説明

断熱構造体および建物の外断熱構造

【課題】 施工性に優れ、低コストで、高い耐火性と断熱性を長期間維持できる断熱構造体および建物の外断熱構造の実現を課題とする。
【解決手段】 建物躯体21の建物躯体室外側21aに、その一面11aを相対して取り付けられる断熱性を備えた断熱部材11と、断熱部材11の他面11b側に、その一面12aを相対して形成された非金属層である耐火層12と、耐火層12の他面12b側に、その一面13aを相対して形成された耐火塗膜13とを有し、耐火塗膜13が火熱で膨張および炭化して耐火断熱層を形成する構成とした。また建物の外断熱構造20は、上記断熱構造体をその建物躯体21の建物躯体室外側21aに備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外断熱のための断熱構造体および建物の外断熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物(住宅、集合住宅、オフィスビル等)における断熱性能向上は、快適な住環境や執務・労働環境を実現し、また冷暖房のエネルギー消費量を低減させ、炭酸ガス排出削減等をもたらすところから、断熱構造体および建物の断熱構造の開発・改良の努力がなされている。
【0003】
こうした建物の断熱方法としては、建物躯体室内側と内壁との間に断熱材を配設等した、内断熱と呼ばれる断熱工法がある。しかし内断熱では、必然的に室内温度と建物躯体の温度差が大きくなる。そのため冬季に室内を暖房した場合には、建物躯体室内側や内断熱に結露が発生してカビが発生しやすくなる可能性があり、その結果、断熱材が経年変化で劣化する(断熱性が低下する)等の問題が生じる。
【0004】
かかる問題を解消するため、近年、外断熱と呼ばれる断熱工法が普及し始めた。外断熱は、建物躯体室外側に接するようにして断熱構造体を設けて(あるいは断熱構造体を外面に取り付ける等して)、建物躯体を外気から熱遮断するものである。つまり外断熱は、断熱構造体の一面(例えば建物躯体室外側に相対する面)と他面(例えば外気に接する面)との間の温度勾配を大きくすることで、断熱効果を発揮することができる。その結果外断熱は、建物躯体と室内温度の差が小さくなり、建物躯体及び室内の結露を防止し、またカビ発生および断熱材の劣化を防ぐことができる。さらに寒暖差等の気象現象によって生じる建物躯体の経年劣化を軽減して躯体の耐久性を向上させると共に、冷暖房負荷の低減によりライフサイクルコストを抑えることができる。
【0005】
こうした外断熱のための断熱構造体(以下、「断熱構造体」と表記することがある)の例としては、図5にその断面概略構造を示す断熱構造体1のように、その表面を難燃性組成物3でコーティングした発泡スチレンビーズ2(断熱性を有する)を、融着等して一体化した発泡体4(耐火断熱部材)の表面に、接着剤5を介在させて、ファイバーメッシュ6を埋め込んだモルタルの耐火層7を形成したものがある(特許文献1)。こうした断熱構造体1は、断熱効果はもとより、結露と、結露に伴う断熱材の劣化を防ぐことができ、さらに寒暖差等の気象現象によって生じる建物躯体の経年劣化を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−85027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述断熱構造体は、スチレンビーズ等を難燃性組成物でコーティングした発泡性組成物で形成されること、またモルタルの耐火層が一定の効果を発揮することから、比較的短時間であれば耐火性を発揮して、火災等から建物を保護することが期待される。しかし、耐火性がスチレンビーズ等に施された難燃性コーティング、およびモルタル層に依存しており、一定時間以上、高温の火熱に晒されると、前述難燃性コーティング層およびモルタル層の耐火性が失われて、延焼を防ぐことができなくなってしまう。さらにはスチレンビーズ等の発泡性組成物が焼失等する可能性を否定することができない。
【0008】
またファイバーメッシュを埋め込んだモルタル層が短時間の耐火性を発揮するとしても、地震等による振動でモルタル層の耐火層にひび割れが生じる可能性を否めず、かかるひび割れは、雨水の浸水の原因となって、発泡スチレンビーズ等の劣化、すなわち断熱性の劣化、および火災発生時における耐火性の劣化を招来し得る。モルタル層を厚くして耐火性を高めることも考えられるが、モルタル層の厚みを増やすと、モルタル層は一般的にひび割れをさらに誘発し剥落しやすくなる。このように、前述断熱構造体は、さらなる耐火性および耐震性の向上という課題を有している。
【0009】
