシートの複数の層を組み合わせて、温度変化とともに厚み及び/又は熱伝導性が変化する層状材料又は固体を作製することができる。
【0030】
一実施形態において、スリット又はその他の開口28は、第1構成要素と第2構成要素とのうちの少なくとも一方により画定されていてもよい。図7に示されている実施形態において、例えば、開口は、第1構成要素と第2構成要素との両方により画定されていてもよい。開口は、温度変化に応じて開放構成と閉鎖構成との間で遷移するよう設計されていてもよい。この点において、断熱材料が室温のような中立温度にあるときに、断熱材料がほぼ水密となるように開口を閉鎖してもよい。図7aを参照のこと。しかしながら、中立温度から温度が低下するにつれて、断熱材料のしわにより、開口が開放されて、断熱材料の通気性が増し、これにより、着用者が発汗し始めた場合に望まれるであろうように着用者から離れる方向などに水蒸気を運ぶことができる。図7bを参照のこと。
【0031】
あるいは、第2構成要素20は、第1構成部材を形成するシート24につなぎ合わされた複数のタブ26の形態であってもよい。図8に示されているように、開口28は、第2構成部材の周囲、且つ、第1構成部材を貫通して画定されてもよく、下に横たわるシートにおけるタブが比較的平面のままである中立温度において図8aに示されているように閉鎖されているが、温度低下といった温度変化に応じて図8bに示されているようにタブが曲がるのに伴い少なくとも部分的に開放している。タブが比較的小さい場合、結果として得られる断熱材料14は、温度とともに対応して変化する起伏を有する。例えば、断熱材料は、タブが曲がっていない室温においてはより滑らかであり、室温より高い又は低い温度においてはより大きく起伏していてもよい。断熱材料14の通気性はまた、タブの開閉に伴って、温度変化に応じて修正してもよい。
【0032】
図9は、断熱材料14が2枚のシート30から形成されている別の実施形態を示しており、一方のシートは、第1材料から形成されており、他方のシートは第2材料から形成されている。各シートは、概して1つ以上のタブ32を画定する。この点において、タブが、少なくとも1本の縁端に沿ってシートの残りに接続された状態を確実に保ちながら、タブのいくつかの縁端に沿ってシートの残りからタブを分離することにより、各タブを大まかに画定する。矩形のタブに関連して、タブは、タブの3本の縁端に沿ってシートの残りから分離される一方で、タブの4本目の縁端(以下、タブの「基部」と呼ぶ)に沿ってシートの残りに接続された状態が保たれている。材料のシートは、各シートのタブが互いに概して一直線に並んでいるが、タブの自由端32aが互いに対向して位置し、且つ、タブの基部32bもまた互いに対向して位置するように配置されるよう組み立てられる。次いで、タブは、縫い綴じ、溶着、接着又は接着剤などにより1本以上の線に沿って、又は、タブの表面に亘って接合される。材料のシートは、図9aに示されているように中立温度において間に空気の間隙がほとんどないか、又は、全くない状態で互いに隣接して保持されているが、熱膨張率の異なる異種の材料からシートを構成することにより、図9bに示されているように温度低下といった温度変化に応じてシートを分離し、間に空気の間隙を作るようタブが曲がることとなる。これらのシートの複数の層を組み合わせて、温度変化とともに厚み及び/又は熱伝導性が変化する層状材料又は固体を作製することができる。
【0033】
図9の実施形態において、第1シートと第2シート30とが、それぞれのタブ32により互いに直接接合されていてもよいが、材料の第1シートと第2シートとは、図10に示されているように、互いから分離されていてもよく、且つ、中間部材34により接合されていてもよい。この実施形態において、第1シートと第2シートとが同じ材料から形成され、中間部材が熱膨張率の異なる異なった材料から形成されていてもよい。示されているように、中間部材の対向する側面及び対向する端部は、第1シートと第2シートとのタブに接合されている。こうして、図10の実施形態の断熱材料は、温度低下といった温度変化に応じて、図10aに示されている中立温度における比較的折りたたまれた構成から図10bに示されている拡張した構成へと広げることができ、これに対応して材料のシート間の空気の間隙が増加する。室温の変化に応じて空気の間隙を増加させることにより、断熱材料の断熱特性を変える。上記のように、これらシートの複数の層を組み合わせて、温度変化とともに厚み及び/又は熱伝導性が変化する層状材料又は固体を作製することができる。
【0034】
別の実施形態において、第1材料から形成されたシートのような第1構成要素18は、シート上に配置されて、互いに離間した第2材料の複数の細片38を含んでいてもよい。この点において、第2材料の複数の細片は、第1材料の中へ、且つ、これを貫通して縫い綴じされた繊維の縫い目により画定されていてもよい。シートを形成する第1材料より熱膨張率が大きい第2材料から繊維の縫い目を形成することにより、縫い綴じは、第1材料から形成されたシートの残りに対してさらに大きく縮み、その結果、中立温度より低い温度への温度変化により、図11aの断熱材料は、第1材料から形成されたシートが、図11bに示されているようにより熱膨張する縫い目の周りで3次元にカールするか、又は、螺旋状となるように形状変化する。この実施形態は、温度が中立温度より高くまで上昇すると、熱的に不活(thermally passive)であるという特別な特性を有する。あるいは、繊維の縫い目は、熱膨張率がより小さい第2材料から作られていてもよく、これにより、本実施形態は、中立温度より高い温度では熱的適応性を有し、中立温度より低い温度では不活となる。縫い綴じは、少なくとも第1材料のシートの端部において、好ましくは、シートに沿った数多くの点において留め付けられていなければならない。縫い目は、上に述べたように縫い綴じされていてもよいが、あるいは縫い目は、シートの対向する側面に交互に接合された第2材料から形成された細片により形成されていてもよい。
【0035】
上に例示されているように、断熱材料14は、広範な手法で形成することができる。図12に示されているように、断熱材料は、さまざまな形状及び大きさに形成可能である。この点において、熱膨張率の異なる第1材料と第2材料とから形成される2枚のシートを、接着剤、溶剤溶着、熱溶着などによりつなぎ合わせて、帯状片に切り分けてもよい。帯状片をその長手方向に沿って幅が変化するように、又は、第1材料及び第2材料の幅が結果として得られる帯状片の長手方向に沿ってさまざまに変化するウェブ様形状を有するように形成することにより、結果として得られる断熱材料は、中立温度における図12に描写されている形態からより低い温度におけるカールした又は少なくとも部分的にカールした構成へと遷移する。この点において、例えば、第1材料及び第2材料の熱膨張率を含む材料特性を変化させることにより、又は、切り分けの形状又はバイアスを変化させることにより、又は、カールする部分がしない部分の間に又はこれと平行して設置されるように、単一材料からなる部分が、2つの材料からなる部分と交互に又はこれと平行して配置されるよう帯状片を形成することにより、種々のカールを得ることができる。
【0036】
上に説明したように、断熱材料14は、広範な形態及び構成を有することができる。例えば、断熱材料の前述の実施形態の各々は、熱膨張率の異なる2種類の異種材料から形成されていたが、3種類以上の材料が、熱膨張率の異なる少なくとも2種類の材料を含み、温度低下に応じてといったような異なる温度における断熱材料のカールのような形状変化を起こしやすくする限りは、断熱材料は、3種類以上の材料から形成されていてもよい。さらに、これらの繊維、帯状片、シート又は上記の熱的適応性のある材料のその他の形状は、標準的な非適応断熱材料内に配置されてもよく、その結果、熱的適応性のある材料の変形により、温度変化に応じて非適応材料の熱的性能が向上又は低下する。例えば、非適応材料のヤーン内に散在させた適応繊維の短い区分により、ヤーンが、温度変化に伴って膨張し、ヤーンの耐熱性が増大する。例えば、図13a及び図13bを参照のこと。ここでは、ヤーン内に散在した適応繊維の短い区分により、ヤーンが、図13aに示されているような中立温度におけるより折りたたまれた形態から図13bに示されているような中立温度から外れた温度におけるより拡張した形態へ広がっている。
【0037】
