説明

断熱材用組成物及び断熱材

【課題】軽量であって且つ高い断熱性を有する断熱材用の組成物を提供する。
【解決手段】繊維状物質、無機質発泡粒子、熱硬化性樹脂、発泡剤を含有する断熱材用組成物に関する。繊維状物質と熱硬化性樹脂の他に無機質発泡粒子と発泡剤を含有することによって、低比重の無機質発泡粒子で軽量化しつつ熱伝導率を低下させることができると共に、発泡剤で熱硬化性樹脂を発泡させて、軽量化しつつ熱伝導率を低下させることができ、軽量であって且つ高い断熱性を有する断熱材を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中や真空中で使用される断熱材用の組成物及び断熱材に関するものであり、特に宇宙からの再突入機などが、大気圏に突入する際の空力加熱から機体を保護するための断熱に適した断熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
断熱材は一般に熱伝導率の低い材料を用いて形成されている。また宇宙空間で使用される宇宙往還機やロケットなど再突入機において、機体保護用に用いられる断熱材は、このような低い熱伝導率に加え、大気圏に再突入する際の高温上昇時に、自身が分解や炭化することによって熱エネルギーを消費することにより、機体内部が高温になることを防ぐようにしている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
そしてこのような断熱材として、繊維状物質と熱硬化性樹脂とを混合し、これを成形して熱硬化性樹脂を硬化させることよって作製したものが使用されている。しかしこのように作製された断熱材は、嵩比重が1.6程度であって重く、また熱伝導率が0.55W/(m・K)以上と高いものであり、断熱材として性能や機能において問題を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−280389号公報
【特許文献2】特開2001−247100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、軽量であって且つ高い断熱性を有する断熱材用の組成物及び断熱材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る断熱材用組成物は、繊維状物質、無機質発泡粒子、熱硬化性樹脂、発泡剤を含有して成ることを特徴とするものである。
【0007】
熱硬化性樹脂は高温が作用したときに分解、燃焼、昇華、炭化されることによって、熱エネルギーを消費し、高温が断熱材を通過することを遮断して断熱性能を高く得ることができるものであり、また繊維状物質はその補強作用によって断熱材の機械的強度を高めることができるものである。そして、これらの繊維状物質と熱硬化性樹脂の他に無機質発泡粒子と発泡剤を含有することによって、低比重の無機質発泡粒子で軽量化しつつ熱伝導率を低下させることができると共に、発泡剤で熱硬化性樹脂を発泡させて、軽量化しつつ熱伝導率を低下させることができ、軽量であって且つ高い断熱性を有する断熱材を成形することができるものである。
【0008】
また本発明は、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール樹脂から選ばれるポリビニルアルコール系材料を含有して成ることを特徴とするものである。
【0009】
ポリビニルアルコール系材料は分解する際に、水を発生するものであり、分解する際に熱エネルギーを消費すると共に、発生した水の気化によっても熱エネルギーを消費するものであって、熱エネルギーの消費によって熱を遮断する断熱性能をより高く得ることができるものである。
【0010】
また本発明は、コルク粒を含有して成ることを特徴とするものである。
【0011】
コルク粒を含有することによって、軽量化しつつ熱伝導率を低下させることができるものであり、またコルク粒は分解、燃焼、昇華、炭化されることによって、熱エネルギーを消費し、高温が断熱材を通過することを遮断して断熱性能を高く得ることができるものである。
【0012】
また本発明は、上記繊維状物質として、アルミナ繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ−シリカの複合酸化物繊維など酸化物系無機繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、カーボン繊維などの無機繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、アクリル繊維、アセテート繊維、ナイロン繊維、ビニリデン繊維などの有機繊維から選ばれるものを用いることを特徴とするものである。
【0013】
これらの無機繊維は、断熱材が低温状態にあるときも、高温状態にあるときも、いずれも補強効果を発揮するものであり、また有機繊維は、断熱材が低温状態のときは補強効果を発揮すると共に、高温状態では分解、燃焼、昇華、炭化されて熱エネルギーを消費し、断熱性能に寄与することができるものである。
【0014】
また本発明は、上記熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、メラミン樹脂、及びこれらの変性樹脂から選ばれるものを用いることを特徴とするものである。
【0015】
これらの熱硬化性樹脂を用いることにより、性能が良好な断熱材を成形することができるものである。
【0016】
本発明に係る断熱材は、上記の断熱材用組成物を、発泡・硬化させて成ることを特徴とするものであり、上記したように、軽量であって且つ高い断熱性を有する断熱材として得ることができるものである。
【0017】
そして本発明に係る断熱材は嵩比重が1.0以下であり、熱伝導率が0.2W/(m・K)以下であることを特徴とするものであり、十分に軽量であって且つ十分に高い断熱性を有する断熱材を得ることができるものである。
【0018】
また本発明に係る断熱材は、上記の断熱材用組成物を、ハニカム構造物の空所内で発泡・硬化させて成ることを特徴とするものであり、ハニカム構造物が骨組みとなって、強度の高い断熱材を得ることができるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る断熱材用組成物は、繊維状物質、無機質発泡粒子、熱硬化性樹脂、発泡剤を含有することを特徴とするので、熱硬化性樹脂は高温が作用したときに分解、燃焼、昇華、炭化されることによって、熱エネルギーを消費し、高温が断熱材を通過することを遮断して断熱性能を高く得ることができると共に、熱硬化性樹脂の分解などで発生するガスの層が断熱材の表面に形成されることによっても断熱効果が得られるものである。また繊維状物質は断熱材の機械的強度を高めるものであり、そしてこれらの繊維状物質と熱硬化性樹脂の他に無機質発泡粒子と発泡剤を含有することによって、低比重の無機質発泡粒子で軽量化しつつ熱伝導率を低下させることができると共に、発泡剤で熱硬化性樹脂を発泡させて、軽量化しつつ熱伝導率を低下させることができ、軽量であって且つ高い断熱性を有する断熱材を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の他例を示すものであり、(a)は一部破断した概略斜視図,(b)はハニカム構造物の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
