説明

断熱防水構造、及び断熱防水工法

【課題】下地と断熱層との間に多量の気体が介在される環境下においても、防水層の膨れや防水層が断熱層から剥離することを防止することができる断熱防水構造、及び断熱防水工法を提供すること。
【解決手段】下地2に複数の断熱材11を敷き詰めて設置して断熱層10を形成する。この断熱層10における隣り合う断熱材11の突き合わせ面11aを、気密性を有する接着剤12により接着接合する。そして、断熱層10上に防水層20を積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱防水構造、及び断熱防水工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構造物の下地に敷設される断熱防水構造として、従来から種々の技術が提案されており、例えば、下記特許文献1〜3に記載された技術がある。
【0003】
特許文献1に記載された技術では、複数の断熱材を構造物の下地に敷き詰めて、接着材により下地に接着固定して断熱層を形成し、この断熱層上に防水層を接着剤により接着固定して断熱防水構造を形成している。また、特許文献2に記載された技術では、断熱材と防水材とが一体的に構成された複数の断熱防水パネルを、ネジにより下地に固定して断熱防水構造を形成している。この特許文献2に記載された技術では、隣り合う断熱防水パネル同士は、ホゾ組形状にされた断熱材により連結されている。
【0004】
ところで、断熱防水構造を構造物の下地に施工した後において、下地から水蒸気等の気体が発生する場合がある。特許文献1及び2に記載された技術では、この下地から発生する気体が、隣り合う断熱材間の隙間を介して断熱層と防水層との間に入り込み、この入り込んだ気体により、防水層の膨れや防水層が断熱層から剥離する可能性がある。このような防水層の膨れ等は、外観を著しく損なうばかりでなく、防水機能を劣化させる一因となり問題となっている。
【0005】
特許文献3に記載された技術では、上記の問題を解決すべく、断熱材と防水材とからなる断熱防水構造において、脱気シートの一端を断熱材と下地との間に貼着し、脱気シートの他端を外部に配置することで、下地から発生する気体を、この脱気シートを介して外部に流出するようにして、この下地から発生する気体による防水層の膨れや防水層が断熱層から剥離することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−150906号公報
【特許文献2】特開2008−163671号公報
【特許文献3】特開平10−61036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載された技術では、構造物の下地が鋼板デッキ等のように合わせ目がある下地では、構造物内(室内)の空気が、この合わせ目の隙間を介して下地と断熱層との間に多量に侵入して介在する場合があり、このような場合においては脱気シートだけでは防水層の膨れや、防水層が断熱層から剥離することを防止することが困難であった。
【0008】
そこで、本願発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、下地と断熱層との間に多量の気体が介在される環境下においても防水層の膨れを防止することができる断熱防水構造、及び断熱防水工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の断熱防水構造は、構造物の下地に敷設される断熱防水構造であって、前記下地に敷き詰めて設置される複数の断熱材からなる断熱層と、前記断熱層上に積層される防水層とを備え、前記断熱層における隣り合う断熱材の突き合わせ面同士が、気密性を有する接着剤により接着接合されていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、隣り合う断熱材の突き合わせ面同士が、気密性を有する接着剤により接着接合されているため、隣り合う断熱材間の気密性が確保されている。これにより、下地と断熱層との間に多量の気体が介在される環境下においても、この隣り合う断熱材間の隙間を介して断熱層と防水層との間に入り込むことを防ぐことができるので、その結果、防水層が断熱層から剥離することを防止することができ、且つ防水層が膨らむことを防止することができる。
【0011】
また、本発明の断熱防水構造が、合わせ目を有する前記下地に敷設されるものであってもよい。
【0012】
また、本発明の断熱防水構造において、前記接着剤が、ポリウレタン接着剤であってもよい。上記の構成によれば、隣り合う断熱材の突き合わせ面同士を確実に、且つ迅速に接着接合することができるので、隣り合う断熱材間の気密性を迅速に確保することができる。
【0013】