上に説明したように、温度変化に応じた適応断熱材料14の形状変化は、中立温度より低い温度への温度降下に伴う断熱材料の厚み増加であってもよい。この形状変化は、今度は、断熱材料の断熱性をより高めることなどにより、断熱材料の熱伝導性の変化を引き起こす。しかしながら、この同じ適応断熱材料はまた、温度が中立温度より高くまで上昇するにつれて、より厚みが増してもよい。より高い温度における断熱材料の厚み増加により高まった断熱特性はまた、断熱材料が、消防士の防護服に組み込まれる場合などにおいて有用かもしれず、該衣服は、消防士が高温に曝されているときにはより大きな保護を提供するが、一旦消防士が高温領域を後にすると厚みが減少して消防士を冷却できる。
【0038】
また、これに代わる実施形態の断熱材料は、温度が、中立温度から高い又は低い方向に外れるにつれて、厚みが減少していくよう構成することも可能である。本実施形態の断熱材料は、例えば、上に説明したような種類の熱的適応繊維を縫い付け、非適応断熱ブランケットとかみ合わせ、且つ、これの厚みを貫通して延在させることを含むさまざまな手法で形成してもよい。この点において、非適応断熱ブランケットは、断熱が望まれる物体に面する内表面と、典型的には外部環境に面する対向する外表面とを有していてもよい。本実施形態において、熱的適応繊維は、非適応断熱ブランケットに縫い付けられていてもよく、且つ、その内表面と外表面との間又は少なくとも部分的に間に延在していてもよい。中立温度から温度が外れるにつれて、熱的適応繊維は、カールするか、そうでなければその長手方向に沿って収縮し、これにより、非適応断熱ブランケットを平坦化して断熱性を低下させる。
【0039】
熱的適応繊維の形成に関連して上に触れたように、熱的適応繊維は、中立温度においてカールするか、そうでなければ収縮するが、温度が低下して中立温度より低くなるにつれて弛緩及び伸張することにより長手方向に膨張するように形成してもよい。本実施形態において、熱的適応繊維は概して、中立温度が、遭遇が予測される中でもっとも低い温度に設定されるように形成される。熱的適応繊維は、編んでヤーンとし、且つ、熱的適応繊維がかなり密にカールしている図14aにおいて(中立温度より高い)室温において示されているように、接着又は絡み合わせによりランダムにつなぎ合わせられていてもよい。温度が低下するにつれて、熱的適応繊維は、弛緩してカールがほどけ始め、これにより、図14bに示されているようにヤーンが膨張する。望まれる場合、断熱材は、全体的に熱的適応繊維から形成してもよく、非適応断熱材料を必ずしも含んでいなくてもよい。
【0040】
さらに、これまで説明した熱的適応繊維のある実施形態は、繊維のカールの増大に応じて長さが短くなる傾向にある。しかしながら、別の実施形態の熱的適応繊維は、対応する繊維の長さ減少を伴わずに同様にカールしてもよい。代わりに、一実施形態の繊維は、繊維の全長の減少を伴わないカールの増大を埋め合わせるために断面の厚みが減少してもよい。
【0041】
ここに説明するように、断熱材料14は、熱膨張率の異なる第1構成要素18と第2構成要素20とから形成されている。第1構成要素と第2構成要素とは、概して、上に説明したように互いに異なる材料から形成されているが、第1構成要素と第2構成要素とは、両要素が単一の材料から形成されていてもよいことから、同じ化学組成を有していてもよい。本実施形態の断熱材料は、破砕、溶融、圧着、化学反応、重合、放射、例えば紫外線硬化といった光照射、熱収縮、レーザー焼結などにより転換された、縁端、縫い目又はその他のパターンといった部分を有していてもよい。折りたたんだ結果、折りたたまれた部分は、すべての断熱材料が依然として同一の材料から形成されていたとしても、より低い熱膨張率といった異なる熱膨張率を有することもある。こうして、断熱材料は、希望により、領域により熱膨張率が異なる状態で単一の材料から形成可能である。
【0042】
上に説明したように、断熱材料14は、中立温度、例えば室温において第1の断熱特性を有し、低下した温度のような他の温度において増大した断熱特性のような他の断熱特性を有するよう形成してもよい。断熱材料が、より広範な温度における適切な断熱を提供できるようにするために、断熱材料は、繊維の2つ以上の層又は組から形成され、繊維の各々の組は、中立温度が異なっていてもよい。こうして、繊維の第1の組は、第1中立温度を有していてもよく、この結果、この第1中立温度より低い温度への温度低下により、繊維の第2の又は他の組ではない(少なくとも同じ程度又は限度までではない)繊維の第1の組が、カールすることなどにより形状変化する。さらに、繊維の第2の組は、第1中立温度より低い第2中立温度を有していてもよい。こうして、繊維の第1の組がカールし始める第1温度を超えてさらに温度が低下することにより、一旦温度が第2中立温度より低くなると、繊維の第2の組もまたカールし始める。こうして、異なる中立温度を有する2組以上の繊維の組から形成される断熱材料は、温度が低下し続けるとともにさらなる断熱程度を提供し、これにより、より広い温度範囲に亘って適切な断熱を与えることができる。2組以上の繊維の組を有する断熱材料に関連して本実施形態を説明したが、断熱材料の本実施形態はまた、希望により他の手法、すなわち、繊維による手法以外で形成された断熱材料を含んでいてもよい。
【0043】
上に述べた手法で断熱材料14を形成し、次いで、図1に関連して上に述べた第1衣服層と第2衣服層12との間に画定されるポケットに断熱材料を配置することにより、温度の低下とともに、又は、着用者の体温の低下とともにより高い断熱性を提供し、温度の上昇、又は、着用者の体温の上昇とともにより低い断熱性を提供することなどにより、結果として得られる衣服10の物品は、種々の温度に適応可能である。さらに、断熱材料の実施形態はまた、希望により、温度変化に応じてより高い通気性を提供可能である。また説明したように、断熱材料は、繊維の風合いにも影響する可能性があり、上に述べた種類の繊維から織られた生地は、中立温度において比較的滑らか且つ平坦であり、中立温度から外れた温度においてはより羊毛質で、且つ、かさ高くなる。こうして、例えば、夏向きの衣服は、秋を通じて温度が低下するにつれて、自動的に厚みが増してもよい。いずれにせよ、断熱材料は、温度変化に伴う断熱材料の形状変化の結果としてのより広い温度範囲を包含するために、より適切な断熱に備えることが有利である。
【0044】
上では主に衣服に関連して説明したが、断熱材料は、宇宙機、航空輸送手段などのその他の広範な用途において用いてもよい。例えば、宇宙機を断熱材料で覆い、断熱材料が太陽光に曝されているか否かによって断熱材料の挙動が変化してもよい。この点において、宇宙機を温めることを望む場合は、太陽光に曝されている宇宙機の側面上の断熱材料は、ほとんど断熱を提供しないかもしれない。というのも、例えば、断熱材料を含む繊維16は、直線状又は比較的直線状を保つことがあるからである。あるいは、日陰にあるか又は直射日光に曝されていない宇宙機の側面の断熱材は、より大きな断熱を提供するかもしれない。というのも、例えば、断熱材料を含む繊維は、カールして、繊維間により大きく、且つ/又は、より多数の空隙を生じ、それに応じて断熱特性が増大することがあるからである。宇宙機を加熱から保護することを望む場合は、断熱部品の中立温度を変化させることにより反対の特性を作り出してもよく、その結果、太陽に曝されている側面は、十分断熱され、且つ、太陽から離れた側面は、宇宙への放射を増大させるためにより断熱が少ない。
【0045】