本発明に係る断熱材用組成物は、繊維状物質、無機質発泡粒子、熱硬化性樹脂、発泡剤を含有して調製されるものであり、本発明に係る断熱材は、この組成物を発泡・硬化させて得ることができるものである。
【0023】
上記の熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、メラミン樹脂、及びこれらの変性樹脂などを挙げることができるものであり、これらのうち一種を単独で用いる他、複数種を混合して用いることもできる。
【0024】
ここで、上記のフェノール樹脂はフェノール類とアルデヒド類を反応触媒の存在下で反応させることによって調製したものを用いることができる。フェノール類はフェノール及びフェノールの誘導体を意味するものであり、例えばフェノールの他にレゾルシノール、3,5−キシレノールなどの3官能性のもの、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルメタンなどの4官能性のもの、o−クレゾール、p−クレゾール、p−ter−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、2,4又は2,6−キシレノールなどの2官能性のo−又はp−置換のフェノール類を挙げることができ、さらに塩素又は臭素で置換されたハロゲン化フェノールなども用いることができる。勿論、これらから一種を選択して用いる他、複数種のものを混合して用いることもできる。
【0025】
またアルデヒド類としては、水溶液の形態であるホルマリンが最適であるが、パラホルムアルデヒドやアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサンのような形態のものを用いることもでき、その他、ホルムアルデヒドの一部を2−フルアルデヒドやフルフリルアルコールに置き換えて使用することも可能である。勿論、これらから一種を選択して用いる他、複数種のものを混合して用いることもできる。
【0026】
上記のフェノール類とアルデヒド類の配合比率は、モル比で1:0.5〜1:3.5の範囲になるように設定するのが好ましい。
【0027】
また反応触媒としては、ノボラック型フェノール樹脂を調製する場合は、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、あるいはシュウ酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸などの有機酸、さらに酢酸亜鉛などの二価金属塩などを用いることができる。レゾール型フェノール樹脂を調製する場合は、アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物を用いることができ、さらにジメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジエチレントリアミン、ジシアンジアミドなどのアミン類や、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミンなどや、その他二価金属の水酸化物を用いることもできる。
【0028】
ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂は、それぞれ単独で使用しても、両者を任意の割合で混合して使用してもいずれでもよい。またシリコン変性、ゴム変性、ホウ素変性など各種の変性フェノール樹脂を用いることもできる。
【0029】
断熱材用組成物中の熱硬化性樹脂の配合量は、特に限定されるものではないが、10〜60質量%の範囲が好ましい。熱硬化性樹脂は主として粘結剤(バインダー)成分として配合されるものであり、10質量%未満では接着力が不十分であって、断熱材の強度が不足するおそれがある。また60質量%を超えると断熱材の嵩密度が高くなって、軽量化することが難しくなる。
【0030】
次に、上記の繊維状物質としては、特に限定されるものではないが、アルミナ繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ−シリカの複合酸化物繊維などの酸化物系無機繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、カーボン繊維などの無機繊維や、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、アクリル繊維、アセテート繊維、ナイロン繊維、ビニリデン繊維などの有機繊維を用いることができる。これらは一種を単独で用いる他、複数種を併用することもできる。
【0031】
繊維状物質の繊維径や繊維長は、特に限定されるものではないが、繊維径は1〜30μmの範囲が、繊維長は1〜30mmの範囲が好ましい。
【0032】
また断熱材用組成物中の繊維状物質の配合量は、特に限定されるものではないが、1〜50質量%の範囲が好ましい。繊維状物質は主として断熱材を補強するために用いられるものであり、1質量%未満であると、補強効果を十分に得ることができない。逆に50質量%を超えると、断熱材用組成物への繊維状物質の分散性が悪くなり、断熱材の均一性が損なわれるおそれがある。
【0033】
次に、上記の無機質発泡粒子としては、特に限定されるものではないが、低アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ソーダガラス、アルミノシリケートなどガラス質や、シラスなどの鉱物質の、中空バルーンを用いることができる。無機質発泡粒子はこれらから一種を選択して用いる他、複数種を混合して用いることもできる。無機質発泡粒子の粒径は特に限定されるものではないが、1〜1000μmの範囲であることが好ましい。
【0034】
無機質発泡粒子の嵩比重は特に限定されるものではないが、0.05〜0.5の範囲であることが好ましい。無機質発泡粒子は主として断熱材を軽量化し、さらに断熱材の熱伝導率を低くして断熱性能を向上するために含有されるものであり、嵩比重が0.5を超えるものであると、軽量化や断熱性向上の効果を十分に得ることができない。また無機質発泡粒子の嵩比重が0.05未満であると、無機質発泡粒子の強度が低くなるために、断熱材の強度が低下するおそれがある。
【0035】
断熱材用組成物中の無機質発泡粒子の配合量は、特に限定されるものではないが、5〜50質量%の範囲が好ましい。配合量が5質量%未満であると、無機質発泡粒子を配合することによる軽量化や断熱性向上の効果を十分に得ることができない。逆に50質量%を超えると、断熱材の強度が低下するおそれがある。
【0036】