また、本発明の断熱防水工法は、構造物の下地に複数の断熱材を敷き詰めて設置して断熱層を形成し、且つ、隣り合う前記断熱材の突き合わせ面同士を、気密性を有する接着剤により接着接合する第1工程と、前記断熱層上に防水層を積層する第2工程とを備えていることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、隣り合う断熱材の突き合わせ面同士が、気密性を有する接着剤により接着接合されているため、隣り合う断熱材間の気密性が確保されている。これにより、下地と断熱層との間に多量の気体が介在される環境下においても、この隣り合う断熱材間の隙間を介して断熱層と防水層との間に入り込むことを防ぐことができるので、その結果、防水層が断熱層から剥離することを防止することができ、且つ防水層が膨らむことを防止することができる。
【0015】
また、本発明の断熱防水工法において、前記第1工程において、前記断熱材を前記下地に設置する前に、前記断熱材各々の突き合わせ面に前記接着剤を塗布してもよい。上記の構成によれば、断熱材を下地へ設置する前に、断熱材各々の突き合わせ面に接着剤が塗布されているため、断熱材の下地への設置を迅速に行うことができ、且つ、隣り合う断熱材間を接着剤により確実に接着接合させることができる。
【発明の効果】
【0016】
下地と断熱層との間に多量の気体が介在される環境下においても、防水層の膨れや防水層が断熱層から剥離することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る断熱防水構造の部分斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る断熱防水構造の施工工程を説明する第一説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る断熱防水構造の施工工程を説明する第二説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
(断熱防水構造1の構成)
図1に示すように、断熱防水構造1は、鉄骨構造等の構造物(建築物)の下地2に敷設されるものであり、下地2に設置される断熱層10、及び断熱層10上に積層される防水層20から主に構成される。
【0020】
(下地2)
本実施形態において、下地2は、図1に示すように、H形鋼などの鉄骨の支持梁3に、取付け下地材4を介して取り付けられた複数のデッキプレート5からなる。デッキプレート5は、山部5aと谷部5bとを備えた波形の断面形状であり、デッキプレート5の複数箇所の谷部5bにおいて、ネジ等の固定具(図示せず)により取付け下地材4に固定されている。
【0021】
デッキプレート5における幅方向の両端部の谷部5bには係合部5c、5dが形成されている。一側のデッキプレート5の係合部5cと、他側のデッキプレート5の係合部5dとを掛け合わせることで、幅方向において隣接するデッキプレート5同士を継いでいる。また、長手方向において隣接するデッキプレート5同士は、長手方向の端部において、山部5a及び谷部5b同士を一部重ね合わせることで、継いでいる。このように、下地2は複数のデッキプレート5を継いで形成されているため、下地2は合わせ目を有している。従って、この下地2の合わせ目を介して構造物内(室内)の気体が下地2と断熱層10との間に侵入して介在されることになる。
【0022】
(断熱層10)
断熱層10は、断熱防水構造1において、主に断熱性能を確保する目的で用いられるものであり、複数の板状の断熱材11からなる。この複数の断熱材11は、デッキプレート5の山部5aの上面に沿って、下地2に敷き詰めて設置される。
【0023】
断熱材11は、樹脂組成物を発泡させたものであり、例えば、ポリスチレンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、イソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、ポリ塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム等からなる。なお、ポリスチレンフォームは、ポリスチレン樹脂を発泡させたもので、スチレン系単量体の単独重合体に限らず、共重合体や単独重合体又は共重合体を他の樹脂と混合したものを、押出発泡成形法やビーズ発泡成形法により成形したものを用いることができる。
【0024】
断熱材11は、発泡倍率が10〜50倍の範囲のものを用いることが好ましい。この理由は、断熱材11の発泡倍率が10倍未満であると熱伝導率が大きくなり、50倍を超えると圧縮、曲げ強度が低下するからである。また、断熱材11は、厚みが5〜100mm、より好ましくは10〜50mmの範囲のものを用いることが好ましい。この理由は、断熱材11の厚みが5mm未満になると断熱性が低下してしまい、100mmを超えると敷設後における断熱防水構造1の歩行性等が損なわれるからである。
【0025】
断熱材11は、気密性を有する接着剤12により下地2に接着固定されている。また、隣り合う断熱材11の突き合わせ面11a同士も、接着剤12により接着接合されている。
【0026】
(接着剤12)