ここに記載されている発明の数多くの変更及びその他の実施形態は、上記説明及び関連する図面に提示されている教示の恩恵を受けて、これら発明の属する技術分野における当業者により想到されるであろう。したがって、発明は、開示されている特定の実施形態に限定されるべきではなく、且つ、変更及びその他の実施形態は、添付の請求項の範囲内に含まれるよう意図されていることは理解されるべきである。ここでは特定の用語を使用しているが、これらは、一般的且つ記述的意味においてのみ用いられており、限定目的で用いられているのではない。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般に、断熱材料に関し、より詳細には、温度変化に応じて形状が変化するよう構成された断熱材料、及び、該断熱材料を形成するための関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱材料は、広範な用途に利用されている。例えば、宇宙機及びその他の航空輸送手段は一般に断熱材を含むことにより、それがなければ曝される可能性のある比較的極端な温度から乗員及び/又は貨物を保護している。別の例として、ジャケットのような衣服は、寒冷な気候において着用者を暖かく保つのを助ける1層以上の断熱材を含むことがある。宇宙機、衣服及びその他の用途で利用されている断熱材は、一般的に、比較的変化のない熱的条件に対しては適しているかもしれないが、周囲温度が上昇する場合、断熱ジャケットの着用者が運動するか、そうでなければ自らの代謝率を上昇させる場合、又は、日陰から日向へ移動するとき起こるであろうように放射熱負荷が変化する場合といった、熱的条件の変化につれて、不適当又は不必要になることがある。実際、断熱衣服は一般的に、一定の耐熱性を有するので、着用者は、周囲温度の変化、着用者の代謝率の変化、又は、放射熱負荷の変化につれて、暑過ぎたり寒過ぎたりするようになる場合がある。着用者が暑過ぎるようになる場合は、着用者は、衣服を脱ぐことができるが、そうすると、脱いだ衣服を運ぶかそうでなければ責任を持って処理する必要にさいなまれる。
【0003】
衣服の中には、条件変化に伴って衣服の耐熱性を変えようと設計されたものもある。例えば、いくつかのスキーウェアには、開閉可能な通気穴がある。開放時には、通気穴により、空気が断熱層の周囲を流れ、着用者を冷却する。こうして、スキーヤーは、温度が上昇したとき、1回又はそれ以上の滑走後スキーヤーの代謝率が上昇したとき、又は、放射熱負荷が増大したときに、自らの衣服の通気穴を開放することができる。反対に、スキーヤーは、温度が下がった場合、スキーヤーの代謝率が低下した場合、又は、放射熱負荷が低下した場合は、通気穴を閉鎖して、断熱層の周囲の空気の流れを制限することにより、暖かさを保つことができる。また、引っ張るとジャケット内の断熱材料の位置がずれるため、ジャケットの断熱特性が変わる紐を有するスキージャケットも開発されている。
【0004】
上記のスキーウェアは、スキーウェアの断熱特性を少なくとも幾分かは修正するが、このスキーウェアは依然として、比較的狭い範囲の温度、代謝率及び放射熱負荷に亘る許容可能な断熱を提供するに過ぎず、それ自体では、温度、代謝率及び/又は放射熱負荷のいずれかのより大きい変化に十分対応することができない。さらに、上記のスキーウェアでは、着用者が手動で介入する必要があり、これがある状況下では望ましくない可能性があったり、他の場合では着用者が見落としたり忘れたりする可能性がある。
【0005】
したがって、可変断熱特性を提供することにより、温度、代謝率及び/又は放射熱負荷の変化といった熱的特性が変化する際にも適切な断熱を提供するよう構成された改良型断熱材料を開発することが望まれるであろう。
【発明の概要】
【0006】
本発明のさまざまな側面にしたがって、断熱材料及び該断熱材料を形成するための方法を提供する。断熱材料は、温度に応じて形状が変化するよう構成されているので、例えば、一実施形態の断熱材料は、温度低下に伴い断熱性が増大する可能性がある。したがって、断熱材料及び該断熱材料を組み込んだ適応衣服物品により、着用者は、より広い温度範囲に亘って快適さを保つことができる。というのも、より暖かい温度では、断熱材料の断熱性が小さくなるので、着用者がより涼しさを保つことができる一方で、より涼しい温度では、断熱材料の断熱性が大きくなることにより、着用者がより暖かさを保つことができるからである。あるいは、例えば、消防士の用いるような高温に対する保護のための衣服に望まれる可能性のあるように、温度上昇に伴って、より断熱性が大きくなるよう断熱材料を調整してもよい。
【0007】
本発明の一側面にしたがって、少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから形成され、第1構成要素と第2構成要素とが、つなぎ合わされ、且つ、それぞれ第1材料と第2材料とから構成される適応断熱材料を提供する。第1材料と第2材料とは熱膨張率が異なり、その結果、断熱材料は、温度変化に応じて形状が変化するよう構成されている。一実施形態の適応断熱材はまた、断熱材料が一体化された非適応断熱材料を含んでいてもよい。
【0008】
一実施形態において、断熱材料は、複数の繊維を含んでおり、該繊維の一部は、熱膨張率の異なる少なくとも第1材料と第2材料とから構成されている。その結果、各繊維は、温度変化に応じてカールするかそうでなければ変形することにより形状が変化するよう構成されている。この点で、各繊維は、温度変化に応じて少なくとも一次元において膨張するよう構成されていてもよく、この結果、複数の繊維は、繊維間でより大きく、且つ/又は、より多数の空隙を生じ、且つ、それに応じて断熱材料の断熱性が増大する。
【0009】
一実施形態において、第1材料と第2材料とはともに、それぞれの繊維に沿って長手方向に延在する。第1材料と第2材料とのうちの少なくとも一方は、それぞれの繊維に沿った長手方向において相対位置、形状又は大きさのうちの少なくとも1つが変化してもよい。別の実施形態において、複数の繊維の各々は、中立温度を有し、中立温度からの温度変化に伴い、繊維はその形状が変化するよう構成されている。この実施形態において、複数の繊維は、第1の中立温度と、それとは異なる第2の中立温度とをそれぞれ有する繊維の第1の組又は層と第2の組又は層とを含むことができる。こうして、この実施形態の断熱材料は、異なる温度範囲内において形状が変化する繊維を含み、これにより、断熱材料を、さらに広い温度範囲に亘って有用とすることができる。
【0010】
一実施形態において、第1構成要素は、第1材料から形成されたシートを含んでいてもよい。この実施形態において、第2構成要素は、シート上に配置されて、互いに離間した複数の第2材料の細片を含んでいてもよい。この実施形態の第1構成要素と第2構成要素とのうちの少なくとも一方はまた、断熱材料の形状変化に応じて開放構成と閉鎖構成との間で変化する少なくとも1つの開口を画定していてもよい。第1構成要素が第1材料から形成されたシートを含む別の実施形態において、第2の構成要素を形成する第2材料は、第1材料より熱膨張率が低いことから、第2構成要素を、繊維の縫い目の形態といったシートの一部のみに接合することにより、シートの膨張の仕方を限定してもよい。
【0011】
本発明の別の側面にしたがって、適応断熱材の形成方法を提供する。該方法では、少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから適応断熱材料を形成する。第1構成要素と第2構成要素とは、つなぎ合わされ、且つ、熱膨張率の異なる第1材料と第2材料とからそれぞれ形成される。こうして、断熱材料は、温度変化に応じて形状が変化するよう構成される。また、該方法により、適応断熱材料を非適応断熱材料と一体化してもよい。
【0012】
一実施形態において、断熱材料は、複数の繊維から形成され、各繊維は、第1構成要素と第2構成要素とから形成されている。複数の繊維の各々は、中立温度を有していてもよく、且つ、繊維は、中立温度からの温度変化に伴って形状が変化するよう構成されていてもよい。こうして、断熱材料は、第1の中立温度と、それとは異なる第2中立温度とをそれぞれ有する繊維の第1の組と第2の組とから形成されていてもよい。
【0013】
別の実施形態において、第1構成要素は、第1材料から形成されるシートを含んでいてもよく、且つ、第2構成要素は、複数の第2材料の細片を含んでいてもよい。こうして、断熱材料は、複数の第2材料の細片を、複数の細片が互いに離間した状態でシートに接合することにより形成してもよい。第1構成要素と第2構成要素とのうちの少なくとも一方において、少なくとも1つの開口が画定されていてもよい。この点において、開口は、断熱材料の形状変化に応じて開放構成と閉鎖構成との間で変化するよう構成されていてもよい。第1構成要素が第1材料から形成されるシートを含む別の実施形態において、断熱材料は、2つの材料の熱膨張が異なることによりシートが離れる方向の力を受けるように、第2構成要素をシートの一部のみに接合することにより形成してもよい。
【0014】
これまで一般的な用語で本発明を説明してきたが、ここで、一律の縮尺に必ずしも従わずに描かれている添付の図面に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施形態にしたがって作製され、着用者が着用するジャケットのような衣服物品の分解斜視図である。
