説明

断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管

【課題】 本発明は、保温性に優れ、エネルギーの節約を大幅に向上させることが出来、しかも経済的な液体輸送管としての断熱性に優れた断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管を提供する。
【解決手段】 下地処理を施した鋼管の外面に、接着層および防食層を順次積層し、その上部表面に高温、高圧力、長期間押出被覆に適した中空粒子をポリオレフィン樹脂中に添加した発泡層を積層したことを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。上記の高温、高圧力、長期間押出被覆に適した中空粒子は、発泡開始温度170℃超、発泡保持時間1〜60分の長時間、かつ0.1〜50MPaのスクリュー先端樹脂圧力を伴う溶融押出剪断発泡条件下で、高発泡率を発現することを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管の外面に断熱被覆を施した管材に関し、特に、断熱性に優れた断熱発泡ポリオレフィン被覆層を施した管材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水道水、温水等の液体を輸送する液体輸送管は、十分な断熱対策を殆ど施していないのが現状である。また、場所によっては、内部の液体の熱が放出するのを防ぐ目的として、或いは、冬季に内部の液体が凍結するのを防止する目的として、管本体をグラスウールやロックウールなどの断熱材で被覆し、その断熱材を紐状体で巻付けたり、粘着テープで断熱材が見えないように巻いたりしている。或いは、管本体を真空断熱二重容器で構成したものも採用されている。
【0003】
上述した断熱材を用いた液体輸送管は、構造は簡単であるものの、断熱材自体の断熱性能が十分でなく、また管内の水温が周りの空気の飽和水蒸気温度を下回ると結露が生じ、その結露水がグラスウールやロックウールなどの隙間に溜まっていき、断熱性能がさらに低下するという問題がある。一方、管本体に真空断熱二重容器を用いた液体輸送管の場合、管本体の外壁を二重構造として密閉された空間を形成し、その空間内を真空とする。或いは、ケイ酸カルシウム等の断熱材を充填させたような断熱構造を採用することによって、保温機能を発揮させようとしている。しかしながら、二重管構造による長距離輸送管を採用するためには、膨大なコストが掛かるという経済的な問題がある。
【0004】
上述のような問題を解消するために、例えば特開平7−205371号公報(特許文献1)や特開平8−25561号公報(特許文献2)に開示されているように、下地処理を施した鋼管の外面に、変性ポリオレフィン層、発泡ポリオレフィン層と繊維強化変性ポリオレフィン層を順次積層した断熱ポリオレフィン被覆鋼管や、下地処理を施した鋼管の外面に、変性ポリオレフィン層、繊維強化発泡ポリオレフィン層とポリオレフィン層を順次積層した断熱ポリオレフィン被覆鋼管が提案されている。
【0005】
一方、上記樹脂被覆用発泡体として、例えば特開2006−45268号公報(特許文献3)に開示されているように、柔軟性、耐熱性、および優れた発泡性、リサイクル性を有する非架橋のポリプロピレン系樹脂による低密度発泡体による配管や電線の被覆に優れたポリプロピレン系被覆用発泡体や、特開2007−191690号公報(特許文献4)に開示されているように、優れた耐熱性と発泡倍率を有し、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等に好適に使用可能な熱膨張性マイクロカプセル及び熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡成形体が提案されている。
【0006】
さらに、国際公開2007/072769号公報(特許文献5)に開示されているように、耐熱性に優れ、かつ、発泡倍率が高く、安定した発泡挙動を示す発泡剤を内包する外殻が、ポリメタクリルイミド構造を有する共重合体を形成し得る熱発泡性マイクロスフェアー、並びに熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法が提案されている。
【特許文献1】特開平7−205371号公報
【特許文献2】特開平8−25561号公報
【特許文献3】特開2006−45268号公報
【特許文献4】特開2007−191690号公報
【特許文献5】国際公開2007/072769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1や特許文献2に開示されている断熱ポリオレフィン被覆鋼管は、かなり断熱構造を採用することで、保温機能を発揮することができるが、必ずしも十分ということはできない。さらに、特許文献3や特許文献4および特許文献5に開示されている、ポリプロピレン系被覆用発泡体や熱膨張性マイクロカプセル及び熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡成形体が提案されているが、しかし、これも液体輸送管等の過激な条件下での保温鋼管層の対策にまで至っていない。
