説明

断熱装置、及びこれを用いた断熱構造

【課題】既存の壁体と、その屋内側に配設される断熱パネルとの間における結露の発生を抑制し得る断熱装置、及びこれを用いた断熱構造を提供する。
【解決手段】断熱装置2は、屋外空間Aと屋内空間Bとを区画する既存の壁体10の屋内側の壁面11に沿わせるように配設され、厚さ方向に貫通する通気孔30と該通気孔を開閉する蓋体40とが設けられた断熱パネル20と、前記壁体と前記断熱パネルとの間に配設され、パネル裏面21側の絶対湿度を検出する第一検出手段50と、前記断熱パネルの表面22側に配設され、パネル表面側の絶対湿度を検出する第二検出手段51と、前記パネル裏面側の絶対湿度が前記パネル表面側の絶対湿度よりも高ければ前記蓋体を開状態に制御する一方、前記パネル裏面側の絶対湿度が前記パネル表面側の絶対湿度以下であれば前記蓋体を閉状態に制御する制御部52と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の壁体の屋内側の壁面に沿わせるように配設される断熱パネルを備えた断熱装置、及びこれを用いた断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅の断熱性を向上させる方法としては、住居の屋外空間と屋内空間とを区画する壁体の外側に断熱部材を施工する外貼り断熱工法や、上記壁体の内部に断熱材を施工する充填断熱工法が知られているが、これらの断熱工法には大掛かりな工事が必要であった。
下記特許文献1では、室内空間を構成する断熱改修部位となる既存の建物の内壁に、複数の真空断熱材を横方向に並べて設け、その表面側をボード材で覆った断熱壁が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−293202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のような断熱壁を屋内側に設けた構造では、屋内側に設けられた断熱部材が屋外側と屋内側との断熱境界となる。この断熱部材の裏面側(屋外側)に、例えば、冬季等において、高温高湿の室内空気が流入すれば、結露が生じることが考えられる。
【0005】
このような結露の発生を防止するためには、断熱部材と既存の壁体との間に空隙が形成されないように、断熱部材を既存の壁体の屋内側の壁面に全面に亘って密着させたり、断熱部材同士の継目等に防湿処理を施したりすることが考えられる。しかしながら、既存の壁体の屋内側の壁面には不陸等がある場合があり、断熱部材を既存の壁体の屋内側の壁面に全面に亘って密着させることは困難であることが考えられる。また、上記防湿処理も面倒な作業であり、また、完全に防湿処理を施すことは困難であることが考えられる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、既存の壁体と、その屋内側に配設される断熱パネルとの間における結露の発生を抑制し得る断熱装置、及びこれを用いた断熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る断熱装置は、屋外空間と屋内空間とを区画する既存の壁体の屋内側の壁面に沿わせるように配設され、厚さ方向に貫通する通気孔と該通気孔を開閉する蓋体とが設けられた断熱パネルと、前記壁体と前記断熱パネルとの間に配設され、パネル裏面側の絶対湿度を検出する第一検出手段と、前記断熱パネルの表面側に配設され、パネル表面側の絶対湿度を検出する第二検出手段と、前記パネル裏面側の絶対湿度が前記パネル表面側の絶対湿度よりも高ければ前記蓋体を開状態に制御する一方、前記パネル裏面側の絶対湿度が前記パネル表面側の絶対湿度以下であれば前記蓋体を閉状態に制御する制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、前記通気孔には、該通気孔を閉塞するように透湿防水シートが設けられていてもよい。
また、上記目的を達成するために、本発明に係る断熱構造は、本発明に係る断熱装置を用いた断熱構造であって、前記断熱パネルを、前記壁体との間に空隙層を形成するように配設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る断熱装置、及びこれを用いた断熱構造によれば、既存の壁体と、その屋内側に配設される断熱パネルとの間における結露の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)、(b)は、本発明の一実施形態に係る断熱装置及びこれを用いた断熱構造の一例を模式的に示す一部破断概略縦断面図である。