【図2a】図2aは、本発明の一実施形態に係る直線状の繊維の斜視図である。
【図2b】図2bは、本発明の一実施形態に係るカールした繊維の斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係るスプールに巻かれている押し出し成形繊維の斜視図である。
【図4a】図4aは、本発明の別の実施形態に係る直線状の繊維の斜視図である。
【図4b】図4bは、本発明の別の実施形態に係るカールした繊維の斜視図である。
【図5a】図5aは、本発明のさらなる実施形態に係る直線状の繊維の斜視図である。
【図5b】図5bは、本発明のさらなる実施形態に係るカールした繊維の斜視図である。
【図6a】図6aは、本発明のさらに別の実施形態に係る直線状の繊維の斜視図である。
【図6b】図6bは、本発明のさらに別の実施形態に係るカールした繊維の斜視図である。
【図7a】図7aは、本発明の別の実施形態に係る断熱材料の斜視図である。
【図7b】図7bは、本発明の別の実施形態に係る断熱材料の斜視図である。
【図8a】図8aは、本発明のさらに別の実施形態に係る断熱材料の斜視図である。
【図8b】図8bは、本発明のさらに別の実施形態に係る断熱材料の斜視図である。
【図9a】図9aは、本発明の別の実施形態に係る断熱材料の側面図である。
【図9b】図9bは、本発明の別の実施形態に係る断熱材料の側面図である。
【図10a】図10aは、本発明のさらに別の実施形態に係る断熱材料の側面図である。
【図10b】図10bは、本発明のさらに別の実施形態に係る断熱材料の側面図である。
【図11a】図11aは、本発明のさらなる実施形態に係る断熱材料の斜視図である。
【図11b】図11bは、本発明のさらなる実施形態に係る断熱材料の斜視図である。
【図12】図12は、本発明に係る断熱材料のさらに別の実施形態の斜視図である。
【図13a】図13aは、中立温度における本発明の一実施形態に係る断熱材料の模式図である。
【図13b】図13bは、中立温度を外れた本発明の一実施形態に係る断熱材料の模式図である。
【図14a】図14aは、中立温度における本発明の別の実施形態に係る断熱材料の模式図である。
【図14b】図14bは、中立温度を外れた本発明の別の実施形態に係る断熱材料の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付の図面を参照して、本発明をさらに十分に説明する。添付図面においては、本発明のすべてではないがいくつかの実施形態が示されている。実際、これらの発明は、多くの異なる形態で実施可能であり、ここに記載されている実施形態に限定して解釈すべきではなく、むしろ、これら実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすよう提供されている。同様の番号は、全体を通じて同様の要素を指している。
【0017】
ここで図1を参照して、本発明の実施形態にしたがって作製された衣服10の物品を描写する。衣服物品は、ジャケットとして示されているが、本発明の実施形態にしたがってその他の広範な衣服物品が作製可能である。さらに、本発明の実施形態の断熱材料を、衣服物品の作製に関連して大まかに説明しているが、断熱材料は、例えば、宇宙機やその他の輸送手段などを熱的に保護するための断熱材料の使用を含むその他の広範な用途において使用してもよい。
【0018】
図1を参照して、例えば、本発明の一実施形態にしたがって形成される衣服10の物品は、間に空隙のようなポケットを画定する第1衣服層及び第2衣服層12を含む。示されている実施形態にあるように、第1衣服層及び第2衣服層は、衣服物品の内層及び外層であってもよい。あるいは、第1衣服層と第2衣服層とのうちの一方又は両方は、ジャケットやその他の衣服物品の内部に配置される内層であってもよい。図1のジャケットはまた、第1衣服層と第2衣服層との間に画定されるポケット内のような、第1衣服層と第2衣服層との間に配置される適応断熱材料14を含んでいる。下に説明するように、断熱材料は、温度変化に応じて形状が変化するよう構成されており、これにより、種々の温度において異なる断熱の程度を提供する。有利な一実施形態において、例えば、断熱材料は、着用者が涼しいように、より高い温度においてはより断熱性が小さくなり、着用者が暖かいように、より低い温度においてはより断熱性が大きくなるよう設計されている。以下の説明において明らかとなるように、断熱材料の形状変化に影響する温度は、断熱材料自体が曝される温度であるので、一般的に、周囲温度と着用者の体温との組み合わせである。こうして、周囲温度が比較的低いままである場合でさえ、自らの代謝率を上昇させるので体温が上がるような運動又はその他の課題を行っている着用者は、それに応じて断熱材料が曝されている温度を上昇させる傾向にあり、断熱材料を断熱性が小さくなるように形状変化させることにより、運動やその他の活動による過熱を回避するよう比較的寒い周囲温度により着用者を幾分冷却することができる。
【0019】
適応断熱材料14は、下に説明するように、さまざまな手法で作製することができる。ただし、さまざまな実施形態の各々において、断熱材料は、少なくとも第1構成要素及び第2構成要素から形成されている。第1構成要素と第2構成要素とは、つなぎ合わされており、且つ、今度は、第1材料と第2材料とからそれぞれ構成されている。第1材料と第2材料とは、熱膨張率が異なり、こうして、これに応じて断熱材料は、断熱材料の熱伝導性を変化させるために温度変化に応じて形状が変化する。要件とはなっていないが、本発明の実施形態の熱適応断熱材料は、典型的に、非適応断熱材料内に配置され、又はそうでなければこれと一体化されており、この結果、熱適応断熱材料の形状変化によってもまた、非適応断熱材料の熱的性能が変わる。ここで用いられているように、非適応断熱材料は、温度が上昇すると膨張、低下すると収縮することにより大きさが変化するが、第1構成要素及び第2構成要素の適応断熱材料の形成により引き起こされるような、例えば、カールや直線状に伸ばすことによるような形状の変化はないヤーンのような断熱材料である。
【0020】
一実施形態において、断熱材料14は、複数の繊維16から形成されており、各繊維は、第1構成要素18と第2構成要素20とから形成されている。言い換えると、図2aに示されているように、各繊維は、第1材料から構成される第1部分、すなわち、第1構成要素と、第2材料から構成される第2部分、すなわち、第2構成要素とから形成されている。上に触れたように、第1材料と第2材料とは、熱膨張率が異なっていてもよい。繊維は、さまざまな手法で形成可能であるが、繊維は、第1材料及び第2材料を同時押し出し成形して成形してもよい。繊維は、材料をさまざまに組み合わせて形成してもよいが、一実施形態の繊維は、ナイロンのような別のポリマーとともに、又は、熱膨張率を変えるように架橋することにより改質したポリエチレンとともに、同時押し出し成形したポリエチレンから形成されている。あるいは、繊維は、石英ガラス繊維を他のガラス、例えは、ホウケイ酸ガラスと同時押し出し成形して、複合繊維を形成することにより、形成可能である。
【0021】
押し出し成形機から出ると、繊維は一般的に、押し出しプロセスが行われた高温から室温へというように温度が低下するとともに、ねじれて密なコイル状になろうとする。繊維が密にカールすることを防ぐために、押し出し成形ヘッド19からスプール18へと繊維16を引っ張り、プラスチックが硬化する温度―典型的にはガラス遷移温度より低い温度まで徐冷しながら、固定半径に保持してもよい。図3に示されているように、このプロセスは、最後に押し出し成形された繊維が巻かれているスプールの入口部分20が高温に維持される一方で、繊維が引き抜かれるか、又は、取り外されるスプールの出口部分22がもっと低い温度に維持されている状態で、押し出し成形された繊維がスプールの周りに螺旋構成で巻かれて比較的連続して行われてもよい。スプールの入口部分と出口部分との間で、スプールの温度は、入口部分の高温から出口部分のより低い温度へと遷移することができる。
【0022】
スプール18の直径は、少なくとも部分的に、結果として得られる繊維16の中立温度を規定している。例えば、スプールが、無限の又は少なくとも非常に大きい直径を有していた場合、繊維は、硬化温度において直線状か、又は、比較的直線状であろうし、図2bに示されているように温度の低下に応じてカールするであろう。反対に、スプールの直径が比較的小さい場合、繊維は、硬化温度において第1方向にカールされ、室温のようなより低い温度においては直線状か、又は、比較的直線状となるだろう。作製後、温度のさらなる低下に応じて、繊維は、硬化温度において繊維がカールした方向とは反対方向にではあるが再度カールするだろう。図2bを参照のこと。いずれの場合でも、繊維が直線状である温度は、繊維の中立温度と考えられる。