そこで耐火性に優れ、施工性に優れ、低コストで、耐候性、耐震性に優れて高い断熱性を長期にわたって維持することができる、好ましくは、建物の外観のデザイン性向上に寄与できる断熱構造体および建物の断熱構造を実現することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明にかかる断熱構造体は、建物躯体室外側に、その一面を相対するようにして配設される、断熱部材を有して熱を遮断することができる。ここで断熱部材は、例えば難燃性のコーティング層を備えた発泡組成物で形成した耐火性断熱部材であってもよい。
【0011】
また該断熱構造体は、断熱部材の他面側に、その一面を相対するようにして形成された耐火層を有して、断熱部材への火熱の伝搬を低減することができる。耐火層は非金属層によってなるものである。この場合、非金属層とは、金属パネル以外の建材によってなる層をいい、たとえば、樹脂を含まないモルタル、シラス、漆喰(土壁)等の無機材によってなるもの、ポリマー等の有機材によってなるもの、および有機材・無機材のコンポジット(組合せ)によってなるもの、金属粉等の金属類を一部成分とするものを含む。
【0012】
上記において、耐火層はさらに、例えばその内部にメッシュ(例えばグラスファイバー等の耐熱性組成物で形成されたメッシュ)を埋め込んだモルタル層で形成するとしてもよい。
【0013】
さらに該断熱構造体は、耐火層の他面側に、その一面を相対するようにして形成された耐火塗膜を有しており、この耐火塗膜は、火熱に晒されると、体積が例えば10倍から20倍程度に膨張して、火熱を遮断することができるという特徴を有するものである。この耐火塗膜は、例えばポリリン酸アンモニウムを主成分とする耐火塗料を塗布して形成されたものであり、火熱によって膨張するとともに炭化して優れた耐火性と断熱性を発揮することができる。
【0014】
ここで所望の耐火時間等を実現するためには、火熱によって膨張したときの耐火塗膜の厚さが所定の厚さになるように、耐火塗膜を形成する際に、その厚さを管理することが求められる。例えばローラー塗りする場合には、ローラー塗りの回数および塗装厚さゲージで耐火塗膜の厚さを管理することができる。ここで骨材を混入した耐火塗料で塗布耐火塗膜を形成すれば、厚さゲージを使用せず、その厚さを骨材の形状(例えば略球形の骨材であれば、その直径)で管理することができて施工性が向上する。
【0015】
このように該断熱構造体は、耐火塗膜を適切な厚さとすることで、長時間の耐火性を実現することができる。また耐火塗膜は、耐火層を地震等によるひび割れから保護して、耐火層の剥脱を防ぐことができる。こうして耐火塗膜は、耐火層と相まって断熱部材を長期間にわたって保護することができ、また耐火性塗料で形成されるものだから、塗装技術によって、建物の外観のデザイン性を高めることができる。
【0016】
さらに該断熱構造体の、耐火塗膜の他面側(該断熱構造体の外気に接する側)に被覆層を形成することによって、耐火塗膜を風雨から保護することができ、耐火塗膜の特徴をさらに長期にわたって維持することができる。かかる被覆層は、例えば耐候性を有する無機系塗料(好適には、例えばオルガノポリシロキサン系樹脂エマルジョン塗料を使用するがこれに限定されるものではない)で形成することができる。
【0017】
さらに、こうした断熱構造体を建物の外壁に備えることによって、優れた断熱性を有する建物の外断熱構造を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明にかかる断熱構造体および建物の外断熱構造によれば、施工性に優れ、低コストで、耐候性に優れて、すなわち長年月にわたって、高い断熱性および耐火性を維持することができる。また建物における外観のデザイン性を維持しつつ、優れた断熱性と耐火性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる断熱構造体の一実施例(実施例1)における断面概略構造を示す図であり(a)、またその変形例における断面概略構造を示す図である(b)。
【図1A】本発明にかかる断熱工法(内断熱)を説明する断面図である。
【図1B】本発明にかかる断熱工法(外断熱)を説明する断面図である。
【図2】本発明にかかる断熱構造体の他の実施例(実施例2)における断面概略構造を示す図である。
【図3】本発明にかかる建物の外断熱構造体の一実施例(実施例3)における外断熱構造の概略断面構成図(斜視図)である。
【図4】図3に示す外断熱構造体の断面概略構造を示す図であり(a)、また同外断熱構造体が火熱に晒された後の断面概略構造を示す図である(b)。
【図5】従来の断熱構造体の一例における断面概略構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明にかかる断熱構造体および建物の外断熱構造について説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明にかかる断熱構造体の一実施例(実施例1)にかかる断熱構造体10Aについて説明する。図1(a)は、断熱構造体10Aの概略断面構造を示すものである。断熱構造体10Aは、断熱部材11を有しており、その一面11aが建物躯体室外側(図示せず)の表面側に相対して取り付けられるようになっている。断熱部材11の他面11b側には、耐火層12がその一面12aを接するように形成されている。
【0022】
耐火層12は、その内部にグラスファイバー・メッシュ12mを有している。耐火層12の他面12b側には、耐火塗膜13がその一面13aを接するように形成されている。すなわち断熱構造体10Aは、図1(a)に示すように、断熱部材11の他面11b上に耐火層12が形成されており、耐火層12の他面12b上にさらの耐火塗膜13が形成されている。そして断熱構造体10Aは、断熱部材11の一面11aが建物躯体室外側に相対して取り付けられ、耐火塗膜13の他面13bが外気に接するようになっている。
【0023】
<断熱部材>
断熱部材11の例としては、ポリスチレンペレットを発泡させて得たポリスチレンビーズの粒ごとに耐火材をコーティングし(難燃性コーティング層を形成し)、これをフォーム状に成形したもので、例えば20〜300mmの厚さを有して、優れた断熱性および耐火性を発揮するものがある。こうした断熱部材を用いた場合には、断熱部材11の耐火性も向上する。もちろんポリスチレンビーズの粒ごとの難燃性コーティング層が形成されていない断熱部材11であっても、断熱構造体10Aの耐火性は、後述する耐火塗膜および耐火層によって実現される。また、かかる耐火性を備えた断熱部材としては上記の耐火材をコーティングしてフォーム状に形成されたものに限らず、耐火断熱性を有する素材を断熱部材11として採用するものであってもよい。
【0024】
略50mmの厚さを有する耐火被覆ポリスチレンフェノール・フォームの場合には、例えば、密度が55±5(kg/立方メーター)であり(測定方法JIS A 9511)、熱伝導率が0.038(W/m・k)以下であり(測定方法JIS A 1412)、酸素指数が30%(V/V)以上であり(測定方法JIS K 7201)、そして燃焼性が燃焼なしである(測定方法JIS A 9511)。
【0025】
<耐火層>
耐火層12は、耐火性を有するポリマーセメントモルタルの規格を満たすアクリル系樹脂モルタルで形成されており、その内部に、引っ張り強度・耐衝撃性を有するグラスファイバー・メッシュ12mを伏込んで、例えば略3±0.5mmの厚さを有している。グラスファイバー・メッシュ12mは、耐アルカリ化が施され、耐アルカリ化後の重量が略145g/平方メーター以上のものである。
【0026】
アクリル系樹脂モルタルは、耐火被覆ポリスチレンフェノール・フォームと親和性を有しているから、断熱部材11の他面11b上に直接、コテを使用して塗布(コテ塗り)することができ、また硬化後は、弾性があり薄くて軽いので、ひび割れし難いモルタル層が形成され、断熱部材11に密着した脱落し難い耐火層を形成することができる。
【0027】
ここで耐火層12は、所望の耐火性、耐ひび割れ性、耐衝撃性および断熱部材11との親和性を有するものであればよく、前述のアクリル系樹脂モルタルに限定されるものではない。換言すれば、耐火層12とは金属パネルを除外する非金属素材をいう。この非金属素材は、たとえば、有機材、無機材、有機材・無機材のコンポジットを含んでよく、より詳細には、樹脂を含まないモルタル、シラス、漆喰(土壁)等の無機材、ポリマー等の有機材を含むものである。
【0028】
またグラスファイバー・メッシュ12mは、所望の引っ張り強度・耐衝撃性等を有するものであればよく、前述のものに限定されるものではない。たとえば、メッシュとして、3次元のメッシュ(図示しない)等を採用してもよい。
【0029】
<耐火塗膜>
耐火塗膜13は、例えばポリリン酸アンモニウムを主成分とした耐火塗料を塗布したもので、火熱に晒されると体積が10〜20倍程度に発泡・膨張するとともに炭化して、断熱性および耐火性を発揮して、火熱を長時間にわたり遮断することができる。すなわち耐火塗膜13は、火熱によって膨張して耐火断熱層を形成することを特徴とするものであり、例えば略0.5〜3mm程度の厚さを有している。
【0030】
このように耐火塗膜13は、耐火層12および断熱部材11を火熱から保護することができるから、断熱構造体10Aの耐火性を向上することができる(例えばISO5660に準拠する不燃材料発熱性試験の基準を満たすことができる。)。この耐火塗膜13は、耐火層12の上に耐火塗料をコテ塗り、刷毛塗り、またはローラー塗りで塗布して形成することができるから、断熱構造体10Aは施工性に優れている。
【0031】
また断熱構造体10Aの耐火時間は、耐火塗膜13の膨張後の厚さに依存するから、例えば厚さをゲージで確認しながら、数度にわたって耐火塗料を塗布する等して耐火塗膜13の厚さを適切に管理する必要がある。ここで耐火塗料にシリカ等の骨材を混入すると、骨材の形状で耐火塗料を塗布する厚さを規定することができる。例えば直径略0.5mmの球形骨材を混入した耐火塗料を塗布すれば耐火塗膜13を約0.5mmの厚さで形成することができ、骨材の大きさを変えることにより、必要な厚さの耐火塗膜13を形成することができる。またコテ等を使用して耐火塗膜13の表面(他面13b)に、意匠性の高い左官模様(テクスチャー)などの造型を施すこともでき、建物の外観のデザイン性を高めることができる。
【0032】
かくして断熱構造体10Aは、施工性に優れ、その厚さを適切に管理することができる耐火塗膜13を有して、不燃材料の条件を満たす断熱構造体を実現することができる。もちろん耐火塗膜13は、前述のポリリン酸アンモニウムを主成分とするものと同等、もしくは所望の耐火性等を有するものであればよく、骨材もシリカ以外の炭酸カルシウム、あるいは大理石等石材を粉砕したものでもよい。
【0033】
なお断熱構造体10Aは、建物躯体に取り付けて外断熱を実現できることはもとより、耐火性および断熱性が要求される構造物(構造体)の断熱を実現するための断熱構造体としても使用できるものである。
【0034】
<変形例>
次に断熱構造体10Aの変形例である断熱構造体10A’について説明する。図1(b)に示す断熱構造体10A’は、断熱構造体10Aの断熱部材11の他面11b側に、耐火層12の一面12aを相対させて、両者を接着剤で形成される接着層15で接着したものである。このような断熱構造体10A’では、断熱部材11と耐火層12とをより強固に一体化することができる。
【0035】
なお、上記及び以下の説明においては、図1A、図1Bに記載されるように用語の意味を付するものとする。
【実施例2】
【0036】
次に本発明にかかる断熱構造体の他の一実施例(実施例2)にかかる断熱構造体10Bについて説明する。図2は、断熱構造体10Bの概略断面構造を示すものである。なお実施例1の断熱構造体10Aと同一の機能を有する構成要素については、同一の符合を付し、それらの説明を省略する。
【0037】
断熱構造体10Bは、断熱構造体10Aが有する耐火塗膜13の他面13b上に、さらに被覆層14を設けたものである。被覆層14は、例えば、耐候性を有する塗料を塗布して形成され、耐火塗膜13を風雨から保護することができる。従って断熱構造体10Bは、耐火塗膜13の優れた耐火性を、さらに長期間にわたって維持することができる。
【0038】
ここで耐候性を有する塗料の例としては、オルガノポリシロキンサン系樹脂エマルジョン塗料等があり、このオルガノポリシロキンサン系樹脂エマルジョン塗料を1平方メーター当たり150g前後塗布することで被覆層14を形成する。もちろん耐候性塗料は、所望の耐候性を発揮するものであればよく、前述のオルガノポリシロキンサン系樹脂エマルジョン塗料に限定されない。また上記塗布量についてもこの数値に限定されるものではない。
【0039】
ところで被覆層14は、耐火塗装13の他面13b側に設けられるものであり、被覆層14の一面14aと耐火塗装13の他面13bとが直接接する構造はもとより、被覆層14の一面14aと耐火塗装13の他面13bとの間に、さらに他の塗装膜または接着層等が介在してもよい。
【実施例3】
【0040】
次に本発明にかかる建物の外断熱構造を、図3および図4に基づいて説明する。なお前述の実施例と同一の機能を有する構成要素には、同一の符合を付し、それらの説明を省略する。
【0041】
図3は、本発明にかかる建物の外断熱構造20の一部を斜視した概略断面構成図であり、建物の外断熱構造20は、少なくとも建物躯体21と断熱構造体10Aまたは断熱構造体10Bとを有している(図3に示す外断熱構造20は、断熱構造体10Bを有している)。断熱構造体10Bは、断熱部材11の一面11aが建物躯体21の建物躯体室外側21aと相対するようにして建物躯体21に取り付けられている。
【0042】
建物躯体21の建物躯体室外側21aへの断熱構造体10Bの取り付けは、建物躯体室外側21aに例えばアクリル系樹脂モルタルをコテ塗りして形成した接着層22に、断熱構造体10Bの断熱部材11の一面11aを接着する等して行われる(接着層22は、通常ビード(ノッチング)接着、またはいわゆる団子張りの接着層として形成される)。またはアンカー(図示せず)を使用する、もしくはコンクリート打設時に一緒に打ち込む(図示せず。型枠に断熱構造体10Bを固定してコンクリートを打設する態様、断熱構造体10B自体を型枠的に使用してコンクリートを打設する態様を含む。)等して、断熱構造体10Bが建物躯体21に固定される。すなわち図3および図4(a)に示すように、外断熱構造20では、建物躯体21の建物躯体室外側21a側から順番に、断熱構造体10Bの断熱部材11、耐火層12、耐火塗膜13、および被覆層14が配設されている。
【0043】
外断熱構造20が火災等で火熱に晒されると、図4(b)に示すように、耐火塗膜13が発泡・膨張するとともに炭化して、その耐火性と断熱性によって断熱部材11、耐火層12の変形・消失等を長時間にわたって防ぐことができる(なお被覆層14は、火熱によって消失し得るが、耐火塗膜13及び耐火層12が耐火性等を発揮するから、被覆層14の消失は何ら問題を生じない。)。
【0044】
このように、外断熱構造20は、断熱部材11の優れた断熱効果で建物の外断熱を実現することができ、もし火災が生じたとしても、耐火塗装13の優れた耐火性と断熱性で建物を火災から保護することができる。もちろん、外断熱構造20は、建物とその躯体21等が受ける火災の熱ストレスを軽減することができる。
【0045】
なお本発明にかかる断熱構造体および建物の外断熱構造は、各実施例の構成等に限定されるものではなく、それらの趣旨を変更することなく、適宜変形して実施することができる。例えば、耐火層と耐火塗膜の間に、両者と親和性を有する組成物を介在させる等である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明にかかる断熱構造体および建物の外断熱構造は、建物等において使用することができるから、本発明は経済的価値を有して産業上利用することができる発明である。
【符号の説明】
【0047】
10A、10B 断熱構造体
11 断熱部材
11a 断熱部材の一面
11b 断熱部材の他面
12 耐火層
12a 耐火層の一面
12b 耐火層の他面
12m グラスファイバー・メッシュ
13 耐火塗膜
13a 耐火塗膜の一面
13b 耐火塗膜の他面
14 被覆層
14a 被覆層の一面
20 断熱構造
21 建物躯体
21a 建物躯体室外側


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体室外側に、その一面を相対するようにして配設される断熱部材と、
前記断熱部材の他面側に、その一面を相対するようにして形成された耐火層と、
前記耐火層の他面側に、その一面を相対するようにして形成された耐火塗膜を有する断熱構造体であって、
前記耐火層は非金属層によってなり、
前記耐火塗膜は、火熱によって膨張して耐火断熱層を形成することを特徴とする断熱構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の断熱構造体の、前記耐火塗膜の他面側に、更に被覆層を形成したことを特徴とする断熱構造体。
【請求項3】
前記被覆層が、耐候性を有する無機系塗料で形成されたことを特徴とする請求項2に記載の断熱構造体。
【請求項4】
前記断熱部材が耐火性を有する材であり、もしくは難燃性コーティング層を備えた発泡組成物であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の断熱構造体。
【請求項5】
前記耐火層が、その内部にメッシュを埋め込んだモルタル層であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の断熱構造体。
【請求項6】
前記メッシュが耐アルカリ性を有しており、また前記モルタル層がアクリル系樹脂モルタルであることを特徴とする請求項5に記載の断熱構造体。
【請求項7】
前記耐火塗膜が、ポリリン酸アンモニウムを主成分とする耐火塗料を塗布して形成され、もしくは骨材を混入して吹付け、または左官で形成されたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の断熱構造体。
【請求項8】
建物の外断熱構造であって、前記請求項1乃至7の何れか1項に記載の断熱構造体を、建物躯体室外側に備えたことを特徴とする建物の外断熱構造。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−24030(P2013−24030A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162609(P2012−162609)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【出願人】(511259500)株式会社高本コーポレーション (1)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】