説明

断熱材

【課題】簡便に製造することができ、広範な用途に適用できるとともに、薄膜化した場合でも十分な断熱性能を発揮する断熱層を有する断熱材を提供する。
【解決手段】断熱層とその両側に配置された気流遮断層とを有する断熱材で、断熱材は厚み50μm超の有機極細繊維不織布からなり、有機極細繊維径が1nm〜10μm、断熱層の厚さが100〜500μm,不織布の気孔率が65〜95%、有機極細繊維不織布が電解紡糸法で得られたものであり、気流遮断層が樹脂層で、樹脂層の厚さが断熱材の総厚さの50%以下である断熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断熱材の構成材料としては、発泡ウレタン,発泡スチロール等の有機材料や、グラスウール等の無機材料が一般に用いられている。
これらの材料は、空気などの気体を含むことで構成材料より低い熱伝導率を有する断熱材として作用する。
【0003】
これらの材料では、構成されるセルや繊維等が熱伝導パス(ヒートブリッジ)となることが知られているが、特に、薄くした場合、この影響が顕著となって十分な断熱性能を発揮させることは難しかった。
また、空気だけの層や真空層を断熱層とした薄膜断熱材を作ろうとしても、その形状を保持することが難しく、また空気断熱層の場合は対流による伝熱が起こるという問題もあった。
【0004】
この点、特許文献1には、厚み3mmの薄型の断熱シートが開示されている。
しかし、この断熱シートは何層にも積層された複雑な構造となっているため、その製造工程が煩雑であることや、アルミ箔を必須としていることから、その用途に制限を受けるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−527111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、簡便に製造することができ、広範な用途に適用できるとともに、薄膜化した場合でも十分な断熱性能を発揮する断熱層を有する断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、所定の厚みを有する有機極細繊維不織布を断熱層として用いることで、薄膜化した場合でも十分な断熱性能を発揮する断熱材が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. 厚み50μm超の有機極細繊維不織布からなる断熱層を備えることを特徴とする断熱材、
2. 前記断熱層と、その両側に配置された気流遮断層とを有する1の断熱材、
3. 前記有機極細繊維の繊維径が、1nm〜10μmである1または2の断熱材、
4. 前記断熱層の厚みが、100〜500μmである1〜3のいずれかの断熱材、
5. 前記不織布の気孔率が、65〜95%である1〜4のいずれかの断熱材、
6. 前記気流遮断層が、樹脂層である2〜5のいずれかの断熱材、
7. 前記気流遮断層の厚みが、総厚みの50%以下である2〜6のいずれかの断熱材、
8. 前記有機極細繊維不織布が、電界紡糸法で得られたものである1〜7のいずれかの断熱材、
9. 断熱材用である有機極細繊維不織布、
10. 有機極細繊維不織布の両側に気流遮断層を配置し、前記不織布内の気流を遮断して断熱作用を発揮するように構成した断熱構造、
11. 前記断熱構造を有するデバイス、
12. 断熱層として有機極細繊維不織布を用いる断熱方法
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の断熱材は、有機極細繊維不織布を断熱層として用いており、有機材料を構成材料としているため無機材料に比べて熱伝導率が低くヒートブリッジの影響を低減できる。
また、極細繊維不織布は、多くの空気をその中に包むことができるため、薄くても低熱伝導率を示し、薄膜断熱材として好適に利用できる。断熱層を薄く形成できるため、これまで断熱材が必要であるのにかかわらず、厚みや大きさの制限によって使えなかったところまでをも断熱することが可能となる。
さらに、有機極細繊維を構成する樹脂を選ぶことで、フレキシブルな有機極細繊維不織布が得られ、これを用いてフレキシブル断熱材とすることで、より広範囲の用途に適用可能なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る断熱材は、厚み50μm超の有機極細繊維不織布からなる断熱層を備えるものである。
ここで、有機極細繊維不織布を構成する繊維の平均繊維径は特に限定されるものではないが、その上限値は10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、2μm以下がより一層好ましく、1μm以下がさらに好ましく、最適は一般にナノファイバーの領域とされる1μm未満である。
一方、その下限値は特に限定されるものではないが、通常1nm以上程度であり、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、200nm以上がより一層好ましい。
【0011】