【0023】
こうして、断熱材料14は、第1材料及び第2材料から形成される繊維16が、室温において直線状か、又は、比較的直線状であるかもしれないが、温度低下といった温度変化に応じて少なくとも一次元において膨張する、より詳細には、カールすることによるような形状変化が起こるように、形成することができる。カールするか、又はそうでなければ、少なくとも一次元において膨張することにより、複数の繊維は、繊維間でより大きく、且つ/又は、より多数の空隙を生じ、且つ、それに応じて温度低下に伴い断熱材料の断熱性が増大する。この点において、より大きく、且つ/又は、より多数の空隙から生じる材料の空隙率の増加により、材料を通じる伝導経路がより間接的になり、これにより、断熱特性が増大する。したがって、室温において繊維が比較的直線状である本発明の一実施形態の断熱材料を含むジャケット10は、より低い温度における同じジャケットより断熱性が低い。というのも、繊維は、より低い温度に応じてカールされて、断熱性がより大きくなるからである。
【0024】
上に触れたように、繊維16は、押し出し成形されてもよく、こうして、円形断面形状と矩形断面形状との両方を含むさまざまな断面形状及び大きさを有していてもよい。ただし、断熱材料14は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなくその他の広範な手法で形成可能である。例えば、単一材料から形成された従来の繊維は、繊維の長さに沿って別の材料を付与することによりその長手方向に沿って変質させて、熱膨張率の異なる繊維領域を作り出すことができる。例として、スプール18に巻かれた繊維に加硫剤を吹き付けてもよく、又は、スプール自体が巻き付け及び焼きなましプロセス中に繊維にまとわり付く(leech)化学物質を含んでいてもよい。以前のように、処理済み又は被覆済みの繊維を熱硬化させ、結果として得られる繊維の温度変化に応じた挙動をスプールの曲率が規定してもよい。
【0025】
図4aに示されているように、第1材料18から形成されている繊維16はまた、繊維に非対称に塗布されるか、そうでなければ蒸着された第2材料20を有していてもよい。示されている実施形態において、第2材料は、繊維の一方の面に蒸着又は塗布されており、繊維の他方の面には、第2材料が存在しない。第1材料と第2材料とは、熱膨張率が異なるので、繊維は、室温のような中立温度において比較的直線状であり、図4bに示されているように、温度低下のような温度変化に応じてカールするよう形成することができる。
【0026】
繊維16は、その他の広範な手法で形成することができる。図5aに示されているように、第1材料18から形成される繊維は、繊維の一方又は両方の対向する表面に沿って非連続的に付与された第2材料20を有していてもよい。あるいは、図6aに示されているように、第1材料から形成されている繊維は、繊維の長手方向に沿って厚み及び/又は幅が変化するように付与された第2材料を含んでいてもよい。非連続的に、又は、繊維の長手方向に沿って厚み及び/又は幅が変化するように第2材料を付与することにより、結果として得られる繊維は、室温のような中立温度における比較的直線状の構成から温度低下のような温度変化に応じたカールした又は正弦波の構成へと遷移するよう設計可能である。図5b及び図6bに示されているように、非連続的に、又は、繊維の長手方向に沿って厚み及び/又は幅が変化するように第2材料を付与することにより、より低い温度において、カールしていないか、又は、反対方向にもしくは異なる程度でカールしている区分により区切られたカールを有する繊維が生じる可能性がある。
【0027】
繊維16は、同時押し出し成形以外の手法で形成してもよい。例えば、異種の材料、すなわち、熱膨張率の異なる材料から形成された2種類の繊維を、熱及び圧力下で溶着するか、又は、接着剤によりつなぎ合わせてもよい。さらに、2つの異種材料から形成された繊維は、互いに協働する断面を有するように形成してもよく、且つ、互いに押し付けると化学的又は物理的に結合してもよい。
【0028】
断熱材料14は、熱膨張率の異なる第1構成要素18と第2構成要素20とから形成されているが、断熱材料は、必ずしも繊維から形成されている必要はない。図7及び図8に描写されている実施形態において、例えば、第1構成要素は、第1材料から形成されているシート24を含んでいてもよい。この実施形態において、断熱材料の第2構成要素は、シート上に配置されて、互いに離間した第2材料から形成された複数の細片26を含んでいてもよい。この点において、第2材料の細片は、用途によって、図7に示されているような第2材料の帯状片であっても、図8に示されているような第2材料のタブであってもよく、且つ、その他広範な形状及び大きさを有する第2材料の細片であってもよい。第1構成要素と第2構成要素とは、互いにつなぎ合わされていると有利である。例えば、第1構成要素と第2構成要素とは、溶着、接着、もしくはそうでなければ融合されていてもよく、又は、第1材料と第2材料とは、接着剤などにより接合されていてもよい。
【0029】
図7の実施形態において、断熱材料14は、シート24が、室温では比較的平坦又は平面であるが、温度低下によるような温度変化に伴いしわになるか、でこぼこになるか、そうでなければ変形するように形成されていてもよい。これらのシートの複数の層を組み合わせて、温度変化とともに厚み及び/又は熱伝導性が変化する層状材料又は固体を作製することができる。
【0030】
一実施形態において、スリット又はその他の開口28は、第1構成要素と第2構成要素とのうちの少なくとも一方により画定されていてもよい。図7に示されている実施形態において、例えば、開口は、第1構成要素と第2構成要素との両方により画定されていてもよい。開口は、温度変化に応じて開放構成と閉鎖構成との間で遷移するよう設計されていてもよい。この点において、断熱材料が室温のような中立温度にあるときに、断熱材料がほぼ水密となるように開口を閉鎖してもよい。図7aを参照のこと。しかしながら、中立温度から温度が低下するにつれて、断熱材料のしわにより、開口が開放されて、断熱材料の通気性が増し、これにより、着用者が発汗し始めた場合に望まれるであろうように着用者から離れる方向などに水蒸気を運ぶことができる。図7bを参照のこと。
【0031】
あるいは、第2構成要素20は、第1構成部材を形成するシート24につなぎ合わされた複数のタブ26の形態であってもよい。図8に示されているように、開口28は、第2構成部材の周囲、且つ、第1構成部材を貫通して画定されてもよく、下に横たわるシートにおけるタブが比較的平面のままである中立温度において図8aに示されているように閉鎖されているが、温度低下といった温度変化に応じて図8bに示されているようにタブが曲がるのに伴い少なくとも部分的に開放している。タブが比較的小さい場合、結果として得られる断熱材料14は、温度とともに対応して変化する起伏を有する。例えば、断熱材料は、タブが曲がっていない室温においてはより滑らかであり、室温より高い又は低い温度においてはより大きく起伏していてもよい。断熱材料14の通気性はまた、タブの開閉に伴って、温度変化に応じて修正してもよい。
【0032】
図9は、断熱材料14が2枚のシート30から形成されている別の実施形態を示しており、一方のシートは、第1材料から形成されており、他方のシートは第2材料から形成されている。各シートは、概して1つ以上のタブ32を画定する。この点において、タブが、少なくとも1本の縁端に沿ってシートの残りに接続された状態を確実に保ちながら、タブのいくつかの縁端に沿ってシートの残りからタブを分離することにより、各タブを大まかに画定する。矩形のタブに関連して、タブは、タブの3本の縁端に沿ってシートの残りから分離される一方で、タブの4本目の縁端(以下、タブの「基部」と呼ぶ)に沿ってシートの残りに接続された状態が保たれている。材料のシートは、各シートのタブが互いに概して一直線に並んでいるが、タブの自由端32aが互いに対向して位置し、且つ、タブの基部32bもまた互いに対向して位置するように配置されるよう組み立てられる。次いで、タブは、縫い綴じ、溶着、接着又は接着剤などにより1本以上の線に沿って、又は、タブの表面に亘って接合される。材料のシートは、図9aに示されているように中立温度において間に空気の間隙がほとんどないか、又は、全くない状態で互いに隣接して保持されているが、熱膨張率の異なる異種の材料からシートを構成することにより、図9bに示されているように温度低下といった温度変化に応じてシートを分離し、間に空気の間隙を作るようタブが曲がることとなる。これらのシートの複数の層を組み合わせて、温度変化とともに厚み及び/又は熱伝導性が変化する層状材料又は固体を作製することができる。