【図2】同断熱装置のブロック図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明の他の実施形態に係る断熱装置及びこれを用いた断熱構造の一例を模式的に示す一部破断概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係る断熱装置2及びこれを用いた断熱構造1の一例について説明するための概念的な説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係る断熱装置2を用いた断熱構造1は、屋外空間Aと屋内空間Bとを区画する既存の壁体10の屋内側の壁面11に沿わせるようにして、本実施形態に係る断熱装置2の断熱パネル20を配設した構造とされる。
【0012】
本実施形態では、断熱パネル20を、当該断熱パネル20と壁体10との間に空隙層Sが形成されるように、壁体10の屋内側の壁面11に沿わせるようにして配設した例を示している。
この際、壁体10に、下地柱や下地桟などの断熱パネル20の取付部としての壁下地を設けたり、スペーサを設け、これらを介在させて断熱パネル20を固定することで、空隙層Sを形成するようにしてもよい。また、この断熱パネル20の固定は、上記のような壁体10に固定した壁下地に対して固定するようにしてもよく、または、既存の壁体10(またはこの壁下地)に対して固定するようにしてもよい。
また、上記のように壁体10に、下地柱や下地桟などの壁下地を設けた場合には、壁下地の長手方向の配設態様に応じて、断熱パネル20の裏面21側の空間が、高さ方向及び幅方向の略全域に亘って連通されるように、下地柱や下地桟などに、上下または断熱パネル20の幅方向に沿う方向に貫通する通気孔を設けるようにしてもよい。
このような空隙層Sを形成することにより、断熱パネル20の裏面21側空間が幅方向及び高さ方向の略全域に亘って連通される。
なお、断熱パネル20を、既存の壁体10に沿わせるようにして複数枚を横並びに隣接させて配設する態様としてもよい。
【0013】
また、断熱パネル20は、例えば、表裏の面材の一方の両端部内側面に、枠材をそれぞれ固定し、これら一対の枠材の間に断熱材を充填、収容して、他方の面材の両端部内側面を枠材にそれぞれ固定することにより作製してもよい。
表面材及び裏面材は、合板やLVL等の木質積層板、パーティクルボードなどの木質ボード、またはインシュレーションボードやMDF(中密度繊維板)などの木質繊維板などの木質系材料から形成されたものとしてもよい。また、これら種々の木質系材料を積層した複合材料から形成されたものとしてもよい。または、表面材及び裏面材の両方若しくは一方を、石膏ボードなどの無機質系材料から形成されたものとしてもよい。さらには、これら表面材及び裏面材の両方若しくは一方を解絨したケナフ長繊維にバインダーとして合成樹脂系接着剤等を加えてボード化したケナフボードからなるものとしてもよい。
枠材としては、例えば、上記同様の木質系材料や硬質ウレタンなどの熱伝導率の低い材料からなるものとしてもよい。
【0014】
断熱材としては、発泡ポリスチレン(発泡PS)や発泡ウレタンなどの各種フォーム系(発泡系)断熱材、またはロックウールやグラスウールなどの繊維系断熱材を採用してもよい。または、例えば、多孔質のウレタンフォーム、シルカなどの粉末若しくはグラスファイバーなどの繊維で芯材を形成し、その芯材をガスバリア性の金属フィルムなどの包装材で外装して真空吸引することにより形成された真空断熱材を採用してもよい。
断熱材として真空断熱材を採用すれば、他の断熱材と比べて熱伝導率が極めて低いので、断熱パネル20の厚さ寸法を薄くすることができるため、断熱パネル20の施工による屋内居住空間への影響を小さくすることができる。
また、上記のように表裏の面材の間に断熱材を設けた構造とすることで、断熱材の破損や偏り等を抑制できる。特に、断熱材を真空断熱材とした場合には、真空断熱材の包装材等の破損を表裏の面材によって抑制でき、断熱性能の低下を抑制することができる。また、表裏の面材の間に断熱材を設けた構造とすることで、断熱パネル20の取り扱い性や施工性を向上させることができる。
断熱パネル20が配設される壁体10としては、特に限定されることはないが、一般的な鉄筋コンクリート造や鉄骨造、木造軸組構造、木造枠組壁構造からなる既存の壁体10に本実施形態に係る断熱装置2を用いた断熱構造1の適用が可能である。
【0015】
本実施形態では、断熱パネル20に、図1に示すように、当該断熱パネル20の厚さ方向に貫通する通気孔30を設けている。図例では、通気孔30を、当該断熱パネル20の上端部近傍部位に設けた例を示している。この通気孔30によって、屋内空間Bと、断熱パネル20と壁体10との間の空間(断熱パネル裏面側空間、図例では、空隙層S)とを連通させる構成としている。