接着剤12は、気密性を有する接着剤であり、本実施形態においては、主剤であるポリオールと、硬化剤であるポリイソシアネートとからなる無溶剤タイプの二液反応硬化型のポリウレタン接着剤である。なお、接着剤12は1.2〜2.0程度の独立気泡の発泡型が好ましい。このような発泡ポリウレタン接着剤である接着剤12を、断熱材11の側面である突き合わせ面11aに塗布した後、隣り合う断熱材11の突き合わせ面11a同士を突き合わせて下地2に設置すると、接着剤12の発泡作用により、隣り合う断熱材11間の隙間内の隅々まで接着剤12が行きわたるため、断熱材11間の隙間が密封され、その結果、気密性を確保することができる。これにより、下地2と断熱層10との間に多量の気体が介在されて内圧が高くなった場合においても、この気体が断熱材11間の隙間を介して断熱材と防水層20との間に入り込むことを防止することができる。
【0027】
また、上記の発泡ポリウレタン接着剤である接着剤12を用いて断熱材11と下地2とを接着すると、デッキプレート5の山部5aの上面にある凹凸等をこの接着剤12により埋めることができるため、不陸調整を容易に行うことができる。
【0028】
接着剤12の主剤であるポリオール、及び硬化剤であるポリイソシアネートについては、特に限定されるものではない。なお、ポリイソシアネートは、2種類以上併用することも可能である。また、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させる際のポリオール中のOH基と、ポリイソシアネート中のイソシアネート基(NCO基)との比率は、NCO基:OH基=2:1から100:1の条件で反応させることが好ましい。
【0029】
接着剤12のポリオールとして、高分子量ポリオールを選択すると、伸び率は高められ、弾性率は低下されるため、通常、少なくとも約3000の分子量を有するポリオールが好ましいが、最も好ましいのは約4000の分子量を有しているポリオールである。また、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネートプレポリマーに関しては、イソシアネート含有率が27%以上の場合には硬すぎる接着剤を形成してしまうので、イソシアネート含有率は27%未満に低減されていることが好ましい。また、適切な固化のためにはイソシアネート含有率は16%以上であることが好ましい。一般的に、イソシアネート含有率は20〜25%であるべきであり、約23〜22.5%が好ましい。
【0030】
(防水層20)
防水層20は、断熱防水構造1において、主に防水性能を確保する目的で用いられるものであり、本実施形態においては、複数の防水シート21からなる。防水シート21は、断熱層10上に隙間なく敷き詰められて積層され、水系接着剤又は溶剤系接着剤である接着剤22により断熱材11の上面に接着固定される。隣り合う防水シート21の継ぎ目は重ねられ、必要に応じてテープなどで目張りされる。
【0031】
防水シート21としては、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・モノマー)、IIR(ブチルゴム)、NR(天然ゴム)、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、HNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、CSM(クロロスルフォン化ポリエチレン)等のゴムの素材からなるものやその他、熱可塑性エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の素材からなる防水シートを挙げることができる。また、これらの素材のシートにガラス繊維やポリエステル繊維などからなる補強布を埋設して機械的強度を向上させたり寸法的安定性を向上させたりしたものを防水シートとして用いることも可能である。
【0032】
防水シート21の厚みは1.0〜2.5mmの範囲のものを用いることが好ましい。この理由は、1.0mm未満であると強度が不足して防水シートが容易に破断することがあり、2.5mmを超えると、隣り合う防水シート21との継ぎ目部分において生じる段差が大きくなり、外観を悪くするからである。
【0033】
(断熱防水構造1の施工方法)
次に、本発明の断熱防水構造1の施工方法(断熱防水工法)について説明する。
【0034】
まず、下地2におけるデッキプレート5の山部5aの上面に接着剤12を塗布する。また、断熱材11の側面である突き合わせ面11aにも接着剤12を塗布する、そして、デッキプレート5の山部5aの上面、及び断熱材11の突き合わせ面11aにそれぞれ塗布した接着剤12が固化する前に、図2に示すように、断熱材11を隙間なく下地2に敷き詰めて設置して断熱層10を形成する(第1工程)。このように、断熱材11を下地2へ設置する前に、断熱材11各々の突き合わせ面11aに接着剤12を塗布しているため、断熱材11の下地2への設置を迅速に行うことができ、且つ、隣り合う断熱材11間を接着剤により確実に接着接合させることができる。なお、本実施形態においては、上記のように、デッキプレート5の山部5aの上面に接着剤12を塗布して、断熱材11を下地2に接着しているが、断熱材11の底面(下地2との接着面)に接着剤12を塗布して断熱材11を下地2に接着してもよい。