【0008】
特に、特許文献4および特許文献5においては、熱膨張性マイクロカプセル及び熱膨張性マイクロカプセルを用いた発泡成形体は、発泡開始温度が170℃以下を条件とした熱膨張性マイクロカプセルであり、この条件では、特に、押出工程における高温、高圧、長時間被覆層、すなわち、高温、高圧、長時間を要する押出工程においては十分な発泡成形体を得ることが出来ず、このため、上述した液体輸送管等の過激な条件下での保温鋼管層の対策にまで至っていないのが実状である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、より優れた外部への放出される熱を阻止した、保温性に優れ、エネルギーの節約を大幅に向上させることが出来、しかも経済的な液体輸送管としての断熱性に優れた断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管を提供するものである。その発明の要旨とするところは、
(1)下地処理を施した鋼管の外面に、接着層および防食層を順次積層し、その上部表面に高温、高圧力、長期間押出被覆に適した中空粒子をポリオレフィン樹脂中に添加した発泡層を積層したことを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。
【0010】
(2)前記(1)に記載の高温、高圧力、長期間押出被覆に適した中空粒子は、発泡開始温度170℃超、発泡保持時間1〜60分の長時間、かつ0.1〜50MPaのスクリュー先端樹脂圧力を伴う溶融押出剪断発泡条件下で、高発泡率を発現することを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。
(3)前記(1)に記載の中空粒子は、発泡剤を内包する外殻が、ポリメタクリルニトリルとメタクリル酸の共重合反応により形成するポリメタクリルイミド構造を有する共重合体を形成し得る熱発泡性中空粒子であることを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。
【0011】
(4)前記(1)に記載のポリオレフィン樹脂は、引張弾性率が、100〜3000MPaの範囲を有することを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。
(5)前記(1)〜(3)のいずれか1に記載の中空粒子の添加量を0.01〜20質量%とすることを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。
【0012】
(6)前記(1)〜(3)のいずれか1に記載の発泡層の膜厚を1〜100mmとすることを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。
(7)前記(1)〜(3)のいずれか1に記載の発泡ポリオレフィン被覆層の密度は、0.2〜0.9g/cm3 であることを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管にある。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明による断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管を長距離輸送管等であるパイプラン等に用いることによって、外部への放出される熱を阻止し、極めて優れた保温性を維持することが出来る効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について図面に従って詳細に説明する。
図1は、本発明に係る断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管の1部断面を示す図である。この図に示すように、外面をブラスト処理、あるいは酸洗、脱脂等した鋼管1の外面に、接着層2および防食層3を順次積層し、その上部表面に高温、高圧力、長期間押出被覆に適した中空粒子をポリオレフィン樹脂中に添加した発泡層4を積層した断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管にある。
【0015】
上記、本発明に使用する鋼管としては、炭素鋼、或いはステンレス鋼などの合金鋼である。また、炭素鋼管の内面、または外面、或いは両面にステンレス鋼やTi、Al,Ni,Cuなどの金属などの金属、またはNi−Cr−Mo合金、Ni−Cr−Mo−W合金などの合金鋼を積層したクラッド鋼管等、また、炭素鋼管の内面または、両面にZn,Al,Cr等合金めっきを施しためっき鋼管なども使用できる。