【0033】
図9の実施形態において、第1シートと第2シート30とが、それぞれのタブ32により互いに直接接合されていてもよいが、材料の第1シートと第2シートとは、図10に示されているように、互いから分離されていてもよく、且つ、中間部材34により接合されていてもよい。この実施形態において、第1シートと第2シートとが同じ材料から形成され、中間部材が熱膨張率の異なる異なった材料から形成されていてもよい。示されているように、中間部材の対向する側面及び対向する端部は、第1シートと第2シートとのタブに接合されている。こうして、図10の実施形態の断熱材料は、温度低下といった温度変化に応じて、図10aに示されている中立温度における比較的折りたたまれた構成から図10bに示されている拡張した構成へと広げることができ、これに対応して材料のシート間の空気の間隙が増加する。室温の変化に応じて空気の間隙を増加させることにより、断熱材料の断熱特性を変える。上記のように、これらシートの複数の層を組み合わせて、温度変化とともに厚み及び/又は熱伝導性が変化する層状材料又は固体を作製することができる。
【0034】
別の実施形態において、第1材料から形成されたシートのような第1構成要素18は、シート上に配置されて、互いに離間した第2材料の複数の細片38を含んでいてもよい。この点において、第2材料の複数の細片は、第1材料の中へ、且つ、これを貫通して縫い綴じされた繊維の縫い目により画定されていてもよい。シートを形成する第1材料より熱膨張率が大きい第2材料から繊維の縫い目を形成することにより、縫い綴じは、第1材料から形成されたシートの残りに対してさらに大きく縮み、その結果、中立温度より低い温度への温度変化により、図11aの断熱材料は、第1材料から形成されたシートが、図11bに示されているようにより熱膨張する縫い目の周りで3次元にカールするか、又は、螺旋状となるように形状変化する。この実施形態は、温度が中立温度より高くまで上昇すると、熱的に不活(thermally passive)であるという特別な特性を有する。あるいは、繊維の縫い目は、熱膨張率がより小さい第2材料から作られていてもよく、これにより、本実施形態は、中立温度より高い温度では熱的適応性を有し、中立温度より低い温度では不活となる。縫い綴じは、少なくとも第1材料のシートの端部において、好ましくは、シートに沿った数多くの点において留め付けられていなければならない。縫い目は、上に述べたように縫い綴じされていてもよいが、あるいは縫い目は、シートの対向する側面に交互に接合された第2材料から形成された細片により形成されていてもよい。
【0035】
上に例示されているように、断熱材料14は、広範な手法で形成することができる。図12に示されているように、断熱材料は、さまざまな形状及び大きさに形成可能である。この点において、熱膨張率の異なる第1材料と第2材料とから形成される2枚のシートを、接着剤、溶剤溶着、熱溶着などによりつなぎ合わせて、帯状片に切り分けてもよい。帯状片をその長手方向に沿って幅が変化するように、又は、第1材料及び第2材料の幅が結果として得られる帯状片の長手方向に沿ってさまざまに変化するウェブ様形状を有するように形成することにより、結果として得られる断熱材料は、中立温度における図12に描写されている形態からより低い温度におけるカールした又は少なくとも部分的にカールした構成へと遷移する。この点において、例えば、第1材料及び第2材料の熱膨張率を含む材料特性を変化させることにより、又は、切り分けの形状又はバイアスを変化させることにより、又は、カールする部分がしない部分の間に又はこれと平行して設置されるように、単一材料からなる部分が、2つの材料からなる部分と交互に又はこれと平行して配置されるよう帯状片を形成することにより、種々のカールを得ることができる。
【0036】
上に説明したように、断熱材料14は、広範な形態及び構成を有することができる。例えば、断熱材料の前述の実施形態の各々は、熱膨張率の異なる2種類の異種材料から形成されていたが、3種類以上の材料が、熱膨張率の異なる少なくとも2種類の材料を含み、温度低下に応じてといったような異なる温度における断熱材料のカールのような形状変化を起こしやすくする限りは、断熱材料は、3種類以上の材料から形成されていてもよい。さらに、これらの繊維、帯状片、シート又は上記の熱的適応性のある材料のその他の形状は、標準的な非適応断熱材料内に配置されてもよく、その結果、熱的適応性のある材料の変形により、温度変化に応じて非適応材料の熱的性能が向上又は低下する。例えば、非適応材料のヤーン内に散在させた適応繊維の短い区分により、ヤーンが、温度変化に伴って膨張し、ヤーンの耐熱性が増大する。例えば、図13a及び図13bを参照のこと。ここでは、ヤーン内に散在した適応繊維の短い区分により、ヤーンが、図13aに示されているような中立温度におけるより折りたたまれた形態から図13bに示されているような中立温度から外れた温度におけるより拡張した形態へ広がっている。
【0037】
上に説明したように、温度変化に応じた適応断熱材料14の形状変化は、中立温度より低い温度への温度降下に伴う断熱材料の厚み増加であってもよい。この形状変化は、今度は、断熱材料の断熱性をより高めることなどにより、断熱材料の熱伝導性の変化を引き起こす。しかしながら、この同じ適応断熱材料はまた、温度が中立温度より高くまで上昇するにつれて、より厚みが増してもよい。より高い温度における断熱材料の厚み増加により高まった断熱特性はまた、断熱材料が、消防士の防護服に組み込まれる場合などにおいて有用かもしれず、該衣服は、消防士が高温に曝されているときにはより大きな保護を提供するが、一旦消防士が高温領域を後にすると厚みが減少して消防士を冷却できる。
【0038】
また、これに代わる実施形態の断熱材料は、温度が、中立温度から高い又は低い方向に外れるにつれて、厚みが減少していくよう構成することも可能である。本実施形態の断熱材料は、例えば、上に説明したような種類の熱的適応繊維を縫い付け、非適応断熱ブランケットとかみ合わせ、且つ、これの厚みを貫通して延在させることを含むさまざまな手法で形成してもよい。この点において、非適応断熱ブランケットは、断熱が望まれる物体に面する内表面と、典型的には外部環境に面する対向する外表面とを有していてもよい。本実施形態において、熱的適応繊維は、非適応断熱ブランケットに縫い付けられていてもよく、且つ、その内表面と外表面との間又は少なくとも部分的に間に延在していてもよい。中立温度から温度が外れるにつれて、熱的適応繊維は、カールするか、そうでなければその長手方向に沿って収縮し、これにより、非適応断熱ブランケットを平坦化して断熱性を低下させる。
【0039】
熱的適応繊維の形成に関連して上に触れたように、熱的適応繊維は、中立温度においてカールするか、そうでなければ収縮するが、温度が低下して中立温度より低くなるにつれて弛緩及び伸張することにより長手方向に膨張するように形成してもよい。本実施形態において、熱的適応繊維は概して、中立温度が、遭遇が予測される中でもっとも低い温度に設定されるように形成される。熱的適応繊維は、編んでヤーンとし、且つ、熱的適応繊維がかなり密にカールしている図14aにおいて(中立温度より高い)室温において示されているように、接着又は絡み合わせによりランダムにつなぎ合わせられていてもよい。温度が低下するにつれて、熱的適応繊維は、弛緩してカールがほどけ始め、これにより、図14bに示されているようにヤーンが膨張する。望まれる場合、断熱材は、全体的に熱的適応繊維から形成してもよく、非適応断熱材料を必ずしも含んでいなくてもよい。
【0040】
さらに、これまで説明した熱的適応繊維のある実施形態は、繊維のカールの増大に応じて長さが短くなる傾向にある。しかしながら、別の実施形態の熱的適応繊維は、対応する繊維の長さ減少を伴わずに同様にカールしてもよい。代わりに、一実施形態の繊維は、繊維の全長の減少を伴わないカールの増大を埋め合わせるために断面の厚みが減少してもよい。
【0041】
ここに説明するように、断熱材料14は、熱膨張率の異なる第1構成要素18と第2構成要素20とから形成されている。第1構成要素と第2構成要素とは、概して、上に説明したように互いに異なる材料から形成されているが、第1構成要素と第2構成要素とは、両要素が単一の材料から形成されていてもよいことから、同じ化学組成を有していてもよい。本実施形態の断熱材料は、破砕、溶融、圧着、化学反応、重合、放射、例えば紫外線硬化といった光照射、熱収縮、レーザー焼結などにより転換された、縁端、縫い目又はその他のパターンといった部分を有していてもよい。折りたたんだ結果、折りたたまれた部分は、すべての断熱材料が依然として同一の材料から形成されていたとしても、より低い熱膨張率といった異なる熱膨張率を有することもある。こうして、断熱材料は、希望により、領域により熱膨張率が異なる状態で単一の材料から形成可能である。
【0042】
上に説明したように、断熱材料14は、中立温度、例えば室温において第1の断熱特性を有し、低下した温度のような他の温度において増大した断熱特性のような他の断熱特性を有するよう形成してもよい。断熱材料が、より広範な温度における適切な断熱を提供できるようにするために、断熱材料は、繊維の2つ以上の層又は組から形成され、繊維の各々の組は、中立温度が異なっていてもよい。こうして、繊維の第1の組は、第1中立温度を有していてもよく、この結果、この第1中立温度より低い温度への温度低下により、繊維の第2の又は他の組ではない(少なくとも同じ程度又は限度までではない)繊維の第1の組が、カールすることなどにより形状変化する。さらに、繊維の第2の組は、第1中立温度より低い第2中立温度を有していてもよい。こうして、繊維の第1の組がカールし始める第1温度を超えてさらに温度が低下することにより、一旦温度が第2中立温度より低くなると、繊維の第2の組もまたカールし始める。こうして、異なる中立温度を有する2組以上の繊維の組から形成される断熱材料は、温度が低下し続けるとともにさらなる断熱程度を提供し、これにより、より広い温度範囲に亘って適切な断熱を与えることができる。2組以上の繊維の組を有する断熱材料に関連して本実施形態を説明したが、断熱材料の本実施形態はまた、希望により他の手法、すなわち、繊維による手法以外で形成された断熱材料を含んでいてもよい。
【0043】
上に述べた手法で断熱材料14を形成し、次いで、図1に関連して上に述べた第1衣服層と第2衣服層12との間に画定されるポケットに断熱材料を配置することにより、温度の低下とともに、又は、着用者の体温の低下とともにより高い断熱性を提供し、温度の上昇、又は、着用者の体温の上昇とともにより低い断熱性を提供することなどにより、結果として得られる衣服10の物品は、種々の温度に適応可能である。さらに、断熱材料の実施形態はまた、希望により、温度変化に応じてより高い通気性を提供可能である。また説明したように、断熱材料は、繊維の風合いにも影響する可能性があり、上に述べた種類の繊維から織られた生地は、中立温度において比較的滑らか且つ平坦であり、中立温度から外れた温度においてはより羊毛質で、且つ、かさ高くなる。こうして、例えば、夏向きの衣服は、秋を通じて温度が低下するにつれて、自動的に厚みが増してもよい。いずれにせよ、断熱材料は、温度変化に伴う断熱材料の形状変化の結果としてのより広い温度範囲を包含するために、より適切な断熱に備えることが有利である。
【0044】
上では主に衣服に関連して説明したが、断熱材料は、宇宙機、航空輸送手段などのその他の広範な用途において用いてもよい。例えば、宇宙機を断熱材料で覆い、断熱材料が太陽光に曝されているか否かによって断熱材料の挙動が変化してもよい。この点において、宇宙機を温めることを望む場合は、太陽光に曝されている宇宙機の側面上の断熱材料は、ほとんど断熱を提供しないかもしれない。というのも、例えば、断熱材料を含む繊維16は、直線状又は比較的直線状を保つことがあるからである。あるいは、日陰にあるか又は直射日光に曝されていない宇宙機の側面の断熱材は、より大きな断熱を提供するかもしれない。というのも、例えば、断熱材料を含む繊維は、カールして、繊維間により大きく、且つ/又は、より多数の空隙を生じ、それに応じて断熱特性が増大することがあるからである。宇宙機を加熱から保護することを望む場合は、断熱部品の中立温度を変化させることにより反対の特性を作り出してもよく、その結果、太陽に曝されている側面は、十分断熱され、且つ、太陽から離れた側面は、宇宙への放射を増大させるためにより断熱が少ない。
【0045】
ここに記載されている発明の数多くの変更及びその他の実施形態は、上記説明及び関連する図面に提示されている教示の恩恵を受けて、これら発明の属する技術分野における当業者により想到されるであろう。したがって、発明は、開示されている特定の実施形態に限定されるべきではなく、且つ、変更及びその他の実施形態は、添付の請求項の範囲内に含まれるよう意図されていることは理解されるべきである。ここでは特定の用語を使用しているが、これらは、一般的且つ記述的意味においてのみ用いられており、限定目的で用いられているのではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから形成されている断熱材料であって、第1構成要素と第2構成要素とがつなぎ合わされており、且つ、第1構成要素と第2構成要素とが、熱膨張率の異なる第1材料と第2材料とからそれぞれ構成されていることにより、温度変化に応じて形状が変化するよう構成されている断熱材料と、
少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから形成されている断熱材料と一体化されている非適応断熱材料と
を含む適応断熱材。
【請求項2】
複数の繊維から構成されており、繊維の一部が第1構成要素と第2構成要素とから形成されている、請求項1に記載の適応断熱材。
【請求項3】
各繊維が、温度変化に応じて変形するよう構成されている、請求項2に記載の適応断熱材。
【請求項4】
第1材料と第2材料との両方が、それぞれの繊維に沿って長手方向に延在している、請求項1に記載の適応断熱材。
【請求項5】
第1材料と第2材料とのうちの少なくとも一方の、相対位置、形状及び大きさのうちの少なくとも1つが、それぞれの繊維に沿った長手方向において変化している、請求項4に記載の適応断熱材。
【請求項6】
複数の繊維の各々が中立温度を有し、繊維が、中立温度からの温度変化に伴って形状変化するよう構成されており、且つ、複数の繊維が、第1の中立温度と、それとは異なる第2の中立温度とをそれぞれ有する繊維の第1の組と第2の組とを含む、請求項1に記載の適応断熱材。
【請求項7】
少なくとも第1構成要素が、第1材料から形成されているシートを含む、請求項1に記載の適応断熱材。
【請求項8】
第2構成要素が、シート上に配置されて、互いに離間している複数の第2材料の細片を含む、請求項7に記載の適応断熱材。
【請求項9】
第1構成要素と第2構成要素とのうちの少なくとも一方が、断熱材料の形状変化に応じて開放構成と閉鎖構成との間で変化する少なくとも1つの開口を画定する、請求項8に記載の適応断熱材。
【請求項10】
第2構成要素が、シートの一部のみに接合されており、且つ第2構成要素を形成する第2材料が、第1材料とは異なる熱膨張率を有する、請求項7に記載の適応断熱材。
【請求項11】
第2構成要素が、第1材料のシートに沿って延在する繊維の縫い目を含む、請求項10に記載の適応断熱材。
【請求項12】
少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから形成されている断熱材料が、非適応断熱材料の部分に接着されている、請求項1に記載の適応断熱材。
【請求項13】
適応断熱材の形成方法であって、
少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから断熱材料を形成することであって、第1構成要素と第2構成要素とをつなぎ合わせ、且つ第1構成要素と第2構成要素とが熱膨張率の異なる第1材料と第2材料とからそれぞれ構成されていることにより、断熱材料が温度変化に応じて形状が変化するよう構成されることと、
少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから形成された断熱材料を非適応断熱材料と一体化することと