通気孔30の貫通方向に直交する形状(開口形状)は、特に限定されるものではなく、例えば、断熱パネル20の幅方向に長尺な略矩形状であってもよい。また、通気孔30の断熱パネル20の幅方向に沿う幅寸法は、断熱パネル20の幅寸法の1/2〜4/5程度としてもよい。また、通気孔30の上下方向の高さ寸法は、例えば20〜100mm程度としてもよい。このような通気孔30は、壁体10の幅方向に沿って横並びに配設される複数枚の断熱パネル20のうちの少なくとも一枚の断熱パネル20に設けるようにすればよい。
また、通気孔30には、ガラリ31が設けられている。このガラリ31により、屋内側から通気孔30を介して断熱パネル20の裏面21側空間(空隙層S)に塵埃などが入り込むのが抑制される。図例では、ガラリ31を、通気孔30の貫通方向略中央部位に設けた例を示している。
なお、本実施形態では、通気孔30を、断熱パネル20の上端部近傍部位に形成した態様を例示しているが、例えば、断熱パネル20の高さ方向途中部位や、下端部近傍部位などに形成するようにしてもよい。また、本実施形態では、通気孔30を、断熱パネル20の幅方向に沿って長尺に形成した例を示しているが、断熱パネル20の高さ方向に沿って長尺に形成したり、比較的に短尺に形成するようにしてもよい。また、単一の断熱パネル20において、複数の通気孔30を設ける態様としてもよい。
【0016】
また、断熱パネル20には、通気孔30を開閉する蓋体40が設けられている。
蓋体40は、通気孔30を開放または閉鎖する蓋部41と、この蓋部41の軸部42と、この軸部42を駆動する蓋体駆動部43(図2参照)と、を備えている。軸部42は、通気孔30の断熱パネル20のパネル表面22側上端縁において、断熱パネル20の幅方向に沿って架け渡されるように設けられている。
蓋部41は、当該蓋部41が通気孔30を覆った際に、通気孔30が閉塞されて、通気孔30を介した空気の移動を抑制し得る形状とされている。
また、蓋部41は、蓋体駆動部43によって軸部42が回転駆動されることで、軸部42廻りに回転して通気孔30を開閉する構成とされている。
なお、蓋体40は断熱性を有したものとしてもよい。これによれば、屋外側と屋内側とに温度差があるような場合にも、ヒートブリッジ(熱橋)部となる通気孔を設けたことに起因する断熱パネル20のパネル表面22側空間の温度降下や温度上昇を抑制することができる。
また、図例では、蓋部41を、上端側を回転支点とした例を示しているが、下端側を回動支点としたり、断熱パネル20の幅方向に沿う方向の一端部を回動支点としてもよい。
【0017】
また、断熱装置2は、壁体10と断熱パネル20との間に配設され、パネル裏面21側(パネル裏面側空間)の絶対湿度を検出する第一検出手段50を備えている。また、断熱装置2は、断熱パネル20の表面側に配設されパネル表面22側(屋内空間B)の絶対湿度を検出する第二検出手段51を備えている。
図例では、第一検出手段50及び第二検出手段51として、湿度の検出を行う第一検出器50及び第二検出器51を用いた例を示している。
なお、これら第一検出器50及び第二検出器51は、設置場所の絶対湿度を直接的に検出し得るものであってもよいし、または、設置場所の温度及び相対湿度を検出し、これら温度及び相対湿度情報から演算部によって絶対湿度を算出する構成のものであってもよい。
また、第一検出器50及び第二検出器51によって検出した温度及び相対湿度に基づいて、CPU等の制御部52の演算部において絶対湿度を算出する構成としてもよい。この場合、第一検出手段50が、第一検出器50と制御部52とで構成され、第二検出手段51が、第二検出器51と制御部52とで構成されるものとしてもよい。
第一検出器50及び第二検出器51として用いられる湿度センサーとしては、インピーダンス変化型、容量変化型、電磁波吸収型など、どのような湿度センサーを採用するようにしてもよい。
【0018】
また、図2に示すように、蓋体40の蓋体駆動部43は、制御部52と電気的に接続されている。
制御部52は、第一検出器50及び第二検出器51とも電気的に接続されている。
第一検出器50及び第二検出器51により検出された絶対湿度の高低関係が制御部52によって判別されて、その判別結果に応じた操作信号が蓋体駆動部43に送信され、蓋部41の開閉駆動がなされる。
本実施形態では、パネル裏面21側の絶対湿度がパネル表面22側の絶対湿度よりも高ければ、制御部52によって蓋体40が開状態に制御される。
一方、パネル裏面21側の絶対湿度がパネル表面22側の絶対湿度以下であれば、制御部52によって、蓋体40が閉状態に制御される。
【0019】
なお、制御部52によってなされるパネル裏面21側の絶対湿度とパネル表面22側の絶対湿度との高低判別は、例えば、予め設定されたプログラムに従って、定期的になされるものとしてもよい。また、この場合は、記憶部等に前回判別時における蓋体40の開閉状態を記憶させておき、その開閉状態情報に基づいて、蓋体40を開放駆動させたり、開状態を維持したり、閉塞駆動させたり、閉状態を維持したりするようにしてもよい。つまり、前回判別時における開閉状態情報が、蓋体40が開であって、かつ、パネル裏面21側の絶対湿度がパネル表面22側の絶対湿度よりも高ければ、蓋体40の開状態を維持するように制御する。前回判別時における開閉状態情報が、蓋体40が開であって、かつ、パネル裏面21側の絶対湿度がパネル表面22側の絶対湿度以下であれば、蓋体40を閉塞するように駆動制御する。前回判別時における開閉状態情報が、蓋体40が閉であって、かつ、パネル裏面21側の絶対湿度がパネル表面22側の絶対湿度以下であれば、蓋体40の閉状態を維持するように制御する。前回判別時における開閉状態情報が、蓋体40が閉であって、かつ、パネル裏面21側の絶対湿度がパネル表面22側の絶対湿度よりも高ければ、蓋体40を開放するように駆動制御するようにしてもよい。
また、蓋体40の閉塞状態を初期設定としておくようにしてもよい。また、当該断熱装置2の制御部52や蓋体駆動部43等をオンオフする操作部等を設けるようにしてもよい。
また、制御部52の設置場所や、蓋体駆動部43、制御部52、第一検出器50及び第二検出器51を接続する配線部の設置場所は、図例では示されていないが、特に限定されるものではない。例えば、蓋体40の上方側の断熱パネル20の内部に内蔵されるものとしてもよい。
【0020】
上記のような蓋体40の開閉制御は、以下のような状態においてなされるものとしてもよい。例えば、冬季等において、パネル表面22側空間に人がいる場合には、人から水蒸気が生じ、また、例えば調理などがなされている場合や暖房器具の種類によっても、それらより水蒸気が発生するため、屋内側(パネル表面22側空間)の絶対湿度が上昇し、パネル裏面21側の絶対湿度がパネル表面22側の絶対湿度以下となることが考えられる。
このような場合には、絶対湿度の高いパネル表面22側の空気がパネル裏面21側に入り込まないように、制御部52によって、蓋体40が閉状態に制御される。
一方、パネル表面22側空間から人がいなくなれば、パネル表面22側空間の絶対湿度は低下し、外気の絶対湿度に近づき、パネル裏面21側の絶対湿度がパネル表面22側の絶対湿度よりも高くなることが考えられる。この場合には、制御部52によって、蓋体40が開状態に制御され、絶対湿度の高いパネル裏面21側の空気がパネル表面22側へ通気孔30を介して移動し、パネル裏面21側の湿度を低下させることができる。
【0021】
上記構成とされた本実施形態に係る断熱装置2、及びこれを用いた断熱構造1によれば、既存の壁体10と、その屋内側に配設される断熱パネル20との間における結露の発生を抑制することができる。
つまり、上述のように、パネル裏面21側の絶対湿度がパネル表面22側の絶対湿度以下となれば、既存の壁体10の屋内側に配設される断熱パネル20に設けられた通気孔30を開閉する蓋体40が閉状態に制御される。従って、断熱パネル20の通気孔30を介した断熱パネル20の裏面21と壁体10の屋内側壁面11との間への断熱パネル20の表面22側(室内側)の水蒸気の流入を抑制でき、既存の壁体11と、その屋内側に配設される断熱パネル20との間における結露の発生を抑制することができる。
一方、パネル裏面21側の絶対湿度がパネル表面22側の絶対湿度よりも高ければ、断熱パネル20に設けられた通気孔30を開閉する蓋体40が開状態に制御される。従って、断熱パネル20の裏面21側の水蒸気が通気孔30を介して屋内側に流入し、断熱パネル20の裏面21側の湿度を低下させることができ、既存の壁体10と、その屋内側に配設される断熱パネル20との間における結露の発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、断熱パネル20を、壁体10との間に空隙層Sが形成されるように配設している。そのため、この空隙層Sによって、断熱パネル20の幅方向及び高さ方向の略全域を連通させることができ、この空隙層Sに臨む通気孔30を介して断熱パネル20の裏面21側の水蒸気を屋内側に効率的に流入させることができる。
【0022】
次に、本発明に係る他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図3は、第2実施形態に係る断熱構造2A及びこれを備えた断熱構造1Aについて説明するための説明図である。
なお、上記各実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。
本実施形態においては、通気孔30に、当該通気孔30を閉塞するように透湿防水シート32を設けている。この透湿防水シート70としては、「タイベック」(登録商標)等を採用するようにしてもよい。
この透湿防水シート32は、通気孔30を閉塞するように設ければよい。図例では、通気孔30に嵌め込むようにして透湿防水シート32を設けた例を示しているが、例えば、透湿防水シート32を、断熱パネル20の裏面21や表面22に沿わせるようにして、貼着して設ける態様としてもよい。
このように透湿防水シート32を設けることで、通気孔30を介した空気の流通を抑制することができ、屋外側と屋内側とに温度差があるような場合にも、ヒートブリッジ(熱橋)部となる通気孔30やこれを開閉する蓋体40を設けたことに起因する屋内側の温度降下や温度上昇を抑制することができる。また、透湿防水シート32は、水蒸気の通過は可能であるので、上述のような通気孔30を介した断熱パネル20の裏面21側の水蒸気の屋内側への流入を阻害することはない。また、このような透湿防水シート32を設けることで、屋内側から通気孔30を介して断熱パネル20の裏面21側空間(空隙層S)に塵埃などが入り込むことを抑制することもできる。
【0023】
なお、上記各実施形態では、断熱パネル20を、壁体10との間に空隙層Sが形成されるように配設し、言わば、意図的に空隙層Sを設けた例を示しているが、このような態様に限られない。このような空隙層Sとしては、既存の壁体10の屋内側壁面11の不陸等や、断熱パネル20の施工誤差等に起因して断熱パネル20の裏面21側に形成されるものとしてもよい。
また、第一検出手段50及び第二検出手段51を、それぞれパネル裏面21側及びパネル表面22側に少なくとも一つ設置するようにすればよく、それぞれを複数個設置するようにしてもよい。
また、上記第2実施形態では、ガラリ31を設けずに、透湿防水シート32を設けた例を示しているが、ガラリ31を設ける場合は、透湿度防水シート32よりも屋内側に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1,1A 断熱構造
2,2A 断熱装置
10 壁体
11 屋内側の壁面
20 断熱パネル
21 パネル裏面
22 パネル表面
30 通気孔
32 透湿防水シート
40 蓋体
50 第一検出器(第一検出手段)
51 第二検出器(第二検出手段)
52 制御部(第一検出手段、第二検出手段)
A 屋外空間
B 屋内空間
S 空隙層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外空間と屋内空間とを区画する既存の壁体の屋内側の壁面に沿わせるように配設され、
厚さ方向に貫通する通気孔と該通気孔を開閉する蓋体とが設けられた断熱パネルと、
前記壁体と前記断熱パネルとの間に配設され、パネル裏面側の絶対湿度を検出する第一検出手段と、
前記断熱パネルの表面側に配設され、パネル表面側の絶対湿度を検出する第二検出手段と、
前記パネル裏面側の絶対湿度が前記パネル表面側の絶対湿度よりも高ければ前記蓋体を開状態に制御する一方、前記パネル裏面側の絶対湿度が前記パネル表面側の絶対湿度以下であれば前記蓋体を閉状態に制御する制御部と、
を備えていることを特徴とする断熱装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記通気孔には、該通気孔を閉塞するように透湿防水シートが設けられていることを特徴とする断熱装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の断熱装置を用いた断熱構造であって、
前記断熱パネルを、前記壁体との間に空隙層を形成するように配設することを特徴とする断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−91898(P2013−91898A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232648(P2011−232648)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、環境省、地球温暖化対策技術開発事業「既存住宅における断熱性向上のための薄型断熱内装建材に関する技術開発」委託契約業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】