【0016】
本発明の下地処理した鋼管とは、ブラスト処理や酸洗、脱脂などによりスケール等を除去した鋼板外面である。また、一般的な耐食性、或いは密着性向上を目的とした表面処理剤を前記ブラスト処理などをした鋼管表面に塗布することもできる。次に、本発明の防食層とは、JIS G3469記載のP1H,P1S、或いはP2Sのような一般的な防食被覆をいう。また、耐食性向上、密着性の向上のために、プライマーを上記記載の下地処理した鋼管外面に積層塗布することもできる。
【0017】
本発明の断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管の製造に用いるプライマー(接着剤)としては、エポキシとしてビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテルの単独、またはこれらの混合物を用い、硬化剤として脂環族アミン脂肪族アミンまたはジシアンジアミドと変性イミダゾールの混合物を用い、かつエポキシに対してシリカ微粒子などの無機顔料を混合添加し衝撃強度を得ることができるが、これらプライマーについては、特に上記エポキシの限定するものではない。
【0018】
上記接着層および防食層を順次積層し、その上部表面に高温、高圧力、長期間押出被覆に適した中空粒子をポリオレフィン樹脂中に添加した発泡層を積層する断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管から構成される。本発明の最大の特徴は高温、高圧力、長期間押出被覆に適した中空粒子をポリオレフィン樹脂中に添加した発泡層を積層する断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管にある。
【0019】
本発明に係る高温、高圧力、長期間押出被覆に適した中空粒子をポリオレフィン樹脂中に添加した発泡ポリオレフィン層とは、ポリエチレン、またはエチレンと1−ブテン、プロピレン、1−ヘキセン、または1−オクテン等のα−オレフィンを共重合したエチレン−α−オレフィン共重合体の単独、或いは混合物を主成分とするポリオレフィン層に、中空粒子および/または気泡を内包する樹脂組成物を均一分布・混合したものである。
【0020】
高温、高圧力、長期間押出被覆に適した中空粒子は、発泡開始温度170℃以上、発泡保持時間として、1〜60分の長時間、かつ0.1〜50MPaのスクリュー先端樹脂圧力を伴う溶融押出剪断発泡条件下で、高発泡率を発現したもので、発泡剤を内包する外殻が、ポリメタクリルニトリル(polymethacrylonitrile)とメタクリル酸(methacrylic acid)の共重合反応により形成するポリメタクリルイミド(polymethacrylimide)構造を有する共重合体を形成し得る熱発泡性中空粒子である。なお、具体的には引用文献5に開示されている方法で得られる熱発泡性マイクロスフェアーを好適に用いることが出来る。
【0021】
特に、溶融発泡開始温度が、170℃以下の中空粒子を添加した場合は、発泡ポリオレフィン樹脂を溶融押出加工する際の溶融樹脂温度が具体的には、スクリュー先端樹脂圧力が、例えば、20MPaのもとで1〜60分の長時間の発泡保持時間のために、170℃以上の高い溶融樹脂温度となり、中空粒子が均一球状発泡せず、所謂“へたり”現象が多く発生するため、ポリオレフィン層に、中空粒子および/または気泡を内包する樹脂組成物が均一分布・混合することができなくなる。なお、発泡開始温度の測定方法としては、パーキンエルマー社製のTMA−7型を用いて「TMA測定」を行った。具体的には、容器にサンプル(熱発泡性マイクロスフェアーを約0.25mg)を入れて、昇温速度5℃/分で昇温し、その高さの変位を連続的に測定する。その容器内におけるサンプルの高さの変位が始まった温度を発泡開始温度とした。
【0022】
また、発泡保持時間を1〜60分とした理由は、1分未満では、中空粒子が十分に発泡せず、しかし、60分を超えると、中空粒子が均一球状発泡せず、所謂“へたり”現象が多く発生する傾向になることから、その範囲を1〜60分とした。また、スクリュー先端樹脂圧力を0.1〜50MPaとした理由は、0.1MPa未満では、中空粒子の樹脂圧力が低いために十分な均一分布・混合することができなくなる。また、50MPaを超える圧力は、実用押出加工する際の上限以上の圧力であり、実用安全操業条件の面から上限とした。
【0023】
また、中空粒子の添加量は、0.01〜20質量%が望ましく、0.01質量%未満の場合には、殆ど断熱効果が認められない。また、20質量%を超える添加量の場合には、ポリオレフィン樹脂の溶融押出製造プロセスの中で、樹脂溶融粘度が非常に高くなるため、押出機溶融温度を上昇させざるを負えなくなり、結果として、添加した中空粒子が縮小、或いは破損してしまい、添加量に伴う断熱効果の向上が認められなくなる。より好ましくは1〜15質量%とする。
【0024】
また、断熱ポリオレフィン樹脂の機械的強度として、引張弾性率が100MPa未満の場合には、製造時、或いは置場、敷設後の支持部位において、断熱ポリオレフィン樹脂層中に添加している発泡中空粒子の形状変形し、当初求められた断熱特性を得ることができない。また、逆に、断熱ポリオレフィン樹脂の機械的強度として、引張弾性率が3000MPaを超える場合には、ポリオレフィン樹脂の分子量が非常に高分子量となるために、溶融押出製造時の押出成形が非常に難しく、かつ被覆成型の観点から、被覆内部の残留応力が大きくなり、管端切断加工時に、容易に被覆割れが発生し、実用上不具合が発生し、安定した積層被覆鋼管を得ることができない。したがって、その範囲を100〜3000MPaとする。好ましい範囲は500〜2500MPaとする。
【0025】
断熱ポリオレフィン発泡層の膜厚を1〜100mmとする。膜厚1mm未満では液体輸送管等の過激な条件下での保温効果が十分でなく、また、100mmを超える膜厚ではその効果は飽和しコスト高となることから、その範囲を1〜100mmとした。好ましくは3〜50mmとする。
【0026】
また、発泡ポリオレフィン被覆層の密度を、0.2〜0.9g/cm3 とした理由は、密度0.2g/cm3 未満では、発泡倍率が過剰に大きく、被覆の圧縮強度が弱すぎる課題がある。一方、0.9g/cm3 を超えると発泡倍率が低く、被覆の断熱性が低すぎる課題がある。したがって、その範囲を0.2〜0.9g/cm3 とした。
【0027】
以上、鋼管、接着剤あるいは粘着層、防食層および中空粒子をポリオレフィン樹脂中に添加した発泡層を順次形成させた断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管を主体に説明してきましたが、これに限定するものでなく、防食層と発泡層間にさらに粘着層等を設けて、防食層と発泡層との密着性をより高めることが可能となる。さらに、断熱被覆鋼管の耐衝撃性、耐傷付き性を向上させる目的により、本発明の断熱発泡ポリオレフィン被覆の保護層として、最外被覆層にポリエチレン、或いはポリプロピレン系樹脂をさらに積層させることは本発明の目的を些かも変更するものでない。むしろ耐衝撃性、耐傷付き性を向上させることになる。
【0028】
また、本発明の断熱ポリオレフィンを最外被覆層として用いる場合には、ポリオレフィン樹脂に耐候性付与を目的とした着色顔料(無機系、或いは有機系)や、その他の耐候剤を適宜添加することも好ましい。さらに、本発明のポリオレフィン層の形成には、丸ダイ被覆、或いはTダイ被覆の何れの押出被覆する方法でも使用できるし、下層の防食層と同時に、多層押出被覆する方法でも使用できる。
【0029】
さらに加えて、上述した断熱発泡層管の端部からの水侵入を抑制するために、断熱発泡層の被覆端部にテーパー加工を施したり、この端部にシール材を塗布することにより、本発明の断熱発泡ポリオレフィン被覆の保護層をより高度な防食により長期間の寿命を安全に保持することを可能にすることも、本発明の目的を達成する手段である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
鋼管(SGP200A×5500×5.8t)の外面をグリットブラスト処理して除錆し、表面処理剤を塗布した後、乾燥した。表面処理した鋼管外面に、さらにエポキシプライマーを静電塗装し、鋼管を高周波誘導加熱で表面温度が200℃になるように加熱し硬化させた。その表面に、変性ポリオレフィン、ポリオレフィンおよび発泡ポリオレフィン(引用文献5に開示される方法で得た中空粒子)を押出被覆しながら、順次積層し、水冷して本発明による断熱ポリオレフィン被覆鋼管を製造した。この断熱ポリオレフィン被覆鋼管の性能を表1および表2に示す。なお、断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管の性能としては、(1)保温特性の評価、(2)押出特性の評価、(3)圧縮特性の評価の3種類の試験を実施して、総合評価を実施した。
【0031】
(1)保温特性の評価は、各種断熱発泡PP被膜鋼管による屋外送水試験を実施し、送水管入り側と出側との温度差を測定した。なお、屋外送水試験では、上記記載の200A断熱ポリオレフィン被覆鋼管を用い、100m送水試験設備に設置した後、事前に昇温設備により所定の温度(50℃)まで、昇温した温水を送水圧力5kg/cm2 で送水させた。この時の外気温は5℃である。
【0032】
(2)押出特性の評価は、150mmφ押出機による押出被覆性を評価した。
(3)圧縮特性は、断熱ポリオレフィン被覆鋼管を発泡層にて、ダンネジの上に2段積み(俵積み)した場合の発泡層の圧縮変形程度を評価した。なお、圧縮変形の程度は、その圧縮程度が初期膜厚の90%以下までに圧縮されたか否かを観察し評価した。その結果、各特性について優れているものを○、劣るものを×で表示した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

表1に示す、No.1〜48は本発明例であり、表2に示す、No.49〜88は比較例である。
【0035】
比較例No.49〜52は発泡開始温度が低く、かつ発泡樹脂層の密度が大きいために、保温特性が劣る。比較例No.53〜56は発泡保持時間が長く、かつ発泡樹脂層の密度が大きいために、保温特性が劣る。比較例No.57〜60は中空粒子の樹脂圧力が高く、かつ発泡樹脂層の密度が大きいために、保温特性が劣る。比較例No.61〜64は中空粒子の樹脂圧力が低く、かつ発泡樹脂層の密度が大きいために、保温特性が劣る。比較例No.65〜68は中空粒子の添加量が少なく、かつ発泡樹脂層の密度が大きいために、保温特性が劣る。
【0036】
比較例No.69〜72は中空粒子の添加量が多いために、押出特性が劣る。比較例No.73〜76は発泡樹脂層の密度が小さいために、圧縮特性が劣る。比較例No.77〜80は発泡樹脂層の膜厚が薄いために、保温特性が劣る。比較例No.81〜84はポリオレフィン樹脂の引張弾性率が低いために、圧縮特性が劣る。比較例No.85〜88はポリオレフィン樹脂の引張弾性率が高いために、押出特性が劣る。これに対し、本発明例であるNo.1〜48はいずれも本発明の条件を満たしていることから、その特性である保温性、押出特性および圧縮特性に極めて優れていることが分かる。
【0037】
以上のように、本発明の断熱ポリオレフィン被覆鋼管をパイプラインの建設工事に用いることによって、輸送時や施工時に受ける衝撃、あるいは圧縮に対して優れた衝撃・圧縮特性を発揮し、特に輸送時の長時間の保温性を安定して保持することができる断熱性の優れた断熱ポリオレフィン被覆鋼管を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管の1部断面を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 鋼管
2 接着層あるいは粘着層
3 防食層
4 中空粒子をポリオレフィン樹脂中に添加した発泡層


特許出願人 日鉄防蝕株式会社 他2名
代理人 弁理士 椎 名 彊


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地処理を施した鋼管の外面に、接着層および防食層を順次積層し、その上部表面に高温、高圧力、長期間押出被覆に適した中空粒子をポリオレフィン樹脂中に添加した発泡層を積層したことを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。
【請求項2】
請求項1に記載の高温、高圧力、長期間押出被覆に適した中空粒子は、発泡開始温度170℃超、発泡保持時間1〜60分の長時間、かつ0.1〜50MPaのスクリュー先端樹脂圧力を伴う溶融押出剪断発泡条件下で、高発泡率を発現することを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。
【請求項3】
請求項1に記載の中空粒子は、発泡剤を内包する外殻が、ポリメタクリルニトリルとメタクリル酸の共重合反応により形成するポリメタクリルイミド構造を有する共重合体を形成し得る熱発泡性中空粒子であることを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。
【請求項4】
請求項1に記載のポリオレフィン樹脂は、引張弾性率が、100〜3000MPaの範囲を有することを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の中空粒子の添加量を0.01〜20質量%とすることを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡層の膜厚を1〜100mmとすることを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡ポリオレフィン被覆層の密度は、0.2〜0.9g/cm3 であることを特徴とする断熱発泡ポリオレフィン被覆鋼管。

【図1】
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【公開番号】特開2010−264707(P2010−264707A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119542(P2009−119542)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000227261)日鉄防蝕株式会社 (31)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】