上記断熱層の厚みは、断熱作用を発揮させるという点から50μm超とされるが、より断熱効果を高めることを考慮すると、100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましい。
また、その上限は特に限定されるものではないが、本発明の断熱層が有する、薄膜化しても熱伝導率が低いという利点および断熱材の厚みを薄くすることを考慮すれば、500μm程度までの厚みで用いることが好ましく、400μm以下がより好ましく、300μm以下がより好ましい。
なお、断熱層は、1枚の有機極細繊維不織布で構成しても、2枚以上の有機極細繊維不織布を積層して構成してもよく、この場合、上記断熱層の厚みは積層体の総厚みを意味する。
【0012】
本発明の有機極細繊維不織布の気孔率は、特に限定されるものではないが、不織布内部に包含される空気量を増大させ、断熱効果を高めることと、不織布に適度な強度を持たせることなどを考慮すると、65〜95%が好ましく、67〜90%がより好ましく、70〜90%がより一層好ましい。
【0013】
有機極細繊維の原料ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、広範な用途への適用を考慮すると、100℃以上の耐熱性を有するポリマーが好ましい。
具体例としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリビニル系樹脂などが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、靱性が高く繰り返し曲げ耐性に優れ、フレキシブルな有機極細繊維不織布が得られるという点から、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂が好適である。
【0014】
本発明で用いる有機極細繊維不織布は、上述したポリマーを適当な溶媒に溶かした溶液(組成物)を、電界紡糸法、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法などの各種紡糸法により紡糸して得ることができる。
本発明においては、長繊維が得られ易く、繊維径をコントロールし易い電界紡糸法を用いることが好適である。
【0015】
電界紡糸法は、電界中で、帯電した電界紡糸用ドープ(樹脂溶液)を曳糸しつつ、その電荷の反発力によりドープを破裂させ、樹脂からなる極微細な繊維状物を形成する方法である。
電界紡糸を行う装置の基本的な構成は、電界紡糸用ドープを排出するノズルを兼ね、ドープに数千から数万ボルトの高電圧で印加する一方の電極と、その電極に対向する他方の電極とからなる。一方の電極から吐出あるいは振出されたドープは、対向する2つの電極間の電界中で高速ジェットおよびそれに引き続くジェットの折れ曲がりや膨張によって有機極細繊維になり、他方の電極表面上に堆積し、有機極細繊維不織布が得られる。
【0016】
電界紡糸用ドープの調製に用いられる溶媒としては、上述したポリマーを溶解し得るものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、ピリジン、トリクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル等や蟻酸、乳酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0017】
本発明の断熱材は、上記有機極細繊維不織布を断熱層として用いることに特徴を有しており、断熱層以外のその他の構成には特に制限はない。
すなわち、有機極細繊維不織布からなる断熱層を、使用する場所に配置した結果として、極細繊維不織布内と外部との空気の流れが遮断されて断熱作用が発揮される態様となればよい。
一例を挙げれば、上記有機極細繊維不織布からなる断熱層と、この両側面に位置する、当該断熱材を適用するデバイス等におけるその他の構成部材とが一体となって断熱構造を構成するような態様がある。この場合、断熱層の両側に位置する、上記その他の構成材料がそれぞれ気流遮断層として作用し、不織布内の空気の流れが遮断されて断熱作用が発揮される。
【0018】
一方、上記有機極細繊維不織布からなる断熱層と、その両側に配置された気流遮断層とを有する積層体を予め作製しておき、これを断熱材として用いてもよい。この場合は、断熱層の両側に気流遮断層が設けられており、この積層体において、極細繊維不織布内と外部との空気の流れが遮断されるため、これを断熱が必要な箇所に適宜配置すればよい。
【0019】
上記気流遮断層の材質としては、断熱層と外部との空気の流れを遮断し得るものであれば特に限定されるものではなく、樹脂、ガラス、金属、セラミック等からなる層が挙げられるが、熱伝導率やフレキシブル性等を考慮すると、樹脂フィルム層を用いることが好ましい。
使用する樹脂の材質に特に限定はなく、例えば、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体等のポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、PLA(ポリ乳酸)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペート等のポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;変性ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリグルコール酸;変性でんぷん;酢酸セルロース、三酢酸セルロース;キチン、キトサン;リグニンなど、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、熱伝導率の低いものが好ましく、また、不織布中の空気層を保持し、材料自身の劣化を避けるという観点からガス透過率の低いものが好適である。更には断熱材として広範な用途への適用を考慮すると、可撓性を有しながら100℃以上の耐熱性を有する樹脂が好ましい。
そのような樹脂としては、例えば、PET、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリスチレンなどが挙げられる。
【0020】
気流遮断層の厚みは特に限定されるものではないが、断熱材の熱伝導率の観点から、気流遮断層の総厚みが、断熱材の総厚みの50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。
気流遮断層を形成する方法は、単に不織布上に載置ないしは不織布を挟持するだけでも、接着剤により不織布に貼付しても、熱融着可能なものについては不織布に熱融着してもよく、特に限定されるものではない。
【0021】
以上説明した断熱層や断熱構造は、断熱が必要な任意の場所に適宜設置して断熱材として好適に用いることができる。
この際、断熱対象物としては特に限定されるものではなく、建材、電気・電子デバイス、家電製品、衣類等任意であるが、小型や薄型のデバイスに適用することで、薄膜化できるという本発明の利点を最大限に生かすことができる。
このようなデバイスとしては、携帯電話やPCなどのモバイル製品が挙げられる。
【実施例】
【0022】
以下、製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、繊維径、不織布の厚みおよび気孔率は、以下の手法により測定した。
(1)繊維径
電子顕微鏡(日本電子(株)、JSM−67010F)により観察し、任意の繊維50本の太さを測定し、平均を求めた。
(2)不織布の厚み
デジタルシックネスゲージ((株)テクロック製,SMD−565)を用いて、任意の10点を測定し、平均を求めた。
(3)気孔率
JIS L1096法に準拠し、寸法、質量および密度により算出した。
【0023】
[1]有機極細繊維不織布の製造
[製造例1]熱可塑性ポリウレタン(TPU)製極細繊維不織布(厚み100μm、繊維径200nm)
熱可塑性ポリウレタン(エラストランET867−D10、BASF製)20質量部と、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)80質量部とを室温(25℃)で溶解させて、熱可塑性ポリウレタン含有溶液(固形分25質量%)100質量部を得た。
この溶液(紡糸溶液)をシリンジに入れ、吐出先端内口径0.4mm、印加電圧30KV(室温下、大気圧)、吐出先端内口径から繊維状物質捕集電極までの距離15cmで電界紡糸を行い、TPU製極細繊維不織布を得た。
得られた不織布の厚みは100μm、平均繊維径は200nmであった。
【0024】
[製造例2]ポリアクリロニトリル(PAN)製極細繊維不織布(厚み50μm、繊維径400nm)
ポリアクリロニトリル(バレックス1000S、三井化学(株)製)10質量部と、DMF40質量部とを室温(25℃)で溶解させて、ポリアクリロニトリル含有溶液(固形分20質量%)50質量部を得た。
この溶液(紡糸溶液)をシリンジに入れ、吐出先端内口径0.4mm、印加電圧30KV(室温下、大気圧)、吐出先端内口径から繊維状物質捕集電極までの距離15cmで電界紡糸を行い、PAN製極細繊維不織布を得た。
得られた不織布の厚みは50μm、平均繊維径は400nmであった。
【0025】
[製造例3]TPU製極細繊維不織布(厚み100μm、繊維径2μm)
熱可塑性ポリウレタン(エラストランET680−10、BASF製)25質量部と、DMF75質量部とを室温(25℃)で溶解させて、熱可塑性ポリウレタン含有溶液(固形分25質量%)100質量部を得た。
この溶液(紡糸溶液)をシリンジに入れ、吐出先端内口径0.4mm、印加電圧30KV(室温下、大気圧)、吐出先端内口径から繊維状物質捕集電極までの距離15cmで電界紡糸を行い、TPU製極細繊維不織布を得た。
得られた不織布の厚みは100μm、平均繊維径は2μmであった。
【0026】
[製造例4]TPU製極細繊維不織布(厚み50μm、繊維径500nm)
熱可塑性ポリウレタン(エラストランET867−D10、BASF製)22質量部と、DMF78質量部とを室温(25℃)で溶解させて、熱可塑性ポリウレタン含有溶液(固形分22質量%)100質量部を得た。