次に、上記の発泡剤としては、特に限定されるものではないが、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機発泡剤や、ジニトロペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、p,p′−オキシベンゼンスルホニルヒドラジン、ヒドラジカルボンアミドなどの有機発泡剤、低沸点炭化水素を塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ポリウレタンなどの共重合物の殻壁でカプセル化したマイクロカプセル発泡剤などを挙げることができるものであり、これらは一種を単独で用いる他、複数種を併用することもできる。
【0037】
発泡剤は、熱硬化性樹脂を発泡させることによって、断熱材を軽量化すると同時に、断熱材の熱伝導率を低くして断熱性能を向上するためのものであり、発泡倍率を2〜5倍程度の範囲に設定するのが好ましい。発泡倍率が2倍未満では、軽量化や断熱性向上の効果を十分に得ることができない。逆に発泡倍率が5倍を超えると、断熱材の強度が低下するので好ましくない。また発泡剤の配合量は、目的とする発泡倍率に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂100質量部に対して5〜20質量部の範囲が好ましい。
【0038】
また、上記の繊維状物質や無機質発泡粒子と、熱硬化性樹脂との接着性を高めるために、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのカップリング剤を、断熱材用組成物に添加するようにしてもよい。
【0039】
そして、上記の繊維状物質、無機質発泡粒子、熱硬化性樹脂、発泡剤を配合し、これらをヘンシェルミキサー、シンプソンミル、メランジャ、アイリッヒ、スピードマラー、ワールミックスなどの混練装置で混練することによって、本発明に係る断熱材用組成物を調製することができるものである。これらの混練装置は、バインダー成分の形態や性状に応じて、また混練方法に応じて、適宜使い分ければよい。
【0040】
また、このように調製した断熱材用組成物を金型に充填し、加熱して、熱硬化性樹脂を溶融・発泡させた状態で硬化させることによって、断熱材Aを得ることができるものである。図1は断熱材Aを示すものであり、熱硬化性樹脂が発泡・硬化した発泡樹脂層3中に繊維状物質1や無機質発泡粒子2が分散されたものとして、断熱材Aを作製することができるものである。繊維状物質1がこのように発泡樹脂層3中に分散して含有されていることによって、繊維状物質1で断熱材Aを補強することができ、断熱材Aの機械的強度を高めることができるものである。
【0041】
そしてこの断熱材Aには無機質発泡粒子2が含有されており、また発泡剤によって熱硬化性樹脂が発泡した発泡樹脂層3が断熱材Aの母材をなすので、断熱材Aは嵩密度が小さく形成されていると共に、熱伝導率も低くなっている。従って、軽量であって且つ高い断熱性を有する断熱材Aを得ることができるものである。ここで、特に限定されるものではないが、断熱材Aの嵩比重は1.0以下であることが好ましく、0.3〜1.0の範囲が好ましい。また熱伝導率は0.2W/(m・K)以下であることが好ましく、0.1〜0.2W/(m・K)の範囲が好ましい。
【0042】
上記のように作製される本発明に係る断熱材Aは、大気中や真空中で使用されるものであり、例えば宇宙往還機、回収カプセル、ロケットなどの再突入機など高速で飛翔する機体の保護用の断熱材として用いることができる。そしてこのように高速で飛翔する機体は大気との摩擦で高温に加熱されるものであり、特に宇宙空間から地球の大気圏に再突入する際に空力加熱1〜5MW/m程度となり、非常な高温に曝されることになる。
【0043】
このように断熱材Aに高温が作用すると、断熱材Aの母材である発泡樹脂層3の熱硬化性樹脂が分解し、あるいは溶融、昇華し、あるいは燃焼、炭化するものであり、この際に物質の相変化に伴う潜熱吸収により熱エネルギーが消費される。熱エネルギーがこのように消費されることによって、高温が断熱材Aを通過することを遮断することができるものであり、さらに、分解や昇華で発生したガスが断熱材Aの表面に噴出してシールドし、高い空力加熱が断熱材Aに直接作用することを低減することによっても、高温が断熱材Aを通過することを遮断することができるものである。このような高温の通過を遮断する断熱材Aの断熱作用で、機体内部を高温から保護することができるものである。
【0044】
また断熱材Aに含有されている繊維状物質1が、無機繊維の場合には、低温時、高温作用時のいずれにおいても補強効果を発揮するが、有機繊維の場合には、高温が作用すると発泡樹脂層3の熱硬化性樹脂と同様に分解などして、熱エネルギーを消費し、高温が断熱材Aを通過することを遮断する働きをするものである。ここで、有機繊維としてアラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、アクリル繊維などを用いる場合、これらの繊維は分解し炭化して炭素繊維となるので、炭素繊維として補強効果を持続することができるものである。
【0045】
本発明の断熱材用組成物には、上記の各成分の他に、ポリビニルアルコール系材料を配合するようにしてもよい。ポリビニルアルコール系材料としては、ポリビニルアルコールや、ポリビニルアルコールをアセタール化したポリビニルアセタール樹脂などを用いることができるものであり、これらは粉粒状で用いる他、ビニロン繊維など紡糸した繊維状の形態で用いるようにしてもよい。これらのポリビニルアルコール系材料は、一種を単独で用いる他、複数種を併用するようにしてもよい。
【0046】
このように断熱材用組成物にポリビニルアルコール系材料を配合して、断熱材Aにポリビニルアルコール系材料を含有させるようにすると、上記のように断熱材Aに高温が作用して、ポリビニルアルコール系材料が分解される際に、酸素が不足する雰囲気においても水が生成される。従って、ポリビニルアルコール系材料が分解される際に熱エネルギーが消費されると同時に、生成された水の気化熱などとしても熱エネルギーは消費されるものであり、熱エネルギーの消費による熱の遮断効果を高く得ることができるものである。ポリビニルアルコール系材料としてビニロン繊維など繊維状のものを用いれば、低温時の補強効果を得ることもできるものである。
【0047】
断熱材用組成物中のポリビニルアルコール系材料の配合量は、特に限定されるものではないが、1〜20質量%の範囲が好ましい。配合量が1質量%未満では、ポリビニルアルコール系材料を断熱材Aに含有させることによる上記の効果を十分に得ることができない。繊維状でないポリビニルアルコール系材料の配合量が20質量%を超えると、断熱材Aの強度が低下するので好ましくない。
【0048】
本発明の断熱材用組成物には、さらにコルク粒を配合するようにしてもよい。コルクは、地中海地方(ポルトガル、スペイン、イタリアなど)で栽培されるブナ科コナラ属の常緑樹であるコルク樫の樹皮から得られるものであり、本発明においてコルク粒はコルク樫の樹皮を粉砕・精製したものを用いることができる。コルクは超微細な気泡構造を持っており、この気泡構造によって軽量で且つ断熱性が高いという特性を有する。
【0049】
このため、コルク粒を断熱材Aに含有することによって、断熱材Aを軽量化することができると共に、断熱材Aの熱伝導率を低くして断熱性能を向上することができるものである。しかもコルク粒は高温が作用したときに分解、燃焼、昇華、炭化されることによって、熱エネルギーを消費し、高温が断熱材Aを通過することを遮断して断熱性能を高く得ることができるものであり、またこの分解などでコルクから発生するガスの層が断熱材Aの表面に形成されることによっても断熱効果を得ることができるものである。
【0050】
コルク粒の粒径は、特に限定されるものではないが、1〜2000μm程度の範囲であることが好ましい。また断熱材用組成物中のコルク粒の配合量は、特に限定されるものではないが、5〜40質量%の範囲が好ましい。配合量が5質量%未満であると、コルク粒を配合することによる軽量化や断熱性向上の効果を十分に得ることが難しい。配合量が逆に40質量%を超えると、断熱材の強度が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0051】
図2は本発明の他の実施の形態を示すものであり、ハニカム構造物5の空所6内に上記の断熱材Aを充填するようにしたものである。ハニカム構造物5は両面に開口する多数の空所6を規則的に配置した形態に形成されるものであり、この空所6の形状を図2(b)の(イ)のように正六角形に形成したハチの巣状の形態であるものが一般的である。しかしこのようなハチの巣状の形態に限定されるものではなく、多数の空所6が規則的に配置されたものであればよく、例えば図2(b)の(ロ)のものが「OX」、(ハ)のものが「フレックス」、(ニ)のものが「バイセクト」、(ホ)のものが「フェザー」として、昭和飛行機工業(株)から各種のハニカムが提供されており、用途に応じて、このような形態のハニカム構造物5を用いることもできる。また空所6の開口径(セルサイズ)も用途に応じて任意に設定することができるものであり、例えば、1/8インチ、3/16インチ、1/4インチ、3/8インチ、1/2インチ、3/4インチなどのハニカムが昭和飛行機工業(株)から提供されている。
【0052】
ハニカム構造物5の材質は、紙、不燃紙などの紙類、アルミニウム、ステンレス、チタンなどの金属類、アラミッド紙、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール紙、カーボン・ガラスなどの複合材など任意であるが、軽量化のためにはアラミッド紙が好ましい。
【0053】
ハニカム構造物5の空所6内に断熱材Aを充填する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、金型内にハニカム構造物5をセットしておき、この金型内に断熱材用組成物を供給して加熱することによって、ハニカム構造物5の空所6内で断熱材用組成物を発泡・硬化させるようにすればよい。このようにして、ハニカム構造物5の空所6内に断熱材Aを充填した、図2(a)のような断熱材Bを作製することができるものである。
【0054】
このようにハニカム構造物5の空所6内に断熱材Aを充填して得られる断熱材Bは、ハニカム構造物5が骨組みとなるので、強度が高くなると共に保形性も良好になるものであり、取扱い性に優れた断熱材Bとして使用できるものである。
【0055】
上記では、本発明の断熱材A,Bの用途として、宇宙往還機、回収カプセル、ロケットなど高速で飛翔する機体の保護用を例示したが、勿論これらに限定されるものではなく、ロケットのフェアリング用の断熱材、ロケット底部のエンジン噴流加熱に対する断熱材、自動車や船などのエンジン回りの断熱材やさらには延焼防止材など、各種の用途が考えられる。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0057】
(実施例1)
反応容器にフェノール940質量部、37質量%ホルマリン649質量部、シュウ酸4.7質量部を仕込み、約60分を要して還流させ、そのまま120分間反応させた。そして常圧で内温160℃まで脱液を行なった後、133hPaで減圧脱液を行なうことによって、軟化点99℃のノボラック型フェノール樹脂を得た。
【0058】
このノボラック型フェノール樹脂をハンマーミルにかけ、106μm以下の粒径に粉砕して粉末にした。そしてこの粉末のノボラック型フェノール樹脂100質量部に硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン10質量部を添加して良く混合することによって、硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を得た。
【0059】
次に、繊維状物質としてシリカ繊維(芦森工業(株)製「KA−300E」:繊維径6μm、繊維長5mm)を15質量部、無機質発泡粒子としてアルミノシリケート系マイクロバルーン(日本フィライト(株)製「フィライト200/7」:粒子径5〜150μm、嵩比重0.4)を40質量部、熱硬化性樹脂として上記の硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を45質量部、発泡剤としてマイクロカプセル発泡剤(松本油脂製薬(株)製「マイクロスフェアーF−50」)を5.5質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合することによって、断熱材用組成物を得た。
【0060】
そして直径50mm、高さ60mmのキャビティを有する金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、予め135℃にセットした熱風循環式乾燥機にこの金型を入れて、135℃で1時間加熱した。さらに175℃に昇温して、175℃で1時間加熱した。このようにして金型内で発泡・硬化させて断熱材を成形した後、金型を冷却して断熱材を取り出した。
【0061】
(実施例2)
反応容器にフェノール940質量部、37質量%ホルマリン1217質量部、48質量%濃度の苛性ソーダ水溶液23.5質量部を仕込み、約60分を要して還流させ、そのまま90分間反応させた。その後、133hPaの減圧下で100℃まで脱液することによって、半固形状のレゾール型フェノール樹脂を得た。そしてこれに溶剤としてメタノールを添加し、固形分が65質量%のレゾール型フェノール樹脂ワニスを得た。このレゾール型フェノール樹脂ワニスは25℃における粘度が160mPa・sであった。
【0062】
次に、繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を15質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、熱硬化性樹脂として上記のレゾール型フェノール樹脂ワニスを17質量部(固形分換算で11質量部)と実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を34質量部、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を5.5質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。さらにこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0063】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0064】
