説明

断熱材用スペーサ

【課題】 本発明は、断熱材に対してスペーサを容易に挿入出来、胴縁の裏側にスペーサ本体が隠れても指標部により該スペーサの施工位置が容易に特定出来、施工性を向上出来る断熱材用スペーサ及びこれを用いた断熱構造を提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】 断熱材2を介在させて胴縁3を下地材4に固定するために該断熱材2に取り付けられる断熱材用スペーサ1であって、円筒状本体5の一端部に断熱材2を切削し得る複数の切削刃6が形成され、該切削刃6の先端6aが互いに面一に形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材を介在させて胴縁を下地材に固定するために該断熱材に取り付けられる断熱材用スペーサ及びこれを用いた断熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、断熱材を介在させて胴縁を下地材に固定するために該断熱材に取り付けられる断熱材用スペーサを断熱材に挿入する際には予め断熱材に切り込みを入れたり、断熱材用スペーサを回転させながら断熱材に挿入することが行われている。
【0003】
例えば、特許第3062132号公報(特許文献1)には、スペーサの後端部に設けた突起に電動ドライバ等の取付工具を係合させ回転によりスペーサを断熱材に挿入することが記載されている。
【0004】
また、特開2004−052370号公報(特許文献2)及び特開2004−204459号公報(特許文献3)には、外周に雄ねじが形成されたブラケットが電動ねじ込み工具等の回転により断熱材にねじ込むことが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3062132号公報
【特許文献2】特開2004−052370号公報
【特許文献3】特開2004−204459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の従来例では、スペーサやブラケットを断熱材に挿入する際に特殊な治具やドリルを必要とするため施工作業が面倒であった。また、スペーサやブラケットは胴縁の裏側に隠れるため該スペーサやブラケットの施工位置が不明で該スペーサやブラケットの近傍の最適なビス施工位置が特定出来ないという問題があった。
【0007】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、断熱材に対してスペーサを容易に挿入出来、胴縁の裏側にスペーサ本体が隠れても指標部により該スペーサの施工位置が容易に特定出来、施工性を向上出来る断熱材用スペーサ及びこれを用いた断熱構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明に係る断熱材用スペーサの第1の構成は、断熱材を介在させて胴縁を下地材に固定するために該断熱材に取り付けられる断熱材用スペーサであって、円筒状本体の一端部に前記断熱材を切削し得る複数の切削刃が形成され、該切削刃の先端が面一に形成されたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る断熱材用スペーサの第2の構成は、前記第1の構成において、前記切削刃の先端が前記下地材表面に略線状に接触し得るよう形成されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る断熱材用スペーサの第3の構成は、前記第1、第2の構成において、前記円筒状本体の他端部に該胴縁の幅方向に突出して該胴縁から露出する指標部を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る断熱材用スペーサの第4の構成は、前記第1〜第3の構成において、前記円筒状本体の周上に該円筒状本体の軸方向に沿ったリブを設けたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る断熱構造は、断熱材を介在させて胴縁を下地材に固定した断熱構造であって、上記何れかの断熱材用スペーサが前記断熱材に貫入(貫通)され、該断熱材用スペーサの一端部に設けた切削刃の先端を前記下地材表面に当接すると共に、該断熱材用スペーサの他端部に前記胴縁の裏面を当接し、該胴縁の表面側から前記断熱材を貫通して前記下地材に固定部材により固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る断熱材用スペーサの第1の構成によれば、断熱材用スペーサを断熱材に押し込むだけで、円筒状本体の一端部に設けた複数の切削刃により断熱材を切削して断熱材内に断熱材用スペーサを容易に挿入することが出来る。また、切削刃の先端が面一であるため、断熱材切削後は下地材表面に安定して当接し胴縁を安定して支持することが出来る。
【0014】
また、本発明に係る断熱材用スペーサの第2の構成によれば、円筒状本体の一端部に設けた複数の切削刃の先端が下地材表面に略線状に接触し得る形状で構成されるため、断熱材切削後の切削刃の先端が下地材表面に安定して当接し胴縁をより安定して支持することが出来る。このような切削刃は例えば台形状の切削刃により構成することが出来る。
【0015】
また、本発明に係る断熱材用スペーサの第3の構成によれば、円筒状本体の切削刃とは反対側の他端部に胴縁の幅方向に突出して該胴縁から露出する指標部を設けたことで、胴縁の裏側に円筒状本体が隠れても該胴縁の幅方向に突出する指標部により該断熱材用スペーサの施工位置が容易に特定出来、施工性を向上することが出来る。