を含む、適応断熱材の形成方法。
【請求項14】
断熱材料を形成することが、複数の繊維から断熱材料を形成することを含み、繊維の一部が第1構成要素と第2構成要素とから形成されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複数の繊維の一部が中立温度を有し、繊維が、中立温度からの温度変化に伴って形状変化するよう構成されており、且つ、複数の繊維から断熱材料を形成することが、第1の中立温度と、それとは異なる第2の中立温度とをそれぞれ有する繊維の第1の組と第2の組とから断熱材料を形成することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1構成要素が第1材料から形成されているシートを含み、第2構成要素が複数の第2材料の細片を含み、且つ、断熱材料を形成することが、シートに対し、互いに離間された状態の複数の細片を接合することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
第1構成要素と第2構成要素とのうちの少なくとも一方に少なくとも1つの開口を画定することをさらに含み、この少なくとも1つの開口が、断熱材料の形状変化に応じて開放構成と閉鎖構成との間で変化するよう構成されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1構成要素が、第1材料から形成されたシートを含み、断熱材料を形成することが、シートの一部のみに第2構成要素を接合することを含み、且つ、第2構成要素を形成する第2材料が、第1材料とは異なる熱膨張率を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
適応断熱材料を非適応断熱材料と一体化することが、少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから形成されている適応断熱材料を非適応断熱材料の部分に接着することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから形成されている断熱材料であって、第1構成要素と第2構成要素とがつなぎ合わされており、且つ、第1構成要素と第2構成要素とが、熱膨張率の異なる第1材料と第2材料とからそれぞれ構成されていることにより、温度変化に応じて形状が変化するよう構成されている断熱材料と、
少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから形成されている断熱材料と一体化されている非適応断熱材料と
を含む適応断熱材。
【請求項2】
複数の繊維から構成されており、繊維の一部が第1構成要素と第2構成要素とから形成されている、請求項1に記載の適応断熱材。
【請求項3】
各繊維が、温度変化に応じて変形するよう構成されている、請求項2に記載の適応断熱材。
【請求項4】
第1材料と第2材料との両方が、それぞれの繊維に沿って長手方向に延在している、請求項1に記載の適応断熱材。
【請求項5】
第1材料と第2材料とのうちの少なくとも一方の、相対位置、形状及び大きさのうちの少なくとも1つが、それぞれの繊維に沿った長手方向において変化している、請求項4に記載の適応断熱材。
【請求項6】
複数の繊維の各々が中立温度を有し、繊維が、中立温度からの温度変化に伴って形状変化するよう構成されており、且つ、複数の繊維が、第1の中立温度と、それとは異なる第2の中立温度とをそれぞれ有する繊維の第1の組と第2の組とを含む、請求項1に記載の適応断熱材。
【請求項7】
少なくとも第1構成要素が、第1材料から形成されているシートを含む、請求項1に記載の適応断熱材。
【請求項8】
第2構成要素が、シート上に配置されて、互いに離間している複数の第2材料の細片を含む、請求項7に記載の適応断熱材。
【請求項9】
第1構成要素と第2構成要素とのうちの少なくとも一方が、断熱材料の形状変化に応じて開放構成と閉鎖構成との間で変化する少なくとも1つの開口を画定する、請求項8に記載の適応断熱材。
【請求項10】
第2構成要素が、シートの一部のみに接合されており、且つ第2構成要素を形成する第2材料が、第1材料とは異なる熱膨張率を有する、請求項7に記載の適応断熱材。
【請求項11】
第2構成要素が、第1材料のシートに沿って延在する繊維の縫い目を含む、請求項10に記載の適応断熱材。
【請求項12】
少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから形成されている断熱材料が、非適応断熱材料の部分に接着されている、請求項1に記載の適応断熱材。
【請求項13】
適応断熱材の形成方法であって、
少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから断熱材料を形成することであって、第1構成要素と第2構成要素とをつなぎ合わせ、且つ第1構成要素と第2構成要素とが熱膨張率の異なる第1材料と第2材料とからそれぞれ構成されていることにより、断熱材料が温度変化に応じて形状が変化するよう構成されることと、
少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから形成された断熱材料を非適応断熱材料と一体化することと
を含む、適応断熱材の形成方法。
【請求項14】
断熱材料を形成することが、複数の繊維から断熱材料を形成することを含み、繊維の一部が第1構成要素と第2構成要素とから形成されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複数の繊維の一部が中立温度を有し、繊維が、中立温度からの温度変化に伴って形状変化するよう構成されており、且つ、複数の繊維から断熱材料を形成することが、第1の中立温度と、それとは異なる第2の中立温度とをそれぞれ有する繊維の第1の組と第2の組とから断熱材料を形成することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1構成要素が第1材料から形成されているシートを含み、第2構成要素が複数の第2材料の細片を含み、且つ、断熱材料を形成することが、シートに対し、互いに離間された状態の複数の細片を接合することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
第1構成要素と第2構成要素とのうちの少なくとも一方に少なくとも1つの開口を画定することをさらに含み、この少なくとも1つの開口が、断熱材料の形状変化に応じて開放構成と閉鎖構成との間で変化するよう構成されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1構成要素が、第1材料から形成されたシートを含み、断熱材料を形成することが、シートの一部のみに第2構成要素を接合することを含み、且つ、第2構成要素を形成する第2材料が、第1材料とは異なる熱膨張率を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
適応断熱材料を非適応断熱材料と一体化することが、少なくとも第1構成要素と第2構成要素とから形成されている適応断熱材料を非適応断熱材料の部分に接着することを含む、請求項13に記載の方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図14a】
【図14b】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図14a】
【図14b】
【公表番号】特表2011−510180(P2011−510180A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541456(P2010−541456)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/081412
【国際公開番号】WO2009/085384
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/081412
【国際公開番号】WO2009/085384
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】
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