【0035】
次に、断熱層10の断熱材11の上面に接着剤22を塗布し、この接着剤22が固化する前に、図3に示すように、断熱層10上に防水シート21を敷き詰めて積層することで防水層20を形成する(第2工程)。なお、防水シート21は、隣り合う防水シート21同士は、一部重ね合わせて敷き詰められており、また必要に応じて、隣り合う防水シート21との継ぎ目をテープ等で目張りされて水密性が確保されている。本実施形態においては、上記のように、断熱層10の断熱材11の上面に接着剤22を塗布して、防水シート21を断熱層10に接着しているが、防水シート21の底面(断熱層10との接着面)に接着剤22を塗布して防水シート21を断熱層10に接着してもよい。
【0036】
以上の工程を経ることにより、本実施形態の断熱防水構造1を下地2に施工(敷設)することができる。
【実施例】
【0037】
本発明の断熱防水構造の効果を確認するために、下記の通り長時間放置試験、及びふくれ試験を行い、その結果を評価した。
【0038】
[長時間放置試験]
まず、長時間放置試験に用いる実施例、及び比較例の試験体を以下のように作製した。
【0039】
(実施例の試験体の作製)
ポリスチレンフォームからなる複数の断熱材(厚さ35mm×幅910mm×長さ910mm)を、下地に敷き詰めて断熱層を形成した。なお、下地は、複数のデッキプレートからなる合わせ目を有する下地である。断熱層と下地との接着、及び断熱層において隣り合う断熱材の突き合わせ面同士の接着接合は、発泡ポリウレタン接着剤(TILE−SET PROPACK 100(POLYFOAM PRODUCTS,INC社製))を用いた。この断熱層の断熱材の上面に、EPDM製加硫ゴムからなる防水シートを水系接着剤(ネオポンドAQ(三ツ星ベルト社製))を用いて接着して、防水層を形成した。以上の施工を経て、実施例の試験体を得た。
【0040】
(比較例の試験体の作製)
ポリスチレンフォームからなる複数の断熱材(厚さ35mm×幅910mm×長さ910mm)を、下地に敷き詰めて断熱層を形成した。なお、下地は、実施例と同様に、複数のデッキプレートからなる合わせ目を有する下地である。断熱層と下地との接着は、発泡ポリウレタン接着剤(TILE−SET PROPACK 100(POLYFOAM PRODUCTS,INC社製))を用いた。断熱層における隣り合う断熱材間には、この断熱材間の隙間を塞ぐように脱気シートを貼り付け、この脱気シートの端部を外部に連通させた。この断熱層の断熱材の上面に、EPDM製加硫ゴムからなる防水シートを水系接着剤(ネオポンドAQ(三ツ星ベルト社製))を用いて接着して、防水層を形成した。以上の施工を経て、比較例の試験体を得た。
【0041】
上記の実施例及び比較例の試験体について、施行後、長時間放置した後の状態を、下記判断基準により評価した。
「○」:防水層のふくれ・防水層の断熱層からの剥離がない。
「×」:防水層のふくれ・防水層の断熱層からの剥離がある。
【0042】
[ふくれ試験]
実施例、及び比較例の試験体のふくれに対する抵抗性能をふくれ試験(JASS8 T−501 メンブレン防水材の性能評価試験方法)に規定されるふくれ試験手順に従って、測定した。なお、実施例、及び比較例の試験体は以下のように作製した。
【0043】
(実施例の試験体の作製)
下地として、JIS A 5371(プレキャスト無筋コンクリート製品)に規定された(厚さ60mm×幅300mm×長さ300mm)の普通平板の中央に裏面まで貫通する10mmの穴をあけたものを用いた。この下地に、発泡ポリウレタン接着剤を塗布した後、ポリスチレンフォームからなる2個の断熱材(厚さ35mm×幅150mm×長さ300mm)を突き合わせて設置して断熱層を形成した。また、断熱材の突き合わせ面同士も発泡ポリウレタン接着剤により接着接合した。そして、断熱層の断熱材の上面に水系接着剤(ネオポンドAQ(三ツ星ベルト社製))を塗布した後、EPDM製加硫ゴムからなる防水シート(幅300mm×長さ300mm)を積層して防水層を形成した。以上の工程を経て、実施例の試験体を作製した。
【0044】
(比較例の試験体の作製)
上記の実施例の試験体の作製と同様に、下地として、JIS A 5371(プレキャスト無筋コンクリート製品)に規定された(厚さ60mm×幅300mm×長さ300mm)の普通平板の中央に裏面まで貫通する10mmの穴をあけたものを用いた。この下地に、下地上に発泡ポリウレタン接着剤を塗布した後、ポリスチレンフォームからなる2個の断熱材(厚さ35mm×幅150mm×長さ300mm)を突き合わせて設置して断熱層を形成した。また、断熱層における隣り合う断熱材間には、この断熱材間の隙間を塞ぐように脱気シートを貼り付け、この脱気シートの端部を外部に連通させた。そして、断熱層の断熱材の上面に水系接着剤(ネオポンドAQ(三ツ星ベルト社製))を塗布した後、EPDM製加硫ゴムからなる防水シート(幅300mm×長さ300mm)を積層して防水層を形成した。以上の工程を経て、比較例の試験体を作製した。
【0045】
以上により作製した実施例の試験体(3体)、及び比較例の試験体(3体)を試験温度60±2℃の状態に1時間以上静置した。その状態でふくれ試験装置に各試験体を設置し、まず、5.0kPaの圧力を負荷し、絶縁箇所の輪郭を白インクなどでマークする。次に10.0kPaの加圧を10分間、さらに20.0kPaの加圧を10分間、そして50.0kPaの加圧を10分間、順次行い、絶縁箇所の拡大などの異常を、以下の基準で判断した。
「ふくれ1」:10.0kPaの圧力で1体でも10分までに異常を生じた場合
「ふくれ2」:20.0kPaの圧力で1体でも10分までに異常を生じた場合
「ふくれ3」:50.0kPaの圧力で1体でも10分までに異常を生じた場合
「ふくれ4」:50.0kPaの圧力で3体とも異常を生じなかった場合
【0046】
以上の実施例、及び比較例の断熱防水構造の構成、並びに各試験の結果を下記表1にまとめて示す。
【0047】
(表1)

【0048】
上記、表1の結果より、本実施形態の断熱防水構造によると、断熱層10における隣り合う断熱材11の突き合わせ面11a同士を、気密性を有する接着剤12により接着接合することにより、防水層20の膨れや、防水層20が断熱層10から剥離することを防止することができることが分かる。
【0049】
以上、本実施形態によると、断熱防水構造1は合わせ目の有する下地2に敷設されているため、この下地2の合わせ目より構造物内の気体が多量に下地2と断熱層10との間に介在する可能性があるが、隣り合う断熱材11の突き合わせ面11a同士が、気密性を有する接着剤12により接着接合されているため、隣り合う断熱材11間の気密性が確保されている。これにより、下地2と断熱層10との間に多量の気体が介在される環境下においても、この隣り合う断熱材11間の隙間を介して断熱層10と防水層20との間に入り込むことを防ぐことができるので、その結果、防水層20が断熱層10から剥離することを防止することができ、且つ防水層20が膨らむことを防止することができる。
【0050】
また、接着剤12が、ポリウレタン接着剤であるため、隣り合う断熱材11の突き合わせ面11a同士を確実に、且つ迅速に接着接合することができるので、隣り合う断熱材11間の気密性を迅速に確保することができる。
【0051】
また、断熱材11を下地2へ設置する前に、断熱材11各々の突き合わせ面に接着剤12が塗布されているため、断熱材11の下地2への設置を迅速に行うことができ、且つ、隣り合う断熱材11間を接着剤12により確実に接着接合させることができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及び実施例に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態及び実施例の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0053】
例えば、本実施形態において、断熱防水構造1は複数のデッキプレート5からなる下地2に敷設されているが、これに限定されるものではなく、折板屋根やコンクリートからなる下地2に敷設されていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 断熱防水構造
2 下地
10 断熱層
11 断熱材
12 接着剤
20 防水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の下地に敷設される断熱防水構造であって、
前記下地に敷き詰めて設置される複数の断熱材からなる断熱層と、
前記断熱層上に積層される防水層とを備え、
前記断熱層における隣り合う断熱材の突き合わせ面同士が、気密性を有する接着剤により接着接合されていることを特徴とする断熱防水構造。
【請求項2】
前記断熱防水構造が、合わせ目を有する前記下地に敷設されるものであることを特徴とする請求項1に記載の断熱防水構造。
【請求項3】
前記接着剤が、ポリウレタン接着剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱防水構造。
【請求項4】
構造物の下地に複数の断熱材を敷き詰めて設置して断熱層を形成し、且つ、隣り合う前記断熱材の突き合わせ面同士を、気密性を有する接着剤により接着接合する第1工程と、
前記断熱層上に防水層を積層する第2工程と
を備えていることを特徴とする断熱防水工法。
【請求項5】
前記第1工程において、前記断熱材を前記下地に設置する前に、前記断熱材各々の突き合わせ面に前記接着剤を塗布することを特徴とする請求項4に記載の断熱防水工法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−132224(P2012−132224A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285860(P2010−285860)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【出願人】(000200323)JFE鋼板株式会社 (77)