【0016】
また、本発明に係る断熱材用スペーサの第4の構成によれば、円筒状本体の周上に該円筒状本体の軸方向に沿ったリブを設けたことで、断熱材用スペーサの補強が出来、リブを設けて円筒状本体を補強したことで、円筒状本体の肉厚を薄くすることが出来、これにより、断熱材用スペーサと下地材及び胴縁との互いの接触面積を少なくすることにより熱橋を最小限に抑制することが出来る。また、断熱材表面に下地材位置の墨出しを行った場合には、リブを指標として墨出し位置に合わせることで下地材に対する断熱材用スペーサの施工位置を容易に特定出来、施工性を向上することが出来る。また、リブの先端部にも切削刃を形成すると共に、その先端を他の複数の切削刃の先端と面一にすれば良い。
【0017】
また、本発明に係る断熱構造によれば、上記断熱材用スペーサを容易に挿入した断熱材を介在させて胴縁を下地材に固定し断熱材の破損を効果的に防止し得る断熱構造とすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図により本発明に係る断熱材用スペーサ及びこれを用いた断熱構造の一実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係る断熱材用スペーサの構成を示す斜視図、図2は本発明に係る断熱材用スペーサの構成を示す平面図、正面図及び底面図、図3は本発明に係る断熱材用スペーサを用いた断熱構造を示す平面説明図及び正面図と断面説明図である。
【0019】
図1〜図3において、1は断熱材2を介在させて胴縁3を柱等の下地材4に固定するために該断熱材2に取り付けられる断熱材用スペーサである。断熱材用スペーサ1の円筒状本体5の軸方向(図1の上下方向)の長さは、断熱材2の厚さに対応する長さに設定されており、中央部には切削した断熱板3を保持する貫通穴部1bが設けられている。
【0020】
本実施形態の断熱材用スペーサ1は樹脂製で製造されており、円筒状本体5の一端部には断熱材2を切削し得る複数の切削刃6が形成され、該切削刃6の先端6aが互いに面一に形成されている。また、切削刃6は先端6aに向かって肉厚が薄くなるナイフ状の切り込みにより形成されている。断熱材用スペーサ1は樹脂で製造されているため熱橋となることを抑制できる。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の切削刃6の先端6aは台形状で形成されており、図2(b)の正面図に示すように、切削刃6の先端6aが下地材4表面に略線状に接触し得るよう形成されている。
【0022】
一方、円筒状本体5の切削刃6とは反対側の他端部には、胴縁3の幅方向(図3(a)の左右方向)に突出して該胴縁3から露出する指標部7が設けられている。指標部7の上面7aと円筒状本体5の他端部の上端面1aとは面一に形成されている。
【0023】
また、円筒状本体5の周上には、該円筒状本体5の軸方向(図1の上下方向)に沿った補強用リブ8が設けられている。また、リブ8の先端部にも切削刃8aが形成されており、その先端8a1は他の複数の切削刃6の先端6aと互いに面一になるように形成されている。リブ8の切削刃8aも先端に向かって肉厚が薄くなるナイフ状の切り込みにより形成されている。
【0024】
本実施形態のリブ8は、図1〜図3に示すように、円筒状本体5に対して指標部7と180度反対側の位置と、該指標部7に対して90度ずれた位置に設けられており、リブ8の突出方向及び指標部7の突出方向は互いに直交する方向に配置されている。指標部7も先端(図2(b)の下方)に向かって肉厚が薄くなるナイフ状の切り込みにより形成されている。
【0025】
そして、図3に示すように、断熱材用スペーサ1を使用した断熱構造は、断熱材2を介在させて胴縁3を下地材4に固定し断熱材2の破損を効果的に防止し得る断熱構造であり、例えば外張り断熱工法において通気胴縁3の施工時に断熱材2の損傷を防止することが出来る。
【0026】
断熱材用スペーサ1を使用した断熱構造の施工手順としては、図3に示すように、先ず、柱等の下地材4の表面に断熱材2を当接した状態で仮固定すると共に、該断熱材2の表面に下地材4のセンター位置を墨出し10しておく。
【0027】
そして、墨出し10位置に断熱材用スペーサ1のリブ8の位置を合わせると共に、胴縁3の幅方向となる水平方向に指標部7を配置する。リブ8の位置を墨出し10位置に合わせることで、指標部7の突出方向を胴縁3の長手方向(図3(a)の上下方向)に対して直交する水平方向(図3(a)の左右方向)に容易に且つ確実に設置出来る。これにより、指標部7が胴縁3に対して斜めに配置されて胴縁3の裏側に隠れてしまうことを防止出来る。
【0028】
そして、断熱材2の表面側に断熱材用スペーサ1の切削刃6及びリブ8の切削刃8aを当てた状態でハンマーの腹部等を用いて断熱材用スペーサ1の他端部である上端面1aを叩いて該切削刃6,8aにより断熱材2を切削しつつ打ち込むことにより断熱材用スペーサ1を断熱材2に容易に挿入貫通することが出来る。
【0029】
そして、断熱材用スペーサ1の一端部に設けた切削刃6の先端6a及びリブ8の切削刃8aの先端8a1を下地材4表面に当接すると共に、該断熱材用スペーサ1の他端部である上端面1aに胴縁3の裏面を当接し、該胴縁3の表面側から断熱材2を貫通して下地材4に固定部材となるビス9により固定する。指標部7の先端(図3(b)の下方)に形成されたナイフ状の切り込みにより該指標部7の先端も断熱材2を切削して挿入される。尚、図3(b)は断熱材2、胴縁3及び下地材4を断面で示し、断熱材用スペーサ1は正面を示したものである。