この溶液(紡糸溶液)をシリンジに入れ、吐出先端内口径0.4mm、印加電圧30KV(室温下、大気圧)、吐出先端内口径から繊維状物質捕集電極までの距離15cmで電界紡糸を行い、TPU製極細繊維不織布を得た。
得られた不織布の厚みは50μm、平均繊維径は500nmであった。
【0027】
[2]断熱材の作製
[実施例1]
製造例1で得られたTPU製極細繊維不織布(厚み100μm、繊維径200nm)を2枚積層したものを断熱層(厚み200μm)とし、この断熱層を厚み20μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製、以下PETフィルムは全て同社製)で挟み込んで断熱材を作製した。
【0028】
[実施例2]
PETフィルムの厚みを50μmに変更した以外は、実施例1と同様にして断熱材を作製した。
【0029】
[実施例3]
製造例2で得られたPAN製極細繊維不織布(厚み50μm、繊維径400nm)を3枚積層したものを断熱層(厚み150μm)とし、この断熱層を厚み50μmのPETフィルムで挟み込んで断熱材を作製した。
【0030】
[実施例4]
製造例2で得られたPAN製極細繊維不織布を6枚積層したものを断熱層(厚み300μm)とした以外は、実施例3と同様にして断熱材を作製した。
【0031】
[実施例5]
製造例3で得られたTPU製極細繊維シート(厚み100μm、繊維径2μm)を2枚積層したものを断熱層(厚み200μm)とし、この断熱層を、厚み50μmのPETフィルムで挟み込んで断熱材を作製した。
【0032】
[比較例1]
厚み100μmのPETフィルムを2枚重ね合わせて断熱材とした。
【0033】
[比較例2]
厚み25μmのPETフィルムを100mm角の袋状に形成し、この中に空気2mlを充填して封止し、厚み200μmの空気断熱層を有する断熱材を作製した。
【0034】
[比較例3]
製造例4で得られたTPU製極細繊維シート(厚み50μm、繊維径500nm)を断熱層(厚み50μm)とし、この断熱層を、厚み20μmのPETフィルムで挟み込んで断熱材を作製した。
【0035】
[比較例4]
PETフィルムの厚みを50μmに変更した以外は、比較例3と同様にして断熱材を作製した。
【0036】
上記各実施例および比較例で作製した断熱材について、熱伝導率および繰り返し曲げ耐性を下記手法によって測定、評価した。結果を表1に示す。また、用いた極細繊維不織布の気孔率を測定した結果を併せて表1に示す。
〔熱伝導率〕
熱伝導率計(京都電子(株)製、QTM−500)を用いて測定した。
〔繰り返し曲げ耐性〕
曲率半径5mmで繰り返し10回折り曲げ、その後、熱伝導率を上記方法にて測定した。処理前後で値の変化を算出し、5%未満を○、それ以上を×で評価した。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示されるように、各実施例で得られた断熱材は、比較例の断熱材よりも熱伝導率が低く、断熱性能に優れていることがわかる。特に、実施例1〜4のナノファイバー不織布を断熱層とする断熱材は、熱伝導率が0.06(W/(m・k))以下という優れた断熱性能を発揮するものであることがわかる。
また、各実施例で得られた断熱材は、熱伝導率について十分な曲げ耐性を有しており、フレキシブルな断熱材として、広範囲な用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み50μm超の有機極細繊維不織布からなる断熱層を備えることを特徴とする断熱材。
【請求項2】
前記断熱層と、その両側に配置された気流遮断層とを有する請求項1記載の断熱材。
【請求項3】
前記有機極細繊維の繊維径が、1nm〜10μmである請求項1または2記載の断熱材。
【請求項4】
前記断熱層の厚みが、100〜500μmである請求項1〜3のいずれか1項記載の断熱材。
【請求項5】
前記不織布の気孔率が、65〜95%である請求項1〜4のいずれか1項記載の断熱材。
【請求項6】
前記気流遮断層が、樹脂層である請求項2〜5のいずれか1項記載の断熱材。
【請求項7】
前記気流遮断層の厚みが、総厚みの50%以下である請求項2〜6のいずれか1項記載の断熱材。
【請求項8】
前記有機極細繊維不織布が、電界紡糸法で得られたものである請求項1〜7のいずれか1項記載の断熱材。
【請求項9】
断熱材用である有機極細繊維不織布。
【請求項10】
有機極細繊維不織布の両側に気流遮断層を配置し、前記不織布内の気流を遮断して断熱作用を発揮するように構成した断熱構造。
【請求項11】
前記断熱構造を有するデバイス。
【請求項12】
断熱層として有機極細繊維不織布を用いる断熱方法。

【公開番号】特開2012−197644(P2012−197644A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63756(P2011−63756)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】