(実施例3)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を15質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを52質量部(固形分換算で34質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を5.5質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0065】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0066】
(実施例4)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を15質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「AM−030−P」)を45質量部(硬化剤としてジシンジアミド3質量部を含む)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を5.5質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合することによって、断熱材用組成物を得た。
【0067】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0068】
(実施例5)
繊維状物質としてアルミナ繊維(三菱樹脂(株)製「ALS」:繊維径5μm、繊維長5mm)を15質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを52質量部(固形分換算で34質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を5.5質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0069】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0070】
(実施例6)
繊維状物質として炭素繊維(三菱レイヨン(株)製「TR−066」:繊維径6μm、繊維長6mm)を15質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを52質量部(固形分換算で34質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を5.5質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0071】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0072】
(実施例7)
繊維状物質としてアラミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製「テクノーラHCF6−12」:繊維径12μm、繊維長6mm)を15質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを52質量部(固形分換算で34質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を5.5質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0073】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0074】
(実施例8)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を5質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を14質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを68質量部(固形分換算で44質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を7.1質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0075】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0076】
(実施例9)
繊維状物質として実施例6と同じ炭素繊維を5質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を14質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを68質量部(固形分換算で44質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を7.1質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0077】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0078】
(実施例10)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を15質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、ポリビニルアルコール((株)クラレ製「PVA−224」)を6質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを43質量部(固形分換算で28質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を4.8質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0079】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0080】
(実施例11)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を15質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、ビニロン繊維((株)クラレ製「VF−1203−2」:繊維径6μm、繊維長6mm)を6質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを43質量部(固形分換算で28質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を4.8質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0081】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0082】
(実施例12)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を15質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、実施例11と同じビニロン繊維を12質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を8質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを38質量部(固形分換算で25質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を4.8質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0083】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0084】
(実施例13)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を15質量部、無機質発泡粒子としてホウケイ酸ソーダガラス製中空ビーズ(ポッターズ・バロティーニ(株)製「Qセル7014」:粒子径5〜160μm、嵩比重0.08)を40質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを52質量部(固形分換算で34質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を5.5質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0085】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0086】
(実施例14)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を30質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを25質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを52質量部(固形分換算で34質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を5.5質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0087】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0088】
(実施例15)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を5質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを50質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを52質量部(固形分換算で34質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を5.5質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0089】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0090】
(実施例16)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を15質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを52質量部(固形分換算で34質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を2.3質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0091】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0092】
(実施例17)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を15質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを52質量部(固形分換算で34質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を9.0質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0093】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0094】
(実施例18)
アラミッド紙に樹脂を含浸したハニカムで形成されるハニカム構造体(昭和飛行機工業(株)製「アラミッドハニカム」:セルサイズ3/16インチ)を、金型の直径50mm、高さ60mmのキャビティ内にセットし、実施例3で調製した断熱材用組成物54gをこの金型に投入した。そして、予め135℃にセットした熱風循環式乾燥機にこの金型を入れて、135℃で1時間加熱した。さらに175℃に昇温して、175℃で1時間加熱した。このようにして金型内で発泡・硬化させてハニカム構造体の空所内に断熱材を充填する成形をした後、金型を冷却してハニカム構造体が骨組みとなった断熱材(図2(a)参照)を取り出した。
【0095】
(実施例19)
金型の直径50mm、高さ60mmのキャビティ内に、実施例3で調製した断熱材用組成物36gを投入した。そして、予め135℃にセットした熱風循環式乾燥機にこの金型を入れて、135℃で1時間加熱した。さらに175℃に昇温して、175℃で1時間加熱した。このようにして金型内で発泡・硬化させて断熱材を成形した後、金型を冷却して断熱材を取り出した。
【0096】
(実施例20)
金型の直径50mm、高さ60mmのキャビティ内に、実施例3で調製した断熱材用組成物84gを投入した。そして、予め135℃にセットした熱風循環式乾燥機にこの金型を入れて、135℃で1時間加熱した。さらに175℃に昇温して、175℃で1時間加熱した。このようにして金型内で発泡・硬化させて断熱材を成形した後、金型を冷却して断熱材を取り出した。
【0097】
(実施例21)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を7.5質量部と実施例6と同じ炭素繊維を7.5質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを52質量部(固形分換算で34質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を5.5質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0098】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0099】
(実施例22)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を15質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを20質量部、コルク粒(永柳工業(株)製「200A」;粒子径5〜75μm)、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを52質量部(固形分換算で34質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を5.5質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0100】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0101】
(実施例23)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を0.5質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を14.5質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを69.2質量部(固形分換算で45質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を7.2質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0102】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0103】
(実施例24)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を55質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを10質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを52.3質量部(固形分換算で34質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を5.5質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0104】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0105】
(実施例25)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を50質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを3質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を12質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを53.8質量部(固形分換算で35質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を5.6質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0106】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0107】
(実施例26)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を5質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを55質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を10質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを46.2質量部(固形分換算で30質量部)、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を4.8質量部用い、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0108】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0109】
(比較例1)
無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを30質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を70、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を7.0質量部用い(繊維状物質を含有せず)、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合することによって、断熱材用組成物を得た。
【0110】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0111】
(比較例2)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を30質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を70質量部、発泡剤として実施例1と同じマイクロカプセル発泡剤を7.0質量部用い(無機質発泡粒子を含有せず)、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合することによって、断熱材用組成物を得た。
【0112】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物56gを投入し、実施例1と同様に加熱して金型内で発泡・硬化させることによって断熱材を得た。
【0113】
(比較例3)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を15質量部、無機質発泡粒子として実施例1と同じアルミノシリケート系マイクロバルーンを40質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を11質量部と実施例2で得たレゾール型フェノール樹脂ワニスを52質量部(固形分換算で34質量部)用い(発泡剤を含有せず)、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合した。次にこの混合物をステンレスバットに払い出し、室温で24時間放置してメタノールを蒸発させることによって、粉末状の断熱材用組成物を得た。
【0114】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物84gを投入した。そして、予め135℃にセットした熱風循環式乾燥機にこの金型を入れて、135℃で1時間加熱した。さらに175℃に昇温して、175℃で1時間加熱した。このようにして金型内で硬化させて断熱材を成形した後、金型を冷却して断熱材を取り出した。
【0115】
(比較例4)
繊維状物質として実施例1と同じシリカ繊維を50質量部、熱硬化性樹脂として実施例1で得た硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂を50質量部用い(無機質発泡粒子と発泡剤を含有せず)、これらをヘンシェルミキサーに投入して10分間混合することによって、断熱材用組成物を得た。
【0116】
そして実施例1と同じ金型に、上記の断熱材用組成物197gを投入した。そして、予め135℃にセットした熱風循環式乾燥機にこの金型を入れて、135℃で1時間加熱した。さらに175℃に昇温して、175℃で1時間加熱した。このようにして金型内で硬化させて断熱材を成形した後、金型を冷却して断熱材を取り出した。
【0117】
上記のようにして得た実施例1〜20及び比較例1〜4の断熱材について、嵩比重と熱伝導率を測定した。嵩比重は、断熱材の質量を体積で割って求めた。また熱伝導率の測定は、アルバック理工(株)製の熱伝導率測定装置「GH−1」を用い、ASTM E1530に準拠して、定常熱流計法で行なった。
【0118】
また実施例1〜20及び比較例1〜4の断熱材について、高温・高速のガス流の気流中に置いた材料の表面破損度を評価する、エロージョン(浸食)試験を行なった。試験は、石川島播磨重工業(株)製のエロージョン試験機を用い、加熱方式:アーク加熱、加熱率:2.01MW/m、気流温度:2300℃、気流速度:マッハ3、加熱時間200秒、試験体サイズ:φ50mm×60mmの条件で行なった。そして、表面が破損された厚みをリセッション量として測定し、また背面温度を測定した。さらに試験体の亀裂の有無を検査し、亀裂が発生しないものを「○」、表裏に貫通しない小さな亀裂が発生したものを「△」、表裏に貫通する大きな亀裂が発生したものを「×」と評価した。
【0119】
【表1】

【0120】
【表2】

【0121】
【表3】

【0122】
【表4】

【0123】
【表5】

【0124】
表1〜3にみられるように、各実施例のものは、嵩比重が1.0以下、熱伝導率が0.2W/(m・K)以下であり、軽量で且つ断熱性に優れた断熱材を得ることができるものであった。またいずれの実施例においても、大きな亀裂の発生はみられなかった。
【0125】
一方、表4にみられるように、繊維状物質を含有しない比較例1では、リセッション量が大きく、強度のうえで問題を有するものであった。また発泡剤を用いて発泡させても、無機質発泡粒子を含有しない比較例2では嵩比重が高く、軽量化が不十分であり、無機質発泡粒子を含有しても、発泡剤を配合せず発泡させなかった比較例3では、嵩比重が高く、軽量化が不十分であると共に、熱伝導率も高く、断熱性が不十分であった。さらに、無機質発泡粒子を含有せず、また発泡剤を配合せず発泡させなかった比較例4では、嵩比重や熱伝導率がさらに高くなるものであった。また比較例1〜3では大きな亀裂が発生するものであった。
【0126】
また、実施例23は繊維状物質の量が少なめの配合、実施例24は繊維状物質の量が多めの配合、実施例25は無機質発泡粒子の量が少なめの配合、実施例26は無機質発泡粒子の量が多めの配合である。これらはいずれも、一定以上の性能を確保することができるものの、他の実施例よりは劣るものであった。
【符号の説明】
【0127】
1 繊維状物質
2 無機質発泡粒子
3 発泡樹脂層
5 ハニカム構造物
6 空所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状物質、無機質発泡粒子、熱硬化性樹脂、発泡剤を含有して成ることを特徴とする断熱材用組成物。
【請求項2】
ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール樹脂から選ばれるポリビニルアルコール系材料を含有して成ることを特徴とする請求項1に記載の断熱材用組成物。
【請求項3】
コルク粒を含有して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱材用組成物。
【請求項4】
上記繊維状物質として、アルミナ繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ−シリカの複合酸化物繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、カーボン繊維からなる無機繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、アクリル繊維、アセテート繊維、ナイロン繊維、ビニリデン繊維からなる有機繊維から選ばれるものを用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の断熱材用組成物。
【請求項5】
上記熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、メラミン樹脂、及びこれらの変性樹脂から選ばれるものを用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の断熱材用組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の断熱材用組成物を、発泡・硬化させて成ることを特徴とする断熱材。
【請求項7】
嵩比重が1.0以下であり、熱伝導率が0.2W/(m・K)以下であることを特徴とする請求項6に記載の断熱材。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載の断熱材用組成物を、ハニカム構造物の空所内で発泡・硬化させて成ることを特徴とする断熱材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−180470(P2012−180470A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44940(P2011−44940)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(312005186)リグナイト株式会社 (7)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】