【0030】
上記構成によれば、予め断熱材2に切り込みを入れたり下穴を空けることをしなくても、断熱材用スペーサ1を断熱材2に押し込むだけで、円筒状本体5の一端部に設けた複数の切削刃6により断熱材2を切削して該断熱材2内に断熱材用スペーサ1を容易に挿入することが出来る。また、従来例のように断熱材用スペーサ1を回転させなくても断熱材2内に容易に挿入出来るので、指標部7やリブ8を所望の方向に正確に施工出来る。
【0031】
また、断熱材2切削後の切削刃6の先端6aが互いに面一であるため、下地材4表面に安定して当接し胴縁3を安定して支持することが出来る。
【0032】
また、円筒状本体5の一端部に設けた複数の切削刃6の先端6aが下地材4表面に略線状に接触し得る形状で構成されるため、断熱材2切削後の切削刃6の先端6aが下地材4表面に安定して当接し胴縁3をより安定して支持することが出来る。
【0033】
また、円筒状本体5の切削刃6とは反対側の他端部に胴縁3の幅方向に突出して該胴縁3から露出する指標部7を設けたことで、胴縁3の裏側に円筒状本体5が隠れても胴縁3の幅方向に突出する指標部7により該断熱材用スペーサ1の施工位置が容易に特定出来、ビス9の施工性を向上することが出来る。
【0034】
ビス9が円筒状本体5の中央付近に固定された場合には、ビス9の引き寄せ力による胴縁3の歪をより少なくすることができ、また、切削刃6の先端6aに均一に力がかかることにより、安定して胴縁3を保持することができるため、好ましい。また断熱材用スペーサ1を胴縁3の裏側全体にわたって設置する必要なく、ビス9近傍のみの設置で事足りるため、断熱材用スペーサ1が熱橋となることを極力抑制できる。
【0035】
また、円筒状本体5の周上に該円筒状本体5の軸方向に沿ったリブ8を設けたことで、断熱材用スペーサ1の補強が出来るため、ビス9施工時に断熱材用スペーサ1が圧縮破壊せず、輸送中にも破損しない構造とすることが出来る。また、リブ8を設けて円筒状本体5を補強したことで、円筒状本体5の肉厚を薄くすることが出来、これにより、断熱材用スペーサ1と下地材4及び胴縁3との互いの接触面積を少なくすることにより熱橋を最小限に抑制することが出来る。
【0036】
また、断熱材2表面に下地材4位置の墨出し10を行った場合には、リブ8を指標として墨出し10位置に合わせることで下地材4に対する断熱材用スペーサ1の施工位置を容易に特定出来、施工性を向上することが出来る。
【0037】
また、本発明に係る断熱構造によれば、上記断熱材用スペーサ1を容易に挿入した断熱材2を介在させて胴縁3を下地材4に固定し断熱材2の破損を効果的に防止し得る断熱構造とすることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の活用例として、断熱材を介在させて胴縁を下地材に固定するために該断熱材に取り付けられる断熱材用スペーサ及びこれを用いた断熱構造に適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る断熱材用スペーサの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る断熱材用スペーサの構成を示す平面図、正面図及び底面図である。
【図3】本発明に係る断熱材用スペーサを用いた断熱構造を示す平面説明図及び正面図と断面説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1…断熱材用スペーサ
1a…上端面
1b…貫通穴部
2…断熱材
3…胴縁
4…下地材
5…円筒状本体
6…切削刃
6a…先端
7…指標部
7a…上面
8…リブ
8a…切削刃
8a1…先端
9…ビス
10…墨出し

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材を介在させて胴縁を下地材に固定するために該断熱材に取り付けられる断熱材用スペーサであって、
円筒状本体の一端部に前記断熱材を切削し得る複数の切削刃が形成され、該切削刃の先端が面一に形成されたことを特徴とする断熱材用スペーサ。
【請求項2】
前記切削刃の先端が前記下地材表面に略線状に接触し得るよう形成されたことを特徴とする請求項1に記載の断熱材用スペーサ。
【請求項3】
前記円筒状本体の他端部に該胴縁の幅方向に突出して該胴縁から露出する指標部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の断熱材用スペーサ。
【請求項4】
前記円筒状本体の周上に該円筒状本体の軸方向に沿ったリブを設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の断熱材用スペーサ。
【請求項5】
断熱材を介在させて胴縁を下地材に固定した断熱構造であって、
請求項1〜4の何れか1項に記載の断熱材用スペーサが前記断熱材に貫入され、該断熱材用スペーサの一端部に設けた切削刃の先端を前記下地材表面に当接すると共に、該断熱材用スペーサの他端部に前記胴縁の裏面を当接し、該胴縁の表面側から前記断熱材を貫通して前記下地材に固定部材により固定したことを特徴とする断熱構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate